説明

無人ヘリコプターの監視装置

【課題】所定の場所(作業範囲)以外の場所で作業装置が作動することを防止するとともに、盗難を防止可能とする無人ヘリコプターの監視装置を提供する。
【解決手段】GPSにより取得した無人ヘリコプター1の機体の位置に係る位置情報を取得し、該位置情報と、予め設定された作業範囲と、を比較することにより機体が作業範囲内または作業範囲外のいずれにあるかを判定し、機体が該作業範囲内にある場合には、該所定の作業を許可する作業許可信号を無人ヘリコプターに送信して作業可能とし、機体が該作業範囲外にある場合には、該所定の作業を禁止する作業禁止信号を無人ヘリコプターに送信して作業不能とする監視装置を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の作業を行うための作業装置を具備し、無線操作手段により操作される無人ヘリコプターの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の作業を行うための作業装置を具備し、無線操作手段により操作される無人ヘリコプターは公知となっている。
例えば、特許文献1に記載の無人ヘリコプターは、作業装置として圃場に液体状の薬剤(薬液)を散布する薬剤散布装置を具備するものである。作業者は無線操作手段(例えば、プロポーショナルシステム)を操作することにより、無人ヘリコプターの飛行に係る操作および薬剤散布装置の作動に係る操作を行う。
【特許文献1】特開2000−198495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の無人ヘリコプターの場合、薬剤散布装置により散布される薬液は防除剤や肥料等であり、誤って所定の圃場以外の場所で散布することが好ましくない。このように、作業装置の種類によっては、所定の場所(作業範囲)以外の場所で作業装置を作動させることが好ましくないものがある。
また、従来の無人ヘリコプターは高価であるにもかかわらず、盗難を防止するための機能を具備していないという問題があった。
【0004】
本発明は以上の如き状況に鑑み、所定の場所(作業範囲)以外の場所で作業装置が作動することを防止するとともに、盗難を防止可能とする無人ヘリコプターの監視装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、所定の作業を行うための作業装置を具備し、無線操作手段により操作される無人ヘリコプターの監視装置において、
GPSにより取得した機体の位置に係る位置情報を取得し、
該位置情報と、予め設定された作業範囲と、を比較することにより機体が作業範囲内または作業範囲外のいずれにあるかを判定し、
無人ヘリコプターが該作業範囲内にある場合には、該所定の作業を許可する作業許可信号を無人ヘリコプターに送信して作業可能とし、
無人ヘリコプターが該作業範囲外にある場合には、該所定の作業を禁止する作業禁止信号を無人ヘリコプターに送信して作業不能とするものである。
【0007】
請求項2においては、前記無人ヘリコプターとの間で送受信不能となった場合には、無人ヘリコプターは作業不能となるものである。
【0008】
請求項3においては、無人ヘリコプターが該作業範囲外にあることを、無線操作手段および監視装置の少なくとも一方に設けられた表示部に表示可能としたものである。
【0009】
請求項4においては、所定の作業を行うための作業装置を具備し、無線操作手段により操作される無人ヘリコプターの監視装置において、
GPSにより取得した機体の位置に係る位置情報を取得し、
該位置情報と、予め設定された作業範囲と、を比較することにより機体が作業範囲内または作業範囲外のいずれにあるかを判定し、
無人ヘリコプターが該作業範囲外にあることを、無線操作手段および監視装置の少なくとも一方に設けられた表示部に表示可能としたものである。
【0010】
請求項5においては、前記無人ヘリコプターは、所定時間経過毎に電気通信回線または電話回線を通じて位置情報を監視装置に送信するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、作業範囲外で誤って作業を行うことを防止することが可能である。
また、予め設定された作業範囲の外にある場合には作業を行うことができないので、仮に無人ヘリコプターの機体を盗んだとしても、その後で薬剤散布作業に用いることができず、盗難を抑止することが可能である。
【0013】
請求項2においては、作業範囲外で誤って作業を行うことを防止することが可能である。
また、予め設定された作業範囲の外にある場合には作業を行うことができないので、仮に無人ヘリコプターの機体を盗んだとしても、その後で薬剤散布作業に用いることができず、盗難を抑止することが可能である。
【0014】
請求項3においては、無人ヘリコプターが作業範囲外にあることを作業者が直ちに認識することが可能であり、作業性が向上する。
【0015】
請求項4においては、監視装置が故障して無人ヘリコプターとの間で送受信不能となった場合や、無人ヘリコプターが誤って作業範囲外に移動してしまった場合でも、無人ヘリコプターによる作業を中断せずに継続して行うことが可能である。
【0016】
請求項5においては、無人ヘリコプターの機体が監視装置と直接送受信できない位置まで移動した場合でも、作業者は無人ヘリコプターの機体の位置を把握することが可能である。
すなわち、機体を紛失した場合や、盗難に遭った場合でも容易に機体の位置を把握することが可能であり、作業性に優れるとともに盗難に対する抑止力が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では図1、図2および図3を用いて無人ヘリコプター1の全体構成について説明する。
【0018】
無人ヘリコプター1は、その機体に、エンジン2(図3参照)、メインロータ3、テールロータ4、薬剤散布装置5、機体制御部6(図3参照)等を具備している。
【0019】
エンジン2はメインロータ3およびテールロータ4を回転駆動するとともに、無人ヘリコプター1における作業装置の実施の一形態である薬剤散布装置5を駆動する。
なお、本実施例の薬剤散布装置5はエンジン2から駆動力を得る構成としているが、これに限定されず、無人ヘリコプター1に搭載される他の駆動源(例えば、バッテリーにより駆動されるモータ等)により作業装置を駆動する構成としても良い。
【0020】
メインロータ3は無人ヘリコプター1の機体上部に設けられ、エンジン2により回転駆動される。メインロータ3は、その回転速度、および、メインロータ3の翼面とメインロータ3の回転軸3aとが成す傾きを変更することが可能に構成されている。
従って、メインロータ3は、無人ヘリコプター1の機体に与える揚力を変化させて機体を空中に浮揚させ、機体の上昇または下降を行う。
また、メインロータ3は、回転軸3aを機体の前後方向または左右方向に傾けることにより、無人ヘリコプター1の機体を前後方向または左右方向に移動するための力を付与することが可能である。
【0021】
テールロータ4は無人ヘリコプター1の機体後部に設けられ、エンジン2により回転駆動される。テールロータ4は、その回転速度、および、テールロータ4の翼面とテールロータ4の回転軸(図示せず)とが成す傾きを変更することが可能に構成されている。
従って、テールロータ4は、メインロータ3の回転により無人ヘリコプター1の機体に作用する反動トルク(無人ヘリコプター1の機体を、メインロータ3が回転する方向の逆方向に回転させようとする力)を打ち消す力の大きさを変化させて、機体を右旋回または左旋回させる、あるいは機首の方向を略一定の方向に保持する。
【0022】
図3に示す如く、無線操作手段80は作業者が携帯して無人ヘリコプター1の機体および該無人ヘリコプター1に設けられた薬剤散布装置5を遠隔操作するものである。また、本実施例の場合、複数の作業者が無人ヘリコプター1の飛行に係る操作と、薬剤散布装置5の作動に係る操作とを分担して行うことも想定して、作業専用無線操作手段81を用意している。作業専用無線操作手段81は作業者が携帯して薬剤散布装置5を遠隔操作するものである。
無線操作手段80および作業専用無線操作手段81の詳細については後述する。
【0023】
以下では、作業装置の実施の一形態である薬剤散布装置5の詳細構成について説明する。
「作業装置」とは、無人ヘリコプターに具備されて所定の作業を行うものであり、薬剤散布装置5に限定されるものではない。作業装置の他の実施例としては、空撮装置(空中写真を撮影するための装置)等が挙げられる。
【0024】
薬剤散布装置5は圃場等に液体状の薬剤(以下、「薬液」という)を散布するための装置である。
ここで、「薬液」の実施形態としては、(1)液体状の薬剤をそのまま使用するもの、(2)液体状の薬剤を水で希釈して使用するもの、(3)粉末または顆粒状の薬剤を水に溶かして使用するもの、等が含まれる。また、「薬液」の具体例としては、液体肥料や防除剤が挙げられる。
【0025】
