説明

濾過装置

【課題】微粒子よりなる固形分を懸濁したスラリー中に含まれる異物等を取り除き、目的微粒子のみからなる固形分を有する高品位なスラリーを得るための濾過装置を提供する。
【解決手段】密閉フィルタハウジング1内にフィルタエレメントを固定して、該密閉フィルタハウジング内を二室に分割し、一方の室には被処理スラリー供給口を、他方の室には、処理済スラリー排出口を設けた濾過装置において、前記密閉フィルタハウジングは、その外壁に振動装置が付設され、且つ、支持機構によって振動可能な状態で固定台5に取り付けられ、更に、前記被処理スラリー供給口と処理済スラリー排出口には、フレキシブルパイプ3a、4aを接続して前記被処理スラリーの供給及び処理済スラリーの排出を行なうようにしたことを特徴とする濾過装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な濾過装置に関する。詳しくは、微粒子よりなる固形分を懸濁したスラリー中に含まれる異物等を取り除き、該微粒子のみからなる固形分を有する高品位なスラリーを得るための濾過装置を提供するものである。
【0002】
ここで、異物等としては、凝集粒子、系外から侵入した粗大異物、溶解不十分なためゲル状のまま残存しているゲル状物質等の粗大粒子が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
一般に、固形分を懸濁したスラリーを、フィルタエレメント(濾材)を通過せしめ、該流体に含有される異物を除去する操作がしばしば実施される。例えば、窒化アルミニウムの焼結体の製造においては、グリーン体を製造する際に使用される、窒化アルミニウム粉末、有機バインダー、及び、有機溶剤を含むスラリーの処理として、該スラリーを濾過装置により濾過して、異物として混入している粗大粒子を除去する操作が行われる。
【0004】
上記濾過操作においては、被処理流体中に分散している固形分の性状に依存するところが非常に大きい。即ち、20μm以下の微粒子を含むスラリーは濃縮され、ケークの如き高濃度になると流動性を失い、固体のように振舞うが、振動を与えると、液状化する(このような性質をチクソトロピー性と呼ぶ)。この様に濃縮物がチクソトロピー性を有するスラリーから、その中に含まれる異物等を除去するために、該スラリーを濾過すると、フィルタエレメントの濾過抵抗により濾材表面にスラリーが濃縮され、フィルタエレメント上でケークとなり、その結果、フィルタエレメント表面に上記ケークが堆積、成長して、濾過抵抗が急激に増大し、ついには濾過不能になってしまう。
【0005】
従来、このようなチクソトロピー性を有するスラリーを濾過するには、スラリーを希釈するか、あるいは高圧をかけて強制的に濾過を行う必要があった。
【0006】
しかし、これらの手段は装置が大がかりになる上、動力費が大きく、また効率が悪いという欠点があった。また、多量の処理を一度に行うことは難しかった。更に、上記濾過の途中で、装置を解体してフィルタエレメントを清掃したり、交換したりすることが必要であり、長期間連続して濾過を行なうことができなかった。
【0007】
近年、上記問題に対して、フィルタハウジング内でフィルタエレメントを回転させたり、被処理液を循環させたりしてフィルタエレメントの表面に固形分が堆積しないようにした濾過装置が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0008】
しかしながら、上記濾過装置は、フィルタエレメントの表面や体積濾過タイプのフィルタエレメントを使用した場合はその内部で固形分が付着し、固形化してしまうと、それを除去して濾過能力を回復することができず、前記濾過装置と同様、装置を解体してフィルタエレメントを清掃したり、交換したりすることが必要であった。さらに被処理液を循環させたり、フィルタを回転させたりする動力が大きく、かつ被処理液の性状によっては、ポンプや回転軸のシール部が磨耗するため精度の高い特殊な設計を必要とし、それでも磨耗を最少に抑えることが難しいため、セラミックスを含有するスラリーを濾過して高品位のスラリーを得る用途には不向きであった。
【0009】
