説明

滑走面材

【課題】たとえば一瞬のスピード差を競うスキーやスノーボード等の滑走具において、撥水性および耐摩耗性にすぐれるとともに、従来よりもさらにすぐれた滑り特性を有する滑走面材を提供する。
【解決手段】ベース素材である合成樹脂中に、摩擦係数を低くする添加素材として、金属ガリウム粒子またはガリウム合金粒子0.01〜30質量%と、炭素粒子0.01〜20質量%を含有させるとともに、ハロゲンを含む添加素材を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑走面材に係り、さらに詳細には、スキー、スノーボード板、その他の滑走具において、滑走の際の摩擦抵抗をより少なくして高滑走性を生み出す滑走面材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市販されているスキー、スノーボード板用の滑走面材は、合成樹脂中に炭素粒子を均一に分散させたものが主流になっている。しかし、近年では、スキー、スノーボード用の滑走面材が、木製品からプラスチック材へ変遷しつつある。
【0003】
スキーやスノーボート板等では、雪が板に付着せず、なおかつスピードの出る物が望まれている。このため、スキーやスノーボード板等のメーカーは、さらに良い滑走面材を得るべく改良を重ねていて、いくつかの特許が出願されている(たとえば特許文献1〜3)。
【0004】
たとえば、特許文献1には、ワックス、パラフィンまたはこれらの混合物のサイクロデキストリン類包接化合物をプラスチックに混練したことを特徴とするスキー用表面材が開示されている。
【0005】
特許文献2には、超高分子ポリオレフィン系樹脂の顆粒を、高分子ポリオレフィン系樹脂内に均一に分散させたスキー用滑走面シートが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、粉末状で得られる金属ガリウム粒子、またはガリウム合金粒子と炭素粒子、またはガリウム合金粒子を、合成樹脂中に均一に混合・分散させたガリウム粒子含有樹脂組成物が、撥水性や耐摩耗性にすぐれた滑走面材となることが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−4573号公報
【特許文献2】特開昭62−217980号公報
【特許文献3】特開平5−285250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に開示されたガリウム粒子含有樹脂組成物は撥水性や耐摩耗性にすぐれた材質であるが、一瞬のスピード差を競うスキーやスノーボードの競技においては、すべり特性の良否が競技結果を大きく左右することがあるため、さらに滑り特性にすぐれた材質の開発が望まれている。
【0009】
本発明は以上のような背景を鑑みたものであって、その目的は、撥水性および耐摩耗性にすぐれるとともに、従来のガリウム粒子や炭素粒子を添加したものよりも、さらに滑り特性にすぐれた滑走面材を提供することを目的とする。
本発明の上記以外の目的および構成については、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題の解決手段として次のような手段を提供する。
第1の手段は、
ベース素材である合成樹脂中に、摩擦係数を低くする添加素材として、金属ガリウム粒子またはガリウム合金粒子0.01〜30質量%と、炭素粒子0.01〜20質量%と、が含有されているとともに、ハロゲンを含む添加素材が含有されていることを特徴とする滑走面材である。
【0011】
第2の手段は、
前記ハロゲンを含む添加素材としてフッ素樹脂を含有することを特徴とする第1の手段に記載の滑走面材である。
【0012】
第3の手段は、
前記ハロゲンを含む添加素材であるフッ素樹脂の含有量が、0.01〜10質量%であることを特徴とする第2の手段に記載の滑走面材である。
【0013】
第4の手段は、
前記摩擦係数を低くする添加素材として、さらに、窒化ホウ素粒子、フラーレン粒子、窒化チタン粒子から選択される1種類以上が含有されていることを特徴とする第1〜第3の手段のいずれかに記載の滑走面材である。
【0014】
第5の手段は、
前記摩擦係数を低くする添加素材である窒化ホウ素粒子の含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする第4の手段に記載の滑走面材である。
【0015】
第6の手段は、
前記摩擦係数を低くする添加素材であるフラーレン粒子の含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする第4の手段に記載の滑走面材である。
【0016】
第7の手段は、