図4に示す如く、薬剤散布装置5は、主に左右一対の薬液タンク51L・51R、左右一対のポンプ52L・52R、中央フレーム53、左右一対のブーム54L・54R、ノズル55L・55L・55L、ノズル55R・55R・55R、分配管56、配管57L・57R、配管58L・58R、配管59L・59R、開閉弁60、戻り配管61、分岐管62、戻り配管63L・63R等で構成される。
【0026】
ここで、薬液タンク51L(51R)からポンプ52L(52R)を経てノズル55L・55L・55L(55R・55R・55R)に薬液を搬送するための経路を、以後「薬液搬送経路」と呼ぶ。
本実施例の場合、薬液搬送経路は、機体左側の薬液搬送経路(具体的には配管57L、配管58L、および配管59Lからなる)、および機体右側の薬液搬送経路(具体的には配管57R、配管58R、および配管59R)からなり、これらが分配管56にて一時的に合流し、その後再び左右に分流する構成となっている。
【0027】
図1および図2に示す如く、中央フレーム53は薬剤散布装置5を構成する他の部材を無人ヘリコプター1に固定する部材であり、無人ヘリコプター1の機体下部に着脱可能に設けられる。
左右一対のブーム54L・54Rは、その基部が中央フレーム53の左右端部に回動可能に枢着された棒状の部材である。ブーム54L・54Rは、その先端部を無人ヘリコプター1の機体左右側方に延出した姿勢(薬剤散布時)、または、先端部を機体後方に回動した姿勢(機体搬送時)、のいずれかの姿勢を保持することが可能である。ブーム54L・54Rには、それぞれノズル55L・55L・55Lおよびノズル55R・55R・55Rが所定の間隔を空けて取り付けられる。
なお、本実施例の薬剤散布装置5はノズル式の薬剤散布装置であるが、ノズルに換えて回転霧化式のアトマイザーを具備する薬剤散布装置としても良い。
【0028】
図1、図2および図4に示す如く、左右一対の薬液タンク51L・51Rは、薬液を貯溜する容器であり、無人ヘリコプター1の機体の左右側面に配置され、前記中央フレーム53に着脱可能に設けられる。薬液タンク51L・51Rの底部には配管57L・57Rの一端が接続される。また、配管57L・57Rの他端はそれぞれ左右一対のポンプ52L・52Rの吸入ポートに接続される。ポンプ52L・52Rの吐出ポートには配管58L・58Rの一端が接続される。
【0029】
左右一対のポンプ52L・52Rは薬液を圧送するものであり、エンジン2により駆動される。薬液タンク51L・51R内に貯溜された薬液は、それぞれ配管57L・57Rを経てポンプ52L・52Rに供給される。ポンプ52L・52Rは薬液タンク51L・51Rから供給された薬液をそれぞれ配管58L・58Rを経て分配管56に圧送する。
【0030】
図4および図5に示す如く、分配管56は機体左右の薬剤搬送経路をその中途部にて一時的に合流させ、再び左右に分流するものである。
【0031】
分配管56は主に供給側配管56a、合流配管56b、吐出側配管56c等からなる略H型の配管である。合流配管56bの一端は供給側配管56aの中途部(合流点)と連通し、合流配管56bの他端は吐出側配管56cの中途部(分流点)と連通する。
供給側配管56aの両端には、それぞれ前記配管58L・58Rの他端が接続される。また、吐出側配管56c・56cの両端には、それぞれ配管59L・59Rの一端が接続される。配管59L・59Rはそれぞれ前記左右一対のブーム54L・54Rに取り付けられ、配管59L・59Rの中途部にはそれぞれノズル55L・55L・55Lおよびノズル55R・55R・55Rが設けられる。
【0032】
配管58L・58Rを経て分配管56に圧送されてきた薬液は、該分配管56の合流点にて一度合流した後、分流点にて再び配管59L・59Rに分流され、機体左側のブーム54Lに設けられたノズル55L・55L・55Lおよび機体右側のブーム54Rに設けられたノズル55R・55R・55Rから散布される。
このように構成することにより、左右のポンプ52L・52Rの圧送能力に差(ばらつき)が生じた場合や、ポンプ52L・52Rの一方が故障した場合でも、左右のノズル(ノズル55L・55L・55Lおよびノズル55R・55R・55R)から散布される薬液の量を略均等とすることが可能である。このことは、圃場への薬液散布量のムラを防止するという観点から見て有効である。
【0033】
本実施例の薬剤散布装置5は、ポンプ52L(またはポンプ52R)よりも下流側、かつ、ノズル55L・55L・55L(またはノズル55R・55R・55R)よりも上流側となる薬液搬送経路の中途部(分配管56)と、薬液タンク51L・51Rと、を連通する「薬液戻し経路」が設けられる。ここで、薬液戻し経路は、具体的には戻り配管61、分岐管62および戻り配管63L・63R等で構成される。
また、該薬液戻し経路の端部(分配管56と戻り配管61との連結部)には開閉弁60が設けられる。
【0034】
図5に示す如く、本実施例の開閉弁60は電磁弁で構成され、主に、胴体部71、弁体となるボール72、バネ73、ソレノイド74、突出部材75、アダプタ76等で構成される。
【0035】
胴体部71は略筒型の部材であり、その中途部には吐出口71bが形成され、該吐出口71bは戻り配管61と接続される。胴体部71の内周面において、胴体部71の一端に形成された導入口71aと吐出口71bとで挟まれる位置には導入口71a側から吐出口71b側に向かって縮径する擂り鉢状のシート面(弁座)71cが形成されている。そして、球形のボール72および巻きバネ73が導入口71a側から胴体部71に収容される。
【0036】
胴体部71の導入口71a側の外周面には雄ネジが形成され、アダプタ76の一端が螺設される。アダプタ76は略筒型の部材であり、アダプタ76の他端の外周面には雄ネジが形成され、分配管56の合流点(供給側配管56aと合流配管56bとが連通する部分)に螺設される。アダプタ76は巻きバネ73の一端を支持している。ボール72は、該巻きバネ73によりシート面71cに当接する(閉じる)方向に付勢されている。
【0037】
ソレノイド74は、電力を供給することにより電磁力を発生させ、略棒状の磁性部材で構成した突出部材75を突出させるものであり、胴体部71において、導入口71aと反対側の端部に設けられる。
【0038】
ソレノイド74への通電を行うと、突出部材75は、ボール72に当接し、ボール72を巻きバネ73の付勢力に抗して導入口71a側に移動させ、ボール72とシート面71cとを離間させる。すなわち、開閉弁60が開き、分配管56と戻り配管61とを連通する。
また、ソレノイド74への通電を停止すると、突出部材75は、胴体部71内部にてボール72から離間する方向に退避し、ボール72は巻きバネ73の付勢力によりシート面71cに当接する。すなわち、開閉弁60が閉じ、分配管56と戻り配管61とを遮断する。
【0039】
ポンプ52L・52Rの作動および停止(本実施例の場合、エンジン2からポンプ52L・52Rへの駆動力伝達経路の中途部に設けられた図示せぬクラッチのオン・オフ)は、図3に示す無線操作手段80または作業専用無線操作手段81に設けられた薬剤散布装置5の作動スイッチ(図示せず)を操作することにより行われる。
また、開閉弁60の開閉(ソレノイド74への通電および通電の停止)は、無線操作手段80または作業専用無線操作手段81に設けられた開閉弁操作スイッチ(図示せず)を操作することにより行われる。
【0040】
このように構成することは、以下の如き利点を有する。
すなわち、図10に示す従来の無人ヘリコプターの薬剤散布装置105においては、薬液搬送経路の中途部(分配管156)と連通するエア抜き配管160を設け、該エア抜き配管160の中途部にエア抜き用のコック161を設ける構成とし、薬剤散布作業前にポンプ52L・52Rが作動した状態で該コック161を開くことによりエア抜き作業を行っていた。
しかし、ポンプを作動させる時にはメインロータも回転するため、コック161の開閉操作は大変やり難いこととなる。また、エア抜き作業を行わずに一旦無人ヘリコプターを飛行させた場合、エア抜き作業を行うためには一度着陸させる必要があるため、大変面倒な作業となる。そして、エア抜き配管160の終端部160aは無人ヘリコプターの外部に開放されているため、エア抜き作業時に、薬液搬送経路内のエアだけでなく、新たに薬液搬送経路を満たす薬液の一部も外部に漏出する場合があった。
【0041】
これに対して、図4に示す本実施例の無人ヘリコプター1の薬剤散布装置5の場合、ポンプ52L・52Rが作動した状態で開閉弁60を開くと、薬液搬送経路内のエアおよび薬液搬送経路を満たす薬液は、薬液戻し経路を経て薬液タンク51L・51Rに戻される。従って、エア抜き作業時に薬液搬送経路を満たす薬液が外部に漏出することがない。
【0042】
開閉弁60は手動式の弁とすることも可能であるが、本実施例の如く電磁弁として、無線操作手段80および作業専用無線操作手段81により開閉する構成とすることが好ましい。
このように構成することにより、飛行中に薬液搬送経路にエアが噛んだ場合でも、エア抜き作業を行うことが可能であり、作業性に優れる。
