説明

無害な臭素化剤の調製方法

コスト的に効果的な方法が、アルカリ性の臭化物を、アルカリ性の臭素酸塩に対して、2:1の化学量論的比で含む、安定で無害な臭素化剤の製造のために、記述される。本方法は、臭素回収プラントから得られたアルカリ性の臭素の中間的な混合物を、強アルカリの存在下に塩素ガスと反応させ、臭化物イオンを臭素酸塩イオンへ酸化することからなる。本臭素化剤は、置換による芳香族化合物の臭素化に有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無害な臭素化剤の調製のための改良された方法に関するものである。本発明は、臭素回収プラントから得られたアルカリ性の中間的な臭化物−臭素酸塩混合物からの臭素化剤の調製に関するものである。そのようにして得られた試薬は、取り扱いに便利で、無害で、輸送が容易であり、多くの芳香族臭素化合物の調製に効果的に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
液体臭素は、置換反応により、各種の臭素化された化合物の調製に用いられる。これは、i)テトラブロモビスフェノール−A(TBBPA)−難燃剤、ii)エオシン−化粧品(personal care products)に用いられる顔料、iii)臭化アセトニトリド−鎮痛剤及び解熱剤、iv)トリブロモフェノール−殺菌剤、防かび剤、消火液、難燃剤の製造に用いられる中間体、v)2−ブロモ−4−ニトロアセトアニリド−ニメンスライド(nimenslide)の調製に用いられる医薬中間体、等の商業的に重要な製品を含む。しかしながら、液体臭素は本来有害であり、その製造、輸送及び利用には厳格な注意が必要とされる。これと並んで、特殊な装置が、液体臭素を取り扱うために必要とされる。さらに、式1に示される置換反応のために、臭素原子の半分が、終わりには臭化水素酸としての廃棄物になる。
【0003】
R−H + Br → RBr + HBr (1)
ここで、Rは芳香族基である。
【0004】
液相中における、フェノールと液体臭素との相互作用によるトリブロモフェノールの製造が報告されている(非特許文献1参照)。この方法では、臭素原子の50%以上が、結局副生成物としての臭化水素酸になっている。この方法の主な欠点は、有害で腐食性の液体臭素を用いることである。さらに、この方法は、液体臭素を取り扱うための特殊な装置を必要とする。液体臭素の効果は50%に過ぎない。
【0005】
ビスフェノール−Aの液体臭素との反応によるテトラブロモビスフェノール−Aの製造が開示されている(特許文献1参照)。ここで、過酸化水素が酸化剤として用いられ、未反応のビスフェノール−Aと反応するであろう臭素を遊離する副生成物として形成される臭化水素酸を酸化する。この方法の主な欠点は、有害で腐食性の液体臭素を用いることである。さらに、酸化剤の添加は、反応時間と同様に単位操作を増加する。
【0006】
(i)2.24モルの3−メチル−チオフェンと、(ii)0.0165モルの過酸化ベンゾイルを乾燥ベンゼン700mlに加えたものとの別々に調製された溶液に、2モルのN−ブロモサクシンイミドを加え、反応混合物を撹拌下、還流状態に保持することによる、3−ブロモメチル−チオフェンの製造が報告されている(非特許文献2参照)。この方法では、ベンゼンの蒸発による生成物の回収の前に、サクシンイミドを完全に添加した後、反応混合物は5℃以下に冷却される。この方法の欠点は、反応物、すなわちN−ブロモサクシンイミドが、高アルカリ性溶液中、5℃以下の温度で、液体臭素を用いて製造されることである。反応混合物を5℃以下に冷却することは、また、その方法をコスト集約的(cost-intensive)にする。液体臭素は腐食性であり、それを取り扱うために特殊な装置を必要とする。さらに、ベンゼンは発ガン性物質であり、その蒸発による回収は、その方法を複雑にし、特殊な注意を必要とする。
【0007】
