説明

火力調整可能な囲炉裏

【課題】 ファンによる火皿上部焚部への風速を調整することにより、焚部の薪や炭等の燃焼物の火力を調整することができ、各料理に応じて適切な火力を選択することができる火力調整可能な囲炉裏を提供する。
【解決手段】 囲炉裏の灰受箱底部中央に火皿を設置し、火皿の通気孔下方から火皿上部の焚部へ空気を供給するファンを設け、該ファンによる焚部への空気の風速を調整する風速調整手段を設けた火力調整可能な囲炉裏。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、囲炉裏の灰受箱底部中央に形成する火皿の上部焚部へ風速を調整して、焚部の薪や炭等の燃焼物の火力を調整することにより、各種料理に応じて適切な火力が得られるようにした火力調整可能な囲炉裏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、囲炉裏の炉室部に開口された通気孔に連通接続され外部から炉室部に空気を供給する通気路とを備え、該通気路には前記空気の流量を調整する空気量調整手段が設けられた囲炉裏装置の構造が記載されている。
【0003】
そして、この特許文献1には、「前記空気量調整手段5は、空気の流量を零、即ち通気路17を遮断するとができるようになっていて、図2乃至図6に示すように、通気路17内に配置されるダンパー翼50が支軸51を介して回動自在に軸支されてできている。このダンパー翼50の回動を外部操作する操作ツマミ53が前記炉縁15に設けられていて、前記支軸51および操作ツマミ53を軸支する支軸54の先端部はギアーボックス56内でベベルギアー57,58を介して連結されている」[0010]旨説明されている。
【0004】
また、この特許文献1には、「炉室部に空気を供給する通気路が設けられ、該通気路に空気の流量を調整する空気量調整手段が設けられているため空気量調整手段を空気が流通し得るように操作することにより、炉室部内に外部から空気が供給され、常に炉室部に十分な量の酸素が供給されるので、酸素不足により引き起こされる不完全燃焼を防ぐことができる」[0021]旨説明されている。
【0005】
しかしながら、この特許文献1においては、囲炉裏の炉室部に十分な量の酸素が供給されなく酸素不足を引き起こすことにより生ずる不完全燃焼を防ぐようにしたものであり、炉室部には自然な空気を取り入れるようにしたものであって、囲炉裏底部の火皿上部焚部へ強制的にファンにより風を送り、その風速を調整することにより焚部の薪や炭等の燃焼物の火力を調整し、各料理に応じて適切な火力得られるようにしたものではない。
【0006】
また、特許文献2には、囲炉裏火箱に収納する耐火構造体に、空気流通坑を配置し、空気流通坑の配置には、耐火構造体側壁に空気流通坑口と空気坑を設け、底壁に設けられた空気坑を連結することで、灰が収納されて埋もれている側壁と底壁の空気坑を通して空気が自然に流通することを特徴とする囲炉裏が記載されている。
【0007】
そして、特許文献2には、「空気流通坑口と空気坑を配置したことで、耐火構造体に収納する灰に側面から、又底面より灰全体に、空気が流通して酸素を含み燃焼する炭の底部全体に活力を与え燃焼が増強するので、灰の発生を抑制し、発生する二酸化炭素等の有害ガスをも抑制する従来とは全く異なる機能を有する新しい囲炉裏を提供する」[0022]旨説明されている。
【0008】
しかしながら、この特許文献2においては、耐火構造体に収納する灰に側面から、又底面より灰全体に自然な空気を流通させて酸素を含み燃焼する炭火の底部全体に活力を与え燃焼が増強させるものであって、囲炉裏底部の火皿上部焚部へ強制的にファンにより風を送り、その風速を調整することにより焚部の薪や炭等の燃焼物の火力を調整し、各料理に応じて適切な火力を選択できるようにしたものではない。
【0009】
また、特許文献3には、通風パイプ4bの両端が切断開口状で、図4に示すように、炉ケース4のケース壁を貫通して設けられ、その長さ中央付近に上方に突出する開口端4cが設けられ、この開口端4c上に例えば円形状のネット4dを置き、その上で薪や炭が燃やされるようにした囲炉裏の構造が記載されている。
【0010】
