説明

溶解装置及びそれを備えた給湯装置

【課題】電気回路を必要とせず、コンパクトで運転コストが安価、かつ、使用性の高い無機化合物等を供給する溶解装置及びそれを備えた給湯装置を提供すること。
【解決手段】水回路13と、無機化合物11と、前記無機化合物11を収納する収納手段12とを備え、前記無機化合物11を溶解させた水を、前記水回路13から流出させるとともに、前記無機化合物11の前記収納手段12への収納量は、1日の溶解量に対し180倍以上とすることを特徴とする溶解装置14で、無機化合物溶解機能を半年以上保つことができ、無機化合物溶解機能を維持することができことから、無機化合物11を補充する頻度を減少することができるので、利便性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物等を溶解する溶解装置、及び溶解した無機化合物等を浴槽等に供給する機能を備えた給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の装置は、目的の成分を含む材料を電気分解にて水中に溶解させ、この溶解した水を目的とする回路へ供給している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、特許文献1に記載された従来の給湯装置を示すものである。図9に示すように、亜鉛陽極1と、陰極2と、ケーシング5と、直流電源9から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−190882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、目的とする成分(亜鉛陽極1)の水への溶解方法は、電気分解の原理によるため、直流電源9と、回路を流れる水への漏電を防止するための絶縁回路(図示せず)が必要となる。従って、装置のサイズアップ、コストアップとともに、直流電源9においては電力を必要とするため消費電力量も増加する。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電気回路を必要とせず、コンパクトで運転コストが安価、かつ、使用性の高い無機化合物等を供給する溶解装置及びそれを備えた給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の溶解装置は、水回路と、無機化合物と、前記無機化合物を収納する収納手段とを備え、前記無機化合物を溶解させた水を、前記水回路から流出させるとともに、前記無機化合物の前記収納手段への収納量は、1日の溶解量に対し180倍以上とすることを特徴とする溶解装置である。
【0008】
これによって、無機化合物溶解機能を半年以上保つことができ、無機化合物溶解機能を維持することができことから、無機化合物を補充する頻度を減少することができるので、利便性を高めることができる。
【0009】
また、水と無機化合物の間の溶解濃度差で物質が移動する、物質拡散(フィックの法則)の原理で、水に無機化合物を溶解させることが可能となるため、これまで必要としていた電源回路と絶縁回路が削減でき、コンパクト化と低コスト化を実現することができ、さらには、電力不要の原理であるため、消費電力量を抑えることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気回路を必要とせず、コンパクトで運転コストが安価、かつ、使用性の高い無機化合物等を供給する溶解装置及びそれを備えた給湯装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における溶解装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における溶解装置の詳細図
【図3】本発明の実施の形態1における無機化合物(酸化亜鉛)の温度と溶解度の関係図
【図4】本発明の実施の形態2における溶解装置の構成図
【図5】本発明の実施の形態2における溶解装置の無機化合物と小穴体の関係を示す図
【図6】(a)本発明の実施の形態2における小穴体の構成図(b)同他の小穴体の構成図(c)同他の小穴体の構成図
【図7】本発明の実施の形態3における給湯装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態4における溶解装置の構成図
