説明

炉筒煙管ボイラ

【課題】メンテナンスの頻度を低くし得る炉筒煙管ボイラを提供する。
【解決手段】加熱対象の水を貯留する缶体1内に、横倒れ姿勢の炉筒2及び横倒れ姿勢の複数の煙管3が、炉筒2を下方に位置させる状態で上下方向に並べて設けられ、炉筒2の燃焼ガス出口部2eから排出される燃焼ガスを煙管3の燃焼ガス入口部3iに案内する燃焼ガス流動室4が、缶体1に連設された炉筒煙管ボイラであって、炉筒2の燃焼ガス出口部2eから排出される燃焼ガスの流動に抵抗を与えるための複数の管状体6が、内部を冷却水が通流される状態で且つ長手方向を上下方向に向けた縦向き姿勢にて燃焼ガス出口部2eの横幅方向に並べた状態で、燃焼ガス流動室4内に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱対象の水を貯留する缶体内に、横倒れ姿勢の炉筒及び横倒れ姿勢の複数の煙管が、前記炉筒を下方に位置させる状態で上下方向に並べて設けられ、
前記炉筒の燃焼ガス出口部から排出される燃焼ガスを前記煙管の燃焼ガス入口部に案内する燃焼ガス流動室が、前記缶体に連設された炉筒煙管ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる炉筒煙管ボイラは、バーナにより炉筒内にて燃料を燃焼反応させることにより生成する高温の燃焼ガスを炉筒の燃焼ガス出口部から燃焼ガス流動室に排出させ、その燃焼ガス流動室を流動させて複数の煙管の燃焼ガス入口部に流入させて、複数の煙管を流動させることにより、缶体内に貯留されている水を加熱して蒸気を生成するものである。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−185111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可燃成分を含有する廃液、廃油又は重質油をバーナの燃料とする場合、廃液、廃油又は重質油には燃焼させると灰分となる不純物(例えばカルシウム、マグネシウム、バナジウム、鉄等)が多く含まれているので、廃液、廃油又は重質油を燃焼させた燃焼ガスには、不純物の未燃焼成分が灰分となって含まれることになる。
【0005】
そして、廃液、廃油又は重質油を燃料とする場合は、都市ガス等のガス燃料や軽質油等の液体燃料を燃料とする場合に比べて、燃焼ガスには灰分が多く含まれることになるので、従来の炉筒煙管ボイラでは、そのように灰分が多く含まれた燃焼ガスが煙管等を流動することになり、煙管の内周面やその煙管よりも下手側の燃焼ガス流動経路の内周面等に灰分が付着し易くなる。
煙管の内周面等への灰分の付着量が多くなると、燃焼ガスから缶体に貯留されている水への伝熱量が少なくなるので、熱効率が低下することになり、又、燃焼ガスから水への伝熱量が少なくなると燃焼ガスの温度の低下幅が小さくなるので、缶体等が局部的に過熱されて耐久性が低下する虞がある。
従って、従来の炉筒煙管ボイラでは、熱効率の低下及び耐久性の低下を防止するために、煙管の内周面等に付着している灰分を除去するためのメンテナンスの頻度を高くする必要があり、メンテナンスに係わる負担が重いという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンスの頻度を低くし得る炉筒煙管ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炉筒煙管ボイラは、加熱対象の水を貯留する缶体内に、横倒れ姿勢の炉筒及び横倒れ姿勢の複数の煙管が、前記炉筒を下方に位置させる状態で上下方向に並べて設けられ、
前記炉筒の燃焼ガス出口部から排出される燃焼ガスを前記煙管の燃焼ガス入口部に案内する燃焼ガス流動室が、前記缶体に連設されたものであって、
第1特徴構成は、前記炉筒の燃焼ガス出口部から排出される燃焼ガスの流動に抵抗を与えるための複数の管状体が、内部を冷却水が通流される状態で且つ長手方向を上下方向に向けた縦向き姿勢にて前記燃焼ガス出口部の横幅方向に並べた状態で、前記燃焼ガス流動室内に設けられている点にある。
