説明

灯具点灯回路

【課題】温度依存性をなくし負荷(光源)に安定した電流を流すことができる灯具点灯回路を提供する。
【解決手段】電源が供給される第1端子と第2端子の間に、第1端子側から電流駆動発光素子からなる負荷(光源)、電界効果トランジスタ、第1抵抗が順次接続された直列体を備える。第1端子と第2端子の間に接続された定電圧回路を備える。定電圧回路の出力点と第2端子の間に、出力点側から第3抵抗、第1トランジスタ、第2抵抗が順次接続された直列体を備える。定電圧回路の出力点と電界効果トランジスタと第1抵抗の接続点の間に、該出力点側から第4抵抗、第2トランジスタが順次接続された直列体を備える。そして、第1トランジスタと第2抵抗の接続点での第2端子に対する電圧と第2トランジスタと電界効果トランジスタと第1抵抗の接続点での第2端子に対する電圧がほぼ等しく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は灯具点灯回路に係り、たとえば、光源として発光ダイオードを用いた車両用灯具点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の灯具点灯回路の一般的な構成としては、たとえば図2に示すようなものが知られている。
【0003】
図2において、図示しない電源が接続される電源供給端子Vinとグランド端子GNDがあり、この電源供給端子Vinとグランド端子GNDの間には、電源供給端子Vin側から順方向に配置されたダイオードD、負荷2、NPNトランジスタQ、および抵抗R2’が順次接続された直列体が接続されている。負荷2は、複数の発光ダイオード2Aが順方向に接続されて構成され、光源として機能するようになっている。NPNトランジスタQは、コレクタが負荷2に、エミッタが抵抗R2’に接続されている。また、NPNトランジスタQのベースとグランド端子GNDの間には逆方向に配置されるツェナーダイオードZDが接続され、ダイオードDと負荷2の接続点とNPNトランジスタQのベースの間には抵抗R1’が接続されている。
【0004】
このように構成された灯具点灯回路は、グランド端子GNDに対する定電圧がNPNトランジスタQのベースに印加されることで、該電圧に応じたベース電流が流れる結果、該定電圧に応じた電流Ioが流れるようになっている。これにより、電流Ioはトランジスタのエミッタ電位と抵抗R2’の値により制御されるようになる。
【0005】
なお、車両用灯具点灯回路の他の構成としてたとえば下記特許文献1に示されたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−61990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した灯具点灯回路において、NPNトランジスタQは、温度による影響が大きく(VBEは約−2mV/℃の温度依存をもつ)、雰囲気温度の変化によりNPNトランジスタQのエミッタ電位が変動してしまい、安定した電流Ioを流すことができないという懸念があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度依存性をなくし負荷(光源)に安定した電流を流すことができる灯具点灯回路を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、たとえ電源に過電圧が生じることがあっても、これによる発熱を未然に防止するようにした灯具点灯回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成によって上記目的を達成せんとするものである。
(1)本発明の灯具点灯回路は、電源が供給される第1端子と第2端子の間に、前記第1端子側から電流駆動発光素子からなる光源、電界効果トランジスタ、第1抵抗が順次接続された直列体と、前記第1端子と前記第2端子の間に接続された定電圧回路と、前記定電圧回路の出力点と前記第2端子の間に、前記出力点側から第3抵抗、第1トランジスタ、第2抵抗が順次接続された直列体と、前記定電圧回路の前記出力点と前記電界効果トランジスタと前記第1抵抗の接続点の間に、前記出力点側から第4抵抗、第2トランジスタが順次接続された直列体と、を備え、前記第3抵抗と前記第1トランジスタの接続点が前記電界効果トランジスタのゲートに接続されているともに、前記第1トランジスタのベースが第2トランジスタのベースおよびコレクタに接続され、前記第1トランジスタと前記第2抵抗の接続点での前記第2端子に対する電圧と前記第2トランジスタと前記電界効果トランジスタと前記第1抵抗の接続点での第2端子に対する電圧がほぼ等しく設定されていることを特徴とする。