【図9】従来の給湯装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、水回路と、無機化合物と、前記無機化合物を収納する収納手段とを備え、前記無機化合物を溶解させた水を、前記水回路から流出させるとともに、前記無機化合物の前記収納手段への収納量は、1日の溶解量に対し180倍以上とすることを特徴とする溶解装置である。
【0013】
これによって、無機化合物溶解機能を半年以上保つことができ、無機化合物溶解機能を維持することができことから、無機化合物を補充する頻度を減少することができるので、利便性を高めることができる。
【0014】
また、水と無機化合物の間の溶解濃度差で物質が移動する、物質拡散(フィックの法則)の原理で、水に無機化合物を溶解させることが可能となるため、これまで必要としていた電源回路と絶縁回路が削減でき、コンパクト化と低コスト化を実現することができ、さらには、電力不要の原理であるため、消費電力量を抑えることもできる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明の溶解装置において、前記無機化合物の水への溶解度が15ppm以下であることを特徴とする溶解装置である。
【0016】
これによって、水に多量の無機化合物が溶解して水回路から流出しないので、無機化合物を多量に保持する必要がなく、さらには、溶解濃度抑制手段等を必要としないため、コンパクトかつ簡単な構成で、使用性の高い溶解装置をできる。
【0017】
第3の発明は、湯水を浴槽へ供給する浴槽水注湯回路と、前記浴槽水注湯回路を開閉する浴槽水注湯弁とを備え、前記第1または2の発明の溶解装置を、前記浴槽水注湯回路の、前記浴槽水注湯弁の下流側に配設したことを特徴とする給湯装置である。
【0018】
これによって、溶解装置は浴槽への湯はり停止時などに生じるウォーターハンマー現象(浴槽水注湯回路等の水圧上昇)の影響を受けないため、溶解装置の耐圧構造を簡素化することができる。さらに、浴槽への湯はりの水流を利用するため、湯はりと同時に無機化合物を溶解させた水を浴槽へ供給できるので、利便性が向上する。
【0019】
第4の発明は、湯水を浴槽へ供給する浴槽水注湯回路と、前記浴槽水注湯回路を開閉する浴槽水注湯弁とを備え、前記第1または2の発明の収納手段の相当直径を、前記浴槽水注湯回路の相当直径よりも大きくしたことを特徴とする給湯装置で、水が無機化合物収納容器を通過する際に生じる圧力損失の増加を低減させ、浴槽への湯はりを早く完了することができる。
【0020】
第5の発明は、前記第1または2の発明の溶解装置を、本体筐体内に配設したことを特
徴とする給湯装置で、低外気温時であっても貯湯タンク、電源回路などからの僅かな放熱により筐体内の雰囲気は常時加温されているため、溶解装置の凍結防止などの断熱が簡素化、または不要となる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における溶解装置の構造図を示すものである。
【0023】
図1において、無機化合物11は、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状との混合物であり、無機化合物収納容器(無機化合物収納手段)12に収納される。無機化合物11は、水に対して溶解性を持つ。図1中の無機化合物11は径が異なる顆粒状のものであり、これを多層状となるように構成すると、無機化合物収納容器12内には多孔質の空間が形成される。無機化合物収納容器12は、水回路13によって連通され、溶解装置14を構成する。
【0024】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。水回路13から溶解装置14に流入する水は、無機化合物収納容器12に形成される多孔質の空間を通過する。水には粘性があるため、多孔質の空間を通過する際に無機化合物11の表面から表面近傍の領域には速度境界層が生成される。
【0025】
図2はその速度境界層の状態を示す図である。無機化合物11の表面近傍の速度境界層の流速は小さく、多孔質空間の中心部を通過する流速は大きい分布となる。無機化合物11は水に対して溶解性を持つため、無機化合物11の表面近傍の11の表面分子は、表面近傍の水に溶解し、水の溶解濃度が上昇する。表面近傍の水は流速が小さいため、溶解濃度は高い値となる。これに対して流速の大きい多孔質空間の中心部の流れる水の溶解濃度は低い。このとき、水中に溶解する無機化合物の濃度差が生じた場合は、濃度差に応じて高い方から低い物質が移動する(フィックの法則)ため、表面近傍の水に溶解した無機化合物は濃度の低い中心の水に移動する。この物質拡散の原理を利用することで、無機化合物11を多孔質空間内の水に溶解させることができる。
