炎症性関節炎を処置するためのガリウムの使用
本発明により、炎症性関節炎(例えば、慢性関節リウマチ)を処置または予防において、ガリウムを使用するための方法が、提供される。本発明のガリウムは、酢酸ガリウム、炭酸ガリウム、クエン酸ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、ギ酸ガリウム、硝酸ガリウム、ガリウムオキシレート、酸化ガリウムおよび酸化ガリウム水和物などの形態から独立して選択され、炎症性関節炎またはリウマチ病を処置あるいは予防するために投与され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、炎症性関節炎の処置または予防に関する。
【背景技術】
【0002】
関節炎は、文字通り、関節の炎症を意味し、関節内もしくは関節の周囲に疼痛、硬直そして時には腫脹を引き起こし得る。関節炎の主な型としては、摩耗および裂傷により引き起こされる変形性関節症、ならびに比較的軽い形態(例えば、「テニス肘」および滑液包炎)から重度の全身性の形態(例えば、関節リウマチ)に及ぶいくつかの疾患状態からなる炎症性関節炎が挙げられる。炎症性関節炎の一般的な型としては、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリトマトーデス、乾癬性関節炎および若年性関節リウマチが挙げられる。
【0003】
これらすべてのリウマチ病に関して共通する事柄は、自己免疫関連関節および筋骨格系疼痛ならびに関連する全身的な影響である。異常な免疫応答は、関節の内層組織の炎症、関節軟骨の崩壊、ならびに関節を支持する靭帯および腱の弛緩に関与する。さらに、進行中の炎症はまた、滑膜をパンヌスと称される厚く異常な侵入組織に発達させる。これらのプロセスのすべては、軟骨、関節周囲の下の層にある骨、靭帯および腱の破壊、ならびに骨の損失を補うための骨膜増殖に起因する異常な骨の形成を生じ、最終的には変形した関節をもたらす。
【0004】
これらの自己免疫疾患は事実上、全身性であるので、他の組織および器官もまた影響を受ける。例えば、炎症を起こしたかもしくは腫脹した神経、リンパ節、強膜、心膜、脾臓、動脈および関節リウマチ小節は、疾患によくある要素である。さらに、腎臓、肺および心臓血管系の関与の可能性が存在する。強直性脊椎炎は、脊椎および仙腸関節(脊椎が骨盤骨と出会う点)の慢性炎症であり、他の関節における炎症も引き起こし得る。全身性エリテマトーデスまたは狼瘡は、体がそれ自体の正常な細胞および組織に悪影響を与える自己免疫疾患である。若年性関節リウマチは、関節リウマチと類似する関節炎の形態であり、これは、幼児に影響を与え、硬直して痛み得る炎症を起こして腫脹した関節を生じる。この疾患の原因はまた、事実上自己免疫であると考えられるが、その他の点ではあまり理解されていない。しかし、関節リウマチを有する成人とは異なり、若年性関節リウマチを有するほとんどの小児は、長期疾患および長期障害を有さず、健常な成人の生活を送るようになる。若年性関節リウマチは、多くの場合、その未知の原因に起因して若年性突発性関節炎と称される。
【0005】
関節リウマチは、自己免疫疾患である;この疾患の要因は公知ではないが、遺伝的因子が関節リウマチを発症する危険性を増大させ得る。関節リウマチは全身性疾患であり、典型的に、体の両側の複数の関節に同時に影響を及ぼし、そしてそれらの関節の内面にある滑膜に影響を及ぼす。関節リウマチの症状としては、手、手首、肘、足、足首、膝および/または首の関節における疼痛、硬直および腫脹が挙げられる。この炎症は、時間とともに関節組織を破壊し得る。従って、医師は、状態の悪化が永久的な障害をもたらし得るので、典型的に、その疾患を制御するかまたはその疾患の進行を妨げるかのいずれかのために、医薬による早期処置を勧める。
【0006】
ガリウムマルトレート(gallium maltolate)および関連するガリウムヒドロキシピロンが、Bernsteinに対する特許文献1に記載されている。これらは、種々の疾患(癌(Bernsteinに対する特許文献2)、骨疾患(Bernsteinに対する特許文献3)、および感染症が挙げられる)において広範な臨床的可能性を有する経口的にバイオアベイラブルのガリウム化合物である。定常状態の血清中ガリウムレベル、ならびに動物モデルおよび患者における好ましいバイオアベイラビリティーは安全に達成されており、それゆえ、経口投与されたガリウムが有害な全身毒性の誘因とならずにバイオアベイラブルであることが確立されている。
【0007】
ガリウムは、自己免疫疾患、炎症性疾患および同種移植拒絶のいくつかのインビトロモデルおよび動物モデルにおいて、抗炎症性および免疫調節活性が示されている。これらのデータは、ガリウムの臨床試験が炎症性関節炎の処置、特に、自己免疫ベースの関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎および狼瘡)(これらに限定されない)の処置に対して保証され得ることを示唆する。非特許文献1。
【0008】
Matkovicらに対する特許文献4は、ガリウム化合物の使用、および特に関節炎の処置のための硝酸ガリウムを記載する。硝酸ガリウムは、関節リウマチラットアジュバントモデルに皮下投与された。体重1kgあたり0.5mg〜4mgの硝酸ガリウムの投与が、血中の治療的定常状態濃度を達成するために必要であることが決定された。しかし、達成された定常状態濃度は特定されていない。また、非特許文献2を参照のこと。
【0009】
炎症性関節炎の処置に利用可能な多くの市販の製品が存在する。しかし、改善された治療の開発に対する必要性が残る。例えば、ほとんどの関節リウマチ治療は、その疾患の程度および重篤度に基づいて処方された多剤を含む。初期段階の関節リウマチを有する患者は、軽度の非ステロイド系抗炎症薬またはCox−2インヒビターで開始され、そして疾患が進行するにつれて、他のより強力かつ潜在的により毒性の薬物(例えば、ステロイドまたは疾患緩和性抗リウマチ薬)が重ねられる。
【0010】
重篤な副作用に起因して、ステロイドおよび従来の疾患緩和性抗リウマチ薬(例えば、細胞毒性薬であるメトトレキサート)の両方への患者の依存を減らすことが非常に望ましい。さらに、より新しい生物製剤は、薬物もしくは代謝産物に関連する全身毒性、体重減少、長期間の使用に伴う減少した効力、アレルギー性薬物反応、肝不全、グルコース不耐症、高コスト、保険適用の不足などのような制限を多く備えている。これらの治療のほとんどは、その疾患を治さず、重大な潜在的副作用または他の足りない点(shortfall)を有する。さらに、多くの公知の治療法は数週間、そして数ヶ月さえもかかって、測定可能な治療的利点を示す。
【0011】
幸いなことに、関節炎および関節リウマチに対して新しい動物モデルが存在し、これは、「潜在的な」治療剤を同定するのに有用である。非特許文献3および非特許文献4を参照のこと。しかし、動物モデルは、典型的に、化合物の活性および毒性に関してはデータを提供するのみであり、そして疾患緩和能力を示す多くの化合物は多くの場合、臨床上の設定における長期投薬中に受容不可能な毒性を生じ得る。
【特許文献1】米国特許第5,258,376号明細書
【特許文献2】米国特許第6,087,354号明細書
【特許文献3】米国特許第5,998,397号明細書
【特許文献4】米国特許第5,175,006号明細書
【非特許文献1】Berstein、Pharmacol.Rev.、1998、50、p.665−682
【非特許文献2】Matkovicら、Curr.Ther.Res、1991、50、p.255−267
【非特許文献3】Bendeleら、Toxicologic Pathology、1999、27(1)、p.134−142
【非特許文献4】Bendele、J.Musculoskel.Neuron.Interact.、2001、1(4)、p.377−385
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、現在の治療に関する問題を有さず、長期投薬中に毒性でない、関節リウマチを処置するための治療法の開発に対する必要性が残る。これらの必要性は、本発明の方法によって対処され、達成された血清レベルにおけるガリウムの効果は、相対的に急速に(すなわち、数日以内に)観察された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明の一局面は、炎症性関節炎およびリウマチ病を処置する方法に関し、その方法は、炎症性関節炎およびリウマチ病の処置を必要とする患者に治療有効量のガリウムを投与する工程を包含し、ここで、その治療有効量は、約50ng/ml〜7000ng/mlの範囲内の血清中ガリウムレベルを提供する。
【0014】
本発明の別の局面は、パンヌス形成を予防する方法、骨膜増殖を予防する方法、軟骨損傷、巨脾腫、肝腫を予防する方法、および炎症性関節炎に起因する骨吸収を予防する方法に関し、これらの方法は、治療有効量のガリウムをこれらの予防を必要とする患者に投与する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明をさらに詳細に議論する前に、以下の用語が定義される。以下に定義されない場合、本明細書中で使用される用語は、それらの通常認められる意味を有する。
【0016】
用語「投与する」とは、ガリウムが血流に存在する結果をもたらす、患者への薬学的組成物の送達のための、任意の従来の形式の投与をいう。血流に吸収される、投与された用量の一部は、「バイオアベイラブルな画分」と称され、当該分野で公知の技術によって(例えば、血清中レベルを測定することによって)容易に決定され得る。
【0017】
薬物に関する用語「治療有効」量とは、妥当な損益比で望ましい効果を提供するために十分な、化合物の非毒性量を意味する。望ましい効果は、徴候、症状または疾患の原因の軽減であっても、生物系の任意の他の望ましい変化であってもよい。特に、治療有効量とは、血清中ガリウム濃度が目的の疾患状態の処置または予防を可能にするのに十分である濃度を得られるように投与されたガリウム錯体の量をいう。疾患を予防するのに必要な治療有効量は、「予防有効量」と称される。
【0018】
用語「治療剤」とは、本発明の方法においてガリウムとともに共投与される任意の追加の治療剤をいう。追加の治療剤は、どんな経路でもどんな投薬形態でも投与され得る。共投与は、同時投与、重複投与または連続投与によってであり得る。同時投与は、別々の投薬形態でも併用投薬形態の形式でもよい。1つの好ましい実施形態において、併用投薬形態は、経口投与に適合される。
【0019】
用語「処置する」は、「状態を処置する」などの場合、(1)その状態を予防すること、すなわち、その状態の任意の臨床徴候を回避すること、(2)その状態を抑制すること、すなわち、臨床状態の発症もしくは進行を阻止すること、および/または(3)その状態を軽減すること、すなわち、臨床徴候の後退を引き起こすことを包含する。
【0020】
用語「患者」とは、「患者の処置」などの場合、本明細書中で特定されるような状態、障害または疾患に苦しめられるかまたはそれらの傾向がある個々のヒトまたは他の哺乳動物をいうことが意図される。
【0021】
用語「薬学的に受容可能な」とは、生物学的にもその他の点でも望ましくない物質、すなわち、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こさず、かつその物質が含まれる薬学的組成物の他の成分のいずれとも有毒な様式で相互作用することなく、ガリウム(および任意の追加の治療剤)とともに個体に投与され得る物質を意味する。
【0022】
「任意の(optional)」または「必要に応じて」とは、そのあとに記載される状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、その結果、その記載は、その状況が生じる事象およびその状況が生じない事象を包含する。例えば、本明細書中の処方物における「必要に応じて存在する」ような添加物に関する記載は、その添加物を含む処方物およびその添加物を含まない処方物の両方を包含する。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈が明確に他を指図しない限りは、単数形および複数形の両方への言及を包含することが注意されなければならない。従って、例えば、処方物中の「治療剤」への言及は2以上の活性因子を包含し、「キャリア」への言及は2以上のキャリアを包含する、などである。
【0024】
(薬学的組成物および投与形態)
