説明

灌流培養システム

【課題】培養室に検体を入れてから、灌流培養の準備に掛かる時間を短縮できる、灌流培養システムの提供。
【解決手段】培養室21を複数有する培養槽2と、第1供給管44を複数有する培養液容器と、第1排出管53を複数有する複数の培養液回収容器と、各培養室21の上面を塞ぎ培養液の供給口32及び排出口33が形成された蓋部3と、各第1供給管44が取り付けられた第1供給用コネクタ45と、各第1排出管53が取り付けられた第1排出用コネクタ54と、各供給口32から延びる第2供給管46が取り付けられた第2供給用コネクタ47と、各排出口33から延びる第2排出管55が取り付けられた第2排出用コネクタとを備えている、灌流培養システム。第1及び第2供給用コネクタ45,47を接続すると各第1及び第2供給管44,46が接続され、第1及び第2排出用コネクタ54,56を接続すると各第1及び第2排出管53,55が接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灌流培養システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、細胞や組織片などの検体を収容した培養槽へ、培養液を連続的に供給しつつ、培養槽内に発生した老廃物などを含む古い培養液を連続的に排出する灌流培養が提案されている。この灌流培養は常に新しい培養液を供給できるために長期間検体を生育させることが可能となる。また、この灌流培養では、検体からの分泌物を連続的に回収できるため、ホルモン分泌量の経時変動をモニターしたり(非特許文献1参照)、分泌性発光プローブ(ウミホタル・ルシフェラーゼ)を利用して遺伝子の転写活性の経時変動をモニターする(非特許文献2参照)ことも可能である。さらには、培養液を薬剤に一時的に切り替えて検体に薬剤を投与することで、薬剤の有無による検体の応答を調べることにも利用されている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Naoto Hayasaka, et al., The Journal of Neuroscience, March 1, 2002, 22(5):1600-1607
【非特許文献2】Yusuke Tanahashi, et al., Analytical Biochemistry 289, 260-266(2001)
【非特許文献3】Kazutoshi Yamagishi, et al., Analytical Biochemistry 354, 15-21(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、対照実験との比較を行うなどの理由で細胞などの検体を複数同時に灌流培養することがある。この場合、検体が収容された培養槽を複数用意し、それぞれの培養槽と培養液供給源とを接続したり、またそれに薬剤供給源等を接続することもある。このような各供給源との接続は、雑菌などのコンタミネーションを防止するために細心の注意を払う必要があり、非常に時間が掛かるという問題がある。このように培養槽内に検体を入れてから灌流培養を始めるまでの準備に長時間を要すると、培養槽内の検体に培養液が供給されない状態が続くこととなり、検体が衰弱したり死に至るという事態が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1の灌流培養システムは、上面が開口した複数の培養室を有する培養槽と、前記各培養室に供給する培養液を収容する培養液供給源と、前記培養液供給源から延びる複数の第1の供給管と、前記培養室内から排出された培養液を回収する複数の回収容器と、前記各回収容器から延びる複数の第1の排出管と、前記培養槽の各培養室の上面を塞ぐとともに、前記各培養室に対応する位置に設けられた供給口及び排出口を複数対有するとともに、前記各供給口から延びる第2の供給管及び前記各排出口から延びる第2の排出管を有する1つの蓋部と、前記各第1の供給管が取り付けられた第1の供給用コネクタと、前記各第1の排出管が取り付けられた第1の排出用コネクタと、前記第2の供給管が取り付けられ、前記第1の供給用コネクタに接続可能な第2の供給用コネクタと、前記第2の排出管が取り付けられ、前記第1の排出用コネクタに接続可能な第2の排出用コネクタと、を備え、前記第1の供給用コネクタと第2の供給用コネクタとが接続されたとき、前記各第1の供給管と第2の供給管とが接続され、前記第1の排出用コネクタと第2の排出用コネクタとが接続されたとき、前記各第1の排出管と第2の排出管とが接続される。
【0006】