前記摩擦係数を低くする添加素材である窒化チタン粒子の含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする第4の手段に記載の滑走面材である。
【0017】
第8の手段は、
前記ベース素材である合成樹脂が、分子量10万以上の高分子合成樹脂であることを特徴とする第1〜第7の手段のいずれかに記載の滑走面材である。
【0018】
第9の手段は、
前記金属ガリウム粒子またはガリウム合金粒子と、炭素粒子と、の平均粒径が、150ミクロン以下であることを特徴とする第1〜第8の手段のいずれかに記載の滑走面材である。
【0019】
第10の手段は、
前記フッ素樹脂の平均粒径が、200ミクロン以下であることを特徴とする第2〜第9の手段のいずれかに記載の滑走面材である。
【0020】
第11の手段は、
前記前記摩擦係数を低くする添加素材である窒化ホウ素粒子、フラーレン粒子、窒化チタン粒子の平均粒径が、50ミクロン以下であることを特徴とする第4〜第10の手段のいずれかに記載の滑走面材である。
【発明の効果】
【0021】
たとえば一瞬のスピード差を競うスキーやスノーボード板等の滑走具において、撥水性
および耐摩耗性にすぐれるともに、従来よりもさらにすぐれた滑り特性を有する滑走面材を提供することができる。
上記以外の作用/効果については、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る滑走面材は、ベース素材として合成樹脂組成物を使用し、この合成樹脂中に、摩擦係数を低くする添加素材(以下、「滑性添加材」と記載する場合がある。)と、ハロゲンを含む添加素材(以下、「撥水添加材」と記載する場合がある。)と、をそれぞれ所定の添加率で含有させることにより作製される。
【0023】
上記滑走面材は、スキーやスノーボード板等の滑走具用滑走面材として用いるが、この場合、次のような素材構成が、本発明の目的を達成する上でとくに有効であることが判明した。
【0024】
すなわち、撥水添加材としてはフッ素樹脂が好ましい。これは、雪面上を滑走した際に摩擦で発生した水滴を効率良く撥水させると同時に、雪面との抵抗を低減させることができるからである。
【0025】
また、当該フッ素樹脂の混合比率は、合成樹脂100質量%に対して、0.01〜10質量%が適当であり、さらに好ましくは0.02〜7質量%である。これはフッ素樹脂の混合比率が0.01質量%以上あれば後述の効果を得ることが出来、10質量%以下であれば原料コストを抑制することが出来るからである。
【0026】
さらに、本発明に係る滑走面材は、ベース素材に窒化ホウ素粒子、フラーレン粒子、窒化チタン粒子から選択される1種類以上を含有することが好ましい。
これは、氷点下の低温において、上記滑走面材の表面部にあるガリウム粒子、炭素粒子、フッ素樹脂、窒化ホウ素、フラーレン粒子、窒化チタン粒子は、そのごく一部が表面上にとけ出した後、こすられて平らに広げられた状態になる一方、その大部分は表面下に埋没している状態となる。これらの素材はそれ自体が膨張するため、表面に露出した部分が滑走面材(ベース材)である樹脂材表面を薄く覆うとともに、これに連接した埋没部分が膨張してますます滑走面から脱落分離し難い状態になる、という効果が生じる為であると考えられる。
【0027】
窒化ホウ素粒子の混合比率は、合成樹脂100質量%に対して、0.01〜10質量%が適当であり、さらに好ましくは0.02〜5質量%である。これは窒化ホウ素粒子の混合比率が0.01質量%以上あれば後述の効果を得ることが出来、10質量%以下であれば原料コストを抑制することが出来るからである。
【0028】
フラーレン粒子の混合比率は合成樹脂100質量%に対して、0.01〜10質量%が適当であり、さらに好ましくは0.02〜5質量%である。これはフラーレン粒子の混合比率が0.01質量%以上あれば後述の効果を得ることが出来、10質量%以下であれば原料コストを抑制することが出来るからである。
【0029】
窒化チタン粒子の混合比率は合成樹脂100質量%に対して、0.01〜10質量%が適当であり、さらに好ましくは0.02〜5質量%である。これは窒化チタン粒子の混合比率が0.01質量%以上あれば後述の効果を得ることが出来、10質量%以下であれば原料コストを抑制することが出来るからである。
【0030】
一方、ベース素材である合成樹脂組成物として分子量10万以上の高分子合成樹脂を使
用し、この高分子合成樹脂に、滑性添加材としてのガリウム粒子および炭素粒子と、撥水添加材としてのフッ素樹脂粒子とを添加して均一に混合させた樹脂材が、十分な撥水性および耐摩耗性を備えるとともに、上記滑走具用滑走面材としてとくにすぐれた滑り特性を示すことが判明した。
【0031】
この場合、滑性添加材であるガリウム粒子と炭素粒子には、平均粒径150ミクロン以下好ましくは50ミクロン以下のものを使用することが、上記滑り特性を向上させる上でさらに有効であることが判明した。