本発明の方法は、ガリウムを含有する薬学的組成物により達成される。ガリウムの適切な形態としては、酢酸ガリウム、炭酸ガリウム、クエン酸ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、ギ酸ガリウム、硝酸ガリウム、ガリウムオキシレート(gallium oxylate)、酸化ガリウム、酸化ガリウム水和物、リン酸ガリウム、酒石酸ガリウム、ガリウム−ピリドキサルイソニコチノイルヒドラゾン、トリス(8−キノリノナト)ガリウム(III)、3−ヒドロキシ−4−ピロンとの中性3:1ガリウム錯体(neutral 3:1 gallium complexes)、N−複素環のガリウム(III)錯体、およびポリエーテル酸のガリウム塩錯体が挙げられる。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、ガリウムは、3−ヒドロキシ−4−ピロンとの中性3:1ガリウム錯体である。用語「3−ヒドロキシ−4−ピロンの中性3:1ガリウム錯体」とは、Ga3+(Ga(III))と、3−ヒドロキシ−4−ピロンとのアニオン性形態の等価物3つとの、電気的に中性の錯体をいう。この錯体は、式[Ga3+(py−)3]により表され、pyーは、以下に定義されるように3−ヒドロキシ−4−ピロンのアニオン性形態を表す。このような錯体は、約5〜約9のpHに維持される水溶液中で、いかなる有意な程度に解離しないので、これらの錯体は、そのような溶媒中で、専ら電気的に中性のままである。
【0026】
用語「3−ヒドロキシ−4−ピロン」とは、式I:
【0027】
【化1】
の化合物をいい、ここで、R1、R2およびR3は、独立してHおよび−C1〜6アルキルから選択される。−C1〜6アルキル基は、分枝であっても、分枝でなくてもよいが、好ましくは、分枝でない。適切な−C1〜6アルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピルおよびn−プロピルが挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。好ましい−C1〜6アルキル基は、1〜3個の炭素原子を有する基であり、特にメチルおよびエチルである。単一の置換、特に2位または6位における置換が好ましい。2位における置換がもっとも好ましい。用語「3−ヒドロキシ−4−ピロン」により包含される例示的化合物は、以下に記載される。式Iの非置換形態(R1、R2およびR3がHである)は、ピロメコン酸として公知である。R2およびR3がHである、式Iの化合物としては、以下が挙げられる:3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン(R1は−CH3である)(これはマルトールまたはラリキシン酸としても公知である);および、3−ヒドロキシ−2−エチル−4−ピロン(R1が−C2H5である)(これは、しばしば、エチルマルトールまたはエチルピロメコン酸と称される)。これらの両方(特に、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)は、本発明の方法における使用のために好ましい。R2およびR3がHである、式Iの化合物としては、3−ヒドロキシ−6−メチル−4−ピロン(R2は−CH3である)が挙げられる。用語「3−ヒドロキシ−4−ピロンのアニオン」とは、ヒドロキシル基のプロトンが取り除かれ、その結果、化合物の負に帯電した形態を提供する、上の式Iで規定される化合物をいう。これらの中性3:1ガリウム錯体、およびその合成方法は、Bernsteinに対する米国特許第6,004,951号に記載される。
【0028】
好ましい錯体としては、マルトールとガリウムとの3:1錯体(これは、トリス(3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラナ−4−オナト)ガリウムまたはガリウムマルトレートと称される);およびトリス(3−ヒドロキシ−2−エチル−4H−ピラナ−4−オナト)ガリウムまたはエチルガリウムマルトレートと称される、エチルマルトールと、ガリウムとの3:1錯体が挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。
【0029】
本発明の別の実施形態において、ガリウムは、式(II):
【0030】
【化2】
を有する、N−複素環のガリウム(III)錯体であり、ここで、R1は、水素、ハロ、および−SO3Mから選択され(Mは金属イオンである)、そしてR2は、水素から選択されるか、あるいは、R1はクロロであり、そしてR2は、ヨードである。例示的な金属イオンとしては、カリウムおよびナトリウムが挙げられる。これらのN−複素環のガリウム(III)錯体およびその合成方法は、Colleyらに対する米国特許第5,525,598号に記載される。
【0031】
本発明の別の実施形態において、ガリウムは、ポリエーテル酸のガリウム塩錯体(例えば、ガリウム3,6−ジオキサヘプタノエート)である。これらの塩は、米国特許第6,054,600号および同第6,303,804号(両方ともDoughertyらに対する)に示される様式に対して、類似の様式で合成され得る。ポリエーテル酸の適切なガリウム塩錯体の1つの例は、式(III)
【0032】
【化3】
の化合物である。代表的に、ポリエーテル酸は、式:CH3O(CH2CH2O)nCH2COOHを有し、ここでnは0〜2の整数である。このガリウム錯体は、ガリウムアルコキシドとポリエーテル酸無水物との反応により調製され得る。この無水物は、その対応するポリエーテル酸から調製される。例示的なガリウムアルコキシドは、式GA(OR)3を有し、ここでRは、置換され、そして非置換の直線状または分枝状のC1〜8アルキル基もしくはアリール基である。ポリエーテル酸の例示的な無水物としては、3,6−ジオキサヘプタン酸無水物が挙げられる。
【0033】
本発明の別の実施形態において、ガリウムは、トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)であり、これは、Theilら,(1999)「Relevance of tumor models for anticancer drug development」Contrib.Oncol.(FeibigおよびBurger,編,Basel,Karger)、およびCollerら,(1996)Anticancer Res.16:687−692に記載される。ガリウムピリドキサルイソニコチノルヒドラゾンもまた、関心の対象であり、そしてKnorrら,(1998)Anticancer Res.18:1733−1738、およびChitambarら,(1996)Clin Can Res 2:1009−1015に記載される。
【0034】
この化合物は、代表的に、1つ以上の従来の薬学的に受容可能なキャリアを含有する投薬処方物において、経口、非経口(皮下注射、静脈内注射、および筋肉内注射が挙げられる)、経皮、直腸、鼻内、眼内、頬内、舌下、局所、膣内などで投与され得る。1つの好ましい実施形態において、投与経路は、経口であり、そしてガリウムは、ガリウムの経口で生物学的に利用可能な形態(例えば、3−ヒドロキシ−4−ピロンとの中性3:1ガリウム錯体またはN−複素環のガリウム(III)錯体であるが、例示によるものであり、これらに限定されない)。
【0035】
意図された投与形態に依存して、この薬学的組成物は、固体、半固体、または液体の投薬形態(例えば、錠剤、座薬、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、クリーム、軟膏、ローションなど)であり得、好ましくは、正確な投薬量の単回投与に適切な単位投薬形態であり得る。この組成物は、有効量のガリウムを含有するが、一般に、薬学的に受容可能なキャリアとの組み合わせは必要とは限らず、そしてさらに、他の薬剤、アジュバント、希釈剤、緩衝剤などを含有し得る。
【0036】
実際の投薬量は、投与されるガリウム化合物に依存して変化し得、そしてこの投薬量は、患者の体重の1kgあたりに送達されるべきGa(III)の所定の量を提供するように、選択され得る。例えば、本発明の方法は、約0.1〜20mg Ga(III)/kg、好ましくは約1〜20mg Ga(III)/kg、そしてより好ましくは約1〜12mg Ga(III)/kgを提供する、ガリウム化合物を提供する工程を包含し得る。
【0037】
上記のように、本明細書中の好ましい組成物は、経口処方物であり、この処方物としては、徐放性の経口処方物が挙げられる。経口投薬形態について、ガリウムは、胃腸管から血流に送達される間に、酸性条件下(一般に約4以下のpH)にて、部分的な解離が生じ得る。このような酸性条件は、胃に存在し得る。この解離は、遊離ヒドロキシピロンおよびガリウムイオンとともに、より吸収性の低い錯体の形成をもたらし得る。したがって、胃腸管において吸収性の高い形態で、経口送達されるガリウムを維持するために、本発明の薬学的組成物は、胃の酸性条件に曝露される場合に、この錯体の解離を阻害する手段を含めて処方され得る。胃の酸性条件に曝露される場合に、この錯体の解離を阻害または予防するための手段は、例えば、Bernsteinに対する米国特許第6,004,951号に記載される。適切な組成物は、緩衝化剤を含有し得、一方で、解離を阻害または予防する別の手段は、薬学的組成物を、個体の小腸に到達されるまで溶解しない物質(例えば、当該分野で周知のものも同様である、腸溶性に被覆された錠剤、顆粒剤、またはカプセル剤)中にカプセル化することである。
【0038】
(薬学的処置の方法)
上記のように、本発明は、ガリウムを投与することにより、炎症性関節炎、およびリウマチ病を処置および予防する方法に関する。本発明の方法が利用性を見出す炎症性関節炎の型の例としては、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、および全身性エリマトーデスが挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。
【0039】
本発明の方法は、原発性または続発性の炎症性関節炎の処置における特定の利用性を見出す。この炎症性関節炎としては、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、ライター症候群、および腸疾患に基づく関節炎が挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。さらに、本発明の方法は、他のリウマチ病の処置において有用である。このリウマチ病としては、全身性エリマトーデス、全身性硬化症および全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、側頭動脈炎、脈管炎、多発性動脈炎、ウェーゲナー肉芽腫症、および混合結合組織病、が挙げられるがこれらに限定されない。これらの疾患状態に対して、予防処置もまた企図される。
【0040】
このようにして、本発明の1つの実施形態は、治療有効量のガリウムを、炎症性関節炎およびリウマチ病を処置することを必要とする患者に投与することにより、炎症性関節炎およびリウマチ病を処置することに関する。治療有効量は、約50〜7000ng/mlの範囲内の血清中ガリウムレベルを提供する。例えば、図1、図2、図9および図10を参照のこと。ここでガリウムは、足関節の炎症を低減することが示される。
【0041】
炎症性関節炎に関連する多くの病理学的条件が存在する。慢性関節炎モデルの評価は、ガリウムが、骨膜増殖(これは、新しい骨の異常な形成である)(図11);パンヌス(これは、骨液組織の異常な増殖であり、その後、内在する軟骨および骨に侵入する)(図12);軟骨損傷(図12);巨脾腫(これは、脾臓の膨大である)(図7および図8);肝腫(これは、肝細胞の大きさの肥大または増加に起因する肝臓の膨大である)(図6);および異常な骨吸収(これは、骨の破壊である)(図14)、に対して有益な効果を有することを示した。したがって、本発明の方法はまた、パンヌス形成、骨膜増殖、軟骨損傷、巨脾腫、肝腫の予防におけるガリウムの使用に関し、そして骨再吸収の予防に関する。
【0042】
本発明の1つの実施形態において、この方法は、投与後約60日以内、好ましくは約30日以内、より好ましくは約14日以内、そしてもっとも好ましくは約7日以内にガリウムの治療効果を提供する。
【0043】
ガリウムは、好ましくは、単回投薬形態で投与されるが、一日あたり複数回の投薬で投与されてもよい。ガリウムは、好ましくは、少なくとも食前1時間、および少なくとも食後2時間で投与されるが、他のスケジュールもまた、許容される。
【0044】
必要に応じて、ガリウムとともにさらなる活性薬剤を含むことが所望され得る。このようなさらなる薬剤としては、非ステロイド性の抗炎症性薬物(例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、ジクロフェナク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブおよびバルデコキシブ(valdecoxib)が挙げられるがこれらに限定されない);グルココルチコイド(例えば、コルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロンが挙げられるがこれらに限定されない);免疫抑制薬物(例えば、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン(cyclorporine)およびメトトレキサートが挙げられるがこれらに限定されない);疾患修飾坑リウマチ薬治療(例えば、金化合物類、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、ペニシラミンまたはスルファラジンが挙げられるがこれらに限定されない);および生物学的薬剤(例えば、抗腫瘍壊死因子およびインターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、アダリムマブ(adalimumab)、アニキンラ(anikinra)、エタネルセプト(etanercept)、インフリキシマブ(infliximab)、マブセラ(mabthera)が挙げられるがこれらに限定されない);ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。
【0045】
本発明は、その好ましい特定の実施形態と組み合わせて記載されるが、前述の記載、および以下の実施例は、例示であり、本発明の範囲を限定しないことが意図されることが理解されるべきである。他の局面、利点、および改変は、本発明が属する技術分野の当業者に明らかである。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明の化合物の作製方法および使用方法のための、完全な開示および記載を当業者に提供するように示され、本発明者が考慮する本発明の範囲を限定することは、意図されない。
【0047】
数量(例えば、量、温度など)に関する正確性を確実にするために尽力したが、いくらかの誤差および偏差を考慮にいれるべきである。他に指定されない限り、部分とは、重量部分であり、温度とは、セ氏温度であり、そして圧力とは、大気圧または大気圧付近である。全ての溶媒を、HPLC等級または試薬等級として購入し、適切な場合、溶媒および試薬を、一般的な技術を使用して純度について分析した。
【0048】
(実施例1)
2つの症状発症前の動物モデルを、炎症性多発性動脈炎(それぞれ、アジュバントにより誘導される急性関節炎および連鎖球菌細胞壁により誘導される慢性関節炎)において、経口ガリウムの効力について試験した。雄Lewisラットを、両方の研究に使用した。このモデルは、詳細には、Bendeleら,(1999)Toxicologic Pathology,27(1):134−142、およびBendele(2001)J.Musculoskel.Neuron.Interact.1(4):377−385に記載される。
【0049】
(アジュバントにより誘導される急性関節炎モデル)
材料および方法:アジュバントにより誘導される急性関節炎モデルについて、雄Lewisラット(ガリウムマルトレートについて1群あたり7匹、通常のコントロールおよびデキサメタゾン処置コントロールについて1群あたり4匹)に、研究の0日目に麻酔下で、尾の付け根(base)に、100μlのフロイント完全アジュバント/脂質アミン(FCA/LA)を皮下注射した。このモデルにおける早期発症(7日間以内)の関節炎症状としては、足関節の炎症、骨吸収、およびわずかな軟骨破壊が挙げられる。アジュバント注射の7日前から終了時まで、コントロールビヒクルまたはガリウムマルトレート(100mg/kgまたは300mg/kg)を、毎日の経口胃痩栄養(gavage)により投薬することによって、予防処置を開始した。デキサメタゾン処置したコントロール動物に、毎日の経口用量のデキサメタゾン(0.1mg/kg)を投与した。この研究の経過の間に、体重を規則的に測定し、アジュバント病の発症により誘導される体重損失に対する薬物の効果を追跡し、そして薬物の用量を、それに応じて調節した。腫大の発症前であるが、全身性疾患が確立した後(アジュバント注射の約7日後)に、カリパス測定を、足関節に行った。アジュバント注射後14日目まで、足関節を毎日測定し、そのときにマウスを麻酔して安楽死させた。血清を、ガリウムの定量のため、最後の投薬から1時間後に収集した。後足、肝臓および脾臓を、組織病理学的評価のために計量し、固定し、そして処理した。アジュバント関節炎性の足関節に、炎症および骨吸収について0〜5(0=正常;5=重症)のスコアを与えた。炎症、髄外造血の増加、およびリンパ球萎縮についての脾臓の変化を、炎症のスコア付けについて使用された診断基準と同様の診断基準を使用して、0〜5にスコア付けした。原発性の指標は、足関節のカリパス測定および足関節の組織病理学的評価(関節のスコア付け)により定量される、関節周囲の炎症および骨吸収である。続発性の指標としては、体重の変化、ならびに、巨脾腫の阻害および肝腫の阻害が挙げられる。
【0050】
結果:1%メチルセルロースを含む懸濁駅中のガリウムマルトレートとして送達される、100mg/kgまたは300mg/kgの経口ガリウムの毎日の経口胃痩栄養の後に、結果を示した:Lewisラットにおいて、14日間の反復投与は、安全であり、毒性の徴候は示さなかった;達成した血清中ガリウムレベルは、用量依存性であった;両方の用量における臨床的および病理学的な足関節の炎症スコア、骨吸収スコアにおける減少;そして、両方の用量における肝臓の肥大および脾臓の肥大の顕著な減少は、症状からの軽減の徴候を示す。
【0051】
このデータを、図1〜図8に示す。図1は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの足関節の直径を示す。結果を、処置群について、足関節の平均直径±標準誤差(SE)として表した。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0052】
図2は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットについての、炎症スコアを示す。結果を、平均スコア±SEとして表す。スコアスケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0053】
図3は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの、足重量を示す。結果を、処置群について、平均足重量(g)±標準誤差(SE)として表す。結果をまた、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0054】
図4は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの骨吸収スコアを示す。結果を、平均スコア±SEとして表す。スコアスケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0055】
図5は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの体重を示す。結果を、この研究における種々の時間における、処置群についての平均体重(g)±標準誤差(SE)として表す。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0056】
図6は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの肝臓の重量を示す。結果を、処置群について平均肝臓重量(g)±標準誤差(SE)として表す。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0057】
図7は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの脾臓の重量を示す。結果を、処置群について脾臓の平均相対重量(体重100gあたりのg)±標準誤差(SE)として表す。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群については、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0058】
図8は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの脾臓組織病理学的スコアを示す。結果を、炎症、リンパ球萎縮、または髄外造血についての平均スコア±SEとして表す。スコアスケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0059】
まとめると、アジュバントにより誘導される関節炎の急性モデルにおいて、ガリウムマルトレートとして送達される経口ガリウムは、14日間の毎日の投薬後に毒性の徴候が観察されないことから、安全であった。アジュバントにより誘導される関節炎症からの有意な用量依存性の保護が、観察された。
【0060】
(連鎖球菌細胞壁により誘導される慢性関節炎モデル)
これは、多重活性化(multiple reactivate)ペプチドグリカン−多糖(PGPS)により誘導される関節炎モデルである。このモデルにおける早期発症(4〜5日間)の関節炎症状としては、足関節炎症、骨吸収、穏やかな軟骨破壊が挙げられる。
【0061】
材料および方法:連鎖球菌(PGPS)の細胞壁により誘導される関節炎を発症する、雄Lewisラット(N=12/群)を、ガリウムマルトレート(100mg/kg、200mg/kgまたは300mg/kg、経口で毎日)、またはシクロスポリンA(CSA、5〜20mg/kg)で処置し、この処置を、PGPSの足関節内への関節内注射の1日後(−14日目)に予防的に開始して、全身の再活性化が、PGPSの静脈内(iv)注射により誘導される時点(0日目)まで、14日間続けた。さらに14日間処置を続け、動物に2度目の再活性化を行った(14日目)。さらに一週間処置を続け、ラットを、全34日間の投薬について停止した。ラットを、(−)13日目、(−)7日目、0日目、8日目、14日目、および21日目に計量し、その時点で、投薬用量を調節した。右足関節のカリパス測定を、0日目、2日目、4日目、6日目、8日目、10日目、12日目、14日目、16日目、18日目、20日目および21日目に実施した。関節炎が、18日目に左後足で観察されたことから、さらなるカリパス測定を、左足関節について、18日目、20日目、および21日目に行った。全てのラットは、PKサンプリングのために最終の血液サンプルを採取された。関節のスコア付け;PGPS関節炎性の足関節に、急性関節炎の研究と同様の診断基準に従って、炎症、パンヌス、軟骨損傷、骨吸収、および骨膜性骨増殖について0〜5(正常〜重症)のスコアを与えた。原発性の指標は、足関節のカリパス測定および足関節の組織病理学的評価(関節のスコア付け)により定量される、関節周囲の炎症および骨吸収である。
【0062】
結果:1%メチルセルロースを含む懸濁液中のガリウムマルトレートとして送達される、100mg/kg、200mg/kgまたは300mg/kgの経口ガリウムの毎日の経口胃痩栄養(−13日目に開始)を続け、その結果を示した:Lewisラットにおける35日間の、ガリウムマルトレートとして送達される100mg/kg、200mg/kgおよび300mg/kgの経口ガリウムの反復投与は、安全であり、そして毒性の徴候を示さなかった;0日目における関節炎の1度目の再活性化の後、炎症のわずかな阻害が、300mg/kgの経口ガリウムで処置した動物において検出された;2度目の再活性化後、全全ての経口ガリウムで処置した群は、足重量および足関節の腫大の減少をもたらした。その効果は、より大きい経口ガリウム用量において最も有意であった;そして関節の組織病理学は、炎症、パンヌス、軟骨損傷および骨損傷についてのスコアの合計に関して用量応答性の阻害(20〜45%)を示し、このことは、症状からの軽減の徴候を示す。
【0063】
このデータを図9〜図14に示す。図9は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常コントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットの足関節直径を示す。結果を、この研究の種々の時間における足関節平均直径(インチ)±標準誤差(SE)として表す。矢印は、PGPS誘導を示す(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロールおよび処置群についてのラットは、n=12)。
【0064】
図10は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常コントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおける足関節炎症の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでの足関節炎症のスコアとして数的に表す:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロール群および処置群についてのラットは、n=12、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0065】
図11は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常のコントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおける骨膜増殖の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでの骨膜増殖のスコアとして数的に表す:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロール群および処置群についてのラットは、n=12、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0066】
