説明

炎症性疾患又は癌の検出方法

検査対象から採取された体液サンプル中のプラズメニル−PE又は質量電荷比約698.2、722.2、726.2、又は750.2を有するバイオマーカーの量を測定し、検査対象の体液サンプル中のプラズメニル−PE(又はバイオマーカー)の量をその検査対象と同じ種の炎症性疾患又は癌のない正常な対象群の体液サンプルに見出されたプラズメニル−PE(又はバイオマーカー)の量の範囲と比較することにより、検査対象の体液サンプル中のプラズメニル−PE(又はバイオマーカー)の量の変化(減少量など)は炎症性疾患又は癌のあることを示すことを含む(comprising)、検査対象における炎症性疾患又は癌の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は35USC119(e)の下で2005年11月22日提出の仮出願番号60/738,849及び2006年9月8日提出の仮出願番号60/843,088の権利を主張する。両仮出願の全体の内容は、ここに参照によって組み込まれる。
【0002】
検査対象における炎症性疾患又は癌を検出する方法。本発明はさらに、月経周期中の排卵の発生を検出するための方法に関する。より詳細には、本発明は、検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PE(PPE)などのプラズマロゲンの量を測定することによる検査対象における炎症性疾患や癌を検出するための方法に関する。本発明は、特に卵巣癌といった癌のスクリーニング検査として有効である。
【背景技術】
【0003】
[背景情報]
炎症は、感染、刺激又は外傷に対する身体の基本的な応答である。炎症応答の特徴的な兆候は発赤、温感、腫れ及び痛みである。炎症反応は免疫システムの構成要素を外傷又は感染部位に導き、それは血流増加や血管透過性として見ることができるが、シグナル物質や白血球を順々に循環させておく。
炎症は、よって、病原体の侵襲から動物を保護する過程である。炎症作用1つの機序は、病原体に損傷を与えるための酸化経路の誘導である。炎症と酸化ストレスは、又、ヒトの非病原性疾患にも関係する。
【0004】
関節リウマチ、過敏性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、1型糖尿病などの慢性炎症性疾患は、5千万以上のアメリカ人に影響を及ぼしている。これらの疾患の多くは、我々の社会で衰弱を高め飛躍的に蔓延している。
【0005】
排卵時の卵胞の排出は、卵巣上皮細胞を炎症やそれに続く酸化損傷を引き起こす条件にさらす。この酸化損傷の修復における機能不全は、さらなる炎症や酸化ストレスを引き起こす条件である卵巣癌を導くことになり得る。プラズマロゲンは天然に生じる抗酸化剤である;それ自体がこれらの過程で酸化され、他の分子を酸化から保護している。
卵巣癌は以下の理由により酸化ストレスによって引き起こされると推測される。
(a)排卵時の卵胞の排出が卵巣上皮細胞を酸化ストレスにさらす炎症経路を促進する(Roberta B. Ness並びにCarrie Cottreau著、「卵巣癌における卵巣上皮炎症のあり得る役割"Possible Role of Ovarian Epithelial Inflammation in Ovarian Cancer"」Journal of National Cancer Institute, Vol. 91, No. 17, 1459-1467, September 1, 1999)。
(b)排出部位を取り巻く細胞が酸化ストレスの指標となるDNA病変、特に8−オキソグアニン、の高いレベルを示す(W.J. Murdoch並びにJ.F. Martinchick著、「排卵で影響される卵巣癌表面上皮細胞のDNAによる酸化損傷:発癌性との関連と化学的予防"Oxidative Damage Due to DNA of Ovarian Cancer Surface Epithelial Cells Affected by Ovulation: Carcinogenic Implication and Chemoprevention"」Exp. Biol. Med., 229(6), 546-552, June 2004)。
(c)これらのDNA病変の修復における機能不全が異形成(metaplasia)と発癌を導くと推測される(W.J. Murdoch著、「排卵で影響される卵巣表面上皮細胞で負調節(ダウンレギュレーション)されたp53の異形成能"Metaplastic Potential of p53 Down-Regulated in Ovarian Surface Epithelial Cells Affected by Ovulation"」Cancer Lett., 191(1), 75-81, February 28, 2003)。
【0006】
上記推測を裏付ける以下のような遺伝学的証拠がある。
(a)乳癌BRCA1及び2遺伝子に突然変異を有する女性は卵巣癌となる危険性が高い。BRCA1及び2遺伝子中に突然変異を有する細胞は8−オキソグアニン病変の修復が不完全である(F. LePageら著、「BRCA1及びBRCA2はヒト細胞での酸化8−オキソグアニン病変の転写共役修復に必要"BRCA 1 and BRCA 2 are Necessary for the Transcription-Coupled Repair of the Oxidative 8-Oxoguanine Lesion in Human Cells"」Cancer Res., 60(19), 5548-5552, October 1, 2000)。
(b)アンチセンスRNAによる腫瘍抑制p53の阻害は卵巣上皮細胞における8−オキソグアニンDNA病変の修復を妨げ、その結果、卵巣癌マーカーであるCA−125が発現する(W.J. Murdoch著、同上)。
(c)卵巣癌患者は、酸化損傷修復に必要な酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ−2(SOD−2)の遺伝子で変異率が通常より高い(S.H. Olsonら著、「SOD2、MPO並びにNQ01における遺伝子変異体、及び卵巣癌の危険性"Genetic Variants in SOD2, MPO and NQOl, and Risk of Ovarian Cancer"」Gynecol. Oncol., 93(3), 615-620, June 2004)。
【0007】
上記推測を裏付ける以下のような臨床証拠もある。
(a)卵巣癌の危険性の高まりは長いこと排卵過剰に関連してきた。排卵期間の少ない−月経の開始の遅れ、妊娠など−女性ほど卵巣癌となる危険性が低い(Nessら著、同上)。
(b)抗酸化剤ビタミンEは雌羊の卵巣癌の発症率を低くすることが示された(Murdoch並びにMartinchick著、同上)。
(c)関節リウマチで長期の抗炎症、抗酸化剤治療を受けている女性は、卵巣癌の発症率が低い。
【0008】
卵巣腫瘍細胞は以下に証明されるように酸化酵素を生成する:
(a)卵巣癌腫はペルオキシダーゼ活性を高めてきた(J.A. Holtら著、「上皮卵巣癌腫におけるエストロゲン受容体とペルオキシダーゼ活性"Estrogen Receptor and Peroxidase Activity in Epithelial Ovarian Carcinomas"」J. Natl. Cancer Inst., 67(2), 307-318, August 1981)。
(b)卵巣癌患者は酸化ストレスを示す抗酸化剤の血清濃度の激減を示す(K. Senthilら著、「卵巣癌患者の循環における酸化ストレスの証拠"Evidence of Oxidative Stress in the Circulation of Ovarian Cancer Patients"」Clin. Chim. Acta., 339 (1-2), 27-31, January 2004;Nessら著、同上)。
【0009】
プラズマロゲンは酸化ストレスから守ると推測される(B. Engelmann著、「プラズマロゲン:酸化剤及び主要脂溶性抗酸化剤の目標"Plasmalogen: Targets for Oxidants and Major Lipophilic Antioxidants"」Biochem. Soc. Trans., 32(Pt1), 147-150, February 2004)。
(a)プラズメニル−PEは膜脂質やコレステロールを酸化から守る(R. Maeba並びにN. Veta著、「膜の酸化能の低下におけるエタノールアミンプラズマロゲンの新規な抗酸化作用"A Novel Antioxidant Action of Ethanolamine Plasmalogens in Lowering the Oxidizability of Membranes"」Biochemical Science Transactions, (2004), Vol. 32, Part 1, 2003)。
(b)プラズマロゲン合成が不完全であると、高レベルの酸化脂質に関連するヒトの病気を引き起こす。
(c)脳内に16:0,22:6プラズメニル−PEが存在することは酸化からの保護になると推測される(Yavinら著、Nutr. Neurosci., 5, 149-157 (2002))。
【0010】
血清プラズマロゲンの減少は以下の理由により、酸化ストレスの他の病気と関連がある:
(a)プラズマロゲン副産物−ジメチルアセタール(DMAs)−の血清濃度は、酸化ストレスを引き起こすことが知られている治療である血液透析を受けている患者では低下している(T. Broscheら著、「低濃度の血清リン脂質プラズマロゲンは血液透析を受けている尿毒症患者の酸化負荷を示す"Decreased Concentrations of Serum Phospholipid Plasmalogens Indicate Oxidative Burden of Uraemic Patients Undergoing Haemodialysis"」Nephron, Vol. 90, No. 1, 58-63, 2002)。
(b)ツェルヴェーガー症候群などのペルオキシゾーム病は不完全なプラズマロゲン合成であり、神経細胞膜脂質の過剰酸化を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
