説明

無機繊維ブロック

【課題】安価なセラミックファイバーで作られていて、高温での収縮が少ない無機繊維ブロックを提供する。
【解決手段】無機繊維ブロックが、加熱処理により結晶化したセラミックファイバーを用いて形成されており、アルミナファイバーを含んでいない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱処理したセラミックファイバーブランケットを用いて形成した無機繊維ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業炉の内張り用耐火断熱材として無機繊維製品が多く使用されている。無機繊維製品のひとつに無機繊維ブロックがある。
【0003】
炉の内張りに使用される無機繊維ブロックは、そのほとんどが次の2通りの方法で製造されている。1つは、ブランケットを同じ大きさに切断して小片とし、これらの小片を積層して積層体とする方法である。もう1つは、細長いブランケットを葛折りにして積層体として、この積層体を圧縮しつつバンド締めや縫製によって所定の形状に固定する方法である。
【0004】
ブランケットの材料としては、非晶質のセラミックファイバーや結晶質アルミナファイバーが使用されている。アルミナファイバーはセラミックファイバーよりも高温の炉に使用される。
【0005】
一般に、無機繊維ブロックは高温で使用すると収縮する。収縮すると、ブロック間に隙間が発生し、その隙間から炉内の熱が外部に流れやすくなる。そのため、収縮はできるだけ防ぐ必要がある。
【0006】
収縮を防ぐ対策として無機繊維ブロックの嵩密度を大きくすることが提案されている。例えば、特許第3432996号には嵩密度0.22〜0.30g/cmのセラミックファイバーを使用した無機繊維ブロックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3432996号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、嵩密度を大きくすると、セラミックファイバーの割合が多くなるため、コストが高くなる。
【0009】
また、アルミナファイバーは、高温においてセラミックファイバーよりも収縮が小さく、耐熱性に優れるが、セラミックファイバーよりもはるかに高価である。そのため、アルミナファイバーよりも安価なセラミックファイバーを使用し、嵩密度が0.22g/cm以下で、高温での収縮が少ない無機繊維ブロックが要求されている。
【0010】
本発明の目的は、安価なセラミックファイバーで作られていて、高温での収縮が少ない無機繊維ブロックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決手段を例示すると、次のとおりである。
【0012】
(1)加熱処理により結晶化したセラミックファイバーを用いて形成されていて、アルミナファイバーを含まない、無機繊維ブロック。
【0013】
(2)加熱処理により結晶化したセラミックファイバーがブランケットの形に成形され、そのブランケットが圧縮、固定されて、無機繊維ブロックの形に形成されている前述の無機繊維ブロック。
【0014】
(3)無機繊維ブロックが、工業炉内で断熱材として使用されるときに焼失する物質で固定されている、前述の無機繊維ブロック。
【0015】
(4)無機繊維ブロックの嵩密度が0.22g/cm以下である、前述の無機繊維ブロック。
【0016】
(5)ブランケットの嵩密度が0.22g/cm以下である、前述の無機繊維ブロック。
【0017】
(6)ブランケットの厚さが30mm以上である前述の無機繊維ブロック。
【発明の効果】
【0018】
本発明による無機繊維ブロックは、加熱による収縮率が小さく、耐熱性が高いため、従来のセラミックファイバーブロックに比較して、高温域において使用でき、アルミナファイバーブロックよりもはるかに安価に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の1つの実施形態によれば、無機繊維ブロックは、加熱処理により結晶化したセラミックファイバーを用いて形成されている。通常、セラミックファイバーは、Al、SiO、ZrO、Crなどを主成分とした非晶質繊維である。このセラミックファイバーは、加熱により、ムライトやクリストバライトなどの結晶を析出する。結晶の有無は、XRD(X線回折装置)によって確認することができる。通常は少なくとも1000℃で5分の加熱処理によって結晶が析出する。
【0020】
工業炉の内張り用耐火断熱材として使用される前に、予め製造工程において結晶化したセラミックファイバーは、実際に使用する際の収縮が小さく耐熱性に優れる。
【0021】
セラミックファイバーは、ニードリングなどの処理によってブランケット化されていると、取り扱いが容易となり、好ましい。
【0022】
無機繊維ブロックはブランケットを圧縮、固定して製造される。固定方法は、通常用いられている種々の方法を採用できる。好ましくは、工業炉の内張り用耐火断熱材として使用される際に焼失する物質を用いて無機繊維ブロックを固定する。固定方法としては、例えば、有機系のバンドを使用して周囲を包装して固定する方法、木綿のような有機繊維糸を使用して縫製する方法、段ボール紙とゴムで固定する方法などがある。
【0023】
無機繊維ブロックの嵩密度を0.22g/cm以下とするためには、ブランケットの嵩密度を0.22g/cm以下にするのが好ましい。ブランケットの嵩密度はニードリングの条件などにより任意に設定できる。
【0024】
ただし、結晶化したセラミックファイバーブランケットを用いてブロックを作製する場合、ブランケットの厚みは厚いほうが好ましい。未加熱のセラミックファイバーや、アルミナファイバーのブランケットは厚さ25mm以下でも問題ない。しかし、結晶化したセラミックファイバーは脆いために、厚さ30mm以上でなければブロックとなりにくい。
【実施例1】
【0025】
厚さ33mm、嵩密度0.13g/cmのアルミナシリカ系セラミックファイバーブランケットを1000℃で10分間加熱した。XRDによりムライトが析出していることを確認した。このブランケットを13枚積層、圧縮し、木綿糸で縫製して嵩密度0.17g/cm、300×300×300mmの無機繊維ブロックを作製した。この無機繊維ブロックを1200℃で24時間加熱した後、収縮率は0.6%であった。
【実施例2】
【0026】
厚さ33mm、嵩密度0.15g/cmのアルミナシリカ系セラミックファイバーブランケットを1000℃で10分間加熱した。XRDによりムライトが析出していることを確認した。このブランケットを12枚積層、圧縮し、木綿糸で縫製して嵩密度0.20g/cm、300×300×300mmの無機繊維ブロックを作製した。この無機繊維ブロックを1200℃で24時間加熱した後、収縮率は0.4%であった。
【比較例】
【0027】
加熱処理していないアルミナシリカ系セラミックファイバーブランケットを用いて実施例1と同様の手順により300×300×300mm、嵩密度0.17g/cmの無機繊維ブロックを作製した。この無機繊維ブロックを1200℃で24時間加熱した後、収縮率は2.1%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理により結晶化したセラミックファイバーを用いて形成されていて、アルミナファイバーを含まない、無機繊維ブロック。
【請求項2】
加熱処理により結晶化したセラミックファイバーがブランケットの形に成形され、そのブランケットが圧縮、固定されて、無機繊維ブロックの形に形成されている請求項1に記載の無機繊維ブロック。
【請求項3】
無機繊維ブロックが、工業炉内で断熱材として使用されるときに焼失する物質で固定されている、請求項1又は2に記載の無機繊維ブロック。
【請求項4】
無機繊維ブロックの嵩密度が0.22g/cm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機繊維ブロック。
【請求項5】
ブランケットの嵩密度が0.22g/cm以下である、請求項2に記載の無機繊維ブロック。
【請求項6】
ブランケットの厚さが30mm以上である、請求項2又は5に記載の無機繊維ブロック。

【公開番号】特開2011−93732(P2011−93732A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247852(P2009−247852)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(506201529)株式会社ITM (4)
【Fターム(参考)】