図12は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常のコントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおけるパンヌス増殖の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでのパンヌス増殖のスコアとして数的に表した:スケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロールおよび処置群についてのラットは、n=12、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0067】
図13は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常のコントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおける軟骨損傷の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでの軟骨損傷のスコアとして数的に表した:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロールおよび処置群についてのラットは、n=12)。
【0068】
図14は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常のコントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおける骨吸収の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでの骨吸収のスコアとして数的に表した:スケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロールおよび処置群についてのラットは、n=12、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0069】
要約すると、連鎖球菌細胞壁により誘導される関節炎の慢性モデルにおいて、ガリウムマルトレートとして送達される経口ガリウムは、安全であり、毎日の投与から35日後に毒性の徴候は観察されなかった。パンヌス、軟骨、骨膜増殖、および骨吸収に対する有意な用量依存性の坑炎症性効果が、観察された。
【0070】
(慢性関節リウマチの研究についての血清中ガリウムレベル)
以下のデータは、上記モデルの研究から編集した。全てのサンプリングを、投薬から1時間後におこなった。
【0071】
【化4】
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図1および図2は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足首の炎症への効果を示す。図1は、臨床観察の際の、足首の全体の病理を示し、図2は、足首の炎症の組織学的スコアを示す。より高いスコアは、腫脹および炎症のより重篤な程度を表す。
【図2】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図1および図2は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足首の炎症への効果を示す。図1は、臨床観察の際の、足首の全体の病理を示し、図2は、足首の炎症の組織学的スコアを示す。より高いスコアは、腫脹および炎症のより重篤な程度を表す。
【図3】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図3は、関節の炎症および水腫についての反映の場合の、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足の重量への効果を示す。
【図4】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図4は、骨損傷の組織学的スコアを示し、より高いスコアはより重篤な骨吸収を表す。
【図5】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図5は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、体重への効果を示す。関節炎の動物は、摂食に影響を与える運動性(mobility)の喪失に起因して体重を失う。デキサメタゾンは、足首の腫脹によって誘導されるこの体重減少にネガティブに影響を与える一方で、ガリウムは好ましい効果を有する。しかし、どちらも足首の炎症を軽減した。
【図6】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図6および図7は、それぞれ、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、肝臓重量および脾臓重量への効果を示す。関節炎誘導肝臓重量および関節炎誘導脾臓重量におけるガリウム用量に関連する減少が観察され得る。
【図7】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図6および図7は、それぞれ、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、肝臓重量および脾臓重量への効果を示す。関節炎誘導肝臓重量および関節炎誘導脾臓重量におけるガリウム用量に関連する減少が観察され得る。
【図8】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図8は、脾臓の組織病理学スコアを示す。ガリウムは、脾臓において炎症を有意に軽減し、疾患の経過中に発症するリンパ組織の萎縮を予防した。
【図9】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図9および図10は、それぞれ、臨床評価および組織学的評価による、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足首の炎症への効果を示す。第1の再活性化で、ガリウム(300mg/kg)は12日目に腫脹を有意に軽減した。14日目の第2の再活性化(急激な上昇(flare−up))は、2日後に腫脹のピークを生じた。ガリウム処置したラットは、急激な上昇の2日以内に始まる、軽減した足首の腫脹を有し、急激な上昇の6日後までピーク効果が観察可能であった。シクロスポリンは効果がなかった。組織学的に、炎症スコアに関する用量関連阻害が存在した。
【図10】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図9および図10は、それぞれ、臨床評価および組織学的評価による、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足首の炎症への効果を示す。第1の再活性化で、ガリウム(300mg/kg)は12日目に腫脹を有意に軽減した。14日目の第2の再活性化(急激な上昇(flare−up))は、2日後に腫脹のピークを生じた。ガリウム処置したラットは、急激な上昇の2日以内に始まる、軽減した足首の腫脹を有し、急激な上昇の6日後までピーク効果が観察可能であった。シクロスポリンは効果がなかった。組織学的に、炎症スコアに関する用量関連阻害が存在した。
【図11】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図11は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、骨膜増殖(新しい骨の異常形成)への用量関連効果を示す。
【図12】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図12は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、パンヌス(滑膜組織の異常増殖)への用量関連効果を示す。
【図13】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図13は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、軟骨損傷への効果を示す。
【図14】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図14は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、異常な骨吸収(骨の破壊)への効果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、炎症性関節炎の処置または予防に関する。
【背景技術】
【0002】
関節炎は、文字通り、関節の炎症を意味し、関節内もしくは関節の周囲に疼痛、硬直そして時には腫脹を引き起こし得る。関節炎の主な型としては、摩耗および裂傷により引き起こされる変形性関節症、ならびに比較的軽い形態(例えば、「テニス肘」および滑液包炎)から重度の全身性の形態(例えば、関節リウマチ)に及ぶいくつかの疾患状態からなる炎症性関節炎が挙げられる。炎症性関節炎の一般的な型としては、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリトマトーデス、乾癬性関節炎および若年性関節リウマチが挙げられる。
【0003】
これらすべてのリウマチ病に関して共通する事柄は、自己免疫関連関節および筋骨格系疼痛ならびに関連する全身的な影響である。異常な免疫応答は、関節の内層組織の炎症、関節軟骨の崩壊、ならびに関節を支持する靭帯および腱の弛緩に関与する。さらに、進行中の炎症はまた、滑膜をパンヌスと称される厚く異常な侵入組織に発達させる。これらのプロセスのすべては、軟骨、関節周囲の下の層にある骨、靭帯および腱の破壊、ならびに骨の損失を補うための骨膜増殖に起因する異常な骨の形成を生じ、最終的には変形した関節をもたらす。
【0004】
これらの自己免疫疾患は事実上、全身性であるので、他の組織および器官もまた影響を受ける。例えば、炎症を起こしたかもしくは腫脹した神経、リンパ節、強膜、心膜、脾臓、動脈および関節リウマチ小節は、疾患によくある要素である。さらに、腎臓、肺および心臓血管系の関与の可能性が存在する。強直性脊椎炎は、脊椎および仙腸関節(脊椎が骨盤骨と出会う点)の慢性炎症であり、他の関節における炎症も引き起こし得る。全身性エリテマトーデスまたは狼瘡は、体がそれ自体の正常な細胞および組織に悪影響を与える自己免疫疾患である。若年性関節リウマチは、関節リウマチと類似する関節炎の形態であり、これは、幼児に影響を与え、硬直して痛み得る炎症を起こして腫脹した関節を生じる。この疾患の原因はまた、事実上自己免疫であると考えられるが、その他の点ではあまり理解されていない。しかし、関節リウマチを有する成人とは異なり、若年性関節リウマチを有するほとんどの小児は、長期疾患および長期障害を有さず、健常な成人の生活を送るようになる。若年性関節リウマチは、多くの場合、その未知の原因に起因して若年性突発性関節炎と称される。
【0005】
関節リウマチは、自己免疫疾患である;この疾患の要因は公知ではないが、遺伝的因子が関節リウマチを発症する危険性を増大させ得る。関節リウマチは全身性疾患であり、典型的に、体の両側の複数の関節に同時に影響を及ぼし、そしてそれらの関節の内面にある滑膜に影響を及ぼす。関節リウマチの症状としては、手、手首、肘、足、足首、膝および/または首の関節における疼痛、硬直および腫脹が挙げられる。この炎症は、時間とともに関節組織を破壊し得る。従って、医師は、状態の悪化が永久的な障害をもたらし得るので、典型的に、その疾患を制御するかまたはその疾患の進行を妨げるかのいずれかのために、医薬による早期処置を勧める。
【0006】
ガリウムマルトレート(gallium maltolate)および関連するガリウムヒドロキシピロンが、Bernsteinに対する特許文献1に記載されている。これらは、種々の疾患(癌(Bernsteinに対する特許文献2)、骨疾患(Bernsteinに対する特許文献3)、および感染症が挙げられる)において広範な臨床的可能性を有する経口的にバイオアベイラブルのガリウム化合物である。定常状態の血清中ガリウムレベル、ならびに動物モデルおよび患者における好ましいバイオアベイラビリティーは安全に達成されており、それゆえ、経口投与されたガリウムが有害な全身毒性の誘因とならずにバイオアベイラブルであることが確立されている。
【0007】
ガリウムは、自己免疫疾患、炎症性疾患および同種移植拒絶のいくつかのインビトロモデルおよび動物モデルにおいて、抗炎症性および免疫調節活性が示されている。これらのデータは、ガリウムの臨床試験が炎症性関節炎の処置、特に、自己免疫ベースの関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎および狼瘡)(これらに限定されない)の処置に対して保証され得ることを示唆する。非特許文献1。
