説明

点検補修支援装置およびその方法

【課題】点検対象部品の点検補修に関する情報をクライアント側に速やかに提示することのできる点検補修支援装置およびその方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1記憶部20には、点検対象部品における損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報ならびに識別情報が関連付けられた点検補修データが格納されている。入力部36から識別情報が入力された場合に、処理部28は、該識別情報に対応付けられた点検補修データを第1記憶部20から取得するとともに、取得した点検補修データに含まれる各損傷箇所の補修措置方針を取得する。表示情報作成部30は、処理部28によって取得された点検補修データおよび補修措置方針を用いて、各損傷箇所とその補修措置方針とを関連付けて表示する第1表示情報を作成し、通信部34が第1表示情報をクライアント端末に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検補修支援装置および点検補修支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの高温部品(例えば、燃焼器、動翼、静翼など)には、き裂、コーティング剥離などの損傷が発生するため、定期的に点検および補修が行われている。点検補修においては、検査対象である高温部品を客先から点検補修工場に一旦引き取り、点検補修工場において傷や欠陥などの点検が行われる。
例えば、特許文献1には、ガスタービンの高温部品の保守管理に関し、管理対象部品に生じた亀裂などの損傷箇所をデータ化して管理する装置が開示されている。具体的には、特許文献1には、管理対象部品の三次元モデルデータが表示された表示画面上において、損傷の位置や範囲をポインティングデバイスにより入力し、入力した損傷の位置及び範囲を管理対象部品の損傷データとして三次元モデルと関連づけて保存することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−108849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した損傷部位の補修作業などは、点検補修工場側にて一方的な判断で行われるものではなく、ガスタービンの所有者であるユーザ側へ損傷部位の通知を行い、補修作業着手の承認を得た上で、実施する必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、点検対象部品の点検補修に関する情報をクライアント側に速やかに提示することのできる点検補修支援装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、クライアント端末と通信媒体を介して接続可能な点検補修支援装置であって、入力手段と、点検対象部品における損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報ならびに識別情報が関連付けられた点検補修データが格納されている第1記憶手段と、前記入力手段から識別情報が入力された場合に、該識別情報に対応付けられた前記点検補修データを前記第1記憶手段から取得するとともに、取得した前記点検補修データに含まれる各前記損傷箇所の補修措置方針を取得する処理手段と、前記処理手段によって取得された前記点検補修データおよび前記補修措置方針を用いて、各前記損傷箇所とその補修措置方針とを関連付けて表示する第1表示情報を作成する表示情報作成手段と、前記第1表示情報を前記クライアント端末に送信する送信手段とを具備する点検補修支援装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、第1記憶手段には、点検対象部品における損傷箇所の位置情報、損傷に関する情報、および識別情報が関連付けられた点検補修データが格納されている。入力手段から識別情報が入力されると、処理手段により、該識別情報に対応付けられた点検補修データが第1記憶手段から取得されるとともに、該点検補修データに含まれる損傷箇所の補修措置方針が取得される。処理手段によって取得された点検補修データおよび補修措置方針を用いて、各損傷箇所とその補修措置方針とを関連付けて表示する第1表示情報が表示情報作成手段により作成され、この第1表示情報が送信手段によりクライアント端末に送信される。
【0008】
上記点検補修支援装置は、前記点検対象部品のモデルが格納されている第2記憶手段を有し、前記表示情報作成手段は、前記第2記憶手段に格納されている前記点検対象部品のモデルを読み出し、読み出した前記点検対象部品のモデル上に前記損傷箇所を表示させた損傷視覚化モデルを作成し、前記第1表示情報には該損傷視覚化モデルが含まれることとしてもよい。
【0009】
第2記憶手段には、点検対象部品のモデルが格納されている。第2記憶手段に格納されている点検対象部品のモデルが表示情報作成手段により読み出され、読み出された点検対象部品のモデル上に損傷箇所を表示させた損傷視覚化モデルが作成される。第1表示情報に、損傷視覚化モデルを含めることで、損傷箇所を分かりやすくクライアントに提示することが可能となる。これにより、補修作業に必要な情報を分かりやすくクライアント側に通知することができる。
【0010】
上記点検補修支援装置は、前記損傷箇所の位置情報と損傷に関する情報と補修措置方針とが関連付けられた補修基準データが格納されている第3記憶手段を有し、前記処理手段は、前記第3記憶手段から前記損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報に対応する補修措置方針を取得することとしてもよい。
【0011】
第3記憶手段には、損傷箇所の位置情報と損傷に関する情報と補修措置方針とが関連付けられた補修基準データが格納されている。入力手段から識別情報が入力された場合において、処理手段は、該識別情報に対応付けられた点検補修データを第1記憶手段から取得し、該点検補修データに含まれる損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報に対応する補修措置方針を第3記憶手段から取得する。
【0012】
上記点検補修支援装置は、前記損傷箇所の位置情報と損傷に関する情報とを関連付けて表示する表示手段を備え、前記処理手段は、前記入力手段から前記表示手段に表示された該損傷箇所に対する補修措置方針が入力された場合に、前記入力手段から入力された補修措置方針を取得することとしてもよい。
【0013】
このような構成によれば、入力手段から識別情報が入力されると、処理手段により、該識別情報に対応付けられた点検補修データが第1記憶手段から取得され、この点検補修データに登録されている損傷箇所の位置情報と損傷に関する情報とが関連付けられて表示手段に表示される。そして、この表示手段を確認したユーザにより、損傷箇所に対する補修措置方針が入力手段から入力される。処理手段は、入力手段から入力された補修措置方針を取得する。
【0014】
上記点検補修支援装置は、前記点検補修データに関連付けて過去に実施された補修措置の実績データが格納されている第4記憶手段と、前記補修措置の実績データに基づいて、前記第3記憶手段に格納されている補修基準データを修正する修正手段とを具備することとしてもよい。
【0015】
このような構成によれば、第4記憶手段には点検補修データに関連付けられた補修措置の実績データが格納されている。第3記憶手段に格納されている補修基準データは、修正手段によって、第4記憶手段に格納されている補修措置の実績データに基づいて補正されるので、第3記憶手段に格納されている補修基準データに、補修措置の実績データを反映させることができ、補修基準データをより適切なデータに更新することが可能となる。
【0016】
上記点検補修支援装置は、前記第4記憶手段に格納されている補修措置の実績データを表示する表示手段を備えることとしてもよい。
【0017】
このような構成によれば、第4記憶手段に格納されている補修措置の実績データが表示手段に表示されるので、ユーザは補修措置に関する過去の履歴を閲覧することが可能となる。
【0018】
上記点検補修支援装置は、前記修正手段による修正前後の補修基準データを関連付けて表示する表示手段を備え、前記入力手段から前記表示手段に表示された修正後の補修基準データの修正情報が入力された場合に、入力された修正情報に基づいて前記補修基準データを修正することとしてもよい。
【0019】
このような構成によれば、修正手段によって第3記憶手段に格納されている補修基準データが修正される場合において、表示手段には修正前後の補修基準データが関連付けられて表示される。この補修基準データを確認したユーザにより、修正後の基準データを修正するための修正情報が入力されると、入力された修正情報に基づいて補修基準データが修正され、ユーザによって修正された補修基準データが第3記憶手段に格納されることとなる。
【0020】
上記点検補修支援装置は、前記第1表示情報を受信した前記クライアント端末から補修の承認情報を受信する受信手段と、前記補修の承認情報を受信した場合に、その旨を表示する表示手段を備えることとしてもよい。
【0021】
このような構成によれば、第1表示情報は通信手段からクライアント端末に送信され、この第1表示情報を確認したクライアントから補修の承認情報を受信手段が受信した場合に、表示手段にはその旨が表示される。これにより、クライアントにより補修が承認されたことを速やかに確認することが可能となる。このように、損傷箇所における補修の承認処理が速やかに進められることにより、点検補修側がクライアントから点検対象部品を受け取ってから返却するまでのリードタイムを短縮させることができる。
【0022】
