説明

灌水用チューブ

【課題】 本発明は、ヒートシール部などの継ぎ目を有せず且つ水放出口の破損がないと共に、偏平状態とした時の屈曲部へ加わる応力を軽減して屈曲部の劣化を防止して長期間に亘って優れた機械的強度を維持する灌水用チューブを提供する。
【解決手段】 本発明の灌水用チューブは、周方向に継ぎ目がなく且つ水を放出するための水放出孔4が貫設されてなるポリエチレン系樹脂製の灌水用チューブであって、ポリエチレン系樹脂が、所定密度及びメルトマスフローレイトを有する中密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる一方、一対の屈曲部1、1から扁平状態に折り畳むことができると共に、上記屈曲部1、1の近傍部内周面に長さ方向に突条部2、2が形成され、上記扁平状態において、上記突条部2によって上記突条部2と上記屈曲部1との間に空間部3が形成されるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水放出孔の亀裂が生じず且つ扁平状態とした時の屈曲部に加わる力を軽減し屈曲部の強度低下の少ない灌水用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、灌水用チューブとして、硬質合成樹脂管の代わりに、高圧法ポリエチレンや、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる軟質合成樹脂フィルムからなる灌水用チューブが用いられている。この灌水用チューブは、その内部に通水していない時には偏平状態となる一方、内部に通水した時には膨張して円筒形状となるため、従来の硬質合成樹脂管に比して、収納、運搬、保管が容易であり、更に、栽培植物の株間形式の変更や、灌水区域の任意形状に容易に適応することが出来ることから、野菜などの栽培に広く採用されている。
【0003】
上記灌水用チューブは、通水させた水を外部に放出させるための水放出孔が長さ方向に所定間隔毎に形成されているが、軟質合成樹脂フィルムをチューブ状とした上で所定箇所に水放出孔を形成するのは容易ではない。
【0004】
そこで、通常は、軟質合成樹脂フィルムをチューブ状とする前に、軟質合成樹脂フィルムに機械的なパンチングやレーザー光によって水放出孔を形成した後、軟質合成樹脂フィルムを円筒状として幅方向の両端部同士を熱融着一体化することによって灌水用チューブを製造している。
【0005】
そして、ヒートシール部を有する灌水用チューブとして、特許文献1に、特定のメルトマスフローレイト、特定の密度を有する中低圧エチレン・α−オレフィン共重合体と高圧法ポリエチレンの組成物を用いることによって、繰り返し耐圧疲労強度に優れた灌水用チューブが開示されている。
【0006】
しかしながら、上記灌水用チューブは、チューブ自体にヒートシール部があるため、灌水用チューブ内への通水と非通水を繰り返して行ったり、或いは、灌水用チューブに大きな水圧が加わった時に、灌水用チューブがそのヒートシール部から破れるといった問題点があった。
【0007】
更に、ヒートシール部の破壊による問題点を解消する方法として、特許文献2には、特定のポリオレフィン化合物を用いるヒートシール部のない灌水用チューブが開示されている。
【0008】
しかしながら、灌水用チューブに穿設した水放出孔に水圧がかかった際に、水放出孔の長手方向の端部に応力が集中して水放出孔に亀裂が発生し、この発生した亀裂が隣接する水放出孔へ伝搬し、灌水用チューブが破裂する虞れがあった。
【0009】
又、灌水用チューブは、その不使用時においては、偏平状態とされて円柱状に巻回された状態で保存され、この際、灌水用チューブには折り畳み方向に押圧力が加わり、その結果、灌水用チューブの両側の屈曲部が弱体化してしまい、灌水用チューブ内への通水と非通水を繰り返して行ったり、或いは、灌水用チューブに大きな水圧が加わった時に、灌水用チューブがその屈曲部から破れてしまうといった問題点があった。
【0010】
【特許文献1】第3766860号公報
【特許文献2】特開平10−47555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ヒートシール部などの継ぎ目を有せず且つ水放出口の破損がないと共に、偏平状態とした時の屈曲部へ加わる応力を軽減して屈曲部の劣化を防止して長期間に亘って優れた機械的強度を維持する灌水用チューブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の灌水用チューブは、周方向に継ぎ目がなく且つ水を放出するための水放出孔が貫設されてなるポリエチレン系樹脂製の灌水用チューブであって、上記ポリエチレン系樹脂が、密度が0.93〜0.95g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分である中密度ポリエチレン50〜90重量%と、密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分である直鎖状低密度ポリエチレン10〜50重量%からなる一方、直径方向に対向する部分に一対の屈曲部を有し、これら一対の屈曲部から扁平状態に折り畳むことができると共に、上記屈曲部の近傍部内周面に長さ方向に突条部が形成され、上記扁平状態において、上記突条部によって上記突条部と上記屈曲部との間に空間部が形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
