説明

漏れ防止カバー

【課題】内容物を封入している容器内の過剰圧力のために容器が破損したときに、容器から噴出した内容物やその分解物のガスや粉塵や液滴やミスト、又は容器の破片を、膨張するゴムキャップ内へ留めて封じ込め、外部へ遺漏するのを防止でき、簡便に効率良く製造できる簡易な構造で安価な汎用の漏れ防止カバーを提供する。
【解決手段】漏れ防止カバー1は、気化性あるいは液化性の内容物を封入し、内容物が過剰内圧で噴出する容器15を、その噴出部16が内部に入るようにゴムキャップ13で被覆した漏れ防止カバーであって、
該ゴムキャップ13に覆われた該容器15を取り囲む一線の周囲19が、連続して加締められて封鎖されていることにより、
該容器15外へ噴出する気化あるいは液化した該内容物、及び/又は飛散する該容器15等の破片が、膨張する該ゴムキャップ13内に留まるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ、電球、ガスボンベ、電池、ビン等に用いられる容器の破損や破裂の際に、その中に封入された内容物がガスや粉塵やミストや液滴となって噴出したり容器の破片が飛散したりして、外界へ遺漏してしまうのを防止する漏れ防止カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
起動時に大電流が必要な電気回路に、コンデンサが用いられる。例えばアルミニウム電解コンデンサは、陽極アルミニウム箔と陰極アルミニウム箔との間に電解紙を挟みこんだ積層体を巻き取ったコンデンサ部材が、有機質や無機質の電解液に含浸されて、ゴム栓で密封されて金属容器に封入されたものである。このような密封をするのに例えば、特許文献1にはゴムと金属とを接着するプライマーが記載されている。
【0003】
また、その電解液の代わりに導電性高分子を用いたプラスチックフィルムコンデンサや、オイルコンデンサも知られている。
【0004】
これらのコンデンサは何れも、液密状態の液体含浸コンデンサであり、固体からなるセラミックコンデンサよりも安価であるから、様々な電化製品例えば蛍光灯の回路素子として、汎用されている。これらのコンデンサは、長期間の使用により劣化し、終には短絡してスパークを起こしてしまう。スパークにより電解液の有機質やプラスチックフィルムのような有機物が分解したり電解液やコンデンサオイルのような媒体が気化したりして、ガス化すると、容器内圧が上昇してしまう。ガスによる過剰圧力に容器が耐えられなくなると、コンデンサの容器に設けえられた脆弱部からガスが外界へ噴出する。
【0005】
このようなガスが容器から遺漏してしまうと、噴出の勢いで広範囲に煙霧状となって拡散するうえ、異臭、粉塵や破片の飛散を伴う。
【0006】
そのためコンデンサを覆って、完全に遺漏を防止でき簡便に作製できる漏れ防止カバーが望まれている。また、コンデンサのみならず、電球、ガスボンベ、電池、ビンのように破損や過剰圧力等で内容物がガスや粉塵やミストや液滴となって噴出したりする容器にも装着可能で、汎用性の漏れ防止カバーが、望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−139917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、内容物を封入している容器内の過剰圧力または外力により容器が破損したときに、容器から噴出した内容物やその分解物のガスや粉塵や液滴やミスト、又は容器の破片を、膨張するゴムキャップ内へ留めて封じ込め、外部へ遺漏するのを防止でき、簡便に効率良く製造できる簡易な構造で安価な汎用の漏れ防止カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の漏れ防止カバーは、気化性あるいは液化性の内容物を封入し、内容物が過剰内圧で噴出する容器を、その噴出部が内部に入るようにゴムキャップで被覆した漏れ防止カバーであって、
該ゴムキャップに覆われた該容器を取り囲む一線の周囲が、連続して加締められて封鎖されていることにより、
該容器外へ噴出する気化あるいは液化した該内容物、及び/又は飛散する該容器等の破片が、膨張する該ゴムキャップ内に留まるものである。
【0010】
