説明

濾過体及びこれを有する濾過装置

【課題】逆洗が濾過面全域で均一かつ確実に行われる濾過体及びこれを有する濾過装置を提供する。
【解決手段】筒状をなす濾過材5Aが支持体により支持され中心軸線方向一端を開口部5Cそして他端を閉塞部5Bとする濾過体5であって、濾過時に上記開口部5Cから原水が流入し上記濾過材5Aを透過して濾過水として濾過体5外へ排水され、さらに逆洗時には、濾過体5外から濾過水が逆洗水として流入して濾過材の内面の付着物を剥離して上記開口部5Cから排水されることとする濾過体5において、筒状をなす濾過材5Aの周面が、上記中心軸線方向で、複数の濾過領域F1〜F4に区分されていると共に開口部5Cも複数の開口領域に区分されており、各濾過領域F1〜F4が対応の開口領域と連通して、仕切部材16〜19で隔てられた複数の流通領域20〜23を並列に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾過体及びこれを有する濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の原水、例えば海水を濾過する際、特に、船舶のバラストタンクに積み込まれるバラスト水に含まれる生物を効率的に捕捉除去するためには濾過装置が用いられる。
【0003】
一般に、空荷または積荷が少ない状態の船舶は、プロペラ没水深度の確保、空荷時における安全航行の確保等の必要性から、荷下し時にバラストタンクに海水がバラスト水として注水される。逆に、積荷をする場合には、バラスト水が海中へ排出される。ところで、環境の異なる荷積み港と荷下し港との間を往復する船舶により、バラスト水の取水および排水が行われると、取水地で取水されたバラスト海水に含まれる細菌類やプランクトンなどの生物が排水地へ持ち込まれることにより、排水地での沿岸生態系に悪影響を及ぼすことが懸念される。そこで、2004年2月、船舶のバラスト水管理に関する国際会議において、船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約が採択され、バラスト水の処理が義務付けられることになった。
【0004】
また、バラスト水の積込み時または排水時に、上記海水中の生物処理を行なうということは、船舶への荷下し時または荷積み時にこの処理を行なうことであり、荷役時間以内に生物処理を終了するために、短時間で大量の海水の給水または排水を行ない生物処理を行う必要があり、濾過装置により生物を捕集する際には短時間で大量の濾過処理が可能な濾過装置が望まれる。そこで、例えば、特許文献1では、大量処理が可能なように複数の濾過体を備えて濾過面積を大きくする濾過装置が提案されている。この特許文献1では、濾過体は、軸線方向で一端が開口し周面が通水可能な円筒状をなし、原水たる海水はこの開口から導入され、周面で濾過されて該周面外に排出される。この濾過体は、定間隔で突起が形成された金属製の細い線材(ノッチワイヤ)を筒状枠体の周囲にコイル状をなすように密に巻回して円筒状として、各巻回で隣接するノッチワイヤ間で突起によって目開きを形成するノッチワイヤフィルタとしている。このノッチワイヤフィルタは、線材としてのノッチワイヤが金属製であるため、濾過時そして逆洗時においても十分な強度を発揮する。特許文献1では、ノッチワイヤフィルタを形成しているが、他には、多孔質材、メッシュワイヤなどを用いて濾過体を形成することも知られている。
【0005】
このような円筒状の濾過体は、濾過時に濾過体の内面で捕捉された付着物を、逆洗によって剥離除去する。逆洗の際は、逆洗機構によって濾過体の周面の外側の圧力Pが内側の圧力Pよりも高くなる状態を作る機構を用いて濾過体外部から内部へ向かう流れを作り、濾過体周面内側で捕捉された付着物および濾過面内に捕捉された固形物を上記流れと共に円筒下部の開口から外部へ排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−066533
