説明

滑り止め装置

枢動自在な延長アーム(5)の端部に配された回転板によって車両タイヤの下方に投入される複数本のチェーンを有する滑り止め装置において、ピストン(16)を有する駆動ユニットが延長アーム(5)に枢動運動させるために用いられ、このピストンはシリンダ(11)内に配され、その動きは、ピストンロッドとして機能するスラストチェーン(22)によって、シャフトで延長アームを支持している駆動ピニオン(29)に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は滑り止め装置に関し、この装置は、回転ホルダーに固定され、ホルダーの作動位置においてホルダーとは反対側の部分が、回転しているホルダーによる遠心力によって、回転している車両の接地面域に投入される複数本のチェーンと、このホルダーを支持する延長アームのための枢動ユニットと、延長アームが休止位置から作動位置に移動しかつ戻ることができるように相反する枢動運動を枢動ユニットに行わせる手段とを含み、枢動運動させるこの手段は、空気圧シリンダ内で案内されるピストンを有する駆動ユニットで形成され、フロントリンクとエンドリンクとを含むスラストチェーンで形成された中間伝達部材を用いて、フロントリンクに接続した駆動ホイールまたは駆動ピニオンを枢動運動させることができ、ハウジングに保持される駆動ホイールまたは駆動ピニオンのシャフトがホルダーのための延長アームを支持する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプの滑り止め装置は、図示されていない別の構成の実施態様として特許文献1に開示されており、この態様ではその両側部に圧縮空気を流入できるようなシリンダから突出するピストンロッド端部が、閉じたループを形成する1本のチェーンに接続しており、このチェーンのリンクが、駆動ホイールまたは駆動ピニオンおよび非スプラインの撓みプーリを通過している。閉じたチェーンループをスラストチェーンと置き換えれば撓みプーリは省略することができる。
【特許文献1】欧州特許第1049591(B1)号明細書
【0003】
さらに、同様に設計された滑り止め装置が特許文献2から知られているが、この特許文献ではシリンダ内で案内されるピストンのピストンロッドの一部が駆動ピニオンと噛み合う歯状ラック(toothed rack)として設計されており、このシリンダの両側部に圧縮空気を流入させることができる。
【特許文献2】欧州特許第0278896(B1)号明細書
【0004】
いずれの既知の滑り止め装置においても、圧縮空気シリンダと接続するハウジングは、枢動ユニットのための駆動ホイールまたは駆動ピニオンを収容する機能を有し、ハウジングの全長は、圧縮空気を流入させるピストンの1ストロークよりも必然的に長くなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
好適な滑り止め装置を収容できる車両の空間が比較的小さいという事実に対して、小型構造の装置への要望が急速に高まっている。本発明の目的は、この要望に応えることにある。
【0006】
本発明の本目的は、スラストチェーンのエンドリンクが駆動ユニットのピストンに直接接続し、これによってピストンロッドを形成し、駆動ホイールまたは駆動ピニオンを収容するハウジングおよびこのハウジングに面したシリンダの一部が、圧縮空気を流入できる共通の圧力室を形成することによって達成される。
【0007】
本発明の滑り止め装置は、駆動ホイールまたは駆動ピニオンを収容するそれぞれのハウジングの全長を、空気圧シリンダまたはピストンストロークそれぞれの全長の数分の1程度に短くすることができるという利点を有する。本発明の解決策を実現するための必須条件は、これまで長期に亘って標準的なシリンダ、直列シリンダおよび特別なシリンダを用いて行われてきた、シリンダ内で案内されるピストンによって形成される駆動ユニットを、被駆動ユニットから明確に離隔するという原則から離れることである(非特許文献1参照)。つまり、既に知られているスラストチェーンを特許文献1の滑り止め装置のようにチェーンループと置き換えてしまうのではなく、このスラストチェーンが柔軟性を有するピストンロッドとして設計された歯ラック機能を満たすということである。
【非特許文献1】Ebertshauser/Helduser、“Fluidtechnik von A bis Z”、第2版、177頁
【0008】