請求項2に記載の漏れ防止カバーは、請求項1に記載されたもので、該噴出部が、脆弱になっていることによって該過剰内圧で破裂することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の漏れ防止カバーは、請求項1又は2に記載されたもので、前記の連続した加締めが、該容器の外周に連続して設けられた溝部に構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の漏れ防止カバーは、請求項1〜3の何れかに記載されたもので、前記の連続した加締めが、該容器の末端外周溝部に構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の漏れ防止カバーは、請求項1〜4の何れかに記載されたもので、前記の連続した加締めが、該容器を覆う該ゴムキャップを取り囲む金属スリーブを連続した一線で押圧した構造であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の漏れ防止カバーは、請求項1〜4の何れかに記載されたもので、前記の連続した加締めが、該容器を覆う該ゴムキャップを取り囲む熱収縮プラスチックスリーブ加熱収縮させた構造であることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の漏れ防止カバーは、請求項1に記載されたもので、該ゴムキャップが、ポリジメチルシリコーン、ポリジフェニルシリコーン、又はブチルゴムで形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の漏れ防止カバーは、請求項1に記載されたもので、コンデンサ、電球、ガスボンベ、電池、又はビンを封入してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の漏れ防止カバーは、内容物を密封している容器内の過剰圧力のために容器が破損したときに、内容物やその分解物のガスや粉塵や液滴やミスト、又は容器の破片が外界へ遺漏してしまうのを、ゴムキャップの膨張によってそこに留めて封じ込めることができるというものである。
【0018】
この漏れ防止カバーは、ゴムキャップの開口部位近傍が、容器の外周で連続して途切れなく強固に加締められて一体化したものであるので、過剰圧力による破損や衝撃でも外れず、確実にガス等の遺漏を防止することができる。
【0019】
この漏れ防止カバーは、ゴムキャップの開口部位の外側を開口端に沿って、取り囲む金属スリーブや熱収縮プラスチックスリーブで、ゴムキャップを容器へ脱離不能に加締めた簡易な構造であるから、針金を幾重にも巻き付けて締め付けたりゴム製Oリングを一旦拡げて装着したりするような面倒な工程を経ることなく、また単なる接着による接合不安定性や接着時間がかかることによる歩留まり低下というデメリットがなく、自動化機械による自動製造工程を経て、効率良く簡便に安価で製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する漏れ防止カバーの一例を示す断面図である。
【図2】本発明を適用する漏れ防止カバーの別な例を示す一部断面図である。
【図3】本発明を適用する漏れ防止カバーの別な例を示す一部断面図である。
【図4】本発明を適用する漏れ防止カバーの製造途中を示す概要図である。
【図5】本発明を適用する漏れ防止カバーの別な製造途中を示す概要図である。
【図6】本発明を適用する漏れ防止カバーの別な製造途中を示す概要図である。
【図7】本発明を適用する漏れ防止カバーの製造途中であってゴムキャップと金属スリーブとの形状の例を示す一部断面図である。
【図8】本発明を適用する漏れ防止カバーの別な製造途中を示す概要図である。
【発明の開示】
【発明を実施するための好ましい形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の好ましい形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明の漏れ防止カバーの一態様を、図1を参照しながら説明する。この漏れ防止カバー1は、アルミニウム電解コンデンサ2の金属製容器15に被せられる。
