説明

無機微粒子分散液

【目的】 種々のプラスチック、ガラス、シリコンウエハー、金属等の基材に強固に接着した状態で皮膜を形成することができ、さらに、短時間の熱処理により安定な皮膜を形成できる無機微粒子分散液を提供する。
【解決手段】 不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィン、無機微粒子及び溶剤を含有することを特徴とする無機微粒子分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基材上に回路パターンを形成する方法としてフォトリソグラフによる方法が用いられてきた。この方法には基板上に所望の導体パターンを残してその他の部分をエッチングにより除くサブトラクティブ法、銅を積層していない基材上にネガパターンのメッキレジストを生成し、無電解メッキにより導体パターンを形成するアディティブ法が知られている。これらの回路パターン形成法は煩雑な工程が必要であり、大量の処理廃液が発生することから、近年、印刷を電子部品の製造に応用するプリンタブルエレクトロニクスと呼ばれる技術が注目されており、回路基板又は電子部品を製造する方法として、導電性インク又は導電性ペースト等を基板に直接印刷する方法が検討されている。
【0003】
プリンタブルエレクトロニクスによる方法は、従来のフォトリソグラフによる方法に比べて、マスク作成が不要になる等、回路基板等の作製において製造工程が大幅に簡素化される上、フォトリソグラフによる方法に比べエッチング液等の廃液が発生せず廃棄物の削減にも大きな効果が期待されている。例えば導電性インクによる印刷方法としてはグラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷等が検討されているが、インクジェット印刷では必要な場所に必要な量のインクを塗布するためインクの無駄がなく省エネルギーの製造プロセスとなる。また、グラビア印刷、スクリーン印刷においては高速印刷が可能であり、エネルギー削減が可能となる。
【0004】
このような背景から、プリンタブルな導電性インクが検討されており、例えば銀のナノ粒子をドデシルアミン等の低分子量の分散剤等を用いて有機溶剤中分散させた導電性インク等の技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【0005】
しかし、該溶液は例えば有機溶剤、低分子量の分散剤、及び金属粒子のみからなるため、該溶液を基材に塗布し、溶剤を揮発させた場合、低分子量の分散剤、及び金属粒子からなる皮膜はプラスチック等の基材との密着性又は接着性が低いという問題を有していた。そのため、導電性インクを用いて、例えば絶縁性プラスチックフィルム上に回路形成を行う場合、形成した回路が剥離する等の問題が発生する。
【0006】
また、無水フタル酸等の酸無水物及び/又はドデシルアミン等のアルキルアミン、及び熱硬化型のフェノール樹脂を添加した銀粒子分散ペーストが開示されているが(例えば特許文献2)、この技術においては、基材上に形成された皮膜の硬化に1時間程度かかり、生産性が低いという問題を有していた。
【0007】
プラスチック表面を保護又は加飾するために、プラスチック表面に金属膜を形成する方法としてメッキによる方法(例えば特許文献3)、又は金属の蒸着による方法(例えば特許文献4)が開示されているが、これらの方法では樹脂表面の前処理を必要とする等製造工程が煩雑であり、また蒸着時間が長く生産性が低い等の問題が指摘されている。
【0008】
このようなプラスチック成型体の保護、加飾を行う方法として金属をプラスチック成型体上に蒸着する方法が知られているが、生産性、コストの両面で優れた方法とはいえなかった。
【0009】
以上の理由により、種々のプラスチック、ガラス、シリコンウエハー、金属等の基材に強固に接着した状態で皮膜を形成でき、さらに、短時間の熱処理により安定な皮膜を形成できる無機微粒子分散液が求められていた。
【0010】
【特許文献1】特開2002−299833号公報
【特許文献2】特許第3900248号公報
【特許文献3】特開平5−222578号公報
【特許文献4】特開平5−275828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、種々のプラスチック、ガラス、シリコンウエハー、金属等の基材に強固に接着した状態で皮膜を形成することができ、さらに、短時間の熱処理により安定な皮膜を形成できる無機微粒子分散液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討した結果、無機微粒子を分散させる媒体として、不飽和カルボン酸をグラフトした特定のポリオレフィンを有機溶剤に溶解したポリマー溶液が有効であること、さらに、該溶液に無機微粒子が分散した液を金属、プラスチック等の基材に適切な方法で塗布した後、溶剤を揮発させ、さらに加熱処理することにより該ポリマーと無機微粒子からなる皮膜が形成され、この皮膜が金属、プラスチック等の基材に強固に接着することを見出し本発明に至った。すなわち、本発明は、不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィン、無機微粒子及び溶剤を含有することを特徴とする無機微粒子分散液である。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の無機微粒子分散液は、不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィン、無機微粒子及び溶剤を含有するものであり、不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンを溶剤に溶解させたポリマー溶液に無機微粒子を分散させたものである。
【0015】
本発明の無機微粒子分散液における不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィン(以下、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンという)とは、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフトしたものをいう。