そして、上記灌水用チューブにおいて、一対の屈曲部のそれぞれの近傍部に形成された突条部は、直径方向に対向する内周面に形成されていることを特徴とする。
【0014】
更に、上記灌水用チューブにおいて、各屈曲部の近傍部に形成された突条部は、周方向に所定間隔を存して形成された二条の突条部を一組として形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の灌水用チューブは、上述の如き構成を有していることから、降伏点強度及び引裂強度に優れており、灌水用チューブ内に通水させる水圧によって水放出孔に亀裂を生じたり或いは地面に設置した際に石などに接触するなどして裂けるなどの不測の事態は生じない。
【0016】
そして、本発明の灌水用チューブは、不使用時には、偏平状態に折り畳まれて巻回されて保管され、この際、灌水用チューブには内外方向、即ち、折り畳み方向に圧力が加わるが、灌水用チューブには、その屈曲部の近傍部内周面に長さ方向に突条部が形成されており、偏平状態において突条部によって突条部と屈曲部との間に空間部が形成されるように構成されているので、灌水用チューブの屈曲部に過度な押圧力が加わるのが防止され、屈曲部が脆弱化するのを阻止し、屈曲部の優れた機械的強度を長期間に亘って維持して通水時に屈曲部から破裂する事態が生じるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の灌水用チューブAの一例を図面を参照しつつ説明する。図1乃至図3に示したように、灌水用チューブAは、特定の中密度ポリエチレン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレンとからなる軟質ポリエチレン系樹脂フィルムからなり、その内部に通水すると水圧によって円筒状となる一方、内部に通水をしていない状態においては、直径方向に対向する部分に形成された一対の屈曲部1、1から自重によって屈曲して偏平状態となり、更に、周方向にはヒートシール部などの継ぎ目を一切有していない。
【0018】
上記灌水用チューブAを構成している軟質ポリエチレン系樹脂フィルムは、密度が0.93〜0.95g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分である中密度ポリエチレン系樹脂90〜50重量%と、密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分である直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂10〜50重量%とからなる。
【0019】
中密度ポリエチレンの密度は、低いと、灌水用チューブの降伏点強度が低下して、灌水用チューブ内に通水した時に、水圧によって水放出孔に亀裂を生じる一方、高いと、灌水用チューブの引裂強度が低下し、灌水用チューブを地面に設置した場合、灌水用チューブが石に接触するなどした時に破れ易くなるので、0.93〜0.95g/cm3に限定され、0.935〜0.945g/cm3が好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂の密度は、JIS K7112に準拠して測定されたものをいう。
【0020】
又、中密度ポリエチレンのメルトマスフローレイトは、低いと、灌水用チューブの機械的強度が低下する一方、高いと、灌水用チューブの成形性が低下するので、0.5〜7.0g/10分に限定され、1.0〜4.0g/10分が好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレイトは、JIS K7210に準拠して190℃の条件下にて測定されたものをいう。
【0021】
又、ポリエチレン系樹脂中における中密度ポリエチレンの含有量は、少ないと、灌水用チューブの降伏点強度が低下して、灌水用チューブ内に通水した時に、水圧によって水放出孔に亀裂を生じる一方、多いと、灌水用チューブの引裂強度が低下し、灌水用チューブを地面に設置した場合、灌水用チューブが石に接触するなどした時に破れ易くなるので、50〜90重量%に限定され、60〜80重量%が好ましい。
【0022】
そして、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンとα−オレフィンとを中低圧で共重合させて得られ、メタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて共重合させたものが、透明性、機械的強度、耐ブロッキング性、成形性に優れており好ましい。なお、α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0023】
そして、直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、低いと、灌水用チューブの降伏点強度が低下して、灌水用チューブ内に通水した時に、水圧によって水放出孔に亀裂を生じる一方、高いと、灌水用チューブの引裂強度が低下し、灌水用チューブを地面に設置した場合、灌水用チューブが石に接触するなどした時に破れ易くなるので、0.90〜0.93g/cm3に限定され、0.91〜0.925g/cm3が好ましい。
【0024】