上記灌流培養システムによれば、灌流培養の準備は、まず、培養槽の各培養室内に検体を入れた後、蓋部によって各培養室の上面を塞ぐ。そして、蓋部から延びた第2の供給管が取付けられた第2の供給用コネクタに、培養液供給源から延びた第1の供給管が取り付けられた第1の供給用コネクタを接続する。また、蓋部から延びた第2の排出管が取り付けられた第2の排出用コネクタに、回収容器から延びた第1の排出管が取り付けられた第1の排出用コネクタに接続する。このように、各供給管や排出管同士を一つずつ接続するのではなく、第1の供給用コネクタと第2の供給用コネクタを接続するとともに、第1の排出用コネクタと第2の排出用コネクタとを接続するだけでよい。この結果、培養室内に検体を入れてからの灌流培養の準備に掛かる時間を短縮することができ、ひいては、検体が衰弱したり死に至ることを防止することができる。なお、上記第1の供給用コネクタと第1の排出用コネクタとは別々の部材としてもよいし、これらを併せて一つの部材としても良い。同様に、第2の供給用コネクタと第2の排出用コネクタも別々の部材としてもよいし、一つの部材としてもよい。また、上記培養液供給源は、培養液が収容された一つ又は複数の培養液容器とすることができる。
【0007】
また、本発明に係る第2の灌流培養システムは、上面が開口した複数の培養室を有する培養槽と、前記各培養室に供給する培養液を収容する培養液供給源と、前記培養液供給源から延びる複数の供給管と、前記各培養室内から排出された培養液を回収する複数の回収容器と、前記各回収容器から延びる複数の排出管と、前記培養槽の各培養室の上面を塞ぐとともに、前記各培養室に対応する位置に設けられた供給口及び排出口を複数対有する1つの蓋部と、前記各供給管及び各排出管が取り付けられており、前記蓋部に接続可能なコネクタと、を備え、前記コネクタを前記蓋部に接続したとき、前記各供給管が前記各供給口と接続し、前記各排出管が前記各排出口と接続する。
【0008】
上記灌流培養システムによれば、灌流培養の準備は、まず、培養槽の各培養室に検体を入れた後、蓋部によって各培養室の上面を塞ぐ。そして、培養液供給源や回収容器から延びる供給管や排出管が取り付けられたコネクタを蓋部に接続することで、灌流培養の準備が完了する。このように、コネクタを蓋部に接続するだけで灌流培養の準備を完了することができるため、培養室に検体を入れてからの灌流培養の準備に掛かる時間を短縮することができ、ひいては検体が衰弱したり死に至ることを防止することができる。なお、上記培養液供給源は、培養液が収容された一つ又は複数の培養液容器とすることができる。
【0009】
上記第1及び第2の灌流培養システムは種々の構成をとることができる。例えば、培養室に供給する薬剤を収容する薬剤供給源と、薬剤供給源から延びる複数の薬剤供給管と、をさらに備えるとともに、各薬剤供給管と培養液を供給する各供給管とを接続し、培養室への培養液又は薬剤の供給を切り替える複数のバルブをさらに備えた構成とすることもできる。この場合、バルブを切り替える制御部をさらに備えていることが好ましい。この構成によれば、各培養室内の検体に対して薬剤を供給し各培養室内の検体の応答を調べることができる。また、制御部によってバルブを切り替えることにより、培養室内の検体へ薬剤を投与する時間やタイミングを自動で設定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培養室に検体を入れてからの灌流培養の準備に掛かる時間を短縮することができ、ひいては培養室内の検体が衰弱したり死に至ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明に係る灌流培養システムの実施形態を示した概略図である。
【図2】図2は本実施形態に係る灌流培養システムにおいて薬剤を投入する時間を示す図である。
【図3】図3は本発明に係る灌流培養システムの他の実施形態を示した概略図である。
【図4】図4は本実施形態に係る蓋部の変形例を示した概略正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る灌流培養システムの実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る灌流システムの概略図である。
【0013】
図1に示すように、灌流培養システム1は、複数の培養室21を有する培養槽2と、各培養室21の上面を塞ぐ蓋部3と、培養室21内に培養液及び薬剤を供給する供給ユニット4と、培養室21から排出された老廃物などを含む古い培養液を回収する回収ユニット5と、を備えている。
【0014】
培養槽2は、横に4個並ぶ培養室21を有しているが、この培養室21の数は特に限定されるものではない。この培養室21は上面が開口しており、後述する蓋部3によって上面が塞がれる。この培養槽2は、外部から観察できるように少なくとも一部が透明であることが好ましく、材質は、ポリカーボネートやポリスチレン、アクリル等の樹脂やガラス等とすることが好ましい。
【0015】
蓋部3は、培養槽2上に載置されることで、培養槽2の各培養室21上面を塞ぐように構成されており、両端部に設けられた固定部(図示省略)によって培養槽2に固定されている。また、蓋部3は、各培養室21と対応する位置にそれぞれ供給口32及び排出口33が形成されている。また、蓋部3も、各培養室21内が外部から観察できるよう、少なくとも一部を透明とすることが好ましく、材質は、ポリカーボネートやポリスチレン、アクリル等の樹脂やガラス等とすることが好ましい。