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような円筒状の濾過体の周面で濾過そして逆洗を行う形式の濾過体にあっては、逆洗の際に、円筒状濾過体の内部に、軸線方向で圧力分布の不均一が生じ、通常は開口側となる濾過体周面下部において逆洗効果が最も大きく現れ、濾過体の閉塞端に近づくほど逆洗効果が小さくなることが経験的に知られている。すなわち、閉塞端に近い位置ほど円筒状濾過体の内外の圧力差が小さくなっている。これは、閉塞端に近い位置ほど開口の位置までの距離が大きいため、また、付着物を剥離除去した位置から開口に至るまでに、周面からの逆洗水と剥離付着物の搬送量が増えるために、閉塞端に近い位置ほど流れに対する抵抗が大きくなるためと考えられる。このような状況下で、濾過体の閉塞端近くでは、逆洗効果が殆ど無い部分もあり、逆洗が済んだ後で再び濾過を行う場合に十分な濾過性能を発揮できないことが知られている。また長時間使用すると逆洗されるのは濾過体の開口部の側だけになることがあり、濾過能力の大幅な低下に繋がる場合もある。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、軸線方向に縦長で一端側に開口部そして他端側に閉塞部を有し、周面が濾過材となっている濾過体において、上記軸線方向で全範囲にわたり周面の濾過材がほぼ均一に逆洗されて、周期的に清浄な状態へ確実に復帰させて濾過体が備える本来の性能を常時発揮できるようにすることができる濾過体そしてこれを有する濾過装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<濾過体>
本発明に係る濾過体は、筒状をなす濾過材が支持体により支持され中心軸線方向一端を開口部そして他端を閉塞部とする濾過体であって、濾過時に上記開口部から原水が流入し上記濾過材を透過して濾過水として濾過体外へ排水され、さらに逆洗時には、濾過体外から濾過水が逆洗水として流入して濾過材の内面の付着物を剥離して上記開口部から排水される。
【0010】
かかる濾過体において、本発明は、筒状をなす濾過材の周面が、上記中心軸線方向で、複数の濾過領域に区分されていると共に開口部も複数の開口領域に区分されており、各濾過領域が対応の開口領域と連通して、仕切部材で隔てられた複数の流通領域を並列に形成していることを特徴としている。
【0011】
このような構成の本発明の濾過体では、並列な複数の流通領域がそれぞれ仕切板で仕切られて互いに干渉しない固有の流路を形成するので、各流通領域が対応濾過領域で剥離除去した付着物をその流通領域内で対応開口領域まで搬送する。したがって、各流通領域同士間で、搬送付着物が開口部に向かうにつれて増大して搬送抵抗に差が生ずるということがなく、濾過体内外圧差が各流通領域で同じに確保されて、逆洗時には濾過体の閉塞部近くの濾過領域でも開口部近くの濾過領域でも、同様に付着物除去が確実になされる。
【0012】
本発明において、複数の流通領域のそれぞれの内容積が略等しいことが好ましい。こうすることで、各流通領域での流通条件が同じとなり、逆洗効果も同じになる。
【0013】
本発明において、各流通領域は、逆洗時に、剥離付着物を伴う逆洗水に旋回流を生じさせる翼部を有する旋回流発生部材が設けられていることが好ましい。逆洗時に濾過体内に旋回流を生じさせることにより、濾過体内の圧力を低くさせることができ、その結果濾過体内外の圧力差を大きくでき、逆洗効果が向上する。
【0014】
<濾過装置>