【0023】
アルミニウム電解コンデンサ2は、内容物を収容して封入している金属製円筒状容器15を有している。容器15内には、陽極アルミニウム箔18a、電解紙18b、陰極アルミニウム箔18c、電解紙18dを積層しつつ巻き取ったコンデンサ用部材18が、電解液17に浸漬されて、収容されている。容器15は、封口ゴム20で開口が封鎖されていることにより、これら内容物17・18を密封している。封口ゴム20は、容器15の側面外周に形成された溝部19で締め付けられて、抜け落ち不能に、固定されている。コンデンサ用部材18の陽極アルミニウム箔18aから陽極端子21と陰極アルミニウム箔18cから陰極端子22とが夫々、封口ゴム20を経て導出されている。一方、封口ゴム20に対峙している容器15の平坦部に、周辺よりも薄くなっており開放弁として動作する脆弱な噴出部16が、設けられている。容器15の側面が、コンデンサの規格、型番、容量、耐電圧などの情報を表示したシュリンクパッケージチューブ14で覆われている。
【0024】
容器15の径よりも僅かに大きい径を有している透明又は半透明のシリコーンゴムキャップ13が、噴出部16ごとシュリンクパッケージチューブ14及び容器15を覆っている。シリコーンゴムキャップ13を通して、シュリンクパッケージチューブ14に印字されたコンデンサ2の規格、型番、容量、耐電圧などの情報が、透けて見えている。シリコーンゴムキャップ13の根元側の開口から、陽極端子21と陰極端子22とが、延びて突き出している。シリコーンゴムキャップ13の根元である開口部の外周面の外側を、金属スリーブ11が取り囲んでいる。金属スリーブ11の外周が、容器15の周囲を取り囲む不連続な一線の溝部19に沿って、加締められていることによって、金属スリーブ11の外周に形成された窪み12が形成され、容器15の溝部19の全線に不連続に丁度嵌まり合っている。これによって、シリコーンゴムキャップ13が、容器15へ脱離不能に、加締められて一体化して固定され、容器15を封止している。ゴムキャップ13は金属スリーブ11と容器15との間の封止パッキンとしても作用する。
【0025】
この漏れ防止カバー1は、以下のように動作する。
【0026】
コンデンサ2が長期間使用されて劣化すると、容器15内で、陽極アルミニウム箔18aと陰極アルミニウム箔18cとが短絡したり陽極端子21と陰極端子22とが短絡したりして、スパークを起こす。すると、その電力や発熱によって、電解液17中の有機塩のような有機質が分解したり、電解液17が激しく気化したりして、ガスが発生する。ガスが大量に発生すると、密封された容器15内の圧力が急激に上昇する。その過剰圧力が開放弁16の作動圧を超えると、開放弁16が破裂し、ガスが容器15外へ噴出して開放される。シリコーンゴムは極めて伸び性に優れ破断し難い材質であるので、シリコーンゴムキャップ13は、ガスの噴出によって二点破線のように膨張して、コンデンサ2の容積の数倍〜数百倍もの体積である噴出ガスや、開放弁16の破裂破片を、一時的に留める。
【0027】
スパークが治まり、ガスが冷却されると、膨張したシリコーンゴムキャップ13は、次第に萎む。噴出したガスやそれが凝結した液体は、シリコーンゴムキャップ13の内部に閉じ込められたまま、外界から隔離されており、遺漏が防止されている。
【0028】
このようなコンデンサ2は、もはや再生不能であるから、新品に交換される。
【0029】
また、図2(a)に示すように別な態様の漏れ防止カバー1は、金属スリーブ11が、容器15の電極端子21・22側にある外周端部で、内方向へ連続して加締められて曲げられ、折込23となって、容器15へ脱離不能に、シリコーンゴムキャップ13を一体化して固定しているものである。これにより、容器15は封止されている。同図(b)に示すように、漏れ防止カバー1は、金属スリーブ11の外周が容器15の外周の溝部19に沿って窪み12で加締められつつ、容器15の電極端子21・22側の外周端部で内方向へ曲げられた折込23で加締められることによって、脱離不能に容器15を封止していてもよい。連続した加締めが、容器の末端外周溝部に構成されていてもよい。
【0030】
