説明

炭素繊維ストランド用表面処理装置

【課題】表面が均一に電解酸化処理された炭素繊維が得られる炭素繊維用表面処理装置を提供する。
【解決手段】下方から上方へ向かって電解液を流通させ、上端から電解液をオーバーフローさせる内槽と、前記内槽を直列に所定間隔離間させて内部に複数備えるとともに、各内槽からオーバーフローされた電解液を受け入れる外槽とからなる電解槽と、前記各内槽内に挿入された電極と、前記内槽内に電極上方に水平に挿入され、厚さ方向に多数の貫通孔が形成された整流板と、前記外槽内の電解液を受け入れて貯留する電解液タンクと、前記タンク内の電解液を前記内槽内に送出するポンプと、を有する炭素繊維ストランド用表面処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維ストランドを、電極を備えた電解槽の電解液に浸漬することにより炭素繊維表面の電解酸化処理を行う炭素繊維ストランド用表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を炭素繊維で補強した炭素繊維複合材料は、引張強度・引張弾性率が高く、耐熱性、疲労特性に優れるなどの特長を有しており、スポーツ・レジャー、航空・宇宙等の分野で幅広く用いられている。
【0003】
炭素繊維は、アクリル繊維等の原料繊維を空気中で200〜300℃に加熱することにより耐炎繊維とした後、不活性ガス雰囲気中1000℃以上で焼成することにより製造される。
【0004】
炭素繊維複合材料の強度・弾性率等の機械的特性は、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性により大きな影響を受ける。そのため、耐炎化工程、炭素化工程を経た後、マトリックス樹脂との親和性を高めることを目的として炭素繊維の表面に含酸素官能基を導入する酸化処理が一般に行われる。
【0005】
炭素繊維表面の酸化処理としては、液相における薬液酸化・電解酸化、気相酸化などの方法で処理することが知られている。これら表面処理のうち、生産性が高く、処理が均一に行える等の理由により、液相における電解酸化処理が広く採用されている。液相電解酸化処理は、電解質水溶液中で炭素繊維と、電極との間に電圧を印加することにより、炭素繊維を電解酸化する処理方法である。
【0006】
炭素繊維は、その製造工程において1,000〜80,000本程度の束形状に製造される。炭素繊維の表面処理は、平行に走行する多数のストランドを電解液に浸漬することにより行われる。電解槽としては従来様々な構造のものが開発されているが、例えば、電解槽から電解液をオーバーフローさせ、液面が電解槽の側壁よりわずかに高くなっているところに炭素繊維を通過させることにより、表面処理するオーバーフロー型の電解槽が従来用いられている(例えば、特許文献1参照)。この電解槽においては、炭素繊維を電解液に浸漬又は電解液から引き上げのためのガイドローラーを使用する必要がないので、炭素繊維に毛羽を生じにくく、品位の高い製品が得られる利点を有している。その反面、常時電解槽に電解液を供給してオーバーフローさせる必要があるので、表面の酸化処理状態が電解液の流速による影響を受けやすい。多数のストランドを同時に表面処理する場合には、ストランド間で表面酸化状態にムラが生じることが問題となっている。
【0007】
表面の酸化処理が均一でない炭素繊維をマトリックス樹脂に配合した場合には、炭素繊維の表面の官能基が少ない部分とマトリックス樹脂との接着が不十分となり、高いコンポジット物性を示す複合材料が得られない。
【特許文献1】特開昭58−115123号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、多数の炭素繊維ストランド間で炭素繊維表面が均一に酸化処理され、マトリックス樹脂に配合したときに高いコンポジット物性を示す炭素繊維が得られる炭素繊維ストランド用表面処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討を行った結果、電解槽内に整流板を挿入することにより、ストランドに供給される電解液の流量がストランド間で一定となり、ストランド間の表面処理状態のばらつきが抑制されることを見出した。更に、整流板を複数に区分し、区分毎に開口率を変化させることにより、より一層表面処理状態が均一な炭素繊維ストランドが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、上記課題を解決する本発明は、以下に記載するものである。