本発明では、濾過装置は、上述の濾過体と、板状をなしその板面に直角な中心軸線まわりの周方向複数位置に上記基板の一方の板面上で上記濾過体を該濾過体の開口が形成されている一端で保持し板厚方向に貫通せる通孔が上記濾過体の開口部と連通する位置に形成されている基板と、上記複数の濾過体を基板で保持して成る組立体を収容する容器と、上記基板の他方の板面側に位置して容器内に設けられた逆洗管を駆動する逆洗機構とを有し、容器内の空間を基板の一方の板面側の第一室と他方の板面側の第二室とに区分し、上記容器には第二室に連通する原水導入管と第一室に連通する濾過水排出管口が設けられていると共に上記逆洗管に連通する逆洗水排出管が第二室から容器外へ延出していることを特徴としている。
【0015】
かかる濾過装置では、濾過時には第二室から原水が濾過体内に流入して各流通領域に分流して対応濾過領域で濾過体を透過することで濾過されて、濾過水が第一室を経て排水される。逆洗時には、第一室から濾過水が逆洗水として各流通領域に流入することで対応濾過領域で濾過体内面の付着物を剥離除去して対応開口領域にもたらし、第二室から排出される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように、筒状をなす濾過材の周面が、上記中心軸線方向で、複数の濾過領域に区分されていると共に開口部も複数の開口領域に区分されており、各濾過領域が対応の開口領域と連通して、仕切部材で隔てられた複数の流通領域を並列に形成していることとしたので、閉塞部近くの濾過領域で剥離された付着物も開口部近くの濾過領域で剥離された付着物も、開口部へ至る間に上記付着物が増量して各濾過領域同士間で搬送抵抗に差が生ずることなく同程度量を維持し同程度の濾過体内外圧差のもとで開口部から排出される。したがって、濾過体全域で同程度に確実に逆洗がなされ、逆洗効果は低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態そして濾過装置の部分破断正面図である。
【図2】図1の濾過装置に用いられる複数の濾過体の一つについての第一実施形態の部分破断斜視図である。
【図3】図2の濾過体の断面図で、(A)は濾過時、(B)は逆洗時を示す。
【図4】第二実施形態の濾過体の部分破断斜視図である。
【図5】図4の濾過体の断面図である。
【図6】第三実施形態の濾過体の部分破断斜視図である。
【図7】第四実施形態の濾過体の斜視図である。
【図8】第五実施形態としての旋回流発生部材を示し、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB−B断面図、(C)は(A)におけるC矢視図、(D)は一部についての斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示される本実施形態の濾過装置は、鉛直な中心軸線1をもつ有底円筒状の容器本体2と、該容器本体2の上部開口へ水密状態で取り付けられる蓋体3と、上記容器本体2の下部にて該容器本体2の内部を第一室たる上室2Aと第二室たる下室2Bとに仕切る基板4と、該基板4の上面に取り付けられ上方に延びる円筒状の複数の濾過体5と、さらには、上記基板4の下面に対し摺接回転する逆洗管6と、これを回転駆動させる駆動機構7とを備えている。
【0019】
上記容器本体2には、周方向の一箇所で上記下室2Bに連通するように原水導入管としての海水導入管8が、そして周方向の他の箇所で後述する受箱12に連通するように逆洗水排出管9が、さらには底部で下室2Bに連通するようにドレイン管10がそれぞれフランジを介して接続されている。上記海水導入管8、逆洗水排出管9そしてドレイン管10には、第一開閉弁8A、第二開閉弁9Aそして第三開閉弁10Aがそれぞれ取り付けられている。
【0020】
さらに、上記容器本体2には、上室2Aの上部で周方向の一箇所で該上室2Aに連通するように濾過水排出管11が接続されている。この濾過水排出管11には第四開閉弁11
Aが取り付けられている。
【0021】
上室2Aと下室2Bとに仕切る基板4には、上記中心軸線1に対して同心をなす複数(図1の例では三つ)の円と上記中心軸線1に向う複数の半径線との交点位置に、板厚方向に貫通する通孔4A,4B,4Cが形成されている。上記基板4の上面には、上記通孔4A,4B,4Cのそれぞれに対して連通するように、後述する濾過体5が垂立して取り付けられている。