本発明は、点検対象部品における損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報が入力された場合に、前記損傷箇所の位置情報および前記損傷に関する情報を表示する過程と、表示された各前記損傷箇所に対応する補修措置方針を取得する過程と、前記損傷箇所と該損傷箇所に対応する補修措置方針とを関連付けて表示する過程と、表示した情報に対して送信指示が入力された場合に、前記損傷箇所と前記補修措置方針とを対応付けた情報を送信する過程とを含む点検補修支援方法を提供する。
【0023】
本発明によれば、点検対象部品における損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報が入力された場合に、入力された損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報が表示される。表示された各損傷箇所に対する補修措置方針が取得されると、損傷箇所と損傷箇所に対応する補修措置方針とが関連付けられて表示され、更に、表示された情報に対して送信指示が入力されると、損傷箇所と補修措置方針とが対応付けられた情報が送信される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、点検対象部品の点検補修に関する情報をクライアント側に速やかに提示することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る点検補修支援装置のネットワーク構成を示した図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る点検補修支援装置のハードウェア構成を示した図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る点検補修支援装置が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図4】点検補修データの一例を示した図である。
【図5】補修基準データの一例を示した図である。
【図6】補修基準データについて説明するために使用される図である。
【図7】第1表示情報の一例を示した図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る点検補修支援装置が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る点検補修支援装置をガスタービンの動翼の点検補修に適用した場合の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明の点検補修支援装置の適用分野は、ガスタービンの分野に限られることなく、継続的な点検補修が必要とされる部品の点検補修に広く適用されるものである。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る点検補修支援装置のネットワーク構成を示した図、図2は本実施形態に係る点検補修支援装置のハードウェア構成を示した図である。
図1に示すように、点検補修支援装置1は、ガスタービンを所有している客先に設けられたクライアント端末2とインターネットなどの通信媒体を介して接続されている。図1では、説明の便宜上、クライアント端末2を1台としたが、クライアント端末2の台数は限定されない。また、以下の説明に当たり、点検補修支援装置1の操作者を「ユーザ」、クライアント端末2の操作者を「クライアント」という。
【0028】
点検補修支援装置1およびクライアント端末2は、図2に示すように、例えば、計算機システムであり、CPU(中央演算処理装置)11、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置12、補助記憶装置13、キーボード、マウス、ポインティングデバイスなどの入力装置14、及びディスプレイやプリンタなどの出力装置15、外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置16などを備えている。
補助記憶装置13は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。この補助記憶装置13には、各種プログラムが格納されており、CPU11が補助記憶装置13から主記憶装置12にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0029】
図3は、点検補修支援装置1が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図3に示されるように、点検補修支援装置1は、第1記憶部(第1記憶手段)20、第2記憶部(第2記憶手段)22、第3記憶部(第3記憶手段)24、第4記憶部(第4記憶手段)26、処理部(処理手段)28、表示情報作成部(表示情報作成手段)30、表示部32、通信部(送信手段、受信手段)34、入力部(入力手段)36を主な構成として備えている。