【0026】
ここで、無機化合物11について説明する。無機化合物11は、水に対する溶解度が使用温度範囲において15ppm(無機化合物[mg]/水[L])以下のものを用いることができる。溶解度は、溶媒である水の体積1[L]に対して、溶質である無機化合物が飽和まで溶解した時の質量[mg]として表される。
【0027】
無機化合物11として酸化亜鉛(ZnO)を用いることができる。図3に酸化亜鉛の温度と飽和溶解濃度(溶解度)の関係を示す。給湯装置の使用温度である80℃までの範囲でZnO濃度は2ppm以下であり、溶解装置14に通水したさいの酸化亜鉛の消費量を少なくすることができるので、無機化合物11の充填量を少なくすることができ、無機化合物収納容器12の容積を小さくすることができ、溶解装置14をコンパクト化、低コスト化することができる。給湯機の本体筐体内に溶解装置14を収納するためには、無機化合物収納容器12を小さくする必要があり、無機化合物11の充填量を少なくする必要があるが、溶解度の高い無機化合物を用いた場合は、無機化合物11の消費量を抑制するために、溶解量を制御するポンプ等の溶解抑制手段が別途必要になり、構成が複雑になりコストアップとなる。
【0028】
一方、溶解抑制手段を設けることなく、溶解度の高い無機化合物を用いた場合は、溶解装置14に通水した際、無機化合物11の消費量が多くなり、無機化合物収納容器12に
無機化合物を多量に充填する必要があるため、溶解装置14を給湯機本体内に収納することができなくなり、別途溶解装置14の筐体を構成する必要があることから、給湯装置の構成が複雑となりコストアップとなる。
【0029】
無機化合物11の溶解度は、15ppm以下としたことから、無機化合物11の消費量を少なくすることができるので、無機化合物収納容器12への無機化合物11の充填量を少なくすることができるので容積を小さくすることができ、複雑な構成を必要とせず給湯機の本体筐体内に溶解装置14を収納することができるので、別途溶解抑制手段等を必要とせず、コンパクトかつ簡単な構成で信頼性を向上することが可能となり、低コスト化を実現することができる。
【0030】
無機化合物収納容器12は、1日の無機化合物の溶解量に対し180倍以上を収納しており、給湯機の無機化合物溶解機能を半年以上保つことができ、無機化合物11を補充する頻度を減少することができるので、メンテナンスの手間を軽減することができる。
【0031】
なお、無機化合物11として用いることが出来る材料は酸化亜鉛以外に、亜鉛化合物として、酸化亜鉛(ZnO)、塩基性炭酸亜鉛(mZnCO・nZn(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、亜鉛置換型ゼオライト、亜鉛置換型キレート、亜鉛シリカゲル担持物、であり、これらを単一または組み合わせて用いることができる。また、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、鉄化合物(酸化鉄、水酸化鉄)、酸化銅、酸化ケイ素、二酸化マンガン、水酸化コバルト、酸化チタン、塩化銀、硫酸バリウムを用いることができる。
【0032】
以上のように、本実施の形態においては、無機化合物と、無機化合物収納容器とを有し、無機化合物収納容器を水回路で接続した溶解装置を備えた給湯装置とした。
【0033】
これによって、水と無機化合物の間の溶解濃度差で物質が移動する、物質拡散(フィックの法則)の原理で、水に無機化合物を溶解させることが可能となる。従って、これまで必要としていた電源回路と絶縁回路が削減できるので、コンパクト化、低コスト化、さらには消費電力量を抑えた給湯装置とすることができる。また、溶解装置を通過する水回路の水に多量に無機化合物が溶解しないので、無機化合物を多量に保持する必要がなく、もしくは、溶解抑制手段を必要とせず、コンパクトかつ簡単な構成で信頼性を向上することが可能となり、メンテナンス頻度を軽減、低コスト化を実現することができる。
【0034】
尚、無機化合物を、亜鉛を含む亜鉛化合物(酸化亜鉛、炭酸亜鉛など)とした場合、以下の効果を得ることができる。亜鉛は比較的要求量の多いヒトの必須元素の一つであり、通常の食事からの供給では欠乏しやすく、栄養強化目的で、食品に添加される元素である。これに対しては、浴槽に亜鉛を溶解させた水を供給することで、入浴中に経皮吸収による栄養強化を行うことができる。
【0035】
