説明

火災報知設備

【目的】 いわゆるアナログ式の火災報知設備において、火災感知器におけるメモリ機能を強化せずに、また、火災感知器における消費電流が増加せずに、火災感知器の定常値監視を実行することができる火災報知設備を提供することを目的とするものである。
【構成】 火災受信機が火災感知器からの異常信号を受信したときに、または、物理量検出手段が出力した検出レベルのアナログ信号が所定の上限値を所定の第1時間上回り続けていることを検出したときに、火災感知器が異常であると判別する異常判別手段を火災受信機に設け、一方、物理量検出手段が出力した検出レベルが所定の下限値を所定の第2時間下回り続けていることを検出したときに、火災受信機に異常信号を送出する異常信号送出手段を火災感知器に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、火災現象に基づく物理量を物理量検出手段が検出し、この物理量検出手段が出力した検出レベルを物理量信号として火災感知器が出力し、火災感知器から物理量信号を受信して火災判別を行い、この火災判別の結果に基づいて火災受信機が火災警報または連動処理動作を行う火災報知設備に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のアナログ式の火災報知設備において、火災感知器、たとえば煙感知器は、検出した煙濃度値をアナログ信号に変換し、この煙濃度を示す物理量信号としてのアナログ信号を火災受信機へ返送し、火災受信機は、複数接続された煙感知器等の各端末機器から受信したアナログ信号に応じて、煙濃度に対応するアナログ値を収集し、そのアナログ値に基づいて火災判別を行う。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この場合、火災感知器は、火災に関する物理量の変化を検出するためのセンサとして働き、火災受信機は、収集した物理量の信号処理を行うので、原理的には、火災感知器が常時検出しているレベル(定常値)の変動を監視する定常値監視処理(火災感知器における物理量検出手段の機能を監視する処理)を実行することができる。
【0004】したがって、アナログ式の火災報知設備において、実際にも、火災受信機における通常の火災判別処理と同様に、定常値監視処理を行えるようになっていることが好ましい。
【0005】しかし、上記従来例においては、実際には、通常アナログ値にはノイズレベルの下側のレベルがなく、すなわちノイズレベルをレベル0として設定し、このレベル0レベルよりも高い煙濃度をアナログ信号として、火災受信機に返送するので(測定された出力値からノイズレベルを引いた値に対応する値を煙濃度のアナログ信号として火災受信機に返送するので)、火災受信機側では、煙濃度の定常値について、ノイズレベルを基準としたプラス側への変化を識別できたとしても、ノイズレベルを基準としたマイナス側を識別することができない。したがって、火災受信機側では、定常値監視のうちで、ノイズレベルを基準としたマイナス側への変化を検出することができず、したがって、ノイズレベルを基準としたマイナス側への変化の検出を火災感知器に頼らざるを得ない。
【0006】このように、従来例において火災感知器側に定常値監視機能を付与すると、火災に基づく物理量変化を検出し、火災受信機からの呼び出しに応じて信号を送出するという動作以外に、初期のノイズレベルを基準とした定常値の変化の検出を行うための信号処理動作が増え、メモリ機能を強化する必要性が生じるという問題があり、また、その処理増大に伴い消費電流が増加するという問題がある。
【0007】本発明は、いわゆるアナログ式の火災報知設備において、火災感知器におけるメモリ機能を強化せずに、また、火災感知器における消費電流が増加せずに、火災感知器の定常値監視を実行することができる火災報知設備を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、火災受信部が火災感知部からの異常信号を受信したときに、または、物理量検出手段が出力した検出レベルのアナログ信号が所定の上限値を所定の第1時間上回り続けていることを検出したときに、火災感知部が異常であると判別する異常判別手段を火災受信部に設け、一方、物理量検出手段が出力した検出レベルが所定の下限値を所定の第2時間下回り続けていることを検出したときに、火災受信部に異常信号を送出する異常信号送出手段を火災感知部に設けたものである。