【0016】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、本発明の無機微粒子分散液を基材上に塗布又は印刷した後、溶剤を揮発させた際に基材と接着した状態で皮膜を形成するが、製品外観を良好にし、特に回路形成を行う場合には電気伝導性を向上させるため、140℃に加熱したキシレンに不溶のゲルを含まないことが好ましい。
【0017】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの不飽和カルボン酸のグラフト量は特に制限されないが、充分な接着性を有し、かつ、ポリオレフィンの溶融粘度を適度に維持するため、好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。
【0018】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、後に述べるような原料であるポリオレフィンの種類に従い、例えば、不飽和カルボン酸グラフトポリエチレン、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・プロピレン共重合体、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・ブテン共重合体、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・ヘキセン共重合体、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・酢酸ビニル共重合体、不飽和カルボン酸グラフトポリプロピレン等が挙げられる。
【0019】
不飽和カルボン酸としては、例えば、不飽和モノカルボン酸類及びその誘導体、不飽和ジカルボン酸類及びその誘導体、不飽和ジカルボン酸の酸無水物類及びその誘導体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられ、不飽和モノカルボン酸類の誘導体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸類としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸類の誘導体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の酸無水物類及びその誘導体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上併用しても良い。特に接着性の観点から無水マレイン酸単独又は無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステル類の組み合わせが好ましい。
【0020】
本発明の無機微粒子分散液における無機微粒子としては、該無機微粒子分散液から溶剤が揮発した際に形成される無機微粒子と不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンからなる皮膜が平滑であれば、特に制限がないが、例えば、金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、アルミニウム、鉄、インジウム、マグネシウム、白金、珪素、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、カーボンブラック等が例示され、これら粒子から選ばれる少なくとも1種類の微粒子が例示される。本発明でいう微粒子とは平均粒子径が1nm〜50μmのものをいう。
【0021】
導電性を付与する場合には金、銀、銅等の微粒子が好適に用いられ、また、加飾用途にはアルミニウム、銅、銀等の微粒子が好適に用いられる。無機微粒子の平均粒子径は用途により適宜選択すれば良く、特に制限はないが、導電性を付与する場合にはナノ粒子を用いるのが好ましく、平均粒子径として1〜50nmが好適に用いられる。また、加飾用途では50nm〜50μmの平均粒子径が好適に用いられる。さらに、何れの用途においても必要に応じて異なる平均粒子径の粒子を混合して使用することができる。特に平均粒子径がナノサイズの金属粒子は融点降下現象による自発的融合を起こすことが知られており、この観点から、回路を形成する用途にはできる限り平均粒子径の小さな金属粒子を用いることが好ましい。
【0022】
本発明において、無機微粒子の含有量は目的により適宜変更され得るが、導電性又は表面保護の機能を発現させ、かつ、皮膜強度の低下を防止するためには、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン1重量部に対して、無機微粒子が1〜50重量部であることが好ましく、5〜40重量部であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明の無機微粒子分散液における溶剤としては、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンが溶解する溶剤であれば何ら制限なく用いることができ、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの種類により適宜選択される。溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサノール、ターピネオール等のアルコール類、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロフォルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等の塩素系溶剤、臭化エタン等の臭素系溶剤、モノフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、ジクロロペンタフルオロプロパン等のフッ素系溶剤、ブロモクロロメタン、1,2−ジブロモ−1,1−ジフルオロエタン等の臭素とフッ素を含有する溶剤等が例示されるが、溶剤の揮発による分散液の粘度変化を抑えるため、溶剤の沸点が100℃以上のものが好適に用いられる。これら溶剤は単独で用いても良いし、必要に応じて複数の溶剤を混合使用しても良い。
【0024】
本発明の無機微粒子分散液の粘度は、該分散液を塗布、印刷する方法により適宜選択され得るが、インクジェット印刷では該分散液の粘度として1〜50mPa・sが好適であり、グラビア印刷、オフセット印刷、及びスクリーン印刷の場合には1〜500Pa・sの範囲が好適である。
【0025】
本発明の無機微粒子分散液は、他樹脂、エラストマー又はゴム成分、各種添加剤を含有してもよい。
