説明

炭酸ガス圧浴装置

【課題】炭酸ガスを圧縮空気により所定の圧力値以上で生体の皮膚に接触させることにより炭酸ガスを皮膚から効率よく吸収させることが可能な炭酸ガス圧浴装置を提供する。
【解決手段】炭酸ガス圧浴装置を、炭酸ガスと一または複数の薬剤を含有する水蒸気の混合ガスを供給する炭酸ガス供給手段1と、圧縮空気供給手段2と、炭酸ガス供給手段1に接続器6を介して接続され炭酸ガス供給手段1から供給される混合ガスを閉じ込める密閉層4を有しこの混合ガスを人体の皮膚に直接接触させると共に、圧縮空気供給手段2に接続器7を介して接続され圧縮空気供給手段2から供給される圧縮空気を閉じ込める密閉層5とを有する2層構造の被覆ウェア3と、から構成し、炭酸ガスを圧縮空気により所定の圧力値以上で常時加圧することによって人体の皮膚に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガスを生体の皮膚に直接に接触させることにより血管を拡張させ血液循環を改善させるための炭酸ガス圧浴装置に関するものであり、特に、炭酸ガスを圧縮空気により所定の圧力値以上で生体の皮膚に接触させることにより皮膚からの炭酸ガスの吸収効率を向上させた炭酸ガス圧浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭酸ガス(二酸化炭素;CO)が生体の皮膚から吸収されると、血管を拡張させることが知られている。炭酸ガスは、単に皮膚に触れるだけで皮下に浸透し、その浸透部位の血管を拡張させ血液循環を改善させるため、血圧を降下させる、心臓の負担を軽減させる、代謝を改善する、疼痛物質や老廃物の排除を促す等の種々の生理的効果を発揮する。
【0003】
このため、従来から高血圧や心臓病、動脈硬化の治療等に炭酸泉浴等が利用されており、また近年では、医療目的のみならず、血行促進効果による健康増進、美容促進といった点からも炭酸ガスは広く注目を集めている。
【0004】
炭酸ガスを人体に吸収させるための従来技術の例として最も広く利用されているのは、浴槽内の湯中に投入されることにより炭酸ガスを発生する入浴剤である。入浴剤を湯中に入れると、入浴剤の中に閉じ込められていた炭酸ガスが泡状になって湯中において発生し、その一部が湯の中に溶け込んで入浴する人の皮膚に接触することで炭酸ガスを皮膚から体内に浸透させ上記したような生理的効果を発揮させようとするものである。
【0005】
さらに、炭酸ガスをより多く人体に接触させる従来技術として、炭酸ガス入浴装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。
【0006】
この種の装置は、水中に炭酸ガスを高濃度に溶け込ませるための装置であり、特許文献1には、炭酸ガス入浴剤溶解部2と微小孔4を有する炭酸ガス拡散装置1と、から構成され、溶解部2と拡散装置1間に設置された微小孔3および拡散装置部に設けられた微小孔4の両者にて、炭酸ガスの泡は微少になり、炭酸ガスが浴槽水と接する面積が格段に拡大し、かつ接する時間が長くなり、さらには入浴剤の周囲の泡による浮き上がりを防止し、最後まで入浴剤に浴槽水内において炭酸ガスを放散させ続けさせる入浴剤用炭酸ガス拡散装置が開示されている。
【0007】
また、引用文献2及び引用文献3には、浴槽に炭酸ガス発生装置を接続し、炭酸ガス発生装置から供給される多量の炭酸ガスを浴槽内の浴槽水に積極的に溶け込ませるように細かい気泡状に噴出させる浴槽用マイクロバブル発生装置および炭酸ガス併用シャワー入浴装置が記載されている。
【特許文献1】特開2006−20985号公報
【特許文献2】特開2007−159902号公報
【特許文献3】特開2005−168859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1乃至特許文献3に記載された公知技術は、何れも入浴時において浴槽水の中に炭酸ガスを溶け込ませて人体の皮膚から炭酸ガスを吸収させようとするものであって、多量の炭酸ガスを消費する割には、皮膚からの炭酸ガスの吸収率は決して高くないという問題があった。また、その利用は、入浴時に限定されていた。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、少量の炭酸ガスでも効率的に生体の皮膚から吸収させることが可能な炭酸ガス圧浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、所定値以上濃度の炭酸ガスを人体の皮膚に接触させることにより、血管を拡張させ血液循環を改善させるための装置であって、炭酸ガスを、一または複数の薬剤を含有する水蒸気に含ませた状態で供給する炭酸ガス供給手段と、圧縮空気供給手段と、前記炭酸ガス供給手段と前記圧縮空気供給手段とに接続器を介して接続され、前記炭酸ガス供給手段から供給される前記炭酸ガスと一または複数の薬剤を含有する水蒸気の混合ガスを人体の皮膚に直接接触させると共に、前記圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気を封止する密閉層を形成する2層構造の被覆ウェアと、から構成され、前記炭酸ガスを前記圧縮空気により所定の圧力値以上で人体の皮膚に接触させることを特徴とする炭酸ガス圧浴装置を提供するものである。