【0009】
【作用】本発明は、火災受信部が火災感知部からの異常信号を受信したときに、または、物理量検出手段が出力した検出レベルのアナログ信号が所定の上限値を所定の第1時間上回り続けていることを検出したときに、物理量検出手段が異常であると判別する異常判別手段を火災受信部に設け、一方、物理量検出手段が出力した検出レベルが所定の下限値を所定の第2時間下回り続けていることを検出したときに、火災受信部に異常信号を送出する異常信号送出手段を火災感知部に設けたので、この場合における火災感知部の信号処理動作が、火災感知部側に定常値監視機能を付与した場合の信号処理動作よりも少なくなり、したがって、火災感知部におけるメモリ機能を強化せずに、また、火災感知部における消費電流が増加せずに、物理量検出手段の定常値監視を実行することができる。
【0010】
【実施例】図1は、本発明の一実施例における火災感知部の一例としての光電式煙感知器1を示すブロック図である。
【0011】この実施例において、マイコン(マイクロコンピュータ)10は、光電式煙感知器1の全体を制御するものであり、ROM20は、図4、図6に示すフローチャートのプログラムが格納されているものであり、RAM21は、RAM21a、21b、21cを有し、RAM21a、21bは、それぞれサンプルホールド回路42の出力レベルSLVを格納する領域であり、RAM21cは、煙感知器1が異常であることを示す異常フラグE1、E2、マイコン10が出力レベルSLVを取り込んだ回数C1 、C2 を記憶する作業領域である。
【0012】EEPROM22は、煙感知器1のアドレス、各設定値、増幅回路40の出力レベル(実際には、サンプルホールド回路42の出力レベルSLV)の第1下限値Vd1と、第1下限値Vd1よりも小さな値である第2下限値Vd2と、時間T1に対応する第1回数Cm1、時間T1よりも短い時間T2に対応する第2回数Cm2を記憶するものである。
【0013】第1回数Cm1は、増幅率が増加されたときにおける増幅回路40の出力レベルが、第1下限値Vd1によって定められる領域を逸脱しているかを平均して判別する回数である。第2回数Cm2は、増幅率が増加されたときにおける増幅回路40の出力レベルが、第2下限値Vd2によって定められる領域を逸脱しているかを平均して判別する回数であり、第1回数Cm1よりも少ない回数に設定されているものである。
【0014】発光回路30は、マイコン10から発光制御パルスを受けたときに発光素子31に発光用の電流パルスを供給するものであり、増幅回路40は、受光素子41の出力レベルを所定の増幅率で増幅するものである。また、増幅回路40は、火災監視時に通常の増幅率で増幅し、定常値監視時には、マイコン10からゲイン指示信号を受け、このときに火災監視時よりも高い増幅率で増幅する増幅器であり、定常値監視が終了した後には通常の増幅率に戻して増幅し、これを繰り返すものである。
【0015】送受信回路50は、マイコン10から火災受信機2に煙濃度の物理量信号を示すアナログ信号、異常信号等の信号を送出する送信回路と、火災受信機2からポーリングによる呼び出し信号等の信号を受けマイコン10に送る受信回路とを有するものである。また、確認灯51は、煙感知器1が火災検出したときに点灯するものであり、定電圧回路60は、電源兼信号線3を介して火災受信機2から感知器1に供給された電圧を、マイコン10等に必要な定電圧にして供給する回路である。
【0016】発光回路30、発光素子31、増幅回路40、受光素子41、サンプルホールド回路42は、火災現象の物理量を検出する物理量検出手段の例である。
【0017】EEPROM22は、物理量検出手段の出力レベル(実際には、サンプルホールド回路42の出力レベルSLV)について、第1下限値を設定する第1下限値設定手段、第1下限値よりも小さな値である第2下限値を設定する第2下限値設定手段、時間T1を設定する時間T1設定手段、時間T1よりも短い時間T2を設定する時間T2設定手段の例である。
【0018】マイコン10と送受信回路50とは、物理量検出手段が出力した検出レベルが所定の下限値を所定の第2時間下回り続けていることを検出したときに、火災受信機に異常信号を送出する異常信号送出手段の例である。