更に、直鎖状低密度ポリエチレンのメルトマスフローレイトは、低いと、灌水用チューブの機械的強度が低下する一方、高いと、灌水用チューブの成形性が低下するので、0.5〜7.0g/10分に限定され、1.0〜4.0g/10分が好ましい。
【0025】
そして、ポリエチレン系樹脂中における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、少ないと、灌水用チューブの引裂強度が低下し、灌水用チューブを地面に設置した場合、灌水用チューブが石に接触するなどした時に破れ易くなる一方、多いと、灌水用チューブの降伏点強度が低下して、灌水用チューブ内に通水した時に、水圧によって水放出孔に亀裂を生じるので、10〜50重量%に限定され、20〜40重量%が好ましい。
【0026】
又、図2及び図4に示したように、灌水用チューブAの一対の屈曲部1、1のそれぞれの近傍部内面、即ち、一対の屈曲部1、1間の周方向の中央部よりも屈曲部1、1側に近づいた部分の内面で、且つ、灌水用チューブAを円筒状とした状態における直径方向に対向する部分のそれぞれには、周方向に所定間隔を存して互いに平行に形成された断面が半円球状の二条の突条部2、2を一組として形成している。
【0027】
この突条部2の突出高さは20〜70μmに調整されることが好ましい。これは、突条部2の高さが低いと、灌水用チューブを偏平状態とした時に、突条部と屈曲部との間に空間部が形成されず、灌水用チューブの屈曲部が完全に屈曲してしまい、灌水用チューブがその屈曲部から破損し易くなる一方、突条部の高さが高いと、灌水用チューブを偏平状態とした時に突条部に当接する灌水用チューブ部分に過度の圧力が加わり、突条部の当接部分から灌水用チューブが破損する虞れがあるからである。
【0028】
又、突条部2の基端における周方向の幅は0.05〜2mmであることが好ましい。これは、突条部2の基端における周方向の幅が狭いと、灌水用チューブを偏平状態とした時に、突条部と屈曲部との間に空間部が形成されず、灌水用チューブの屈曲部が完全に屈曲してしまい、灌水用チューブがその屈曲部から破損し易くなる一方、突条部2の基端における周方向の幅が広いと、灌水用チューブ内に通水した際に水の抵抗が大きくなる虞れがあるからである。
【0029】
そして、灌水用チューブAをその屈曲部1、1から折り曲げて折り畳み偏平状態とすると、灌水用チューブAの内周面に形成した突条部2がこれに対向する灌水用チューブAの内周面に当接し、灌水用チューブAの屈曲部1と突条部2との間に空間部3を形成して、灌水用チューブAの屈曲部1が完全に折れ曲がってしまう状態を阻止し、屈曲部1への押圧力を軽減している。
【0030】
従って、灌水用チューブAは、その不使用時においては、偏平状態とされて円柱状に巻回された状態で保存され、この際、灌水用チューブAには折り畳み方向に押圧力が加わるが、灌水用チューブAの屈曲部1の折れ曲がりが突条部2によって緩和され、灌水用チューブAの屈曲部1の脆弱化を防止しており、灌水用チューブAの屈曲部1、1の機械的強度の低下を確実に防止している。
【0031】
更に、二条の突条部2、2を一組として各屈曲部1の近傍部内面に形成しており、突条部2、2に当接する灌水用チューブA部分への押圧力を分散させ、突条部2、2が当接している灌水用チューブA部分の脆弱化をより確実に防止している。
【0032】
そして、図1において、灌水用チューブAを偏平に折り畳んだ状態における上側部分A1の屈曲部1、1近傍部のそれぞれには、灌水用チューブAの長さ方向に所定間隔毎に円形状の水放出孔4、4・・・が多数個、突条部2に沿って内外面間に貫通した状態に貫設されている。一方の屈曲部1の近傍部に形成された水放出孔4と、他方の屈曲部1の近傍部に形成された水放出孔4とは、灌水用チューブAの長さ方向にずれた状態に形成されている。
【0033】
又、図5及び図6に示したように、灌水用チューブAを偏平にした状態における上側部分A1の屈曲部1、1近傍部のそれぞれに、灌水用チューブAの長さ方向に所定間隔毎に円形状の水放出孔4、4・・・が多数個、突条部2に沿って内外面間に貫通した状態に貫設されて水放出孔列4Aが形成され、この水放出孔列4Aが周方向に所定間隔を存して互いに平行に複数列、形成されていてもよい。図5及び図6では、二列の水放出孔列4A、4Aを形成した場合を示した。
【0034】
なお、水放出孔4の直径は、通常、0.1〜0.8mmが好ましく、灌水用チューブの長さ方向における水放出孔4、4間の間隔は50〜300mmが好ましい。
【0035】
又、灌水用チューブAの厚さは、薄いと、灌水用チューブ内に通水させる水圧の一時的な上昇によって破裂する虞れがある一方、厚いと、灌水用チューブの軽量性が低下することがあるので、100〜200μmが好ましい。更に、灌水用チューブを屈曲部1、1から偏平状態とした時の灌水用チューブの幅は、通常、40〜60mm程度に調整される。
【0036】
なお、灌水用チューブAには、その物性を損なわない範囲内において、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防霧剤、滑剤、顔料などが添加されてもよい。