【0026】
他樹脂としては、例えば、グラフト反応が施されていない上記ポリオレフィン樹脂のみならず、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸−メチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテル−エーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、セルロース、石油樹脂などが挙げられる。必要に応じて、反応性の官能基、又は末端基を有する他の樹脂と本発明の不飽和カルボン酸基とを化学反応させることが可能であり、これら官能基間の物理的相互作用を利用したブレンドが可能である。さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を第三成分として添加し他樹脂との相溶性を向上させる、又は接着性を向上させることも可能である。
【0027】
エラストマー又はゴム成分としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマー(TPE)としてはSBS、SIS等のスチレン系TPE(SBC)、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリマミド系エラストマー(TPA)、シリコーン系TPE、フッ素系TPEが例示される。
【0028】
各種添加剤としては次のものが挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤等が挙げられる。その他安定剤としては有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、充填剤としては、例えば、球状フィラー、板状フィラー、繊維状フィラー等が挙げられる。接着剤としては、例えば、液体および固体ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシクレゾールノボラック、エポキシフェノールノボラックおよびビスフェノールAエポキシ樹脂とエポキシクレゾールノボラックまたはエポキシフェノールノボラックとの混合物、ビスフェノールFエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ架橋剤としては、三フッ化硼素の錯化合物、ジシアンジアミド、ポリアミド類、ポリアミン類等が挙げられる。難燃剤としては、例えば、エチレンビステトラブロモフタールイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、SAYTEX8010、テトラデカブロモジフェノキシベンゼンなどの臭素化系難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、硼酸亜鉛、FIREBRAKE ZBなどの難燃助剤、DECLORANE PLUSなどの塩素化系難燃剤等が挙げられる。滑剤としては、高級脂肪酸金属塩として例えばステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、さらにはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩などが使用できる。その他の添加剤としては、着色剤、天然油、合成油、ワックス、可塑剤、造核剤、加工助剤、ワックス類等が挙げられる。
【0029】
これらの他樹脂、エラストマー又はゴム成分、各種添加剤は、本発明で提供する導電性の皮膜又は表面保護皮膜の機能を損なわない範囲で含有することができ、その含有量は不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン100重量部に対して0.1重量部から10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。
【0030】
原料であるポリオレフィンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、超低密度ポリエチレン(V−LDPE)等が挙げられる。線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)としては、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。その他、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびその鹸化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂(EVOH)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)等のエチレン系コポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
【0031】
これらのポリオレフィンを合成するための重合方法は通常知られている方法でよく、高圧ラジカル重合、中低圧重合、溶液重合、スラリー重合等があげられ、使用触媒は過酸化物系触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられ、これらの触媒で重合されたポリオレフィンを使用することができる。
【0032】
ポリオレフィンの分子量の目安となるメルトマスフローレート(MFR)は特に制限されないが、溶剤への溶解性を加温時でも良好とし、また、最終的なグラフト反応物の材料強度を維持するため、好ましくは0.01〜50000(g/10分)であり、さらに好ましくは0.01〜100(g/10分)である。
【0033】
また、塩素化ポリオレフィンを用いることができるが、その製造方法は公知であり、例えば、四塩化炭素等のハロゲン系溶剤に溶解させた溶液を、紫外線照射下で塩素含有ガスと接触させてポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開昭47−8643号公報)、ポリオレフィンの粒子を水に懸濁させたスラリー中に塩素ガスを吹き込んでオレフィンを塩素化する方法(例えば、特公昭36−4745号公報)、溶剤を使用せず、ポリオレフィンを、その融点以上に加熱し、溶融させた状態で塩素ガスと接触させることで、ラジカル発生剤、紫外線照射等を用いずにポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開平3−199206号公報)が開示されている。本発明で用いる塩素化したポリオレフィンはこれらの何れの方法でも製造することができる。