【0032】
同様に、撥水添加材であるフッ素樹脂粒子には、平均粒径200ミクロン以下好ましくは70ミクロン以下のものを使用することも、上記滑り特性を向上させる上では有効であることが判明した。
【0033】
また、上記に加えて、平均粒径50ミクロン以下、さらに好ましくは10ミクロン以下のフラーレン、窒化ホウ素、窒化チタンを添加することにより、上記特性をさらに向上させられることも判明した。
【0034】
以下、上述した滑走面材についてさらに具体的に詳述する。
上述したように、氷点下の低温おいて、上記滑走面材の表面部にあるガリウム粒子、炭素粒子、フッ素樹脂、窒化ホウ素、フラーレン粒子、窒化チタン粒子は、そのごく一部が表面上にとけ出した後、こすられて平らに広げられた状態になる一方、その大部分は表面下に埋没している状態となる。これらの素材はそれ自体が膨張するため、表面に露出した部分が滑走面材(ベース材)である樹脂材表面を薄く覆うとともに、これに連接した埋没部分が膨張してますます滑走面から脱落分離し難い状態になる、という効果が生じると考えられる。
【0035】
さらに、上記滑走面材へ、市販のワックスを塗布した場合、薄い層に伸ばされたガリウム、炭素、フッ素樹脂、窒化ホウ素、フラーレン、窒化チタンの露出部分にワックスが良く合体するととともに、それらの粒子の中にもワックスが若干浸透する。
【0036】
このため、滑走面上には、ガリウム−ワックス、炭素−ワックス、フッ素樹脂−ワックス、窒化ホウ素−ワックス、フラーレン−ワックス、窒化チタン−ワックスの混合体が安定に存在する状態となり、この結果、撥水性が良くなるとともに、滑走性が一段と向上し、さらに、ガリウム−ワックス、炭素−ワックス、フッ素樹脂−ワックス、窒化ホウ素−ワックス、フラーレン−ワックス、窒化チタン−ワックス混合体が滑走面から容易に離脱しないという効果が得られる。
【0037】
たとえば、スキー用滑走面材にワクシングを行った場合、滑走面材の表面部に存在するガリウム粒子、炭素粒子、フッ素樹脂、窒化ホウ素粒子、フラーレン粒子、窒化チタン粒子の表面が一部融解し、滑走面に沿って広がる。一方、ワックス自体も融解状態あるいは固体状態で上記滑走面材上に塗布および/または加熱されて均一に展開されることにより、その一部が滑走面材中に浸透する。
【0038】
この結果、ガリウム粒子の表面ではガリウム−ワックスの混合体が、炭素粒子の表面では炭素−ワックスの混合体が、フッ素樹脂の表面ではフッ素樹脂−ワックスの混合体が、窒化ホウ素粒子の表面では窒化ホウ素−ワックスの混合体が、フラーレン粒子の表面ではフラーレン−ワックスの混合体が、窒化チタン粒子の表面では窒化チタン−ワックスの混合体が、それぞれ生成する。
【0039】
ベース素材である合成樹脂中に含有させたガリウム粒子と炭素粒子、フッ素樹脂、窒化
ホウ素、フラーレン粒子、窒化チタン粒子は、低温になるとガリウム自体が膨張することにより、そのベース素材から剥離し難くなるが、このとき、ワクシングしたワックスも剥離し難くなることが判明した。
【0040】
これにより、従来のワックス単独のワクシングでは、雪上でのスキー操作によるワックス剥離が早かったが、本発明の滑走面材にワクシングしたワックスは、常温以下にて上述の混合体状態で固まることにより、従来に比較して数倍の耐剥離性を得られることが確認された。つまり、耐摩耗性も大きく向上させることができた。
【0041】
以上のように、本発明による滑走面材は、撥水性および耐摩耗性とともに、すぐれた滑り特性を得ることができるため、たとえば1/100秒といった瞬差を競うプロの大会や温度変化の大きいスキー場において大きな効果を発揮することができる。
【0042】
このように、本発明では、ガリウム粒子や炭素粒子、フッ素樹脂、窒化ホウ素粒子、フラーレン粒子、窒化チタン粒子の滑性が十分に活かされて驚異的な効果が得られるのであるが、この効果はもちろん、各添加材がそれぞれ単独で奏し得るものではなく、その複数の添加材の組み合わせによりはじめて得られるものである。以下、その組み合わせの好適例について説明する。
【0043】
ガリウム粒子は、その粒径(平均粒径)が150ミクロン以下、さらに好ましくは50ミクロン以下のものが、上記合成樹脂とのなじみがよい。混合比率は、合成樹脂100質量%に対してガリウム粒子0.01〜30質量%が適当であり、さらに好ましくは0.05〜10質量%とする。
【0044】
炭素粒子は、その粒径がガリウム粒子と同様に150ミクロン以下、さらに好ましくは50ミクロン以下のものが合成樹脂とのなじみがよい。混合比率は合成樹脂100質量%に対して、0.01〜20質量%が適当であり、さらに好ましくは0.5〜10質量%とする。
【0045】