【0011】
また本発明は、所定値以上濃度の炭酸ガスを動物の皮膚に接触させることにより、血管を拡張させ血液循環を改善させるための装置であって、炭酸ガスを、一または複数の薬剤を含有する水蒸気に含ませた状態で供給する炭酸ガス供給手段と、圧縮空気供給手段と、前記炭酸ガス供給手段と前記圧縮空気供給手段とに接続器を介して接続され、前記炭酸ガス供給手段から供給される前記炭酸ガスと一または複数の薬剤を含有する水蒸気の混合ガスを動物の皮膚に直接接触させると共に、前記圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気を封止する密閉層を形成する2層構造の被覆ウェアと、から構成され、前記炭酸ガスを前記圧縮空気により所定の圧力値以上で動物の皮膚に接触させることを特徴とする炭酸ガス圧浴装置を提供するものである。
【0012】
このように、本炭酸ガス圧浴装置においては、被覆ウェアにおいて形成された圧縮空気層が、直接人体または動物の皮膚に接する炭酸ガスと一または複数の薬剤を含有する水蒸気の混合ガスを一定の圧力で皮膚に押圧するので、炭酸ガスの皮膚からの浸透性を著しく向上させているのである。また、混合ガスそのものの圧力を高める必要がないので、大量の炭酸ガスを必要とせず、炭酸ガスを効率的に使用できる。
【0013】
また、本発明の炭酸ガス圧浴装置は、人体のみならず、動物(例えば、競走馬やペット等)にも適用可能である。
【0014】
ここで、前記圧縮空気供給手段は、前記圧縮空気により常時加圧を行っても良いが、前記圧縮空気を所定時間毎に加圧及び減圧を繰り返すインターバル加圧を行うようにしても良い。常時加圧により炭酸ガスの皮膚からの浸透性を高めることができるのは言うまでもないが、インターバル状に加圧すればさらにその浸透性を向上させることができる。
【0015】
ところで、本炭酸ガス圧浴装置において使用する炭酸ガス供給装置は、炭酸ガスを封入した炭酸ガスボンベが挿入される炭酸ガス挿入部と、前記一または複数の薬剤を含有する水を受け入れる貯水部と、を備え、炭酸ガスボンベ内の炭酸ガスを微粒サイズの気泡状にして前記貯水部内に放出させることにより、前記炭酸ガスと一または複数の薬剤を含有する水蒸気の混合ガスを得るのである。
【0016】
このとき、前記一または複数の薬剤は、ビタミンE、ビタミンC、光触媒とアパタイト、シクロデキストリンの複合体のうちの何れか一つまたは複数とする。これにより、血行促進や殺菌等、各薬剤特有の効果をさらに付加することができる。
【0017】
そして、前記炭酸ガス供給装置内における水の温度は、摂氏40乃至70度とすることにより、入浴と同様に皮膚を温めてそれ自体で血行を良好にさせることを可能にしているのである。
【0018】
そして、前記圧縮空気供給手段は、ヒータ手段を備え、ヒータ手段のオン/オフにより温風空気または冷風空気を供給することも可能にしたのである。
【0019】
そして、前記圧縮空気供給手段から供給される空気圧は、1.2乃至2.5気圧とする。これにより、圧縮空気による皮膚に対する圧力マッサージ効果をも発揮させることができる。
【0020】
このため、前記圧縮空気供給手段は、(1)圧縮空気ボンベ、(2)電気駆動されるコンプレッサ、または(3)手動の袋状の空気圧器(例えば、血圧計に用いられる手動の空気袋または浮き袋に空気を入れる足踏みタイプの空気圧器)を用いる。
【0021】
ところで、前記被覆ウェアは、人体の腰部及び両下肢を包む下半身用の被覆ウェア、人体の腹部及び両上肢を含む上半身用の被覆ウェア、人体の片足を包む片下肢用の被覆ウェア、人体の片手を包む片上肢用の被覆ウェア等、種々の被覆ウェアが利用できる。そして、これ等の種々のタイプの被覆ウェアは、複数を同時に使用することができるのである。
【0022】
そして、前記被覆ウェアは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、またはポリテトラフルオロエチレン、織布または不織布の中の何れか一つまたは複数の組み合わせにより形成される。また、前記被覆ウェアは、その開口部に紐または面ファスナーの締め付け手段が取り付けられており、これにより、炭酸ガスと水蒸気の混合ガス及び圧縮空気の大気中への放散を防止しているのである。