卵巣癌は、その高い致死率のため、女性の死亡率の最も高い癌の1つである。米国で2005年に2万2千の女性が卵巣癌と推定され、1万6千の女性が卵巣癌で死亡した。残念なことに、これまで、第1期と診断されたのは卵巣癌患者の25%でしかなかった。患者の多くが進行した段階、すなわち第3又は第4期と診断され、その段階では5年の生存率が第1期の95%から20−25%に減少している。
【0012】
現在、最も多く使用される卵巣癌診断用のバイオマーカーは、表面糖タンパク質の一群でその生物学的機能がはっきりとしていない、CA−125である。CA−125は進行した卵巣癌の女性の82%で上昇しているにもかかわらず、陽性適中率は10%未満を示すので、初期段階の疾病検出のための臨床適用が非常に限られている。超音波診断法による身体検査を加えることで、陽性適中率を20%に向上させるものの、これでは依然として低すぎて癌発見のための要件を満足させるものとはならない。特に初期に高い感度でかつ非常に特異的に卵巣癌を診断する臨床試験の開発が、この難病との闘いで最も緊急の課題となっている。
【0013】
癌の検出で頻繁に行われるのは、身体検査で検出されるだけの十分な大きさに達している腫瘍塊(mass)の検出と検査である。発癌の分子マーカーの検出と腫瘍成長とは、腫瘍の身体検査に関連する多くの問題を解決することになる。分子技術によるスクリーニングのため患者から採取されたサンプルは主に血液や尿であるので、できるだけ侵襲性のない技術が必要となる。よって、それらは定期的に癌のスクリーニングに使用できる。加えて、分子マーカーは腫瘍が検出可能な大きさに達する前に現れるので、病気の進行の非常に初期の段階で癌を検出することが可能である。
【0014】
卵巣癌の検出のための血清プロテオーム解析で識別されたバイオマーカーはZ. Zhangら著、「癌調査(Cancer Research)」、64、5882-5890頁、2004年8月15日発行で論じられている。
上昇した濃度のリゾリン脂質に関連する癌の検出方法は米国公開番号2002/0123084及び米国公開番号2002/0150955に記載されている。
米国特許第6500633号には、患者の血漿、血清又は尿検体でグリセロール−3−リン酸塩などのグリセロール化合物のレベルを測定することによる癌腫の検出方法が開示されている。
【0015】
[発明の概要]
本発明の目的は、検査対象における炎症性疾患を検出する非侵襲的な方法を提供することである。
本発明の目的は、また、検査対象における癌を検出する非侵襲的な方法を提供することである。
本発明の別の目的は、検査対象における卵巣癌などの婦人科癌を検出する非侵襲的な方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、炎症性疾患や卵巣癌などの癌のスクリーニングと診断のために分子マーカーを利用することである。
本発明の更に別の目的は、月経周期中の排卵の発生を検出する非侵襲的な方法を提供することである。
本発明の別の目的は、炎症性疾患や癌の有無を経時的にモニター(監視)する非侵襲的な方法を提供することである。
上記目的だけでなく、他の目的、利点及び目標も本発明によって満たされるものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は検査対象における炎症性疾患を検出する方法に関し、その方法は:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を測定し、
(b)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量をその検査対象と同じ種の炎症性疾患のない正常な対象群から採取した体液サンプル(例えば、検査対象から採取した体液が血清の場合は、正常な対象群の各個体から採取した体液も血清とする)中に見出されたプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の範囲と比較することを含み(comprising)、それにより検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の変化(減少量など)は炎症性疾患のあることを示す。
【0017】
本発明は、更に又、検査対象における炎症性疾患を検出する方法に関し、その方法は:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中の約698.2、722.2、726.2、又は750.2の質量電荷比を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量をその検査対象と同じ種の炎症性疾患のない正常な対象群から採取した体液サンプル(例えば、検査対象から採取した体液が血清の場合は、正常な対象群の各個体から採取した体液も血清とする)中に見出されたバイオマーカーの量の範囲と比較することを含み(comprising)、それにより検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の変化(減少量など)は炎症性疾患のあることを示す。
【0018】
本発明はさらに、検査対象における癌(卵巣癌など)を検出する方法に関し、その方法は:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を測定し、
(b)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量をその検査対象と同じ種の癌のない正常な対象群から採取した体液サンプル(例えば、検査対象から採取した体液が血清の場合は、正常な対象群の各個体から採取した体液も血清とする)中に見出されたプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の範囲と比較することを含み(comprising)、それにより検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の変化(減少量など)は癌のあることを示し、癌が卵巣癌の場合は、プラズマロゲンはプラズメニル−PA(PPA)又はプラズメニル−PC(PPC)でなく、癌が乳癌の場合は、プラズマロゲンはPPE又はPPAでない。
【0019】
本発明は、また、検査対象における癌を検出する方法に関し、その方法は:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中の約698.2、722.2、726.2、又は750.2の質量電荷比を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量をその検査対象と同じ種の癌のない正常な対象群から採取した体液サンプル(例えば、検査対象から採取した体液が血清の場合は、正常な対象群の各個体から採取した体液も血清とする)中に見出されたバイオマーカーと比較することを含み(comprising)、それにより検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の変化(減少量など)は癌のあることを示す。
【0020】
本発明はまた、検査対象における月経周期中の排卵の発生を検出する方法に関し、その方法は、:
(a)女性の検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を測定し、
(b)女性の検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量をその検査対象と同じ種の無排卵女性の対象群から採取した体液サンプル(例えば、女性の検査対象から採取した体液が血清の場合は、無排卵女性の対象群の各個体から採取した体液も血清とする)中に見出されたプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の範囲と比較することを含み(comprising)、それにより女性の検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の変化(減少量など)は排卵の発生を示す。
【0021】
本発明は、さらに、女性の検査対象における月経周期中の排卵の発生を検出する方法に関し、その方法は:
(a)女性の検査対象から採取した体液サンプル中の約698.2、722.2、726.2、又は750.2の質量電荷比を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)女性の検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量をその検査対象と同じ種の無排卵女性の対象群から採取した体液サンプル(例えば、女性の検査対象から採取した体液が血清の場合は、無排卵女性の対象群の各個体から採取した体液も血清とする)中に見出されたバイオマーカーと比較することを含み(comprising)、それにより検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の変化(減少量など)は排卵の発生を示す。
【0022】
本発明はまた、検査対象における炎症性疾患を経時的にモニター(監視)する方法に関し、その方法は:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を測定し、
(b)1回目より後である2回目に検査対象から採取した体液サンプル(例えば、工程(a)で採取した体液が血清の場合は、工程(b)で採取した体液も血清とする)中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を測定し、
(c)工程(a)と工程(b)におけるプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を比較し、1回目に検査対象から採取したサンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量に対する後の回で検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の増減を測定することを含み(comprising)、それにより、後の回での体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の減少は炎症性疾患のあること、すなわち悪化を示し、一方、後の回での体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の増加は炎症性疾患のないこと、すなわち改善を示す。
【0023】