漏れ防止カバー1のゴムキャップ13の材質として、シリコーンゴムの例を示したが、弱い応力で自在に伸張可能な高伸張性のゴムであれば、特に限定されない。特に、ポリジメチルシリコーンゴムやポリジフェニルシリコーンゴムのようなシリコーンゴムであることが好ましい。耐熱性、耐光性などの耐久性に優れ黄変し難く安価なポリジメチルシリコーンであると、一層好ましい。
【0031】
このようなシリコーンゴムは、より具体的には、KE530B−2−Uに架橋剤C−17(信越化学工業株式会社製;商品名)を添加したシリコーンゴム原料;一般成形用のKE953−U、高強度用のKE555−U、難燃用のKE5601−U(何れも信越化学工業株式会社製;商品名);ELASTOSIL R plus 4000/50(引裂強さ50N/mm、伸び1000%)(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製;商品名)のように、優れた強度と伸びを有したシリコーンゴム素材を、用途に合わせて適宜選択して用いることができる。
【0032】
シリコーンゴムキャップ13は、電気部品に装着されるものであるから、電気接点障害やくもりの原因となるものでシリコーンゴム中に含有される低分子シロキサンD4〜D10を、予め300ppm未満にまで除去したシリコーンゴムで形成されていると、なお一層好ましい。具体的には、市販の低分子シロキサン低減グレードのシリコーンゴム原料を用いたり、低分子シロキサン除去処理として、加熱オーブン処理(例えば200℃で4時間加熱処理)、真空加熱処理(例えば真空下200℃で2時間加熱)、超音波溶媒抽出などの手段を施して低分子シロキサン除去したシリコーンゴム原料や成形品を用いたりすることができる。シリコーンゴム原料から低分子シロキサンを除去できるが、成形品から低分子シロキサンを除去する方が、より低レベルにまで除去できるので、好ましい。
【0033】
また、シリコーンゴム素材以外にもゴム弾性を有する素材であれば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴムなど適宜選択できる。これらの中でも、耐熱性、耐寒性、電気特性、化学的安定性などに優れているシリコーンゴムが望ましい。
【0034】
ゴムキャップ13の厚さは、0.1〜3.0mmであることが好ましい。この範囲よりも薄いと、コンデンサ等の内容物が破裂してそこからガスが噴出したときに裂けてしまうことがあり、一方この範囲よりも厚いとゴムの伸びに対する力が必要になり、破裂時の応力を十分に吸収できなくなってしまう。0.2〜0.5mmであると一層好ましい。
【0035】
ゴムキャップ13の径は、容器15及び必要に応じて設けられるシュリンクパッケージチューブ14で成す径と、同径であってもよく、僅かに大きくてもよく、僅かに小さくてもよいが、0.1mm程度大きいとコンデンサ2自体をゴムキャップ13に挿入し易いので特に好ましい。
【0036】
図3(a)又は(b)に示すように漏れ防止カバー1は、ゴムキャップ13が釣鐘状又は円筒状となるものであってもよい。
【0037】
容器15が、アルミニウム電解コンデンサのケースである例を示したが、プラスチックフィルムコンデンサ、オイルコンデンサ、ガス封入コンデンサのような液密状態の液体や気体が封入されたコンデンサのケースであってもよく、白熱電球、アーク灯、グローランプ、水銀蒸気ランプ、蛍光灯のような電球であって脆弱な噴出部を兼ねるガラス球であってもよく、水素、酸素、フロンガス等のガスボンベ、燃料電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池のように過剰圧力で破損や破裂してしまう恐れのある二次電池の電解槽、試薬入りガラス容器のようなビンであってもよい。
【0038】
図1に示す漏れ防止カバー1は、例えば以下のようにして製造される。
【0039】
先ず、シリコーンゴム原材料で金型成形した後、加熱して加硫させ、図4や図5のようなカップ状のシリコーンゴムキャップ13を得る。シリコーンゴムキャップ13を、アルミニウムのように比較的柔らかい金属で形成された円筒状の金属スリーブの中空へ、挿入する。
【0040】