一方、濾過室に超音波照射装置を設け、供給される被処理スラリーに超音波を照射することで、粒子の凝集を防ぎ、また、フィルタエレメント表面に堆積された固体として挙動するスラリーを再分散させて流動化し、濾過を行う超音波濾過装置が開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、本装置は高価となるばかりでなくロット切り替え時の洗浄作業に多くの労力を要する。しかも使用される溶媒が危険物の場合実質的に使用困難であった。
【0010】
上記濾過装置は、その濃縮物がチクソトロピー性を示すスラリーの濾過においても、面濾過タイプのフィルタエレメントを使用する場合では、目詰まりを生じることなく、長期間安定して、連続的に濾過を行なうことができる。しかしながら体積濾過タイプのフィルタエレメントを使用した場合、フィルタエレメント内部で固化する処理済スラリーに対しては超音波が届かないため十分な流動化を確保することが困難である。
【0011】
また、フィルタエレメントの目詰まりを防止するため、フィルタハウジングの側壁を貫通する軸によってフィルタハウジングと振動装置とを連結させ、該フィルタエレメントを直接振動させることによって濾材表面へのケークの付着、成長を防ぐ方式も考えられる。
【0012】
しかし、上記のように、軸を介してフィルタエレメントを振動する構造を採用した場合、かかる濾過装置は構造的にフィルタハウジングの壁を軸が貫通する箇所に摺動部が存在するため、摩耗性の高い微粒子を含むスラリーの濾過では、かかる摺動部が摩耗し、摩耗粉が濾過処理済みのスラリー中に混入してこれらの品位を低下させてしまうという問題を有する。
【0013】
そのため、このような濾過装置は、廃液処理や、回収された濾液の純度を要求しない用途には使用できるが、前記窒化アルミニウムのグリーン体製造用のスラリーの如き、不純物の混入を極度に嫌うスラリーの精製には使用できないのが現状であった。
【0014】
【特許文献1】特開平6−91201号公報
【特許文献2】特許第3758371号公報
【特許文献3】特開2006−247484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、前記スラリーの濾過を行なう濾過装置において、フィルタエレメントにおける目詰まりを防止しながら、安定して濾過を行なうことができると共に、得られる処理済みスラリーの汚染を確実に防止することが可能な簡便な濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、密閉フィルタハウジング内に、フィルタエレメントを固定して設け、振動装置により密閉フィルタハウジングを振動させることにより、該振動をその内部に固定したフィルタエレメントに伝播させるようにすれば、磨耗の原因となる摺動部や超音波振動子を設けることなく、フィルタエレメントを振動させ、フィルタエレメントの濾過面にチクソトロピー性を有する固形分が堆積してケークを形成したとしても、これを常時再分散させることができ、更に体積濾過タイプの厚みのあるフィルタエレメントに対しても振動によりエレメント内部の濾液が流動性を維持するので閉塞を起こさず長期間安定した濾過を行なうことができるという知見を得た。また、構造が単純になるためロットの切り替え時の洗浄が容易となる。さらに、上記密閉フィルタハウジングを効果的に、且つ、安定して振動させるためには、密閉フィルタハウジングを単に載置するのではなく、支持機構によって振動可能な状態で固定台に取り付けること、更には、密閉フィルタハウジングに接続する配管(パイプ)の少なくとも一部をフレキシブルとすることが必要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、密閉フィルタハウジング内にフィルタエレメントを固定して、該密閉フィルタハウジング内を二室に分割し、一方の室には被処理スラリー供給口を、他方の室には、処理済スラリー排出口を設けた濾過装置において、前記密閉フィルタハウジングは、その外壁に振動装置が付設され、且つ、支持機構によって振動可能な状態で固定台に取り付けられ、更に、前記被処理スラリー供給口と処理済スラリー排出口には、フレキシブルパイプを接続して前記被処理スラリーの供給及び処理済スラリーの排出を行なうようにしたことを特徴とする濾過装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の濾過装置によれば、その濃縮物がチクソトロピー性を示すスラリーの濾過において、密閉フィルタハウジングを振動させ、その振動をその内部に固定したフィルタエレメントに効率的に伝播させることができ、これにより、フィルタエレメント表面にスラリーが濃縮されてチクソトロピー性を有する固形分が堆積してケークを形成しても、連続してかかるケーキを流動化させて、濾過を継続することができる。
【0018】
従って、前記固形分による目詰まりを防止しながら、長期間安定して濾過を行なうことができる。また、上記濾過装置内外での摺動部が存在しないため、かかる摺動部からの汚染を確実に防止することができ、高品位な処理済スラリーを得ることができる。
【0019】
上述のように、フィルタエレメントを振動させるために、密閉フィルタハウジング全体を振動させるという技術思想は、本発明によって始めて提案されたものであり、これにより、濃縮によりチクソトロピー性を示すスラリーの連続濾過と高品位化を同時に達成することができたといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の濾過装置の対象となるスラリーは、特に制限されないが、粘度が5センチポイズ以上、5000センチポイズ以下のスラリーである。好ましくは3000センチポイズ以下のスラリーである。特に、本発明の濾過装置による効果が顕著に現れるスラリーは、その濃縮物がチクソトロピー性を示し、しかも、処理済のスラリー中への装置から不純物が混入するのを嫌うような用途に対して、高品位スラリーを得るために好適である。
【0021】
具体的には、窒化アルミニウムの焼結体の製造において、グリーン体を製造する際に使用される窒化アルミニウムスラリーである。上記窒化アルミニウムスラリーに、濾過装置より金属微粉などの不純物が混入した場合、これをグリーン体に成形し、脱脂、焼成して得られる窒化アルミニウム焼結体の外観に不具合が生じるばかりでなく、その性能、例えば、熱伝導率、絶縁性を低下させるという問題をも生じる。
【0022】
また、他に好適な被処理スラリーとしては、各種セラミックス粉末を含んだスラリー例えばアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素などを含んだスラリーをあげることができる。また、白金、金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属、ストロンチウム、タングステン、ビスマス、ネオジウム、サマリウムなどのレアメタルの回収に使用することができる。かかる濾過において、濾過装置より金属微粉などの不純物が混入した場合、焼結性の変化に伴う品質の低下の他、異物として混入する金属による抵抗値、誘電率、絶縁性などの電気物性や、外観などの品質の低下という致命的な問題が起こる。
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の濾過装置を詳細に説明するが、本発明は、これらの添付図面に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の濾過装置の代表的な態様を示す概略図である。また、図2は、図1で示した密閉フィルタハウジングの内部の状態の一態様を示す断面図である。
【0025】
上記図1及び図2に示すように、本発明の濾過装置は、密閉フィルタハウジング1内にフィルタエレメント11を固定して、該密閉フィルタハウジング内を二室に分割し、一方の室には被処理スラリー供給口3を、他方の室には、処理済スラリー排出口4を設けた濾過装置において、前記密閉フィルタハウジング1は、その外壁に振動装置2が付設され、且つ、支持機構によって振動可能な状態で固定台5に取り付けられ、更に、前記被処理スラリー供給口3と処理済スラリー排出口4には、フレキシブルパイプ3a、4aを接続して前記被処理スラリーの供給及び処理済スラリーの排出を行なうようにしたことを特徴とする濾過装置である。