なお、開閉弁60の構成は本実施例に限定されるものではなく、薬液戻し経路と薬液搬送経路とを連通および遮断可能であればよい。
【0043】
また、図4に示す如く、薬液戻し経路を構成する戻り配管63L・63Rの終端部64L・64Rは薬液タンク51L・51Rの側面より薬液タンク51L・51Rに挿入され、該戻り配管63L・63Rは薬液タンク51L・51Rの底部(下部)と連通する。
ここで、終端部64L・64Rは配管57L・57Rの薬液タンク51L・51Rとの接続部から離れた位置に配置することが望ましい。これは、薬液戻し経路から薬液タンク51L・51Rに戻されたエアが再び薬液搬送経路に巻き込まれることを防止するためである。
このように構成することにより、薬液戻し経路から薬液タンク51L・51Rに戻されるエアおよび薬液は薬液タンク51L・51Rに貯溜された薬液内に勢いよく吐出されることとなり、薬液タンク51L・51R内に貯溜された薬液を撹拌することが可能である。これは、特に、薬剤が水から分離して薬液タンクの底部に沈殿し易い薬液の場合に有効である。
【0044】
さらに、図3に示す如く、薬液戻し経路から薬液タンク51L・51Rに戻されるエアおよび薬液の吐出方向は、薬液タンク51L・51Rの水平方向(機体が空中でホバリングしているときの重力方向に対して略直交する方向)に対して傾斜している(すなわち、側方視または前方視で斜め上方または斜め下方に吐出される)ことが望ましい。
これは、薬液タンク51L・51Rに戻されるエアおよび薬液により、薬液タンク51L・51R内に貯溜された薬液内部に上下方向の対流が起こり、薬液を撹拌する効果が向上するからである。
【0045】
なお、薬液戻し経路から薬液タンク51L・51Rに戻されるエアおよび薬液の吐出方向が薬液タンク51L・51Rの略水平方向であっても、エアおよび薬液が該薬液タンク51L・51Rの内壁に沿って吐出されるように構成することにより、薬液タンク51L・51R内に貯溜された薬液に渦流を発生させて薬液を撹拌することが可能である。
【0046】
また、本実施例においては前記開閉弁60の開閉操作は無線操作手段80または作業専用無線操作手段81に設けられた開閉弁操作スイッチ(図示せず)を操作することにより行う構成としたが、当該開閉弁操作スイッチを省略し、ポンプ52L・52Rに連動して(言い換えれば、無線操作手段80または作業専用無線操作手段81に設けられた薬剤散布装置5の作動スイッチ(図示せず)の操作に連動して)開閉弁60が所定時間開き、その後閉じる構成としても良い。
このように構成することにより、作業者が特に意識せずとも、薬剤散布作業時にエア抜き作業と薬液タンク内の薬液の撹拌作業とを併せて行うことが可能であり、作業性に優れる。
【0047】
以下では、図1、図2および図3を用いて本実施例の無人ヘリコプター1の機体制御部6および監視装置7の詳細構成について説明する。
図3に示す如く、機体制御部6は無人ヘリコプター1の機体に設けられる。機体制御部6は無人ヘリコプター1の飛行および作業装置5による作業全般を制御するものであり、具体的にはCPUやROM等で構成される。
【0048】
無人ヘリコプター1は操作用受信アンテナ31、作業専用受信アンテナ32、監視用通信アンテナ33を具備する。但し、一つのアンテナで受信することも可能である。
【0049】
操作用受信アンテナ31は無線操作手段80が発する「操作信号」を受信するアンテナである。操作用受信アンテナ31は無人ヘリコプター1の機体後部に設けられ、機体制御部6に接続される。機体制御部6は、操作用受信アンテナ31が受信した操作信号を取得する。
ここで、無線操作手段80は無人ヘリコプター1および該無人ヘリコプター1に設けられた作業装置(本実施例の場合、薬剤散布装置5)を遠隔操作するためのものであり、具体例としてはプロポーショナルシステム等が挙げられる。
また、「操作信号」は、無線操作手段80が無人ヘリコプター1の機体に設けられたアクチュエータ群(後述するエンジン制御サーボ10、左右傾斜サーボ11、前後傾斜サーボ12、左右旋回サーボ13、作業用サーボ14、開閉弁60を開閉するためのソレノイド74等)を操作するための信号である。
作業者は、無線操作手段80を操作することにより、無人ヘリコプター1を飛行させ、薬剤散布作業を行う。すなわち、無線操作手段80が発する「操作信号」には、無人ヘリコプター1の飛行に係る信号と、無人ヘリコプター1の作業に係る信号とが含まれる。
【0050】
作業専用受信アンテナ32は作業専用無線操作手段81が発する「作業操作信号」を受信するアンテナである。作業専用受信アンテナ32は無人ヘリコプター1の機体後部に設けられ、機体制御部6に接続される。機体制御部6は、作業専用受信アンテナ32が受信した「作業操作信号」を取得する。
ここで、作業専用無線操作手段81は無人ヘリコプター1の薬剤散布装置5を遠隔操作するためのものであり、具体例としてはプロポーショナルシステム等が挙げられる。
また、「作業操作信号」は、作業専用無線操作手段81が無人ヘリコプター1の機体に設けられたアクチュエータ群のうち、薬剤散布装置5の作動に係るものを操作するための信号である。
作業者は、作業専用無線操作手段81を操作することにより、薬剤散布作業を行う。作業専用無線操作手段81が発する作業操作信号には、薬剤散布装置5に係る信号のみが含まれる。
【0051】
本実施例の無人ヘリコプター1は、その飛行に係る操作を無線操作手段80のみで行い、薬剤散布作業に係る操作を無線操作手段80および作業専用無線操作手段81のいずれかで行うことが可能である。
すなわち、(1)一人の作業者が無線操作手段80を用いて無人ヘリコプター1の飛行に係る操作および薬剤散布作業に係る操作の両方を行う場合、(2)二人の作業者の一方が無線操作手段80を用いて無人ヘリコプター1の飛行に係る操作を行い、二人の作業者の他方が作業専用無線操作手段81を用いて無人ヘリコプター1の薬剤散布作業に係る操作を行う場合、のいずれにも対応可能な構成としている。
なお、作業専用無線操作手段81を省略して、(1)一人の作業者が無線操作手段80を用いて無人ヘリコプター1の飛行に係る操作および薬剤散布作業に係る操作の両方を行う場合、にのみ対応可能な構成としても良い。
また、無線操作手段80における薬剤散布作業に係る操作機能を省略し、無線操作手段80が無人ヘリコプター1の飛行に係る操作のみを行う構成として、(2)二人の作業者の一方が無線操作手段80を用いて無人ヘリコプター1の飛行に係る操作を行い、二人の作業者の他方が作業専用無線操作手段81を用いて無人ヘリコプター1の薬剤散布作業に係る操作を行う場合、にのみ対応可能な構成としても良い。
【0052】
監視用通信アンテナ33は地上に設けられた監視装置7(より厳密には、地上側通信アンテナ41)との間で送受信を行うアンテナである。監視用通信アンテナ33は無人ヘリコプター1の機体後部に設けられ、機体制御部6に接続される。監視装置7の詳細構成については後述する。
【0053】
無人ヘリコプター1は、エンジン制御サーボ10、左右傾斜サーボ11、前後傾斜サーボ12、左右旋回サーボ13、作業用サーボ14等のアクチュエータ群を具備する。これらのアクチュエータ群は機体制御部6と接続される。機体制御部6は、無線操作手段80または作業専用無線操作手段81から取得した操作信号に基づいて、当該アクチュエータ群を作動させる。
【0054】
エンジン制御サーボ10は、エンジン2の回転数(言い換えれば、メインロータ3の回転数)およびメインロータ3の翼面と回転軸3aの軸線方向との成す角度を調整し、無人ヘリコプター1を上昇または下降させる操作(昇降操作)を行うアクチュエータである。
エンジン制御サーボ10の具体例としては、いわゆるサーボモータ(回転角度および回転速度を制御可能なモータ、以下同じ)が挙げられる。
【0055】
左右傾斜サーボ11は、メインロータ3の回転軸3aを無人ヘリコプター1の機体左右方向に傾斜(ロール)させ、無人ヘリコプター1を機体左右方向に移動させる操作(左右移動操作)を行うアクチュエータである。
左右傾斜サーボ11の具体例としては、いわゆるサーボモータが挙げられる。
【0056】
前後傾斜サーボ12は、メインロータ3の回転軸3aを無人ヘリコプター1の機体前後方向に傾斜(ピッチ)させ、無人ヘリコプター1を機体前後方向に移動させる操作(前後移動操作)を行うアクチュエータである。
前後傾斜サーボ12の具体例としては、いわゆるサーボモータが挙げられる。
【0057】
左右旋回サーボ13は、テールロータ4の翼面とテールロータ4の回転軸との成す角度を変化させ、無人ヘリコプター1の機首を右旋回または左旋回させる操作(旋回操作)を行うアクチュエータである。
左右旋回サーボ13の具体例としては、いわゆるサーボモータが挙げられる。
【0058】
ここで、左右旋回サーボ13は、上記無線操作手段80から送信された操作信号だけでなく、後述するジャイロセンサ21、加速度センサ22、方位センサ23から取得した機体の姿勢に係る情報(姿勢情報)にも基づいて作動する。