具体的には、図4に示すように、下金型10bの開口部に内径が同じになるように金属スリーブ11が設置できる同心円の凹部を設け、そこに金属スリーブ11を入れ、次にした下金型10bの底部に所定量計量したゴム原料30を投入する。ゴムキャップ13の厚さを考慮し下金型10bの内径よりも小さい外径の上金型10aで加熱プレスすることにより、下金型10bの底部に投入されたゴム原料30が、金属スリーブ11内径面まで拡がって押し上げられて、ゴムキャップ13が成形される。これを加硫することにより、金属スリーブ11とゴムキャップ13とが一体化した遺漏防止カバー1ができ上がる。このとき、シリコーンゴムキャップ13の外周壁13aと金属スリーブ11の内壁11aとが、その接触面で、架橋性化合物を介して、共有結合、水素結合、分子間相互作用のように化学的に結合されている。それにより、柔軟なシリコーンゴムキャップ13の所定の形状を維持できるので、コンデンサ2が挿入され易くなっている。
【0041】
図4には、一つのゴムキャップ13を作製する場合の一例を示してあるが、シート状にして複数列並んだ多数個のゴムキャップ13を一挙に作製するものであってもよい。
【0042】
次に、外周に溝部19を有している市販のコンデンサ2を、その溝部19が金属スリーブ11で覆い隠れるようになるまで、漏れ防止カバー1に挿入する。
【0043】
次いで、図6のように、コンデンサ2を金属スリーブ11とシリコーンゴムキャップ13ごと回転させながら、容器15の外周の溝部19に沿いつつそこに金属スリーブ11の外周の窪み12が嵌まり合うように、コンデンサ2と平行して回転するローラー31のより金属スリーブ11の外周を、連続した一線で押圧して加締めて、窪み12を形成する(図2(b)参照)。一つずつ作製する例を図示してあるが、複数個を連続して作製してもよい。
【0044】
同時に、コンデンサ2を金属スリーブ11とシリコーンゴムキャップ13ごと回転させながら、コンデンサ2と直交して回転するローラー32の押圧により、金属スリーブ11の電極端子21・22側の外周端部が内方向へ加締められてシリコーンゴムキャップ13を連続的に巻き込んで曲げられて封鎖し、折込23を形成する。すると、シリコーンゴムキャップ13は容器15へ脱離不能に一体化して固定されて、容器15を封止する。それによって、漏れ防止カバー1が得られる(図2(b)参照)。
【0045】
なお、シリコーンゴムキャップ13の外周壁13aと金属スリーブ11の内壁11aとが、接触面の少なくとも何れか一方、好ましくは金属スリーブ11の内壁11aで、プライマー処理、カップリング処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、フレーム処理、イトロ処理、大気圧プラズマ処理、及び/又はビニルメトキシシロキサン(VMS)のような架橋性化合物を介して化学的に結合させるVMS処理が、施されていることが好ましい。また、シリコーンゴムキャップ13を予め成形し、後からシリコーン系接着剤を用いて金属スリーブ11と接着させてもよい。
【0046】
より具体的には、例えば、アルミニウム製スリーブ11の内壁を、大気雰囲気下でコロナ放電処理し、表面酸化して表面に水酸基を生じさせる。それをビニルメトキシシロキサン溶液に浸漬させる。そこにビニル基やヒドロシリル基を含有するシリコーンゴムと積層させて、加熱すると、架橋して、化学結合を生じる。
【0047】
架橋性化合物を用いる代わりに、接着剤を用いてもよい。
【0048】
ゴムキャップ13の内壁が、梨地加工処理若しくはブラスト加工処理され、挿入軸方向と平行な凸条に形成処理され、鮫肌状、鳥肌状若しくはドット状突起となる表面形成処理され、又は潤滑剤塗布処理されて、コンデンサ2を挿入し易いように、表面加工されていることが好ましい。潤滑剤は、例えば水やアルコールのような溶媒であってもよく、機械油、油脂、グリース、シリコーン油のような潤滑油であってもよい。
【0049】
図7(a)に示すように、ゴムキャップ13の内壁が、容器15の外周の溝部19(図1参照)に連続して切れ目なく嵌まり合うOリング状の突起24を有していてもよい。その突起24が、ゴムキャップよりも硬質のゴムで形成されていると変形し難いので、ゴムキャップ13が容器15の外周の溝部19から一層外れ難くなり、より好ましい。
【0050】
図7(b)に示すように、金属スリーブ11の内壁が、先細りのテーパー11aを有していると、コンデンサ2を挿入し易くなるので、より好ましい。