フッ素樹脂は、その粒径が200ミクロン以下、さらに好ましくは70ミクロン以下のものが合成樹脂とのなじみがよい。
【0046】
窒化ホウ素粒子は、その粒径が50ミクロン以下、さらに好ましくは10ミクロン以下のものが合成樹脂とのなじみがよい。
【0047】
フラーレン粒子は、その粒径が50ミクロン以下、さらに好ましくは10ミクロン以下のものが合成樹脂とのなじみがよい。
【0048】
窒化チタン粒子は、その粒径が50ミクロン以下、さらに好ましくは10ミクロン以下のものが合成樹脂とのなじみがよい。
【0049】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
ベース素材である合成樹脂として高分子ポリエチレン(分子量800万〜1000万)を用い、この合成樹脂100質量%に対して、平均粒径20ミクロンのガリウム粒子0.05質量%、平均粒径5ミクロンの炭素粒子3質量%、平均粒径10〜20ミクロンのフッ素樹脂1質量%を混入し、加熱器具を用いて溶解した。これを通常の攪拌機によって良
く混合した後、シンタード製法で、幅32cm、長さ2m、厚さ1.2mmのシート状のスキー、スノーボード用の滑走面材を作った。
【0051】
(実施例2)
合成樹脂として高分子ポリエチレン(分子量800万〜1000万)を用い、この合成樹脂100質量%に対して、平均粒径20ミクロンのガリウム粒子0.05質量%、平均粒径5ミクロンの炭素粒子3質量%、平均粒径10〜20ミクロンのフッ素樹脂1質量%、窒化ホウ素粒子0.2質量%を混入し、加熱器具を用いて溶解した。これを通常の攪拌機によって良く混合した後、シンタード製法で、幅32cm、長さ2m、厚さ1.2mmのシート状のスキー、スノーボード用の滑走面材を作った。
【0052】
(実施例3)
合成樹脂として高分子ポリエチレン(分子量800万〜1000万)を用い、この合成樹脂100質量%に対して、平均粒径20ミクロンのガリウム粒子0.05質量%、平均粒径5ミクロンの炭素粒子3質量%、平均粒径10〜20ミクロンのフッ素樹脂1質量%、平均粒径1〜2ミクロンのフラーレン粒子0.2質量%を混入し、加熱器具を用いて溶解した。これを通常の攪拌機によって良く混入した後、シンタード製法で、幅32cm、長さ2m、厚さ1.2mmのシート状のスキー、スノーボード用の滑走面材を作った。
【0053】
(実施例4)
合成樹脂として高分子ポリエチレン(分子量800万〜1000万)を用い、この合成樹脂100質量%に対して、平均粒径20ミクロンのガリウム粒子0.05質量%、平均粒径5ミクロンの炭素粒子3質量%、平均粒径10〜20ミクロンのフッ素樹脂1質量%、平均粒径1.5ミクロンの窒化チタン粒子0.2質量%を混入し、加熱器具を用いて溶解した。これを通常の攪拌機によって良く混合した後、シンタード製法で、幅32cm、長さ2m、厚さ1.2mmのシート状のスキー、スノーボード用の滑走面材を作った。
【0054】
(比較例1)
合成樹脂として高分子ポリエチレン(分子量800万〜1000万)を用い、この合成樹脂100質量%に対して、平均粒径20ミクロンのガリウム粒子0.05質量%、平均粒径5ミクロンの炭素粒子3質量%を混入し、加熱器具を用いて溶解した。これを通常の攪拌機によって良く混合した後、シンタード製法で、幅32cm、長さ2m、厚さ1.2mmのシート状のスキー、スノーボード用の滑走面材を作った。
【0055】
(性能評価)
実施例1〜実施例4、比較例1で得たスキー、スノーボード用滑走面材を、日本製のクロスカントリー用スキー板に接着剤を用いて貼り付けた。そして、国内のスキー場の斜面にて滑走性評価を実施した。
【0056】
図1は、その性能評価を行うために使用したスキー場のコース形状を示す。同図において、評価用の滑走コース11は、傾斜15度で長さ距離30mの斜面コース(助走区間)12と傾斜無しの平坦コース(滑走区間)13とからなる。
【0057】
斜面コース12を降りたところ(平坦コース12の基端)とそこから一定距離滑走したところにそれぞれ、滑走速度(通過タイム)を計測するためのセンサー付き計測ポスト21,21を配置した。このセンサー付き計測ポスト21により、所定のラップ区間(40m)を通過する間の滑走速度(時間)を計測するようにした。
【0058】
評価時の気象条件は、気温:+5℃、雪温:0℃、湿度:60%、雪質:湿雪であって、滑走距離は、斜面コース12の30m+平坦コース13の40m=70mとした。
滑走性の評価は、30mの斜面コース12で助走後、平坦コース13上の40mのラッ
プ区間を通過するのに要した滑走時間を計測して行った。
【0059】