【0011】
(2)本発明の灯具点灯回路は、(1)の構成において、前記定電圧回路は、前記第1端子と前記第2端子の間に、前記第1端子側から第5抵抗、第1ツェナーダイオードが順次接続された直列体から構成されていることを特徴とする。
(3)本発明の灯具点灯回路は、(1)の構成において、前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタは同一の半導体チップに組み込まれて構成されていることを特徴とする。
【0012】
(4)本発明の灯具点灯回路は、(1)の構成において、前記第1端子と前記第2端子の間に接続された過電圧遮断回路を備え、この過電圧遮断回路の出力によって前記電界効果トランジスタがオフになることを特徴とする。
(5)本発明の灯具点灯回路は、(4)の構成において、前記過電圧遮断回路は、前記第1端子と前記第2端子の間に、前記第1端子側から第2ツェナーダイオード、第6抵抗が順次接続された直列体と、コレクタが前記電界効果トランジスタのゲートに、エミッタが前記第2端子に、ベースが前記第2ツェナーダイオードと前記第6抵抗との接続点に接続された第3トランジスタと、を備えて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の灯具点灯回路によれば、温度依存性をなくし負荷(光源)に安定した電流を流すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の灯具点灯回路の実施態様1を示す回路図である。
【図2】従来の灯具点灯回路の一般的な構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
(実施態様1)
【0016】
図1は、本発明の灯具点灯回路の実施態様1を示した回路図である。図1において、灯具点灯回路1は、たとえば車両用灯具点灯回路となっており、定電流回路(図中点線枠Aで示す)、および過電圧遮断回路(図中点線枠Bで示す)を備えて構成されている。
【0017】
定電流回路Aは、まず、図示しない電源に接続される電源供給端子Vinおよびグランド端子GNDを有する。これら電源供給端子Vinおよびグランド端子GNDにはたとえば12Vの電源が供給されるようになっている。そして、電源供給端子Vinおよびグランド端子GNDの間には、該電源供給端子Vin側から順方向に配置されたダイオードD、負荷2、電界効果トランジスタQ1(機能的に図2のトランジスタQに相当する)、抵抗RS(機能的に図2の抵抗R2’に相当する:この明細書において、抵抗RSを第1抵抗と称する場合がある)が順次接続された直列体が接続されている。電界効果トランジスタQ1は、そのドレインDが負荷2に接続され、ソースSが抵抗RSに接続され、ゲートGが後述の抵抗R3とNPNトランジスタQ2の接続点に接続されている。
【0018】
負荷2は、順方向に配置される複数の発光ダイオード2Aが直列に接続された直列体によって構成され、光源として機能するようになっている。負荷2は、たとえばコネクタCN1、CN2を介して灯具点灯回路1に接続されるようになっている。
【0019】
また、ダイオードDと負荷2の接続点とグランド端子GNDの間には、該接続点側から抵抗R1、逆方向に配置されるツェナーダイオードZD1が順次接続された直列体が接続されている。この抵抗R1、ツェナーダイオードZD1は定電圧回路を構成し、抵抗R1とツェナーダイオードZD1の接続点(この明細書において、定電圧回路の出力点と称する場合がある)はグランド端子GNDに対して定電圧とすることができる。
【0020】
定電圧回路の出力点とグランド端子GNDの間には、該出力点側から抵抗R2、抵抗RX(この明細書において、第2抵抗と称する場合がある)が順次接続された直列体が接続されている。定電圧回路の出力点はグランド端子GNDに対して定電圧となっているため、抵抗R2と抵抗RXの接続点においてもグランド端子GNDに対して定電圧とすることができる。
【0021】
定電圧回路の出力点と抵抗R2と抵抗RXの接続点の間には、該出力点側から抵抗R3、NPNトランジスタQ2(この明細書において、第1トランジスタと称する場合がある)が順次接続された直列体が接続されている。NPNトランジスタQ2のコレクタは抵抗R3に接続され、エミッタは抵抗R2と抵抗RXの接続点に接続され、ベースは後述のNPNトランジスタQ3のベースに接続されている。また、上述したように、NPNトランジスタQ2と抵抗R3の接続点は電界効果トランジスタQ1のゲートGに接続されている。