【0030】
第1記憶部20には、点検対象部品である動翼における損傷箇所の位置情報、損傷に関する情報、および点検日時が関連付けられた点検補修データが格納されている。各点検補修データには、個別の識別情報が付与されており、その識別情報を指定することで該当する点検補修データが読み出される構成とされている。
上記損傷に関する情報とは、例えば、損傷の種類、長さ、幅、深さ、形状、点検時において点検員が損傷箇所の詳細や補足説明について入力した音声データ、画像データなどが挙げられる。損傷の種類としては、例えば、き裂、欠損、はがれ、へこみなどが挙げられる。
図4は点検補修データの一例を示した図である。図4に示した点検補修データは、識別情報「00001239430」が付与されており、2011年4月1日に実施された点検において検出された損傷箇所の情報が記載されている。
【0031】
点検補修データは、例えば、点検対象部品の点検者が作成した紙ベースの点検報告書に記載された情報を入力部36から入力することで作成される。また、損傷箇所の位置情報については、例えば、後述する第2記憶部22に格納されている点検対象部品のモデルを表示部32に表示させ、表示されたモデルにおいて、損傷が確認された位置をマウスなどの入力部36を操作して指定することで入力される。例えば、損傷位置の入力に関し、上述した特許文献1(特開2009−108849号公報)などに記載されている公知の技術を用いることができる。点検補修データの入力方法については、特に限定されない。
【0032】
第2記憶部22には、点検対象部品である動翼のモデルが格納されている。このモデルは、2次元、3次元を問わず、また、写真、CADデータなどであってもよい。第2記憶部22に格納されるモデルは、点検対象部品における損傷箇所の位置をユーザに分かりやすく伝えるために用いられる。このようにすることで、損傷箇所をユーザに容易に理解させることが可能となる。
【0033】
第3記憶部24には、損傷箇所の位置情報と損傷に関する情報と補修措置方針とが関連付けられた補修基準データが格納されている。損傷に関する情報としては、例えば、損傷の種類、損傷の大きさ(長さ、幅、深さ)が挙げられる。
図5は、補修基準データの一例を示した図である。図5には、図6に示すように、背側前縁部、背側翼面中央部、背側後縁部などの部位をそれぞれプラットホームからの距離に応じて複数の領域に分け、領域毎に、損傷の種類、損傷の大きさ(長さ、幅、深さ)に応じた補修措置方針がそれぞれ設定されている。図5では、チップ、背側前縁部、背側翼面中央部、背側後縁部、腹側前縁部、腹側翼面中央部、腹側後縁部からなる各部位をAからGの7つの領域に分け、領域毎に補修措置方針が登録されている。このようなデータが、損傷種類、損傷の大きさに応じて複数用意され、第3記憶部24に格納されている。
【0034】
また、補修基準データは、クライアントの運用条件や環境要因を考慮して作成されていることが好ましい。運用条件の一例としては、ベースロードやDSS(Daily Start and Stop)などの負荷パターン、ガス、油などの燃料条件、長期運用計画などが挙げられる。運用条件、環境要因などにより、次の点検までに点検対象部品に加わるストレスが異なってくるので、このような運用条件や環境要因を考慮した補修基準データを作成することで、クライアント毎により適切な補修措置方針を提示することが可能となる。
【0035】
第4記憶部26は、第1記憶部20に格納されている点検補修データの各損傷箇所に対する補修措置方針が、点検補修データの各損傷箇所に対応付けられて格納される。詳細は後述する。
【0036】
処理部28は、例えば、ユーザが入力部36を操作することにより、点検対象部品の識別情報が指定された場合に、該当する点検補修データを第1記憶部20から読み出し、更に、読み出した点検補修データに記載されている各損傷箇所に対する補修措置方針を第3記憶部24から取得する。すなわち、点検補修データには、損傷箇所毎にその位置情報、損傷の大きさ、形状、損傷種類などが登録されているので、これらの情報に対応する補修措置方針を第3記憶部24に格納されている補修基準データから取得する。処理部28は、第1記憶部20から読み出した点検補修データと該点検補修データに記載されている各損傷箇所における補修措置方針を対応付けて表示情報作成部30に出力するとともに、点検補修データの各損傷箇所に関連付けられた補修措置方針を第4記憶部26に格納する。これにより、以降の処理では、点検補修データが指定されれば、その点検補修データの各損傷箇所に対応する補修措置方針を第4記憶部26から取得することが可能となる。
【0037】