【0026】
本発明の濾過装置において、密閉フィルタハウジング1は、振動装置2による振動により、スラリーが外部に漏れない程度の密閉性を有するものであれば良く、その形状も、図に示すような(円)筒状に限らず、球状、多角体状などの形状とすることもできる。また、密閉フィルタハウジングの材質としては、一般的に使用されているステンレスや鉄等の材質が好適に使用できる。腐食性の強いスラリーに対してグラスライニングやフッ素樹脂等の有機材料をコーティングした材料も好適に使用可能であり、また、更に耐磨耗性を向上させるために各種セラミックス等をコーティングした材料を使用することもできる。
【0027】
また、上記密閉フィルタハウジング1に設けられる被処理スラリー供給口3と処理済スラリー排出口4は、濾過が可能な限り、任意の位置に設けることができる。
【0028】
更に、上記密閉フィルタハウジング1の内部を二分割するフィルタエレメント11は、公知のものが特に制限無く使用される。代表的なフィルタエレメントの素材を例示すれば、ステンレス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビスコースレーヨン、セラミックスなどで、これらをメッシュ状に編んだものや、メンブレンフィルタに成形したものなどの面濾過タイプ、糸巻状に成形したものや不織布にして巻き込んだもの、焼結金属に加工されたものなどの体積濾過タイプなど一般に市販されているフィルタエレメントが使用可能であり、濾過原液、及び除去すべき異物の性質を考慮して適切なものを選定すればよい。
【0029】
また、その方式も、体積濾過タイプ、例えば、図2に示す筒状タイプの他、平面タイプなど特に制限されないが、分割された室の気密性やメンテナンスの容易性、更には、強度を考慮すれば、上記体積濾過タイプのものが好ましい。かかる体積濾過タイプのフィルタエレメントは、ゲル状の異物も除去できるため、例えば、セラミックスの成形工程での未溶解のバインダーや、粗大セラミックス微粒子の除去等には特に都合がよい。
【0030】
更に、フィルタエレメントの目開きは、該スラリー中の目的微粒子が容易に通過でき、異物が濾過できる大きさのものを適当に選べばよい。例えば、前記窒化アルミニウムスラリーのようなセラミックス微粒子を含有するスラリーの濾過では、一般に40ミクロン程度以上の粒子を粗粒として除去できるよう、その目開きを調整すればよい。
【0031】
尚、本発明における濾過装置では閉塞がなく濾過効率がよいため、従来使用されているフィルタエレメントより目開を細かくすることができるので、より高品位のスラリーを回収したり、より短時間で濾過処理をしたりなどすることができる。
【0032】
上記フィルタエレメント11は、密閉フィルタハウジング1に固定して設けることが、密閉フィルタハウジング1に与えられる振動を確実にフィルタエレメントに伝播させるために必要である。また、この場合、フィルタエレメント11は、密閉フィルタハウジングと共に振動するよう、上記密閉フィルタハウジングに固定されることが、該固定箇所より、全濾過面に振動を伝播させるために好ましい。例えば、フィルタエレメント11は、密閉フィルタハウジングと剛体よりなる固定部材によって、確実に一体化される。
【0033】
また、前記フィルタエレメントの素材そのものが剛性を有するもの、具体的には、前記体積濾過タイプのフィルタエレメントが好適である。勿論、面濾過タイプの素材においても、テンションを掛けて撓みを無くした状態で使用したり、剛性を有する型枠に支持させて体積濾過タイプのフィルタエレメントとして使用したりすることができる。
【0034】
本発明の濾過装置において、前記振動装置2としては、公知の振動装置が特に制限無く使用される。例えば、往復運動型、回転運動型等などが挙げられる。
【0035】
上記振動装置2は、密閉フィルタハウジング1の全体を振動させるように、密閉フィルタハウジングの外壁に直接取り付けられる。上記取り付けは、例えば、固定具による取り付けの他、溶接による取り付けなど一般的な取付け方法が適宜採用される。また、取り付け位置は、密閉フィルタハウジング内にスラリーが満液になったときの重心位置に振動を与える位置に取り付けることが好ましい。また、図には示していないが、必要により、バランスウェイトを取り付けても良い。