本発明のさらなる詳細は、添付図が示す特に有利な本発明の実施態様について後述する説明および従属請求項から明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は車両タイヤ1を示し、このタイヤの側面2に回転板4が押し付けられ、これにタイヤの回転によって回転運動が与えられる。この回転板には旋回するチェーンが設けられている。回転板4は枢動自在な延長アーム5の自由端部に保持され、駆動ユニット6がこのアームを往復運動させる。固定フランジ7は、駆動ユニット6を車両に固定する機能を有し、かつ、所望の位置にクロスピース8および2つの取り付けネジ9で球状の頭部10に締付け固定が可能で、この固定フランジ7およびクロスピース8は部分的に球形を有するキャップを具備し、球頭部10の形状に適合するようになっている。
【0010】
駆動ユニット6は、シリンダ11と、このシリンダの1つの端部と接合するほぼ円筒形のハウジング12とを含む。ピストン16はその周囲に2つの柔軟な密閉カラー(環状突起)13、14と、これらと同様な幅を有するピストンリング15が設けられており、シリンダ11内に保持されて往復移動する。ピストン16は、その端部が弾性を有するバックアップリング17と当接している。好ましくは圧縮空気によって形成される加圧媒体を、バックアップリング17に面したピストン16の側へ送るために、バックアップリング17を支持するシリンダ11のカバープレート18に、ここでは図示しない圧縮空気ラインとの接続のための孔部19が設けられている。
【0011】
ピストン16は、カバープレート18とは反対側に、スラストチェーン22のエンドリンク21のための接続ウェブ20を含み、その接続点は、スラストチェーン22のリンクを相互に連結するヒンジピン23の中央を通過する線24が、シリンダ11およびピストン16の中央軸25に対して距離a分だけオフセットする配置となるように選択され、これによりピストン16に中央に確実に荷重がかかる。スラストチェーン22のフロントリンク27のヒンジピン23は、接合部として用いられるのではなく、その他すべてのヒンジピン23と同じく回転スリーブ26に囲まれて、駆動ピニオン29の歯溝28のうちの1つと係合し、この駆動ピニオンはハウジング12から突出するシャフト31と一体に形成され、かつ、延長アーム5の端部30に囲まれている。
【0012】
ピストン16のバックアップリング17と反対側に加圧媒体を流入できるように、ハウジング12には孔部32が設けられ、この孔部に対して、図示しない別の加圧手段ラインを接続することができる。ハウジング12内部およびこのハウジング12に面したシリンダ11の空間は、スラストチェーン用のガイド挿入部(guide insets)33、34が設けられたチャネル35を介して相互に連結しており、これによって、共通の圧力空間または圧力室を形成する。ガイド挿入部33、34は、図5が示すように、スラストチェーン22のリンクの平行な側部フランク38と39との間に突出するガイドウェブ36、37を含み、これらの平行なフランクはヒンジピン23によって相互に連結し、ガイドウェブ36、37に面したフランク38、39の部分は、ガイドウェブ36、37のためのガイドチャネルを形成する(図10参照)。ハウジング壁部の環状突起部によって形成され、ハウジング12内部に突出するガイドウェブ40はガイドウェブ37と連続しているため、スラストチェーン22が図5および9に示す最終位置にほぼ相当する位置で、ほぼその全長に亘って案内され、特にそのヒンジピン23およびスリーブ26がそれぞれ、スラストチェーンに負荷が掛かると、駆動ピニオン29の歯幅28に安定して保持される。ピストン16の1回のストロークおよび駆動ピニオン29の歯数は相対的に調整して、スラストチェーンが駆動ピニオン29をピストンの端部のうちの1つでほぼ完全に囲むようにする。スラストチェーン22の歯の一部はピストン16の最終位置でガイドウェブ36、37の領域に位置するため、スラストチェーンのリンク数は、駆動ピニオン29の歯数よりも多くなければならない。
【0013】
駆動ピニオン29のシャフト31は、ハウジングを封鎖する2つの蓋43、44の摺動ベアリング41、42に保持される。ネジ込み軸45および固定ナット46は延長アーム5をシャフト31に固定する機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】極めて略式に示した作動位置にある本発明の滑り止め装置の主要部分の図である。
