説明

無線タグリーダライタ及びその通信方法

【課題】従来の複数の通信規格の無線タグに対応した無線タグリーダライタでは、無線タグとの通信に時間がかかるという問題があった。
【解決手段】本発明にかかる無線タグリーダライタは、通信規格の異なる複数の無線タグとの間で非接触通信を行うための無線タグリーダライタであって、無線タグから送信される信号に含まれるプリアンブルを読み取るプリアンブル読み取り部301と、プリアンブル読み取り部が所定の時間内にプリアンブルを読み込めたか否かににより、選択されている通信規格が無線タグの規格に適合するか否かを判定する通信規格判定部302と、通信規格判定部の判定結果に基づいて、通信規格を切り替える通信規格切替部303と、を備える。このような構成により、無線タグとの通信時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグリーダライタ及びその通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグと無線タグリーダライタと間の無線通信技術として知られているRFID(Radio Frequency Identification)技術は、物流や電子マネーなどの分野に広く用いられ、様々なプロトコル(通信規格)が規格化されている。RFIDシステムは、概してRFIDタグとRFIDリーダライタを備えている。RFIDタグとRFIDリーダライタの通信を成立させるためには、RFIDタグとRFIDリーダライタは、同一のプロトコルに対応する必要がある。また、RFIDのデータフレームは、同一のプロトコルにおいても異なる複数の種類がある。この場合、異なる種類のデータフレームは、異なるデータフォーマットを有する。
【0003】
ISO18092で定められたプロトコルの場合の例を示す。図6に示すように、データフレームは、主として、「Preamble+SYNC+LENGTH」から構成されるプリアンブルと、データコマンドを含むペイロードと、データコマンドが正しく読みこまれたかどうかを検出(誤り検出)するために用いられるCRCデータとによって構成される。RFIDリーダライタがRFIDタグからの応答信号(データフレーム)を受信した場合、この応答信号に含まれるプリアンブルに基づいてデータ受信用のクロックが制御される。そして、このデータ受信用クロックに同期してプリアンブルに続くデータフレームの読み込みが行われる。また、例えば、ペイロードとCRCデータはそれぞれパリティビットを含む。なお、ペイロードにはデータコマンドが含まれている。
【0004】
近年、RFID規格の多様化と実用化により、RFIDリーダライタによって複数のプロトコルに対応することが要求されている。
【0005】
このような要求に対して例えば特許文献1が提案されている。図7に、特許文献1の非接触式ICカードリーダライタ(RFIDリーダライタ)501を示す。なお、図7は、特許文献1の図2に対して符号を変更したものである。
【0006】
図7に示す回路は、上位装置500と、リーダライタ501と、を備える。異なる通信仕様の非接触式ICカード(RFIDタグ)502を読み書きする可能性のあるリーダライタ501において、リーダライタ501から異なる通信仕様の信号をポーリング的に送出する。このとき、リーダライタ501の近くにある非接触式ICカード502が、その通信仕様のいずれかに合致して反応すると、その通信仕様での通信を開始する。
【0007】
しかし、特許文献1には、リーダライタ501から交信範囲に送出されたポーリング信号と、交信範囲にある非接触式ICカード502の通信規格とが、適合しているか否かの判断の方法について何も記載されていない。したがって、図7に示すリーダライタ501は、一つの通信規格のみ対応可能なリーダライタにおいて一般的な動作が実行されていると考えられる。
【0008】
つまり、非接触式ICカード502とリーダライタ501との通信規格が適合しない場合、リーダライタ501が受信した応答信号(データフレーム)はCPU等が備えられた上位装置500には送信されない。これは、非接触ICカード502の通信規格と、リーダライタ501から送信されたポーリング信号の通信規格と、が適合しない場合、非接触ICカード502から応答信号が送信されないためである。この場合、例えば、所定の時間が経過すること(タイムアウト)により、上位装置500はデータフレームを読み込めなかったと判断する。それにより、リーダライタ501及び上位装置500は、非接触式ICカード502への送信信号を他の通信規格に切り替える。
【0009】
このように、特許文献1に示す回路では、非接触式ICカード502とリーダライタ501との通信規格が適合するか否かを判定するのに時間がかかるという問題があった。つまり、非接触式ICカード502とリーダライタ501との通信に時間がかかるという問題があった。
【0010】
そのほか、特許文献2には、異なる通信規格のタグが相互に干渉することなく通信可能な非接触式ICカードリーダライタが提案されている。また、特許文献3には、RFIDタグの周波数や通信仕様を遠隔より一括して制御可能なRFID装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−143023号公報