【0036】
また、スラリーの成分として有機溶媒を含む場合、これが危険物であるので、電動式よりも、エアー駆動の振動体を使うことが、安全性の面で好適である。
【0037】
前記振動装置による振動強度は、濾過すべきスラリーの性状、及び濾材の濾過抵抗を勘案し、最適な振動強度を与えるものを選定すれば良い。一般に、振動数は、100〜3000回/分、振幅は、0.5〜5mmの範囲で選択することが好ましい。
【0038】
本発明の濾過装置における濾過の原理は、振動力によりチクソトロピー性を示すスラリーが流体として挙動することにより濾材表面上への濾滓の成長を絶つことにより効果的な濾過が可能となっていると推定される。また、フィルタエレメントとして円筒状のものを使用した場合には、振動による濾過原液の濾過ハウジング内での旋回運動によるフィルタエレメント表面の清掃効果も働くものと推定される。
【0039】
本発明の濾過装置においては、密閉フィルタハウジング1の支持機構は、該密閉フィルタハウジングを振動可能な状態で固定台に取り付けることが、振動装置2による振動をフィルタエレメント11に伝播させるために必要である。
【0040】
即ち、従来の濾過装置は、固定台(地面を含む)に直接固定されるタイプであり、このタイプの場合、前記振動装置2の振動により密閉フィルタハウジングを振動させることができず、フィルタエレメント11を効率よく振動させることができない。
【0041】
上記支持機構は、密閉フィルタハウジング1を固定台5に、直接固定しない構造、即ち、前記振動装置によって振動が可能な状態で支持されている構造であれば特に制限されない。代表的な態様を例示すれば、図1に示すように、密閉ハウジング1を固定台5に懸吊する構造、図2、3(密閉フィルタハウジングの支持機構示すものであり、フレキシブルパイプ等は省略されている。)に示すように、密閉フィルタハウジング1を固定台5に弾性体を介して挟持する構造が挙げられる。
【0042】
図1の態様を更に詳細に説明すれば、密閉フィルタハウジング1は、その側壁にリブ6を設け、途中にスプリングシリンダ7を介した支持棒により該リブ6と固定台とを連結することによって、固定台5に懸吊されている。また、図3において、密閉フィルタハウジング1は、弾性体8を介して、固定台5に、横方向より(図3)、上下方向より(図4)、挟持されている。ここで、弾性体としては、ゴム、スポンジ等が一般的である。また、図3、4において、弾性体8は、加圧具9により密閉フィルタハウジングに押し当てられる。
【実施例】
【0043】
この振動フィルタを用いて濾過実験を実施した結果を次に示す。なお、粘度は東京計器製のDVL−B型回転粘度計を用いて測定された。スラリーの粘度に応じて、100センチポイズ以下のスラリーにはNo.2ローターを、100から10,000センチポイズの範囲のスラリーにはNo.3ローターを用いて、20±1℃の温度下で、毎分12回転させ、30秒後の指示値を読み、そのスラリーの粘度とした。
【0044】
実施例1
アルミナ還元窒化法で作られた窒化アルミニウム粉末100部に焼結助剤としてイットリア5部、結合剤、分散剤等としてポリメタクリル酸等を計5部、溶剤としてトルエン、及びエタノール計120部をナイロン製のボールミル中で、ナイロンで被覆された鋼球を用いて約一晩混合し、窒化アルミニウムスラリー約200kgを得た。このスラリーの粘度は約40センチポイズであった。
【0045】
これを外径60ミリ、長さ250ミリ、濾過精度50ミクロンのビスコースレーヨン製の糸巻タイプのフィルタエレメントを内蔵した本スラリー精製装置で、エアー駆動のポンプ(最高吐出圧5Kg/cmG)で圧送し、精製スラリーを得た。このとき精製に要する時間は約7分であり、差圧(本スラリー精製装置の一次側の静圧から二次側の静圧を引いた値)は精製終了まで約2Kg/cmGで安定していた。
【0046】