【0037】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、従来公知の任意のものが使用され、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、テトラ(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,5,8,12−テトラキス[4,6−ビス{N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジメチル縮合物、2−第三オクチルアミノ−4,6−ジクロロ−s−トリアジン/N,N,−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン縮合物、N,N,−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン/ジブロモエタン縮合物、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジン、ビス−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、ビス−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)スクシネート、2,4,6−トリス[N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−n−ブチルアミノ]−s−トリアジンなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0038】
又、上記紫外線吸収剤としては、従来公知のものが使用され、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0039】
又、上記酸化防止剤としては、従来公知のものが使用され、特に、熱安定剤としての効果を兼ね備えるものが好ましい。このような酸化防止剤としては、カルボン酸の金属塩、フェノール系抗酸化剤、有機亜燐酸エステルなどのキレーターが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0040】
更に、上記防霧剤としては、従来公知のものが使用され、例えば、シリコーン系、フッ素系などの界面活性剤が挙げられる。上記滑剤としては、従来公知のものが使用され、例えば、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのビスアマイドなどが挙げられる。
【0041】
次に、上記灌水用チューブAの製造方法について説明する。灌水用チューブAの製造方法としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂及び必要に応じて添加剤を押出機に供給して溶融混練して押出機の先端部に取り付けたサーキュラダイから円筒状に押出し、得られた円筒状体にパンチングやレーザー光によって水放出孔を形成して灌水用チューブAを製造することができる。この際、サーキュラダイにおける内ダイのリップ部に突条部2に対応した凹溝を形成しておくことによって、得られる灌水用チューブAの内面にその長さ方向に連続的に突条部2を形成することができる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
中密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製 商品名「ユメリット/4540F」、密度:0.94g/cm3、メルトマスフローレイト:4g/10分)80重量部及び直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製 商品名「エボリュー/SP2510」、密度:0.92g/cm3、メルトマスフローレイト:1.5g/10分)20重量部からなる樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端部に取付けたサーキュラダイから円筒状に押出し、更に、得られた円筒状体にレーザー光を用いて直径が0.6mmの水放出孔4を多数、内外面間に亘って貫設して灌水用チューブAを得た。なお、サーキュラダイにおける内部マンドレルのリップ部に半径1.0mmの半円形状の凹溝を4箇所形成した。又、内部マンドレルのリップ部に凹溝を形成していない以外は同一構造を有するサーキュラダイを用いたときに、サーキュラダイから押出される円筒状体の厚さが130μmとなるように押出量を調整した。
【0044】
得られた灌水用チューブAは、その直径方向に対向する部分を屈曲部1、1として偏平状態に折り畳んだ時の幅は50mmであった。又、灌水用チューブAの屈曲部1、1の近傍部内面における直径方向に対向する部分のそれぞれには、周方向に5mmの間隔を存してされた二条一組の突条部2、2が一組づつ形成されていた。なお、各突条部は、その高さは38μmで且つ基端における周方向の幅は1.2mmであった。
【0045】
更に、図5及び図6に示したように、灌水用チューブAを偏平にした状態における上側部分A1の屈曲部1、1近傍部のそれぞれには、灌水用チューブAの突条部2に沿って直径0.6mmの円形状の水放出孔4、4・・・が200mm毎に形成されて水放出孔列4Aが形成されており、この水放出孔列4Aが周方向に1.0mmを存して互いに平行に二列形成されていた。なお、互いに接近して形成された水放出孔列4A、4Aを構成している水放出孔4、4同士は灌水用チューブAの長さ方向に互いにずれた状態に形成されていた。
【0046】
(実施例2)