【0051】
図7(c)に示すように、ゴムキャップ13の根元側の開口の周囲に鍔25が設けられていると、金属スリーブ11を固定し易いので、より好ましい。
【0052】
ゴムキャップ13が透明又は半透明であると、その内部に収まっているシュリンクパッケージチューブ14上のコンデンサ2の情報が透視できるので好ましい。
【0053】
また、シュリンクパッケージチューブ14を省き、シュリンクパッケージチューブ14に印刷すべきコンデンサ2の規格、型番、容量、耐電圧などの情報をゴムキャップ13にシリコーンオイル含有インキのような適当なインキでインクジェット方式などで直接、印刷すると、金属容器15とシュリンクチューブとの間の漏れが防止でき、また生産効率が良いため、好ましい。この場合のゴムキャップは不透明若しくは半透明、又はそれとともに着色されていることが好ましい。
【0054】
容器15を覆うゴムキャップ13を取り囲む金属スリーブ11で、連続した一線に押圧して加締める例を示したが、金属スリーブ11に代えて、容器15を覆うゴムキャップ13を取り囲む熱収縮プラスチックスリーブで、加熱収縮させて連続した一線に押圧して加締めてもよい。
【0055】
また、図8のように、金属スリーブ11の1箇所以上を締めあげて、その周長を短くするように加締めてもよい。具体的には、コンデンサ2の溝19の巾より狭い板バンド状の金属スリーブ11に、ペンチ等で把持できる加締め用把持部11bを設け、ペンチ等で把持した後、コンデンサ2又はペンチを回転させ金属スリーブ11の周長を短くすることにより、溝19の窪みに板バンド状の金属スリーブ押し付けることによって加締めてもよい。一つずつ作製する例を図示してあるが、複数個を連続して作製してもよい。
【0056】
手作業で加締めてもよいが、自動化加締機により連続して加締めてもよい。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明を適用する漏れ防止カバーの試作例を実施例1に示し、本発明を適用外の漏れ防止カバーの試作例1を比較例に示す。
【0058】
(実施例1)
図4に示すように、表面処理剤であるプライマーNo.4(信越化学工業株式会社製;商品名)を用いて予め表面処理を行った管状のアルミニウム製スリーブ11を、ゴムキャップ成形用の下金型10bに必要数セットした。KE530B−2−Uに架橋剤C−17(信越化学工業株式会社製;商品名)を0.6部添加したシリコーンゴム原料30を、下金型10bの底部に仕込み、上金型10aで押圧しながら、160℃で10分間加熱圧縮成形を行なって同時に架橋反応させ、シート状に5×5の配列で連結した25個で厚さ0.5mmのシリコーンゴムキャップ13を成形した。その架橋反応の際に、アルミニウム製スリーブ11とゴムキャップ13のシリコーンゴムとは、架橋接着し、シリコーンゴムキャップ13とアルミニウム製スリーブ11が一体になった成形品を得ることが出来た。
【0059】
このシリコーンゴム原料は、JIS K6249に準拠して物性を評価したところ、引張り強さが9.8MPa、切断時伸びが880%、引裂き強さが28kN/mであった。
【0060】
図1に示すように、アルミニウム電解コンデンサ2を覆うシリコーンゴムキャップ13が、その根元で金属スリーブ11で取り囲まれ容器13へ脱離不能に加締めた漏れ防止カバーを作製した。そのコンデンサ2の陽極端子21と陰極端子22とを本来の正負と逆に印加し強制的に劣化させたところ、コンデンサ2が破損し、その内部で短絡し、開放弁16が破れ、そこからガスが噴出し、シリコーンゴムキャップ13が膨張した。暫くすると、短絡が治まり、シリコーンゴムキャップ13が萎んだが、ガスは外部に全く遺漏せず、ガスの飛散を防止することができた。
【0061】
(比較例1)
金属スリーブ11を用いず、シリコーンゴムキャップ13が加締められていないこと以外は、実施例1と同様にして、漏れ防止カバーを作製した。実施例1と同様にして、コンデンサ2を本来の正負と逆に印加したところ、コンデンサ2が破損し、その内部で短絡し、開放弁16からガスが噴出し、シリコーンゴムキャップが膨張し始めたが、直ぐにすっぽ抜けて、ガスが遺漏した。
【0062】
(比較例2)
