説明

潤滑剤供給装置

【課題】固形添加剤を含有する潤滑剤を供給可能な潤滑剤供給装置を提供する。
【解決手段】固形添加剤を含有する潤滑剤を貯留した潤滑剤タンクと、作動流体を貯留すると共にフィルタを配設した作動流体タンクと、潤滑剤を吐出するノズル5と、内部にピストン29を前進後退可能に挿入したシリンダ28を備え、シリンダ28内に、ノズル5及び潤滑剤タンクに個別に連通した潤滑剤充填空間30と、作動流体タンクに連通した作動流体充填空間31を、ピストン29を挟んで互いに対向して形成し、作動流体充填空間31へ作動流体を供給するポンプと、ピストン29を作動流体充填空間31側へ付勢する付勢手段33と、潤滑剤充填空間30から潤滑剤タンク側へ潤滑剤が逆流するのを阻止する第一逆止弁34と、ノズル5から潤滑剤充填空間30側へ潤滑剤が逆流するのを阻止する第二逆止弁35とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置等に用いられるチェーンに潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置に関し、特に、固形添加剤を含有する潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送装置等に用いられるチェーンを円滑に走行させるために、走行中のチェーンに潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
従来の潤滑剤供給装置は、例えば、図9に示すように、潤滑剤を貯留した潤滑剤タンク100と、この潤滑剤タンク100から潤滑剤を汲み上げるポンプ101と、ポンプ101を駆動させるモータ102と、潤滑剤中の異物を捕集するフィルタ103と、潤滑剤を吐出するノズル104等を備えている。そして、モータ102を回転させポンプ101を駆動させることで、タンク100からフィルタ103を通して潤滑剤を汲み上げ、汲み上げた潤滑剤をノズル104からチェーンCへ供給していた。
【0004】
また、加熱加工装置などの高温環境下で使用されるチェーンに供給される潤滑剤は、耐熱性を有することが求められる。そして、耐熱性を有する潤滑剤として、合成油に黒鉛及び窒化硼素の固形添加剤を混入させたものがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−168911号公報
【特許文献2】特開2002−88383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記耐熱性の潤滑剤を、図9の供給装置を使ってチェーンへ供給しようとすると、潤滑剤に含まれる固形添加剤がタンク内に内装したフィルタを通過できず、すぐに目詰まりを起こす。このため、従来の供給装置では、固形添加剤を含有する潤滑剤を供給することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、固形添加剤を含有する潤滑剤を供給可能な潤滑剤供給装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、固形添加剤を含有する潤滑剤を貯留した潤滑剤タンクと、作動流体を貯留すると共に当該作動流体中の異物を捕集するフィルタを配設した作動流体タンクと、走行するチェーンに向けて前記潤滑剤を吐出するノズルと、内部にピストンを前進後退可能に挿入したシリンダを備え、前記シリンダ内に、前記ノズル及び前記潤滑剤タンクに個別に連通した潤滑剤充填空間と、前記作動流体タンクに連通した作動流体充填空間を、前記ピストンを挟んで互いに対向して形成し、前記作動流体充填空間へ作動流体を供給するポンプと、前記ピストンを前記作動流体充填空間側へ付勢する付勢手段と、前記潤滑剤充填空間から前記潤滑剤タンク側へ潤滑剤が逆流するのを阻止する第一逆止弁と、前記ノズルから前記潤滑剤充填空間側へ潤滑剤が逆流するのを阻止する第二逆止弁とを設けた潤滑剤供給装置である。
【0008】
ポンプによって作動流体タンクから作動流体を汲み上げ、その作動流体をシリンダ内の作動流体充填空間へ充填していくと、ピストンが前進する。このピストンの前進動作によって、潤滑剤充填空間内の潤滑剤が押し出され、ノズルから所定量の潤滑剤が走行中のチェーンへ供給される。その後、付勢手段によって、ピストンが作動流体充填空間側へ付勢されて後退すると、潤滑剤タンクから潤滑剤が潤滑剤充填空間内へ吸引され充填される。このように、本発明は、潤滑剤をフィルタを通さずに供給することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の潤滑剤供給装置において、前記潤滑剤タンク内に攪拌部材を配設したものである。