【0019】第2図は、上記実施例における火災受信部の一例としての火災受信機2を示すブロック図である。
【0020】この実施例において、CPU(マイクロプロセッサ)11は、火災受信機2の全体とこれに接続されるアナログ式火災感知器1等の端末とを制御するものであり、ROM101は、火災受信機2とこれに接続される端末とを制御するプログラムが格納されているものであり、RAM91は、RAM91a、91b、91cを有し、RAM91a、91bは、それぞれポーリング動作によってアドレス毎に各火災感知器1から収集した煙濃度等を示すアナログ信号によるアナログ値SLVaを火災感知器毎に格納する領域であり、RAM91cは、ポーリング動作によってアナログ値SLVaを取り込んだ回数C3 、C4 を火災感知器毎に記憶する作業領域である。
【0021】また、火災受信機2は、設定データ(連動データや各端末のデータ、表示データ等)を記録するEEPROM71と、ICカード82を火災受信機2内のバスに接続するコネクタ81と、火災地区、自動試験の場所等を表示しLEDや液晶等で構成される表示部110と、このインターフェース111と、スイッチ等で構成される操作部120と、このインターフェース121と、プリンタ130と、このインターフェース131とを有する。挿入口80は、ICカード82を挿入するものである。
【0022】EEPROM71は、第1上限値Vu1と、第1上限値Vu1よりも大きな値である第2上限値Vu2と、時間T3に対応する第3回数Cm3と、時間T3よりも短い時間T4に対応する第4回数Cm4を記憶するものである。
【0023】CPU11は、火災感知器からの異常信号を受信したときに、または、物理量検出手段が出力した検出レベルのアナログ信号が所定の上限値を所定の第1時間上回り続けていることを検出したときに、火災感知器が異常であると判別する異常判別手段の例である。
【0024】次に、上記実施例の動作について説明する。
【0025】図3は、上記実施例の動作を示すタイムチャートである。
【0026】図3において、出力レベルSLV0は、初期のノイズレベルV0から出力変化がない場合の特性であり、出力レベルSLV1は、経年変化によって出力レベルSLVが徐々に増加した場合の例であり、第1上限値Vu1よりも多くなっている連続時間が時間T3よりも長くなったときに、緊急性の低い誤報警報が発せられる。出力レベルSLV2は、回路の腐食等によって発光量が異常に多くなった等によって出力レベルSLVが急激に増加した場合の例であり、第2上限値Vu2(第1上限値Vu1よりも多い値)よりもさらに多くなっている連続時間が時間T4(時間T3よりも短い時間)よりも長くなったときに、緊急性が高い誤報警報が発せられる。
【0027】ここで、定常値監視動作と火災監視動作との関係を簡単に説明する。レベル的には、火災判別値は、第1上限値Vu1と第2上限値Vu2との間となる。この点では、緊急性の高い誤報警報時には、火災と判別されるレベルである。しかし、実際の火災の場合はレベルが徐々に高くなり、一気に第2上限値Vu2には達しない。そして、火災監視動作にも蓄積時間があって(通常60秒をこえない)、実質的には同時に起こらない。ただ、両者は別個に判断され、異常と火災が重複するときは、両警報を発することが好ましい。
【0028】なお、出力レベルSLVが第1上限値Vu1よりも多くなっている連続時間が時間T3よりも長くなったことの検出や、第2上限値Vu2よりもさらに多くなっている連続時間が時間T4よりも長くなったことの検出は、火災受信機2側で実行する。
【0029】また、出力レベルSLV3は、経年変化によって出力レベルSLVが徐々に減少した場合の例であり、第1下限値Vd1よりも少なくなっている連続時間が時間T1よりも長くなったときに、緊急性が低い失報警報が発せられる。出力レベルSLV4は、素子断線等によって出力レベルSLVが急激に減少した場合の例であり、第2下限値Vd2(第1下限値Vd1よりも少ない値)よりもさらに少なくなっている連続時間が時間T2(時間T1よりも短い)よりも長くなったときに、緊急性の高い失報警報が発せられる。