【0022】
基板4の下面を摺接回転する逆洗管6は、上記中心軸線1の位置の一端から一つの半径線方向外方で容器本体2の円周面近傍に他端を有するように延びている。該逆洗管6は、上記中心軸線1から通孔4A,4B,4Cが位置する各円の半径に等しい距離となる位置に、上方に向け突出する接続口6A,6B,6Cが形成されていて、この接続口6A,6B,6Cが基板4の下面に摺接する。上記逆洗管6は、上記中心軸線1の位置となる一端が開口され、他端が閉じられている。この逆洗管6の開口している一端は、中心軸線1上に位置する連絡管12に連通するように一体的に接続されている。該連絡管12は上端が閉じられ下端が開口している。該連絡管12の開口する下端は、容器本体2の底部に設けられた受箱12A内に突入していて、該受箱12Aの上板に対して水密状態で中心軸線まわりに相対回転可能に支持されている。該受箱12Aには既述の逆洗水排出管9が連通接続されている。
【0023】
逆洗水排出管9の他端が大気開放されている場合に、逆洗時には、上記逆洗管6は、大気に連通されていて接続口6A,6B,6Cでの圧力が大気圧であり、通孔4A,4B,4Cが接続口6A,6B,6Cと接する時、濾過体5の外部が濾過水圧を受け内部は大気圧であり、濾過体5の外部の圧力が内部より高くなるので、濾過体外周から濾過水が逆洗水として濾過材を透過して内部に流入し、濾過材内面に付着した付着物が逆洗され、逆洗水とともに容器外へ排出されることとなる。また、濾過装置が船舶に搭載される際には逆洗水排出管9の他端が海中に連通することになるが、濾過体5の外部が濾過水圧を受け外部の圧力が海中と連通する内部の圧力より高くなるようにされ、同様に濾過体5が逆洗される。また、必要に応じて逆洗水排出管9の他端を吸出しポンプに接続し、濾過体5の外部の圧力が内部の圧力より高くなるようにして濾過体5を逆洗するようにしてもよい。
【0024】
上記逆洗管6には、駆動機構7が接続されている。該駆動機構7は、容器の蓋体3の外面に設けられた減速機13付きのモータ14と、該減速機13から垂下して容器の上室2Aへ突入し中心軸線1上に延びる駆動軸体13Aとを有し、該駆動軸体13Aの下端が上記連絡管12の上端と連結されている。かくして、モータ14の回転が減速機13で減速されて、上記駆動軸体13Aへ伝えられ、上記連絡管12の上端へ一体的接続されている逆洗管6が上記中心軸線1まわりに回転するようになる。この逆洗管6の回転により、逆洗管6の接続口6A,6B,6Cは、周方向に移動して次々と基板4の通孔4A,4B,4Cと連通するようになる。
【0025】
上記基板4の上面に対し、通孔4A,4B,4Cの位置に取り付けられた濾過体5は、図2に見られるように、縦長な円筒状をなす濾過材5Aの内部空間には四つの仕切部材16,17,18,19が配されていて、上記濾過材5Aはこれらの仕切部材16,17,18,19の外周縁部と、該外周縁部を縦方向で連結している複数の細い支柱(図示せず)とによって支持され円筒形状を維持している。上記濾過体5は、上端が円板状の閉塞部5Bを有し、下端は下方に開口した開口部5Cとなっている。上記円筒状濾過材5Aは、仕切部材の外周縁部そして支柱と接触している極めて少ない面積を除いて、円筒面の殆んどが濾過面となっている。濾過材5A自体は、その形式に限定されないが、例えば、既述のノッチワイヤフィルタ、多孔質材、樹脂製メッシュクロスフィルタ等、適宜選定される。
【0026】
上記仕切部材16,17,18,19のうち、最上位に位置する仕切部材16は、下方に向いた円錐状をなしており、その上端縁は円板状の上記閉塞部5Bと一体に接続され、両者で円錐体外形をなしている。
【0027】