【0010】
攪拌部材で潤滑剤タンク内の潤滑剤を攪拌することで、固形添加剤の沈殿を防止することができる。これにより、チェーンへ供給される潤滑剤の成分を均一にすることが可能となる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の潤滑剤供給装置において、前記ポンプと前記作動油充填空間との間に電磁切換弁を配設すると共に、前記チェーンのリンク結合部に前記ノズルから潤滑剤を間欠的に供給するように前記電磁切換弁の開閉を制御する制御装置を備えたものである。
【0012】
これにより、チェーンのリンク結合部の潤滑を効率良く確実に行うことができ、潤滑剤の消費量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の潤滑剤供給装置によれば、固形添加剤を含有する潤滑剤をポンプで直接汲み上げずにチェーンに供給することができる。これにより、固形添加剤によるフィルタの目詰まりを防止することができる。
【0014】
また、潤滑剤を汲み上げるために使用していた従来のポンプを、ピストンの作動流体供給用ポンプとして利用することができ、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係る潤滑剤供給装置の正面図、図2は図1の潤滑剤供給装置を右側から見た側面図である。また、図3は前記供給装置の全体構成を示す。以下、図1から図3を参照して本発明の潤滑剤供給装置の基本的構成を説明する。
【0016】
本発明の潤滑剤供給装置は、図3に示すように、潤滑剤としての潤滑油1を貯留した潤滑油タンク2(潤滑剤タンク)と、作動流体としての作動油3を貯留した作動油タンク4(作動流体タンク)と、潤滑油1を吐出するノズル5と、ノズル5へ潤滑油1を定量供給する定量供給手段6と、定量供給手段6を駆動させる駆動手段7と、駆動手段7等を制御するための制御装置8とを備える。これら、潤滑油タンク2、作動油タンク4、ノズル5、定量供給手段6、駆動手段7、制御装置8は、図示しない載置面に対して直立状に配置される保持板9に、固定具等を介して取り付けられている(図1又は図2参照)。なお、図2において、符号36と符号37は、それぞれ保持板9の下端に固着した支持脚及びオイルパンであり、これら支持脚36とオイルパン37によって保持板9を直立状に支持している。
【0017】
図3において、潤滑油タンク2から定量供給手段6へ潤滑油1を供給するための管路13が、潤滑油タンク2と定量供給手段6との間に配設されている。この潤滑油1は、合成油に固形添加剤を混入させた耐熱性の潤滑油である。潤滑油タンク2内で、潤滑油1の固形添加剤が合成油と分離して沈殿しないように攪拌部材10が設けてある。攪拌部材10は、潤滑油タンク2の上方に配設されたモータ11に接続された支持軸10aと、支持軸10aの下端に固着された羽根部材10bとから成る(図2参照)。この攪拌部材10とモータ11は、潤滑油タンク2の上部に配設した蓋部材12と一体に潤滑油タンク2に対して着脱可能に構成されている。
【0018】
図3に示すように、定量供給手段6を駆動させる駆動手段7は、作動油タンク4内の作動油3を汲み上げるポンプ14と、ポンプ14で汲み上げた作動油3を一時的に貯留するためのアキュームレータ15と、アキュームレータ15の下流側に配設された電磁切換弁16とを有する。作動油タンク4とアキュームレータ15間、アキュームレータ15と電磁切換弁16間、電磁切換弁16と定量供給手段6間は、それぞれ管路17,18,19で連結されている。アキュームレータ15の上流側には、アキュームレータ15から作動油タンク4側へ作動油3が逆流するのを防ぐ逆止弁22が設けてある。また、電磁切換弁16から作動油タンク4内に作動油3を戻すための戻し管路20が、電磁切換弁16と作動油タンク4間に配設されている。
【0019】
上記ポンプ14は、一対の歯車の噛み合いにより流体を送り出すギアポンプであり、これら一対の歯車を回転駆動させるモータ21が作動油タンク4の上部に付設されている。作動油タンク4内には、作動油3中の異物を捕集するためのフィルタ23が配設されている。また、作動油タンク4の上部には、着脱可能な蓋部材24が配設されている。
【0020】