【図2】図1に示した装置の駆動ユニットの拡大側面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2と対応する側面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図2から4に示した駆動ユニットの平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図6と対応する平面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】図6のX−X線に沿った拡大部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ホルダーに固定され、ホルダーの作動位置においてホルダーとは反対側の部分が、回転しているホルダーによる遠心力によって、回転している車両の接地面域に投入される複数本のチェーンと、このホルダーを支持する延長アームのための枢動ユニットと、延長アームが休止位置から作動位置に移動しかつ戻ることができるように相反する枢動運動を枢動ユニットに行わせる手段とを含み、枢動運動させるこの手段は、空気圧シリンダ内で案内されるピストンを有する駆動ユニットで形成され、フロントリンクとエンドリンクとを含むスラストチェーンで形成された中間伝達部材を用いて、フロントリンクに接続した駆動ホイールまたは駆動ピニオンを枢動運動させることができ、ハウジングに保持される駆動ホイールまたは駆動ピニオンのシャフトがホルダーのための延長アームを支持する滑り止め装置において、スラストチェーン(22)のエンドリンクが駆動ユニット(6)のピストン(16)に直接接続し、これによってピストンロッドを形成し、駆動ホイールまたは駆動ピニオン(29)を収容するハウジング(12)およびこのハウジング(12)に面したシリンダ(11)の一部が、圧縮空気を流入できる共通の圧力室を形成することを特徴とする滑り止め装置。
【請求項2】
スラストチェーン(22)のフロントリンク(27)が、ピストン(16)の最終位置で、相互に平行に配された連結フランク(38、39)を連結させるヒンジピン(23)のうちの1つによって駆動ピニオン(29)の歯溝(28)と係合することを特徴とする請求項1に記載の滑り止め装置。
【請求項3】
駆動ピニオン(29)の歯数がスラストチェーン(22)のリンク数よりも少ないことを特徴とする請求項2に記載の滑り止め装置。
【請求項4】
駆動ピニオン(29)およびそのシャフト(29)を収容するハウジングがスラストチェーン(22)用の通路を形成するチャネル(35)を介してシリンダ(11)と連通していることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の滑り止め装置。
【請求項5】
駆動ピニオン(29)およびそのシャフト(31)を収容するハウジングがスラストチェーン(22)用のガイド挿入部(33、34)を具備していることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の滑り止め装置。
【請求項6】
さらなるガイド部が駆動ピニオン(29)の歯の歯先円を囲む環状ガイドウェブ(40)によって、その円周の一部に殆ど隙間なく形成されていることを特徴とする請求項5に記載の滑り止め装置。
【請求項7】
ガイドウェブ(40)が駆動ピニオンの歯の歯先円の約270度に亘って延びていることを特徴とする請求項6に記載の滑り止め装置。
【請求項8】
ガイド挿入部(33、34)が、スラストチェーン(22)のリンクを相互に連結させるヒンジピン(23)を接線方向に、駆動ピニオン(29)の歯の基準ピッチ円(reference circle)領域内へと移動させる直線ガイドとして形成されたガイドウェブ(36、37)を含むことを特徴とする請求項5乃至7いずれか1項に記載の滑り止め装置。
【請求項9】
スラストチェーン(22)のリンクを相互に連結させるヒンジピン(23)の軸が、ピストン(16)の長手方向の軸(25)に対して距離(a)だけオフセットとなるように位置する直線(24)上に配置されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項
に記載の滑り止め装置。
【請求項10】
回転スリーブ(26)がスラストチェーン(22)のヒンジピン(23)に保持されていることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項に記載の滑り止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−543662(P2008−543662A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517360(P2008−517360)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005402
【国際公開番号】WO2006/136286
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507387859)