最上位の仕切部材16の下方に順次位置する三つの仕切部材17,18,19は、いずれも水平な環状板部17A,18A,19Aと、該環状板部17A,18A,19Aの内縁から縦方向に下方へ延びる円筒部17B,18B,19Bとを有している。上記環状板部17A,18A,19Aは、縦方向にて、円筒状の濾過材5Aの内部を四つの空間に仕切るように位置している。また、上記環状板部17A,18A,19Aの内縁で形成される孔の内径は、下方の環状板部になるにつれて、大径となっている。したがって、円筒部17B,18B,19Bもこれに対応して順次大径となっていて、互いに同心をなすと共に間隔をもって配設されている。四つの円筒部17B,18B,19Bの下端は、開口部5Cに位置していて、該開口部5Cの開口度を減じないような部材、例えば半径方向に延びる細い十字バー材5C−1等により互いに連結されていることが、同心を安定して維持する上で好ましい。
【0028】
このような仕切部材16,17,18,19によって、円筒状の濾過材5Aの内部は、図3に見られるように、並列な四つの流通領域20,21,22,23に区分される。また、仕切部材17,18,19は、それらの環状板部17A,18A,19Aで、円筒状の濾過材5Aの周面領域(濾過面)を、上下方向で四つの濾過領域F1,F2,F3,F4に区分している。流通領域20は、最上位の濾過領域F1に面し仕切部材16と仕切部材17の環状板部17Aとの間に形成される上部域20Aと、上記環状板部17Aから下方で円筒部17B内に形成され開口部5Cに通じる下部域20Bとを有している。流通領域21は、上方から二番目に位置する濾過領域F2に面し仕切部材17の環状板部17Aと仕切部材18の環状板部18Aとの間に形成される上部域21Aと、上記仕切部材17の円筒部17Bとその外側に位置する仕切部材18の円筒部18Bとの間に形成され開口部5Cに通じる環状の下部域21Bとを有している。次に、流通領域22は、上方から三番目に位置する濾過領域F3に面し仕切部材18の環状板部18Aと仕切部材19の環状板部19Aとの間に形成される上部域22Aと、上記仕切部材18の円筒部18Bとその外側に位置する仕切部材19の円筒部19Bとの間に形成され開口部5Cに通じる環状の下部域22Bとを有している。さらに、流通領域23は最下位の濾過領域F4に面し、仕切部材19の環状板部19Aの下方で上記仕切部材19の円筒部19Bの外側に形成され開口部5Cに通じている。
【0029】
このように構成された本実施形態の濾過装置は、次の要領で濾過そして逆洗がなされる。
【0030】
<濾過>
先ず、図1にて、第一、第二、第四開閉弁8A,9A,11Aを開放そして第三開閉弁10Aを閉じて、原水、例えば、濾過前の海水をポンプ等で加圧して海水導入管8から容器内へ導入する。この原水は、図1にて実線矢印で示されるように、容器の下室2Bに入った後、ここから基板4の通孔4A,4B,4Cを経て対応するそれぞれの濾過体5内に流入する。各濾過体5では、図3(A)に見られるように、原水は、各濾過体5の開口部5Cにて分流して流通領域20,21,22,23に流入する。原水は、流通領域20,21,22では、それらの下部域20B,21B,22Bを上昇して上部域20A,21A,22Aを経た後に曲流して濾過領域F1,F2,F3に達し、また流通領域23では、原水は該流通領域23を上昇しながら曲流して濾過領域F4に達する。濾過領域F1,F2,F3,F4に達した原水は、濾過材5Aの対応領域で濾過された後、図1にて、濾過水として容器本体2の上室2Aへ至る。原水の濾過により上記濾過材5Aの内面には、付着物が付着する。この濾過水は濾過水排出管11から容器本体2外へ流出する。
【0031】
<逆洗>
