説明

炊飯用添加剤

【課題】生米を炊飯する際に添加しておくことで米飯全体に分散し、ほぐれ性、風味及び外観のいずれにも優れた米飯に炊き上げることができる炊飯用添加剤を提供する。
【解決手段】 下記(a)〜(d)成分を含有し、
(a)食用油脂 92〜99質量%、
(b)HLB値が2〜12であるポリグリセリン脂肪酸エステル 0.4〜2質量%、
(c)グリセリン有機酸脂肪酸エステル 0.1〜5質量%、及び
(d)リン脂質 0.1〜1質量%、
前記(b)成分と前記(d)成分の総含有量が1質量%以上であり、
前記(d)成分の含有量に対する前記(b)成分の含有量((b)成分/(d)成分、質量比)が0.7〜6である、炊飯用添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品に用いられる米飯は、工場のライン化された炊飯装置により生米を炊飯して作られる。また、米飯を用いた代表的な加工食品であるおにぎりは、成型機を用いた連続的な機械的作業により作られる。しかしながら、炊飯米は炊飯装置や成型機等の機械に付着しやすく、このため生産効率や製品の歩留まりが低下するという制約がある。
【0003】
生米の炊飯時に食用油脂を主成分とする添加剤を加えて、炊き上がった米飯のベトツキを抑えてほぐれ性を向上させることが知られており、また、これにより米飯のツヤや食味が改善することも知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。さらに、上記添加剤の使用により、米飯の老化が抑制されることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記添加剤を米飯全体に均一に分散させることで、ほぐれ性、外観(ツヤ)、食味等にムラのない米飯に仕上げることができるが、これまで報告されている添加剤はこの分散性がまだ十分でないものが多い。したがって、米飯への分散性に優れ、米飯のほぐれ性を向上させることができ、かつ、外観、食味等を損なうことのない油性添加剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−141052号公報
【特許文献2】特開平7−298843号公報
【特許文献3】特開2000−236824号公報
【特許文献4】特開2008−118987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生米を炊飯する際に添加しておくことで米飯全体に分散し、ほぐれ性、風味及び外観のいずれにも優れた米飯に炊き上げることができる炊飯用添加剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、食用油脂、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、及びリン脂質を所定濃度で含有する油脂組成物を炊飯時に添加しておくと、該油脂組成物が米飯全体に良好に分散し、ほぐれ性、風味及び外観のいずれにも優れた炊飯米に仕上がることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
本発明は、下記(a)〜(d)成分を含有し、
(a)食用油脂 92〜99質量%、
(b)HLB値が2〜12であるポリグリセリン脂肪酸エステル 0.4〜2質量%、
(c)グリセリン有機酸脂肪酸エステル 0.1〜5質量%、及び
(d)リン脂質 0.1〜1質量%、
前記(b)成分と前記(d)成分の総含有量が1質量%以上であり、
前記(d)成分の含有量に対する前記(b)成分の含有量((b)成分/(d)成分、質量比)が0.7〜6である、炊飯用添加剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炊飯用添加剤は、ほぐれ性、風味及び外観のいずれにも優れ、品質にムラのない米飯に炊き上げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の炊飯用添加剤について以下に詳細に説明する。
【0011】
本発明の炊飯用添加剤は主成分として食用油脂((a)成分)を含有する。本発明の炊飯用添加剤に用いられる食用油脂に特に制限はないが、植物油及び/又は動物油であることが好ましい。前記植物油としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、米油、ひまわり油、胡麻油等又はこれらの硬化油が挙げられ、これらの油脂から選ばれる少なくとも1種の油脂を用いることができるが、大豆油、菜種油及びコーン油から選ばれる少なくとも1種の油脂を好適に用いることができる。また、前記動物油としては、ラード、牛脂等が挙げられ、これらの油脂から選ばれる少なくとも1種の油脂を用いることができる。前記食用油脂としては市販品を用いることができる。
前記食用油脂は本発明の炊飯用添加剤中に92〜99質量%含有されるものであるが、ほぐれ性、食感及び風味の観点から95〜99質量%含有されるのが好ましく、96〜98.8質量%含有されるのがより好ましい。