本発明はさらに、検査対象における炎症性疾患を経時的にモニター(監視)する方法に関し、その方法は:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中の約698.2、722.2、726.2、又は750.2の質量電荷比を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)1回目より後である2回目に検査対象から採取した体液サンプル(例えば、工程(a)の体液が血清の場合は、工程(b)の体液も血清とする)中のバイオマーカーの量を測定し、
(c)工程(a)と工程(b)におけるバイオマーカーの量を比較し、1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量に対する後の回で検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の増減を測定することを含み(comprising)、それにより、後の回での体液サンプル中のバイオマーカーの量の減少は炎症性疾患のあること、すなわち悪化を示し、一方、後の回での体液サンプル中のバイオマーカーの量の増加は炎症性疾患のないこと、すなわち改善を示す。
【0024】
本発明はさらに、検査対象における癌を経時的にモニター(監視)する方法に関し、その方法は:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を測定し、
(b)1回目より後である2回目に検査対象から採取した体液サンプル(例えば、工程(a)の体液が血清の場合は、工程(b)の体液も血清とする)中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を測定し、
(c)工程(a)と工程(b)におけるプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を比較し、1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量に対する後の回で検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の増減を測定することを含み(comprising)、それにより、後の回での検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の減少は癌のあること、すなわち悪化を示し、一方、後の回での体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量の増加は癌のないこと、すなわち改善を示し、
癌が卵巣癌の場合は、プラズマロゲンはPPA又はPPCでなく、癌が乳癌の場合は、プラズマロゲンはPPE又はPPAでない。
【0025】
本発明はまた、検査対象における癌を経時的にモニター(監視)する方法に関し、その方法は:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中の約698.2、722.2、726.2、又は750.2の質量電荷比を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)1回目より後である2回目に検査対象から採取した体液サンプル(例えば、工程(a)で採取した体液が血清の場合は、工程(b)の体液も血清とする)中のバイオマーカーの量を測定し、
(c)工程(a)と工程(b)におけるバイオマーカーの量を比較し、1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量に対する後の回で検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の増減を測定することを含み(comprising)、それにより、後の回での検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の減少は癌のあること、すなわち悪化を示し、後の回での体液サンプル中のバイオマーカーの量の増加は癌のないこと、すなわち改善を示す。
【0026】
上記のすべての方法(炎症性疾患の検出、癌の検出をし、排卵の発生の検出、炎症性疾患のモニタリング(監視)及び癌のモニタリング(監視))において、プラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を測定する代わりに、プラズメニル−PE酸化物(ジメチルアセタールなど)などのプラズマロゲン酸化物の量を測定することができる。たとえば、卵巣癌の存在は、プラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの血清濃度の減少又はプラズメニル−PE酸化(物)などのプラズマロゲン酸化物の増加を測定することによって検出することができる。同様に、月経周期中の排卵の発生は、プラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの血清濃度の減少又はプラズメニル−PE酸化(物)などのプラズマロゲン酸化物の増加を測定することによって検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[発明の詳細な説明]
プラズマロゲンはリン脂質の一つの分類であり、ジアシルグリセロリン脂質でのエステル結合よりはむしろ、ビニルエーテル結合がグリセロールバックボーン(骨格)のsn−1位に存在することにより特徴付けられる。Sn−2位は脂肪酸によって占められている。2種類のプラズマロゲン、すなわちエタノールアミンプラズマロゲン(プラズメニル−PEとも呼ばれ、エタノールアミン基がsn−3リン酸基に結合している)とコリンプラズマロゲン(プラズメニル−PC(PPC)とも呼ばれ、コリン基がsn−3リン酸基に結合している)、が生物学的サンプルに存在すると報告されている。脳ミエリン(髄鞘)は高濃度のプラズメニル−PEを(脂肪酸として、22:6で、ドコサヘキサエン酸を有するバージョンとしてほぼ独占的に)有し、一方心臓の筋肉は高濃度のプラズメニル−PCを有する。
低レベルの16:0,22:6プラズメニル−PE(pl−PPE又はPPE)はツェルヴェーガー症候群といった神経学的ペルオキシソーム病と関連付けられてきた。
腎臓、骨格筋、脾臓及び血液細胞で適度な量プラズマロゲンが発見されている。プラズマロゲンの生物学的機能ははっきりしていない。プラズマロゲンはヒトの体において以下のような役割を果たしていると考えられる:酸化の防止、膜ダイナミクスの伝達、脂肪酸の貯蔵場所としての作用、及び脂質メディエーターとしての働き。
【0028】
プラズメニル−PA(ホスファチジン酸プラズマロゲン)(pl−PA又はPPA)は、グリセロールバックボーン(骨格)のsn−3位にホスファチジン酸基が結合したプラズマロゲンの一つの分類である。その構造は、他の2種類のプラズマロゲンの構造体に近似しているが、sn−3リン酸基がコリン又はエタノールアミン基にエステル化されていない。
プラズメニル−PE、プラズメニル−PC及びプラズメニル−PAの構造は以下の通りである:
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

【0032】
プラズマロゲン構造において、R1とR2はアルキル鎖である。もう一つのプラズマロゲンはプラズメニル−PIである。プラズメニル−PIの構造は以下の通りである:
【0033】
【化4】

【0034】
ここで論じられる方法で用いることのできるプラズメニル−PE化合物などのプラズマロゲンは、炭素原子数のその炭素原子への二重結合の数に対する以下の割合の組合せを含むことができる:sn−1位では、12:1,14:1,16:1,16:2,18:1,18:2,18:3,18:4,20:1,20:5,22:1及び22:7;sn−2位では、12:0,14:0,16:0,16:1,18:0,18:1,18:2,18:3,20:0,20:4,22:0及び22:6。使用されたプラズマロゲンの名において、sn−1位での二重結合の一つはビニルエチル結合であるが、それは脂肪酸鎖の一部とは見なされない。
【0035】
ここで論じられる方法で検出しようとするプラズメニル−PE化合物の例として以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:
18:0,22:6PPE、
18:0,20:4PPE(質量電荷比約750.2)、
16:0,22:6PPE、
18:0,18:1PPE、
18:0,18:2PPE(質量電荷比約726.2)、
16:0,20:4PPE(質量電荷比約722.2)、
16:0,18:1PPE及び
16:0,18:2PPE(質量電荷比約698.2)。
卵巣癌を検出するために好ましいマーカーは、18:0,18:2PPE,18:0,20.4PPE,16:0,18:2 PPE及び16:0,20:4PPEである。
ここで論じられる方法で検出しようとするプラズメニル−PA化合物の例として以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:
16:0,18:2PPA、
16:0,20:4PPA、
16:0,22:6PPA及び
16:0,18:1PPA。
【0036】
プラズメニル−PA化合物は、好ましくは、質量電荷比が約655.3の16:0,18:2プラズメニル−PAである。
本発明の態様の1つでは、検査対象から採取された体液サンプル中に見出されたプラズメニル−PEなどのプラズマロゲン、又は質量電荷比約655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2のバイオマーカーの量を、その検査対象と同じ種の癌のない正常な対象(例えば、検査対象がヒトの場合、正常な対象は癌のないヒトとする)のサンプルに見出された、プラズメニル−PEなどのプラズマロゲン、又は質量電荷比約655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2のバイオマーカーの量と比較する。正常な対象から採取された体液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲン、又は電荷質量比約655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2のバイオマーカーの量と比較したとき、検査対象からの、体液サンプルに見出された、プラズメニル−PEなどのプラズマロゲン、又は電荷質量比約655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2のバイオマーカーの量が低いことは、癌のあることを示している。