これは、以下の理由による。通常、無人ヘリコプター1のテールロータ4は、メインロータ3と連動する構成であり、メインロータ3の回転速度が上昇すればテールロータ4の回転速度も上昇する。すなわち、テールロータ4の回転速度が変化すると機体に作用する反動トルクを打ち消す力の大きさも変化する。
仮に、左右旋回サーボ13を無線操作手段80から送信された操作信号のみに基づいて作動させる場合、無人ヘリコプター1の上昇時または下降時には、エンジン2の回転数に応じてテールロータ4の翼面とテールロータ4の回転軸との成す角度も適宜調整する必要が生じる。すなわち、無人ヘリコプター1の機首の方向を略一定に保持しつつ無人ヘリコプター1を上昇または下降させるためにはエンジン制御サーボ10および左右旋回サーボ13の両方を操作しなければならず、操作が煩雑となる。
【0059】
そこで、本実施例においては、作業者が無線操作手段80を操作してエンジン制御サーボ10のみを作動させた(すなわち、旋回操作をせずに昇降操作を行った)場合、機体制御部6はジャイロセンサ21、加速度センサ22、方位センサ23から取得した機体の姿勢に係る情報(姿勢情報)に基づいて機体の機首の方向が略一定となるように左右旋回サーボ13を操作し、テールロータ4の翼面とテールロータ4の回転軸とが成す角度を調整する構成としている。ジャイロセンサ21、加速度センサ22、方位センサ23の詳細については後述する。
【0060】
作業用サーボ14は、エンジン2と薬剤散布装置5のポンプ52L・52Rとの間の駆動力伝達経路に設けられたクラッチのオン・オフを行い、薬剤散布装置5の作動および停止の操作(薬剤散布操作)を行うアクチュエータである。
作業用サーボ14の具体例としては、いわゆるサーボモータが挙げられる。
【0061】
機体制御部6には、無人ヘリコプター1の飛行に係る情報(以下、「飛行情報」と呼ぶ)、を取得するためのセンサ等が設けられる。
なお、飛行情報には、無人ヘリコプター1の位置に係る情報である「位置情報」や無人ヘリコプター1の姿勢に係る情報である「姿勢情報」が含まれる。
【0062】
以下では、無人ヘリコプター1(より厳密には、機体制御部6)が姿勢情報を取得する方法について説明する。
本実施例の無人ヘリコプター1は、ジャイロセンサ21、加速度センサ22および方位センサ23を具備する。
【0063】
ジャイロセンサ21は無人ヘリコプター1の機体前後方向の傾斜(ピッチ)の角速度、機体左右方向の傾斜(ロール)の角速度、および水平面上における旋回の角速度、を検出するものである。該三つの角速度を積分計算することにより、無人ヘリコプター1の機体の前後方向および左右方向への傾斜角度、および水平面上での旋回角度を求めることが可能である。
ジャイロセンサ21の具体例としては、機械式ジャイロセンサ、光学式ジャイロセンサ、流体式ジャイロセンサ、振動式ジャイロセンサ等が挙げられる。
ジャイロセンサ21は機体制御部6に接続され、当該三つの角速度に係る情報を機体制御部6に送信する。
【0064】
加速度センサ22は無人ヘリコプター1の機体に作用する重力加速度を含む三次元方向の加速度を検出するものである。当該加速度を求めることにより、機体に外力が作用した(例えば、突風が機体に吹き付けた)ことを検知することが可能である。また、重力加速度を求めることにより機体の前後方向および左右方向への傾斜角度を求めることが可能である。
加速度センサ22の具体例としては、静電容量型の加速度センサや圧電容量型の加速度センサ等が挙げられる。
加速度センサ22は機体制御部6に接続され、三次元方向の加速度に係る情報を機体制御部6に送信する。
【0065】
方位センサ23は無人ヘリコプター1の機首の向き(方位)を検出するものである。方位センサ23の具体例としては磁気方位センサ等が挙げられる。
方位センサ23は機体制御部6に接続され、機首の向き(方位)に係る情報を機体制御部6に送信する。
【0066】
機体制御部6は、上記ジャイロセンサ21、加速度センサ22、方位センサ23から取得した情報に基づいて、無人ヘリコプター1の姿勢(機首の向き、機体前後および機体左右方向の傾斜)を求める。
機体制御部6により求められた無人ヘリコプター1の姿勢に係る情報(姿勢情報)は、無人ヘリコプター1の姿勢制御に用いられる。
例えば、無線操作手段80からの操作信号を取得していない(作業者が無線操作手段80を操作していない)にも関わらず無人ヘリコプター1の機体の姿勢が大きく変化した場合には、機体制御部6は、機体に突風等の外力が作用したものとみなし、姿勢情報に基づいて、無線操作手段80からの操作信号によらずに機体の姿勢を安定化させる操作を行う。
【0067】
なお、本実施例においては、無人ヘリコプター1の姿勢に係る情報(姿勢情報)を得るために設けられるセンサ群であるジャイロセンサ21、加速度センサ22および方位センサ23から機体制御部6に送信される情報は、無人ヘリコプター1の姿勢を求める上で重複している部分があり、これらを比較し、互いに補完することにより姿勢情報の精度を向上させている。
また、本実施例ではジャイロセンサ21と加速度センサ22とは別体であるが、一体のもの(ジャイロ加速度センサ等)を用いても同様の効果を奏する。
【0068】
以下では、無人ヘリコプター1(より厳密には、機体制御部6)が位置情報を取得する方法について説明する。
本実施例の無人ヘリコプター1は、GPSアンテナ20を具備する。GPSアンテナ20はGPS衛星100からの信号を受信するためのアンテナであり、機体制御部6に接続される。GPSアンテナ20はGPS衛星100から受信した信号を機体制御部6に送信する。
【0069】
本実施例における監視装置7は、無人ヘリコプター1を監視するという本来の機能に加えて、無人ヘリコプター1の位置情報を取得するために用いられるGPSの基準局としての機能を兼ねる。GPSの詳細については後述する。
【0070】
監視装置7は主に地上側通信アンテナ41、制御部42、GPSアンテナ43、表示部44等で構成される。監視装置7は無人ヘリコプター1による作業前に地上に設けられる。
または、総合的に監視する基地局に監視装置7を設けて、他の無人ヘリコプター1の動作や作業状態を監視できるようにする。
また、監視装置7は地上に常設されていなくても良い(作業時のみ設置する構成としても良い)。
【0071】
地上側通信アンテナ41は無人ヘリコプター1(より厳密には、監視用通信アンテナ33)との間で送受信を行うアンテナである。地上側通信アンテナ41は制御部42に接続される。
【0072】
制御部42は無人ヘリコプター1の飛行および作業装置5による作業全般を監視するものであり、具体的にはCPUやROM等で構成される。
【0073】
GPSアンテナ43はGPS衛星100からの信号を受信するためのアンテナであり、制御部42に接続される。GPSアンテナ43はGPS衛星100から受信した信号を制御部42に送信する。
【0074】
表示部44は制御部42に接続され、制御部42が取得した情報および該情報に基づいて演算した結果等を表示するものである。表示部44の具体例としては液晶表示画面やその他のモニター等が挙げられる。
【0075】
なお、監視装置7の制御部42および表示部44は市販のパソコン等で構成することが可能である。
【0076】
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)は、元来航空機・船舶等の航法支援用として開発されたシステムであって、上空約二万キロメートルを周回する二十四個のGPS衛星(六軌道面に四個ずつ配置)、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局、測位を行うための利用者の受信機で構成される。
GPSを用いた測量方法としては、単独測位、相対測位、DGPS(ディファレンシャルGPS)測位、RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位など種々の方法が挙げられるが、本実施例では測定精度の高いRTK−GPS測位方式が採用されている。
【0077】
RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位は、位置が判っている基準局と、位置を求めようとする移動局とで同時にGPS観測を行い、基準局で観測したデータを無線等の方法で移動局にリアルタイムで送信し、基準局の位置成果に基づいて移動局の位置をリアルタイムに求める方法である。
【0078】
本実施例においては、無人ヘリコプター1が移動局、無人ヘリコプター1の機体制御部6が移動局側のGPS受信機に相当する。また、監視装置7が基準局、監視装置7の制御部42が基準局側のGPS受信機に相当する。
本実施例のRTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位は、基準局および移動局の両方で位相の測定(相対測位)を行い、基準局で観測した位相データを移動局に送信する。