【特許文献2】特開2005−143073号公報
【特許文献3】特開2008−234265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、従来の複数の通信規格の無線タグに対応した無線タグリーダライタでは、無線タグとの通信に時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる無線タグリーダライタは、通信規格の異なる複数の無線タグとの間で非接触通信を行うための無線タグリーダライタであって、無線タグから送信される信号に含まれるプリアンブルを読み取るプリアンブル読み取り部と、前記プリアンブル読み取り部が所定の時間内に前記プリアンブルを読み込めたか否かににより、選択されている通信規格が前記無線タグの規格に適合するか否かを判定する通信規格判定部と、前記通信規格判定部の判定結果に基づいて、前記通信規格を切り替える通信規格切替部と、を備える。
【0014】
また、本発明にかかる無線タグリーダライタの通信方法は、通信規格の異なる複数の無線タグとの間で非接触通信を行うための無線タグリーダライタであって、無線タグから送信される信号に含まれるプリアンブルを所定の時間内に読み込めたか否かにより、選択されている通信規格が前記無線タグの規格に適合するか否かを判定し、前記判定結果に基づいて、前記通信規格を切り替える。
【0015】
上述のような構成の無線タグリーダライタ及びその通信方法により、無線タグとの通信時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、無線タグとの通信時間の短縮が可能な無線タグリーダライタ及びその通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態にかかる無線タグリーダライタを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる無線タグリーダライタの動作を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる無線タグリーダライタを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態にかかる無線タグリーダライタと従来例との動作の比較を示す図である。
【図5】複数の通信規格のデータフレームの構成例を示す図である。
【図6】ISO18092のデータフレームの構成例を示す図である。
【図7】従来の非接触式ICカードリーダライタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0019】
なお、本発明の実施の形態では、無線タグリーダライタをRFIDリーダライタとし、無線タグをRFIDタグとして説明する。なお、例えば、プリアンブルのような固定パタンに基づいてその後のデータ処理を決定する通信方式を用いるものであればRFIDリーダライタの場合に限られず適用可能である。
【0020】
まず、本発明の具体的な実施の形態を説明する前に、RFIDタグとRFIDリーダライタとの送受信に用いられるいくつかの通信規格(プロトコル)のデータフレームを説明する。
【0021】
図5は、ISO14443A、ISO15693、ISO18092、ISO18000−6、ISO18000−4の5つのRFID通信規格にそれぞれ定義され、RFIDリーダライタが処理するデータフレームの構成を示す。なお、ISO18000−6とISO18000−4では、RFIDリーダライタが送信するデータフレームと受信するフレームのフォーマットが異なり、図5においてそれぞれ示している。各データフレームにおいて、「CRC」の後の括弧中の数字は、CRCデータのビット数を示す。また、各データフレームの構成要素について、その通信規格で用いられた用語で表記する。
【0022】
図5に示すように、それぞれの通信規格におけるデータフレームは、主として、「Preamble+SYNC+LENGTH」、「SOC」等から構成されるプリアンブルと、データコマンドを含むペイロードと、データコマンドが正しく読み込まれたかどうかを検出(誤り検出)するために用いられるCRCデータと、によって構成される。RFIDリーダライタがRFIDタグからの応答信号(データフレーム)を受信した場合、この応答信号に含まれるプリアンブルに基づいてデータ受信用のクロックが制御される。そして、このデータ受信用クロックに同期してプリアンブルに続くデータフレームの読み込みが行われる。
【0023】
なお、プリアンブルが上位ビットである(すなわち終端データが下位ビットである)か、プリアンブルが下位ビットである(すなわち終端データが上位ビットである)かは、通信規格によって異なる場合がある。しかし、何れの場合おいてもデータフレームの伝送はプリアンブルからである。以下において、データフレームの各構成要素を伝送順に示す。
【0024】