【0037】
ここで用いられる「約655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2」という用語は、質量電荷比が655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2であるか、或いは質量電荷比が655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2に近いことを意味する。
【0038】
検査対象から採取されたサンプルで検出されたプラズメニル−PE、又は電荷質量比約655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2のバイオマーカーの量は詳細に後述する最初の脂質抽出によって測定される。プラズメニル−PE、又は電荷質量比約655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2のバイオマーカーの量は、その後、質量分光、ガスクロマトグラフィー、HPLC、NMR又はその他の手法など標準的な手順を用いて定量化される。
【0039】
プラズメニル−PEなどのプラズマロゲン又は電荷質量比約655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2のバイオマーカーを抽出によって直接測定する他に、プラズメニル−PEなどのプラズマロゲン又はバイオマーカーに反応するモノクローナル抗体といった抗体を、プラズメニル−PEなどのプラズマロゲン又はバイオマーカーの量を検査サンプルで検出するための分析で、用いることができる。たとえば、抗プラズメニル−PEなどの抗プラズマロゲン(又は抗バイオマーカー)抗体が標準的手順を用いて標識化され、固相液相両方における放射性免疫測定法(ラジオイムノアッセイ、RIA)、蛍光アッセイ又はエンザイム・イムノアッセイ(ELIZA)などの分析で使用され、その抗体は液サンプル中のプラズメニル−PEなどのプラズマロゲン(又は質量電荷比約655.3、698.2、722.2、726.2、又は750.2のバイオマーカー)の有無と量を検出するのに用いられる。
【0040】
上記で論じたように、上記の方法では、プラズメニル−PEなどのプラズマロゲンの量を測定する代わりに、プラズメニル−PE酸化(物)(ジメチルアセタールなど)などのプラズマロゲン酸化物の量を測定することができる。
【0041】
酸化物はプラズメニル−PEなどのプラズマロゲンでは脂肪酸に依存する。すなわち、不飽和脂肪酸における二重結合もやはり酸化の対象となる。
以下のリストは、sn−1位に16:0鎖を有するプラズメニル−PAの酸化物を明示している:
Sn−1位に酸化を生じる:
LPA(1−リゾ−2−R−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸)
1−ホルミル−2−R−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸
Sn−2位に酸化を生じる(ドコサヘキサエン酸についてのみ):
16:0p/4:0al-GPA
16:0p/6:1al-GPA
16:0p/8:2al-GPA
16:0p/9:2al-GPA
16:0p/11:3al-GPA
16:0p/12:3al-GPA
16:0p/14:4al-GPA
16:0p/15:4al-GPA
16:0p/18:5al-GPA
16:0p/4-ヒドロキシ-7-オキソ-ヘプタ-5-エノイル-GPA
(16:0p/4-hydroxy-7-oxo-hept-5-enoyl-GPA)
16:0p/7-ヒドロキシ-10-オキソ-デカ-4,8-ジエノイル-GPA
(16:0p/7-hydroxy-10-oxo-dec-4,8-dienoyl-GPA)
16:0p/10-ヒドロキシ-13-オキソ-トリデカ-4,7,11-トリエノイル-GPA
(16:0p/10-hydroxy-13-oxo-tridec-4,7,11-trienoyl-GPA)
16:0p/4-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/4-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/7-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/7-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
(16:0p/8-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
16:0p/8-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
(16:0p/10-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
16:0p/10-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/11-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/11-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/13-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/13-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/14-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/14-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/16-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/16-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/17-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/17-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/20-ヒドロキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/20-hydroxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/4-ヒドロペルオキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/4-hydroperoxy- docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/8-ヒドロペルオキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/8-hydroperoxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/10-ヒドロペルオキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/10-hydroperoxy-docosahexaenoyl-GPA)
16:0p/16-ヒドロペルオキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16:0p/16-hydroperoxy-docosahexaenoyl-GPA)
16 :0p/20-ヒドロペルオキシ-ドコサヘキサエノイル-GPA
(16 :0p/20-hydroperoxy-docosahexaenoyl-GPA)
【0042】
上記のリスト中、「R」は、グリセロールバックボーン(骨格)のsn−2位にエステル化された脂肪酸基を意味し、「GPA」はホスファチジン酸グリセロールを意味し、「P」はプラズマロゲンを意味し、「al」は、アルデヒドを意味する。
【0043】
プラズメニル−PCの酸化物はKarin A. Zemski Berryら著、「エステル化されたドコサヘキサエン酸を含有するプラズマロゲングリセロホスホコリンのフリー・ラジカル酸化:質量分析法により測定された構造"Free Radical Oxidation of Plasmalogen Glycerophosphocholine Containing Esterified Docosahexaenoic Acid: Structure Determined by Mass Spectrometry"」 Antioxidants & Redox Signaling, Vol. 7, No. 1-2, 157-169頁, 2005年1月発行において論じられている。この文献は、1−O−ヘキサデカ−1’−エニル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(16:0p/22:6−グリセロホスホコリン)(l‐O-hexadec-1'-enyl-2-docosahexaenoyl-sn-grycero-3-phosphocholine(16:0p/22:6-GPCho)をフリーラジカルイニシエータである2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド(2,2'-azobis(2-amidinopropane) hydrochloride)にさらした結果生じた、リン脂質酸化物が検査されたことを報告している。16:0p/22:6−グリセロホスホコリン(16:0p/22:6- GPCho)のラジカル誘導過酸化により、酸化リン脂質の2つの主要なクラス(分類)が明らかとなった。第1のクラス(分類)の酸化物は、sn−1位での酸化によって形成され、1−リゾ−2−ドコサヘキサエノイル−グリセロホスホコリン及び1−ホルミル−2−ドコサヘキサエノイル−グリセロホスホコリンを含む。また、第2のクラス(分類)の酸化物は、sn−2位で酸化が生じており、3つのカテゴリに分類された。すなわち、短鎖ω−アルデヒド、末端γ−ヒドロキシ−α,β−不飽和アルデヒド、及び16:0p/22:6−グリセロホスホコリンのsn−2位での1つ又は2つの酸素原子の追加である。