本発明の潤滑剤供給装置は、走行中のチェーンの位置を検知するセンサ25を備えている。このセンサ25でチェーンが所定の位置にあることを検知した場合、その検知信号を制御装置8へ送信可能となっている。制御装置8と電磁切換弁16は電気的に接続されており、センサ25からの信号を受けて制御装置8が電磁切換弁16へ開放指示を出すように構成されている。また、ポンプ14のモータ21も制御装置8と電気的に接続され、制御装置8にはモータ21の駆動・停止を切り替えるスイッチ(図示省略)が配設されている。
【0021】
この実施形態では、図4に示すように、4本のノズル5が並設されており、ノズル5の先端相互間は、チェーンCの外リンクプレートと内リンクプレートをピンで結合したリンク結合部の間隔に対応して配設されている。ただし、ノズル5の本数は4本に限定されず、ノズル5を1本から3本、あるいは5本以上設けてもよい。この場合、4本のノズル5に対応して、定量供給手段6も4つ設けてある。潤滑油タンク2に連結した管路13と、各定量供給手段6は、潤滑油側分岐管路26を介して連結されている。一方、電磁切換弁16に連結した管路19と、各定量供給手段6は、作動油側分岐管路27を介して連結されている。
【0022】
4つの定量供給手段6は、それぞれ同様に構成されている。以下、1つの定量供給手段6を例にその構成について詳しく説明する。
図5に示すように、定量供給手段6は、シリンダ28と、シリンダ28内に前進後退可能に挿入したピストン29を有する。そして、シリンダ28内に、潤滑油1を充填可能な潤滑油充填空間30(潤滑剤充填空間)と、作動油3を充填可能な作動油充填空間31(作動流体充填空間)が、ピストン29を挟んで互いに対向して形成されている。すなわち、潤滑油充填空間30と作動油充填空間31は、ピストン29の前進後退動作によって拡大・縮小する。また、潤滑油充填空間30内には、付勢手段としての圧縮バネ33が配設してあり、この圧縮バネ33によってピストン29は作動油充填空間31側へ付勢されている。
【0023】
シリンダ28の作動油充填空間31は、作動油側分岐管路27と連通している。一方、潤滑油充填空間30は、T字型管路32を介して、潤滑油側分岐管路26及びノズル5に個別に連結されている。T字型管路32の潤滑油側分岐管路26側とノズル5側には、それぞれ潤滑剤充填空間30から潤滑油側分岐管路26側(潤滑剤タンク2側)へ潤滑剤1が逆流するのを阻止する第一逆止弁34と、ノズル5から潤滑剤充填空間30側へ潤滑剤1が逆流するのを阻止する第二逆止弁35が配設されている。
【0024】
以下、本発明の潤滑剤供給装置の作用について説明する。
図3において、制御装置8のスイッチ(図示省略)をONにして、ポンプ14のモータ21を駆動させる。ポンプ14が始動することにより、作動油タンク4内の作動油3がフィルタ23を通して汲み上げられ、アキュームレータ15側へ圧送される。このとき、電磁切換弁16は閉状態となっており、作動油3はアキュームレータ15内に加圧状態で貯留される。また、攪拌部材10のモータ11を駆動させ、潤滑油タンク2内の潤滑油1の攪拌を行う。
【0025】
図6に示すように、初期状態では、ピストン29は、シリンダ28内の圧縮バネ33の付勢力によって、作動油充填空間31側へ押し下げられた状態となっている。このピストン29の押し下げによって拡大した潤滑油充填空間30には潤滑油1が充填されている。
【0026】
そして、図3に示すセンサ25によって、走行中のチェーンが所定の位置にあることを検知すると、センサ25から制御装置8へ信号が送信される。この信号を受けた制御装置8は、電磁切換弁16へ指示を出して電磁切換弁16を開状態とする。電磁切換弁16が開状態となった瞬間、アキュームレータ15に加圧状態で貯留された作動油3が、電磁切換弁16を通って、作動油側分岐管路27へ流入する。
【0027】
図7に示すように、作動油側分岐管路27へ流入した作動油3は、各シリンダ28の作動油充填空間31内に充填され、圧縮バネ33の付勢力に対抗してピストン29を(潤滑油充填空間30側へ)押し上げる。このピストン29の押し上げにより、潤滑油充填空間30内の潤滑油1は押し出され、ノズル5からチェーンのリンク結合部へ供給される。
【0028】
このように、本発明の潤滑剤供給装置は、従来のように潤滑剤をポンプで直接汲み上げないので、固形添加剤を含有する潤滑剤をフィルタを通さずに供給することができる。これにより、フィルタが潤滑剤の固形添加剤によって目詰まりすることを防止することができる。