取り扱いが容易な臭素化剤は公知だが、より選択的な変質に主として用いられ、そこで臭素はより効果的でない。活性な臭素化剤(brominating species) の製造が開示されている(非特許文献3参照)。この方法において、強酸、すなわちHSOを、化学量論的量の臭化ナトリウムと、ニトロベンゼン、安息香酸、ベンズアルデヒド、4−ニトロフルオロベンゼン及び4−フルオロ安息香酸のような非活性化置換体とを含む試薬の撹拌された水性溶液または水性スラリーに、ゆっくりと添加し、その間、40〜100℃の範囲の温度に維持する。この方法の欠点は、臭化ナトリウムが高価であり、その使用は、液体臭素等により影響されうる、より定型的な臭素化反応において、正当化することができない。さらに、硫酸及び非活性化置換体の使用は、高温で、健康に害になる傾向がある。
【0008】
別々に、アセトアニリド(0.232モル)の冷氷酢酸溶液を調製し、この溶液を臭化ピリジン過臭化物(pyridiniumubromideperbromide)(0.12モル)の温氷酢酸40ml溶液と反応させることによるブロモアセトアニリドの製造が開示されている(非特許文献4参照)。結果として得られる混合物を、室温で30分間放置し、その後、2モルの飽和硫酸水素ナトリウム溶液を水性溶液に加えた。結果として得られた塊をろ過し、水洗して、最後に温95%水性エタノールから再結晶し、p−ブロモアセトアニリドを得た。この方法の欠点は、その製造において、臭素化剤が、腐食性があり取り扱いが困難な液体臭素及びを臭化水素酸を必要とすることである(非特許文献5参照)。その試薬は、液体臭素よりも高価である。その方法は、多段階を含み、費用便益をより少なくする。
【0009】
1〜2モルパーセントの五酸化バナジウム触媒の存在下、アルカリ性の臭化物または臭化水素酸と、過酸化水素とを用いる芳香族化合物の触媒臭素化が開示されている(非特許文献6参照)。この方法の欠点は、化学量論的量以上の過酸化水素を必要とし、反応が触媒を要することである。このような触媒規約(protocols) は、一般的に、酸化的不安定性、高い精製コスト、厳格なpHと温度との制御等のいくつかの欠点を有する。さらに、これらの反応は、満足のいく活性を確保するために、化学量論的量の金属を必要とする。
【0010】
有機化合物が、高純度かつ高収率で、パラ位で選択的に臭素化される臭素化方法が開示されている(特許文献2参照)。この臭素化方法において、塩化臭素溶液が臭素化剤として用いられ、0〜4℃の雰囲気温度に維持された芳香族化合物溶液に、撹拌下、制御された速度で、ゆっくり添加される。反応の終わりに、反応は、飽和硫酸ナトリウム溶液の数滴により終了され(quenched)、通常の有機溶媒で稀釈される。この方法の不都合は、臭素化剤、すなわち塩化臭素の製造が、まだ、有害な液体臭素と塩素ガスとを特定の条件下で必要とすることである。
【0011】
芳香族置換反応のために適した無害な臭素化剤の製造が報告されている(特許文献3参照)。この方法において、商業的に入手できる4%次亜塩素酸塩溶液の計算された量を、工業的に得られるアルカリ性臭素混合物に加え、所望の反応の完了のために24時間放置し、任意に続けて蒸発することにより、固形の臭素化剤を得る。この方法の欠点は、臭素酸塩に対する所望の臭化物の比を達成するために必要とされる次亜塩素酸塩溶液の容積が大きく、方法のコストを不必要に増大し、あるいは臭素化反応を行うために大きな容器を必要とすることである。臭化物と次亜塩素酸塩との反応と、それに続いて起こる反応とは、それらが高いpHに依存するので、緩慢である。さらに、構成部分としてかなりなレベルでの塩素酸塩イオンを含む次亜塩素酸塩溶液は、酸性溶液中で強い酸化剤であり、臭素化反応に関与するおそれがあり、生成物の品質を損なう望まれていない副生成物を生成する。
【特許文献1】米国特許第5475153号明細書(1995)、S.Armstrong
【特許文献2】米国特許第5817888号明細書(1998)、H.Y.Elnagar
【特許文献3】PCT/IB02/00386、2002年1月25日付け、出願係属中、G.Ramachandraiah, et al.