【0022】
さらに、定電圧回路の出力点と電界効果トランジスタQ1と抵抗RSの接続点の間に、該出力点側から抵抗R4、NPNトランジスタQ3(この明細書において第2トランジスタと称する場合がある)が順次接続された直列体が接続されている。NPNトランジスタQ3は、コレクタが抵抗R4に接続され、エミッタが電界効果トランジスタQ1と抵抗RSの接続点に接続され、ベースがコレクタに接続されるとともに前記NPNトランジスタQ2のベースに接続されている。
【0023】
ここで、NPNトランジスタQ2とNPNトランジスタQ3は、同一の半導体チップにおいて互いに近接して配置されて構成されている。また、NPNトランジスタQ2とNPNトランジスタQ3は半導体チップ上に同大同形に形成され、それらの特性はほぼ同じになるように形成されている。NPNトランジスタQ2とNPNトランジスタQ3をこのように構成したのは、温度環境においてそれぞれ条件を同一にするとともに、温度による影響をNPNトランジスタQ2とNPNトランジスタQ3において同一とするためである。
【0024】
また、抵抗R3および抵抗R4のそれぞれの値は、NPNトランジスタQ2に流れるコレクタ電流I1とNPNトランジスタQ3に流れるコレクタ電流I2とがほぼ等しくなるように、設定されるようになっている。
【0025】
そして、このように構成された定電流回路Aは、抵抗R2、抵抗RXの接続点でのグランド端子GNDに対する電圧をVx、電界効果トランジスタQ1、抵抗RSの接続点でのグランド端子GNDに対する電圧をVrefとした場合、Vx=Vrefの関係を有するようになっている。
【0026】
上述したようにNPNトランジスタQ2に流れるコレクタ電流をI1とし、NPNトランジスタQ3に流れるコレクタ電流をI2とし、さらに、抵抗R2を流れる電流をIxとし、電界効果トランジスタQ1を流れる電流をI3とした場合、抵抗RXには(I1+Ix)が流れるようになり、抵抗RSには(I2+I3)が流れるようになる。これにより、抵抗RX、および抵抗RSの値を適当な値に設定することにより、Vx=Vrefの関係を設定することができるようになる。このようにすることによって、NPNトランジスタQ2およびNPNトランジスタQ3にそれぞれ流れるコレクタ電流I1、I2がほぼ等しいことと相俟って、NPNトランジスタQ2のVBEとNPNトランジスタQ3のVBEのそれぞれの温度依存性の変動をほぼ同じにでき、NPNトランジスタQ2とNPNトランジスタQ3は温度に影響されることなく駆動させることができるようになる。
【0027】
この場合、抵抗R2、抵抗RXの接続点でのグランド端子GNDに対する電圧Vxと、電界効果トランジスタQ1、抵抗RSの接続点でのグランド端子GNDに対する電圧Vrefは、厳密に等しくなっている必要はなく、ある範囲で差を有するようになっていてもよいことはいうまでもない。たとえば前記定電圧回路の出力点の電圧に対して1%の差を有する(すなわち、電圧Vxと電圧Vrefの差は前記定電圧回路の出力点の電圧の1%の範囲内で設定される)ようになっていてもよい。この程度の差を有していても同様の効果を奏するからである。
【0028】
抵抗R2、抵抗RXの接続点でのグランド端子GNDに対する電圧VxはツェナーダイオードZD1等で構成される定電圧回路によって安定させることができることから、電界効果トランジスタQ1、抵抗RSの接続点でのグランド端子GNDに対する電圧をVrefも安定させることができるようになる。これによって、NPNトランジスタQ2のエミッタ電位、およびNPNトランジスタQ3のエミッタ電位を信頼性よく安定化させることができ、温度の影響によるエミッタ電位の変動を抑制させることができる。このため、負荷2(光源)に安定した電 流Ioを流すことができるようになる。
【0029】
また、過電圧遮断回路Bは、次に示すように構成されている。すなわち、ダイオードDと負荷2の接続点とグランド端子GNDの間に、前記接続点側から逆方向に配置されたツェナーダイオードZD2と抵抗R5が順次接続された直列体が接続されている。電界効果トランジスタQ1のゲートGとグランド端子GNDの間には、NPNトランジスタQ4が接続されている。NPNトランジスタQ4は、コレクタが電界効果トランジスタQ1のゲートに接続され、エミッタがグランド端子GNDに接続され、ベースが抵抗R6を介してツェナーダイオードZD2と抵抗R5の接続点に接続されている。
【0030】