上記スラリー精製装置には振動源としてエクセン製の空気式ボールバイブレータを取り付け、約2Kg/cmGの空気圧力、片振幅約1.5mmで運転した。また、精製後のスラリーから噴霧造粒法により窒化アルミニウム顆粒をつくり、さらに乾式プレス法により窒化アルミニウム成形体を作成し、ついで脱脂、焼結し、焼結体の表面を研磨後、十分に経験を積んだ検査員により、目視にて表面の小穴、異物の欠陥数を数えたところ1×10−4個/cm以下であった。
【0047】
また、同様のスラリーをさらに数回製造し、本スラリー精製装置を用いて、同じ条件で繰り返し濾過をおこなったが、フィルタエレメントが閉塞し、精製不能になることはなかった。さらに、焼結体表面の目視検査の結果もほぼ同等であった。
【0048】
比較例1
実施例1に於いて該スラリー精製装置のバイブレーターを作動させない以外は実施例1と同じ条件で濾過を行ったところ、濾過開始直後にフィルタが閉塞し、濾過は全く不可能であった。
【0049】
比較例2
実施例1と同じ組成を持つスラリーを外径60ミリ、長さ500ミリ、目開き40ミクロンのステンレスメッシュのフィルタエレメントを内蔵したカートリッジフィルタで濾過した。濾過に要する時間は約7分であった。また、濾過圧(差圧)は、濾過開始直後で1Kg/cmGであったが、濾過終了時には3Kg/cmGまで上昇した。
【0050】
実施例1と同様に焼結体を作成し、目視にて表面の小穴、異物の欠陥数を数えたところ、欠陥数は2×10−4個/cmであった。また、欠陥を更に詳細に観察した結果、焼結体中に10ミクロン以上の直径かつ数10ミクロンから100ミクロン以上と推定される空洞が観察され、製造工程の洗浄時に使用するウェスの糸くずが原因と思われた。また蛍光X線分析装置により、金属異物の混入が原因である欠陥も発見された。
【0051】
また、同様のスラリーをさらに数回製造し、同じカートリッジフィルタでの濾過実験を実施したところ、フィルタが閉塞し濾過不能になることがしばしばあった。
【0052】
実施例2
実施例1と同じ組成のスラリーに、異物として45ミクロンふるい上を250ppm、及び350ppm加えたスラリーを作成し、実施例1と同じスラリー濾過装置で、同じ運転条件で濾過したところ、濾過圧(差圧)が3Kg/cmG以上にまで上昇し、濾過時間は12〜15分を要したが濾過は可能であった。また、実施例1と同様に焼結体を作成し、目視にて表面の小穴、異物の欠陥数を数えたところ、欠陥数は実施例1と同じく1×10−4個/cm以下であった。欠陥には45ミクロン篩上(粗大粒子)や金属異物が原因と推定されるものはなかった。
【0053】
実施例3
アルミナ還元窒化法で作られた窒化アルミニウム粉末100部に焼結助剤としてイットリア5部、結合剤、分散剤等としてポリビニルブチラール、ジブチルブチラール等を計13部、溶剤としてトルエン、及びエタノール計120部をナイロン製のボールミル中で、ナイロンで被覆された鋼球を用いて約一晩混合し、シート成形用の窒化アルミニウムスラリー約200kgを得た。このスラリーを、実施例1と同じ外径60ミリ、長さ250ミリ、濾過精度50ミクロンのビスコースレーヨン製の糸巻タイプのフィルタエレメントを内蔵したスラリー精製装置を用いて、実施例1と同じ運転条件で濾過した。スラリーの粘度は約300センチポイズで、濾過には約12分を要した。また濾過圧力(差圧)は濾過開始から終了にかけて上昇傾向はあったが約1Kg/cmG以下で安定していた。シート成形を行い、2インチ×2インチのサイズの焼結体を作成し、熟練検査員により欠陥の目視検査を行ったところ、不良率は0.3%以下であった。
【0054】
また、同様のスラリーをさらに数回製造し、同じスラリー精製装置を使って、実施例1と同じ運転条件で濾過実験を繰り返したところ、スラリーの粘度は200から500センチポイズを示した。また、フィルタエレメントが閉塞し、精製不能になることはなかった。さらに、焼結体の不良率は0.3%以下で推移した。
【0055】
比較例4
実施例3と同じ組成のスラリーを、富士フィルタ工業製のジェットフィルタMー15/5型を用いて、噴射圧力85kg/cm2Gで濾過した。数回の運転の結果、このスラリーの粘度は250から500センチポイズまでばらついた。また濾過に要する時間は15から20分であった。実施例3と同様に焼結体を作成し、目視検査を行ったところ、欠陥に基づく不良率は0.3%から2%までばらついた。また、欠陥部分を走査型電子顕微鏡および蛍光X線分析装置で観察した結果、欠陥は濾過スラリー中の粗大粒子、糸くず、金属粉が主な原因で発生したことが判った。