【0034】
本発明の無機微粒子分散液における不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、ハロゲン系溶剤中で、ラジカル発生剤を用いて不飽和カルボン酸をポリオレフィンにグラフトさせることで製造できる。
【0035】
ハロゲン系溶剤としては、例えば、1,1,2−トリクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。なお、ハロゲン系溶剤として1,1,2−トリクロロエタンを用いる場合、市販されている1,1,2−トリクロロエタン中には、しばしば0.5〜2.0重量%のアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を不純物として含有している。ここに、アルコール化合物とは水酸基を有する化合物であり、例えば、エチルアルコールやブチルアルコール等が挙げられ、エポキシ化合物とはエポキシ基を有する化合物であり、例えば、1,2−エポキシプロパンや1,2−エポキシブタン等が挙げられる。不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを無色透明とし、かつ熱安定性も良好でゲルを含有しない不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを得るためには、1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として用いる場合には、1,1,2−トリクロロエタン中に不純物として含まれるアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物をあらかじめ除去することが好ましい。
【0036】
ラジカル発生剤としては、アゾ系化合物又は有機過酸化物等が用いられる。アゾ系化合物としては、α,α−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化t−ブチル、過安息香酸t−ブチル等が挙げられる。
【0037】
アゾ系化合物又は有機過酸化物の添加量は特に制限されないが、不飽和カルボン酸のグラフト量を維持し、また、樹脂の溶融粘度の増加を防止することで成形性の低下を防止して製品品質を維持するため、ポリオレフィン100重量部に対して好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0038】
反応温度は特に制限されないが、グラフト反応の効率を高め、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの着色、及び架橋等を防止するため、好ましくは40〜130℃、さらに好ましくは60〜130℃である。反応圧力は特に制限されないが、充分な量の不飽和カルボン酸をグラフトし、また、ゲルの発生を抑制して品質低下を防ぐため、好ましくは0〜1MPa、さらに好ましくは0〜0.7MPaである。本反応においては反応温度、及び、反応させるポリオレフィンの種類によっては均一な溶液状態からけん濁状態でグラフト反応が進行するが、できる限り均一な溶液状態でグラフト反応を進めるため、ポリオレフィンの種類によって反応温度を適宜選択することが好ましい。
【0039】
グラフト反応の終了後、必要に応じて安定剤を添加する。安定剤はグラフト反応時に発生するラジカルを消滅させ、グラフト反応を停止させるために添加し、通常ポリオレフィンに添加する酸化防止剤を用いるのが好ましく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0040】
グラフト反応に使用する反応容器は通常回分式(バッチ式)反応に使用する容器を用いることができ、上記反応温度、反応圧力に耐えられるものであれば差し支えなく、材質は通常ステンレス製が用いられ、必要に応じて内面がガラスライニング、フッ素コーティング処理を施したものも使用できる。
【0041】
グラフト反応で生成した不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンと溶剤との分離には、ドラムドライヤー、水蒸気蒸留、ベント付き押出機等、通常用いられる方法を用いることができるが、ドラムドライヤーを用いることが経済的利用から特に好ましい。一方、本発明の無機微粒子分散液を製造に用いる溶剤と上記のグラフト反応の溶剤が同一の場合には、該不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを反応溶液から単離する必要はなく、反応溶剤を添加する、又は反応溶液を濃縮する等の方法により該不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの濃度を調整し、そのまま、無機微粒子分散液の製造に用いることができる。
【0042】
反応工程で不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを溶剤と分離する場合には、反応工程を終了した後、その反応溶液を反応器から、加熱したドラムドライヤーに連続的にフィードして、生成物をポリマー溶液から単離する。この際のドラムドライヤーの温度としては、乾燥を促進しつつ、ポリマーの着色、熱劣化、架橋を抑制するため、好ましくは120〜200℃の範囲であり、さらに好ましくは150〜165℃である。ポリマーは薄膜状でドラムから剥離して単離する。
【0043】
また、ドラムドライヤーにより揮発した1,1,2−トリクロロエタンはドラムドライヤー上部に設置された回収ラインを用いて、回収し、再び反応に用いることができる。
【0044】
ドラムドライヤーによるポリマー溶液からの溶剤除去に必要な時間は、用いる溶剤の種類、及びドラムドライヤーの温度により異なり、適宜選定し得るが、通常10秒〜5分である。
【0045】
単離されたポリマーは必要に応じて紐状、シート状、ストランド状又はチップ状に加工することができ、これらの1次賦形したポリマーを更に、1軸、又は必要に応じて2軸押出機へ供給し、ポリマーを溶融させて押出し、ストランドカット、又は水中カットによりペレット化することも可能である。この際の押出温度は特に制限されないが、用いたポリオレフィンを充分に溶融させてスムーズに押し出し、さらにポリオレフィンの分解、着色等を抑制するため、好ましくは100〜300℃であり、さらに好ましくは150〜250℃である。