【0008】
Matkovicらに対する特許文献4は、ガリウム化合物の使用、および特に関節炎の処置のための硝酸ガリウムを記載する。硝酸ガリウムは、関節リウマチラットアジュバントモデルに皮下投与された。体重1kgあたり0.5mg〜4mgの硝酸ガリウムの投与が、血中の治療的定常状態濃度を達成するために必要であることが決定された。しかし、達成された定常状態濃度は特定されていない。また、非特許文献2を参照のこと。
【0009】
炎症性関節炎の処置に利用可能な多くの市販の製品が存在する。しかし、改善された治療の開発に対する必要性が残る。例えば、ほとんどの関節リウマチ治療は、その疾患の程度および重篤度に基づいて処方された多剤を含む。初期段階の関節リウマチを有する患者は、軽度の非ステロイド系抗炎症薬またはCox−2インヒビターで開始され、そして疾患が進行するにつれて、他のより強力かつ潜在的により毒性の薬物(例えば、ステロイドまたは疾患緩和性抗リウマチ薬)が重ねられる。
【0010】
重篤な副作用に起因して、ステロイドおよび従来の疾患緩和性抗リウマチ薬(例えば、細胞毒性薬であるメトトレキサート)の両方への患者の依存を減らすことが非常に望ましい。さらに、より新しい生物製剤は、薬物もしくは代謝産物に関連する全身毒性、体重減少、長期間の使用に伴う減少した効力、アレルギー性薬物反応、肝不全、グルコース不耐症、高コスト、保険適用の不足などのような制限を多く備えている。これらの治療のほとんどは、その疾患を治さず、重大な潜在的副作用または他の足りない点(shortfall)を有する。さらに、多くの公知の治療法は数週間、そして数ヶ月さえもかかって、測定可能な治療的利点を示す。
【0011】
幸いなことに、関節炎および関節リウマチに対して新しい動物モデルが存在し、これは、「潜在的な」治療剤を同定するのに有用である。非特許文献3および非特許文献4を参照のこと。しかし、動物モデルは、典型的に、化合物の活性および毒性に関してはデータを提供するのみであり、そして疾患緩和能力を示す多くの化合物は多くの場合、臨床上の設定における長期投薬中に受容不可能な毒性を生じ得る。
【特許文献1】米国特許第5,258,376号明細書
【特許文献2】米国特許第6,087,354号明細書
【特許文献3】米国特許第5,998,397号明細書
【特許文献4】米国特許第5,175,006号明細書
【非特許文献1】Berstein、Pharmacol.Rev.、1998、50、p.665−682
【非特許文献2】Matkovicら、Curr.Ther.Res、1991、50、p.255−267
【非特許文献3】Bendeleら、Toxicologic Pathology、1999、27(1)、p.134−142
【非特許文献4】Bendele、J.Musculoskel.Neuron.Interact.、2001、1(4)、p.377−385
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、現在の治療に関する問題を有さず、長期投薬中に毒性でない、関節リウマチを処置するための治療法の開発に対する必要性が残る。これらの必要性は、本発明の方法によって対処され、達成された血清レベルにおけるガリウムの効果は、相対的に急速に(すなわち、数日以内に)観察された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明の一局面は、炎症性関節炎およびリウマチ病を処置する方法に関し、その方法は、炎症性関節炎およびリウマチ病の処置を必要とする患者に治療有効量のガリウムを投与する工程を包含し、ここで、その治療有効量は、約50ng/ml〜7000ng/mlの範囲内の血清中ガリウムレベルを提供する。
【0014】
本発明の別の局面は、パンヌス形成を予防する方法、骨膜増殖を予防する方法、軟骨損傷、巨脾腫、肝腫を予防する方法、および炎症性関節炎に起因する骨吸収を予防する方法に関し、これらの方法は、治療有効量のガリウムをこれらの予防を必要とする患者に投与する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明をさらに詳細に議論する前に、以下の用語が定義される。以下に定義されない場合、本明細書中で使用される用語は、それらの通常認められる意味を有する。
【0016】
用語「投与する」とは、ガリウムが血流に存在する結果をもたらす、患者への薬学的組成物の送達のための、任意の従来の形式の投与をいう。血流に吸収される、投与された用量の一部は、「バイオアベイラブルな画分」と称され、当該分野で公知の技術によって(例えば、血清中レベルを測定することによって)容易に決定され得る。
【0017】
薬物に関する用語「治療有効」量とは、妥当な損益比で望ましい効果を提供するために十分な、化合物の非毒性量を意味する。望ましい効果は、徴候、症状または疾患の原因の軽減であっても、生物系の任意の他の望ましい変化であってもよい。特に、治療有効量とは、血清中ガリウム濃度が目的の疾患状態の処置または予防を可能にするのに十分である濃度を得られるように投与されたガリウム錯体の量をいう。疾患を予防するのに必要な治療有効量は、「予防有効量」と称される。
【0018】
用語「治療剤」とは、本発明の方法においてガリウムとともに共投与される任意の追加の治療剤をいう。追加の治療剤は、どんな経路でもどんな投薬形態でも投与され得る。共投与は、同時投与、重複投与または連続投与によってであり得る。同時投与は、別々の投薬形態でも併用投薬形態の形式でもよい。1つの好ましい実施形態において、併用投薬形態は、経口投与に適合される。
【0019】
用語「処置する」は、「状態を処置する」などの場合、(1)その状態を予防すること、すなわち、その状態の任意の臨床徴候を回避すること、(2)その状態を抑制すること、すなわち、臨床状態の発症もしくは進行を阻止すること、および/または(3)その状態を軽減すること、すなわち、臨床徴候の後退を引き起こすことを包含する。
【0020】
用語「患者」とは、「患者の処置」などの場合、本明細書中で特定されるような状態、障害または疾患に苦しめられるかまたはそれらの傾向がある個々のヒトまたは他の哺乳動物をいうことが意図される。
【0021】
用語「薬学的に受容可能な」とは、生物学的にもその他の点でも望ましくない物質、すなわち、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こさず、かつその物質が含まれる薬学的組成物の他の成分のいずれとも有毒な様式で相互作用することなく、ガリウム(および任意の追加の治療剤)とともに個体に投与され得る物質を意味する。
【0022】
「任意の(optional)」または「必要に応じて」とは、そのあとに記載される状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、その結果、その記載は、その状況が生じる事象およびその状況が生じない事象を包含する。例えば、本明細書中の処方物における「必要に応じて存在する」ような添加物に関する記載は、その添加物を含む処方物およびその添加物を含まない処方物の両方を包含する。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈が明確に他を指図しない限りは、単数形および複数形の両方への言及を包含することが注意されなければならない。従って、例えば、処方物中の「治療剤」への言及は2以上の活性因子を包含し、「キャリア」への言及は2以上のキャリアを包含する、などである。
【0024】
(薬学的組成物および投与形態)
本発明の方法は、ガリウムを含有する薬学的組成物により達成される。ガリウムの適切な形態としては、酢酸ガリウム、炭酸ガリウム、クエン酸ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、ギ酸ガリウム、硝酸ガリウム、ガリウムオキシレート(gallium oxylate)、酸化ガリウム、酸化ガリウム水和物、リン酸ガリウム、酒石酸ガリウム、ガリウム−ピリドキサルイソニコチノイルヒドラゾン、トリス(8−キノリノナト)ガリウム(III)、3−ヒドロキシ−4−ピロンとの中性3:1ガリウム錯体(neutral 3:1 gallium complexes)、N−複素環のガリウム(III)錯体、およびポリエーテル酸のガリウム塩錯体が挙げられる。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、ガリウムは、3−ヒドロキシ−4−ピロンとの中性3:1ガリウム錯体である。用語「3−ヒドロキシ−4−ピロンの中性3:1ガリウム錯体」とは、Ga3+(Ga(III))と、3−ヒドロキシ−4−ピロンとのアニオン性形態の等価物3つとの、電気的に中性の錯体をいう。この錯体は、式[Ga3+(py−)3]により表され、pyーは、以下に定義されるように3−ヒドロキシ−4−ピロンのアニオン性形態を表す。このような錯体は、約5〜約9のpHに維持される水溶液中で、いかなる有意な程度に解離しないので、これらの錯体は、そのような溶媒中で、専ら電気的に中性のままである。
【0026】
用語「3−ヒドロキシ−4−ピロン」とは、式I:
【0027】
【化1】
の化合物をいい、ここで、R1、R2およびR3は、独立してHおよび−C1〜6アルキルから選択される。−C1〜6アルキル基は、分枝であっても、分枝でなくてもよいが、好ましくは、分枝でない。適切な−C1〜6アルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピルおよびn−プロピルが挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。好ましい−C1〜6アルキル基は、1〜3個の炭素原子を有する基であり、特にメチルおよびエチルである。単一の置換、特に2位または6位における置換が好ましい。2位における置換がもっとも好ましい。用語「3−ヒドロキシ−4−ピロン」により包含される例示的化合物は、以下に記載される。式Iの非置換形態(R1、R2およびR3がHである)は、ピロメコン酸として公知である。R2およびR3がHである、式Iの化合物としては、以下が挙げられる:3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン(R1は−CH3である)(これはマルトールまたはラリキシン酸としても公知である);および、3−ヒドロキシ−2−エチル−4−ピロン(R1が−C2H5である)(これは、しばしば、エチルマルトールまたはエチルピロメコン酸と称される)。これらの両方(特に、3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロン)は、本発明の方法における使用のために好ましい。R2およびR3がHである、式Iの化合物としては、3−ヒドロキシ−6−メチル−4−ピロン(R2は−CH3である)が挙げられる。用語「3−ヒドロキシ−4−ピロンのアニオン」とは、ヒドロキシル基のプロトンが取り除かれ、その結果、化合物の負に帯電した形態を提供する、上の式Iで規定される化合物をいう。これらの中性3:1ガリウム錯体、およびその合成方法は、Bernsteinに対する米国特許第6,004,951号に記載される。
【0028】
好ましい錯体としては、マルトールとガリウムとの3:1錯体(これは、トリス(3−ヒドロキシ−2−メチル−4H−ピラナ−4−オナト)ガリウムまたはガリウムマルトレートと称される);およびトリス(3−ヒドロキシ−2−エチル−4H−ピラナ−4−オナト)ガリウムまたはエチルガリウムマルトレートと称される、エチルマルトールと、ガリウムとの3:1錯体が挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。
【0029】
本発明の別の実施形態において、ガリウムは、式(II):
【0030】
【化2】
を有する、N−複素環のガリウム(III)錯体であり、ここで、R1は、水素、ハロ、および−SO3Mから選択され(Mは金属イオンである)、そしてR2は、水素から選択されるか、あるいは、R1はクロロであり、そしてR2は、ヨードである。例示的な金属イオンとしては、カリウムおよびナトリウムが挙げられる。これらのN−複素環のガリウム(III)錯体およびその合成方法は、Colleyらに対する米国特許第5,525,598号に記載される。
【0031】
本発明の別の実施形態において、ガリウムは、ポリエーテル酸のガリウム塩錯体(例えば、ガリウム3,6−ジオキサヘプタノエート)である。これらの塩は、米国特許第6,054,600号および同第6,303,804号(両方ともDoughertyらに対する)に示される様式に対して、類似の様式で合成され得る。ポリエーテル酸の適切なガリウム塩錯体の1つの例は、式(III)
【0032】
【化3】
の化合物である。代表的に、ポリエーテル酸は、式:CH3O(CH2CH2O)nCH2COOHを有し、ここでnは0〜2の整数である。このガリウム錯体は、ガリウムアルコキシドとポリエーテル酸無水物との反応により調製され得る。この無水物は、その対応するポリエーテル酸から調製される。例示的なガリウムアルコキシドは、式GA(OR)3を有し、ここでRは、置換され、そして非置換の直線状または分枝状のC1〜8アルキル基もしくはアリール基である。ポリエーテル酸の例示的な無水物としては、3,6−ジオキサヘプタン酸無水物が挙げられる。