金属スリーブ11を用いず、シリコーンゴムキャップ13の開口部近傍の内壁とコンデンサ2の容器15の電極端子21・22側にある外周端部とを接着剤で接着したこと以外は、実施例1と同様にして、漏れ防止カバーを作製した。このとき、接着剤のせいでシリコーンゴムキャップ13へコンデンサ2を挿入し難く、しかも接着剤が硬化し完全に接着し難いため、それらの作業に時間がかかり、効率が悪かった。実施例1と同様にして、コンデンサ2を本来の正負と逆に印加したところ、コンデンサ2が破損し、その内部で短絡し、開放弁16からガスが噴出し、シリコーンゴムキャップが膨張し始めたが、すっぽ抜けてガスが遺漏する割合が高く、不良率が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の漏れ防止カバーは、コンデンサ、電球、ガスボンベ、電池、ビンのように過剰内圧で内容物が噴出するような容器に被せて、その内容物や分解物のガスや粉塵や液滴やミスト、又は容器の破片が外界へ遺漏してしまうのを防止するのに、用いられる。
【符号の説明】
【0064】
1は漏れ防止カバー、2はコンデンサ、10aは上金型、10bは下金型、11は金属スリーブ、11aは金属スリーブの内壁、11bは加締め用把持部、12は窪み、13はゴムキャップ、13aはゴムキャップの外周壁、14はシュリンクパッケージチューブ、15は容器、16は噴出部、17は電解液、18はコンデンサ用部材、18aは陽極アルミニウム箔、18bは電解紙、18cは陰極アルミニウム箔、18dは電解紙、19は溝部、20は封口ゴム、21は陽極端子、22は陰極端子、23は折込、24は突起、25は鍔、30はゴム原料、31・32はローラーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化性あるいは液化性の内容物を封入し、内容物が過剰内圧で噴出する容器を、その噴出部が内部に入るようにゴムキャップで被覆した漏れ防止カバーであって、
該ゴムキャップに覆われた該容器を取り囲む一線の周囲が、連続して加締められて封鎖されていることにより、
該容器外へ噴出する気化あるいは液化した該内容物、及び/又は飛散する該容器等の破片が、膨張する該ゴムキャップ内に留まる漏れ防止カバー。
【請求項2】
該噴出部が、脆弱になっていることによって該過剰内圧で破裂することを特徴とする請求項1に記載の漏れ防止カバー。
【請求項3】
前記の連続した加締めが、該容器の外周に連続して設けられた溝部に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の漏れ防止カバー。
【請求項4】
前記の連続した加締めが、該容器の末端外周溝部に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の漏れ防止カバー。
【請求項5】
前記の連続した加締めが、該容器を覆う該ゴムキャップを取り囲む金属スリーブを連続した一線で押圧した構造であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の漏れ防止カバー。
【請求項6】
前記の連続した加締めが、該容器を覆う該ゴムキャップを取り囲む熱収縮プラスチックスリーブで加熱収縮させた構造であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の漏れ防止カバー。
【請求項7】
該ゴムキャップが、ポリジメチルシリコーン、ポリジフェニルシリコーン、又はブチルゴムで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の漏れ防止カバー。
【請求項8】
コンデンサ、電球、ガスボンベ、電池、又はビンを封入してあることを特徴とする請求項1に記載の漏れ防止カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−159081(P2010−159081A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3673(P2009−3673)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】