また、亜鉛化合物の酸化亜鉛は、日本薬局方や化粧品原料基準に定められた規格に準拠することで、医薬品や化粧品として使用することができる材料であり、主にヒトの肌の角質層に対して収れん作用、消炎作用などの作用を与え、肌の角質層の状態を良好に保つことができる。
【0036】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における溶解装置の構造図を示すものである。
【0037】
図4において、無機化合物11は、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状との混合物であり、無機化合物収納容器(無機化合物収納手段)12に収納される。無機化
合物11は、水に対して溶解性を持つ。図4中の無機化合物11は径が異なる顆粒状のものであり、これを多層状となるように構成すると、無機化合物収納容器12内には多孔質の空間が形成される。濾過手段16は、複数の小穴を有する小穴体15により構成され、濾過手段収納容器17に収納される。無機化合物収納容器12と濾過手段収納容器17は、順に水回路13によって連通され、無機化合物収納容器12は濾過手段収納容器17の上流側となるように溶解装置14を構成する。
【0038】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。水回路13から溶解装置14に流入する水は、無機化合物収納容器12に形成される多孔質の空間を通過する。水には粘性があるため、多孔質の空間を通過する際に無機化合物11の表面から表面近傍の領域には速度境界層が生成される。図2はその速度境界層の状態を示す図である。無機化合物11の表面近傍の速度境界層の流速は小さく、多孔質空間の中心部を通過する流速は大きい分布となる。無機化合物11は水に対して溶解性を持つため、無機化合物11の表面近傍の11の表面分子は、表面近傍の水に溶解し、水の溶解濃度が上昇する。表面近傍の水は流速が小さいため、溶解濃度は高い値となる。
【0039】
これに対して流速の大きい多孔質空間の中心部の流れる水の溶解濃度は低い。このとき、水中に溶解する無機化合物の濃度差が生じた場合は、濃度差に応じて高い方から低い物質が移動する(フィックの法則)ため、表面近傍の水に溶解した無機化合物は濃度の低い中心の水に移動する。この物質拡散の原理を利用することで、無機化合物11を多孔質空間内の水に溶解させることができる。濾過手段16は、無機化合物収納容器12内の水勢によって無機化合物11の顆粒が無機化合物収納容器12から流出しようとした場合、これを防止するものである。
【0040】
以上のように、本実施の形態においては、無機化合物と、無機化合物収納容器と、濾過手段と、濾過手段収納容器とを有し、無機化合物収納容器、濾過手段収納容器の順に水回路で接続した溶解装置を備えた給湯装置とした。
【0041】
これによって、図1に示す溶解装置と同様に、水と無機化合物の間の溶解濃度差で物質が移動する、物質拡散(フィックの法則)の原理で、水に無機化合物を溶解させることが可能となる。従って、これまで必要としていた電源回路と絶縁回路が削減できるので、コンパクト化、低コスト化、さらには消費電力量を抑えた給湯装置とすることができる。
【0042】
図5は、溶解装置の無機化合物11と小穴体15の寸法の関係を示す例である。図5において、小穴体15は径の異なる複数の小穴15a、15b、15cから構成される。
【0043】
図6は、小穴体15の構成例である。(a)は、線形状の繊維で角状の小穴を形成したものである。(b)は、所定の厚さの板に、複数種の径の小穴を施したものである。(c)は、粒状の非溶解材料を多層状として多孔質空間を形成したものである。何れも、無機化合物収納容器12内の水勢によって無機化合物11の顆粒が無機化合物収納容器12から流出しようとした場合、これを防止するものであるが、この構成と形状の限りではない。
【0044】
溶解装置14を流出する溶解濃度は、無機化合物収納容器12を通過する水流速と、無機化合物11の水と接触する表面積等で決定される。溶解装置14の溶解濃度を所定値とする場合は、無機化合物11の全表面積をある範囲とする必要があるため、図5の無機化合物収納容器12に収納する無機化合物11の粒径をある一定の範囲内のサイズに選別したものを利用する必要がある。選別を行うと、コストアップの要因となるため、複数の径を有する無機化合物11の中において、無機化合物11の最大粒径D1に対して、小穴体15の小穴15aの径D2は、D2<D1とした場合、以下の効果を得ることができる。