表示情報作成部30は、処理部28から入力された点検補修データと各損傷箇所の補修措置方針とに基づいて第1表示情報を作成する。具体的には、表示情報作成部30は、入力された点検補修データに対応する点検対象部品のモデルを第2記憶部22から読み出し、読み出した点検対象部品のモデル上に、点検補修データに記述されている各損傷箇所を表示した損傷視覚化モデルを作成する。更に、各損傷箇所と補修措置方針を関連付けて表示する。図7は、第1表示情報の一例を示した図である。図7に示すように、点検対象部品のモデル上に損傷箇所が表示され、その補修措置方針が損傷箇所と関連付けられて表示されている。
【0038】
これにより、点検対象部品のどの位置に損傷があり、その損傷の補修をどのように行うかをクライアントに分かりやすく伝えることができる。表示情報作成部30は、第1表示情報を表示部32に表示させる。なお、第1表示情報として表示させる情報は、点検補修データに登録されている情報の中から任意に選択することが可能である。例えば、図7に示されている例に加えて、各損傷箇所の大きさ、損傷種類に関する情報を追加してもよく、更に、点検者による音声データが再生されたり、画像データが表示されたりするような構成としてもよい。損傷箇所の大きさや損傷種類に関する情報などの詳細情報を付加することで、損傷箇所についての詳細な情報をクライアントに通知することができ、損傷箇所についての理解を助けることが可能となる。
【0039】
表示部32は、表示情報作成部30によって作成された第1表示情報などを表示する。
通信部34は、表示情報作成部30によって作成された第1表示情報などをクライアント端末に送信する。
入力部36は、点検補修支援装置1のユーザが情報を入力するのに使用される。
【0040】
次に、上述した点検補修支援装置1の動作について説明する。
例えば、ユーザは、点検対象部品の損傷箇所の補修の実施に際して、補修に対するクライアントの承認を得たい場合、対象となる点検補修データの識別情報を入力部36から入力し、更に表示作成指示を行う。
処理部28は、入力部36から入力された点検補修データの識別情報および表示作成指示を受け付けると、入力された識別情報の点検補修データを第1記憶部20から取得し、更に、取得した点検補修データの各損傷箇所に対応する補修措置方針を第3記憶部24から抽出する。処理部28は、取得したこれらの情報を表示情報作成部30に出力するとともに、点検補修データの各損傷箇所と補修措置方針とを関連付けて第4記憶部26に格納する。
【0041】
具体的には、点検補修データには、損傷箇所の位置情報、損傷種類、損傷の大きさが含まれているので、処理部28は、これらの情報に対応する補修措置方針を第3記憶部24に格納されている補修基準データから読み出し、読み出した補修措置方針と各損傷箇所とを対応付け、これらの情報を表示情報作成部30に出力するとともに、第4記憶部26に格納する。
【0042】
表示情報作成部30は、処理部28から入力された情報および第2記憶部22に格納されている当該点検対象部品のモデルを用いて第1表示情報を作成し、作成した第1表示情報を表示部32に表示する。
これにより、表示部32には、図7に示したような表示画面が表示される。この表示画面を確認したユーザは、表示事項に修正などがあった場合には、修正を指示する情報を入力部36から入力する。例えば、補修措置方針などが相違していた場合には、これを修正する情報を入力部36から入力する。また、このとき補修が必要でない損傷箇所については、補修不要である旨の情報を入力部36から入力し、補修不要の旨を表示させるようにしてもよい。
入力部36から入力された情報は処理部28に受け付けられ、この修正情報に基づいて該当するデータが更新される。
【0043】
ユーザは表示部32に表示されている第1表示情報を確認し、問題がなければ、送信操作を行う。これにより、送信指示が入力部36から入力され、この入力指示を受けて、通信部34が当該第1表示情報をクライアント端末2に送信する。
【0044】
この結果、クライアント端末2が備えるディスプレイなどの出力装置15(図2参照)に第1表示情報が表示される。これにより、点検補修結果がクライアント側へ速やかに通知される。クライアントは、表示された各損傷箇所の補修措置方針に問題がなければ、承認処理を入力装置14(図2参照)から行う。これにより、承認情報がクライアント端末2から点検補修支援装置1に送信される。承認情報は点検補修支援装置1の通信部34により受信され、表示部32に表示される。これにより、ユーザに対して、クライアントに問い合わせた損傷箇所における補修実施の承認が得られたことが通知される。
ここで、本実施形態では、ユーザが入力部36より第1表示情報の送信指示を行い、クライアントが承認処理を行うとしたが、これに加えて、クライアントがクライアント端末2から自身の点検対象部品に関する点検補修結果などの表示要求を点検補修支援装置1に送信し、これにより、点検補修支援装置1が対応する点検補修結果や承認処理に関する情報をクライアント端末2に送信することで、承認処理を行うこととしてもよい。