【0079】
移動局のGPS受信機(無人ヘリコプター1の機体制御部6)では、GPSアンテナ20がGPS衛星100から受信したデータと、基準局のGPS受信機(監視装置7の制御部42)から取得したデータと、に基づいてリアルタイムで解析することにより、移動局の位置を決定する(すなわち、無人ヘリコプター1の位置情報を取得する)。
なお、本発明に適用されるGPSについては単独測位、相対測位、DGPS(ディファレンシャルGPS)測位等、他の方式を用いてもよく、限定されない。
また、本実施例では無人ヘリコプター1の機体制御部6にて無人ヘリコプター1の位置の解析(位置情報の取得)を行ったが、無人ヘリコプター1が取得した観測データを監視装置7に送信し、監視装置7の制御部42にて無人ヘリコプター1の位置の解析(位置情報の取得)を行う構成としても良い。
さらに、本実施例では監視装置7がGPSの基準局としての機能を兼ねる構成としたが、監視装置とGPSの基準局とを別体とし、監視装置が基準局から位置に係る情報を取得する構成としても良い。
【0080】
以下では、監視装置7による無人ヘリコプター1の監視方法について詳細説明する。
本実施例の無人ヘリコプター1は、いわゆる「自己診断機能」を具備している。ここで、「自己診断機能」とは、機体制御部6に格納されたプログラムに基づいて達成されるものであり、無人ヘリコプター1に具備される各部品の異常の有無を診断する機能を指す。
より具体的には、無人ヘリコプター1に具備され、機体制御部6に接続される各構成部材との間で導通が確保されているか(欠線がないか)、機体制御部6が送信した指示通りに各構成部材が動作するか(動作不良がないか)、等を確認する。
ここで、自己診断機能により異常の有無が診断される構成部材は、図5に示される部品には限定されない。
すなわち、エンジン2の冷却水を循環させるためのポンプや、エンジン2の冷却水を冷却するラジエータに設けられたファンや、エンジン2の燃料タンク内の燃料残量を検出するためのセンサやその他の電装部品等も自己診断機能により異常の有無が診断される構成部材に含まれる。
【0081】
機体制御部6は、自己診断機能により何らかの異常を発見した場合(飛行前および飛行中)には、当該異常の内容を記録するとともに警告灯15を点灯(または点滅)させる。
すなわち、機体制御部6は無人ヘリコプター1の機体側のフライトレコーダとしての機能を果たす。
また、機体制御部6は監視装置7に当該異常の内容に係る情報を送信する。監視装置7は当該異常内容を制御部42に記録するとともに表示部44に表示する。
すなわち、制御部42は無人ヘリコプター1の監視装置側のフライトレコーダとしての機能を果たす。
【0082】
このように構成することにより、作業者は無人ヘリコプター1の飛行中においても迅速かつ的確に異常の原因を把握することが可能である。
【0083】
監視装置7は、機体異常監視機能(上記無人ヘリコプター1の自己診断機能に基いて機体の異常の有無を監視する機能)に加えて、適正作業監視機能(無人ヘリコプター1による作業が適正に行われているか否かを監視する機能)を具備している。
以下では、適正作業監視機能の詳細について説明する。なお、本実施例においては、機体異常監視機能および適正作業監視機能は、いずれも監視装置7の制御部42に格納されたプログラムにより達成される。
【0084】
機体制御部6は、無人ヘリコプター1の飛行に係る飛行情報(GPSにより取得された無人ヘリコプター1の位置に係る位置情報と、ジャイロセンサ21、加速度センサ22、方位センサ23により取得される姿勢情報とを含む)と、所定の作業に係る情報である「作業情報」(本実施例の場合、薬剤散布装置5の作動に係る情報)と、を監視装置7にリアルタイムで送信する。
【0085】
一方、監視装置7には、薬剤散布作業時の圃場の作業範囲、飛行高度、飛行速度、飛行時の姿勢等の諸条件が設定されている(以下、監視装置7に設定される諸条件を「設定情報」という)。
そして、監視装置7の制御部42は、無人ヘリコプター1の機体制御部6から送信されてきた飛行情報および作業情報と、前記設定情報と、を比較し、「所定の状態」を満たす場合には、当該比較結果に基づいて無線操作手段80および作業専用無線操作手段81に「指示信号」を送信する。無線操作手段80および作業専用無線操作手段81は、監視装置7から「指示信号」を取得すると、無線操作手段80および作業専用無線操作手段81に設けられた表示部に、当該指示信号に対応する「所定の指示」を表示する。無線操作手段80および作業専用無線操作手段81に設けられた表示部の具体例としては、点灯(または点滅)可能なランプや、液晶表示画面等が挙げられる。
【0086】
ここで、「所定の状態」とは、監視装置7が、無人ヘリコプター1による薬剤散布作業が適正に行われていないと判断する無人ヘリコプター1の状態を指す。
また、「所定の指示」とは、監視装置7が、作業者に対して無人ヘリコプター1による薬剤散布作業を適正に行うことを促すために出す指示である。
「所定の状態」および「所定の指示」の組み合わせの具体例としては、以下のものが挙げられる。
(1)無人ヘリコプター1が作業範囲外を飛行している場合(所定の状態)に、作業範囲内に戻すように指示(所定の指示)する。
(2)無人ヘリコプター1の飛行高度が設定した範囲から外れている場合(所定の状態)に、飛行高度を設定した範囲内に戻すように指示(所定の指示)する。
(3)無人ヘリコプター1の飛行速度が設定した範囲から外れている場合(所定の状態)に、飛行速度を設定した範囲内に戻すように指示(所定の指示)する。
(4)無人ヘリコプター1の機体が傾斜している場合(所定の状態)に、機体の姿勢を略水平に保持するように指示(所定の指示)する。
(5)薬剤散布装置5が作動していない場合(所定の状態)に、薬剤散布装置5を作動させるように指示(所定の指示)する。
【0087】
このように構成することにより、無人ヘリコプター1の位置や姿勢、薬剤散布装置5の動作を修正するように作業者を促して、無人ヘリコプター1による適正な薬剤散布作業を行うことが可能である。
【0088】
また、監視装置7の制御部42は、無人ヘリコプター1の機体制御部6から送信されてきた飛行情報および作業情報と、前記設定情報と、を比較し、「所定の状態」を満たす場合には、当該比較結果に基づいて、「優先操作信号」を無人ヘリコプター1に送信する構成とすることも可能である。
ここで、「優先操作信号」とは、前記飛行情報と設定情報との比較に基づき、無人ヘリコプター1に行わせるべき操作をさせるために監視装置7が無人ヘリコプター1に送信する信号である。
【0089】
機体制御部6は、無線操作手段80および作業専用無線操作手段81が無人ヘリコプター1に送信する「操作信号」と、前記「優先操作信号」とを同時に取得した場合には、「優先操作信号」を優先する。すなわち、機体制御部6は「操作信号」を無視し、「優先操作信号」に基づいて無人ヘリコプター1に具備されるアクチュエータ群等の操作を行う。
【0090】
当該「所定の状態」および「優先操作信号」の組み合わせの具体例としては、前記「所定の状態」および「優先操作信号」の具体例と略同様に、以下のものが挙げられる。
(1)無人ヘリコプター1が作業範囲外を飛行している場合(所定の状態)に、作業範囲内に戻す信号(優先操作信号)を送信する。
(2)無人ヘリコプター1の飛行高度が設定した範囲から外れている場合(所定の状態)に、飛行高度を設定した範囲内に戻す信号(優先操作信号)を送信する。
(3)無人ヘリコプター1の飛行速度が設定した範囲から外れている場合(所定の状態)に、飛行速度を設定した範囲内に戻す信号(優先操作信号)を送信する。
(4)無人ヘリコプター1の機体が傾斜している場合(所定の状態)に、機体の姿勢を略水平に保持する信号(優先操作信号)を送信する。
(5)薬剤散布装置5が作動していない場合(所定の状態)に、薬剤散布装置5を作動させる信号(優先操作信号)を送信する。
【0091】
このように構成することにより、作業者の操作によらずに無人ヘリコプター1の位置や姿勢、薬剤散布装置5の動作を修正し、無人ヘリコプター1による適正な薬剤散布作業を行うことが可能である。
【0092】
以上の如く、本実施例の監視装置7は、
薬剤散布作業を行うための薬剤散布装置5を具備し、無線操作手段80(および作業専用無線操作手段81)により操作される無人ヘリコプター1の監視装置であって、
飛行中の自己診断結果を該無人ヘリコプター1から取得可能であるとともに、
無人ヘリコプター1の飛行に係る飛行情報と、該無人ヘリコプター1が行う薬剤散布作業に係る作業情報と、を飛行中の無人ヘリコプター1から取得し、
該飛行情報と、該作業情報と、に基づいて、無線操作手段80(および作業専用無線操作手段81)に所定の指示を表示する、
または、無人ヘリコプター1を操作するために無線操作手段80(および作業専用無線操作手段81)が無人ヘリコプター1に送信する操作信号に優先する優先操作信号を無人ヘリコプター1に送信するものである。
【0093】