【0008】
即ち、燃焼ガス流動室内に設けられている複数の管状体により、炉筒の燃焼ガス出口部から排出される燃焼ガスの流動に抵抗が与えられるので、燃焼ガスの流動速度が減速されることになり、しかも、燃焼ガスが複数の管状体に衝突することや複数の管状体により燃焼ガスの流動方向が変更されることにより、燃焼ガスの流動が乱流化することになる。
そして、燃焼ガス流動室を流動する燃焼ガスの流動速度が減速され、並びに、燃焼ガスの流動が乱流化すると、燃焼ガス中に浮遊していて比重が燃焼ガスよりも重い灰分は落下し易くなるので、結果として、複数の煙管の燃焼ガス入口部に流入する燃焼ガスに含まれる灰分が少なくなる。
又、各管状体が長手方向を上下方向に向けた縦向き姿勢にて燃焼ガス流動室内に設けられているので、燃焼ガス中に浮遊している灰分が管状体の表面に接触しても落下し易いため、灰分が管状体の表面に付着堆積し難いようにすることができるものとなり、管状体の表面に付着堆積している灰分が燃焼ガスが吹き付けられることにより再飛散するのが抑制されることになる。
つまり、複数の管状体の作用によって燃焼ガスに含まれる灰分が少なくなること、及び、灰分が管状体の表面に付着堆積し難いようにして灰分の再飛散が抑制されることが相俟って、複数の煙管の燃焼ガス入口部に流入する燃焼ガスに含まれる灰分が少なくなるようにすることができるので、煙管の内周面やその煙管よりも下手側の燃焼ガス流動経路の内周面等に灰分が付着するのを抑制することができることになり、煙管の内周面等に付着している灰分を除去するためのメンテナンスの頻度を低くすることができる。
しかも、管状体の内部には冷却水が通流されるので、管状体の過熱が防止されることになって、管状体の耐久性の低下を抑制することができ、その管状体を点検するためのメンテナンスの頻度をも低くすることができる。
従って、メンテナンスの頻度を低くし得る炉筒煙管ボイラを提供することができるようになった。
【0009】
第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記燃焼ガス入口部を通して前記煙管の内部に洗浄用の蒸気を噴出する噴出体が、前記複数の管状体のうちの少なくとも一本にて昇降自在に案内される状態で、昇降調節自在に設けられている点にある。
【0010】
即ち、上下方向に並ぶ複数の煙管夫々の燃焼ガス入口部に蒸気を噴出するように、噴出体を昇降調節することにより、上下方向に並ぶ複数の煙管夫々の内周面に付着堆積している灰分を吹き飛ばして、夫々の燃焼ガス出口部から排出することができる。
そして、噴出体からの蒸気噴出により、上下方向に並ぶ複数の煙管夫々の内周面に付着堆積している灰分を除去することができることにより、煙管の内周面等に付着している灰分を除去するためのメンテナンスの頻度をより一層低くすることができる。
しかも、噴出体が、複数の管状体のうちの少なくとも一本にて昇降自在に案内されるように設けられているので、噴出体を昇降自在に案内するためのガイド部材を別途設ける必要がなく、その結果、噴出体を設けるための構成を簡略化して、炉筒煙管ボイラの価格上昇を抑制することができる。
従って、価格上昇を抑制しながらメンテナンスの頻度をより一層低くし得る炉筒煙管ボイラを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
図1及び図2に示すように、炉筒煙管ボイラは、加熱対象の水を貯留する缶体1内に、横倒れ姿勢の炉筒2及び横倒れ姿勢の複数の煙管3が、前記炉筒2を下方に位置させる状態で上下方向に並べて設けられ、前記炉筒2の燃焼ガス出口部2eから排出される燃焼ガスEを前記煙管3の燃焼ガス入口部3iに案内する燃焼ガス流動室4が、前記缶体1に連設されて構成されている。