【0033】
本発明の別の実施形態において、ガリウムは、トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)であり、これは、Theilら,(1999)「Relevance of tumor models for anticancer drug development」Contrib.Oncol.(FeibigおよびBurger,編,Basel,Karger)、およびCollerら,(1996)Anticancer Res.16:687−692に記載される。ガリウムピリドキサルイソニコチノルヒドラゾンもまた、関心の対象であり、そしてKnorrら,(1998)Anticancer Res.18:1733−1738、およびChitambarら,(1996)Clin Can Res 2:1009−1015に記載される。
【0034】
この化合物は、代表的に、1つ以上の従来の薬学的に受容可能なキャリアを含有する投薬処方物において、経口、非経口(皮下注射、静脈内注射、および筋肉内注射が挙げられる)、経皮、直腸、鼻内、眼内、頬内、舌下、局所、膣内などで投与され得る。1つの好ましい実施形態において、投与経路は、経口であり、そしてガリウムは、ガリウムの経口で生物学的に利用可能な形態(例えば、3−ヒドロキシ−4−ピロンとの中性3:1ガリウム錯体またはN−複素環のガリウム(III)錯体であるが、例示によるものであり、これらに限定されない)。
【0035】
意図された投与形態に依存して、この薬学的組成物は、固体、半固体、または液体の投薬形態(例えば、錠剤、座薬、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、クリーム、軟膏、ローションなど)であり得、好ましくは、正確な投薬量の単回投与に適切な単位投薬形態であり得る。この組成物は、有効量のガリウムを含有するが、一般に、薬学的に受容可能なキャリアとの組み合わせは必要とは限らず、そしてさらに、他の薬剤、アジュバント、希釈剤、緩衝剤などを含有し得る。
【0036】
実際の投薬量は、投与されるガリウム化合物に依存して変化し得、そしてこの投薬量は、患者の体重の1kgあたりに送達されるべきGa(III)の所定の量を提供するように、選択され得る。例えば、本発明の方法は、約0.1〜20mg Ga(III)/kg、好ましくは約1〜20mg Ga(III)/kg、そしてより好ましくは約1〜12mg Ga(III)/kgを提供する、ガリウム化合物を提供する工程を包含し得る。
【0037】
上記のように、本明細書中の好ましい組成物は、経口処方物であり、この処方物としては、徐放性の経口処方物が挙げられる。経口投薬形態について、ガリウムは、胃腸管から血流に送達される間に、酸性条件下(一般に約4以下のpH)にて、部分的な解離が生じ得る。このような酸性条件は、胃に存在し得る。この解離は、遊離ヒドロキシピロンおよびガリウムイオンとともに、より吸収性の低い錯体の形成をもたらし得る。したがって、胃腸管において吸収性の高い形態で、経口送達されるガリウムを維持するために、本発明の薬学的組成物は、胃の酸性条件に曝露される場合に、この錯体の解離を阻害する手段を含めて処方され得る。胃の酸性条件に曝露される場合に、この錯体の解離を阻害または予防するための手段は、例えば、Bernsteinに対する米国特許第6,004,951号に記載される。適切な組成物は、緩衝化剤を含有し得、一方で、解離を阻害または予防する別の手段は、薬学的組成物を、個体の小腸に到達されるまで溶解しない物質(例えば、当該分野で周知のものも同様である、腸溶性に被覆された錠剤、顆粒剤、またはカプセル剤)中にカプセル化することである。
【0038】
(薬学的処置の方法)
上記のように、本発明は、ガリウムを投与することにより、炎症性関節炎、およびリウマチ病を処置および予防する方法に関する。本発明の方法が利用性を見出す炎症性関節炎の型の例としては、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、および全身性エリマトーデスが挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。
【0039】
本発明の方法は、原発性または続発性の炎症性関節炎の処置における特定の利用性を見出す。この炎症性関節炎としては、慢性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、ライター症候群、および腸疾患に基づく関節炎が挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。さらに、本発明の方法は、他のリウマチ病の処置において有用である。このリウマチ病としては、全身性エリマトーデス、全身性硬化症および全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、側頭動脈炎、脈管炎、多発性動脈炎、ウェーゲナー肉芽腫症、および混合結合組織病、が挙げられるがこれらに限定されない。これらの疾患状態に対して、予防処置もまた企図される。
【0040】
このようにして、本発明の1つの実施形態は、治療有効量のガリウムを、炎症性関節炎およびリウマチ病を処置することを必要とする患者に投与することにより、炎症性関節炎およびリウマチ病を処置することに関する。治療有効量は、約50〜7000ng/mlの範囲内の血清中ガリウムレベルを提供する。例えば、図1、図2、図9および図10を参照のこと。ここでガリウムは、足関節の炎症を低減することが示される。
【0041】
炎症性関節炎に関連する多くの病理学的条件が存在する。慢性関節炎モデルの評価は、ガリウムが、骨膜増殖(これは、新しい骨の異常な形成である)(図11);パンヌス(これは、骨液組織の異常な増殖であり、その後、内在する軟骨および骨に侵入する)(図12);軟骨損傷(図12);巨脾腫(これは、脾臓の膨大である)(図7および図8);肝腫(これは、肝細胞の大きさの肥大または増加に起因する肝臓の膨大である)(図6);および異常な骨吸収(これは、骨の破壊である)(図14)、に対して有益な効果を有することを示した。したがって、本発明の方法はまた、パンヌス形成、骨膜増殖、軟骨損傷、巨脾腫、肝腫の予防におけるガリウムの使用に関し、そして骨再吸収の予防に関する。
【0042】
本発明の1つの実施形態において、この方法は、投与後約60日以内、好ましくは約30日以内、より好ましくは約14日以内、そしてもっとも好ましくは約7日以内にガリウムの治療効果を提供する。
【0043】
ガリウムは、好ましくは、単回投薬形態で投与されるが、一日あたり複数回の投薬で投与されてもよい。ガリウムは、好ましくは、少なくとも食前1時間、および少なくとも食後2時間で投与されるが、他のスケジュールもまた、許容される。
【0044】
必要に応じて、ガリウムとともにさらなる活性薬剤を含むことが所望され得る。このようなさらなる薬剤としては、非ステロイド性の抗炎症性薬物(例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、ジクロフェナク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブおよびバルデコキシブ(valdecoxib)が挙げられるがこれらに限定されない);グルココルチコイド(例えば、コルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロンが挙げられるがこれらに限定されない);免疫抑制薬物(例えば、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン(cyclorporine)およびメトトレキサートが挙げられるがこれらに限定されない);疾患修飾坑リウマチ薬治療(例えば、金化合物類、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、ペニシラミンまたはスルファラジンが挙げられるがこれらに限定されない);および生物学的薬剤(例えば、抗腫瘍壊死因子およびインターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、アダリムマブ(adalimumab)、アニキンラ(anikinra)、エタネルセプト(etanercept)、インフリキシマブ(infliximab)、マブセラ(mabthera)が挙げられるがこれらに限定されない);ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、例示によるものであり、これらに限定されない。
【0045】
本発明は、その好ましい特定の実施形態と組み合わせて記載されるが、前述の記載、および以下の実施例は、例示であり、本発明の範囲を限定しないことが意図されることが理解されるべきである。他の局面、利点、および改変は、本発明が属する技術分野の当業者に明らかである。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明の化合物の作製方法および使用方法のための、完全な開示および記載を当業者に提供するように示され、本発明者が考慮する本発明の範囲を限定することは、意図されない。
【0047】
数量(例えば、量、温度など)に関する正確性を確実にするために尽力したが、いくらかの誤差および偏差を考慮にいれるべきである。他に指定されない限り、部分とは、重量部分であり、温度とは、セ氏温度であり、そして圧力とは、大気圧または大気圧付近である。全ての溶媒を、HPLC等級または試薬等級として購入し、適切な場合、溶媒および試薬を、一般的な技術を使用して純度について分析した。
【0048】
(実施例1)
2つの症状発症前の動物モデルを、炎症性多発性動脈炎(それぞれ、アジュバントにより誘導される急性関節炎および連鎖球菌細胞壁により誘導される慢性関節炎)において、経口ガリウムの効力について試験した。雄Lewisラットを、両方の研究に使用した。このモデルは、詳細には、Bendeleら,(1999)Toxicologic Pathology,27(1):134−142、およびBendele(2001)J.Musculoskel.Neuron.Interact.1(4):377−385に記載される。
【0049】
(アジュバントにより誘導される急性関節炎モデル)
材料および方法:アジュバントにより誘導される急性関節炎モデルについて、雄Lewisラット(ガリウムマルトレートについて1群あたり7匹、通常のコントロールおよびデキサメタゾン処置コントロールについて1群あたり4匹)に、研究の0日目に麻酔下で、尾の付け根(base)に、100μlのフロイント完全アジュバント/脂質アミン(FCA/LA)を皮下注射した。このモデルにおける早期発症(7日間以内)の関節炎症状としては、足関節の炎症、骨吸収、およびわずかな軟骨破壊が挙げられる。アジュバント注射の7日前から終了時まで、コントロールビヒクルまたはガリウムマルトレート(100mg/kgまたは300mg/kg)を、毎日の経口胃痩栄養(gavage)により投薬することによって、予防処置を開始した。デキサメタゾン処置したコントロール動物に、毎日の経口用量のデキサメタゾン(0.1mg/kg)を投与した。この研究の経過の間に、体重を規則的に測定し、アジュバント病の発症により誘導される体重損失に対する薬物の効果を追跡し、そして薬物の用量を、それに応じて調節した。腫大の発症前であるが、全身性疾患が確立した後(アジュバント注射の約7日後)に、カリパス測定を、足関節に行った。アジュバント注射後14日目まで、足関節を毎日測定し、そのときにマウスを麻酔して安楽死させた。血清を、ガリウムの定量のため、最後の投薬から1時間後に収集した。後足、肝臓および脾臓を、組織病理学的評価のために計量し、固定し、そして処理した。アジュバント関節炎性の足関節に、炎症および骨吸収について0〜5(0=正常;5=重症)のスコアを与えた。炎症、髄外造血の増加、およびリンパ球萎縮についての脾臓の変化を、炎症のスコア付けについて使用された診断基準と同様の診断基準を使用して、0〜5にスコア付けした。原発性の指標は、足関節のカリパス測定および足関節の組織病理学的評価(関節のスコア付け)により定量される、関節周囲の炎症および骨吸収である。続発性の指標としては、体重の変化、ならびに、巨脾腫の阻害および肝腫の阻害が挙げられる。
【0050】
結果:1%メチルセルロースを含む懸濁駅中のガリウムマルトレートとして送達される、100mg/kgまたは300mg/kgの経口ガリウムの毎日の経口胃痩栄養の後に、結果を示した:Lewisラットにおいて、14日間の反復投与は、安全であり、毒性の徴候は示さなかった;達成した血清中ガリウムレベルは、用量依存性であった;両方の用量における臨床的および病理学的な足関節の炎症スコア、骨吸収スコアにおける減少;そして、両方の用量における肝臓の肥大および脾臓の肥大の顕著な減少は、症状からの軽減の徴候を示す。
【0051】