【0030】また、出力レベルSLVが第1下限値Vd1よりも少なくなっている連続時間が時間T1よりも長くなったことの検出や、第2下限値Vd2よりもさらに少なくなっている連続時間が時間T2よりも長くなったことの検出は、火災感知器1側で実行する。
【0031】なお、上記実施例において、緊急性の高い異常が発生した場合、その緊急性の高い異常を検出するための時間T2、時間T4が、それぞれ時間T1、時間T3よりも短く設定されているので、緊急性の高い異常(緊急性が高い失報、誤報)を火災感知器1自身が迅速に把握でき、火災受信機が火災感知器1に対して頻繁に状態返送命令を送れば、火災感知器1の異常状態を火災受信機が早期に知ることができる。しかも、火災感知器1自身が定常値監視を実行するので、火災感知器1自身で自己の異常を検出することができ、火災受信機の負担がその分だけ軽くなる。
【0032】なお、出力が変化しない出力レベルSLV0の途中で、フラッシュ等によって出力レベルが一時的に急増しても、その時間が時間T4よりも短ければ、誤報とは判断されない。
【0033】図4は、上記実施例において、マイコン10が実行する動作を示すフローチャートであり、レベル低下側の異常検出を実行する場合の動作を示すフローチャートである。
【0034】まず、初期値設定を行い(S1)、信号線兼電源線3によって接続された火災受信機2から煙感知器1が起動命令を受けておらず(S2)、火災受信機2から火災感知器1が呼出されると(S3)、火災感知器1が有している状態情報、たとえば出力レベルを火災受信機2に返送する(S4)。ここで、ステップS2の起動命令は、火災受信機2から受けるものであるが、この代わりに、火災感知器1内で定期的に発生するパルス等を利用して起動命令を発生させるようにしてもよい。
【0035】一方、起動命令(たとえば3秒間に1回発生する命令)を受けると(S2)、発光回路30に発光制御パルスを出力して発光素子31を発光させ、このときにおける受光素子41の受光出力を、サンプルホールド回路42で保持し、この出力レベルSLVをマイコン10が取り込み(S11)、アナログ値としてRAM21aに格納する(S12)。
【0036】その後、マイコン10が出力レベルSLVを取り込んだ回数C1 を1インクリメントし(S24)、第1回数Cm1たとえば「20回」と比較する(S25)。この第1回数Cm1は、緊急性が低い警報を発するに必要な時間T1に対応するものであり、この緊急性が低い警報の例として緊急性が低い失報警報があり、これは、粉塵等によって発光素子31または受光素子41の表面が長期的に汚損され、サンプルホールド回路42の出力レベルすなわち受光素子41の受光出力が徐々に低下する場合の失報警報、いわば寿命警報である。この場合、火災感知器1の感度が正常よりも劣化するものの、火災検出機能を失うものではない。なお、緊急性が低い誤報警報を発する場合も、この緊急性が低い失報警報を発する場合と同様である。
【0037】ステップS25において回数C1 が20回よりも少なければ、サンプルホールド回路42の出力レベルSLVをRAM21bに格納し(S31)、マイコン10が出力レベルSLVを取り込んだ回数C2 を1インクリメントし(S32)、第2回数Cm2、たとえば「3回」と比較する(S33)。
【0038】この第2回数Cm2は、緊急性が高い警報を発するに必要な時間T2に対応するものであり、この緊急性が高い警報の1つに緊急性が高い失報警報があり、これは、発光素子31または受光素子41が断線し、サンプルホールド回路42の出力レベルが急激に低下するような場合の失報警報である。この場合、火災感知器1の火災検出機能が全く失われ、火災が発生しても検出できないので、迅速な失報警報が必要とされる。なお、緊急性が高い誤報警報を発する場合も、この緊急性が高い失報警報を発する場合と同様である。
【0039】ステップS33において回数C2 が3回よりも少なければ、監視途中であるので、異常フラグをオンにするかオフにするかを判断せずに、1回の定常値監視が終了し、ステップS2に戻る。