【非特許文献1】C.A.Buechler and D.E.Pearson, "Survey of Organic syntheses, Chapter 7", Wiley-Inter Science, New York, 1970
【非特許文献2】Z.E.Jolles, "Bromine and its Compounds", Ernest Benn Ltd., London, 1966, p.394
【非特許文献3】A.Groweiss, "Organic Process & Development", 2000, 4, 30-33
【非特許文献4】P.C.Merker et al, "J.Chem. Ed. 26", 1949, p.613
【非特許文献5】L.F.Fieser and M.Fieser, "Reagent for Oraganic Chemistry Vol.1", John Wiley, New York, 1967, p.967
【非特許文献6】G.Rothenberg and J.H.Clark, "Organic Process & Development", 2000, 4, 270-274
【非特許文献7】K.Kumar and D.W.Margerum, "Inorg. Chem.", 1987, 26, 2706-2711
【非特許文献8】A.I.Vogel, "A text boook of Quantitative Inorganic Analysis, 3rd Ed.", Longman, 1962, p.349
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主な目的は、上述の欠点を不要にする、環境に優しい臭素化剤のための改良された方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、臭素化剤の製造において、腐食性の液体臭素の使用を免除することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、臭素回収プラントから得られた水性のアルカリ性の臭素の中間的な混合物から臭素化剤を製造することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、芳香族置換反応において、臭素原子の効率を最大にするために、アルカリ性の臭素混合物中の臭化物:臭素酸塩の比を5:1から2:1まで増大することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、廃液中に排出される臭素が、<0.5パーセントであるように、最小限にする方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、試薬中の臭化物の臭素酸塩に対する比を化学量論的な2:1に達するように、アルカリ性媒体中の臭化物イオンを臭素酸塩イオンに酸化できる、アルカリ性の臭素混合物を通して安価な塩素ガスをパージすることである。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、取り扱い、貯蔵及び輸送を容易にする固形で臭素化剤を得ることである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、本発明の臭素化剤の製造において、室温で反応を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的は、45乃至55重量パーセントの範囲の活性臭素成分により、無害な臭素化剤を製造するための改良された方法に指向される。臭化物の臭素酸塩に対する比が4:1乃至5:1の範囲である、臭素回収プラントから得られたアルカリ性の臭素の中間的な混合物が用いられる。アルカリ性の臭素の均一混合物は、アルカリの存在下、商業的塩素ガスによりパージされる。臭化物の臭素酸塩に対する全体的な2:1モル化合物は、新しいアルカリ性の臭素の混合物での適切な稀釈により達成される。酸化及び稀釈工程の間、反応温度は20乃至40℃の間に維持される。本発明の方法は、迅速、安全及び費用対効果に優れ、取り扱い容易である反応性の高い臭素化剤を与える。個体生成物は、蒸発により回収され、それ以上の精製工程の必要を不要にする。この臭素化剤は、有機臭素化合物を製造するための各種芳香族基質の臭素化に有用である。
【0021】
従って、本発明は、
(i)脱イオン水にアルカリを溶解し、
(ii)0.5乃至2.0倍v/vの脱イオン水に臭化物イオン源を分散し、
(iii)上記工程(ii)の溶液に、100から1000ml/分の範囲の速度で、6乃至8時間の間、または褐色の蒸気が放出されるまで、塩素ガスまたは煙管(flue)塩素ガスをパージし、
(iv)透明な混合物溶液が得られるまで、2乃至3倍(v/v)のアルカリ性臭素混合物及び残りの脱イオン水で混合物を稀釈し、