更に、前記燃焼ガス流動室4には、前記燃焼ガス入口部3iを通して前記煙管3の内部に洗浄用の蒸気を噴出する噴出体5が、昇降調節自在に設けられている。
【0012】
そして、本発明では、前記炉筒2の燃焼ガス出口部2eから排出される燃焼ガスの流動に抵抗を与えるための複数の管状体6が、内部を冷却水が通流される状態で且つ長手方向を略鉛直方向に沿う上下方向に向けた縦向き姿勢にて前記燃焼ガス出口部2eの横幅方向に並べた状態で、前記燃焼ガス流動室4内に設けられている。
【0013】
以下、炉筒煙管ボイラの各部について、説明を加える。
図1及び図2に示すように、前記缶体1は円筒状であり、その円筒状の缶体1が横倒れ姿勢で基台7上に設けられ、そのように基台7上に設けられた缶体1の側周壁における最上部に相当する箇所に、缶体1内にて生成された蒸気を送出する蒸気送出口8が設けられている。
【0014】
前記炉筒2は円筒状であり、その円筒状の炉筒2が、前記缶体1内の下方側の部分に、軸心を缶体1の軸心に沿わせた横倒れ姿勢で設けられ、その炉筒2の一端に、その炉筒2内を燃焼室9とするようにバーナ10が設けられ、前記炉筒2の他端の開口に対応するように前記缶体1が開口されて、その開口部が前記燃焼ガス出口部2eとするように構成されている。
尚、以下の説明では、前記炉筒2の軸心方向において、燃焼ガス出口部2eが存在する側を炉尻側と、バーナ10が存在する側を炉前方側とそれぞれ称する場合がある。
【0015】
前記複数の煙管3が、缶体1内における炉筒2の上方側に相当する部分に、夫々の軸心を缶体1の軸心に沿わせた横倒れ姿勢にて夫々の両端が缶体1における炉尻側及び炉前方側両端の端壁を貫通する状態で、缶体1の軸心に沿う軸心方向視において格子状に並ぶように設けられている。
そして、前記複数の煙管3夫々における炉尻側の端部開口が前記燃焼ガス入口部3iとなり、前記複数の煙管3夫々における炉前方側の端部開口が燃焼ガス出口部3eとなる。
【0016】
前記缶体1と同径の有底円筒状の流動室形成体11が、その開口端縁を缶体1における炉尻側の周縁部に接続した状態で缶体1に連設されて、その流動室形成体11内に、前記燃焼ガス流動室4が形成されている。
その流動室形成体11の側周壁における最下部に相当する箇所に、燃焼ガス流動室4に連通する状態で、下端に炉尻側灰溜め箱12が連通接続された炉尻側灰落下路13が接続され、更に、その炉尻側灰落下路13を開閉自在な手動操作式の炉尻側シャッター14が設けられている。
【0017】
図1に示すように、有底円筒状のバーナカバー体15が、前記バーナ10を覆う状態でその開口端縁を缶体1における炉前方側の端壁に接続することにより缶体1に連接されている。
更に、外径が前記缶体1と同径の環状で皿状の排出室形成体16が、その開口部に前記バーナカバー体15を挿通した状態で、その周縁を缶体1における炉前方側の端壁に接続した状態で缶体1に連設されて、その排出室形成体16内に、前記複数の煙管3の燃焼ガス出口部3eから燃焼ガスを排出させる燃焼ガス排出室17が形成されている。
その排出室形成体16の側周壁における最上部に相当する箇所に、燃焼ガス排出室17から燃焼ガスを排出する煙突18が燃焼ガス排出室17に連通する状態で設けられ、その排出室形成体16の側周壁における最下部に相当する箇所に、燃焼ガス排出室17に連通する状態で、下端に炉前方側灰溜め箱19が連通接続された炉前方側灰落下路20が接続され、更に、その炉前方側灰落下路20を開閉自在な手動操作式の炉前方側シャッター21が設けられている。
【0018】
図示を省略するが、前記炉尻側灰溜め箱12及び前記炉前方側灰溜め箱19には、内部に溜まっている灰分を取り出すための灰取り出し口、及び、その灰取り出し口を開閉自在な灰取り出し口扉が設けられている。
【0019】
前記バーナ10は、周知であるので詳細な説明及び図示を省略して簡単に説明すると、このバーナ10は、灰分となる不純物を含有する廃油を燃料として燃焼させるように構成されて、炉筒2内の燃焼室9にて燃焼ガス出口部2eに向かって火炎を形成するように、前記缶体1の炉前方側の端壁に設けられている。