【0023】
前記被覆ウェアに設けられた、前記炭酸ガス供給手段からの混合ガスと前記圧縮空気供給手段からの圧縮空気を受け入れるための各接続器は、タップが形成された捻じ込み式の接続器または嵌め込み式の接続器とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る炭酸ガス圧浴装置においては、炭酸ガス供給手段から供給される炭酸ガスと水蒸気の混合ガスを閉じ込める密閉層を有しこの炭酸ガスと水蒸気の混合ガスを生体の皮膚に直接接触させると共に、圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気を閉じ込める密閉層を有する2層構造の被覆ウェアによって、炭酸ガスを圧縮空気により所定の圧力値以上で生体の皮膚に接触させるので、炭酸ガスの皮膚からの浸透性を著しく向上させる。さらには、炭酸ガスと水蒸気の混合ガスそのものの圧力を高める必要がないので、大量の炭酸ガスを必要とせず、炭酸ガスを効率的に皮膚から吸収させることが可能となる。また炭酸ガスを、一または複数の薬剤を含有する水蒸気に含ませた状態で供給するため、血行促進や殺菌等、各薬剤特有の効果をさらに付加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(下半身用)の全体模式図である。また、図2は、被覆ウェアの断面と皮膚との接触関係を示す要部拡大図、図3は、炭酸ガス供給装置の模式図である。
【0027】
本実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置は、図1に示すように、炭酸ガスを水蒸気に含ませた状態で供給する炭酸ガス供給装置1と、圧縮空気を供給するコンプレッサ2と、人体(ここでは例として下半身)を覆い、炭酸ガスと水蒸気の混合ガスを充満させてその部位の皮膚にこの混合ガスを接触、吸収させる内側被覆ウェア3Aと圧縮空気を充満させることにより内側被覆ウェア3A内の混合ガスを加圧する外側被覆ウェア3Bとが一体に形成された被覆ウェア3と、炭酸ガス供給装置1と内側被覆ウェア3Aとを接続し内側被覆ウェア3A内に炭酸ガスと水蒸気の混合ガスを供給する接続器としてのホース6と、コンプレッサ2と外側被覆ウェア3Bとを接続し外側被覆ウェア3B内に圧縮空気を供給する接続器としてのホース7と、から構成される。
【0028】
被覆ウェア3は、上述したように人体(ここでは下半身)を覆い包む形状をしており、内側被覆ウェア3Aと外側被覆ウェア3Bの二層が一体に形成されている。この被覆ウェア3には、着脱のための開口部に炭酸ガスと水蒸気の混合ガスの漏出を防ぐ止着部8が設けられている。この止着部8により被覆ウェア3内は密閉され、内側被覆ウェア3A内には炭酸ガス供給装置1からの炭酸ガスと水蒸気の混合ガスが、外側被覆ウェア3B内にはコンプレッサ2からの圧縮空気が、それぞれホース6、7を介して供給される。これにより図2に示すように、内側被覆ウェア3Aと皮膚9の間には炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層4が、また、内側被覆ウェア3Aと外側被覆ウェア3Bの間には圧縮空気からなる加圧層5が形成される。加圧層5は、炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層4を外側から皮膚9に向かって加圧し、皮膚9からの炭酸ガスの吸収を促進させる。
【0029】
被覆ウェア3に設けられた止着部8は、伸縮性があり体にフィットする素材から構成され、例えば面ファスナーにより使用者の体型に合わせた位置で止着して、被覆ウェア3内を密閉する。なお、加圧層5は内側被覆ウェア3A及び外側被覆ウェア3Bが止着部8に縫い込まれているため、予め密閉性を有する構造となっている。ここで、止着部8の止着手段は、面ファスナーのほか、紐やゴム、あるいはそれらの組み合わせを用いても良い。また、空気圧による締め付けで止着できる構造としても良い。
【0030】
被覆ウェア3は非通気性素材(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、織布または不織布の中の何れか一つまたは複数の組み合わせ等)から成る。
【0031】
なお、図1に示すように内側被覆ウェア3Aには、一方端が炭酸ガス供給装置1に接続されたホース6の他端を接続するためのコネクタ6Aが設けられている。また、外側被覆ウェア3Bにも、一方端がコンプレッサ2に接続されたホース7の他端を接続するためのコネクタ7Aが設けられている。なお、ホース6、7の端部にはそれぞれタップが形成されており、捻じ込み式または嵌め込み式でコネクタ6A,7Aに接続が可能である。また、その内部にはガスの逆流を防ぐための逆止弁が設けられている。