上記原水の濾過時に、図1に見られるように、逆洗機構7の駆動軸体13Aが減速機13付きモータ14からの駆動力を受けて回転しており、逆洗管6は、接続口6A,6B,6Cが基板4の下面と摺接しながら、上記中心軸線1まわりに回転している。したがって接続口6A,6B,6Cは回転移動しながら、基板4の通孔4A,4B,4Cと次々と間欠的に連通するようになる。この逆洗管6の接続口6A,6B,6Cと連通している基板4の通孔4A,4B,4Cには下室2Bからの原水が流入できず、逆に、原水導入時に加圧されてその圧力を維持している上室2A内の濾過水の一部が、逆洗水排出管9の開放により、逆洗管6に対応して位置する濾過体5の周部たる濾過材5Aを透過し該濾過体5内へ逆洗水として流入する。上記濾過水の一部は、逆洗水として図3(B)のごとく、濾過体5の各濾過領域F1,F2,F3,F4から等しく流通領域20,21,22,23へ流入し、各濾過領域F1,F2,F3,F4における濾過材5A内面の対応域に付着している付着物を剥離し、濾過時の原水の流れとは逆の流れ(図3(B)で破線で示される矢印)をもって、開口部5Cに至る。
【0032】
並列に形成された上記流通領域20,21,22,23は、仕切部材17,18,19によりほぼ同じ内容積の流通空間として仕切られているので、各流通領域では、互いに干渉せずに、ほぼ同量の剥離付着物が開口部5Cまで搬送される。搬送される剥離付着物が開口部5Cに近づく程その量が増大して各流通領域同士間で搬送抵抗に差が生ずるということはないので、各流通領域でほぼ同一条件で流れ、したがって、各濾過領域F1,F2,F3,F4で等しく逆洗が行われ、経時的な逆洗効果の低下はあまりない。かくして、濾過体5内へ流入する濾過水は、逆洗水として図1にて、濾過時に上記濾過材5Aの内面に付着した濾過残渣を該周部から剥離、すなわち逆洗してこの濾過残渣と共に逆洗管6へ流入する。この付着物を伴う逆洗水は連絡管12内を流れ、受箱12Aを経て逆洗水排出管9容器外へ排出される。このようにして、容器内では、原水が濾過されつつ、濾過水の一部を逆洗水として用いて、常時、濾過体5が順次逆洗されている。
【0033】
本発明において、仕切部材は環状板部と円筒部とを有する形態に限定されず、第二実施形態として示される図4のごとく、円錐状部と円筒部とを有する形態でもよい。
【0034】
図4では、最上位の仕切部材16は図2のものと同じであるが、その下方に位置する仕切部材17−1,18−1は、図2における環状板部17A,18Aに代えて円錐状部17A−1,18A−1を有し、円筒部17B−1,18B−1に接続されている。したがって、円筒部17B−1,18B−1は、図2における場合に比し、上記円錐状部17A−1,18A−1に対応する分だけ短くなっている。また、最下位置に位置する仕切部材19−1は、図4では、円錐状部のみを有していて円筒部を有していない形状であるが、上部が円錐状で下部が円筒状の形状でもよい。上記仕切部材16,仕切部材17−1,18−1の円錐状部17A−1,18A−1そして仕切部材19−1は、その円錐の角度が、下方のものほど縦方向に近づくようになっている。
【0035】
このような、図4の形態の仕切部材を有するものにあっては、濾過時の原水そして逆洗時の逆洗水が、図5にて実線そして破線にてそれぞれ示されるごとく、急激な変向を伴わずに円錐面で円滑に低抵抗のもとで流れる。
【0036】
次に、図6に示す第三実施形態では、仕切部材が図2の形態のものと類似しているが、仕切部材16と仕切部材19との間の中間に位置する二つの仕切部材17−2,18−2が環状板部に代え、扇形状の孔部が形成された円板部を有している点と、仕切部材17−2,18−2そして19−2が円筒部に代え扇形状断面の筒部を有している点で相違している。
【0037】
図6にて、最上位の仕切部材16は、細い環状縁部16Aを有し、支柱による支持に供しているが、殆んどが円錐状となっていて、実質的には図2の仕切部材と変わりはない。しかし、図6においては、濾過体5は最上端に閉塞部が別部材としては設けられておらず、上記仕切部材16が閉塞部を兼ねている。
【0038】