そして、このバーナ10に、燃料としての廃油を供給する燃料供給路22、並びに、送風機24から燃焼用空気を供給する空気路25が接続されている。
【0020】
図1ないし図3に基づいて、前記管状体6について説明を加える。
各管状体6は、前記煙管3と同様に、耐熱鋼を用いて円筒状に形成された管体にて構成されている。
そして、4本の管状体6が、両端の2本が中間の2本よりも前記燃焼ガス排出口2e側に位置する状態で、その燃焼ガス排出口2eの横幅方向に並べて設けられている。
各管状体6は、その両端が前記流動室形成体11の側周壁を貫通するように設けられて、前記流動室形成体11に支持されている。
即ち、各管状体6は、前記燃焼ガス流動室4内における上下方向全長にわたる状態で設けられて、前記燃焼ガス出口部2eの上下方向の全範囲及び前記複数の煙管3の燃焼ガス入口部3iにおける上下方向の存在範囲の全範囲にわたるように設けられている。
前記4本の管状体6の上端が給水路26に並列接続され、4本の管状体6の下端が中継路27に並列接続され、更に、その中継路27が、前記缶体1の側周壁における上下方向略中央に相当する箇所に接続されて、給水路26からの加熱対象の水が、前記4本の管状体6を並行して通流したのち、中継路27を通して缶体1内に供給されるように構成されている。
【0021】
缶体1に供給される水は4本の管状体6を並行して通流することにより予熱されることになるが、その予熱熱量は、この炉筒煙管ボイラにて加熱される熱量のうちの約1%程度である。
【0022】
次に、前記噴出体5の構成及びその噴出体5を昇降調節するための昇降調節部40について、説明を加える。
図1ないし図3に示すように、この実施形態では、前記噴出体5が、前記4本の管状体6のうち両端の2本の管状体6(以下、昇降案内用の管状体6と称する場合がある)にて昇降自在に案内される状態で、昇降調節自在に設けられている。
前記噴出体5は、横倒れ姿勢の管状の噴出本体部5mにおける長手方向の略中央部に、上方に延びるように蒸気受入管5sが連通接続され、更に、前記噴出本体部5mに、格子状に設けられた前記複数の煙管3における横方向の煙管列と同数のノズル5nをその煙管列における煙管3の並び形態と同形態で並べて設けて構成されて、前記蒸気受入管5sを通して前記噴出本体部5mに供給される蒸気が複数のノズル5nから噴出される構成となっている。
【0023】
図3に示すように、前記噴出体5の噴出本体部5mには、そのノズル設置側とは反対側に延びるように、2本の昇降案内用の管状体6にて昇降自在に案内される一対の案内支持部28が噴出本体部5mの長手方向に振り分けた状態で設けられている。
各案内支持部28は、噴出本体部5mにその長手方向に並ぶ状態で取り付けられた一対のブラケット28bに、3個のローラ28rがそれらのうちの2個のローラ28rが上下方向に並び且つ1個のローラ28rが前記2個のローラ28rと噴出本体部5mの径方向に間隔を隔てて位置する形態で回転自在に支持されて構成されている。
そして、前記噴出体5が、各案内支持部28の1個のローラ28rと上下方向に並ぶ2個のローラ28rとの間に各昇降案内用の管状体6が通される状態で設けられて、前記噴出体5が、2本の昇降案内用の管状体6に昇降自在に案内される状態で設けられている。
【0024】
図4に示すように、前記昇降調節部40は、前記流動室形成体11の上部に図示しない支持部材にて長手方向を上下方向に向けた縦向き姿勢で吊り下げ状に支持された長尺状のケーシング41と、そのケーシング41内に縦向き姿勢で回動自在に支持された送りネジ軸42と、その送りネジ軸42に伝動連結部43にて伝動連結されてその送りネジ軸42を回動駆動する電動モータ44と、縦向き姿勢の円筒状の連結管45の上端部に取り付けられた状態で前記送りネジ軸42に螺合された雌ネジ部材46とを備えて構成されている。
