説明

無端帯状金属リングの圧延装置

【課題】圧延後に真円に近い形状の金属リングを得ることができる無端帯状の金属リングの圧延装置を提供する。
【解決手段】無端帯状金属リングの圧延装置1は、金属リングWが掛け回される1対の同径のテンションローラ2a,2bと、両テンションローラ2a,2bの中間に配置され両テンションローラ2a,2bより小径のセンターローラ3と、センターローラ3との間に金属リングWを挟持して圧延する圧延ローラ4と、センターローラ3を圧延ローラ4の方向に押圧する押圧手段9とを備える。両テンションローラ2a,2bの間を周回する金属リングWの進行方向に沿って圧延ローラ4より下流側のテンションローラ2aと圧延ローラ4との両ローラの外周面に金属リングW上で接する第1の接線Pと、圧延ローラ4側で両テンションローラ2a,2bの外周面に接する第2の接線Qとのなす角θが1°以下の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の無段変速機(CVT)等の動力伝達ベルトに使用される無端帯状金属リングの圧延装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の無段変速機に採用される動力伝達用ベルト等に用いられる積層リングは、互いに周長の異なる複数の無端帯状金属リングを厚さ方向に積層したものである。前記無端帯状金属リングは、超強力鋼であるマルエージング鋼等の金属の薄板の端部同士を溶接して円筒状のドラムを形成した後、溶体化を施して前記溶接時の熱により部分的に硬くなった硬度を均質化した該ドラムを裁断し、得られた無端帯状金属リングを圧延して所定の周長としたものである。
【0003】
前記無端帯状金属リングの圧延装置として、従来、図4に示す装置が知られている(例えば特許文献1参照)。図4に示す無端帯状金属リングの圧延装置41は、無端帯状の金属リングWが掛け回される固定ローラ2a,引張ローラ2bと、ローラ2a,2b間に配置されたメッシュローラ3と、メッシュローラ3との間に金属リングWを挟持して圧延する圧下受けローラ4とを備えている。固定ローラ2a,引張ローラ2bは同径であり、引張ローラ2bは、固定ローラ2aから離間する方向に変位自在とされている。また、メッシュローラ3は、固定ローラ2a,引張ローラ2bよりも小径であり、より大径の圧下ローラ9により、圧下受けローラ4方向に押圧されるようになっている。
【0004】
圧延装置41によれば、固定ローラ2a,引張ローラ2bに掛け回した金属リングWを矢示方向に周回させせながら、圧下ローラ9を介してメッシュローラ3を圧下受けローラ4方向に押圧することにより、メッシュローラ3と圧下受けローラ4との間で金属リングWを圧延する。圧延装置41は、同時に、引張ローラ2bを固定ローラ2aから離間する方向に変位させ、圧延された金属リングWがローラ2a,2bに掛け回された状態を維持する。そして、引張ローラ2bの変位から圧延された金属リングWの周長を算出する。この結果、圧延装置1によれば、金属リングWを圧延して、所望の周長とすることができる。
【0005】
このとき、固定ローラ2aは、固定ローラ2aと引張ローラ2bとの間を周回する金属リングWの進行方向に沿って、圧下受けローラ4の下流側に位置している。図2に示すように、固定ローラ2aと圧下受けローラ4との両ローラの外周面に金属リングW上で接する第1の接線Pと、圧下受けローラ4側で固定ローラ2aと引張ローラ2bとの外周面に接する第2の接線Qとは、角θを成して交差しており、圧延装置41では角θ=2.81°とされている。
【0006】
しかしながら、前記従来の圧延装置41によれば、圧延後の金属リングWが真円とならず、歪んだ形状になることがあり、改善が望まれる。
【特許文献1】特許第3609338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、圧延後に真円に近い形状の金属リングを得ることができる無端帯状の金属リングの圧延装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記従来の圧延装置41において、圧延後の金属リングWが真円とならず、歪んだ形状になる理由について、鋭意検討した。この結果、本発明者らは、圧延装置41では、図2に示す第1の接線Pと、第2の接線Qとの成す角θが大きくなるほど、圧延後の金属リングWの歪みが大きくなることを知見した。
【0009】
本発明者らは、前記知見に基づいてさらに検討した結果、第1の接線Pと、第2の接線Qとの成す角を1°以下の範囲とすることにより、圧延後に真円に近い形状の金属リングを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
そこで、本発明は、前記目的を達成するために、無端帯状の金属リングが掛け回される1対の同径のテンションローラと、両テンションローラの中間に配置され両テンションローラより小径のセンターローラと、該センターローラとの間に該金属リングを挟持して圧延する圧延ローラと、該センターローラを該圧延ローラの方向に押圧する押圧手段とを備える金属リングの圧延装置において、両テンションローラの間を周回する該金属リングの進行方向に沿って該圧延ローラより下流側のテンションローラと該圧延ローラとの両ローラの外周面に該金属リング上で接する第1の接線と、該圧延ローラ側で両テンションローラの外周面に接する第2の接線とのなす角が1°以下の範囲であることを特徴とする。
【0011】