【0016】
培養室21に培養液を供給する供給ユニット4は、培養液が収容された4個の培養液容器(培養液供給源)41と、薬剤が収容された4個の薬剤容器(薬剤供給源)42と、この培養液又は薬剤を培養室21へ送る動力源である供給ポンプ43とを備えている。また、供給ユニット4は、各培養液容器41から延びる4本の第1の供給管44が取り付けられた第1の供給用コネクタ45と、蓋部3の各供給口32から延びる4本の第2の供給管46が取り付けられた第2の供給用コネクタ47とを備えている。この第1の供給用コネクタ45と第2の供給用コネクタ47とは互いに接続可能となっており、これらを接続すると、各第1の供給管44と各第2の供給管46とが接続されて培養液を各培養室21内に供給できるようになる。また、薬剤容器42のそれぞれからは薬剤供給管48が延びており、この各薬剤供給管48はバルブ49を介して第1の供給管44に接続されている。このバルブ49は、培養室21に培養液か薬剤のどちらかを供給するよう制御部40によって流路を切り替えるよう構成されている。
【0017】
培養室21内から排出された老廃物を含む古い培養液を回収する回収ユニット5は、回収された培養液が溜められる4個の回収容器51と、培養室21内の古い培養液を回収容器51へ送る動力源である回収ポンプ52と、を備えている。また、回収ユニット5は、各回収容器51から延びる4本の第1の排出管53が取り付けられた第1の排出用コネクタ54と、蓋部3の各排出口33から延びる4本の第2の排出管55が取り付けられた第2の排出用コネクタ56とを備えている。この第1の排出用コネクタ54と第2の排出用コネクタ56とは互いに接続可能となっており、これらを接続すると、第1の排出管53と第2の排出管55とが接続されて培養室から回収された培養液を各回収容器51に送ることができる。
【0018】
次に上述した灌流培養システム1を使用する際の流れについて説明する。
【0019】
まず、培養槽2の各培養室21内に細胞や組織片等の検体を入れる。より詳細には、細胞を培養室21内に入れる場合は、まず、培養液が入った別の容器に細胞を入れて懸濁させ、この液を培養槽2の各培養室21内に分注する。そして、供給口や排出口が形成されていない別の蓋によって各培養室21の上面を塞ぎ、培養槽2をCO2インキュベータに収めて、細胞が各培養室21の底面に接着するまで半日から一晩程度置いておく。続いて、培養槽2をCO2インキュベータから取り出して、蓋をはずし、蓋部3によって各培養室21の上面を塞ぐ。また、細胞ではなく組織片を培養室21内に入れる場合は、組織切片をカルチャーインサート(例えばミリポア社のミリセル-CMなど)の膜表面に置き、これを培養槽2の各培養室21に収めた後、蓋部3によって各培養室21の上面を塞ぐ。
【0020】
以上のように検体を各培養室21内に入れて蓋部3によって各培養室21の上面を塞いだ後、第2の供給用コネクタ47に対して第1の供給用コネクタ45を差し込み、各第1の供給管44と第2の供給管46とを接続する。また、第2の排出用コネクタ56に対して第1の排出用コネクタ54を差し込み、各第1の排出管53と第2の排出管55とを接続する。
【0021】
続いて、制御部40によって供給ポンプ43及び回収ポンプ52を作動させて、各培養液容器41内の培養液を各第1及び第2の供給管44,46を介して各培養室21内へ送るとともに、各培養室21内の老廃物を含む培養液を各第1及び第2の排出管53,55を介して回収容器51へ回収する。なお、このときバルブ49は、制御部40によって培養液容器41内の培養液が各培養室21内へ送られるような流路を形成している。これにより、各培養室21内には常に新しい培養液が送られ、且つ各培養室21内の古い培養液を回収容器へ回収させることができる。
【0022】
以上のように、この灌流培養システム1は、検体を各培養室21に入れてから、蓋部3をセットし、第1の供給用コネクタ45と第2の供給用コネクタ47とを接続するとともに、第1の排出用コネクタ54と第2の排出用コネクタ56とを接続するだけで、灌流培養の準備が完了する。このため、検体を各培養室21に入れてからの時間を短縮することができ、ひいては検体の衰弱などを防止することができる。なお、各供給管44,46は、培養液容器41や供給口32、第1の供給用コネクタ45、第2の供給用コネクタ47に固定されていてもよいし、取り外し可能であってもよい。各供給管44,46が取り外し可能である場合は、検体を各培養室21に入れる前に各供給管44,46を培養液容器41や供給口32、第1の供給用コネクタ45、第2の供給用コネクタ47に取り付けておくことが好ましい。また、各排出管53,55も、回収容器51や排出口33に対して、各供給管44,46と同様の構成とすることができる。
【0023】