前記噴出体5に蒸気を供給する蒸気供給管29が、その上端部がケーシング41の上端部に支持された状態でケーシング41内に設けられ、前記連結管45が前記蒸気供給管29に摺動自在な状態で気密状に外嵌され、前記連結管45の下端部に前記噴出体5の蒸気受入管5sの上端部が接続されている。
更に、前記ケーシング41の下端部には、3個のローラ47が、前記連結管45の周方向に分散して位置してその連結管45の昇降を案内するように設けられている。
【0025】
そして、前記電動モータ44により送りネジ軸42を正逆に回動駆動することにより、前記噴出体5が、2本の昇降案内用の管状体6による案内にて、前記連結管45が前記蒸気供給管29の外周部を摺動する状態で昇降調節されるように構成されている。
【0026】
更に、図1及び図2に示すように、前記バーナカバー体15内に、炉筒洗浄用ノズル30が前記炉筒2の底部に向けて洗浄用の蒸気を噴出するように設けられている。
【0027】
図1に示すように、前記缶体1の蒸気送出口8に、蒸気需要先に蒸気を送出する蒸気送出路31が接続され、その蒸気送出路31から煙管洗浄用蒸気路32と炉筒洗浄用蒸気路33が分岐されて、煙管洗浄用蒸気路32が前記蒸気供給管29の上端部に接続され、炉筒洗浄用蒸気路33が前記炉筒洗浄用ノズル30に接続されている。
前記煙管洗浄用蒸気路32には、その煙管洗浄用蒸気路32による蒸気供給を断続する煙管洗浄断続弁34が設けられ、前記炉筒洗浄用蒸気路33には、その炉筒洗浄用蒸気路33による蒸気供給を断続する炉筒洗浄断続弁35が設けられている。
【0028】
前記煙突18には、その煙突18を通して排出される燃焼ガスの温度を検出する燃焼ガス温度センサ36が設けられている。
そして、この炉筒煙管ボイラの運転を制御する運転制御部37が、前記燃焼ガス温度センサ36の検出温度が設定温度以上になると、前記噴出体5及び前記炉筒洗浄用ノズル30から蒸気を噴出させて前記複数の煙管3及び前記炉筒2を洗浄する洗浄運転を実行するように構成されている。
ちなみに、前記設定温度は例えば300°Cに設定される。
【0029】
次に、図1に基づいて、上述のように構成された炉筒煙管ボイラにおけるバーナ10の燃焼ガスEの流動形態について説明する。
ちなみに、この炉筒煙管ボイラの運転中において、前記炉尻側灰溜め箱12や前記炉前方側灰溜め箱19に溜まった灰分を廃棄する灰廃棄時以外は、前記炉尻側シャッター14及び前記炉前方側シャッター21は開かれている。
バーナ10の燃焼ガスEは、燃焼室9から燃焼ガス出口部2eを通過して燃焼ガス流動室4内に流入してその燃焼ガス流動室4内を上方に流動し、更に、各燃焼ガス入口部3iから複数の煙管3に流入してそれら複数の煙管3を流動して、燃焼ガス排出室17に流出し、その燃焼ガス排出室17から煙突18を通して排出される。
【0030】
上述の如く流動する燃焼ガスEは、燃焼ガス流動室4内に設けられている複数の管状体6により、燃焼ガス流動室4内を流動するときに抵抗が与えられる。即ち、燃焼ガス出口部2eから複数の管状体6に向かって流動するときや、複数の煙管3の燃焼ガス入口部3iに向かって流動するとき等において、その流動に抵抗が与えられることになり、その結果、燃焼ガス流動室4内における流動速度が減速され、又、複数の管状体6に衝突すること及び複数の管状体6により流動方向が変更されること等により、燃焼ガスEの流動が乱流化することになる。
そして、上述のように燃焼ガスEの流動速度が減速され、並びに、燃焼ガスEの流動が乱流化することにより、燃焼ガスE中に浮遊していて比重が燃焼ガスEよりも重い灰分が図中の矢印Aの如く落下し易くなるので、燃焼ガスEに含まれる灰分が少なくなり、複数の管状体6に燃焼ガスEに浮遊して持ち込まれる灰分が少なくなる。
又、管状体6が縦向き姿勢にて燃焼ガス流動室4内に設けられているので、燃焼ガスE中に浮遊している灰分が管状体6の表面に接触しても落下し易いため、灰分が管状体6の表面に付着堆積し難くなり、管状体6の表面に付着堆積している灰分が燃焼ガスEが吹き付けられることにより再飛散するのが抑制されることになる。