【0044】
このような酸化物の量は、プラズメニル−PEの量の測定に関してここで記載された技術によって測定することもできるが、親・娘イオン転位(トランジション)は異なるものとなる。よって、酸化物の量はマルチプルリアクションモニターリング(MRM)液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化/タンデム質量分光法(LC/ESI/MS/MS)を用いて測定することができる。
【0045】
検査対象は真核生物、好ましくは哺乳動物、鳥、魚、両生類又は虫類を含む脊椎動物であるが、これらに限定されるものではない。対象は哺乳類であることが好ましく、ヒトであることが最も好ましい。体液としては血漿、血清、尿、唾液、腹水、脳脊髄液や胸水が含まれるが、これらに限定されるものではない。体液は、検査対象の全血液検体から得られた血漿又は血清であることが好ましい。
【0046】
ここに開示された方法は、関節炎(関節リウマチなど)、心臓の炎症(心筋炎)、アテローム性動脈硬化、腎臓の炎症(腎炎)、大腸炎、クローン病、胃炎、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、乾癬、髄膜炎、脳炎、血管炎、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、前立腺炎、骨盤内炎症性疾患、強直性脊椎炎、喘息、気管支炎、滑液包炎、腱炎、ホジキンズ病、リウマチ熱、重症筋無力症、ベーチェット症候群、類肉腫症、多発性筋炎、結膜炎、歯肉炎、結節性動脈周囲炎及び再生不良性貧血などの炎症性疾患の検出又はスクリーニングにも用いることができる。
【0047】
ここに開示された方法は、広範囲にわたる早期の癌を検出又はスクリーニングするために用いることができる。そのような癌としては、卵巣癌、乳癌、子宮頸癌、子宮癌、子宮体癌、腹膜癌、卵管癌及び外陰癌といった婦人科癌が含まれる。本発明で検出することができるその他の癌としては、睾丸腫瘍、結腸癌、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、甲状腺癌、胃癌、膵臓癌、脳腫瘍、肝臓癌、尿管癌、食道癌及び喉頭癌が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明は好ましくは卵巣癌の検出に関するものである。
【0048】
出願人はPPE又はPPAの量の測定と乳癌の検出との間には相関関係がないと結論した。出願人はまた、PPCの量の測定と卵巣癌の検出との間にも相関関係がないと結論した。PPA量の検出による卵巣癌の検出方法に関する特許出願がここに付随して出願され、本願の共同発明者の1人の名前が掲げられている。
【0049】
ここに開示された方法は非侵襲的であり、検査対象(患者)からの血液検体といった体液検体のみを必要とする。したがってこのような方法は、炎症性疾患である又は癌腫を持っていると診断されたことのない患者、特に癌、それも卵巣癌の危険性がある患者のスクリーニングに有効である。そのような患者には、家族の病歴のため高い危険性のある女性、無排卵周期のある閉経前の女性及び閉経後の女性が含まれる。ここに開示された方法は、リスク集団において、炎症性疾患や癌になる傾向の高い部分集団を識別するためのスクリーニング検査を含むものである。
【0050】
ここに開示された方法は多くの利点を提供することができる。第一に、その方法は、炎症性疾患又は癌の早期診断を促進するべく多数の対象の迅速かつ経済的なスクリーニングを提供する結果、患者の生活の質の改善とより高い生存率が可能となる。
【0051】
ここに開示された予後のための方法を用いて、医療専門家は、早期の炎症性疾患や癌をもった対象が治療を必要とするか、或いは治療を必要としないかを判断することができる。これは、また、特定の療法、例えば外科手術、化学療法、放射線照射又は生物学的治療が有効でない対象を識別することができる。このような情報は、結果として、治療に対してより良い応答を得るために設計された改善された療法を可能とする。
【0052】
ここに開示された方法は、また、治療が1つの治療剤から別の治療剤に変える必要のある患者を識別するために用いることができる。これは、治療に対する患者の応答を判断するための「セカンドルック(二次的試験開腹手術)」の侵襲的な手順を不要にし、特定の形の治療を継続、終了又は変更すべきかどうかの判断を容易にする。
【0053】
非常に多くの進行性癌患者で癌が再発するため、本発明の方法を用いた早期検出と経時的な継続的モニター(監視)方法が、それ自体を示す症状の現れに先立つ早期のオカルトな(すなわち、「隠れた」)再発を識別することができる。
【0054】
加えて、ここに開示された方法は、悪性腫瘍から良性を容易に識別できるようにする。超音波又は身体検査によるなどの手順を用いて、卵巣などの臓器での塊(mass)をまず検出することができる。その後、ここに開示された方法を癌の存在を診断するために用いることができる。これにより、外科的介入が不要となり、及び/又は、継続的なモニタリング(監視)が適切である対象が識別され、その結果、癌患者の早期検出や生存率が改善されることになる。
【0055】
ここに開示された方法の別の使用は、未知の原発性腫瘍巣を決定することである。身体の場所によっては、悪性腫瘍巣組織は従来の技術を用いたのでは測定できないことがある。
本発明は、以下の実施例の文脈で記載されるが、それらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
血清サンプル中のプラズメニル−PE
材料
18:0,22:6PPE;18:0,20:4PPE及び18:0,18:1PPEはアバンティポーラーリピッズ(アメリカ合衆国アラバマ州アラバスター)(Avanti Polar Lipids (Alabaster, AL, USA))より購入した。これらの脂質を用いて、18:0,22:6PPE;18:0,20:4PPE;18:0,18:1PPE;18:0,18:2PPE;16:0,22:6PPE;16:0,20:4PPE; 16:0,18:1PPE及び16:0,18:2PPEのMRM転位(トランジション)はそれぞれ774.2→327.2,750.2→303.2,728.2→281.2,726.2→279.2,746.2→327.2,722.2→303.2,700.2→281.2及び698.2→279.2であることが測定された。
【0057】
実施例1(a):血清サンプル中のプラズメニル−PE
脂質抽出は以下の手順で行われた:分析の内部標準として、10μM 1,2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロール−3−ホスホエタノールアミン(1,2-diheptadecanoyl-sn-glycerol-3-phosphoethanolamine)50μLを血清サンプル50μlに加えた。撹拌(vortex)し、2:1 メタノール/クロロホルム2mlをサンプルに添加した。再度撹拌(vortex)し、混合物を4000rpm、10℃で5分間遠心分離した。上部液体層を試験管に移し、窒素下で液体層を乾燥した。その後メタノール中で0.1M 酢酸アンモニウム400μlを窒素乾燥した脂質に加えた。撹拌(vortex)し、試験管内の全てを微小遠心管に移した。9000rpmで5分間遠心分離を行った。上清をLC/ESI/MS/MS分析用の注射器に移した。
【0058】
実施例1(b):プラズメニル−PEのMRM LC/ESI/MS/MS分析
プラズメニル−PE種のLC/ESI/MS/MS分析は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)プローブを備え、島津SCL−10AvpHPLCシステム(島津製作所、日本国東京)とインターフェイスで接続するクアトロマイクロ質量分析計(マイクロマス、英国アルトリンチャム)(Micromass, Altrincham, U.K.)を用いて行った。脂質はベータベーシック18プレ・カラム(Betabasic 18 pre-column)(10×2.1mm、5μm、テルモエレクトロン、マサチューセッツ州ウォルサム(Thermo Electron, Waltham, MA))で保護されたベータベーシック−18カラム(Betabasic-18 column)(20×2.1mm、5μm、テルモエレクトロン、マサチューセッツ州ウォルサム(Thermo Electron, Waltham, MA))で分離した。300μlのリン酸アンモニウム、pH=5.46緩衝液を移動相Aとして用い、一方、9:1(v:v)メタノール/アセトニトリルを移動相Bとして用いた。使用された勾配は以下の通りである:カラムはまず70%B(30%A)で平衡化し、続いて200μl/分で最初の5分間70%B(30%A)から100%B(0%A)に直線変化させた。勾配はその後3分間100%に保たれた。その後70%B(30%A)に戻して、カラムを再平衡化した。流速は200μl/分とした。ネガティブモードのマルチプルリアクションモニタリング(MRM)でエレクトロスプレーイオン化/タンデム質量分析を用いて、質量分析をオンラインで行った(キャピラリー電圧:3.5KV、コーン(cone)ポテンシャル55V、衝突エネルギー30eV)。用いられたMRM転位(トランジション)は上記実施例1の「材料」と題したセクションに記載されている。
【0059】
実施例1(c):サンプルと統計解析
40の血清サンプルを収集した。このうち10が初期の卵巣癌、10が末期の卵巣癌、20が健康な対照であった。データ解析はスチューデントt−検定を用いて行い、分析物質の内部標準に対するピーク面積比を測定した。その結果を表1と図1−8に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
カットオフ値として0.70を用いた場合、80%の感度で、初期卵巣癌患者の10人中8人で18:0,18:2プラズメニル−PEのレベルがこの値より下である。80%の感度で、進行期卵巣癌患者の10人中8人で18:0,18:2プラズメニル−PEのレベルがこの値より下である。100%の特異性で、健康な対照の10人中10人で18:0,18:2プラズメニル−PEのレベルがこの値より上である。
【実施例2】
【0062】
血漿サンプル中のプラズメニル−PE
材料