【0012】
本発明の炊飯用添加剤は、HLB値が2〜12である少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステル((b)成分)を含有する。本発明の炊飯用添加剤に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン重合体と脂肪酸とがエステル結合した化合物である。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの親疎水性バランスであるHLBの値は2〜12であるが、分散性の観点からHLB値が4〜8であることが好ましく、5〜8であることがより好ましい。本発明において、HLB値は下記の数式で表されるGriffin法(W.C.Griffin,J.Soc.Cosmetic.Chemists.,1,311(1949))により計算した値である。

HLB=20×(親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)

【0013】
前記グリセリン重合体のグリセリン単位の数に特に制限はないが、上記のHLB値とするために、グリセリン重合度を2〜10とすることが好ましく、3〜8とすることがより好ましい。
【0014】
また、本発明の炊飯用添加剤に含有されるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する構成脂肪酸の炭素数は14〜22であることが好ましく、16〜20であることがより好ましい。本発明の炊飯用添加剤に含有されるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は不飽和脂肪酸が主体であることが好ましく、該構成脂肪酸の80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上が不飽和脂肪酸であることが好ましい。また、前記不飽和脂肪酸の70質量%以上、より好ましくは80質量%以上がオレイン酸であることが好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸組成は、日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの01調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られたサンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)により測定することができる。
【0015】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは本発明の炊飯用添加剤中に0.4〜2質量%含有されるが、分散性、ほぐれ性、風味の観点から0.5〜1.8質量%含有されることがより好ましく、0.6〜1.5質量%含有されることがさらに好ましい。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは通常の方法で合成することができ、また、市販品を用いてもよい。
【0016】
本発明の炊飯用添加剤は、少なくとも1種のグリセリン有機酸脂肪酸エステル((c)成分)を含有する。本発明の炊飯用添加剤に用いられるグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、グリセリンに有機酸及び脂肪酸がそれぞれ少なくとも1つエステル結合した化合物である。本発明の炊飯用添加剤に含有される前記グリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸には、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の双方が含まれることが好ましいが、分散性、ほぐれ性の観点から全構成脂肪酸中の70〜95質量%、より好ましくは80〜90質量%が不飽和脂肪酸であることが好ましい。前記構成脂肪酸の炭素数は14〜22であることが好ましく、16〜20であることがより好ましい。また、前記不飽和脂肪酸の60質量%以上がオレイン酸であることが好ましく、65〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%がオレイン酸であることが好ましい。
グリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸組成は、日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの01調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られたサンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)により測定することができる。
【0017】