つまり、複数の管状体6の作用によって燃焼ガスEに含まれる灰分が少なくなること、及び、灰分が管状体6の表面に付着堆積し難いようにして灰分の再飛散が抑制されることが相俟って、複数の煙管3に流入する燃焼ガスEに含まれる灰分が少なくなるようにすることができるので、煙管3の内周面に灰分が付着するのを抑制することができる。
燃焼ガス流動室4内を落下する灰分は、炉尻側灰落下路13を落下して炉尻側灰溜め箱12に溜まることになる。
【0031】
次に、前記洗浄運転について説明を加える。
前記運転制御部37は、前記バーナ10を燃焼させる炉筒煙管ボイラの運転中において、前記燃焼ガス温度センサ36の検出温度が前記設定温度よりも低いときは、前記噴出体5を前記複数の煙管3よりも上方の退避位置に位置させるべく、前記電動モータ44の作動を制御するように構成されている。
そして、前記運転制御部37は、前記洗浄運転では、前記煙管洗浄断続弁34及び前記炉筒洗浄断続弁35を開弁したのち、噴出体5を上下方向に並ぶ複数の煙管列の最上部の煙管列から順に噴出体5の各ノズル5nが煙管列の各煙管3の燃焼ガス入口部3iに臨む噴出位置に設定時間ずつ位置させるべく電動モータ44の作動を制御し、噴出体5を最下部の煙管列に対する噴出位置に設定時間位置させると、噴出体5を前記退避位置にまで上昇させるべく電動モータ44の作動を制御したのち、煙管洗浄断続弁34及び炉筒洗浄断続弁35を閉弁して、洗浄運転を終了するように構成されている。
【0032】
洗浄運転では、噴出体5の複数のノズル5nから煙管列の複数の煙管3の燃焼ガス入口部3iに蒸気が噴出されることになり、そのように複数の煙管3の燃焼ガス入口部3iに蒸気が噴出されると、その噴出蒸気によって、煙管3の底部に堆積している灰分や煙管3の内周面に付着している灰分が吹き飛ばされて煙管3の燃焼ガス出口部3eから燃焼ガス排出室17内に排出され、図中の矢印Aの如く、その燃焼ガス排出室17及び炉前方側灰落下路20を落下して、炉前方側灰溜め箱19内に溜まることになる。
又、炉筒洗浄用ノズル30から炉筒2の底部に向かって蒸気が噴出されることになり、そのように炉筒2の底部に向かって蒸気が噴出されると、その噴出蒸気によって、炉筒2の底部に溜まっている灰分が吹き飛ばされて炉筒2の燃焼ガス出口部2eから燃焼ガス流動室4内に排出されて、その燃焼ガス流動室4及び路尻側落下路13を落下し、炉尻側灰溜め箱12内に溜まることになる。
【0033】
炉前方側灰溜め箱19に溜まっている灰分を廃棄するときは、炉前方側シャッター21を閉じたのち、前記灰取り出し口扉を開いて内部に溜まっている灰分を取り出すことになり、又、炉尻側灰溜め箱12に溜まっている灰分を廃棄するときは、炉尻側シャッター14を閉じたのち、前記灰取り出し口扉を開いて内部に溜まっている灰分を取り出すことになる。
【0034】
以下、上述のように複数の管状体6を燃焼ガス流動室4内に設けることによりメンテナンス頻度を低くできることを検証した結果を説明する。
尚、この検証試験においては、燃焼させると灰分となる不純物を0.05重量%含む廃油をバーナ10の燃料とした。
又、検証試験中は、噴出体5及び炉筒洗浄用ノズル30による蒸気の噴出は行わず、煙突18から排出される燃焼ガスの温度が例えば350°C以上になると、煙管3内に付着堆積した灰分の量が多くなっているため、煙管3内の灰分を除去するためのメンテナンスを行うものとした。
【0035】
燃焼ガス流動室4内に複数の管状体6を設けない場合は、1日当たり10時間運転するとして、1ヶ月毎に炉筒煙管ボイラを停止してメンテナンスを行う必要があり、又、1ヶ月の運転期間中の平均の熱効率は75%程度であった。
これに対して、燃焼ガス流動室4内に上述のように4本の管状体6を設けた場合は、1日当たり10時間運転するとして、6ヶ月〜1年間、メンテナンスを行うことなく炉筒煙管ボイラを運転することができ、その運転期間中の平均の熱効率は80%程度であった。