まず、それぞれのスキー板にNo.1〜5までの番号を付けて1から順に1回ずつ滑走していく。5まで滑走したら、2回目は、5のスキー板から逆順で1回ずつ滑走していく。この繰り返しでそれぞれのスキー板が4回滑走するようにし、その4回の滑走時間の平均値を求めた。この結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示す評価結果からもあきらかなように、実施例1〜4と比較例1との間には、平均滑走時間に明確な差が生じている。この差は一瞬のスピード差を争う競技では非常に大きな差である。
【0062】
以上、本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能である。たとえば、本発明の滑走面材は、スキーやスノーボード以外のスポーツ用具、あるいはスポーツ用具以外の産業用途(たとえば低温下で使用される可動機構)にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
たとえば一瞬のスピード差を競うスキーやスノーボード等の滑走具において、撥水性および耐摩耗性にすぐれるとともに、従来よりもさらにすぐれた滑り特性を有する滑走面材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の性能評価に使用した滑走コースの概念図である。
【符号の説明】
【0065】
11 評価用の滑走コース
12 斜面コース(助走区間)
13 平坦コース(滑走区間)
21 滑走速度計測用センサー付き計測ポスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース素材である合成樹脂中に、摩擦係数を低くする添加素材として、金属ガリウム粒子またはガリウム合金粒子0.01〜30質量%と、炭素粒子0.01〜20質量%と、を含有するとともに、ハロゲンを含む添加素材を含有することを特徴とする滑走面材。
【請求項2】
前記ハロゲンを含む添加素材としてフッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の滑走面材。
【請求項3】
前記ハロゲンを含む添加素材であるフッ素樹脂の含有量が、0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項2に記載の滑走面材。
【請求項4】
前記摩擦係数を低くする添加素材として、窒化ホウ素粒子、フラーレン粒子、窒化チタン粒子から選択される1種類以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の滑走面材
【請求項5】
前記摩擦係数を低くする添加素材である窒化ホウ素粒子の含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項4に記載の滑走面材。
【請求項6】
前記摩擦係数を低くする添加素材であるフラーレン粒子の含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項4に記載の滑走面材。
【請求項7】
前記摩擦係数を低くする添加素材である窒化チタン粒子の含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項4に記載の滑走面材。
【請求項8】
前記ベース素材である合成樹脂が、分子量10万以上の高分子合成樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の滑走面材。
【請求項9】
前記金属ガリウム粒子またはガリウム合金粒子と、炭素粒子と、の平均粒径が、150ミクロン以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の滑走面材。
【請求項10】
前記フッ素樹脂の平均粒径が、200ミクロン以下であることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載の滑走面材。
【請求項11】
前記前記摩擦係数を低くする添加素材である窒化ホウ素粒子、フラーレン粒子、窒化チタン粒子の平均粒径が、50ミクロン以下であることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の滑走面材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−77932(P2009−77932A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249564(P2007−249564)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(504037885)ドウワガリウムワックス販売株式会社 (4)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)