【0046】
本発明の無機微粒子分散液を塗布、又は印刷する対象となる基材としては、ポリカーボネート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン−1、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル等の樹脂成形体、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属成型体、ガラスの成型体、シリコンウエハ等が例示される。
【0047】
本発明の無機微粒子分散液の製造方法としては種々の方法を用いることができるが、その一例を以下に示す。
【0048】
製造された不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを前述の有機溶剤に溶解させてポリオレフィン溶液を調製する。この溶液調製は攪拌機を備えた反応器等を用いて行えるが、ホモジナイザー等の機械を用いて行うこともできる。この際、溶解温度は特に制限されないが、通常、室温から使用する溶剤の沸点以下で行うことが好ましい。得られたポリオレフィン溶液に無機微粒子を添加し、超音波洗浄器、ホモジナイザー等を用いて無機微粒子を分散させる。この際の温度は溶剤が揮発しない温度である限り特に制限はなく、室温から溶剤の沸点以下である。また、耐圧容器を用いて溶剤の沸点以上の温度で無機微粒子の分散を行うことができる。
【0049】
本発明の無機微粒子分散液は既存のグラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、含浸、スピンコート等の技術により、簡便、経済的、かつ高い生産性でプラスチック、金属、ガラス、シリコンウエハー等の各種基材上に導電性回路を形成する、表面保護膜を形成する、または前述の各種基材を用いて成型された成型体表面上に意匠性を付与するために用いることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明により種々のプラスチック、ガラス、シリコンウエハー、金属等の基材に強固に接着した状態で皮膜を形成することができ、さらに、短時間の熱処理により安定な皮膜を形成できる無機微粒子分散液を提供することができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。
【0052】
<原料>
(1)ポリオレフィン
EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体):東ソー株式会社製 ウルトラセン(登録商標)751
L−LDPE(エチレン・ヘキセン−1共重合体):東ソー株式会社製 ニポロン−Z(登録商標)ZF230(MFR=2.0g/10分、密度=920kg/m
ケン化EVA−1(エチレン・酢酸ビニル共重合体のケン化物):東ソー株式会社製 H−6410M
ケン化EVA−2(エチレン・酢酸ビニル共重合体のケン化物):東ソー株式会社製 H−6051K
ケン化EVA−3(エチレン・酢酸ビニル共重合体のケン化物):東ソー株式会社製 H−6960
PP(ホモポリプロピレン):チッソ石油化学株式会社製 チッソポリプロ XF1811
(2)反応薬品
ベンゾイルパーオキサイド(BPO):日本油脂株式会社製 ナイパーB
2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT): 株式会社エーピーアイコーポレーション ヨシノックスBHT
無水マレイン酸、アクリル酸、1,1,2−トリクロロエタン、キシレン、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸:関東化学株式会社製の1級試薬
ターピネオール(不飽和脂肪族環式フェノール):日本テルペン化学株式会社
(3)無機微粒子
銀粒子:(株)高純度化学研究所製 還元銀粒子 AGE08PB 平均粒子径 1μm
アルミニウム粒子:(株)高純度化学研究所製 ALE11PB 平均粒子径 3μm
銅粒子:(株)高純度化学研究所製 CUE08PB 平均粒子径 1μm
金粒子:(株)高純度化学研究所製 平均粒子径 1μm
酸化第二鉄鉄粒子:(株)高純度化学研究所製 FEO02PB 平均粒子径 1μm
銀ナノペースト:アルバックマテリアル株式会社製 平均粒子径 5〜10nm
カーボンブラック:三菱化学株式会社製 ケッチェンブラック EC
(4)フィルム
ポリイミドフィルム: 宇部興産株式会社製 UPILEX(登録商標)755
ポリフェニレンスルフィドシート:東ソー株式会社製 サスティール G10
ポリカーボネートフィルム:帝人化成株式会社製 パンライト(登録商標)PC−2151
<ゲル分率の測定>
ポリマー50mgをキシレン50mlに添加し、140℃で12時間溶解させた後、この溶液を200メッシュのステンレス製のメッシュ(75μm)で濾過して金網上の未溶融分を105℃、5時間乾燥して算出した。
【0053】
<テープ剥離試験>
基材上にスクリーン印刷により5mm×5mmの正方形のパターン100個を印刷し、乾燥後、210℃で熱処理した。このパターン上にテープを貼り付け、テープ剥離時にパターンが基材から剥離する個数を調べた。
【0054】
製造例1
1,1,2−トリクロロエタンを17500重量部と26%硫酸水溶液を2500重量部とを下口付き10リッターフラスコに入れ激しく撹拌し、静置後下層の有機層を抜き出した。次に、抜き出した有機層と蒸留水を5kgとを下口付き10リッターフラスコに入れ激しく撹拌し、静置後下層の有機層を抜き出す操作を3回繰り返し、不純物の1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除いた。さらに抜き出した有機層にモレキュラーシーブス4Aを150重量部添加して、スターラーで撹拌することにより脱水し、精製した1,1,2−トリクロロエタン(以下、精製TCEと記す)。
【0055】