【0011】
〔1〕 下方から上方へ向かって電解液を流通させ、上端から電解液をオーバーフローさせる内槽と、所定間隔離間して直列に並べられた複数の前記内槽を内部に備えるとともに、各内槽からオーバーフローされた電解液を受け入れる外槽とからなる電解槽と、前記外槽内の電解液を受け入れて内部に貯留する電解液タンクと、前記電解液タンク内の電解液を前記内槽内に送出するポンプと、前記内槽の下部側に挿入された電極と、前記内槽内に電極上方に水平に挿入され、厚さ方向に多数の貫通孔が形成された整流板と、を有する炭素繊維ストランド用表面処理装置。
【0012】
〔2〕 内槽の形状が、上端が開放され、下端が下壁により閉塞された角筒状であって、下壁の中心部に電解液受け入れのための流入口が形成された〔1〕に記載の炭素繊維ストランド用表面処理装置。
【0013】
〔3〕 内槽の列方向に対して直角方向の流入口の口径が、内槽の列方向に対して直角方向の内槽内幅の15〜80%である〔2〕に記載の炭素繊維ストランド用表面処理装置。
【0014】
〔4〕 整流板が、内槽の列方向に対して直角方向に内槽の中心部から外側に向かって開口率の異なる第1〜第3区分の3つの区分に区分けされ、当該区分の開口率が順に0.3%以上9%未満、9%以上15%未満、15%以上60%以下である〔1〕に記載の炭素繊維ストランド用表面処理装置。
【0015】
〔5〕 整流板の水平面における第1〜第3区分の面積が、それぞれ5〜10%、0〜20%、70〜90%である〔4〕に記載の炭素繊維ストランド用表面処理装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表面処理装置は、電解液が下方から上方へ流通する電解槽内槽に整流板が挿入されている。そのため、電解液は整流板設置箇所から内槽の上端側を均一な流速で上昇し、内槽の上端から外槽内にオーバーフローする。本発明の処理装置によれば、装置の機幅方向でオーバーフロー高さを均一とすることができるので、炭素繊維ストランドの表面酸化処理状態は、ストランド間でのばらつきが抑制される。本発明によれば、多数の炭素繊維ストランドを同時に均一に表面処理することができるので、この炭素繊維を熱硬化性樹脂や熱硬化性樹脂に配合することにより機械的強度の高い炭素繊維複合材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で使用する表面処理装置の一例の概略構成図を図1に示す。
【0018】
図1中、100は表面処理装置で、1は電解槽である。電解槽1は複数の内槽3と、外槽13とからなる。
【0019】
内槽3の平面図を図2に、側面断面図を図3に、正面断面図を図4に示す。
【0020】
図3,4において、角筒状に形成された内槽3の上端3aは開放され、下端は下壁3bにより閉塞されている。下壁3bには、中心部に流入口9が形成されている。流入口9には、外槽13の下壁を貫通する流入管10が連結されている。
【0021】
内槽3には、内部に平板状に形成された電極5が挿入されている。電極5は、一端が内槽3の内壁に沿って折り曲げられ、電解槽の外部で不図示の保持部材により支持されるとともに、外部電源に接続されている。
【0022】
図2〜4中、矢印Aは炭素繊維ストランド11の走行方向を、矢印B(即ち、矢印Aの直角方向)は装置の機幅方向を示す。内槽3内の下壁3b近傍には電極5が配置されている。電極5のA方向の長さと、B方向の長さは、それぞれ内槽3の内長さL、内幅Lより短く形成されている。電極5の上方には、整流板7が水平に挿入されている。整流板7には、厚さ方向に貫通する貫通孔7aが多数形成されている。
【0023】
図1に示すように、多数の内槽3は炭素繊維ストランド11の走行方向に沿って、外槽13内に直列に並べられている。隣り合う内槽3の中央間距離は、内槽の内長さLに対し115〜250%程度である。多数の内槽3内に備えられた電極5は、隣り合う内槽間で交互に陽極と陰極として作用するように電圧が印加されている。
【0024】
内槽3は、その上端3aが外槽の上端13aと同じ高さ又は外槽の上端13aより高くなるように配設されている。外槽13の側壁13bには、排出口15が形成されている。
【0025】