(v)混合物を蒸発させて固体生成物を得て、生成物を55乃至80℃の範囲の温度で乾燥することからなる、臭化物イオン源の臭素酸塩イオンへの酸化による無害な臭素化剤の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の一態様において、(i)及び(ii)の混合物は、アルカリ塩の溶解の間、熱生成を消散させるために、300乃至400rpmで撹拌される。
【0023】
本発明の他の態様において、臭化物イオン源は、臭素回収プラントから得られたアルカリ性の臭素の中間的な混合物からなり、4:1乃至5:1の臭化物の臭素酸塩に対する比を有する。
【0024】
本発明の他の態様において、アルカリは苛性ソーダ溶液からなり、臭化物イオン源の全体の2.5乃至2.8モル/リットルの範囲の濃度で、臭化物イオン源に添加される。
【0025】
本発明のさらに他の態様において、反応混合物の温度は、20乃至40℃の範囲である。
【0026】
本発明のさらに他の態様において、酸化剤は、塩素ガスまたは煙管塩素ガスからなる。
【0027】
本発明のさらに他の態様において、酸化剤は、工程(ii)の混合物に、100から1000ml/分の範囲の速度で、通じられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、臭素回収プラントから得られたアルカリ性の臭素の中間的な混合物等の臭化物イオン源から無害な臭素化剤を製造する方法を提供する。
【0029】
下記の反応(2)に従って、臭化物イオンは、アルカリ性媒体中で、臭素酸塩イオンに直接的に酸化される。この反応で遊離された酸性のプロトンは、反応中に存在するアルカリにより中和される(反応3)。下記の反応(3)は、6乃至8時間の間または褐色の蒸気が放出されるまで、アルカリの量により制御される。
【0030】
最後の反応混合物は、公知の技術により蒸発され、所望の試薬が固形で得られる。
【0031】
下記の反応2に従って、臭化物イオンはアルカリ媒体中で、臭素酸塩イオンに直接的に酸化される。この反応で遊離された酸性のプロトンは、反応中に存在するアルカリにより中和される(反応3)。反応3は、赤味がかかった黄色のアルカリの量により制御され、これは臭化物イオンの、臭素酸塩イオンへの、所望の程度での正しい転換のための特徴的な印である。
【0032】
2Br+6Cl+6HO → 2BrO+12H+12Cl (2)
+ OH → HO (3)
本発明において、上述の反応は、もし必要ならば、三ツ口と冷却浴とを備える5〜10リットルの丸底フラスコ中で実施される。ここで、「冷却法(Cold process)」に基づく臭素回収プラントから得られたアルカリ性の臭素の中間的な混合物は、好ましくは約18から25重量%の臭化物と、約3から7重量%の臭素酸塩と、より好ましくは約20から22重量%の臭化物と、約4から5重量%の臭素酸塩とを含み、臭化物イオン源として用いられる。選択される酸化剤は、商業的に入手できる塩素ガスまたは、何らかの工業、例えば塩素−アルカリ工業からの廃塩素ガスである。
【0033】
本発明に従って、計算された量のアルカリを、撹拌措置を備え、20乃至40℃の温度に保持されている容器に収容された所定容積のアルカリ性の臭化物混合物に加えた。商業的に入手できる塩素ガスを、褐色の蒸気が放出されるまでの間、規制された流速で、この均一混合物にパージし、その間、撹拌下に全体の量を維持した。酸化溶液中で、臭化物の臭素酸塩に対する必要とされる比は、新しいアルカリ性の臭化物混合物での必要な稀釈により得られた。固体で取り扱い容易な臭素化剤は、最後の反応混合物の蒸発により得られ、続いて乾燥され、所望の大きさに粉砕される。
【0034】
水へのアルカリの溶解は、放熱反応である。従って、アルカリ溶液の調製の間、容器を冷却して、室温に維持することが必要である。
【0035】
臭化物の臭素酸塩への酸化速度は、濃縮された塩基性溶液中で速いので、必要とする量の臭化物の転換を得るように、最小の体積のアルカリ性臭素及び脱イオン水に、アルカリを溶解することにより、反応を管理することが好ましく、元々のアルカリ性の臭素混合物を適切な量で稀釈し、臭化物と臭素酸塩との比を2:1に調整する。
【0036】
臭素化剤の調製において、反応温度は、好ましくは約15から75℃まで変動し、より好ましくは雰囲気温度(即ち約20乃至40℃)である。反応速度は、雰囲気温度以下及び大気圧でさえ、一般に迅速である。
【0037】
臭素化剤は、390nmでの吸収を測定し、適切な消光係数(extinction coefficient)(ε、167M−1cm−1の不在及び522M−1cm−1の大過剰の臭化物の存在)を用いることにより、分光光学的に、遊離の臭素を分析(estimating)してその臭素酸塩成分と、臭化物成分とを定量することにより同定される(非特許文献7参照)。標準ヨウ素還元滴定容量分析法(standard iodometric volumetric method)(非特許文献8参照)が、臭素酸塩イオン及び全臭素成分の分析に後続する。
【0038】