【0040】ステップS33において回数C2 が3回以上であれば、RAM21bに記憶されているそれまでの出力レベルSLVを合わせた合計値を回数C2 で割ることによって、出力レベルSLVの平均値AV2 を演算し(S41)、この平均値AV2 が、緊急性の高い失報警報を出す必要がない第2下限値Vd2よりも大きければ(S42)、緊急性の高い警報を発する必要がないので緊急性の高い異常が発生していることを示す異常フラグE2をオフし(S43)、RAM21bの内容(出力レベルSLV)をクリアし、取り込んだ回数C2 の変数を「0」にする(S44)。出力レベルSLVの平均値AV2 が第2下限値Vd2以下であれば(S42)、緊急性の高い異常が発生しているので、これを示す異常フラグE2をオンし(S45)、RAM21bの内容(出力レベルSLV)をクリアし、取り込んだ回数C2 の変数を「0」にする(S44)。
【0041】一方、ステップS25において回数C1 が20回以上であれば、RAM21aに記憶されているそれまでの出力レベルSLVを合わせた合計値を回数C1 で割ることによって、出力レベルSLVの平均値AV1 を求め(S51)、この平均値AV1 が、緊急性の低い失報警報を出す必要がない第1下限値Vd1よりも大きければ(S52)、正常な状態であるので緊急性の低い異常が発生していることを示す異常フラグE1をオフし(S53)、RAM21aの内容(出力レベルSLV)をクリアし、取り込んだ回数C1 の変数を「0」にする(S54)。出力レベルSLVの平均値AV1 が第1下限値Vd1以下であれば(S52)、緊急性の低い異常が発生しているので、これを示す異常フラグE1をオンし(S55)、RAM21aの内容(出力レベルSLV)をクリアし、取り込んだ回数C1 の変数を「0」にする(S54)。
【0042】なお、火災受信機2から状態返送命令を受けたとき(S4)には、その煙感知器1は、そのアドレスおよび出力レベルSLVに基づくアナログ値SLVaとともに、異常フラグE1またはE2の状態を返送する。このときに、異常フラグE1またはE2がオンであれば、その煙感知器1が異常であることを火災受信機が認識できる。
【0043】図5は、上記実施例において、火災受信機2におけるCPU11が実行する動作を示すフローチャートであり、レベル上昇側の異常検出を実行する場合の動作を示すフローチャートである。
【0044】まず、初期設定を行い(S101)、図示しないポーリングのタイミングをとるクロックのパルスによってポーリングを開始する(S102)。そして、アドレス毎に(S104、S108、S110)、各火災感知器1へ起動命令を送出し(S105)、アナログ値SLVaを作成させ、状態情報返送命令(S106)によって、そのアナログ値SLVaを返送させて火災監視を行い(S107)、つまり、受信したアナログ値を火災判別基準と比較する。
【0045】その後、CPU10がn番感知器のアナログ値SLVaを取り込んだ回数C3を1インクリメントし(S124)、第3回数Cm3たとえば「20回」と比較する(S125)。この第3回数Cm3は、緊急性が低い警報を発するに必要な時間T3に対応するものであり、この緊急性が低い警報の例として緊急性が低い誤報警報があることは上記と同様である。
【0046】ステップS125において回数C3 が20回よりも少なければ、サンプルホールド回路42のアナログ値SLVaをRAM91bに格納し(S131)、マイコン10がアナログ値SLVaを取り込んだ回数C4 を1インクリメントし(S132)、第4回数Cm4、たとえば「3回」と比較する(S133)。
【0047】この第4回数Cm4は、緊急性が高い警報を発するに必要な時間T4に対応するものであり、この緊急性が高い警報の1つに緊急性が高い誤報警報があることも上記と同様である。
【0048】ステップS133においてn番感知器の回数C4 が3回よりも少なければ、監視途中であるので、異常フラグをオンにするかオフにするかを判断せずに、その火災感知器についての定常値監視が終了し、次の火災感知器について上記と同様の定常値監視を実行するためにステップS105に戻る(S108、S110)。
【0049】ステップS133においてn番感知器の回数C4 が3回以上であれば、RAM91bに記憶されているそれまでのn番感知器のアナログ値SLVaを合わせた合計値を回数C4 で割ることによって、アナログ値SLVaの平均値AV4 を演算し(S141)、この平均値AV4 が、緊急性の高い誤報警報を出す必要がある第2上限値Vu2よりも小さければ(S142)、緊急性の高い警報を発する必要がないので緊急性の高い異常が発生していることを示す異常フラグE4をオフし(S143)、RAM91bの内容(アナログ値SLVa)をクリアし、n番感知器の取り込んだ回数C4 の変数を「0」にする(S144)。ステップS141において、アナログ値SLVaの平均値AV4 が、第2上限値Vu2以上であれば(S142)、緊急性の高い異常が発生しているので、これを示すn番感知器の異常フラグE4をオンし(S145)、RAM91bの内容(アナログ値SLVa)をクリアし取り込んだ回数C4 の変数を「0」にする(S144)。