このように構成することにより、作業者は無人ヘリコプター1の飛行中においても迅速かつ的確に異常の原因を把握することが可能である。このことは、次回の作業に影響を与えないように大きな故障が起こる前に無人ヘリコプター1を予め修理に出すことが可能となるといった利点があり、無人ヘリコプター1による薬剤散布作業を計画的に消化することが可能である。
また、無人ヘリコプター1の位置や姿勢、薬剤散布装置5の動作を修正するように作業者を促すことにより、あるいは、作業者の操作によらずに無人ヘリコプター1の位置や姿勢、薬剤散布装置5の動作を修正することにより、薬剤散布作業を適正に行うことが可能である。
【0094】
以下では、図3を用いて「作業制限機能」について説明する。ここで、「作業制限機能」とは、「無人ヘリコプター1の状況に応じて、作業装置の作動や機体の飛行に制限をかけて作業不能(作業禁止)とし、または、作業装置の作動や機体の飛行にかけられた制限を解除して作業可能(作業許可)とする機能」を指し、監視装置7の制御部42に格納されたプログラムに基づいて達成される。
本実施例の監視装置7は、GPSにより取得した機体の位置に係る位置情報を無人ヘリコプター1から受信し、該位置情報と、予め監視装置7に設定された無人ヘリコプター1の作業範囲と、を比較することにより、機体が作業範囲内または作業範囲外のいずれにあるかを判定し、無人ヘリコプター1が該作業範囲内にある場合には、薬剤散布作業を許可する作業許可信号を無人ヘリコプター1に送信する。
無人ヘリコプター1の機体制御部6は、監視装置7から作業許可信号を受信している間(または、一度作業許可信号を受信してから後述する作業禁止信号を次に受信するまで)は、無線操作手段80または作業専用無線操作手段81からの操作信号に基づいて薬剤散布装置5を作動させる(薬剤散布作業を行う)ことが可能である。以後、この状態を「作業可能」の状態という。
【0095】
一方、監視装置7は、該位置情報と、予め監視装置7に設定された無人ヘリコプター1の作業範囲と、を比較することにより、機体が作業範囲内または作業範囲外のいずれにあるかを判定し、無人ヘリコプター1が該作業範囲外にある場合には、薬剤散布作業を禁止する作業禁止信号を無人ヘリコプター1に送信する。
無人ヘリコプター1の機体制御部6は、監視装置7から作業禁止信号を受信している間(または、一度作業禁止信号を受信してから作業許可信号を次に受信するまで)は、「作業不能」の状態となる。
ここで、「作業不能」状態の具体例としては、(1)無線操作手段80または作業専用無線操作手段81により薬剤散布装置5を作動させる旨の操作信号を無人ヘリコプター1に送信しても機体制御部6が当該操作信号を無視することにより薬剤散布装置5が作動しない状態、(2)無線操作手段80または作業専用無線操作手段81により機体の高度を上昇させる旨の操作信号を無人ヘリコプター1に送信しても機体制御部6が当該操作信号を無視し、無人ヘリコプター1が所定の低い高度でホバリングする状態(薬剤散布作業を行うための高度まで無人ヘリコプター1を上昇させることができない状態)、(3)その場で地上に着陸し、その後エンジン2を停止する、等が挙げられる。
【0096】
また、本実施例の無人ヘリコプター1は、例えば監視装置7と送受信可能な距離以上に離れた位置に移動した場合等、監視装置7との送受信が不能となった場合にも同様に「作業不能」となる。
【0097】
このように構成することは、以下の如き利点を有する。
すなわち、無人ヘリコプター1は、予め設定された作業範囲内にある場合のみ薬剤散布作業を行うことができるので、当該作業範囲外で誤って薬剤散布作業を行うことを防止することが可能である。
また、無人ヘリコプター1が予め設定された作業範囲の外にある場合には薬剤散布作業を行うことができないので、仮に無人ヘリコプターの機体を盗んだとしても、その後で薬剤散布作業に用いることができず、盗難を抑止することが可能である。
【0098】
また、監視装置7は、無人ヘリコプター1が作業範囲外にあることを、無線操作手段80、作業専用無線操作手段81および監視装置7の少なくとも一つに設けられた表示部(例えば、液晶画面、モニター等)に表示することが可能である。
【0099】
このように構成することにより、作業者は無人ヘリコプター1が作業範囲外にあることを直ちに認識することが可能であり、作業性が向上する。
【0100】
さらに、別実施例として、監視装置7は、GPSにより取得した機体の位置に係る位置情報を無人ヘリコプター1から受信し、該位置情報と、予め監視装置7に設定された無人ヘリコプター1の作業範囲と、を比較することにより、機体が作業範囲内または作業範囲外のいずれにあるかを判定し、無人ヘリコプター1が該作業範囲外にある場合には、無人ヘリコプター1を「作業不能」状態にせずに、無人ヘリコプター1が作業範囲外にあることを無線操作手段80、作業専用無線操作手段81および監視装置7の少なくとも一つに設けられた表示部(例えば、液晶画面、モニター等)に表示する構成とすることも可能である。
【0101】
このように構成することにより、監視装置7が故障して無人ヘリコプター1との間で送受信不能となった場合や、無人ヘリコプター1が誤って作業範囲外に移動してしまった場合でも、無人ヘリコプター1による作業を中断せずに継続して行うことが可能である。
【0102】
また、無人ヘリコプター1は、使用しないときには機体制御部6への電力供給を停止する主電源の他に、所定の時間経過毎に一時的に機体制御部6への電力供給を行うバックアップ電源(図示せず)を具備し、該バックアップ電源により機体制御部6に電力供給が行われている間に、GPSにより機体の位置情報(この場合の位置情報は、基準局である監視装置7からのデータが取得できない状況下で無人ヘリコプター1の位置を求めることが想定されるため、多少位置精度が落ちる可能性がある)を取得し、該取得した位置情報を、地上の通信手段90(地上に設置される携帯電話用の固定式通信アンテナ、電気通信回線(例えばインターネット)、電話回線等)を通じて監視装置7に送信する。
【0103】
このように構成することにより、無人ヘリコプター1の機体が監視装置7と直接送受信できない位置まで移動した場合でも、作業者は無人ヘリコプター1の機体の位置を把握することが可能である。
すなわち、機体を紛失した場合や、盗難に遭った場合でも容易に機体の位置を把握することが可能であり、作業性に優れるとともに盗難に対する抑止力が向上する。
【0104】
以下では、図6を用いて、無人ヘリコプター1の機体識別方法の第一実施例について説明する。なお、図6においては便宜上無人ヘリコプター1の構成要素を一部省略しているが、基本的には図3に示す構成と略同じである。
機体識別方法の第一実施例においては、無人ヘリコプター1は、機体に固有の情報(いわゆるID情報)である第一識別情報を具備している。当該第一識別情報により、自他を識別する(機体を特定する)ことが可能である。なお、第一識別情報は自他識別可能な情報であれば良く、数字や文字の配列でも、他の形式でも良い。
該第一識別情報は無人ヘリコプター1の機体制御部6にデータとして格納されている。該第一識別情報は特定のパスワードを入力する等の操作を行わない限り外部から交換する(書き換える)ことができないように構成される。
【0105】
図6に示す如く、機体識別方法の第一実施例における無線操作手段80は、主に制御部80a、操作部80b、操作用送信アンテナ80c、通信アンテナ80d、表示部80e等で構成される。
【0106】
制御部80aは無線操作手段80の動作全般を制御するものであり、具体的にはCPUやROM等で構成される。無人ヘリコプター1が具備する第一識別情報に対応する情報である第二識別情報は、制御部80aにデータとして格納されている。該第二識別情報は特定のパスワードを入力する等の操作を行わない限り外部から交換する(書き換える)ことができないように構成される。結果として、無線操作手段80は第二識別情報を具備することとなる。
なお、第二識別情報は自他識別可能な情報であれば良く、数字や文字の配列でも、他の形式でも良い。
【0107】
操作部80bは具体的にはレバーやボタン等で構成され、作業者により操作される。当該レバーやボタン等はそれぞれ無人ヘリコプター1に具備されるアクチュエータ群(エンジン制御サーボ10、左右傾斜サーボ11、前後傾斜サーボ12、左右旋回サーボ13、作業用サーボ14、薬剤散布装置5の開閉弁60のソレノイド74等)に対応する。
例えば、操作部80bを構成するレバーの一つを所定の操作量だけ操作する(所定の角度傾倒させる)と、制御部80aは該レバーの操作量(傾倒角度)を検知し、該検知したレバーの操作量に基づいて、当該レバーに対応する無人ヘリコプター1のアクチュエータを操作するための信号(操作信号)を送信する。
【0108】
操作用送信アンテナ80cは前記操作信号を無人ヘリコプター1に送信するためのアンテナである。
通信アンテナ80dは、無人ヘリコプター1の監視用通信アンテナ33および監視装置7の地上側通信アンテナ41との間で種々の情報を送受信するためのアンテナである。