また、本発明に用いるグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、分子内にカルボキシル基を少なくとも2つ有するポリカルボン酸を構成有機酸として含むことが好ましく、ジカルボン酸を構成有機酸として含むことがより好ましい。当該ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアシル酒石酸が挙げられる。
【0018】
本発明に用いる有機酸脂肪酸エステルは、少なくとも1種のコハク酸モノグリセライドを含むことがより好ましい。コハク酸モノグリセライドは、グリセリンが有するヒドロキシルのいずれか1つに脂肪酸がエステル結合し、残る2つのヒドロキシル基のうち1つにコハク酸がエステル結合した構造を有する。好ましくはグリセリンの1位(又は3位)ヒドロキシル基に脂肪酸がエステル結合し、3位(又は1位)のヒドロキシル基にコハク酸がエステル結合した構造を有する。
本発明の炊飯用添加剤に含まれるコハク酸モノグリセライドは、分散性、ほぐれ性の観点から全構成脂肪酸の70〜95質量%、より好ましくは80〜90質量%が不飽和脂肪酸であることが好ましい。前記構成脂肪酸の炭素数は14〜22であることが好ましく、16〜20であることがより好ましい。また、前記不飽和脂肪酸の60質量%以上がオレイン酸であることが好ましく、65〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%がオレイン酸であることが好ましい。
【0019】
本発明の添加剤に含まれるグリセリン有機酸脂肪酸エステル中に占めるコハク酸モノグリセライドの割合は、50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0020】
前記グリセリン有機酸脂肪酸エステルは、本発明の炊飯用添加剤中に0.1〜5質量%含有されるものであるが、分散性、ほぐれ性、風味の観点から0.1〜3質量%含有されるのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.2〜1質量%含有される。
前記グリセリン有機酸脂肪酸エステルは通常の方法により合成することができ、また、市販品を用いてもよい。
【0021】
本発明の炊飯用添加剤は、少なくとも1種のリン脂質((d)成分)を含有する。本発明の炊飯用添加剤は、窒素原子を含有するリン脂質(ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)等)を含むことが好ましい。また、2種以上のリン脂質を含むことが好ましい。本発明の炊飯用添加剤は、窒素原子を含有しないリン脂質(ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、リゾホスファチジン酸(LPA)及びホスファチジルグリセロール(PG)等)を含有してもよい。
本発明の炊飯用添加剤中のリン脂質に占める窒素原子を含有するリン脂質の割合は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40〜90質量%であることがさらに好ましく、50〜80質量%であることが特に好ましい。
本発明の炊飯用添加剤中の全リン脂質に占めるPAの割合は95質量%未満であることが好ましく、90質量%未満であることがより好ましく、80質量%未満であることがさらに好ましい。さらに、本発明の炊飯用添加剤中の全リン脂質に占めるPAの割合は1〜60質量%であることがより好ましく、2〜50質量%であることがさらに好ましく、5〜40質量%であることが特に好ましく、5〜30質量%であることが殊更に好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。
【0022】
前記PA及びLPAは遊離の酸の形態であってもよいし、塩の形態であってもよい。塩の形態に特に制限はなく、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等の三価の金属塩、及びアンモニウム塩等が挙げられるが、アルカリ金属塩であることが好ましい。前記リン脂質組成物に含まれるPAとLPAの構成脂肪酸は炭素数8〜20の飽和脂肪酸及び/又は炭素数8〜20不飽和脂肪酸であることが好ましく、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸であることがより好ましい。
【0023】
本発明の炊飯用添加剤へのリン脂質の配合は、天然レシチン又はその処理物(酵素処理物等)を配合することで行うことができる。前記天然レシチンに特に制限はないが、植物種子、好ましくは大豆、菜種、ひまわり種子に由来するレシチンを用いることが好ましい。天然レシチンは、通常、リン脂質として、PC、PE、PI、PG、PA、LPA、PSなどのリン脂質の混合物を含んでいる。天然レシチン製剤として市販品を用いることもできる。
【0024】
本発明で規定するリン脂質は、天然レシチン又はその処理物のアセトン不溶分とする。アセトン不溶分は、食品添加物公定書第8版に記載された「<レシチン>」の規定の方法により測定される。
【0025】