【0050】一方、ステップS125においてn番感知器の回数C3 が20回以上であれば、RAM91aに記憶されているそれまでのアナログ値SLVaを合わせた合計値を回数C3 で割ることによって、アナログ値SLVaの平均値AV3 を求め(S151)、この平均値AV3 が、緊急性の低い誤報警報を出す必要がない第1上限値Vu1よりも小さければ(S152)、正常な状態であるので緊急性の低い異常が発生していることを示すn番感知器の異常フラグE3をオフし(S153)、RAM91aのn番感知器の内容(アナログ値SLVa)をクリアし、取り込んだ回数C3 の変数を「0」にする(S154)。アナログ値SLVaの平均値AV3 が第1上限値Vu1以上であれば(S152)、緊急性の低い異常が発生しているので、これを示すn番感知器の異常フラグE3をオンし(S155)、RAM91aの内容(アナログ値SLVa)をクリアし、取り込んだ回数C3 の変数を「0」にする(S154)。
【0051】そして、アドレスnを1インクリメントし(S110)、ステップ105〜S154の動作を、アドレスnが最高値Nになるまで繰り返す(S108)。
【0052】図6は、火災感知器1の別の動作を示すフローチャートであり、図4に示す火災感知器1の動作の変形例を示すフローチャートである。
【0053】ステップS1〜S12までは、図4に示す動作と同様であり、その後、出力レベルSLVが、緊急性の低い失報警報を出す必要がない第1下限値Vd1よりも大きければ(S61)、緊急性の低い異常が発生していることを示す異常フラグE1をオフし(S62)、取り込んだ回数C1 の変数を「0」にし(S63)、緊急性の高い異常が発生していることを示す異常フラグE2をオフし(S64)、取り込んだ回数C2 の変数を「0」にする(S65)。
【0054】ステップS61において出力レベルSLVが第1下限値Vd1以下であると判断されれば(S61)、取り込んだ回数C1 の変数を1インクリメントし(S71)、取り込んだ回数C1 を第1回数Cm1、たとえば「20回」と比較し(S72)、取り込んだ回数C1 が20回以上であれば、緊急性の低い異常が発生しているので、これを示す異常フラグE1をオンし(S73)、取り込んだ回数C1 が20回未満であれば、異常フラグE1をオフのままにする。
【0055】そして、サンプルホールド回路42の出力レベルSLVが、緊急性の高い失報警報を出す必要がある第2下限値Vd2以下であると判断されれば(S81)、取り込んだ回数C2 の変数を1インクリメントし(S82)、取り込んだ回数C2を第2回数Cm2、たとえば「3回」と比較し(S83)、取り込んだ回数C2 が3回以上であれば、緊急性の高い異常が発生しているので、これを示す異常フラグE2をオンする(S84)。
【0056】図7は、上記実施例において、火災受信機2におけるCPU11が実行する別の動作を示すフローチャートであり、図5に示す火災受信機2の動作の変形例を示すフローチャートである。
【0057】ステップS101〜S107、S108、S110は、図5に示すステップと同様の動作である。そして、n番感知器に対して火災監視を行なった(S107)後は、アナログ値SLVaが、第1上限値Vu1よりも小さければ(S161)、緊急性の低い異常が発生していることを示すn番感知器の異常フラグE3をオフし(S162)、取り込んだ回数C3 の変数を「0」にし(S163)、緊急性の高い異常が発生していることを示すn番感知器の異常フラグE4をオフし(S164)、取り込んだ回数C4 の変数を「0」にする(S165)。