図1中、17は電解液タンク、19はポンプである。排出口15と電解液タンク17の間は排出樋21により接続され、電解液タンク17とポンプ19との間は配管23により接続されている。
【0026】
ポンプ19の送出口には、配管25が接続されている。配管25と各内槽3の下壁に連結された流入管10の間は、バルブ27が介装された枝管29により接続されている。
【0027】
電解液タンク17に貯留される硫酸等の電解液は、ポンプ19により流入口9から内槽3内に導入される。その後、電極5と内槽側壁の間を通過した後、整流板に形成された貫通孔7aを通過することにより均一な流れとなり、内槽3内を下方から上方へ流通する。内槽3の上端で内槽3からオーバーフローした電解液は、外槽13に受け入れられる。その後、外槽13に形成された排出口15から排出樋21に流出し、再び電解液タンク17に貯留される。
【0028】
炭素繊維ストランド11は、内槽3上で内槽から外槽13へオーバーフローする電解液中を通過することにより電解液に浸漬される。炭素繊維は導電性が高いので、隣り合う内槽3の間で交互に陽極又は陰極として作用する電極5に電圧を印可することにより電解液中で炭素繊維の表面が電解酸化され、カルボキシル基、カルボニル基等の含酸素官能基が炭素繊維表面に導入される。炭素繊維ストランド11は、電解槽1上を通過することにより、内槽から外槽にオーバーフローする電解液に繰り返し浸漬され、表面が繰り返し電解酸化処理される。炭素繊維ストランド11は、電解槽通過終了とともに電解酸化処理が終了し、水洗、サイズ剤付与、乾燥等の後工程に送られる。その後、ワインダーに巻き取られて最終製品となる。
【0029】
なお、上記説明においては、流入口9を内槽3の下壁3aの中央に1つ形成する場合について説明したが、複数形成されていてもよい。複数の流入口を形成する場合には、内槽内に電解液が均一に流通するように、機幅方向に並べて形成することが好ましい。
【0030】
流入口9の機幅方向の口径は、内槽内幅Lに対し10〜60%が好ましく、15〜50%がより好ましい。
【0031】
本発明の処理装置で処理する炭素繊維の処理量Xは、1.0〜250kg/hrとすることが好ましい。1.0kg/hr未満では、炭素繊維の処理状態にムラが生じにくいため整流板を挿入する必要性が少ない。250kg/hrを超えると、装置の機幅が大きくなり過ぎるため、電解液の流量を均一化することが困難となる。
【0032】
流入口9から内槽3内へ流通させる電解液の流量Yは、内槽の容積等の条件により異なるが、炭素繊維ストランドを数十から数百本を平行に走行させ一度に処理する汎用的な電解槽の場合で、0.3〜120m/hrである。0.3m/hr未満では、オーバーフロー高さを十分なものとすることが難しく、120m/hrを超えるとオーバーフロー高さが高くなりすぎる部分が発生し、均一な液面高さを保つことが困難となる。
【0033】
炭素繊維処理量X(kg/hr)と、電解液流量Y(m/hr)は、0.1<Y/X<25の関係を満たすことが好ましい。Y/Xの値が0.1未満では、炭素繊維ストランドに十分な表面処理を施すことが困難であり、Y/Xの値が25を超えると、オーバーフロー高さが高くなりすぎる部分が発生し、均一な液面高さを保つことが困難となる。
【0034】
内槽出側の電解液の平均流速は、4〜30mm/secとすることが好ましい。4mm/sec未満では、電解液のオーバーフロー高さが不十分となり、30mm/secを超えると流量均一化が難しく、オーバーフロー高さを均一に保つことが困難となる。内槽出側の平均流速は、内槽3に供給する電解液の流量を調整することにより前記範囲内とすることが可能である。
【0035】
整流板7に形成する貫通孔の孔径は2〜25mmとすることが好ましい。2mm未満では、製作が困難なうえ、詰まりが生じる虞がある。25mmを超えると孔の部分で極端に流量が増加し、整流板により流量分布を均一化することが困難である。
【0036】
貫通孔のピッチは2.5〜100mmとすることが好ましい。ピッチが2.5mm未満の場合、製作が困難であることに加え、抵抗が小さくなり、整流板挿入の効果が喪失する虞がある。100mmを超えると、孔の部分で極端に流量が増加し、流量分布を均一化することが困難である。
【0037】
整流板の開口率は、全体の平均値で0.3〜60%とすることが好ましい。0.3%未満の場合、抵抗が極端に上昇し、装置への負担が増大する。60%を超えると、整流板挿入の効果が不十分なものとなる。