そして、特許文献3には、「薪や炭を燃やす際に、この囲炉裏では炉ケース4内に通風パイプ4bが設けられているため、ネット4d上で燃料に対して空気が適当量自然に供給され、従って燃焼効率がよく、薪や炭を完全に燃やすことができ、不完全燃焼による有害成分の発生が防止される」[0016]旨説明されている。
【0011】
しかしながら、特許文献3においては、薪や炭を燃やす際に、囲炉裏の炉ケース内に通風パイプを設け、ネット4d上の燃料に対して空気が適当量自然に供されて、燃焼効率がよく薪や炭を完全に燃やすことができ、不完全燃焼による害成分の発生が防止するものであって、囲炉裏底部の火皿上部焚部へ強制的にァンにより風を送り、その風速を調整することにより焚部の薪や炭等の燃焼物火力を調整し、各料理に応じて適切な火力が得られるようにしたものでない。
【0012】
特許文献1 特開平成05−203152号公報
特許文献2 特開2005−030654号公報、
特許文献3 実開平成05−066401号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、囲炉裏底部の火皿上部焚部へ強制的にファンにより風を送り、その風速を調整することにより焚部の薪や炭等の燃焼物の火力を調整して各料理に応じて適切な火力を選択できるようにし、火皿上に設けた搭載枠上に金網や上置プレートを設置して、金網上で焼肉等を、上置プレート上面で直接鉄板料理を、又は上置プレート上面に鍋や釜等をのせて多種の料理(焼肉料理、焼魚料理、フライパン料理、すき焼、鍋料理、ご飯炊き等)が行える火力調整可能な囲炉裏を提供する。
【課題を解決する手段】
【0014】
請求項1の発明は、囲炉裏の灰受箱底部中央に火皿を設置し、火皿の通気孔下方から火皿上部の焚部へ空気を供給するファンを設け、該ファンによる焚部への空気の風速を調整する風速調整手段を設けた火力調整可能な囲炉裏を提供するものである。
【0015】
この発明においては、上記ファンによる火皿上部焚部への風速を調整することにより、焚部の薪や炭等の燃焼物の火力の強弱を調整することができ、各料理に応じて適切な火力の強弱を選択することができる。
【0016】
また、請求項2の発明は、前記風速調整手段における風速が0〜3m/secの範囲で調節するようにした請求項1記載の火力調整可能な囲炉裏を提供するものである。
【0017】
この発明においては、前記風速調整手段における風速を0〜3m/secの範囲において、例えば、送風停止=0m/sec(蒸らし)、弱火=0.2〜0.6m/sec、中火=0.7〜1.5m/sec、強火=1.6〜3m/secの様に選択して、各種料理に応じて適切な火加減を得る火力調整可能な囲炉裏を提供することができる。
【0018】
また、請求項3の発明は、前記火皿の上方に上置プレートの搭載枠を設け、火皿と上置プレート底面との間隔が5〜30cmで、該搭載枠上に設置する上置プレートの外周が焚部の外周より2〜10cm大きくした請求項1〜2の何れかに記載の火力調整可能な囲炉裏を提供するものである。
【0019】
この発明においては、搭載枠上に別途金網を設置して金網上で直接焼肉・焼き魚等を調理することができることは勿論、搭載枠上に上置プレートを設置して上置プレート上面で直接鉄板料理又は上置プレート上面に鍋や釜等をのせて多種の料理(焼肉料理、焼魚料理、フライパン料理、すき焼、鍋料理、ご飯炊き等)が行うことができる。この際、鍋や釜等の外側面には上置プレートに搭載するので薪等の燃焼時の炭が付着しにくい。
【0020】
火皿と搭載枠上の金網又は上置プレート底面との間隔は5〜30cmが好ましい。5cm未満では火皿と搭載枠上の金網又は上置プレート底面との間隔が狭過ぎ、小さな炭は投入できても、薪等は大きいため投入が困難となる。また、30cmを超えると火皿と搭載枠上の金網又は上置プレート底面との間隔が遠過ぎ、炭や薪等の燃焼物の火力が効率よく得られない。
【0021】
さらに、上置プレートの外周が焚部の外周より2〜10cm大きくすることが必要である。2cm未満であると火皿上部焚部で燃焼する薪や炭等の火の粉が食卓周辺に散るのを確実に防止できない。また、10cmを超えると炭や薪等を火皿上の焚部に対し上置プレート周囲が大きくなり過ぎ薪や炭等の燃焼物の投入がやりつらくなる。好ましくは、3〜5cmである。尚、焚部の外周は投入物の大きさにより変化し、通常5〜25cm程度である。