18:0,22:6PPE;18:0,20:4PPE及び18:0,18:1PPEはアバンティポーラーリピッズ(アメリカ合衆国アラバマ州アラバスター)(Avanti Polar Lipids (Alabaster, AL, USA))より購入した。これらの脂質を用いて、18:0,22:6PPE;18:0,20:4PPE;18:0,18:1PPE;18:0,18:2PPE;16:0,22:6PPE;16:0,20:4PPE; 16:0,18:1PPE及び16:0,18:2PPEのMRM転位(トランジション)はそれぞれ774.2→327.2,750.2→303.2,728.2→281.2,726.2→279.2,746.2→327.2,722.2→303.2,700.2→281.2及び698.2→279.2であることが測定された。
【0063】
実施例2(a):血漿サンプルからのプラズメニル−PEの抽出
脂質抽出は以下の手順で行われた:分析の内部標準として、10μM 1,2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロール−3−ホスホエタノールアミン(1,2-diheptadecanoyl-sn-glycerol-3-phosphoethanolamine)200μLを血漿サンプル50μlに加えた。撹拌(vortex)し、2:1 メタノール/クロロホルム2mlをサンプルに添加した。再度撹拌(vortex)し、混合物を4000rpm、10℃で5分間遠心分離した。上部液体層を試験管に移し、窒素下で液体層を乾燥した。その後メタノール内で0.1M 酢酸アンモニウム400μlを窒素乾燥した脂質に加えた。撹拌(vortex)し、試験管内の全てを微小遠心管に移した。9000rpmで5分間遠心分離を行った。上清をLC/ESI/MS/MS分析用の注射器に移した。
【0064】
PJ−S21が局所殺菌剤と考えられるためには、熱帯環境での保存に耐えるように処方しなければいけない。熱安定性の加速(Accelerated)研究は、PJ−S21の水懸濁液が、60℃で30分間、及び50℃で又は40℃で1週間保存したとき、それぞれ、(gp120−CD4結合の阻害によって測定された)この元の活性の4、11、及び33%だけ維持したことを明らかにした。その一方で、乾燥PJ−S21粉末は50℃での12週間(評価において利用した最長時間)の保存後にも完全な活性を保った。結果として、無水製剤が望ましいであろう。
【0065】
実施例2(b):プラズメニル−PEのMRM LC/ESI/MS/MS分析
プラズメニル−PE種のLC/ESI/MS/MS分析は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)プローブを備え、島津SCL−10AvpHPLCシステム(島津製作所、日本国東京)とインターフェイスで接続するクアトロマイクロ質量分析計(マイクロマス、英国アルトリンチャム)(Micromass, Altrincham, U.K.)を用いて行った。脂質はベータベーシック18プレ・カラム(Betabasic 18 pre-column)(10×2.1mm、5μm、テルモエレクトロン、マサチューセッツ州ウォルサム(Thermo Electron, Waltham, MA))で保護されたベータベーシック−18カラム(Betabasic-18 column)(20×2.1mm、5μm、テルモエレクトロン、マサチューセッツ州ウォルサム(Thermo Electron, Waltham, MA))で分離した。300μlのリン酸アンモニウム、pH=5.46緩衝液を移動相Aとして用い、一方、9:1(v:v)メタノール/アセトニトリルを移動相Bとして用いた。使用された勾配は以下の通りである:カラムはまず70%B(30%A)で平衡化し、続いて200μl/分で最初の5分間70%B(30%A)から100%B(0%A)に直線変化させた。勾配はその後3分間100%に保たれた。その後70%B(30%A)に戻して、カラムを再平衡化した。流速は200μl/分とした。ネガティブモードのマルチプルリアクションモニタリング(MRM)でエレクトロスプレーイオン化/タンデム質量分析を用いて、質量分析をオンラインで行った(キャピラリー電圧:3.5KV、コーン(cone)ポテンシャル55V、衝突エネルギー30eV)。用いられたMRM転位(トランジション)は上記実施例2の「材料」と題したセクションに記載されている。
【0066】
実施例2(c):サンプルと統計解析
281のヒト血漿サンプルを10の異なる臨床部位から収集した。このうち:51が手術前・内の卵巣(ov)癌、52が手術後の卵巣癌、43が手術前の乳癌、46が良性婦人科疾患(BYN)の対照、50が高危険性の対照、そして39が健康な対照であった。データ解析はスチューデントt−検定を用いて行い、分析物質の内部標準に対するピーク面積比を測定した。その結果を表2と図9−16に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
カットオフ値として0.13を用いた場合、感度=80.4%で、手術前卵巣癌患者の51人中10人がカットオフ値より上である。感度=74%で、乳癌患者の43人中11人がカットオフ値より下である。感度=84%で、高危険性の対照の50人中8人がカットオフ値より下である。感度=74.0%で、両性婦人科癌の対照の46人中12人がカットオフ値より下である。感度=71.8%で、健康な対照の39人中11人がカットオフ値より下である。
【実施例3】
【0069】
実施例3(a):プラズメニル−PCからのプラズメニル−PAの調製
0.6μmolのプラズメニル−PCを90μlの50mM Tris−HCl緩衝液、10mM CaCl、1%triton(pH8.0)に入れ、10分間超音波処理した。5μlのPLD酵素(10ユニット、1ユニットはpH5.6、30℃で1時間当たり1.0μMのコリンをL−α−ホスファチジルコリン(卵黄)から遊離)を添加し、37℃で4時間反応を行った。抽出溶媒としてクロロホルム/メタノール(2:1、v/v)0.4mlを加えて反応を停止した。ブライ・ダイヤー抽出を行って、有機相と水相をそれぞれ窒素(N)下で乾燥した。以下の反応式を参照のこと:
【0070】
【数1】

【0071】
このようにしてプラズメニル−PA粗生成物が得られ、質量分析実験を行ってプラズメニル−PAのMRM(マルチプルリアクションモニタリング)転位(トランジション)を得た。
【0072】
実施例3(b):血漿又は血清サンプルからの脂質抽出
脂質抽出は以下の手順で行われた:分析の内部標準として、2μg/mlの10μM 1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロール−3−リン酸(1,2-diphytanoyl-sn-glycerol-3-phosphate) 100μLを血漿又は血清サンプル400μlに加えた。撹拌(vortex)し、2:1 メタノール/クロロホルム2mlをサンプルに添加した。再度撹拌(vortex)し、混合物を4000rpm、10℃で5分間遠心分離した。上部液体層を試験管に移し、窒素下で液体層を乾燥した。その後メタノール内で0.1M 酢酸アンモニウム200μlを窒素乾燥した脂質に加えた。撹拌(vortex)し、試験管内の全てを微小遠心管に移した。9000rpmで5分間遠心分離を行った。上清をLC/ESI/MS/MS(液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化/タンデム質量分光法)分析用の注射器に移した。
【0073】
実施例3(c):LC/ESI/MS/MS分析
実施例3(b)で得られたプラズメニル−PA化合物のMRM LC/ESI/MS/MS分析は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)プローブを備え、島津SCL−10AvpHPLCシステム(島津製作所、日本国東京)とインターフェイスで接続するクアトロマイクロ質量分析計(マイクロマス、英国アルトリンチャム)(Micromass, Altrincham, U.K.)を用いて行った。脂質はベータベーシック18プレ・カラム(Betabasic 18 pre-column)(10×2.1mm、5μm、テルモエレクトロン、マサチューセッツ州ウォルサム(Thermo Electron, Waltham, MA))で保護されたベータベーシック−18カラム(Betabasic-18 column)(20×2.1mm、5μm、テルモエレクトロン、マサチューセッツ州ウォルサム(Thermo Electron, Waltham, MA))で分離した。300μlのリン酸アンモニウム、pH=5.46緩衝液を移動相Aとして用い、一方、9:1(v:v)メタノール/アセトニトリルを移動相Bとして用いた。使用された勾配は以下の通りである:カラムはまず70%B(30%A)で平衡化し、続いて200μl/分で最初の5分間70%B(30%A)から100%B(0%A)に直線変化させた。勾配はその後3分間100%に保たれた。その後70%B(30%A)に戻して、カラムを再平衡化した。流速は200μl/分とした。ネガティブモードのマルチプルリアクションモニタリング(MRM)でエレクトロスプレーイオン化/タンデム質量分析を用いて、質量分析をオンラインで行った(キャピラリー電圧:3.0KV、コーン(cone)ポテンシャル55V、衝突エネルギー25eV)。プラズメニル−PA検出に用いられたMRM転位(トランジション)は分子陰イオンMとその娘イオンの質量電荷比(375.2のm/z)であった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】以下の血清サンプルにおける18:0,22:6PPEのレベルを表すグラフである:卵巣癌(ov)初期、卵巣癌進行期、及び健康な対照。
【図2】以下の血清サンプルにおける18:0,20:4PPEのレベルを表すグラフである:卵巣癌初期、卵巣癌進行期、及び健康な対照。
【図3】以下の血清サンプルにおける18:0,18:1PPEのレベルを表すグラフである:卵巣癌初期、卵巣癌進行期、及び健康な対照。
【図4】以下の血清サンプルにおける18:0,18:2PPEのレベルを表すグラフである:卵巣癌初期、卵巣癌進行期、及び健康な対照。
【図5】以下の血清サンプルにおける16:0,22:6PPEのレベルを表すグラフである:卵巣癌初期、卵巣癌進行期、及び健康な対照。
【図6】以下の血清サンプルにおける16:0,20:4PPEのレベルを表すグラフである:卵巣癌初期、卵巣癌進行期、及び健康な対照。
【図7】以下の血清サンプルにおける16:0,18:1PPEのレベルを表すグラフである:卵巣癌初期、卵巣癌進行期、及び健康な対照。