次に、図2に示したようなタイミングで、薬剤を培養室21内へ投入する方法について説明する。投入する薬剤としては、細胞の概日時計のリズムを同調させるデキサメタゾンや、分泌阻害剤ブレフェルディン、炭水化物の代謝調整に関与するインスリン、アレルギー反応に関与するヒスタミン、発がんや内分泌かく乱作用に関与するとされるダイオキシン類等が挙げられる。また、環境中の毒性物質の研究等においては、土壌や河川、海水等からの抽出物等も挙げられる。なお、図1の培養液容器41を上から順に第1培養液容器41a、第2培養液容器41b、第3培養液容器41c、第4培養液容器41dとし、薬剤容器42も上から順に第1薬剤容器42a、第2薬剤容器42b、第3薬剤容器42c、第4薬剤容器42dとし、さらにバルブ49も上から順に第1バルブ49a、第2バルブ49b、第3バルブ49c、第4バルブ49dとする。また、図1の培養室21を右から順に第1培養室21a、第2培養室21b、第3培養室21c、第4培養室21dとし、回収容器51は左から順に第1回収容器51a、第2回収容器51b、第3回収容器51c、第4回収容器51dとする。
【0024】
まず、キーボードやタッチパネルなどの入力部6から制御部40に各培養室21へ薬剤を投入するタイミングや時間などを入力する。このように各データが入力された制御部40は、まず、上述したように培養液容器41内の培養液が各培養室21内へ送られるようバルブ49の流路を切り替える。そして、供給ポンプ43及び回収ポンプ52を作動させて各培養液容器41内の培養液を各培養室21へ送るとともに、培養室21内の古い培養液を各回収容器51へと回収させる。
【0025】
そして、培養液をt1秒間流し続けた後、制御部40は、第1、3、4バルブ49a、49c、49dを操作し、第1、3、4培養液容器41a,41c,41dからの培養液の供給を停止するとともに、第1、3,4薬剤容器42a、42c、42dからの薬剤の供給を開始する。これにより、第1,3,4培養室21a、21c、21dには培養液ではなく、薬剤が供給される。
【0026】
次に、灌流培養の開始からt2秒後になると、制御部40によって、第2バルブ49bが操作され、第2培養液容器41bからの培養液の供給が停止されるとともに、第2薬剤容器42bからの薬剤の供給が開始される。また、第3バルブ49cも操作されて、第3薬剤容器42cからの薬剤の供給が停止され、再度第3培養液容器41cからの培養液の供給が開始される。この段階では、第1,2,4培養室21a、21b、21dに薬剤が供給されるとともに、第3培養室21cには培養液が供給されている。
【0027】
続いて、開始からt3秒後になると、制御部40によって、第1、2バルブ49a、49bが操作され、第1,2薬剤容器42a、42bからの薬剤の供給が停止されるとともに、第1,2培養液容器41a、41bからの培養液の供給が再度開始される。この段階では、第1〜3培養室21a、21b、21cには培養液が供給されており、第4培養室21dには薬剤が供給されている。
【0028】
そして、開始からt4秒後になると、制御部40によって第4バルブ49dが操作され、第4薬剤容器42dからの薬剤の供給が停止されるとともに、第4培養液容器41dからの培養液の供給が再開される。これにより、t4秒以降は、全ての培養室21に培養液が供給された状態となっている。
【0029】
以上のように薬剤を投入するタイミングや時間を変更したことによって検体に与える影響を、第1〜4回収容器51a、51b、51c、51dに回収された培養液を分析して調査する。また、各回収容器51に回収された培養液を分析するのではなく、顕微鏡やCCDカメラ、光電子増倍管などを用いて、各培養室21内の検体を直接観察したり分析したりすることもできる。なお、上記方法では、各バルブ49を切り替えたタイミングと、切り替え後の培養液や薬剤が培養室21に到達するタイミングとの間にタイムラグがある。このため、入力部6に入力したタイミングで培養室21に培養液や薬剤を到達させたい場合は、バルブ49から各培養室21に培養液や薬剤が到達する時間を考慮すればよい。このバルブ49から各培養室21に培養液や薬剤が到達する時間は、バルブ49から培養室21までの距離(第1の供給管44の長さと第2の供給管46の長さを足した距離)に第1及び第2の供給管44,46の断面積を乗じ、これを供給ポンプの設定流速で除することで算出することができる。このように算出された時間を計算に入れることで、入力部6に入力したタイミングで各培養室21に培養液や薬剤が到達するようなシステムとすることができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、第1の供給用コネクタ45と、第1の排出用コネクタ54とが別々の部材となっていたが、これらを1つの部材として構成することもできる。すなわち、各培養液容器41から延びる第1の供給管44と、各回収容器51から延びる第1の排出管53とを、一つのコネクタに取付け、このコネクタに第2の供給用コネクタ47と第2の排出用コネクタ56とを接続することもできる。なお、この第2の供給用コネクタ47と第2の排出用コネクタ56も一つの部材として構成しても良い。このように、各コネクタは種々の組み合わせを採用することができる。