図5に示すように、ISO14443Aのデータフレームは、プリアンブル「SOC」と、ペイロードと、16ビットのCRCデータと、終端データ「EOC」からなる。以下、説明上の便宜のため、ペイロードとCRCを合わせてPAYCRCという場合がある。また、PAYCRCは、通常、生成処理に際してエンコードされ、解析処理に際してデコードされる。
【0025】
ISO15693のデータフレームは、プリアンブル「SOF」と、PAYCRCと、終端データ「EOF」からなる。CRCデータは16ビットである。
【0026】
ISO18092のデータフレームは、プリアンブル「Preamble+SYNC+LENGTH」と、PAYCRCからなる。ISO18092のデータフレームのプリアンブルにおける「SYNC」は、ISO18092のPAYCRCをデコードする際に用いられる極性データ(Polarity Data)が含まれている。また、PAYCRCのデータ長を示す「LENGTH」も、デコードの際に用いられる。ISO18092のデータフレームのCRCデータは16ビットである。ISO18092のデータフレームには、終端データが無い。
【0027】
ISO18000−6では、RFIDリーダライタが送信するデータフレームは、プリアンブルと、PAYCRCからなる。プリアンブルは、「Preamble」と「Framesync」の2種類がある。CRCデータは、16ビットと5ビットの2種類がある。また、RFIDリーダライタが受信するデータフレームは、プリアンブル「Preamble」とPAYCRCとからなり、CRCデータは16ビットである。ISO18000−6のデータフレームも、終端データが無い。
【0028】
ISO18000−4では、RFIDリーダライタが送信するデータフレームは、プリアンブル「Preamble+detect」及び「Preamble+Delimiter」とPAYCRCとからなり、CRCデータは16ビットである。また、RFIDリーダライタが受信するデータフレームは、プリアンブル「Quiet+Preamble」とPAYCRCからなり、CRCデータは16ビットである。ISO18092のデータフレームも、終端データが無い。
【0029】
また、図5に示していないが、通信規格によって、PAYCRCのデータには、パリティビットが挿入されたものもあれば、パリティビットが挿入されていないものもある。
【0030】
また、通信規格によっては、データコマンドの誤り検出を行う等のために終端データやパリティビットもデータフレームに含まれる場合がある。なお、従来技術では、RFIDリーダライタが検出したプリアンブルと期待値が一致しない場合には、RFIDリーダライタが受信したデータフレームは、CPU等が備えられた演算処理回路には送信されない。これは、RFIDタグとRFIDリーダライタとの通信規格が適合しない場合、RFIDタグから応答信号が送信されないためである。この場合、例えば、所定の時間が経過すること(タイムアウト)により、演算処理回路はデータフレームを読み込めなかったと判断する。それにより、RFIDリーダライタは、RFIDタグへの送信信号を他の通信規格に切り替えていた。
【0031】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明の実施の形態におけるRFIDリーダライタ(無線タグリーダライタ)は、通信規格の異なる複数のRFIDタグ(無線タグ)との間で非接触通信を行うためのRFIDリーダライタである。図1に示すRFIDリーダライタは、RFIDタグとの信号の送受信を行うアンテナ100と、アナログ信号処理を行うRF部122と、デジタル信号処理を行うモデム部123と、CPU等が設けられ所定の演算処理を行う演算処理部124と、を備える。ここで、図1に示すRFIDリーダライタは、RFIDタグに適合する通信規格に切り替える時間が従来よりも短縮されたという特徴を有する。
【0032】
また、RF部122は、ミキサ102と、HPF(High Pass Filter)103と、LPF(Low Pass Filter)104と、VGA(Variable Gain Amplifier)105と、ミキサ107と、HPF108と、LPF109と、VGA110と、ASK変調器118と、レジスタ121と、をさらに備える。
【0033】
モデム部123は、ADC(ADコンバータ)106と、ADC111と、DAC(DAコンバータ)117と、IQSEL(セレクタ)112と、エンベロップ検出回路113と、LPF114と、信号処理部115と、データI/F回路116と、SPI(Serial Peripheral Interface)119と、レジスタ120と、をさらに備える。
【0034】
まず、図1に示す回路の回路構成について説明する。演算処理部124のデータ用入出力端子は、モデム部123に設けられたデータI/F回路116の入出力端子に接続される。また、演算処理部124の他方の入出力端子は、モデム部123に設けられたSPI119の入出力端子に接続される。
【0035】