【0058】ステップS161においてn番感知器のアナログ値SLVaが第1上限値Vu1以下であると判断されれば(S161)、n番感知器の取り込んだ回数C3 の変数を1インクリメントし(S171)、取り込んだ回数C3 を第1回数Cm3、たとえば「20回」と比較し(S172)、取り込んだ回数C3 が20回以上であれば、緊急性の低い異常が発生しているので、これを示すn番感知器の異常フラグE3をオンし(S173)、取り込んだ回数C3 が20回未満であれば、異常フラグE3をオフのままにする。
【0059】そしてn番感知器のアナログ値SLVaが、第2上限値Vu2以上であると判断されれば(S181)、n番感知器の取り込んだ回数C4 の変数を1インクリメントし(S182)、取り込んだ回数C4 を第4回数Cm4、たとえば「3回」と比較し(S183)、取り込んだ回数C4 が3回以上であれば、緊急性の高い異常が発生しているので、これを示すn番感知器の異常フラグE4をオンする(S184)。
【0060】上記各実施例において、時間T1、時間T3に対応する第1回数Cm1、および第3回数Cm3を20回に設定し、時間T2、時間T4に対応する第2回数Cm2および第4回数Cm4を3回に設定しているが、第1回数Cm1を第2回数Cm2よりも、また、第3回数Cm3を第4回数Cm4よりも多く設定しさえすれば、各回数を上記以外の回数に設定してもよい。
【0061】また、第1下限値Vd1を判断する場合の第1回数Cm1と、第1上限値Vu1を判断する場合の第3回数Cm3とが異なるように設定してもよく、第2下限値Vd2を判断する場合の第2回数Cm2と、第2上限値Vu2を判断する場合の第4回数Cm4とが異なるように設定してもよい。
【0062】つまり、上記実施例は、火災現象に基づく物理量を物理量検出手段が検出し、この物理量検出手段が出力した検出レベルをアナログ信号として火災感知器が出力し、火災感知器からアナログ信号を受信して火災判別を行い、この火災判別の結果に基づいて火災受信機が火災警報または連動処理動作を行う火災報知設備において、火災受信機が火災感知器からの異常信号を受信したときに、または、物理量検出手段が出力した検出レベルのアナログ信号が所定の上限値を所定の第1時間上回り続けていることを検出したときに、火災感知器が異常であると判別する異常判別手段と、物理量検出手段が出力した検出レベルが所定の下限値を所定の第2時間下回り続けていることを検出したときに、火災受信機に異常信号を送出する異常信号送出手段とを有し、異常信号送出手段が火災感知器に設けられ、異常判別手段が火災受信機に設けられているものである。
【0063】上記実施例は、光電式煙感知器1に適用したものであるが、この光電式煙感知器1の代わりに熱感知器に、上記実施例を適用してもよい。この場合、熱検出素子としてたとえばサーミスタを使用し、通常、サーミスタの抵抗値を監視する。サーミスタの出力値について、故障判定を行う判別値を設ける必要があるが、この判別値は、熱感知器の判別方式で異なる。すなわち、差動式の火災判別の場合には、差分値(温度変化)を求める方法として、所定時間前の出力値との差を採る方式と、外気に影響されにくい火災感知器筐体内部のサーミスタ等の感熱部の出力と比較する方式とがあり、所定時間前の出力値または内部感熱部の出力値を基準として、比率や偏差によって、故障判定の判別値を算出し、故障判別を行う。定温式の火災判別の場合には、サーミスタの出力値そのままを使用することによって故障判定の判別値を算出するようにすればよい。
【0064】また、煙感知器、熱感知器の代わりに、赤外線や紫外線等の光を検出する炎感知器や、臭い、CO等の燃焼生成物を検出するガス感知器に上記実施例を適用してもよい。
【0065】なお、上記各実施例において、上限値が2つ設けられているが、上限値を1つまたは3つ以上設けてもよく、この場合、各上限値に対応して時間を設定し、この時間として、大きい上限値に対応する時間程短く設定する必要がある。
【0066】また、上記各実施例において、下限値が2つ設けられているが、下限値を1つまたは3つ以上設けてもよく、この場合、各下限値に対応して時間を設定し、この時間として、小さい下限値に対応する時間程短く設定する必要がある。そして、異常警報の種別としては1つでもよいが、寿命警報、緊急警報等、必要に応じて2つ以上に区別してもよい。