4リッターのガラス製反応容器に精製TCE、1750重量部とケン化EVA−1(東ソー(株)製、H−6410M)を100重量部、並びに無水マレイン酸を9.7重量部仕込んだ。反応器を80℃に昇温し、その後80℃で4時間保持することによってEVAを均一に溶解した。またこの間、反応器に5リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。グラフト反応の触媒として0.16重量部のBPOを精製TCE100重量部に溶解した。この溶液を連続的に反応器へ添加しつつ、反応器の圧力を1MPaに保った状態で、3時間グラフト反応を行った。反応終了後、反応器の圧力を常圧に戻した後、反応器の温度を70℃に下げ、安定剤として0.1重量部のBHTを添加した後、この溶液を160℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、無水マレイン酸をグラフトしたケン化EVAを溶剤から分離した。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0056】
製造例2
変性するポリオレフィンをケン化EVA−1からケン化EVA−2(東ソー(株)製、H−6051K)に変えた以外は製造例1と同様の手法により無水マレイン酸をグラフトしたケン化EVAを得た。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0057】
製造例3
変性するポリオレフィンをケン化EVA−1からケン化EVA−3(東ソー(株)製、H−6960)に変えた以外は製造例1と同様の手法により無水マレイン酸をグラフトしたケン化EVAを得た。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0058】
製造例4
変性するポリオレフィンをケン化EVA−1からEVAに変えた以外は製造例1と同様の手法により無水マレイン酸をグラフトしたEVAを得た。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0059】
製造例5
変性するポリオレフィンをケン化EVA−1からL−LDPEに変えた以外は製造例1と同様の手法により無水マレイン酸をグラフトしたL−LDPEを得た。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0060】
製造例6
変性するポリオレフィンをケン化EVA−1からEVAに変え、グラフトする不飽和カルボン酸をアクリル酸に変えた以外は製造例1と同様の手法によりアクリル酸をグラフトしたEVAを得た。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0061】
製造例7
変性するポリオレフィンをケン化EVA−1からL−LDPEに変え、グラフトする不飽和カルボン酸をアクリル酸に変えた以外は製造例1と同様の手法によりアクリル酸をグラフトしたL−LDPEを得た。生成物中のゲル量は、分析の0重量%であった。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0062】
製造例8
変性するポリオレフィンをケン化EVA−1からEVAに変え、グラフトする不飽和カルボン酸をメタクリル酸に変えた以外は製造例1と同様の手法によりメタクリル酸をグラフトしたEVAを得た。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0063】
製造例9
変性するポリオレフィンをケン化EVA−1からL−LDPEに変え、グラフトする不飽和カルボン酸をメタクリル酸に変えた以外は製造例1と同様の手法によりメタクリル酸をグラフトしたL−LDPEを得た。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0064】
製造例10
変性するポリオレフィンをケン化EVA−1からPPに変え、グラフトする不飽和カルボン酸をメタクリル酸に変えた以外は製造例1と同様の手法によりメタクリル酸をグラフトしたPPを得た。生成物中のゲル量は、分析の結果0重量%であった。
【0065】
実施例1
製造例1で得られた無水マレイン酸をグラフトしたケン化EVA1.08gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液に銀粒子20gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銀粒子を分散させ銀粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、銀粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリイミドにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、220℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は10μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0066】
実施例2
製造例2で得られた無水マレイン酸をグラフトしたケン化EVA1.08gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液に銅粒子26gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銅粒子を分散させ銅粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、銅粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリイミドにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、220℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は11μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0067】
実施例3
製造例3で得られた無水マレイン酸をグラフトしたケン化EVA1.08gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液にアルミニウム16gを添加し、室温で超音波洗浄器にてアルミニウム粒子を分散させアルミニウム粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、アルミニウム粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリイミドにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、220℃で熱処理した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0068】