このデータを、図1〜図8に示す。図1は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの足関節の直径を示す。結果を、処置群について、足関節の平均直径±標準誤差(SE)として表した。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0052】
図2は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットについての、炎症スコアを示す。結果を、平均スコア±SEとして表す。スコアスケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0053】
図3は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの、足重量を示す。結果を、処置群について、平均足重量(g)±標準誤差(SE)として表す。結果をまた、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0054】
図4は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの骨吸収スコアを示す。結果を、平均スコア±SEとして表す。スコアスケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0055】
図5は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの体重を示す。結果を、この研究における種々の時間における、処置群についての平均体重(g)±標準誤差(SE)として表す。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0056】
図6は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの肝臓の重量を示す。結果を、処置群について平均肝臓重量(g)±標準誤差(SE)として表す。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0057】
図7は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの脾臓の重量を示す。結果を、処置群について脾臓の平均相対重量(体重100gあたりのg)±標準誤差(SE)として表す。結果を、また、疾患コントロール群(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群については、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)からの%差として、数的に表す。
【0058】
図8は、ガリウムマルトレート(GaM)、デキサメタゾン、またはビヒクル(正常のコントロールおよび疾患コントロール)で処置した、アジュバントにより誘導される急性関節炎を有するラットの脾臓組織病理学的スコアを示す。結果を、炎症、リンパ球萎縮、または髄外造血についての平均スコア±SEとして表す。スコアスケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(正常のコントロール群およびデキサメタゾン処置した群についてのラットは、n=4、他の処置群については、n=7、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0059】
まとめると、アジュバントにより誘導される関節炎の急性モデルにおいて、ガリウムマルトレートとして送達される経口ガリウムは、14日間の毎日の投薬後に毒性の徴候が観察されないことから、安全であった。アジュバントにより誘導される関節炎症からの有意な用量依存性の保護が、観察された。
【0060】
(連鎖球菌細胞壁により誘導される慢性関節炎モデル)
これは、多重活性化(multiple reactivate)ペプチドグリカン−多糖(PGPS)により誘導される関節炎モデルである。このモデルにおける早期発症(4〜5日間)の関節炎症状としては、足関節炎症、骨吸収、穏やかな軟骨破壊が挙げられる。
【0061】
材料および方法:連鎖球菌(PGPS)の細胞壁により誘導される関節炎を発症する、雄Lewisラット(N=12/群)を、ガリウムマルトレート(100mg/kg、200mg/kgまたは300mg/kg、経口で毎日)、またはシクロスポリンA(CSA、5〜20mg/kg)で処置し、この処置を、PGPSの足関節内への関節内注射の1日後(−14日目)に予防的に開始して、全身の再活性化が、PGPSの静脈内(iv)注射により誘導される時点(0日目)まで、14日間続けた。さらに14日間処置を続け、動物に2度目の再活性化を行った(14日目)。さらに一週間処置を続け、ラットを、全34日間の投薬について停止した。ラットを、(−)13日目、(−)7日目、0日目、8日目、14日目、および21日目に計量し、その時点で、投薬用量を調節した。右足関節のカリパス測定を、0日目、2日目、4日目、6日目、8日目、10日目、12日目、14日目、16日目、18日目、20日目および21日目に実施した。関節炎が、18日目に左後足で観察されたことから、さらなるカリパス測定を、左足関節について、18日目、20日目、および21日目に行った。全てのラットは、PKサンプリングのために最終の血液サンプルを採取された。関節のスコア付け;PGPS関節炎性の足関節に、急性関節炎の研究と同様の診断基準に従って、炎症、パンヌス、軟骨損傷、骨吸収、および骨膜性骨増殖について0〜5(正常〜重症)のスコアを与えた。原発性の指標は、足関節のカリパス測定および足関節の組織病理学的評価(関節のスコア付け)により定量される、関節周囲の炎症および骨吸収である。
【0062】
結果:1%メチルセルロースを含む懸濁液中のガリウムマルトレートとして送達される、100mg/kg、200mg/kgまたは300mg/kgの経口ガリウムの毎日の経口胃痩栄養(−13日目に開始)を続け、その結果を示した:Lewisラットにおける35日間の、ガリウムマルトレートとして送達される100mg/kg、200mg/kgおよび300mg/kgの経口ガリウムの反復投与は、安全であり、そして毒性の徴候を示さなかった;0日目における関節炎の1度目の再活性化の後、炎症のわずかな阻害が、300mg/kgの経口ガリウムで処置した動物において検出された;2度目の再活性化後、全全ての経口ガリウムで処置した群は、足重量および足関節の腫大の減少をもたらした。その効果は、より大きい経口ガリウム用量において最も有意であった;そして関節の組織病理学は、炎症、パンヌス、軟骨損傷および骨損傷についてのスコアの合計に関して用量応答性の阻害(20〜45%)を示し、このことは、症状からの軽減の徴候を示す。
【0063】
このデータを図9〜図14に示す。図9は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常コントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットの足関節直径を示す。結果を、この研究の種々の時間における足関節平均直径(インチ)±標準誤差(SE)として表す。矢印は、PGPS誘導を示す(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロールおよび処置群についてのラットは、n=12)。
【0064】
図10は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常コントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおける足関節炎症の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでの足関節炎症のスコアとして数的に表す:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロール群および処置群についてのラットは、n=12、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0065】
図11は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常のコントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおける骨膜増殖の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでの骨膜増殖のスコアとして数的に表す:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロール群および処置群についてのラットは、n=12、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0066】
図12は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常のコントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおけるパンヌス増殖の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでのパンヌス増殖のスコアとして数的に表した:スケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロールおよび処置群についてのラットは、n=12、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0067】
図13は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常のコントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおける軟骨損傷の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでの軟骨損傷のスコアとして数的に表した:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロールおよび処置群についてのラットは、n=12)。
【0068】
図14は、ガリウムマルトレート(GaM)、シクロスポリンA、またはビヒクル(正常のコントロールまたは疾患コントロール)で処置した、PGPSにより誘導される慢性関節炎を有するラットにおける骨吸収の%改善を示す。結果を、疾患コントロールからの平均%差±SEとして表す。結果をまた、以下のスケールでの骨吸収のスコアとして数的に表した:スケール:正常=0、最小限の変化≦1、軽い変化≦2、中程度の変化≦3、顕著な変化≦4、激しい変化=5(ベースラインコントロール群についてのラットは、n=4、疾患コントロールおよび処置群についてのラットは、n=12、*疾患コントロール群と比較してp<0.05)。
【0069】
要約すると、連鎖球菌細胞壁により誘導される関節炎の慢性モデルにおいて、ガリウムマルトレートとして送達される経口ガリウムは、安全であり、毎日の投与から35日後に毒性の徴候は観察されなかった。パンヌス、軟骨、骨膜増殖、および骨吸収に対する有意な用量依存性の坑炎症性効果が、観察された。
【0070】
(慢性関節リウマチの研究についての血清中ガリウムレベル)
以下のデータは、上記モデルの研究から編集した。全てのサンプリングを、投薬から1時間後におこなった。
【0071】
【化4】
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図1および図2は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足首の炎症への効果を示す。図1は、臨床観察の際の、足首の全体の病理を示し、図2は、足首の炎症の組織学的スコアを示す。より高いスコアは、腫脹および炎症のより重篤な程度を表す。
【図2】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図1および図2は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足首の炎症への効果を示す。図1は、臨床観察の際の、足首の全体の病理を示し、図2は、足首の炎症の組織学的スコアを示す。より高いスコアは、腫脹および炎症のより重篤な程度を表す。
【図3】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図3は、関節の炎症および水腫についての反映の場合の、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足の重量への効果を示す。
【図4】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図4は、骨損傷の組織学的スコアを示し、より高いスコアはより重篤な骨吸収を表す。
【図5】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図5は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、体重への効果を示す。関節炎の動物は、摂食に影響を与える運動性(mobility)の喪失に起因して体重を失う。デキサメタゾンは、足首の腫脹によって誘導されるこの体重減少にネガティブに影響を与える一方で、ガリウムは好ましい効果を有する。しかし、どちらも足首の炎症を軽減した。