この検証試験により、燃焼ガス流動室4内に複数の管状体6を設けることにより、メンテナンスの頻度を低くすることができることを検証することができ、又、熱効率を向上することができることも検証することができた。
【0036】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ) 燃焼ガス流動室4内に設ける管状体6の本数は、上記の実施形態において例示した4本に限定されるものではなく、2本又は3本でも良く、あるいは、5本以上でも良い。
【0037】
(ロ) 上記の実施形態においては、複数の管状体6を通流させた水を缶体1に供給する場合について例示したが、複数の管状体6を通流させた水を缶体1に供給せずに、他の用途で使用するように構成しても良い。
【0038】
(ハ) バーナ10の燃料としては、上記の実施形態において例示した廃油に限定されるものではなく、例えば、重質油や可燃成分を含有する廃液を使用することができる。
そして、廃液を燃料として使用する場合等、その廃液単独では燃焼させることができない場合は、バーナ10を、廃液を都市ガス等のガス燃料又は重油等の液体燃料にて燃焼させる混焼式のバーナに構成さすることになる。
【0039】
(ニ) 上記の実施形態においては、管状体6の上端に給水路26を接続し、管状体6の下端に中継路27を接続して、管状体6内を通して水を下向きに通流させるように構成したが、逆に、管状体6の下端に給水路26を接続し、管状体6の上端に中継路27を接続して、管状体6内を通して水を上向きに通流させるようにしても良い。
【0040】
(ホ) 複数の管状体6のうちで、噴出体5を昇降自在に案内するために用いる管状体6の本数は、上記の実施形態において例示した2本に限定されるものではなく、1本でも3本以上でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】炉筒煙管ボイラの縦断正面図
【図2】炉筒煙管ボイラの縦断右側面図
【図3】炉筒煙管ボイラの炉尻側端部の横断平面図
【図4】昇降調節部の縦断正面図
【符号の説明】
【0042】
1 缶体
2 炉筒
2e 燃焼ガス出口部
3 煙管
3i 燃焼ガス入口部
4 燃焼ガス流動室
5 噴出体
6 管状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象の水を貯留する缶体内に、横倒れ姿勢の炉筒及び横倒れ姿勢の複数の煙管が、前記炉筒を下方に位置させる状態で上下方向に並べて設けられ、
前記炉筒の燃焼ガス出口部から排出される燃焼ガスを前記煙管の燃焼ガス入口部に案内する燃焼ガス流動室が、前記缶体に連設された炉筒煙管ボイラであって、
前記炉筒の燃焼ガス出口部から排出される燃焼ガスの流動に抵抗を与えるための複数の管状体が、内部を冷却水が通流される状態で且つ長手方向を上下方向に向けた縦向き姿勢にて前記燃焼ガス出口部の横幅方向に並べた状態で、前記燃焼ガス流動室内に設けられている炉筒煙管ボイラ。
【請求項2】
前記燃焼ガス入口部を通して前記煙管の内部に洗浄用の蒸気を噴出する噴出体が、前記複数の管状体のうちの少なくとも一本にて昇降自在に案内される状態で、昇降調節自在に設けられている請求項1記載の炉筒煙管ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−270742(P2009−270742A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119745(P2008−119745)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(501246488)株式会社コージェネテクノサービス (10)
【出願人】(000143477)株式会社高尾鉄工所 (5)
【Fターム(参考)】