【0032】
炭酸ガス供給装置1は、図3に示すように、温水中に炭酸ガスを放出することにより炭酸ガスと水蒸気の混合ガスを得る装置である。この炭酸ガス供給装置1は、温水19を注入する温水注入口12と、温水注入口12から注入された温水19を貯水する貯水タンク13と、炭酸ガスボンベ17を開栓するための針が内部に設けられ、貯水タンク13内の温水19中に炭酸ガス18を放出させる炭酸ガス挿入部14と、温水19に炭酸ガス18が放出されることで発生する炭酸ガスと水蒸気の混合ガス20を取り出すための混合ガス供給口15と、炭酸ガスボンベ17を固定すると共に炭酸ガスボンベ17を炭酸ガス挿入部14に押し当てるためのキャップ16と、から構成される。
【0033】
そこでまず、温水注入口12から貯水タンク13内に摂氏40度から70度程度の温水19を注入する。次いで、炭酸ガス挿入部14に炭酸ガスボンベ17を挿入する。キャップ16を締めることにより炭酸ガスボンベ17は押し下げられ、キャップ16を完全に締めると炭酸ガスボンベ17は炭酸ガス挿入部14内に設けられた針により開栓される。すると、炭酸ガス18が勢いよく温水19中に放出される。これにより炭酸ガスと水蒸気の混合ガス20が発生し、混合ガス供給口15からホース6を介して内側被覆ウェア3A内に供給される。
【0034】
ここで、上記したように、炭酸ガスは皮膚から浸透して血管を拡張して血行を促進させる生理作用を有するものであるが、本炭酸ガス圧浴装置においては、さらに、温水注入口12から貯水タンク13内に注入する温水19中に、メンソール等の清涼作用を生じさせる薬剤、血行をより促進させるビタミンE、美肌効果のあるビタミンC、皮膚表面に付着している細菌等を消毒する薬剤(例えば光触媒とアパタイトの複合体)、又はこれらの薬剤等の薬理効果を強化させることができるシクロデキストリン等を入れて、炭酸ガスによる生理作用との相乗的生理効果を生じさせることも可能である。
【0035】
なお、炭酸ガス供給装置1の構成は上記に限定せず、例えばここではカートリッジ式の小型の炭酸ガスボンベ17を例として用いたが、これに代えて業務用の大型ガスボンベ等にバルブを介して接続するようにしても良い。
【0036】
コンプレッサ2は被覆ウェア3の加圧層5に圧縮空気を供給する。このとき供給される圧縮空気の空気圧は、1.2〜2.5気圧程度とする。なお、コンプレッサ2からの圧縮空気による加圧は常時行われるようにしても良いが、インターバル的に加圧すれば効果をさらに高めることができる。このインターバル加圧は、数秒乃至数十秒間隔の加圧及び減圧の繰り返しとするのが良い。
【0037】
コンプレッサ2として好ましくは圧縮空気ボンベを用いるが、このほか家庭で簡便に用いるのであれば例えば家庭用布団乾燥機等を用いても良い。また、コンプレッサ2はヒータにより温風または冷風を供給できるものであるのが好ましい。
【0038】
なお、上記実施形態では下半身のみを対象としていたが、被覆ウェアの形状を変えることにより様々な部位の炭酸ガス圧浴が可能になる。
【0039】
〔第2の実施形態〕
図4は、本発明の第2の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(上半身用)の模式図である。
【0040】
ここでは、上半身の炭酸ガス圧浴を目的とする炭酸ガス圧浴装置について説明する。なお、図4において図1と同一の構成を有する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
図4において被覆ウェア30は、内側被覆ウェア30Aと外側被覆ウェア30Bから構成される。この内側被覆ウェア30Aと外側被覆ウェア30Bは一体に形成されており、内側被覆ウェア30A内には炭酸ガス供給装置1から炭酸ガスと水蒸気の混合ガスが供給され、外側被覆ウェア30B内にはコンプレッサ2から圧縮空気が供給される。これにより内側被覆ウェア30Aと皮膚の間には炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層31が、また内側被覆ウェア30Aと外側被覆ウェア30Bの間には圧縮空気からなる加圧層32が形成される。加圧層32は、炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層31を外側から皮膚に向かって加圧し、皮膚からの炭酸ガスの吸収を促進させる。
【0042】