本発明は、各種応用に適した、無害で安定な臭素化剤の調製に関するものである。本臭素化剤は、室温での塩素ガスを用いる酸化工程によりアルカリ性の中間的な臭素混合物から調製される。水溶性の固体試薬は、芳香族置換反応に効率よく用いることができ、最大限の臭素原子の効率を達成することができる。本発明の方法は、特殊な装置を必要とせず、有害で腐食性の液体臭素の使用が免除される。本発明において、臭素回収プラントから得られるアルカリ性の中間的な臭素の混合物は、高度の原子有効性を有する固体臭素化剤を調製するために利用される。本発明の進歩性は、(i)臭素回収プラントから得られる中間的な混合物から無害な臭素化剤を調製し、液体臭素の必要を不要にすること、(ii)試薬は雰囲気温度(20〜40℃)で調製され、5℃以下の冷却を必要としないこと、(iii)商業的に入手可能な及び/または煙管塩素ガスが臭化物イオンの臭素酸塩イオンへの酸化に用いられること、(iv)溶液中で他の酸化剤の使用が免除されることにより、アルカリ性の臭素混合物の容積が低減されること、(v)稀釈は、脱イオン水が好んで用いられ、有機溶媒の必要性が免除されることである。
【0039】
次の実施例は説明のために与えられるものであり、従って本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0040】
臭化物の臭素酸塩に対する比が4.4:1であるアルカリ性の臭素混合物(1.0リットル)を、三ツ口丸底フラスコに取り、そこに13.05モルのNaOHを含む2.0リットルの脱イオン水を、撹拌下、25℃で混合した。この反応混合物を、300ml/分の速度で塩素ガスでパージし、その間、温度を25℃に維持し、褐色蒸気が放出されるまで、塩素ガスのパージを続けた。塩素ガスを通じることを停止し、反応混合物を他の容器に移し、そこで、反応混合物を、4リットルのアルカリ性臭素混合物及び0.5リットルの脱イオン水で稀釈し、全体を撹拌下に保持して、さらに10分間続けた。そのようにして形成され、臭化物の臭素酸塩に対する比が2:1である固体の臭素化剤を、公知の技術による水の蒸発により分離し、生成物を70℃で乾燥した。活性臭素成分は、45.3%であることが見出された。
【実施例2】
【0041】
臭化物の臭素酸塩に対する比が4.4:1である、3.0リットルのアルカリ性の臭素混合物を、三ツ口丸底フラスコに取り、そこに26.10モルのNaOHを含む3.5リットルの脱イオン水を、撹拌下、30℃で混合した。この反応混合物を、300cc/分の速度で塩素ガスでパージし、その間、温度を30℃に維持し、褐色蒸気が放出されるまで、塩素ガスのパージを続けた。塩素ガスを通じることを停止し、反応混合物を他の容器に移し、そこで、反応混合物を、7.0リットルのアルカリ性臭素混合物及び0.5リットルの脱イオン水で稀釈し、全体を撹拌下に保持して、さらに10分間続けた。そのようにして形成され、臭化物の臭素酸塩に対する比が2:1である固体の臭素化剤を、公知の技術による水の蒸発により分離し、生成物を70℃で乾燥した。活性臭素成分は、50.3%であることが見出された。
【実施例3】
【0042】
臭化物の臭素酸塩に対する比が4.4:1である、3.0リットルのアルカリ性の臭素混合物を、三ツ口丸底フラスコに取り、そこに26.10モルのNaOHを含む3.5リットルの脱イオン水を、撹拌下、38℃で混合した。この反応混合物を、300cc/分の速度で塩素ガスでパージし、その間、温度を38℃に維持し、褐色蒸気が放出されるまで、塩素ガスのパージを続けた。塩素ガスを通じることを停止し、反応混合物を他の容器に移し、そこで、反応混合物を、7.0リットルのアルカリ性臭素混合物及び0.5リットルの脱イオン水で稀釈し、全体を撹拌下に保持して、さらに10分間続けた。そのようにして形成され、臭化物の臭素酸塩に対する比が2:1である固体の臭素化剤を、公知の技術による水の蒸発により分離し、生成物を70℃で乾燥した。活性臭素成分は、50.3%であることが見出された。
【実施例4】
【0043】
臭化物の臭素酸塩に対する比が4.4:1である、3.0リットルのアルカリ性の臭素混合物を、三ツ口丸底フラスコに取り、そこに26.10モルのNaOHを含む3.5リットルの脱イオン水を、撹拌下、28℃で混合した。この反応混合物を、900cc/分の速度で塩素ガスでパージし、その間、温度を28℃に維持し、褐色蒸気が放出されるまで、塩素ガスのパージを続けた。塩素ガスを通じることを停止し、反応混合物を他の容器に移し、そこで、反応混合物を、7.0リットルのアルカリ性臭素混合物及び0.5リットルの脱イオン水で稀釈し、全体を撹拌下に保持して、さらに10分間続けた。そのようにして形成され、臭化物の臭素酸塩に対する比が2:1である固体の臭素化剤を、公知の技術による水の蒸発により分離し、生成物を70℃で乾燥した。活性臭素成分は、55.0%であることが見出された。
【実施例5】
【0044】