本発明の炊飯用添加剤中のリン脂質の含有量は、0.1〜1質量%であり、保存後の外観及び風味を良好にする観点から0.2〜1質量%とすることが好ましく、0.3〜1質量%であることがより好ましい。
【0026】
本発明の炊飯用添加剤中のポリグリセリン脂肪酸エステル((b)成分)とリン脂質((d)成分)の総含有量は1質量%以上であり、ほぐれ性及び風味の観点から、1〜5質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましく、1〜2質量%であることがさらに好ましい。(b)成分と(d)成分の総含有量が1質量%未満であると、外観の保存安定性に劣る場合がある。
また、本発明の炊飯用添加剤中の(d)成分の含有量に対する(b)成分の含有量、すなわち、[(b)成分の含有質量]/[(d)成分の含有質量]は0.7〜6であり、0.8〜5であることが好ましく、0.9〜4.5であることがより好ましい。(d)成分の含有量に対する(b)成分の含有量が低すぎると分散性が悪化する。また、(d)成分の含有量に対する(b)成分の含有量が高すぎると外観の保存安定性が悪化する。
【0027】
本発明の炊飯用添加剤は、必要に応じてショ糖エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の他の成分を含有してもよい。
【0028】
本発明の炊飯用添加剤を添加して生米を炊飯することで、品質ムラのない米飯を炊き上げることができる。こうして炊き上げた米飯はベトツキが少なくほぐれ性に優れる。また、当該米飯は添加剤に起因する異味がほとんど感じられない。しかも、保存による風味と外観の劣化が抑えられる。
本発明の炊飯用添加剤は、生米100質量部に対して、0.1〜10質量部添加することが好ましく、0.2〜5質量部添加することがより好ましく、0.5〜3質量部添加することがさらに好ましい。
本発明の炊飯用添加剤は、精米、胚芽米、玄米のいずれを炊飯する際にも使用することができる。
本発明の炊飯用添加剤を添加する時期に特に制限はなく、炊飯開始前であっても炊飯中であってもよいが、通常には生米を洗米後炊飯開始前に添加される。
【実施例】
【0029】
[調製例] 炊飯用添加剤の調製
炊飯用添加剤の調製の際に使用した原料を以下に示す。
【0030】
(a)食用油脂:コーン油(日清オイリオ社製)
(b)ポリグリセリン脂肪酸エステル:サンソフトA173E(商品名、太陽化学社製、HLB値=7)、サンソフトQ−175S(商品名、太陽化学社製、HLB値=4.5)、SYグリスター MO−3S(商品名、阪本薬品工業社製、HLB値=8.8)、サンソフトA−171E(商品名、太陽化学社製、HLB値=13)
(c)グリセリン有機酸脂肪酸エステル:サンソフト683KN(商品名、太陽化学社製、油脂含有率50%のコハク酸モノグリセライド製剤)
(d)リン脂質:SLP−ホワイトSP(商品名、辻製油社製、高純度レシチン)
【0031】
上記原料を下記表1に示す割合(単位:質量%)で配合して、本発明品1〜10及び比較品1〜10を調製した。
なお、表1中のSLP−ホワイト中のアセトン不溶分は97.5質量%であった。また、当該アセトン不溶分中にPCを29.1質量%、PEを30.6質量%、PAを11.2質量%、PIを15.3質量%含んでいた。アセトン不溶分中のリン脂質組成は、アセトン不溶分をクロロホルム:メタノール=2:1(体積比)溶液に混合し、Wakosil 5NHカラム(φ4.0mm×150mm、和光純薬株式会社製)を用いて、エタノール:アセトニトリル:10mMリン酸二水素アンモニウム=65:30:5(体積比)を溶離液とした高速液体クロマトグラフィーによる分析結果に基づき決定した。なお、リン脂質成分は210nmの吸収により検出した。
また、サンソフト683KNは、コハク酸モノグリセライドを50質量%含有するため、コハク酸モノグリセライドの配合量はサンソフト683KNの配合量の半分となり、サンソフト683KN中のコハク酸モノグリセライド以外の成分は食用油脂として添加剤中に存在することになる。
【0032】
比較品1は、食用油脂の含有量が本発明の規定よりも高く、さらにリン脂質を含有しない例である。
比較品2はポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が本発明で規定するよりも高い例である。
比較品3は、食用油脂の含有量が本発明の規定よりも高く、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が本発明で規定するよりも低く、さらにポリグリセリン脂肪酸エステルとリン脂質の総含有量も本発明の規定より低い例である。
比較品4はポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが本発明で規定するよりも高い例である。
比較品5はグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有しない例である。
比較品6は、食用油脂の含有量が本発明の規定よりも高く、さらにポリグリセリン脂肪酸エステルを含有しない例である。