【0029】
その後、戻り管路20と作動油タンク4との連結部近傍に設けた脱圧バルブ(図示省略)が開放することにより、作動油充填空間31内の圧力(背圧)が開放される。これにより、図8に示すように、圧縮バネ33がピストン29を(作動油充填空間31側へ)押し下げ、作動油充填空間31内の作動油3が流出する。そして、この流出した作動油3の分だけ戻り管路20から作動油タンク4内へ作動油3が戻される。上記ピストン29の押し下げに伴って、潤滑油タンク2から潤滑油充填空間30へ潤滑油1が吸引され充填される。また、電磁切換弁16及び脱圧バルブが閉状態となり、初期状態に戻る。
【0030】
同様に、センサ25の検知に基づいて、ノズル5からチェーンのリンク結合部に潤滑油1が間欠的に供給される。なお、ピストン29は毎回同じストロークで前進後退するので、所定量の潤滑剤をチェーンに供給することが可能である。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、アキュームレータ15、電磁切換弁16を省略し、制御装置8がセンサ25の信号に基づいてポンプ14の駆動・停止を制御するように構成して、作動油3を作動油充填空間31へ間欠的に供給するようにしてもよい。潤滑剤は、固形添加剤を含有するものであれば、耐熱性以外のものも適用可能である。また、作動流体として、油以外に、例えば水等の流体も採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る潤滑剤供給装置の正面図である。
【図2】前記潤滑剤供給装置の側面図である。
【図3】前記潤滑剤供給装置の全体構成図である。
【図4】前記潤滑剤供給装置の要部を示す斜視図である。
【図5】前記潤滑剤供給装置の要部を示す一部破断図である。
【図6】前記潤滑剤供給装置の作用を説明する図である。
【図7】前記潤滑剤供給装置の作用を説明する図である。
【図8】前記潤滑剤供給装置の作用を説明する図である。
【図9】従来の潤滑剤供給装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 潤滑油(潤滑剤)
2 潤滑油タンク(潤滑剤タンク)
3 作動油(作動流体)
4 作動油タンク(作動流体タンク)
5 ノズル
8 制御装置
10 攪拌部材
14 ポンプ
23 フィルタ
28 シリンダ
29 ピストン
30 潤滑油充填空間(潤滑剤充填空間)
31 作動油充填空間(作動流体充填空間)
33 圧縮バネ(付勢手段)
34 第一逆止弁
35 第二逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形添加剤を含有する潤滑剤を貯留した潤滑剤タンクと、作動流体を貯留すると共に当該作動流体中の異物を捕集するフィルタを配設した作動流体タンクと、走行するチェーンに向けて前記潤滑剤を吐出するノズルと、内部にピストンを前進後退可能に挿入したシリンダを備え、前記シリンダ内に、前記ノズル及び前記潤滑剤タンクに個別に連通した潤滑剤充填空間と、前記作動流体タンクに連通した作動流体充填空間を、前記ピストンを挟んで互いに対向して形成し、前記作動流体充填空間へ作動流体を供給するポンプと、前記ピストンを前記作動流体充填空間側へ付勢する付勢手段と、前記潤滑剤充填空間から前記潤滑剤タンク側へ潤滑剤が逆流するのを阻止する第一逆止弁と、前記ノズルから前記潤滑剤充填空間側へ潤滑剤が逆流するのを阻止する第二逆止弁とを設けたことを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項2】
前記潤滑剤タンク内に攪拌部材を配設したことを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給装置。
【請求項3】
前記ポンプと前記作動油充填空間との間に電磁切換弁を配設すると共に、前記チェーンのリンク結合部に前記ノズルから潤滑剤を間欠的に供給するように前記電磁切換弁の開閉を制御する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−29565(P2009−29565A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194630(P2007−194630)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(507252373)