データI/F回路116の出力端子は、DAC117の入力端子に接続される。DAC117の出力端子は、ASK変調器118の入力端子に接続される。ASK変調器118の出力端子は、CPL101の入力端子に接続される。CPL101の入出力端子はアンテナ100に接続される。
【0036】
CPL101の出力端子は、ミキサ102の入力端子と、ミキサ107の入力端子と、にそれぞれ接続される。ミキサ102の2つの出力端子は、HPF103の2つの入力端子に互いに接続される。HPF103の2つの出力端子は、LPF104の2つの入力端子に互いに接続される。LPF104の2つの出力端子は、VGA105の2つの入力端子に互いに接続される。VGA105の2つの出力端子は、ADC106の2つの入力端子に互いに接続される。ADC106の出力端子はIQSEL112の一方の入力端子に接続される。
【0037】
ミキサ107の2つの出力端子は、HPF108の2つの入力端子に互いに接続される。HPF108の2つの出力端子は、LPF109の2つの入力端子に互いに接続される。LPF109の2つの出力端子は、VGA110の2つの入力端子に互いに接続される。VGA110の2つの出力端子は、ADC111の2つの入力端子に互いに接続される。ADC111の出力端子はIQSEL112の他方の入力端子に接続される。
【0038】
IQSEL112の出力端子は、エンベロップ検出回路113の入力端子に接続される。エンベロップ検出回路113の出力端子は、LPF114の入力端子に接続される。LPF114の出力端子は、信号処理部115の入力端子に接続される。信号処理部115のデータ用出力端子は、データI/F回路116の入力端子に接続される。信号処理部115の他方の出力端子は、SPI119の入力端子に接続される。SPI119の出力端子は、レジスタ120の入力端子とレジスタ121の入力端子とにそれぞれ接続される。
【0039】
次に、図1に示す回路の動作について説明する。演算処理部124のデータ用入出力端子は、モデム部123に設けられたデータI/F回路116の入出力端子に接続され、RFIDタグとのデータの送受信を行う。また、演算処理部124の他方の入出力端子は、モデム部123に設けられたSPI119の入出力端子に接続され、各ブロック(例えば、RF部122、モデム部123)に対してコマンドを送受信する。
【0040】
まず、演算処理部124からデータI/F回路116を介して出力されたデータは、DAC117によって変調用の信号に変換される。DAC117の出力信号は、ASK変調器118によってASK(Amplitude Shift Keying)変調される。ASK変調器118の出力信号は、CPL101を介してアンテナ100に供給される。なお、CPL101は、例えばASK変調器118の出力信号が逆方向へ流れるのを防止する等の機能を有する。このようにして生成された所定の(初期状態において選択されている)通信規格のデータフレームが、アンテナ100から送信される。
【0041】
次に、RFIDタグからの応答信号はアンテナ100、CPL101を介してミキサ102及びミキサ107に入力される。ここでは、ダイレクトコンバージョン方式を採用した例について説明する。すなわち、RFIDタグからの応答信号とRFIDタグに送信する搬送波との位相差により、RFIDタグからの応答信号が検出できなくなるのを回避するため、RFIDタグに送信する搬送波とその位相を90度ずらした信号とでそれぞれ検波する。
【0042】
ミキサ102は、RFIDタグからの応答信号と、RFIDタグに送信する搬送波とをミキシングしてI相ベースバンド信号を出力する。I相ベースバンド信号はHPF103、LPF104によってノイズが取り除かれる。LPF104から出力された信号対は、VGA105によって差動増幅される。VGA105から出力された信号対はADC106によってデジタル信号に変換される。
【0043】
同様に、ミキサ107は、RFIDタグからの応答信号と、90度位相がずれた搬送波とをミキシングしてQ相ベースバンド信号を出力する。Q相ベースバンド信号はHPF108、LPF109によってノイズが取り除かれる。LPF109から出力された信号対は、VGA110によって差動増幅される。VGA110から出力された信号対はADC111によってデジタル信号に変換される。
【0044】
IQSEL112は、ADC106の出力信号とADC111の出力信号とのいずれかを選択して出力する。IQSEL112の出力信号は、エンベロップ検出回路113によって2進数のビットデータに変換される。エンベロップ検出回路113から出力されたビットデータは、LPF114によってノイズが取り除かれ、信号処理部115に入力される。信号処理部115は、入力されたビットデータ(データフレーム)に基づいて、RFIDタグからの応答信号がRFIDリーダライタの通信規格に適合するかを判定し、判定結果をSPI119に出力する。また、信号処理部115は、データI/F回路116を介して演算処理部124にデータフレームを送信する。
【0045】