比較品7はポリグリセリン脂肪酸エステルとリン脂質の総含有量が本発明で規定するよりも低い例である。
比較品8は、リン脂質に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比率が本発明の規定より高い例である。
比較品9は、リン脂質に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの質量比率が本発明の規定より低い例である。
比較品10は、リン脂質の含有量が本発明で規定するよりも高い例である。
【0033】
【表1】

【0034】
[試験例] 添加剤の分散性、並びに炊飯後の米飯のほぐれ性、風味及び外観の評価
生米(千葉産コシヒカリ、平成21年産)600gを洗米後、20℃の水に1.5時間浸漬し、ざるに上げて水切りした。この浸漬米700gに水700gを加え、更に前記各種添加剤6gを加えて軽くかき混ぜた後、ガス炊飯器により炊飯した。また、後述する分散性の評価に際しては、前記各種添加剤6gに代えて、前記各種添加剤6gにβカロテン(DSMニュートリションジャパン社製)0.1質量%を配合したものを加えた。当該βカロテンは、前記各種添加剤を着色するために添加したもので、これにより前記各種添加剤の米飯に対する分散性を目視評価することが可能になる。
炊き上がった米をバットに広げてしゃもじで約1分間ほぐし、室温で30分間静置することで荒熱をとって試験用米飯とした。得られた試験用米飯に対する添加剤の分散性、並びに試験用米飯のほぐれ性、風味、外観について専門パネラー5名による官能試験を実施した。評価基準をまとめたものを下記表2に、評価結果を上記表1に示す。
なお、上記ほぐれ性については、試験用米飯をへらでほぐした時のほぐれ易さで、ヘラやバットへの付着を指標にした作業性及び米粒同士の塊り具合も勘案して評価した。外観評価は米表面のツヤについて目視により評価を行なった。
評価数値が小さい程良好な評価結果であることを示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表1に示すように、食用油脂の含有量が本発明の規定より高く、ポリグリセリン脂肪酸エステル又はリン脂質の含有量が本発明で規定するよりも低い場合には、米飯の風味は良好であるが、分散性及びほぐれ性、又は外観における評価に劣っていた(比較品1、3、6)。
また、食用油脂の含有量が本発明で規定する範囲であっても、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が本発明の規定よりも高いと、米飯の風味が悪化し、逆に低いと、分散性に劣る結果となった(比較品2、9)。
また、グリセリン有機酸脂肪酸エステルの含有量が本発明の規定よりも低いと、ほぐれ性が顕著に悪化した(比較品5)。
また、リン脂質の含有量が本発明で規定するよりも高いと、風味に劣る結果となった(比較品10)。
さらに、リン脂質の含有量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの質量含有率((b)成分/(d)成分))が本発明の規定よりも高いと風味と外観に劣る結果となった(比較品8)。ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量を下げて上記質量含有率をある程度低下させることで、風味は改善させることができるが、それでもポリグリセリン脂肪酸エステルとリン脂質の総含有量が1質量%よりも低いレベルであると、外観まで改善させることはできなかった(比較品7)。
【0037】
これに対して、本発明の炊飯用添加剤を用いた場合には、良好な分散性を示し、米飯のほぐれ性、風味及び外観のいずれにおいても良好な結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)成分を含有し、
(a)食用油脂 92〜99質量%、
(b)HLB値が2〜12であるポリグリセリン脂肪酸エステル 0.4〜2質量%、
(c)グリセリン有機酸脂肪酸エステル 0.1〜5質量%、及び
(d)リン脂質 0.1〜1質量%、
前記(b)成分と前記(d)成分の総含有量が1質量%以上であり、
前記(d)成分の含有量に対する前記(b)成分の含有量((b)成分/(d)成分、質量比)が0.7〜6である、炊飯用添加剤。
【請求項2】
(b)成分のHLB値が4〜8である、請求項1に記載の炊飯用添加剤。
【請求項3】
(c)成分がコハク酸モノグリセライドを含む、請求項1又は2に記載の炊飯用添加剤。
【請求項4】
(d)成分中、窒素原子を含有するリン脂質の割合が20質量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯用添加剤。

【公開番号】特開2013−51916(P2013−51916A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192041(P2011−192041)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】