中密度ポリエチレンを80重量部の代わりに50重量部とし、直鎖状低密度ポリエチレンを20重量部の代わりに50重量部としたこと以外は実施例1と同様にして灌水用チューブAを得た。
【0047】
(比較例1)
中密度ポリエチレン100重量部とし、直鎖状低密度ポリエチレンを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして灌水用チューブを得た。
【0048】
(比較例2)
直鎖状低密度ポリエチレン100重量部とし、中密度ポリエチレンを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして灌水用チューブを得た。
【0049】
(比較例3)
内ダイのリップ部に凹溝が形成されていないサーキュラダイを用いたこと以外は実施例1と同様にして灌水用チューブAを得た。得られた灌水用チューブAには突条部は形成されていなかった。
【0050】
得られた灌水用チューブについて、その厚さ、降伏点強度、引裂強度及び通水テストを下記方法で測定し、その結果を表1に示した。
【0051】
(厚さ)
ダイヤルゲージ(ミツトヨ社製)を用い、JIS K7130に準拠して、灌水用チューブにおける突条部が形成されている部分(表1では「突条部形成部分」と表記した)と、突条部が形成されていない部分(表1では「突条部非形成部分」と表記した)の厚さを測定した。
【0052】
(降伏点強度)
ストログラフ(東洋精機製作所社製)を用い、JIS K7127に準拠して、灌水用チューブの降伏点強度を測定し、下記基準に基づいて降伏点強度を評価した。
◎・・・降伏点強度が2100g以上であった。
○・・・降伏点強度が1800g以上且つ2100g未満であった。
△・・・降伏点強度が1500g以上且つ1800g未満であった。
×・・・降伏点強度が1500g未満であった。
【0053】
(引裂強度)
直角引裂強度測定機(東洋精機製作所社製)を用いてJIS K7128−3に準拠して、灌水用チューブの屈曲部の引裂強度を測定し、下記判断に基づいて屈曲部の引裂強度を評価した。
○・・・引裂強度が15.0N以上であった。
△・・・引裂強度が10.0N以上且つ15.0N未満であった。
×・・・引裂強度が10.0N未満であった。
【0054】
(通水テスト)
得られた灌水チューブをハウス内に長さ30mに亘って設置し、水圧をかけて通水テストを行い、灌水用チューブが破裂した時の最大耐圧強度を測定し下記基準に基づいて判断した。
○・・・最大耐圧強度が9.8×104Pa以上であった。
△・・・最大耐圧強度が6.9×104Pa以上且つ9.8×104Pa未満であった。
×・・・最大耐圧強度が6.9×104Pa未満であった。
【0055】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の灌水用チューブを扁平状態に折り畳んだ状態を示した斜視図である。
【図2】図1の灌水用チューブ内に通水させた状態を示した縦断面図である。
【図3】本発明の灌水用チューブを扁平状態に折り畳んだ状態を示した縦断面図である。
【図4】本発明の灌水用チューブを示した斜視図である。
【図5】本発明の灌水用チューブ内に通水させた状態を示した他の一例を示した斜視図である。
【図6】本発明の灌水用チューブ内に通水させた状態を示した他の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 屈曲部
2 突条部
3 空間部
4 水放出孔
A 灌水用チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に継ぎ目がなく且つ水を放出するための水放出孔が貫設されてなるポリエチレン系樹脂製の灌水用チューブであって、上記ポリエチレン系樹脂が、密度が0.93〜0.95g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分である中密度ポリエチレン50〜90重量%と、密度が0.90〜0.93g/cm3で且つメルトマスフローレイトが0.5〜7.0g/10分である直鎖状低密度ポリエチレン10〜50重量%からなる一方、直径方向に対向する部分に一対の屈曲部を有し、これら一対の屈曲部から扁平状態に折り畳むことができると共に、上記屈曲部の近傍部内周面に長さ方向に突条部が形成され、上記扁平状態において、上記突条部によって上記突条部と上記屈曲部との間に空間部が形成されるように構成されていることを特徴とする灌水用チューブ。
【請求項2】
一対の屈曲部のそれぞれの近傍部に形成された突条部は、直径方向に対向する内周面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の灌水用チューブ。
【請求項3】
各屈曲部の近傍部に形成された突条部は、周方向に所定間隔を存して形成された二条の突条部を一組として形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の灌水用チューブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−104371(P2008−104371A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287910(P2006−287910)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)