【0038】
整流板7の開口率は、炭素繊維ストランド11間で表面処理が均一に行われるように、流入口9からの距離や電極の形状等に応じて変化させることが好ましい。 整流板7の好ましい一例を図5に示す。整流板は、中心から長手方向外側に向かって、S〜Sの3区分に区分けされている。それぞれの区分の開口率は、Sから順に0.3%以上9%未満、9%以上15%未満、15%以上60%以下である。また、S〜Sの面積は、それぞれ整流板の面積の5〜10%、0〜20%、70〜90%とすることが好ましい。
【0039】
外槽13内に配設する内槽3の数は、2〜32とすることが好ましく、4〜24とすることがより好ましい。
【0040】
上記説明においては、電極5は、一端のみが内槽3の内壁に沿って折り曲げられ、電解槽の外部で不図示の保持部材により支持される場合について説明したが、両端が内槽3の内壁に沿って折り曲げられるとともに外部に配設された不図示の保持部材により両端で支持されていてもよい。
【0041】
電極5の厚さは、2〜20mmとすることが好ましい。電極5の機幅方向長さは、内槽3の内幅Lの0.2〜0.9倍とすることが好ましく、炭素繊維ストランドの走行方向の長さは、内槽3の内長さLの0.6〜1.0倍とすることが好ましい。
【0042】
電極5の材質としては、例えば白金、SUS316L、チタンの他、銅などの金属表面に白金をめっきしたものを使用することができる。
【0043】
炭素繊維ストランド11の内槽1槽あたりの処理時間は、1.0〜5.0秒とすることが好ましく、1.5〜3.0秒とすることがより好ましい。なお、炭素繊維の走行速度は、通常50〜600m/h程度である。
【0044】
炭素繊維の電解酸化処理に用いる電解液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機水酸化物、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩類などの電解質水溶液を挙げることができる。
【0045】
本発明で電解酸化処理する炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維の他、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維も使用することができる。
【0046】
炭素繊維ストランド11は、通常、直径4〜12μmのフィラメントが1000〜80000本程度集合した束形状に製造される。本発明の処理装置では、上記繊維径、フィラメント数に限定されず、いかなる繊維径、フィラメント数のものでも処理することが可能である。
【0047】
炭素繊維ストランド11に通電する電気量は、電解液7に使用する電解質の種類や炭素繊維ストランド11の弾性率等の条件に応じて適宜決定すればよい。例えば、電解液に硫酸アンモニウム水溶液を用いて弾性率24tonf/mmの炭素繊維の電解酸化処理を行う場合には、炭素繊維に通電する電気量を3〜40C/gとすることが好ましく、4〜30C/gとすることがより好ましい。
【0048】
炭素繊維ストランド11の電解酸化処理温度は10〜80℃の範囲とするが、20〜50℃とすることが好ましい。
【0049】
炭素繊維ストランド11の表面処理を行う際の指標としては、X線光電子分光法(ESCA)を用いて測定できる炭素繊維の表面酸素濃度比(O/C)により管理するのが良い。炭素繊維を熱硬化性樹脂に配合して複合材料とする場合には、O/Cが、0.05〜0.4となるように電解酸化処理することが好ましい。
【実施例】
【0050】
実施例1
図1に示す表面処理装置を用い、以下の条件で炭素繊維ストランドの電解処理を行った。
内槽寸法:機幅方向2600mm、奥行250mm、高さ120mm
内槽容積:0.078m
炭素繊維処理量:90kg/hr
電解液:硝酸(6%)水溶液
電解液流量:240L/min
内槽出側流速:6.15mm/s
流入口:内槽の底面中央に1箇所(口径50mm)
電極:機幅方向2500mm、奥行100mm、厚さ5mm
電極と内槽下壁間の距離:95mm
整流板と内槽下壁間の距離:105mm
整流板:表1に記載の厚さ5mmのものを使用した。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例2