【0045】
本実施形態に係る点検補修支援装置1によれば以下の効果が得られる。
点検対象部品の損傷箇所と損傷箇所に対する補修措置方針とを関連付けて表示した第1表示情報をクライアント端末2に送信するので、クライアントに対して損傷箇所およびその補修措置方針を速やかに通知することが可能となる。これにより、クライアントから補修実施の承認を早期に取得することが可能となり、点検対象部品をクライアントから受け取ってからクライアントに返却するまでのリードタイムを短縮させることが可能となる。
点検対象部品のモデル上に損傷箇所を表示するので、クライアントに損傷箇所の情報を分かりやすく提示することが可能となる。
損傷箇所の位置情報と損傷に関する情報と補修措置方針とが関連付けられた補修基準データが格納されている第3記憶部24を有し、点検補修データの損傷箇所に対応する補修措置方針を第3記憶部24の補修基準データから取得するので、補修措置方針を容易にかつ速やかに取得することが可能となる。これにより、各損傷箇所に対する補修措置方針をユーザが入力する手間を省くことができる。
【0046】
なお、本実施形態では、第3記憶部24に補修基準データを格納しておき、この補修基準データから各損傷箇所に対応する補修措置方針を取得することとしたが、例えば、第3記憶部24を設けずに、ユーザが入力部36から補修措置方針を入力することとしてもよい。また、補修措置方針の一覧が表示されるような構成としておき、ユーザが表示された一覧の中から適切な補修措置方針を選択することにより、各損傷箇所に対応する補修措置方針を入力することとしてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、点検補修データに登録されている損傷箇所のそれぞれについて補修措置方針を取得することとしたが、例えば、点検補修データに登録されている損傷箇所において補修が必要な損傷箇所と補修が不要な損傷箇所とを判別し、補修が必要な損傷箇所についてのみ補修措置方針を取得することとしてもよい。この場合、補修が必要か否かは例えばユーザが決定することとしてもよいし、補修が必要な条件を予め登録しておき、この条件を満たす損傷箇所を補修が必要であると判定することとしてもよい。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る点検補修支援装置について説明する。
本実施形態に係る点検補修支援装置1’は、第1実施形態に係る点検補修支援装置1とほぼ構成を同じくするが、過去に実施された補修措置を補修実績データとして保存しておき、この補修実績データに基づいて第3記憶部24に格納されている補修基準データを修正する構成を更に備える点で第1実施形態に係る点検補修支援装置1と異なる。
以下、本実施形態に係る点検補修支援装置1’について、第1実施形態に係る点検補修支援装置1と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0049】
図8は、本実施形態に係る点検補修支援装置1’の機能ブロック図を示した図である。図8に示すように、点検補修支援装置1’は、修正部38を備えている。また、第4記憶部26’には、各損傷箇所および補修措置方針に対応付けて補修措置の実績データが格納されている。
【0050】
修正部38は、例えば、所定のタイミングで、第4記憶部26’から互いに関連付けられている補修措置の実績データと補修措置方針とを照合し、補修措置方針と補修措置の実績データとが一致しているか否かを判定し、一致しないデータが存在した場合には、この判定結果に基づいて第3記憶部24に格納されている補修基準データを修正する。
【0051】
このように、補修措置の実績データに基づいて補修基準データを修正することで、補修基準データに補修実績データを反映させることができ、処理部28によって自動的に取得される補修措置方針をより適切な措置にすることが可能となる。
【0052】
なお、上記のように、修正部38が自動的に補修基準データを更新する場合に代えて、例えば、修正部38が修正を行う前に、これから修正を行う補修措置方針と今までの修正措置方針と損傷箇所の情報とを関連付けた情報を表示部32に表示させ、修正の可否をユーザに問い合わせる構成としてもよい。この場合、ユーザから修正の許可が入力されなければ、修正を行わないこととする。また、これに代えて、補修措置方針と補修措置実績とが一致しないケースの一覧を表示部32に表示させ、この表示情報に基づいて、ユーザが補修基準データの修正箇所と修正事項とを指示する構成としてもよい。
【0053】