実施例4
製造例4で得られた無水マレイン酸をグラフトしたEVA0.1gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ2gのポリマー溶液を得た。この溶液に金粒子1gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銀粒子を分散させ金粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、金粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリフェニレンスルフィドシートにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、230℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は6μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0069】
実施例5
製造例1で得られた無水マレイン酸をグラフトしたケン化EVA0.05gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ1gのポリマー溶液を得た。この溶液に銀ナノペースト0.5gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銀粒子を分散させ銀粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、銀粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリカーボネートフィルムにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、230℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は5μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0070】
実施例6
製造例5で得られた無水マレイン酸をグラフトしたL−LDPE1gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液に銀粒子16gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銀粒子を分散させ銀粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、銀粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリイミドにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、230℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は10μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0071】
実施例7
製造例6で得られたアクリル酸をグラフトしたEVA1gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液に銀粒子12gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銀粒子を分散させ銀粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、銀粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリイミドにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、210℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は9μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0072】
実施例8
製造例7で得られたアクリル酸をグラフトしたL−LDPE1.2gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液に銅粒子11gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銅粒子を分散させ銅粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、銅粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリイミドにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、210℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は9μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0073】
実施例9
製造例8で得られたメタクリル酸をグラフトしたEVA0.8gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液に銅粒子14gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銅粒子を分散させ銅粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、銅粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリイミドにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、190℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は8μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0074】
実施例10