【図8】以下の血清サンプルにおける16:0,18:2PPEのレベルを表すグラフである:卵巣癌初期、卵巣癌進行期、及び健康な対照。
【図9】以下のプラズマサンプルにおける18:0,22:6PPEのレベルを表すグラフである:手術前・手術内の卵巣癌、手術後の卵巣癌、手術前の乳癌、良性婦人科疾患(BYN)の対照、高危険性の対照、及び健康な対照。
【図10】以下のプラズマサンプルにおける18:0,20:4PPEのレベルを表すグラフである:手術前・手術内の卵巣癌、手術後の卵巣癌、手術前の乳癌、良性婦人科疾患(BYN)の対照、高危険性の対照、及び健康な対照。
【図11】以下のプラズマサンプルにおける18:0,18:1PPEのレベルを表すグラフである:手術前・手術内の卵巣癌、手術後の卵巣癌、手術前の乳癌、良性婦人科疾患(BYN)の対照、高危険性の対照、及び健康な対照。
【図12】以下のプラズマサンプルにおける18:0,18:2PPEのレベルを表すグラフである:手術前・手術内の卵巣癌、手術後の卵巣癌、手術前の乳癌、良性婦人科疾患(BYN)の対照、高危険性の対照、及び健康な対照。
【図13】以下のプラズマサンプルにおける16:0,22:6PPEのレベルを表すグラフである:手術前・手術内の卵巣癌、手術後の卵巣癌、手術前の乳癌、良性婦人科疾患(BYN)の対照、高危険性の対照、及び健康な対照。
【図14】以下のプラズマサンプルにおける16:0,20:4PPEのレベルを表すグラフである:手術前・手術内の卵巣癌、手術後の卵巣癌、手術前の乳癌、良性婦人科疾患(BYN)の対照、高危険性の対照、及び健康な対照。
【図15】以下のプラズマサンプルにおける16:0,18:1PPEのレベルを表すグラフである:手術前・手術内の卵巣癌、手術後の卵巣癌、手術前の乳癌、良性婦人科疾患(BYN)の対照、高危険性の対照、及び健康な対照。
【図16】以下のプラズマサンプルにおける16:0,18:2PPEのレベルを表すグラフである:手術前・手術内の卵巣癌、手術後の卵巣癌、手術前の乳癌、良性婦人科疾患(BYN)の対照、高危険性の対照、及び健康な対照。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象における炎症性疾患を検出する方法であって、:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量を測定し、
(b)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量をその検査対象と同じ種の炎症性疾患のない正常な対象群から採取した体液サンプル中に見出されたプラズメニル−PEの量の範囲と比較することにより、検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量の変化は炎症性疾患のあることを示すことを含む(comprising)、炎症性疾患の検出方法。
【請求項2】
検査対象が人間である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)において量の変化が減少量である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
検査対象における炎症性疾患を検出する方法であって、:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中の質量電荷比約698.2、722.2、726.2、又は750.2を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量をその検査対象と同じ種の炎症性疾患のない正常な対象群から採取した体液サンプル中に見出されたバイオマーカーの量の範囲と比較することにより、検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の変化は炎症性疾患のあることを示すことを含む(comprising)、炎症性疾患の検出方法。
【請求項5】
検査対象が人間である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
量の変化が減少量である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
検査対象における癌を検出する方法であって、:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量を測定し、
(b)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量をその検査対象と同じ種の癌のない正常な対象群から採取した体液サンプル中に見出されたプラズメニル−PEの量の範囲と比較することにより、検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量の変化は癌のあることを示すことを含む(comprising)、癌の検出方法。
【請求項8】
検査対象が人間である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)において量の変化が減少量である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
癌が卵巣癌である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
体液が血清又は血漿である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プラズメニル−PEが16:0,18:2PPE;18:0,22:6PPE;18:0,20:4PPE;16:0,22:6PPE;18:0,18:1PPE;18:0,18:2PPE;16:0,20:4PPE及び16:0,18:1PPEからなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プラズメニル−PEが18:0,18:2PPEである請求項10に記載の方法。
【請求項14】
プラズメニル−PEが18:0,20:4PPEである請求項10に記載の方法。
【請求項15】
プラズメニル−PEが16:0,18:2PPEである請求項10に記載の方法。
【請求項16】
プラズメニル−PEが16:0,20:4PPEである請求項10に記載の方法。
【請求項17】
検査対象における癌を検出する方法であって、:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中の質量電荷比約698.2、722.2、726.2、又は750.2を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)検査対象の体液サンプル中のバイオマーカーの量をその検査対象と同じ種の癌のない正常な対象群の体液サンプル中に見出されたバイオマーカーの量の範囲と比較することにより、検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の変化は癌のあることを示すことを含む(comprising)、癌の検出方法。
【請求項18】
検査対象が人間である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程(b)において量の変化が減少量である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
癌が卵巣癌である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
体液が血清である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
体液が血漿である請求項20に記載の方法。
【請求項23】
女性の検査対象における月経周期中の排卵の発生を検出する方法であって、:
(a)女性の検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量を測定し、
(b)女性の検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量をその検査対象と同じ種の無排卵女性の対象群の体液サンプル中に見出されたプラズメニル−PEの量の範囲と比較することにより、女性の検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量の変化は排卵の発生を示すことを含む(comprising)、排卵の発生の検出方法。
【請求項24】
検査対象が人間である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(b)において量の変化が減少量である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
女性の検査対象における月経周期中の排卵の発生を検出する方法であって、:
(a)女性の検査対象から採取した体液サンプル中の質量電荷比約698.2、722.2、726.2、又は750.2を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)女性の検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量をその検査対象と同じ種の無排卵女性の対象の体液サンプル中に見出されたバイオマーカーの量の範囲と比較することにより、女性の検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の変化は排卵の発生を示すことを含む(comprising)、排卵の発生の検出方法。
【請求項27】
検査対象が人間である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(b)において量の変化が減少量である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
検査対象において炎症性疾患の存在を経時的にモニター(監視)する方法であって、:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量を測定し、
(b)1回目より後の2回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量を測定し、