また、補修基準データの修正に関わらず、例えば、ユーザにより補修措置の実績データの表示指示が入力部36から入力された場合に、第4記憶部26から補修措置の実績データを読み出して表示部32に表示させる構成としてもよい。この場合、ユーザは表示させる補修措置の実績データの範囲を指定できるものとする。このように、補修措置の実績データを表示させることで、ユーザは補修措置に関する過去の履歴を閲覧することが可能となる。例えば、補修を何度も行っている点検対象部品の場合、熱を加え過ぎていて加熱に関する補修はできないなど、履歴によっても補修措置が変わってくることがある。このような場合に、補修実績データを確認することで、好適な補修措置を取ることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1,1’ 点検補修支援装置
2 クライアント端末
11 CPU
12 主記憶装置
13 補助記憶装置
14 入力装置
15 出力装置
16 通信装置
20 第1記憶部
22 第2記憶部
24 第3記憶部
26,26’ 第4記憶部
28 処理部
30 表示情報作成部
32 表示部
34 通信部
36 入力部
38 修正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント端末と通信媒体を介して接続可能な点検補修支援装置であって、
入力手段と、
点検対象部品における損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報ならびに識別情報が関連付けられた点検補修データが格納されている第1記憶手段と、
前記入力手段から識別情報が入力された場合に、該識別情報に対応付けられた前記点検補修データを前記第1記憶手段から取得するとともに、取得した前記点検補修データに含まれる各前記損傷箇所の補修措置方針を取得する処理手段と、
前記処理手段によって取得された前記点検補修データおよび前記補修措置方針を用いて、各前記損傷箇所とその補修措置方針とを関連付けて表示する第1表示情報を作成する表示情報作成手段と、
前記第1表示情報を前記クライアント端末に送信する送信手段と
を具備する点検補修支援装置。
【請求項2】
前記点検対象部品のモデルが格納されている第2記憶手段を有し、
前記表示情報作成手段は、前記第2記憶手段に格納されている前記点検対象部品のモデルを読み出し、読み出した前記点検対象部品のモデル上に前記損傷箇所を表示させた損傷視覚化モデルを作成し、
前記第1表示情報には該損傷視覚化モデルが含まれる請求項1に記載の点検補修支援装置。
【請求項3】
前記損傷箇所の位置情報と損傷に関する情報と補修措置方針とが関連付けられた補修基準データが格納されている第3記憶手段を有し、
前記処理手段は、前記第3記憶手段から前記損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報に対応する補修措置方針を取得する請求項1または請求項2に記載の点検補修支援装置。
【請求項4】
前記損傷箇所の位置情報と損傷に関する情報とを関連付けて表示する表示手段を備え、
前記処理手段は、前記入力手段から前記表示手段に表示された該損傷箇所に対する補修措置方針が入力された場合に、前記入力手段から入力された補修措置方針を取得する請求項1または請求項2に記載の点検補修支援装置。
【請求項5】
前記点検補修データに関連付けて過去に実施された補修措置の実績データが格納されている第4記憶手段と、
前記補修措置の実績データに基づいて、前記第3記憶手段に格納されている補修基準データを修正する修正手段と
を具備する請求項3に記載の点検補修支援装置。
【請求項6】
前記第4記憶手段に格納されている補修措置の実績データを表示する表示手段を備える請求項5に記載の点検補修支援装置。
【請求項7】
前記修正手段による修正前後の補修基準データを関連付けて表示する表示手段を備え、
前記入力手段から前記表示手段に表示された修正後の補修基準データの修正情報が入力された場合に、入力された修正情報に基づいて前記補修基準データを修正する請求項5に記載の点検補修支援装置。
【請求項8】
前記第1表示情報を受信した前記クライアント端末から補修の承認情報を受信する受信手段と、
前記補修の承認情報を受信した場合に、その旨を表示する表示手段を備える請求項1に記載の点検補修支援装置。
【請求項9】
点検対象部品における損傷箇所の位置情報および損傷に関する情報が入力された場合に、前記損傷箇所の位置情報および前記損傷に関する情報を表示する過程と、
表示された各前記損傷箇所に対応する補修措置方針を取得する過程と、
前記損傷箇所と該損傷箇所に対応する補修措置方針とを関連付けて表示する過程と、
表示した情報に対して送信指示が入力された場合に、前記損傷箇所と前記補修措置方針とを対応付けた情報を送信する過程と
を含む点検補修支援方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−2390(P2013−2390A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135438(P2011−135438)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)