図4に示すように、本実施形態では被覆ウェア30が上半身全体を覆い包む形状をしている。腰部の開口には止着部33が設けられ、使用者の体型に合わせた位置で体にフィットするように止着してガスの漏出を防ぐ。また、首部の開口にも着脱を容易にすると共にガスの漏出を防ぐ止着部34を設ける。これらの止着部33,34はそれぞれ、面ファスナーのほか、紐、ゴム、あるいはそれらの組み合わせにより構成するのが好ましい。また、空気圧による締め付けで止着できる構造としても良い。
【0043】
〔第3の実施形態〕
図5は、本発明の第3の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(片下肢用)の模式図である。
【0044】
ここでは、片下肢の炭酸ガス圧浴を目的とする炭酸ガス圧浴装置について説明する。なお、図5において図1と同一の構成を有する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
図5において被覆ウェア40は、内側被覆ウェア40Aと外側被覆ウェア40Bから構成される。この内側被覆ウェア40Aと外側被覆ウェア40Bは一体に形成されており、内側被覆ウェア40A内には炭酸ガス供給装置1から炭酸ガスと水蒸気の混合ガスが供給され、次いで外側被覆ウェア40B内にはコンプレッサ2から圧縮空気が供給される。これにより内側被覆ウェア40Aと皮膚の間には炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層41が、また内側被覆ウェア40Aと外側被覆ウェア40Bの間には圧縮空気からなる加圧層42が形成される。加圧層42は、炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層41を外側から皮膚に向かって加圧し、皮膚からの炭酸ガスの吸収を促進させる。
【0046】
図5に示すように、本実施形態では被覆ウェア40が片下肢を覆い包む形状をしている。太腿部の開口には止着部43が設けられ、使用者の体型に合わせた位置で体にフィットするように止着してガスの漏出を防ぐ。この止着部43は面ファスナーのほか、紐、ゴム、あるいはそれらの組み合わせにより構成するのが好ましい。また、空気圧による締め付けで止着できる構造としても良い。
【0047】
〔第4の実施形態〕
図6は、本発明の第4の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(片上肢用)の模式図である。
【0048】
ここでは、片上肢の炭酸ガス圧浴を目的とする炭酸ガス圧浴装置について説明する。なお、図6において図1と同一の構成を有する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
図6において被覆ウェア50は、内側被覆ウェア50Aと外側被覆ウェア50Bから構成される。この内側被覆ウェア50Aと外側被覆ウェア50Bは一体に形成されており、内側被覆ウェア50A内には炭酸ガス供給装置1から炭酸ガスと水蒸気の混合ガスが供給され、次いで外側被覆ウェア50B内にはコンプレッサ2から圧縮空気が供給される。これにより内側被覆ウェア50Aと皮膚の間には炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層51が、また内側被覆ウェア50Aと外側被覆ウェア50Bの間には圧縮空気からなる加圧層52が形成される。加圧層52は、炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層51を外側から皮膚に向かって加圧し、皮膚からの炭酸ガスの吸収を促進させる。
【0050】
図6に示すように、本実施形態では被覆ウェア50が片上肢を覆い包む形状をしている。上腕部の開口には止着部53が設けられ、使用者の体型に合わせた位置で体にフィットするように止着してガスの漏出を防ぐ。この止着部53は面ファスナーのほか、紐、ゴム、あるいはそれらの組み合わせにより構成するのが好ましい。また、空気圧による締め付けで止着できる構造としても良い。
【0051】
なお、図6(a)においては圧縮空気供給手段として他の実施形態と同様にコンプレッサ2を配置したが、図6(b)ではこれに代えて手動の空気圧器として、袋状の送気球54を配置している。この送気球54、例えば手動式血圧計の加圧用送気球と同様の構成とする。ゴム等からなり、手動で加圧層52内に送気して簡単に加圧することができる。
【0052】
〔第5の実施形態〕
図7は、本発明の第5の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置の模式図である。
【0053】
この実施形態では、被覆ウェアの加圧層の外側に、圧力を調整するためのフレームを設けている。なお、図7において図1と同一の構成を有する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