D2未満の粒径の無機化合物11は、小穴15a、15b、15cから流出する。利用初期は粒径の小さいものは、溶解装置14外へ流出するが、所定時間経過後は、D2以上の粒径の無機化合物11は無機化合物収納容器12内に貯留され続ける。この状態が形成された場合、無機化合物11の粒径をある一定の範囲内のサイズに選別したことと同等となる。従って、サイズが混在する無機化合物11を用いても、目的とする濃度を水に溶解させる構造となる。
【0045】
(実施の形態3)
図7は、本発明の第2の実施の形態における給湯装置の構成図を示すものである。
【0046】
図7において、圧縮機22、給湯熱交換器23、減圧手段24、蒸発器25を冷媒回路26で順に環状に接続してヒートポンプユニット21を構成している。貯湯ユニット27の貯湯タンク28には水が貯留されており、出湯回路30は貯湯タンク28、給湯水ポンプ29、給湯熱交換器23、貯湯タンク28を順に接続する回路である。浴槽水加熱回路35は、貯湯タンク28、風呂熱交換器33、加熱ポンプ34、貯湯タンク28を順に接続する回路であり、風呂熱交換器33の他方の回路には浴槽42が接続されている。
【0047】
浴槽水循環回路41は、浴槽42、浴槽水を搬送する浴槽水ポンプ40、風呂熱交換器33を順に接続する回路である。浴槽水注湯回路39は、貯湯タンク28の水を、浴槽水循環回路41を経由して浴槽42へ注湯する回路である。この回路には貯湯タンク28の高温の水と水道水を混合する浴槽水混合弁36、注湯する水温を検知する温度検知手段37、浴槽水注湯回路39の回路の開閉を行う浴槽水注湯弁38を順に備える。溶解装置14は浴槽水注湯弁38の下流側の浴槽水注湯回路39に本体の筐体に収納するように設けた。
【0048】
ヒートポンプユニット21で貯湯タンク28に貯留された水を加熱する運転は、以下のような動作となる。貯湯タンク28の水は、給湯水ポンプ29によって給湯熱交換器23へ搬送され、ヒートポンプサイクル動作によって加熱される。給湯水ポンプ29は給湯熱交換器23で加熱された給湯水の温度が予め決定した温度になる様に、出湯回路30の流量を制御する。
【0049】
浴槽42への湯張り、並びに、浴槽水の加熱は以下のような動作となる。浴槽水注湯回路39の浴槽水混合弁36は、温度検知手段37で検知する注湯温度がリモコン等(図示せず)で予め設定された温度となるように、高温の湯と水道水の混合割合を調整する。所定温度となった浴槽水は、浴槽水注湯回路39、浴槽水循環回路41を順に経由して浴槽42へ流出する。一方、浴槽42の浴槽水を加熱する場合は、貯湯タンク28に貯留された高温の湯を、浴槽水加熱ポンプ34によって風呂熱交換器33へ搬送し、浴槽水ポンプ40より搬送された浴槽水を加熱する。風呂熱交換器33で浴槽水を加熱して温度が下がった給湯水は、給湯水下部回路31が接続する貯湯タンク28の下部より内部へ流入する。
【0050】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。利用者が浴槽42へ湯はりを行う場合は、リモコン等で湯はり動作の指示操作を行う。リモコン操作後、予め設定された温度に浴槽水混合弁36で調整された水が、浴槽水注湯弁38を閉から開に制御した場合に、溶解装置14、浴槽水循環回路41を経由して浴槽42に流出する。水が溶解装置14を通過する際に、無機化合物11が水に溶解するので、浴槽42に湯はり動作と同時に、無機化合物11を溶解させた水が浴槽42に流入する。
【0051】
溶解装置14は、浴槽水注湯弁38の下流側としたが、浴槽水注湯弁38が開から閉へ制御された場合は、ウォーターハンマー現象が発生し、上流側の回路に設けている、浴槽
水混合弁36、貯湯タンク28等は水道圧以上の水圧負荷を与える。下流側に設けることによって、溶解装置14への水圧負荷が掛からない。
【0052】
以上のように、本実施の形態においては、浴槽水注湯回路と、浴槽水注湯弁を備え、浴槽水注湯弁、溶解装置の順に浴槽水注湯回路に備えた給湯装置とした。これにより、溶解装置は浴槽への湯はり停止時などに生じるウォーターハンマー現象(浴槽水注湯回路等の水圧上昇)の影響を受けないため、溶解装置の耐圧構造を簡素化することができる。さらに、浴槽への湯はりの水流を利用するため、湯はりと同時に無機化合物を溶解させた水を浴槽へ供給できるので、利便性が向上する。
【0053】