【0022】
また、請求項4の発明は、前記火皿の面積が25〜900cmの範囲で、火皿の通気孔の空孔率が20〜90%にある請求項1〜3の何れかに記載の火力調整可能な囲炉裏を提供するものである。
【0023】
この発明においては、前記火皿の面積が25〜900cmの範囲であることが適切である。火皿の面積が25cm未満であると火皿上部の焚部の面積が狭過ぎ、薪や炭等の燃焼範囲が狭く充分な火力を得ることができない。一方、火皿の面積が900cmを超えると火皿上部の焚部の面積が広く薪や炭等の燃焼範囲が広がるため薪や炭等の燃焼物が無駄に消費される。好ましくは、60〜400cmである。
【0024】
火皿の通気孔の空孔率が20〜90%であることが重要である。空孔率が20%未満であると火皿上部の焚部に均一な風を送ることができず、空孔率が90%を超えると灰受箱の灰や火皿上部の未燃焼物が灰排出穴に貯まる。好ましくは、30〜60%である。
【0025】
また、請求項5の発明は、前記上置プレート外周に火の粉飛散防止スカートを設けた請求項1〜4の何れかに記載の火力調整可能な囲炉裏を提供するものである。
【0026】
この発明においては、火皿上部焚部で燃焼する薪や炭等の火の粉が食卓周辺に飛散るのを確実に防止できる。または、上置プレートの外周を小さくしても薪や炭等の火の粉が食卓周辺に飛散るのを防止できる。
【0027】
また、請求項6の発明は、前記火皿の下方に囲炉裏側面にかけて灰排出穴を設け、灰排出穴の囲炉裏側面開口に前記ファンを開閉自在に形成した請求項1〜5の何れかに記載の火力調整可能な囲炉裏を提供するものである。
【0028】
この発明においては、前記ファンにより選択した一定の風速を確保して一定の面積を有し一定の空孔率を有する火皿の通気孔より、焚部の薪や炭等の燃焼物に空気(酸素)を送ることができ、各種料理に応じて適切な燃焼物の火力を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施例を示す平面図、図2は図1のII−II線概略断面図、図3は焚部の要部拡大断面図である。
【0030】
図1〜3に示す如く、囲炉裏Iの灰受箱1底部中央に火皿2を設置し、火皿2の通気孔3・・・下方から火皿2上部の焚部Aへ空気を供給するファン4を囲炉裏1の側面に設け、該ファン4による焚部Aへの空気の風速を調整する風速調整手段S(ダイヤル式ツマミ)を設けている。尚、Tはテーブル、Bは断熱材、Cは灰である。
【0031】
前記風速調整手段Sにおける風速は0.2〜3m/secの範囲で例えば、図2に示すように、送風停止=0m/sec(蒸らし)、弱火=0.2〜0.6m/sec、中火=0.7〜1.5m/sec、強火=1.6〜3m/secの様に選択して、各種料理に応じて適切な火加減を得るようにしている。前記風速調整手段Sにおける風速は0.2〜3m/secの範囲で、自由に選択してもよく、送風停止、弱火、中火、強火とそれぞれ設定した風速を選択するようにしてもよい。
【0032】
図3に示すように、前記火皿2の上方に上置プレート5を設け、この搭載枠6を火皿2と上置プレート5底面との間隔Hが13cmとなるようにし、該搭載枠6上に設置する上置プレート5の外周が焚部Aの外周より3cm(幅D)大きくしている。尚、上記上置プレート5は、直径が約40cmであり、赤外線効果を有する材料を使用することが好ましい。6aは灰受箱1内側縁に上置プレート5を固定する固定枠である。
【0033】
前記火皿2の面積は100cmの範囲で、火皿2の通気孔3・・・の空孔率を約50%としている。
【0034】
また、図2及び図3に示すように、前記上置プレート5外周に火の粉飛散防止スカート7を設けると火の粉の食卓への飛散の防止がより確実に行える。
【0035】
前記火皿2の下方に囲炉裏側面8にかけて灰排出穴9を設け、前記ファン4を灰排出穴9の囲炉裏側面開口10に開閉自在に形成している。このような構造においてはファン4からの風量が増大すると灰排出穴9で風圧状態となる。したがって、火皿の面積を小さくかつ通気孔の空孔率を小さくして、焚部への風速が増大させることにより燃焼効率を向上させるようにすることができる。一方、火皿の面積を大きくかつ通気孔の空孔率を大きくして、焚部への風速を弱くすることができる。尚、囲炉裏側面開口10に蓋12を開閉自在に形成して焚部へ空気の進入を完全に阻止することができる。