最上位の仕切部材16の下方に順次位置する仕切部材17−2,18−2,19−2は、それぞれ、円板部17A−2,18A−2,19A−2と、これらから垂下する筒部17B−2,18B−2,19B−2とを有している。円板部17A−2には、一つの直径線上で中心に対して対称な位置に扇形状の孔部17A−21が二つ対向して形成されており、孔部17A−21の周方向角度が円周を六等分した60°となっている。この孔部17A−21の開口縁から、扇形状断面の上記筒部17B−2が垂下しており、濾過体5の下端にまで達している。該筒部17B−2は上下端で開口している。
【0039】
仕切部材17−2の下方に位置する仕切部材18−2の円板部18A−2にも扇形状の孔部が形成されているが、その孔部18A−21は、周方向にて上記円板部17A−2の孔部17A−21に対応する60°の範囲とこれに隣接する60°の範囲をつなげた120°の範囲に形成されている。この孔部18A−21には、その半分となる60°の範囲に上記仕切部材17−2の筒部17B−2が貫通している。上記仕切部材18−2の二箇所の上記孔部18A−21からは残りの60°の範囲で仕切部材17−2の筒部17B−2と同様な上下に開口する筒部18B−2が垂下して濾過体5の下端にまで延びている。
【0040】
仕切部材18−2の下方で、最下位に位置する仕切部材19−2の円板部19A−2には、完全な円をなす孔部19A−21が形成されていて上記円板部19A−2は環状板をなしている。該孔部19A−21には、上記仕切部材17−2の筒部17B−2と仕切部材18−2の筒部18B−2が互いに隣接して貫通しており、残りの二箇所の60°の範囲には、上記仕切部材17−2の筒部17B−2そして仕切部材18−2の筒部18B−2と同様の扇形状断面の筒部19B−2が垂下し濾過体5の下端まで延びていて上下端にて開口している。
【0041】
かかる本実施形態では、最上位の円錐状の仕切部材16と仕切部材17−2の円板部17A−2の間の空間そして筒部17B−2内の空間で一つの流通領域を形成し、仕切部材17−2の円板部17A−2と仕切部材18−2の円板部18A−2の間の空間と筒部18B−2内の空間で他の一つの流通領域を形成し、仕切部材18−2の円板部18A−2と仕切部材19−2の円板部19A−2の間の空間と筒部19B−2内の空間でさらに他の一つの流通領域を形成し、また、上記仕切部材19−2の円板部19−2の下方で、筒部17B−2,18B−2,19B−2の外側でさらに他の一つの流通領域を形成する。かくして、四つの濾過領域F1,F2,F3,F4のそれぞれに通じる互いに独立した四つの流通領域が並列に形成され、図3そして図5の形態の場合と同様に濾過そして逆洗が行われる。
【0042】
次に、図7に示す第四実施形態では、図6の各仕切板部材が断面扇状の筒部を二つ有しているのに対し、各仕切板部材17−3,18−3,19−3が断面円形で上下に開口している筒部17B−3,18B−3,19B−3をそれぞれ一つ有している。かかる本実施形態では、筒部が円筒体なので、市販の円管材を用いて作れるので、前出の図6の形態に比し、製作が容易となる。また、円筒状の各筒部17B−3,18B−3,19B−3を垂下保持する円板部17A−3,18A−3,19A−3も上記筒部に対応して円形の孔部17A−31,18A−31,19A−31を穿設すればよいので、これらの円板部の製作も容易となる。
【0043】
図8には、さらに第五実施形態として、逆洗時に、流通領域内に旋回流を生じさせる例が示されている。図7では、各仕切部材の円板部が示されており、例えば、図3における仕切部材17の円板部17Aの上面に旋回流発生部材としての翼部17Cが設けられている。該翼部17Cは、図8(A)〜(D)に見られるように、上記円板部17Aの上面で周方向の複数箇所に分布して立設されていて、上記円板部17Aの半径線に対し角度α、円板部17Aの上面に対し角度βだけ傾いており、さらに半径方向内方縁部は、角度γだけ切り落とされている。かくして、逆洗時には、濾過面を透過して付着物を剥離してこれを伴って円筒部17Bに向かう逆洗水の流れは、上記円板部17Aの上面にて翼部17Cによって旋回流を生ずるようになる。旋回流を伴って流れると、流れの圧力は低下し、その結果、その分だけ濾過面内外圧力差が大きくなることとなり、濾過材を透過する逆洗水の速度が増し逆洗効果が向上すると共に、流通領域内での剥離付着物が淀むことを防止し開口部へ向け良好に排出される。