このように構成される過電圧遮断回路Bにおいて、電源供給端子Vinに過電圧が供給された場合、ツェナーダイオードZD2は導通され、NPNトランジスタQ4はオン状態となる。このため、電界効果トランジスタQ1は、ゲートGがグランド端子GNDと同電位となり、オフ状態となる。これにより、電源からの負荷2への電源供給が停止される。したがって、たとえ電源に過電圧が生じることがあっても、これによる発熱を未然に防止するようにできる。
【0031】
上述した実施態様では、ツェナーダイオードZD1を用いて定電圧回路を構成したものである。しかし、定電圧回路として、必ずしもツェナーダイオードZD1を用いる必要はなく、他の素子を用いて定電圧回路を構成してもよいことはもちろんである。
【0032】
上述した実施態様では、光源である負荷2として発光ダイオード2Aを用いたものである。しかし、これに限定されることはなく、たとえば有機EL素子等の他の電流駆動発光素子であってもよいことはもちろんである。
【0033】
上述した実施態様では、トランジスタとして電界効果トランジスタの他に、NPNトランジスタを用いて灯具点灯回路を構成したものである。しかし、PNPトランジスタを用いて灯具点灯回路を構成するようにしてもよいことはもちろんである。
【0034】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1……灯具点灯回路、2……負荷、2A……発光ダイオード、A……定電流回路、B……過電圧遮断回路、CN1、CN2……コネクタ、D……ダイオード、ZD、ZD1、ZD2……ツェナーダイオード、R、R1〜R6……抵抗、Q、Q1〜Q4……NPNトランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源が供給される第1端子と第2端子の間に、前記第1端子側から電流駆動発光素子からなる光源、電界効果トランジスタ、第1抵抗が順次接続された直列体と、
前記第1端子と前記第2端子の間に接続された定電圧回路と、
前記定電圧回路の出力点と前記第2端子の間に、前記出力点側から第3抵抗、第1トランジスタ、第2抵抗が順次接続された直列体と、
前記定電圧回路の前記出力点と前記電界効果トランジスタと前記第1抵抗の接続点の間に、前記出力点側から第4抵抗、第2トランジスタが順次接続された直列体と、を備え、
前記第3抵抗と前記第1トランジスタの接続点が前記電界効果トランジスタのゲートに接続されているともに、前記第1トランジスタのベースが第2トランジスタのベースおよびコレクタに接続され、
前記第1トランジスタと前記第2抵抗の接続点での前記第2端子に対する電圧と前記第2トランジスタと前記電界効果トランジスタと前記第1抵抗の接続点での第2端子に対する電圧がほぼ等しく設定されていることを特徴とする灯具点灯回路。
【請求項2】
前記定電圧回路は、前記第1端子と前記第2端子の間に、前記第1端子側から第5抵抗、第1ツェナーダイオードが順次接続された直列体から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の灯具点灯回路。
【請求項3】
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタは同一の半導体チップに組み込まれて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の灯具点灯回路。
【請求項4】
前記第1端子と前記第2端子の間に接続された過電圧遮断回路を備え、この過電圧遮断回路の出力によって前記電界効果トランジスタがオフになることを特徴とする請求項1に記載の灯具点灯回路。
【請求項5】
前記過電圧遮断回路は、前記第1端子と前記第2端子の間に、前記第1端子側から第2ツェナーダイオード、第6抵抗が順次接続された直列体と、コレクタが前記電界効果トランジスタのゲートに、エミッタが前記第2端子に、ベースが前記第2ツェナーダイオードと前記第6抵抗との接続点に接続された第3トランジスタと、を備えて構成されていることを特徴とする請求項4に記載の灯具点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−138321(P2012−138321A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291567(P2010−291567)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】