図7において被覆ウェア60は、内側被覆ウェア60Aと外側被覆ウェア60Bから構成される。この内側被覆ウェア60Aと外側被覆ウェア60Bは一体に形成されている。そして外側被覆ウェア60Bの外側表面には、圧力調整のためのフレーム64が設けられている。内側被覆ウェア60A内には炭酸ガス供給装置1から炭酸ガスと水蒸気の混合ガスが供給され、次いで外側被覆ウェア60B内にはコンプレッサ2から圧縮空気が供給される。これにより内側被覆ウェア60Aと皮膚の間には炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層61が、また内側被覆ウェア60Aと外側被覆ウェア60Bの間には圧縮空気からなる加圧層62が形成される。加圧層62は、炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層61を外側から皮膚に向かって加圧し、皮膚からの炭酸ガスの吸収を促進させる。
【0055】
図7に示すように、被覆ウェア60の開口には止着部63が設けられ、使用者の体型に合わせた位置で体にフィットするように止着してガスの漏出を防ぐ。ここで、フレーム64は、例えばナイロン樹脂等からなり、外側被覆ウェア60Bの外側に環状もしくはスパイラル状に巻きつけられて固着される構成とする。また、図7に示すように片下肢用ならば、太腿から足首へ行くほどフレーム64の環あるいはスパイラルの半径が小さくなる等、フレーム64は体の概略形状に合わせて形成されている。それにより、加圧層62の圧力が外側に向かうのを防ぎ、また、体の概略形状に合わせて均一に加圧することができるため、皮膚への炭酸ガスの吸収効率をさらに向上させることができる。
【0056】
なお、ここまでの実施形態は炭酸ガス圧浴を行う対象を人体として説明してきたが、本発明はこれに限らず動物をその対象としても良い。以下、動物を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0057】
〔第6の実施形態〕
図8は、本発明の第6の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置の模式図である。ここでは、炭酸ガス圧浴の対象となる動物として馬を例に挙げて説明する。なお、図8において図1と同一の構成を有する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0058】
図8において被覆ウェア70は、内側被覆ウェア70Aと外側被覆ウェア70Bから構成される。この内側被覆ウェア70Aと外側被覆ウェア70Bは一体に形成されており、内側被覆ウェア70A内には炭酸ガス供給装置1から炭酸ガスと水蒸気の混合ガスが供給され、次いで外側被覆ウェア70B内にはコンプレッサ2から圧縮空気が供給される。これにより内側被覆ウェア70Aと馬の皮膚の間には炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層31が、また内側被覆ウェア70Aと外側被覆ウェア70Bの間には圧縮空気からなる加圧層72が形成される。加圧層72は、炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層71を外側から皮膚に向かって加圧し、馬の皮膚からの炭酸ガスの吸収を促進させる。
【0059】
図8に示すように、本実施形態では被覆ウェア70が馬の後足全体を覆い包む形状をしている。股下部の開口には止着部73が設けられ、体型に合わせた位置で体にフィットするように止着してガスの漏出を防ぐ。これらの止着部73はそれぞれ、面ファスナーのほか、紐、ゴム、あるいはそれらの組み合わせにより構成するのが好ましい。また、空気圧による締め付けで止着できる構造としても良い。
【0060】
このように、本発明の炭酸ガス圧浴装置は人体だけでなく動物(例えば競走馬やペット等)にも適用可能である。
【0061】
以上のように、本発明に係る炭酸ガス圧浴装置においては、炭酸ガス供給手段から供給される炭酸ガスと水蒸気の混合ガスを閉じ込める密閉層を有しこの炭酸ガスと水蒸気の混合ガスを生体の皮膚に直接接触させると共に、圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気を閉じ込める密閉層を有する2層構造の被覆ウェアによって、炭酸ガスを圧縮空気により所定の圧力値以上で生体の皮膚に接触させるので、炭酸ガスの皮膚からの浸透性を著しく向上させる。さらには、炭酸ガスと水蒸気の混合ガスそのものの圧力を高める必要がないので、大量の炭酸ガスを必要とせず、炭酸ガスを効率的に皮膚から吸収させることが可能となる。