(c)工程(a)及び工程(b)におけるプラズメニル−PEの量を比較し、1回目に検査対象から採取したサンプル中のプラズメニル−PEの量に対するその後の回で検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量の増減を測定することにより、後の回での体液サンプル中のプラズメニル−PEの量の減少は炎症性疾患のあること、すなわち悪化を示し、一方、後の回での体液サンプル中のプラズメニル−PEの量の増加は炎症性疾患のないこと、すなわち改善を示すことを含む(comprising)、炎症性疾患のモニター(監視)方法。
【請求項30】
検査対象が人間である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
検査対象において炎症性疾患を経時的にモニター(監視)する方法であって、:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中の質量電荷比約698.2、722.2、726.2、又は750.2を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)1回目より後の2回目に検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量を測定し、
(c)工程(a)及び工程(b)におけるバイオマーカーの量を比較し、1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量に対するその後の回で検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の増減を測定することにより、後の回での体液サンプル中のバイオマーカーの量の減少は炎症性疾患のあること、すなわち悪化を示し、一方、後の回での体液サンプル中のバイオマーカーの量の増加は炎症性疾患のないこと、すなわち改善を示すことを含む(comprising)、炎症性疾患のモニター(監視)方法。
【請求項32】
検査対象が人間である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
検査対象において癌を経時的にモニター(監視)する方法であって、:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量を測定し、
(b)1回目より後の2回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量を測定し、
(c)工程(a)及び工程(b)におけるプラズメニル−PEの量を比較し、1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量に対するその後の回で検査対象から採取した体液サンプル中のプラズメニル−PEの量の増減を測定することにより、後の回での体液サンプル中のプラズメニル−PEの量の減少は癌のあること、すなわち悪化を示し、一方、後の回での体液サンプル中のプラズメニル−PEの量の増加は癌のないこと、すなわち改善を示すことを含む(comprising)、癌のモニター(監視)方法。
【請求項34】
検査対象が人間である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
癌が卵巣癌である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
プラズメニル−PEが16:0,18:2PPE;18:0,22:6PPE;18:0,20:4PPE;16:0,22:6PPE;18:0,18:1PPE;18:0,18:2PPE;16:0,20:4PPE及び16:0,18:1PPEからなる群から選択される請求項34に記載の方法。
【請求項37】
プラズメニル−PEが18:0,18:2PPE;18:0,20:4PPE;16:0,18:2PPE及び16:0,20:4PPEからなる群から選択される請求項33に記載の方法。
【請求項38】
検査対象において癌を経時的にモニター(監視)する方法であって、:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中の質量電荷比約698.2、722.2、726.2、又は750.2を有するバイオマーカーの量を測定し、
(b)1回目より後の2回目に検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量を測定し、
(c)工程(a)及び工程(b)におけるバイオマーカーの量を比較し、1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量に対するその後の回で検査対象から採取した体液サンプル中のバイオマーカーの量の増減を測定することにより、後の回での体液サンプル中のバイオマーカーの量の減少は癌のあること、すなわち悪化を示し、一方、後の回での体液サンプル中のバイオマーカーの量の増加は癌のないこと、すなわち改善を示すことを含む(comprising)、癌のモニター(監視)方法。
【請求項39】
検査対象が人間である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
癌が卵巣癌である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
体液が血清である請求項40に記載の方法。
【請求項42】
検査対象における炎症性疾患を検出する方法であって、:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量を測定し、
(b)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量をその検査対象と同じ種の炎症性疾患のない正常な対象群から採取した体液サンプル中に見出されたプラズマロゲンの量の範囲と比較することにより、検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量の変化は炎症性疾患のあることを示すことを含む(comprising)、炎症性疾患の検出方法。
【請求項43】
検査対象における癌を検出する方法であって、:
(a)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量を測定し、
(b)検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量をその検査対象と同じ種の癌のない正常な対象群から採取した体液サンプル中に見出されたプラズマロゲンの量の範囲と比較することにより、検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量の変化は癌のあることを示すことを含み(comprising)、
癌が卵巣癌の場合プラズマロゲンはPPA又はPPCでなく、癌が乳癌の場合プラズマロゲンはPPE又はPPAでない、癌の検出方法。
【請求項44】
女性の検査対象における月経周期中の排卵の発生を検出する方法であって、:
(a)女性の検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量を測定し、
(b)女性の検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量をその検査対象と同じ種の無排卵女性の対象群から採取した体液サンプル中に見出されたプラズマロゲンの量の範囲と比較することにより、女性の検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量の変化は排卵の発生を示すことを含む(comprising)、排卵の発生の検出方法。
【請求項45】
検査対象において炎症性疾患の存在を経時的にモニター(監視)する方法であって、:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量を測定し、
(b)1回目より後の2回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量を測定し、
(c)工程(a)及び工程(b)におけるプラズマロゲンの量を比較し、1回目に検査対象から採取されたサンプル中のプラズマロゲンの量に対するその後の回で検査対象から採取された体液サンプル中のプラズマロゲンの量の増減を測定することにより、後の回での体液サンプル中のプラズマロゲンの量の減少は炎症性疾患のあること、すなわち悪化を示し、一方、後の回での体液サンプル中のプラズマロゲンの量の増加は炎症性疾患のないこと、すなわち改善を示すことを含む(comprising)、炎症性疾患のモニター(監視)方法。
【請求項46】
検査対象において癌を経時的にモニター(監視)する方法であって、:
(a)1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量を測定し、
(b)1回目より後の2回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量を測定し、
(c)工程(a)及び工程(b)におけるプラズマロゲンの量を比較し、1回目に検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量に対するその後の回で検査対象から採取した体液サンプル中のプラズマロゲンの量の増減を測定することにより、後の回での体液サンプル中のプラズマロゲンの量の減少は癌のあること又は悪化を示し、一方、後の回での体液サンプル中のプラズマロゲンの量の増加は癌のないこと又は改善を示すことを含み(comprising)、
癌が卵巣癌の場合プラズマロゲンはPPA又はPPCでなく、癌が乳癌の場合プラズマロゲンはPPE又はPPAでない、癌のモニター(監視)方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−516854(P2009−516854A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542392(P2008−542392)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/044874
【国際公開番号】WO2007/061940
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508151851)フランツ バイオマーカーズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】