【0031】
また、図3に示すように、各培養液容器41から延びる供給管44と各回収容器51から延びる排出管53とをコネクタ50に取り付け、このコネクタ50が蓋部3に直接接続可能となるように構成することもできる。なお、このようにコネクタ50を蓋部3に接続すると、各供給管44が各供給口32に接続され、各排出管53が各排出口33に接続される。
【0032】
また、上記実施形態では、培養室21の数に合わせて培養液容器41や薬剤容器42を準備したが、これらを一つの培養液容器41や一つの薬剤容器42とすることもできる。
【0033】
また、図4に示すように、蓋部3の各培養室21と対応する部分に貫通孔を形成し、その貫通孔内にゴム栓などの弾性体7を収容する構成とすることもできる。この構成によれば、例えば、供給口32からではなく、注射器などを用いてゴム栓を介して薬剤などを各培養室21内に投入することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 灌流培養システム
2 培養槽
21 培養室
3 蓋部
32 供給口
33 排出口
41 培養液容器(培養液供給源)
42 薬剤容器(薬剤供給源)
44 第1の供給管
45 第1の供給用コネクタ
46 第2の供給管
47 第2の供給用コネクタ
48 薬剤供給管
49 バルブ
51 回収容器
53 第1の排出管
54 第1の排出用コネクタ
55 第2の排出管
56 第2の排出用コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した複数の培養室を有する培養槽と、
前記各培養室に供給する培養液を収容する培養液供給源と、
前記培養液供給源から延びる複数の第1の供給管と、
前記培養室内から排出された培養液を回収する複数の回収容器と、
前記各回収容器から延びる複数の第1の排出管と、
前記培養槽の各培養室の上面を塞ぐとともに、前記各培養室に対応する位置に設けられた供給口及び排出口を複数対有するとともに、前記各供給口から延びる第2の供給管及び前記各排出口から延びる第2の排出管を有する1つの蓋部と、
前記各第1の供給管が取り付けられた第1の供給用コネクタと、
前記各第1の排出管が取り付けられた第1の排出用コネクタと、
前記第2の供給管が取り付けられ、前記第1の供給用コネクタに接続可能な第2の供給用コネクタと、
前記第2の排出管が取り付けられ、前記第1の排出用コネクタに接続可能な第2の排出用コネクタと、を備え、
前記第1の供給用コネクタと第2の供給用コネクタとが接続されたとき、前記各第1の供給管と第2の供給管とが接続され、
前記第1の排出用コネクタと第2の排出用コネクタとが接続されたとき、前記各第1の排出管と第2の排出管とが接続される、灌流培養システム。
【請求項2】
上面が開口した複数の培養室を有する培養槽と、
前記各培養室に供給する培養液を収容する培養液供給源と、
前記培養液供給源から延びる複数の供給管と、
前記各培養室内から排出された培養液を回収する複数の回収容器と、
前記各回収容器から延びる複数の排出管と、
前記培養槽の各培養室の上面を塞ぐとともに、前記各培養室に対応する位置に設けられた供給口及び排出口を複数対有する1つの蓋部と、
前記各供給管及び各排出管が取り付けられており、前記蓋部に接続可能なコネクタと、を備え、
前記コネクタを前記蓋部に接続したとき、前記各供給管が前記各供給口と接続し、前記各排出管が前記各排出口と接続する、灌流培養システム。
【請求項3】
前記培養室に供給する薬剤を収容する薬剤供給源と、
前記薬剤供給源から延びる複数の薬剤供給管と、
前記各薬剤供給管と前記各供給管とを接続し、前記培養室への培養液又は薬剤の供給を切り替える複数のバルブと、
をさらに備えた、請求項1又は2に記載の灌流培養システム。
【請求項4】
前記バルブを切り替える制御部をさらに備えた請求項3に記載の灌流培養システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−207174(P2010−207174A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58992(P2009−58992)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼発行者名 BMB2008(第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会 合同大会) 刊行物名 BMB2008(第31回日本分子生物学会年会・第81回日本生化学会大会 合同大会)講演要旨集 発行日 平成20年11月20日
【出願人】(000101466)アトー株式会社 (7)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】