また炭酸ガスを、一または複数の薬剤を含有する水蒸気に含ませた状態で供給するため、血行促進や殺菌等、各薬剤特有の効果をさらに付加することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、炭酸ガスを生体の皮膚に直接に接触させることにより血管を拡張させ血液循環を改善させるための炭酸ガス圧浴装置に関するものであり、特に、炭酸ガスを圧縮空気により所定の圧力値以上で生体の皮膚に接触させることにより皮膚からの炭酸ガスの吸収効率を向上させた炭酸ガス圧浴装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(下半身用)の全体模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置の被覆ウェアの断面と皮膚との接触関係を示す要部拡大図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置の炭酸ガス供給装置の模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(上半身用)の模式図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(片下肢用)の模式図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(片上肢用)の模式図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(フレーム付)の模式図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に係る炭酸ガス圧浴装置(馬用)の模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 炭酸ガス供給装置
2 コンプレッサ
3、30、40、50、60、70 被覆ウェア
3A、30A、40A、50A、60A、70A 内側被覆ウェア
3B、30B、40B、50B、60B、70B 外側被覆ウェア
4、31、41、51、61、71 炭酸ガスと水蒸気の混合ガス層
5、32、42、52、62、72 加圧層
6、7 ホース
6A、7A コネクタ
8、33、34、43、53、63、73 止着部
9 皮膚
12 温水注入口
13 貯水タンク
14 炭酸ガス挿入部
15 混合ガス供給口
16 キャップ
17 炭酸ガスボンベ
18 炭酸ガス
19 温水
20 炭酸ガスと水蒸気の混合ガス
54 送気球
64 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定値以上濃度の炭酸ガスを人体の皮膚に接触させることにより、血管を拡張させ血液循環を改善させるための装置であって、
炭酸ガスを、一または複数の薬剤を含有する水蒸気に含ませた状態で供給する炭酸ガス供給手段と、
圧縮空気供給手段と、
前記炭酸ガス供給手段と前記圧縮空気供給手段とに接続器を介して接続され、前記炭酸ガス供給手段から供給される前記炭酸ガスと一または複数の薬剤を含有する水蒸気の混合ガスを人体の皮膚に直接接触させると共に、前記圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気を封止する密閉層を形成する2層構造の被覆ウェアと、
から構成され、
前記炭酸ガスを前記圧縮空気により所定の圧力値以上で人体の皮膚に接触させることを特徴とする炭酸ガス圧浴装置。
【請求項2】
所定値以上濃度の炭酸ガスを動物の皮膚に接触させることにより、血管を拡張させ血液循環を改善させるための装置であって、
炭酸ガスを、一または複数の薬剤を含有する水蒸気に含ませた状態で供給する炭酸ガス供給手段と、
圧縮空気供給手段と、
前記炭酸ガス供給手段と前記圧縮空気供給手段とに接続器を介して接続され、前記炭酸ガス供給手段から供給される前記炭酸ガスと一または複数の薬剤を含有する水蒸気の混合ガスを動物の皮膚に直接接触させると共に、前記圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気を封止する密閉層を形成する2層構造の被覆ウェアと、
から構成され、
前記炭酸ガスを前記圧縮空気により所定の圧力値以上で動物の皮膚に接触させることを特徴とする炭酸ガス圧浴装置。
【請求項3】
前記圧縮空気供給手段が、前記圧縮空気により常時加圧を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項4】
前記圧縮空気供給手段が、前記圧縮空気をインターバル加圧することを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項5】