250mlの丸底フラスコ中の、4−ニトロアニリン(1g、7.246ミリモル)を含む5.0mlのジクロロメタンに、1.45mlの12N塩酸及び10mlの脱イオン水を加えた。この反応混合物に、20mlの脱イオン水に溶解された臭素化剤を含む臭素化剤(2.9g)を、28℃で連続的撹拌下に、30乃至45分の時間でゆっくりと加えた。添加完了後、撹拌をさらに15分間続けた。有機層を分離し、ジクロロメタンで抽出した。有機層と有機抽出物を混合し、チオ硫酸ナトリウム溶液及び食塩水で連続的に洗浄した。生成物である2,6−ジブロモ−4−ニトロアニリンを、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、98.7%を得た。生成物を、融点、NMR、IR及び元素分析で同定した。
〔本発明の主な利点〕
1.環境に優しい臭素化剤は、アルカリ性の中間的な臭素の混合物から調製することができ、液体臭素の使用が免除される。
2.塩素ガス及び/または煙管塩素ガスは、酸化剤として用いることができ、次亜塩素酸塩のような他の高価な酸化剤や、その中の塩素酸塩のような不純物の必要性を不要にする。
3.中間的な混合物中に存在する臭化物イオンは、雰囲気温度で酸化されることができる。
4.本試薬を用いる芳香族置換は高度の原子効率で実施されることができる。
5.本試薬は、取り扱いに安全であり、容易に輸送し、保管することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)脱イオン水にアルカリを溶解し、
(ii)0.5乃至2.0倍v/vの脱イオン水に臭化物イオン源を分散し、
(iii)上記工程(ii)の溶液に、100から1000ml/分の範囲の速度で、6乃至8時間の間、または褐色の蒸気が放出されるまで、塩素ガスまたは煙管(flue)塩素ガスをパージし、
(iv)透明な混合物溶液が得られるまで、2乃至3倍(v/v)のアルカリ性臭素混合物及び残りの脱イオン水で混合物を稀釈し、
(v)混合物を蒸発させて固体生成物を得て、生成物を55乃至80℃の範囲の温度で乾燥することからなることを特徴とする臭化物イオン源の臭素酸塩イオンへの酸化による無害な臭素化剤の製造方法。
【請求項2】
(i)及び(ii)の混合物は、アルカリ塩の溶解の間、熱生成を消散させるために、300乃至400rpmで撹拌されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
臭化物イオン源は、臭素回収プラントから得られたアルカリ性の臭素の中間的な混合物からなり、4:1乃至5:1の範囲の臭素酸塩に対する臭化物の比を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
アルカリは苛性ソーダ溶液からなり、臭化物イオン源の全体の2.5乃至2.8モル/リットルの範囲の濃度で、臭化物イオン源に添加されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
反応混合物の温度は、20乃至40℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
酸化剤は、塩素ガスまたは煙管塩素ガスからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
酸化剤は、工程(ii)の混合物に、100乃至1000ml/分の範囲の速度で、通じられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
臭化物イオン源は、雰囲気温度で、工程(i)のアルカリ金属塩溶液に分散され、8乃至12の間のpHに維持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
酸化剤は、所望の比率で、臭化物イオンを臭素酸塩イオンに酸化することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)で得られる混合物は、2乃至3倍(v/v)の中間的な混合物で希釈され、1.9:1乃至2.2:1の範囲の臭化物イオンの臭素酸塩イオンに対する化学量論的比を得ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
混合物を蒸発させて、45乃至55%の間に維持される活性臭素成分を備える固体の臭素化剤を得ることを特徴とする請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2006−525932(P2006−525932A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500180(P2005−500180)
【出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000201
【国際公開番号】WO2004/106227
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)