このように構成することにより、無人ヘリコプター1、無線操作手段80および監視装置7は種々の情報を共有することが可能である。
【0109】
表示部80eは、無線操作手段80が無人ヘリコプター1および監視装置7から取得した種々の情報、または無線操作手段80自身の種々の情報を表示するものである。表示部80eは具体的には液晶表示画面やランプ等で構成される。
【0110】
無線操作手段80は、無人ヘリコプター1を操作するための信号である操作信号と、自己の第二識別情報とを、操作用送信アンテナ80cにより合わせて無人ヘリコプター1に送信する。
無人ヘリコプター1の機体制御部6は、無線操作手段80から操作信号とともに受信した第二識別情報が、機体に固有の第一識別情報に対応するものであるか否かを判定する。
その結果、当該第二識別情報が機体に固有の第一識別情報に対応する場合には、該無線操作手段80の操作信号に基づいて無人ヘリコプター1のアクチュエータ群等を作動させる。また、当該第二識別情報が機体に固有の第一識別情報に対応しない(すなわち、別の機体に対応する無線操作手段からの操作信号である)場合には該操作信号を無視する(該無線操作手段の操作信号に基づいて無人ヘリコプター1のアクチュエータ群等を作動させない)。
さらに、無人ヘリコプター1の機体制御部6は、第二識別情報を伴わない操作信号についても無視するように構成されている。
【0111】
このように構成することは、以下の如き利点を有する。
すなわち、無人ヘリコプター1は、特定の(第一識別情報に対応する第二識別情報を送信する)無線操作手段80によってのみ操作可能であるため、同じ周波数帯の無線電波を用いて複数台の無人ヘリコプターを混信させることなく使用することが可能である。言い換えれば、混信により操作不能となる事態を防止することが可能であるとともに、複数台の無線操作手段により一台の無人ヘリコプターを操作するという誤った使用方法を防止することが可能である。
また、無人ヘリコプター1の機体が盗難に遭った場合でも、対応する無線操作手段80以外の無線操作手段では該無人ヘリコプター1を操作することができない(無人ヘリコプター1を作業に使用することができない)。そのため、無人ヘリコプター1の機体の盗難を防止することが可能である。
【0112】
機体識別方法の第一実施例における無人ヘリコプター1は、前記第一識別情報に対応する第二識別情報を受信できないとき(電波障害が起こった場合や、無人ヘリコプター1が無線操作手段80から遠く離れた場合等)は、無人ヘリコプター1はその場でホバリング状態を保持する(機体の位置、地上からの高さおよび機首の方向を略一定に保持した状態で空中に浮遊する)。
このように構成することにより、無人ヘリコプター1が操作不能となっても、直ちに墜落するという事態を回避することが可能である。
【0113】
さらに、機体識別方法の第一実施例における無人ヘリコプター1は、第一識別情報に対応する第二識別情報を受信できないことによりホバリング状態となった場合、当該ホバリング状態が所定時間(例えば数分)継続した場合、または、エンジン2の燃料の残量が所定量以下となった場合には降下し、着地後エンジン2を停止する。
このように構成することにより、無人ヘリコプター1が操作不能となっても、機体を破損させることなく着地させることが可能である。
【0114】
なお、機体識別方法の第一実施例における監視装置7の制御部42は、無人ヘリコプター1の具備する第一識別情報に対応する第二識別情報をデータとして格納している。これは、監視装置7が優先操作信号と当該第二識別情報とを合わせて送信しなければ無人ヘリコプター1はこれを無視するためである。
【0115】
以下では、図7を用いて、無人ヘリコプター1の機体識別方法の第二実施例について説明する。図7においては便宜上無人ヘリコプター1の構成要素を一部省略しているが、基本的には図3に示す構成と略同じである。
機体識別方法の第二実施例における無線操作手段80は、操作用送信アンテナ80cにより操作信号とともに第二識別情報を無人ヘリコプター1に送信するという点では前記機体識別方法の第一実施例と共通している。
【0116】
機体識別方法の第二実施例が機体識別方法の第一実施例と異なる点は、無線操作手段80自体は第二識別情報を具備しておらず、無線操作手段80に着脱可能に装着される鍵装置82が第二識別情報を具備している点である。鍵装置82はその内部にROM等の記憶部82aを具備しており、該記憶部82aには第二識別情報がデータとして格納されている。該記憶部82aに格納されている第二識別情報は特定のパスワードを入力する等の操作を行わない限り外部から交換する(書き換える)ことができないように構成される。鍵装置82を無線操作手段80に装着すると無線操作手段80の制御部80aと鍵装置82とが接続される。
無線操作手段80の制御部80aは、無線操作手段80に鍵装置82が装着されている時のみ、鍵装置82の記憶部82aに格納されている第二識別情報を取得し、操作用送信アンテナ80cにより操作信号と第二識別情報とを合わせて無人ヘリコプター1に送信することが可能である。
なお、無線操作手段80の制御部80aは、鍵装置82を取り外すと取得していた第二識別情報を失い、無人ヘリコプター1に第二識別情報を送信することが不可能となる。
【0117】
無人ヘリコプター1の機体制御部6は、無線操作手段80から操作信号とともに受信した第二識別情報が、機体に固有の第一識別情報に対応するものであるか否かを判定する。
その結果、当該第二識別情報が機体に固有の第一識別情報に対応する場合には、該無線操作手段80の操作信号に基づいて無人ヘリコプター1のアクチュエータ群等を作動させる。また、当該第二識別情報が機体に固有の第一識別情報に対応しない(すなわち、別の機体に対応する無線操作手段からの操作信号である)場合には、無線操作手段80の操作信号を無視する(該無線操作手段80の操作信号に基づいて無人ヘリコプター1のアクチュエータ群等を作動させない)。
さらに、鍵装置82を取り外した状態の無線操作手段80からの操作信号を無人ヘリコプター1の機体制御部6が受信した場合は、該操作信号は第二識別情報を伴っていないため、機体制御部6は当該操作信号を無視する。
【0118】
このように構成することは、以下の如き利点を有する。
すなわち、無人ヘリコプター1は特定の(第一識別情報に対応する第二識別情報を具備する鍵装置82が装着され、該第二識別情報を送信可能な)無線操作手段80によってのみ操作可能であるため、同じ周波数帯の無線電波を用いて複数台の無人ヘリコプターを混信させることなく使用することが可能である(言い換えれば、混信により操作不能となる事態を防止することが可能である)。
また、無人ヘリコプター1の機体が盗難に遭った場合でも、鍵装置82が装着された無線操作手段80以外の無線操作手段では該無人ヘリコプター1を操作することができない。
さらに、作業者が鍵装置82を無線操作手段80から取り外して別途管理しておけば、無人ヘリコプター1の機体と無線操作手段80の両方が盗難に遭った場合でも、鍵装置82を装着していない無線操作手段80は該無人ヘリコプター1を操作することができない(無人ヘリコプター1を作業に使用することができない)。そのため、無人ヘリコプター1の機体の盗難を防止することが可能である。
【0119】
機体識別方法の第二実施例における無人ヘリコプター1は、前記第一識別情報に対応する第二識別情報を受信できないとき(電波障害が起こった場合や、無人ヘリコプター1が無線操作手段80から遠く離れた場合等)は、無人ヘリコプター1はその場でホバリング状態を保持する(機体の位置、地上からの高さおよび機首の方向を略一定に保持した状態で空中に浮遊する)。
このように構成することにより、無人ヘリコプター1が操作不能となっても、直ちに墜落するという事態を回避することが可能である。
【0120】
さらに、機体識別方法の第二実施例における無人ヘリコプター1は、第一識別情報に対応する第二識別情報を受信できないことによりホバリング状態となった場合、当該ホバリング状態が所定時間(例えば数分)継続した場合、または、エンジン2の燃料の残量が所定量以下となった場合には降下し、着地後エンジン2を停止する。
このように構成することにより、無人ヘリコプター1が操作不能となっても、機体を破損させることなく着地させることが可能である。
【0121】
なお、機体識別方法の第二実施例における監視装置7の制御部42は、無人ヘリコプター1の具備する第一識別情報に対応する第二識別情報をデータとして格納している。これは、監視装置7が優先操作信号と当該第二識別情報とを合わせて送信しなければ無人ヘリコプター1はこれを無視するためである。
【0122】
以下では、図8を用いて、無人ヘリコプター1の機体識別方法の第三実施例について説明する。図8においては便宜上無人ヘリコプター1の構成要素を一部省略しているが、基本的には図3に示す構成と略同じである。
無人ヘリコプター1は、機体を識別するための固有の情報である第一識別情報を具備している。より具体的には、該第一識別情報は無人ヘリコプター1の機体制御部6にデータとして格納されている。