【0067】上記のように、物理量検出手段が出力した検出レベルのアナログ信号が所定の上限値を所定の第1時間上回り続けていることを、火災受信機2側で検出し、物理量検出手段が出力した検出レベルが所定の下限値を所定の第2時間回り続けていることを、火災感知器1側で検出することによって、火災感知器の信号処理動作が、火災感知器側に定常値監視機能を付与した場合の信号処理動作よりも少なくなり、したがって、火災感知器におけるメモリ機能を強化せずに、また、火災感知器における消費電流が増加せずに、火災感知器の定常値監視を実行することができる。
【0068】上記実施例においては、定常値監視を行うときに火災感知器がゲインを増加していないが、定常値監視を行うときに火災受信機がゲインを増加するように指示してもよい。そして、通常のアナログ値(火災判別するため)と定常値監視のためのアナログ値とを区別して火災受信機が収集する必要があるが、定常値監視のためのアナログ値として、ゲインを増加したレベルを用いれば、判別が行いやすくなる。
【0069】また、上記各実施例では、火災受信部として火災受信機を利用しているが、この代わりに、火災感知器が接続される受信側の中継器を利用するようにしてもよく、火災感知部として火災感知器を利用しているが、この代わりに、火災受信機に接続される監視側の中継器を利用するようにしてもよい。
【0070】
【発明の効果】本発明によれば、火災感知器では、定常値の減少方向を、火災受信機側では、定常値の増加方向を監視しているので、双方過大な負担とならず、それぞれ無駄のない定常値監視を行うことが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における火災感知部の一例としての光電式煙感知器1を示すブロック図である。
【図2】上記実施例における火災受信部の一例としての火災受信機2を示すブロック図である。
【図3】上記実施例の動作を示すタイムチャートである。
【図4】上記実施例において、マイコン10が実行する動作を示すフローチャートであり、失報検出と誤報検出とを実行する場合の動作を示す図である。
【図5】上記実施例において、火災受信機2におけるCPU11が実行する動作を示すフローチャートであり、失報検出と誤報検出とを実行する場合の動作を示す図である。
【図6】火災感知器1の別の動作を示すフローチャートであり、図4に示す火災感知器1の動作の変形例を示す図である。
【図7】上記実施例において、火災受信機2におけるCPU11が実行する別の動作を示すフローチャートであり、失報検出と誤報検出とを実行する場合の動作を示す図である。
【符号の説明】
1…光電式煙感知器、
2…火災受信機、
10…マイクロコンピュータ、
11…CPU、
20、101…ROM、
42…サンプルホールド回路、
SLV…サンプルホールド回路42の出力レベル、
u1…第1上限値、
u2…第2上限値、
d1…第1下限値、
d2…第2下限値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 火災現象に基づく物理量を物理量検出手段が検出し、この物理量検出手段が出力した検出レベルを物理量信号として火災感知部が出力し、上記火災感知部から上記物理量信号を受信して火災判別を行い、この火災判別の結果に基づいて火災受信部が火災動作を行う火災報知設備において、上記火災受信部が上記火災感知部からの異常信号を受信したときに、または、上記物理量検出手段が出力した検出レベルの物理量信号が所定の上限値を所定の第1時間上回り続けていることを検出したときに、上記火災感知部の上記物理量検出手段が異常であると判別する異常判別手段と;上記物理量検出手段が出力した検出レベルが所定の下限値を所定の第2時間下回り続けていることを検出したときに、上記火災受信部に上記異常信号を送出する異常信号送出手段と;を有し、上記異常判別手段が上記火災受信部に設けられ、上記異常信号送出手段が上記火災感知部に設けられていることを特徴とする火災報知設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平8−185586
【公開日】平成8年(1996)7月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−337902
【出願日】平成6年(1994)12月27日
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)