SPI119は、信号処理部115の判定結果に応じた制御信号を演算処理部124に送信する。演算処理部124は、この制御信号に基づいてデータフレーム(例えば、ペイロード、CRC)を読み込むか否かを決定する。さらに、SPI119は、演算処理部124からの応答信号(コマンド)を各機能ブロック(例えば、RF部122、モデム部123)に送信する。それにより、各機能ブロックは、例えば回路の接続関係を切り替えることにより、選択された通信規格に応じた処理を行う。図1に示す回路の例では、SPI119は、各機能ブロック(RF部122、モデム部123)に設けられているレジスタ(レジスタ121、レジスタ120)に演算処理部124からの応答信号(コマンド)を送信している。つまり、RF部122、モデム部123は、それぞれレジスタ121、レジスタ120に格納されたレジスタ値に基づいて、選択された通信規格に応じた処理を行う。
【0046】
ここで、図2に示すブロック図と、図3に示すフローチャートと、を用いて本発明の実施の形態にかかるRFIDリーダライタの動作についてさらに詳しく説明する。図2は、図1に示す回路を機能ブロックごとに示したブロック図である。また、図3は信号処理部115の動作を示すフローチャートである。
【0047】
なお、データフレーム送信部304は、モデム部123におけるデータフレーム送信用回路の機能ブロックを示す。また、図2に示すブロック図は、信号処理部115を説明するために必要な機能ブロック及び接続関係のみを図示している。その他の回路構成及び動作については図1に示しているため、ここでは説明を省略する。
【0048】
なお、図2に示すブロック図は、説明を簡単にするために信号処理部115を機能的ブロックごとに示したにすぎない。したがって、例えば、通信規格切替部303の機能の一部を有する回路が、信号処理部115の外部に設けられる場合もある。あるいは、例えば、通信規格切替部303の機能が、演算処理部124に備わっている場合もある。このように、本発明の実施の形態に示すRFIDリーダライタは、図1及び図2に示す回路に限られず、趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更が可能である。
【0049】
図2において、信号処理部115はデータフレーム受信部300と、プリアンブル読み取り部301と、通信規格判定部302と、通信規格切替部303と、を有する。まず、初期状態において予め選択されている通信規格(例えば、ISO18092)のデータフレームがアンテナ100を介してRFIDタグに送信される(図3のS200)。
【0050】
ここで、RFIDリーダライタとRFIDタグとの通信規格が適合する場合、RFIDタグから応答信号が送信される。一方、RFIDリーダライタとRFIDタグとの通信規格が適合しない場合、RFIDタグから応答信号は送信されない。
【0051】
RFIDタグからの応答信号が、RF部122を介してデータフレーム受信部300とプリアンブル読み取り部301とにそれぞれ入力される。例えば、図1に示す回路の場合には、LPF114の出力信号がデータフレーム受信部300とプリアンブル読み取り部301とに入力される。ここで、プリアンブル読み取り部301では、RFIDタグからの応答信号(データフレーム)を構成するプリアンブルを読み取る(図3のS201)。
【0052】
なお、RFIDタグとRFIDリーダライタとの通信規格が適合する場合、プリアンブル読み取り部301はプリアンブルを読み取る。このとき、プリアンブル読み取り部301は、プリアンブルを読み取れたことを通信規格判定部302に送信する。それにより、通信規格判定部302は、プリアンブルを読み取れたと判定する(図3のS202のYES)。つまり、通信規格判定部302は、通信規格が適合したと判定する。
【0053】
一方、通信規格が適合しない場合、プリアンブル読み取り部301はプリアンブルを読み取らない。この場合、通信規格判定部302は、プリアンブルを読み取るために必要な所定の時間経過後、プリアンブルを読み取れなかったと判定する(図3のS202のNO)。つまり、通信規格判定部302は、通信規格が適合していないと判定する。
【0054】
このように、本発明の実施の形態にかかるRFIDリーダライタは、プリアンブルを読み取れたか否かによりRFIDタグとの通信規格が適合するか否かを判定することができる。したがって、従来よりも短時間で通信規格が適合しているか否かを判定することができる。
【0055】
通信規格判定部302による判定結果は通信規格切替部303に入力される。通信規格切替部303は、通信規格判定部302の判定結果に応じた切替制御信号を演算処理部124に出力する。演算処理部124は、この切替制御信号に基づいてRFIDタグへの送信信号の通信規格を切り替えるか否かを決定する。さらに、演算処理部124は、この切替制御信号に基づいてデータフレーム受信部300から送信されるデータフレームを読み込むか否かを決定する。そして、演算処理部124は、通信規格切替部303に応答信号を出力するとともに、データフレーム送信部304に通信規格に応じたデータフレーム用信号を送信する。
【0056】