また、無人ヘリコプター1には鍵装置83が着脱可能に装着される。鍵装置83はその内部にROM等の記憶部83aを具備しており、該記憶部83aには第二識別情報がデータとして格納されている。該記憶部83aに格納されている第二識別情報は特定のパスワードを入力する等の操作を行わない限り外部から交換する(書き換える)ことができないように構成される。鍵装置83を無人ヘリコプター1に装着すると機体制御部6と鍵装置83とが接続される。
【0123】
機体制御部6は、無人ヘリコプター1に鍵装置83が装着されている時のみ当該鍵装置83に格納されている第二識別情報を取得することが可能であり、無人ヘリコプター1から鍵装置83を取り外すと機体制御部6内の第二識別情報を失う。
【0124】
機体制御部6は、鍵装置83から取得した第二識別情報が、機体に固有の第一識別情報に対応するものであるか否かを判定する。
その結果、当該第二識別情報が機体に固有の第一識別情報に対応する場合には、無線操作手段80の操作信号に基づいて無人ヘリコプター1のアクチュエータ群等を作動させる。また、当該第二識別情報が機体に固有の第一識別情報に対応しない(機体に対応しない鍵装置を装着した)場合には、無線操作手段80の操作信号を無視する(該無線操作手段80の操作信号に基づいて無人ヘリコプター1のアクチュエータ群等を作動させない)。
さらに、無人ヘリコプター1から鍵装置83を取り外した場合には、機体制御部6は第二識別情報を取得することができず、このときには無人ヘリコプター1(より厳密には、機体制御部6)は無線操作手段80からの操作信号を無視するように構成される。
【0125】
このように構成することは、以下の如き利点を有する。
すなわち、無人ヘリコプター1を使用しない時に作業者が鍵装置83を無人ヘリコプター1から取り外して別途管理しておけば、無人ヘリコプター1の機体と無線操作手段80の両方が盗難に遭った場合でも、当該無人ヘリコプター1を作業に使用することができない。そのため、無人ヘリコプター1の機体の盗難を防止することが可能である。
【0126】
以下では、図9を用いて、無人ヘリコプター1の機体識別方法の第四実施例について説明する。図9においては便宜上無人ヘリコプター1の構成要素を一部省略しているが、基本的には図3に示す構成と略同じである。
無人ヘリコプター1は、機体を識別するための固有の情報である第一識別情報を具備している。より具体的には、該第一識別情報は無人ヘリコプター1の機体制御部6にデータとして格納されている。
機体識別方法の第四実施例においては、無線操作手段80とは別体の発信装置84を用意する。図9に示す如く、発信装置84は、主に制御部84a、送信アンテナ84b等で構成される。
【0127】
制御部84aは発信装置84の動作全般を制御するものであり、具体的にはCPUやROM等で構成される。無人ヘリコプター1が具備する第一識別情報に対応する情報である第二識別情報は、制御部84aにデータとして格納されている。該第二識別情報は特定のパスワードを入力する等の操作を行わない限り外部から交換する(書き換える)ことができないように構成される。結果として、発信装置84は第二識別情報を具備することとなる。
【0128】
送信アンテナ84bは制御部84aがデータとして格納している第二識別情報を無人ヘリコプター1に送信するためのアンテナである。
【0129】
無人ヘリコプター1(より厳密には、機体制御部6)は、発信装置84から受信した第二識別情報が、機体に固有の第一識別情報に対応するものであるか否かを判定する。
その結果、当該第二識別情報が機体に固有の第一識別情報に対応する場合には、該無線操作手段80の操作信号に基づいて無人ヘリコプター1のアクチュエータ群等を作動させる。また、当該第二識別情報が機体に固有の第一識別情報に対応しない(発信装置が機体に対応しない)場合には該操作信号を無視する(該無線操作手段80の操作信号に基づいて無人ヘリコプター1のアクチュエータ群等を作動させない)。
さらに、無人ヘリコプター1が発信装置84から第二識別情報を受信していないとき(例えば発信装置84の電源がオフになっている場合等)に操作信号を受信した場合にも、無人ヘリコプター1(より厳密には、機体制御部6)は該操作信号を無視する。
【0130】
このように構成することは、以下の如き利点を有する。
すなわち、作業者は発信装置84を別途管理しておけば、無人ヘリコプター1の機体および無線操作手段80が盗難に遭った場合でも、発信装置84からの第二識別情報を受信できない状態では無人ヘリコプター1を操作することができない(無人ヘリコプター1を作業に使用することができない)。そのため、無人ヘリコプター1の機体の盗難を防止することが可能である。
【0131】
機体識別方法の第四実施例における無人ヘリコプター1は、前記第一識別情報に対応する第二識別情報を受信できないとき(電波障害が起こった場合や、無人ヘリコプター1が無線操作手段80から遠く離れた場合等)は、無人ヘリコプター1はその場でホバリング状態を保持する(機体の位置、地上からの高さおよび機首の方向を略一定に保持した状態で空中に浮遊する)。
このように構成することにより、無人ヘリコプター1が操作不能となっても、直ちに墜落するという事態を回避することが可能である。
【0132】
さらに、機体識別方法の第四実施例における無人ヘリコプター1は、第一識別情報に対応する第二識別情報を受信できないことによりホバリング状態となった場合、当該ホバリング状態が所定時間(例えば数分)継続した場合、または、エンジン2の燃料の残量が所定量以下となった場合には降下し、着地後エンジン2を停止する。
このように構成することにより、無人ヘリコプター1が操作不能となっても、機体を破損させることなく着地させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】無人ヘリコプターの左側面図。
【図2】無人ヘリコプターの正面図。
【図3】無人ヘリコプターの監視システムを示す模式図。
【図4】薬剤散布装置の全体構成を示す図。
【図5】開閉弁の側面一部断面図。
【図6】機体識別方法の第一実施例を示す模式図。
【図7】機体識別方法の第二実施例を示す模式図。
【図8】機体識別方法の第三実施例を示す模式図。
【図9】機体識別方法の第四実施例を示す模式図。
【図10】従来の薬剤散布装置の全体構成を示す図。
【符号の説明】
【0134】
1 無人ヘリコプター
5 薬剤散布装置(作業装置)
7 監視装置
80 無線操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業を行うための作業装置を具備し、無線操作手段により操作される無人ヘリコプターの監視装置において、
GPSにより取得した機体の位置に係る位置情報を取得し、
該位置情報と、予め設定された作業範囲と、を比較することにより機体が作業範囲内または作業範囲外のいずれにあるかを判定し、
無人ヘリコプターが該作業範囲内にある場合には、該所定の作業を許可する作業許可信号を無人ヘリコプターに送信して作業可能とし、
無人ヘリコプターが該作業範囲外にある場合には、該所定の作業を禁止する作業禁止信号を無人ヘリコプターに送信して作業不能とすることを特徴とする無人ヘリコプターの監視装置。
【請求項2】
前記無人ヘリコプターとの間で送受信不能となった場合には、無人ヘリコプターは作業不能となることを特徴とする請求項1に記載の無人ヘリコプターの監視装置。
【請求項3】
無人ヘリコプターが該作業範囲外にあることを、無線操作手段および監視装置の少なくとも一方に設けられた表示部に表示可能としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無人ヘリコプターの監視装置。
【請求項4】
所定の作業を行うための作業装置を具備し、無線操作手段により操作される無人ヘリコプターの監視装置において、
GPSにより取得した機体の位置に係る位置情報を取得し、
該位置情報と、予め設定された作業範囲と、を比較することにより機体が作業範囲内または作業範囲外のいずれにあるかを判定し、
無人ヘリコプターが該作業範囲外にあることを、無線操作手段および監視装置の少なくとも一方に設けられた表示部に表示可能としたことを特徴とする無人ヘリコプターの監視装置。
【請求項5】
前記無人ヘリコプターは、所定時間経過毎に電気通信回線または電話回線を通じて位置情報を監視装置に送信することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の無人ヘリコプターの監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−1486(P2006−1486A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181981(P2004−181981)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)