図1に示す表面処理装置を用い、以下の条件で炭素繊維ストランドの電解処理を行った。
内槽寸法:機幅方向2600mm、奥行500mm、高さ120mm
内槽容積:0.156m
炭素繊維処理量:90kg/hr
電解液:硫酸アンモニウム(10%)水溶液
電解液流量:600L/min
内槽出側流速:7.69mm/s
流入口:内槽の底面中央に1箇所(口径80mm)
電極:機幅方向2500mm、奥行200mm、厚さ5mm
電極と内槽下壁間の距離:95mm
整流板と内槽下壁間の距離:105mm
整流板:表2に記載の厚さ5mmのものを使用した。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例3
図1に示す表面処理装置を用い、以下の条件で炭素繊維ストランドの電解処理を行った。
内槽寸法:機幅方向900mm、奥行50mm、高さ40mm
内槽容積:0.0018m
炭素繊維処理量:3.3kg/hr
電解液:硝酸(6%)水溶液
電解液流量:25L/min
内槽出側流速:9.26mm/s
流入口:内槽の底面中央に1箇所(口径20mm)
電極:機幅方向900mm、奥行30mm、厚さ5mm
電極と内槽下壁間の距離:5mm
整流板と内槽下壁間の距離:27mm
整流板:表3に記載の厚さ3mmのものを使用した。
【0055】
【表3】

【0056】
実施例1〜3の装置において、内槽のオーバーフロー高さを機幅方向の5点でスケールにて実測したところ、全て3〜4mmの範囲であった。
【0057】
比較例1
整流板を用いない以外は、実施例3と同様に炭素繊維ストランドの表面処理を行った。内槽のオーバーフローの高さを機幅方向の5点で実測したところ、0〜6mmとばらつきが観測された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の表面処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の表面処理装置で使用する電解槽の概略平面図である。
【図3】図2に示す電解槽の概略側面断面図である。
【図4】図2に示す電解槽の概略正面断面図である。
【図5】本発明の表面処理装置で使用する整流板の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 電解槽
3 内槽
5 電極
7 整流板
7a 貫通孔
9 流入口
10 流入管
11 炭素繊維ストランド
13 外槽
15 排出口
17 電解液タンク
19 ポンプ
21 排出樋
23、25 配管
27 バルブ
29 枝管
100 表面処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から上方へ向かって電解液を流通させ、上端から電解液をオーバーフローさせる内槽と、所定間隔離間して直列に並べられた複数の前記内槽を内部に備えるとともに、各内槽からオーバーフローされた電解液を受け入れる外槽とからなる電解槽と、前記外槽内の電解液を受け入れて内部に貯留する電解液タンクと、前記電解液タンク内の電解液を前記内槽内に送出するポンプと、前記内槽の下部側に挿入された電極と、前記内槽内に電極上方に水平に挿入され、厚さ方向に多数の貫通孔が形成された整流板と、を有する炭素繊維ストランド用表面処理装置。
【請求項2】
内槽の形状が、上端が開放され、下端が下壁により閉塞された角筒状であって、下壁の中心部に電解液受け入れのための流入口が形成された請求項1に記載の炭素繊維ストランド用表面処理装置。
【請求項3】
内槽の列方向に対して直角方向の流入口の口径が、内槽の列方向に対して直角方向の内槽内幅の15〜80%である請求項2に記載の炭素繊維ストランド用表面処理装置。
【請求項4】
整流板が、内槽の列方向に対して直角方向に内槽の中心部から外側に向かって開口率の異なる第1〜第3区分の3つの区分に区分けされ、当該区分の開口率が順に0.3%以上9%未満、9%以上15%未満、15%以上60%以下である請求項1に記載の炭素繊維ストランド用表面処理装置。
【請求項5】
整流板の水平面における第1〜第3区分の面積が、それぞれ5〜10%、0〜20%、70〜90%である請求項4に記載の炭素繊維ストランド用表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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