【0044】
かかる翼部は、各仕切部材の円板部に設けられている。また、第二実施形態として示されている図4の形態にあっても、仕切部材の円錐状部の内面に同様な翼部を設けることができる。
【0045】
本発明において、図1の第一実施形態では、濾過装置は、その容器内の第一室が上室、第二室が下室となる形態として説明したが、この第一室そして第二室は、上下が逆の位置関係になったり、装置の横置据付けにより、左右の位置関係になることもある。
【0046】
上記の実施の形態では、仕切部材によって円筒状の濾過材5Aの内部を四つの空間に仕切っているが、濾過材5Aの内部を二つ以上の複数の空間に仕切ってよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 中心軸線
2A 上室
2B 下室
4 基板
4A,4B,4C 通孔
5 濾過体
5A 濾過材
5B 閉塞部
5C 開口部
8 海水導入管
9 逆洗水排出管
11 濾過水排出管
16〜19 仕切部材
17−1〜19−1 仕切部材
17−2〜19−2 仕切部材
17−3〜19−3 仕切部材
17C 翼部
20〜23 流通領域
F1〜F4 濾過領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなす濾過材が支持体により支持され中心軸線方向一端を開口部そして他端を閉塞部とする濾過体であって、濾過時に上記開口部から原水が流入し上記濾過材を透過して濾過水として濾過体外へ排水され、さらに逆洗時には、濾過体外から濾過水が逆洗水として流入して濾過材の内面の付着物を剥離して上記開口部から排水されることとする濾過体において、
筒状をなす濾過材の周面が、上記中心軸線方向で、複数の濾過領域に区分されていると共に開口部も複数の開口領域に区分されており、各濾過領域が対応の開口領域と連通して、仕切部材で隔てられた複数の流通領域を並列に形成していることを特徴とする濾過体。
【請求項2】
複数の流通領域のそれぞれの内容積が略等しいこととする請求項1に記載の濾過体。
【請求項3】
各流通領域は、逆洗時に、剥離付着物を伴う逆洗水に旋回流を生じさせる翼部を有する旋回流発生部材が設けられていることとする請求項1又は請求項2に記載の濾過体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちの一つの濾過体と、板状をなしその板面に直角な中心軸線まわりの周方向複数位置に上記基板の一方の板面上で上記濾過体を該濾過体の開口が形成されている一端で保持し板厚方向に貫通せる通孔が上記濾過体の開口部と連通する位置に形成されている基板と、上記複数の濾過体を基板で保持して成る組立体を収容する容器と、上記基板の他方の板面側に位置して容器内に設けられた逆洗管を駆動する逆洗機構とを有し、容器内の空間を基板の一方の板面側の第一室と他方の板面側の第二室とに区分し、上記容器には第二室に連通する原水導入管と第一室に連通する濾過水排出管口が設けられていると共に上記逆洗管に連通する逆洗水排出管が第二室から容器外へ延出していることを特徴とする濾過装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−71054(P2013−71054A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212039(P2011−212039)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(000192899)神奈川機器工業株式会社 (8)