本発明の圧延装置によれば、前記第1の接線と、第2の接線とのなす角が1°以下の範囲であるので、圧延後に、真円に近い形状を備える無端帯状の金属リングを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の無端帯状金属リングの圧延装置の構成を示す正面図であり、図2は圧延装置における各ローラの位置関係を示す説明図であり、図3は図1に示す圧延装置により圧延された金属リングの形状を示す平面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の圧延装置1は、無端帯状の金属リングWが掛け回されるテンションローラとしての固定ローラ2a,引張ローラ2bと、ローラ2a,2b間に配置されたセンターローラとしてのメッシュローラ3と、メッシュローラ3との間に金属リングWを挟持して圧延する圧延ローラとしての圧下受けローラ4とを備えている。
【0014】
固定ローラ2a,引張ローラ2bは同径であり、水平方向に所定の間隔を存して設けられて、金属リングWが掛け回されるようになっている。固定ローラ2aは、図示しないモータにより回転駆動される。また、引張ローラ2bは、引張シリンダ5のシリンダロッド5aの先端に取着された軸支部材6に軸支されて、引張シリンダ5により固定ローラ2aから離間する方向に変位自在とされている。
【0015】
軸支部材6は、レール部材7に沿って摺動自在とされている。レール部材7には、バリリミット8が設けられており、バリリミット8は、軸支部材6の変位から引張ローラ2bの変位を検出するようになっている。
【0016】
メッシュローラ3は、固定ローラ2a,引張ローラ2bより小径であり、押圧手段としての圧下ローラ9が圧接されることにより、固定ローラ2a,引張ローラ2bより大径の圧下受けローラ4方向に押圧される。圧下ローラ9は、固定ローラ2a,引張ローラ2bより大径であり、圧下シリンダ10のシリンダロッド10aの先端に取着された軸支部材11に軸支されて、圧下シリンダ10によりメッシュローラ3に圧接されるようになっている。また、圧下ローラ9は、外周面に沿って溝部12を備えており、金属リングWは溝部12内を通過して固定ローラ2aと引張ローラ2bとの間を周回する。
【0017】
圧延装置1は、固定ローラ2aを回転駆動することにより、固定ローラ2aと引張ローラ2bとの間で矢示方向に金属リングWを周回させながら、圧下ローラ9を介してメッシュローラ3を圧下受けローラ4方向に押圧することにより、メッシュローラ3と圧下受けローラ4との間で金属リングWを圧延する。圧延装置1は、同時に、引張ローラ2bを固定ローラ2aから離間する方向に変位させ、圧延された金属リングWがローラ2a,2bに掛け回された状態を維持する。そして、バリリミット8により、軸支部材6の変位から引張ローラ2bの変位を検出し、引張ローラ2bの変位から圧延された金属リングWの周長を算出する。この結果、圧延装置1によれば、金属リングWを圧延して、所望の周長とすることができる。
【0018】
このとき、固定ローラ2aは、固定ローラ2aと引張ローラ2bとの間を周回する金属リングWの進行方向に沿って、圧下受けローラ4の下流側に位置している。そして、図2に示すように、固定ローラ2aと圧下受けローラ4との外周面に金属リングW上で接する第1の接線Pと、圧下受けローラ4の側で固定ローラ2aと引張ローラ2bとの外周面に接する第2の接線Qとは、角θを成して交差している。
【0019】
本実施形態の圧延装置1では、角θは1°以下の範囲であり、例えば、0.56°とされている。角θ=0.56°としたときに、圧延装置1により圧延された金属リングWの形状を図3に示す。また、比較のために、角θ=2.81°となっている従来の圧延装置41により圧延された金属リングWの形状を図5に示す。
【0020】
図3,5から、角θが1°を超える大きさとなっている従来の圧延装置41により圧延された金属リングWが真円よりも歪んだ形状であるのに比較して、角θが1°以下の大きさである本実施形態の圧延装置1により圧延された金属リングWは真円に近い形状を備えていることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の無端帯状金属リングの圧延装置の構成を示す正面図。
【図2】圧延装置における各ローラの位置関係を示す説明図。
【図3】図1に示す圧延装置により圧延された金属リングの形状を示す平面図。
【図4】従来の無端帯状金属リングの圧延装置の構成を模式的に示す正面図。
【図5】図4に示す圧延装置により圧延された金属リングの形状を示す平面図。
【符号の説明】
【0022】
1…圧延装置、 2a,2b…テンションローラ、 3…センターローラ、 4…圧延ローラ、 9…押圧手段、 P…第1の接線、 Q…第2の接線、 W…金属リング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状の金属リングが掛け回される1対の同径のテンションローラと、両テンションローラの中間に配置され両テンションローラより小径のセンターローラと、該センターローラとの間に該金属リングを挟持して圧延する圧延ローラと、該センターローラを該圧延ローラの方向に押圧する押圧手段とを備える金属リングの圧延装置において、
両テンションローラの間を周回する該金属リングの進行方向に沿って該圧延ローラより下流側のテンションローラと該圧延ローラとの両ローラの外周面に該金属リング上で接する第1の接線と、該圧延ローラ側で両テンションローラの外周面に接する第2の接線とのなす角が1°以下の範囲であることを特徴とする無端帯状金属リングの圧延装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58156(P2010−58156A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228306(P2008−228306)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)