【0056】
実施例4
実施例3と同じ組成のスラリーを作成し、これを外径60ミリ、長さ250ミリ、濾過精度25ミクロンのビスコースレーヨン製の糸巻タイプのフィルタエレメントを内蔵したスラリー精製装置を用いて、実施例1と同じ運転条件で濾過した。スラリーの粘度は約280センチポイズで、濾過には約18分を要した。また濾過圧力(差圧)は濾過開始から終了にかけて上昇傾向はあったが約3Kg/cm2Gで安定していた。シート成形を行い、2インチ×2インチのサイズの焼結体を作成し、欠陥の目視検査を行ったところ、不良率は0.2%以下であった。
【0057】
比較例5
実施例3と同じ組成のスラリーを、外径60ミリ、長さ500ミリ、目開き20ミクロンのステンレスメッシュのフィルタエレメントを内蔵したカートリッジフィルタで濾過した。濾過に要する時間は約15分であった。また、濾過器内圧は1Kg/cmGから5Kg/cmG近くまで上昇した。実施例4と同様に焼結体を作成し、目視検査を行ったところ、欠陥に基づく不良率は1.5%であった。欠陥は比較例4と同じく金属異物、窒化アルミニウムの粗大粒子、糸くずが主な原因と推定された。
【0058】
また、同様のスラリーをさらに数回製造し、同じカートリッジフィルタでの濾過実験を実施したところ、フィルタが閉塞し濾過不能になることがしばしばあった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の濾過装置の代表的な態様を示す斜視図
【図2】本発明の濾過装置における密閉フィルタハウジングの内部構造の一態様を示す断面図
【図3】本発明の濾過装置における密閉フィルタハウジングの保持構造の他の態様を示す概略図
【図4】本発明の濾過装置における密閉フィルタハウジングの保持構造の他の態様を示す概略図
【符号の説明】
【0060】
1 密閉フィルタハウジング
2 振動装置
3 被処理スラリー供給口
3a フレキシブルパイプ
4 処理済スラリー排出口
4a フレキシブルパイプ
5 固定台
6 リブ
7 スプリングシリンダ
8 弾性体
9 加圧具
10 フィルタエレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉フィルタハウジング内にフィルタエレメントを固定して、該密閉フィルタハウジング内を二室に分割し、一方の室には被処理スラリー供給口を、他方の室には、処理済スラリー排出口を設けた濾過装置において、前記密閉フィルタハウジングは、その外壁に振動装置が付設され、且つ、支持機構によって振動可能な状態で固定台に取り付けられ、更に、前記被処理スラリー供給口と処理済スラリー排出口には、フレキシブルパイプを接続して前記被処理スラリーの供給及び処理済スラリーの排出を行なうようにしたことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記フィルタエレメントが、体積濾過タイプのフィルタエレメントである請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記支持機構が、前記密閉ハウジングを固定台に懸吊する構造を有する請求項1又は2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記支持機構が、前記密閉ハウジングを固定台に弾性体を介して挟持、或いは、抱持する構造を有する、請求項1又は2に記載の濾過装置。
【請求項5】
非処理スラリーが、濃縮によりチクソトロピー性を示すスラリーである請求項1〜3のいずれか一項に記載された濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−414(P2010−414A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159432(P2008−159432)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】