【図6】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図6および図7は、それぞれ、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、肝臓重量および脾臓重量への効果を示す。関節炎誘導肝臓重量および関節炎誘導脾臓重量におけるガリウム用量に関連する減少が観察され得る。
【図7】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図6および図7は、それぞれ、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、肝臓重量および脾臓重量への効果を示す。関節炎誘導肝臓重量および関節炎誘導脾臓重量におけるガリウム用量に関連する減少が観察され得る。
【図8】図1〜図8は、実施例1のアジュバント誘導急性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図8は、脾臓の組織病理学スコアを示す。ガリウムは、脾臓において炎症を有意に軽減し、疾患の経過中に発症するリンパ組織の萎縮を予防した。
【図9】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図9および図10は、それぞれ、臨床評価および組織学的評価による、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足首の炎症への効果を示す。第1の再活性化で、ガリウム(300mg/kg)は12日目に腫脹を有意に軽減した。14日目の第2の再活性化(急激な上昇(flare−up))は、2日後に腫脹のピークを生じた。ガリウム処置したラットは、急激な上昇の2日以内に始まる、軽減した足首の腫脹を有し、急激な上昇の6日後までピーク効果が観察可能であった。シクロスポリンは効果がなかった。組織学的に、炎症スコアに関する用量関連阻害が存在した。
【図10】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図9および図10は、それぞれ、臨床評価および組織学的評価による、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、足首の炎症への効果を示す。第1の再活性化で、ガリウム(300mg/kg)は12日目に腫脹を有意に軽減した。14日目の第2の再活性化(急激な上昇(flare−up))は、2日後に腫脹のピークを生じた。ガリウム処置したラットは、急激な上昇の2日以内に始まる、軽減した足首の腫脹を有し、急激な上昇の6日後までピーク効果が観察可能であった。シクロスポリンは効果がなかった。組織学的に、炎症スコアに関する用量関連阻害が存在した。
【図11】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図11は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、骨膜増殖(新しい骨の異常形成)への用量関連効果を示す。
【図12】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図12は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、パンヌス(滑膜組織の異常増殖)への用量関連効果を示す。
【図13】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図13は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、軟骨損傷への効果を示す。
【図14】図9〜図14は、実施例1の連鎖球菌細胞壁誘導慢性関節炎モデルから得られるデータを提供する。図14は、ガリウムマルトレートとして送達された経口ガリウムの、異常な骨吸収(骨の破壊)への効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性関節炎およびリウマチ病を処置する方法であって、該方法は、炎症性関節炎およびリウマチ病の処置を必要とする個体に治療有効量のガリウムを投与する工程を包含し、ここで、該治療有効量は、約50ng/ml〜7000ng/mlの範囲内のガリウム血清中ガリウムレベルを提供する、方法。
【請求項2】
前記炎症性関節炎が、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、ライター症候群および腸疾患に基づく関節炎から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リウマチ病が、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症および強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、側頭動脈炎、脈管炎、多発性動脈炎、ウェーゲナー肉芽腫症ならびに混合結合組織病から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガリウムが、酢酸ガリウム、炭酸ガリウム、クエン酸ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、ギ酸ガリウム、硝酸ガリウム、ガリウムオキシレート、酸化ガリウムおよび酸化ガリウム水和物、リン酸ガリウム、酒石酸ガリウム、ガリウム−ピリドキサルイソニコチノイルヒドラゾン、トリス(8−キノリノラート)ガリウム(III)、3−ヒドロキシ−4−ピロンの中性3:1ガリウム錯体、N−複素環のガリウム(III)錯体、ならびにポリエーテル酸のガリウム塩錯体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ガリウムが経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ガリウムが、3−ヒドロキシ−4−ピロンの中性3:1ガリウム錯体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ガリウムが、N−複素環のガリウム(III)錯体である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ガリウムが、ポリエーテル酸のガリウム塩錯体である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
パンヌス形成を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムをパンヌス形成の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項10】
骨膜増殖を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムを骨膜増殖の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
軟骨損傷を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムを軟骨損傷の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項12】
巨脾腫を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムを巨脾腫の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項13】
炎症性関節炎に起因する骨吸収を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムを炎症性関節炎に起因する骨吸収の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項1】
炎症性関節炎およびリウマチ病を処置する方法であって、該方法は、炎症性関節炎およびリウマチ病の処置を必要とする個体に治療有効量のガリウムを投与する工程を包含し、ここで、該治療有効量は、約50ng/ml〜7000ng/mlの範囲内のガリウム血清中ガリウムレベルを提供する、方法。
【請求項2】
前記炎症性関節炎が、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、ライター症候群および腸疾患に基づく関節炎から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リウマチ病が、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症および強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、側頭動脈炎、脈管炎、多発性動脈炎、ウェーゲナー肉芽腫症ならびに混合結合組織病から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガリウムが、酢酸ガリウム、炭酸ガリウム、クエン酸ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、ギ酸ガリウム、硝酸ガリウム、ガリウムオキシレート、酸化ガリウムおよび酸化ガリウム水和物、リン酸ガリウム、酒石酸ガリウム、ガリウム−ピリドキサルイソニコチノイルヒドラゾン、トリス(8−キノリノラート)ガリウム(III)、3−ヒドロキシ−4−ピロンの中性3:1ガリウム錯体、N−複素環のガリウム(III)錯体、ならびにポリエーテル酸のガリウム塩錯体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ガリウムが経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ガリウムが、3−ヒドロキシ−4−ピロンの中性3:1ガリウム錯体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ガリウムが、N−複素環のガリウム(III)錯体である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ガリウムが、ポリエーテル酸のガリウム塩錯体である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
パンヌス形成を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムをパンヌス形成の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項10】
骨膜増殖を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムを骨膜増殖の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
軟骨損傷を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムを軟骨損傷の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項12】
巨脾腫を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムを巨脾腫の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項13】
炎症性関節炎に起因する骨吸収を予防する方法であって、該方法は、治療有効量のガリウムを炎症性関節炎に起因する骨吸収の予防を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−514754(P2007−514754A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545478(P2006−545478)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/042453
【国際公開番号】WO2005/058331
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(502197932)タイタン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/042453
【国際公開番号】WO2005/058331
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(502197932)タイタン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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