前記炭酸ガス供給装置は、炭酸ガスを封入した炭酸ガスボンベが挿入される炭酸ガス挿入部と、前記一または複数の薬剤を含有する水を受け入れる貯水部と、を備え、炭酸ガスボンベ内の炭酸ガスを微粒サイズの気泡状にして前記貯水部内に放出させることにより、前記炭酸ガスと一または複数の薬剤を含有する水蒸気の混合ガスを得ることを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項6】
前記一または複数の薬剤が、ビタミンE、ビタミンC、光触媒とアパタイト、シクロデキストリンの複合体のうちの何れか一つまたは複数であることを特徴とする請求項5に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項7】
前記炭酸ガス供給装置内における水の温度は、摂氏40乃至70度であることを特徴とする請求項5に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項8】
前記圧縮空気供給手段は、ヒータ手段を備え、ヒータ手段のオン/オフにより温風空気または冷風空気を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項9】
前記圧縮空気供給手段から供給される空気圧は、1.2乃至2.5気圧であることを特徴とする請求項1、2または8の何れか一項に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項10】
前記圧縮空気供給手段は、圧縮空気ボンベを備えることを特徴とする請求項9に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項11】
前記圧縮空気供給手段は、電気駆動されるコンプレッサを備えることを特徴とする請求項9に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項12】
前記圧縮空気供給手段は、手動の袋状の空気圧器を備えることを特徴とする請求項9に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項13】
前記被覆ウェアは、人体の腰部及び両下肢を包む下半身用の被覆ウェアであることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項14】
前記被覆ウェアは、人体の腹部及び両上肢を含む上半身用の被覆ウェアであることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項15】
前記被覆ウェアは、人体の片足を包む片下肢用の被覆ウェアであることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項16】
前記被覆ウェアは、人体の片手を包む片上肢用の被覆ウェアであることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項17】
前記被覆ウェアは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、またはポリテトラフルオロエチレン、織布または不織布の中の何れか一つまたは複数の組み合わせにより形成されていることを特徴とする請求項2または13乃至16の何れか一項に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項18】
前記被覆ウェアは、その開口部に紐または面ファスナーの締め付け手段が取り付けられており、これにより、前記混合ガス及び圧縮空気の大気中への放散を防止するようにした請求項17に記載の炭酸ガス圧浴装置。
【請求項19】
前記被覆ウェアに設けられた、前記炭酸ガス供給手段からの混合ガスと前記圧縮空気供給手段からの圧縮空気を受け入れるための各接続器は、タップが形成された捻じ込み式の接続器または嵌め込み式の接続器であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸ガス圧浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−183626(P2009−183626A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29281(P2008−29281)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(505425878)
【出願人】(592248835)日本エー・シー・ピー株式会社 (56)
【Fターム(参考)】