製造例9で得られたメタクリル酸をグラフトしたL−LDPE1.4gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液にアルミニウム粒子15gを添加し、室温で超音波洗浄器にてアルミニウム粒子を分散させアルミニウム粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、アルミニウム粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてPPSシートにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、230℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は12μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0075】
実施例11
製造例10で得られたメタクリル酸をグラフトしたPP0.15gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液に鉄粒子8gを添加し、室温で超音波洗浄器にて鉄粒子を分散させ鉄粒子が均一に分散したペースト状の液を得た。室温でこの分散液を1週間放置したが、分散状態に変化はなく、鉄粒子の沈降は見られなかった。また、この分散液を用いてポリイミドにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、230℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は13μΩcmであり良好な導電性を示した。また、本回路はテープを用いた剥離試験で全く剥離がなく基材との良好な接着性を示した。
【0076】
比較例1
ドデシルアミン6gをターピネオール75gに溶解した後、銀粒子10gを添加して銀粒子分散液を得た。この液にメチルヘキサヒドロ無水フタル酸を0.7g添加して銀ペーストを得た。この銀ペーストをポリフェニレンスルフィドシートにシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、230℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は8μΩcmであり良好な導電性を示したが、本回路はテープを用いた剥離試験で剥離頻度が100/100と基材と容易に剥離した。
【0077】
比較例2
比較例1で得られた銀ペーストをポリイミドフィルム上にシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、230℃で熱処理した。得られた回路の抵抗率は8μΩcmであり良好な導電性を示したが、本回路はテープを用いた剥離試験で剥離頻度が80/100と基材との接着性が不十分であった。
【0078】
比較例3
ドデシルアミン6gをターピネオール75gに溶解した後、銀粒子10gを添加して銀粒子分散液を得た。この液にメチルヘキサヒドロ無水フタル酸を0.7g、フェノール樹脂を0.5g添加して銀ペーストを得た。
【0079】
得られた銀ペーストをポリイミドフィルム上にシルクスクリーン印刷法により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、230℃で熱処理したが皮膜が硬化するのに70分を要した。得られた回路の抵抗率は10μΩcmであり良好な導電性を示したが、本回路はテープを用いた剥離試験で剥離頻度が10/100と基材との接着性が不十分であった。
【0080】
比較例4
EVA1.0gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液に銀粒子15gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銀粒子を分散させてペースト状の液を得た。室温でこの分散液を放置したとこる、1時間で鉄粒子が沈降し、実用的な分散性を示さなかった。この液を再度、超音波洗浄器を用いて銀粒子を分散させて、直ちにポリイミドにシルクスクリーン印刷により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、230℃で熱処理したが、銀粒子が沈降し、回路の抵抗率は6μΩcmであり良好な導電性を示したものの、本回路は基材との接着せず、テープを用いた剥離試験で剥離頻度が100/100と全く接着性が見られなかった。
【0081】
比較例5
L−LDPE1.0gを1,1,2−トリクロロエタンに溶解させ20gのポリマー溶液を得た。この溶液に銅粒子15gを添加し、室温で超音波洗浄器にて銅粒子を分散させてペースト状の液を得た。室温でこの分散液を放置したとこる、1時間で銅粒子が沈降し、実用的な分散性を示さなかった。この液を再度、超音波洗浄器を用いて銀粒子を分散させて、直ちにポリイミドにシルクスクリーン印刷により回路を印刷し、室温で溶剤を揮発させた後、220℃で熱処理したが、銅粒子が沈降し、回路の抵抗率は7μΩcmと良好な導電性を示したものの、本回路は基材との接着せず、テープを用いた剥離試験で剥離頻度が100/100と全く接着性が見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィン、無機微粒子及び溶剤を含有することを特徴とする無機微粒子分散液。
【請求項2】
不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンが、140℃に加熱したキシレンに不溶のゲルを含まないことを特徴とする請求項1に記載の無機微粒子分散液。
【請求項3】
無機微粒子が、金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、アルミニウム、鉄、インジウム、マグネシウム、白金、珪素、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、カーボンブラックから選ばれる少なくとも1種類の微粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無機微粒子分散液。

【公開番号】特開2009−120678(P2009−120678A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294826(P2007−294826)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】