【発明の効果】
【0036】
上記の如く本発明においては、ファンによる火皿上部焚部への風速を調整することにより、焚部の薪や炭等の燃焼物の火力を調整することができ、各料理に応じて適切な火力を選択することができる。
【0037】
また、前記風速調整手段における風速を0〜3m/secの範囲において、各種料理に応じて適切な火加減を得ることができる。
【0038】
また、搭載枠上に金網を設置して網上で直接焼肉・焼き魚等を調理することができる一方、搭載枠上に上置プレートを設置して上置プレート上面で直接鉄板料理又は上置プレート上面に別個の鍋や釜等をのせて多種の料理(焼肉料理、焼魚料理、フライパン料理、すき焼、鍋料理、ご飯炊き等)をすることができる。尚、上記上置プレート5に遠赤外線効果を有する材料を使用すると調理する食材の火の通りを良好にして美味しく仕上がる。この際鍋や釜等の外周には薪等の燃焼炭が直接付着しない。上置プレートは燃焼物の炎の荒熱を吸収して鍋等に均一な徹を伝える。
【0039】
また、上置プレートの外周を火皿の外周より大きくすることにより。火皿上部焚部で燃焼する薪や炭等の火の粉が食卓周辺に飛散するのを防止することができる。また、火の粉飛散防止スカートを設けると、上置プレートの外周を火皿の外周より極端に大きくしなくても、火皿上部焚部で燃焼する薪や炭等の火の粉が食卓周辺に散るのを確実に防止できる。粉飛散防止スカートはさらに食卓に座る人に対する熱気を防ぐこともできる。
【0040】
また、火皿の面積及び空孔率を一定にして薪や炭等の燃焼範囲を適正にすることにより効率的に火力を得ることができると共に、燃焼物の消費を無駄にしない。
【0041】
さらに、前記ファンにより選択した一定の風速を確保して一定の面積を有し一定の空孔率を有する火皿の通気孔より、焚部の薪や炭等の燃焼物に適量の空気(酸素)を送ることができ、各種料理に応じて適切な燃焼物の火力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】 本発明の一実施例を示す平面図、
【図2】 図1のII−II線概略断面図
【図3】 焚部の要部拡大断面図
【符号の説明】
1 灰受箱
2 火皿
3 通気孔
4 ファン
5 上置プレート
6 搭載枠
7 火の粉飛散防止スカート
8 囲炉裏側面
9 灰排出穴
10 囲炉裏側面開口
A 焚部の範囲
D 焚部Aの外周と上置プレートの外周との幅
H 火皿と上置プレート底面との間隔
I 囲炉裏
S 風速調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
囲炉裏の灰受箱底部中央に火皿を設置し、火皿の通気孔下方から火皿上部の焚部へ空気を供給するファンを設け、該ファンによる焚部への空気の風速を調整する風速調整手段を設けた火力調整可能な囲炉裏。
【請求項2】
前記風速調整手段における風速が0〜3m/secの範囲で調節するようにした請求項1記載の火力調整可能な囲炉裏。
【請求項3】
前記火皿の上方に上置プレートの搭載枠を設け、火皿と上置プレート底面との間隔が5〜30cmで、該搭載枠上に設置する上置プレートの外周が焚部の外周より2〜10cm大きくした請求項1〜2の何れかに記載の火力調整可能な囲炉裏。
【請求項4】
前記火皿の面積が25〜900cmの範囲で、火皿の通気孔の空孔率が20〜90%にある請求項1〜3の何れかに記載の火力調整可能な囲炉裏。
【請求項5】
前記上置プレート外周に火の粉飛散防止スカートを設けた請求項1〜4の何れかに記載の火力調整可能な囲炉裏。
【請求項6】
前記火皿の下方に囲炉裏側面にかけて灰排出穴を設け、灰排出穴の囲炉裏側面開口に前記ファンを開閉自在に形成した請求項1〜5の何れかに記載の火力調整可能な囲炉裏。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−243137(P2010−243137A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106997(P2009−106997)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(509118422)