本発明において、溶解装置14は給湯機の本体筐体に収納し、浴槽水注湯回路39としているが、浴槽水循環回路41に設けても、浴槽42へ無機化合物11を溶解させた水を供給することが出来る。また、本体筐体外部の浴槽水循環回路41に設けることも可能であるが、本体筐体内部の雰囲気温度は、低外気温時であっても貯湯タンク28からの放熱により、筐体内部の雰囲気は常時加温されるため、溶解装置14の凍結防止などの断熱が不要、または簡素化できる。
【0054】
また、給湯機を貯湯式給湯機とした場合、貯湯タンクには高温の湯を貯湯するので、この高温の湯を溶解装置へ供給することによって機器の殺菌、滅菌を行うことができる。また、水中に溶け込んでいる残留塩素が貯留中に少なくなるので、本体の材質は耐腐食性材料ではなく、安価な汎用部品を使うことができる。
【0055】
(実施の形態4)
図8は、本発明の第2の実施の形態における溶解装置の構造図を示すものである。
【0056】
図8において、溶解装置14の入口と出口は浴槽水注湯回路39に接続されている。無機化合物11を収納する無機化合物収納容器12の相当直径d1、浴槽水注湯回路39の相当直径d2とした場合、図8においてそれぞれをd1>d2となる大きさなるように決定した。
【0057】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。水回路13に対して、無機化合物11を収納した無機化合物収納容器12、濾過手段16を設けたので、溶解装置14を水が通過する際に、圧力損失が生じる。圧力損失が生じると、浴槽42へ供給する水の流量が低下する。
【0058】
ここで、無機化合物収納容器12の相当直径d1を、浴槽水注湯回路39の相当直径d2に対して、d1>d2となる大きさとすると、無機化合物収納容器12の平均流速u1は、浴槽水注湯回路39の平均流速u2より小さくなる。水回路の流体の圧力損失は、流体の平均流速の2乗に比例するため、溶解装置14を通過する際の圧力損失の増加を低減させることができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態においては、無機化合物収納容器の相当直径を、溶解装置を接続する浴槽水注湯回路の相当直径よりも大とすることにより、無機化合物を通過する水流による圧力損失を低減し、浴槽への湯はり時間を早く完了することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる給湯装置は、コンパクト化、低コスト化、構成の簡素化、信頼性向上、運転効率向上に繋がり、貯湯式給湯機の他、ガス熱源の給湯機にも利用できる。
【符号の説明】
【0061】
11 無機化合物
12 無機化合物収納容器
13 水回路
14 溶解装置
15 小穴体
15a 小穴
15b 小穴
15c 小穴
16 濾過手段
21 ヒートポンプユニット
27 貯湯ユニット
28 貯湯タンク
36 浴槽水混合弁
37 温度検知手段
38 浴槽水注湯弁
39 浴槽水注湯回路
42 浴槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水回路と、無機化合物と、前記無機化合物を収納する収納手段とを備え、前記無機化合物を溶解させた水を、前記水回路から流出させるとともに、前記無機化合物の前記収納手段への収納量は、1日の溶解量に対し180倍以上とすることを特徴とする溶解装置。
【請求項2】
前記無機化合物の水への溶解度が15ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶解装置。
【請求項3】
湯水を浴槽へ供給する浴槽水注湯回路と、前記浴槽水注湯回路を開閉する浴槽水注湯弁とを備え、前記請求項1または2に記載の溶解装置を、前記浴槽水注湯回路の、前記浴槽水注湯弁の下流側に配設したことを特徴とする給湯装置。
【請求項4】
湯水を浴槽へ供給する浴槽水注湯回路と、前記浴槽水注湯回路を開閉する浴槽水注湯弁とを備え、前記請求項1または2に記載の収納手段の相当直径を、前記浴槽水注湯回路の相当直径よりも大きくしたことを特徴とする給湯装置。
【請求項5】
前記請求項1または2に記載の溶解装置を、本体筐体内に配設したことを特徴とする給湯装置。

【図3】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−40485(P2012−40485A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182692(P2010−182692)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】