通信規格切替部303は、演算処理部124からの応答信号に応じた切替制御信号をデータフレーム受信部300及びデータフレーム送信部304にそれぞれ出力する。それにより、データフレーム受信部300及びデータフレーム送信部304は、演算処理部124において選択された通信規格に応じた処理を行う。
【0057】
なお、図1に示す回路の場合、SPI119、レジスタ120、レジスタ121が、図2における通信規格判定部302及び通信規格切替部303の機能の一部を有している。つまり、SPI119は、信号処理部115から通信規格の判定結果を受け取り、その判定結果に応じた切替制御信号を演算処理部124に出力する。さらに、SPI119は、演算処理部124からの応答信号(コマンド)をレジスタ120及びレジスタ121に送信する。RF部122、モデム部123は、それぞれレジスタ121、レジスタ120に格納されたレジスタ値に基づいて、演算処理部124において選択された通信規格に応じた処理を行う。
【0058】
ここで、通信規格判定部302において、RFIDタグとRFIDリーダライタとの通信規格が適合しないと判定された場合を考える(図3のS202のNO)。RFIDタグとの通信規格が適合しているか否かの判断がされていない他の通信規格がある場合(図3のS205のYES)、演算処理部124は、通信規格切替部303からの切替制御信号に基づいてRFIDタグへの送信信号の通信規格を切り替える。(図3のS206)。このとき、演算処理部124はデータフレーム受信部300から出力されるデータフレームの読み込みは行わない。
【0059】
通信規格切替部303は、演算処理部124からの応答信号に応じた切替制御信号をデータフレーム受信部300及びデータフレーム送信部304にそれぞれ出力する。それにより、データフレーム受信部300及びデータフレーム送信部304は、演算処理部124において新たに選択された通信規格(例えば、ISO18000−6)に応じた処理を行う。
【0060】
選択された通信規格に応じてデータフレーム受信部300及びデータフレーム送信部304の処理(回路)が切り替えられた場合、演算処理部124は、データフレーム送信部304に対し新たに選択された通信規格に応じたデータフレーム用信号を送信する。それにより、選択されている通信規格(例えば、ISO18000−6)のデータフレームがアンテナ100を介してRFIDタグに送信される(図3のS200)。
【0061】
このように、RFIDタグとRFIDリーダライタとの通信規格が適合しなければ、RFIDリーダライタは別の通信規格に切り替える。なお、RFIDタグとの通信規格が適合しているか否かの判断がされていない他の通信規格がない場合(図3のS205のNO)、RFIDリーダライタは、通信動作を終了する。これは、例えば、RFIDタグの通信規格が、RFIDリーダライタが対応可能な通信規格に含まれていない等の場合が考えられる。
【0062】
次に、通信規格判定部302において、RFIDタグとRFIDリーダライタとの通信規格が適合したと判定された場合を考える(図3のS202のYES)。このとき、演算処理部124は、通信規格切替部303からの切替制御信号に基づいて、データフレームの読み込みを開始する(図3のS203)。また、演算処理部124は、通信規格切替部303に対し、各機能ブロックが現在選択されている通信規格の処理を維持するように応答信号を出力する。その後は、従来のRFIDリーダライタの場合と同様に、CRCデータによって誤り検出が実行され(図3のS204)、データフレームの読み込みが完了する(図3のS204のNO)。なお、CRCデータによって誤りが検出された場合には、RFIDタグの読み込みが正常に行われなかった可能性がある。この場合には、プリアンブルに続くデータフレームの再読み込みが行われる(図3のS204のYES)。
【0063】
このように、本発明の実施の形態にかかるRFIDリーダライタは、プリアンブルを読み取れたか否かによりRFIDタグとの通信規格が適合するか否かを判定する。つまり、通信規格が適合しない場合、プリアンブルを読み取るために必要な所定の時間経過後、プリアンブルを読み込めなかった(通信規格が適合しない)と判定する。そして、その判定結果に基づいて通信規格を切り替える。したがって、従来のように演算処理回路がデータフレームの処理を行えないことにより通信規格が適合しないと判定する場合よりも、短時間で通信規格の適合性を判定することができる。
【0064】
図4に、従来回路と、本発明の実施の形態にかかるRFIDリーダライタの動作の比較を示す。従来例において、RFIDタグとRFIDリーダライタとの通信規格が適合しない場合、RFIDタグからの応答信号(データフレーム)は演算処理回路(CPU等)には送信されない。この場合、例えば、所定の時間が経過すること(タイムアウト)により、演算処理回路はデータフレームを読み込めなかったと判断する。それにより、RFIDリーダライタは、RFIDタグへの送信信号を他の通信規格に切り替える。したがって、通信規格が適合するまでに時間がかかっていた。
【0065】
一方、本発明の実施の形態にかかるRFIDリーダライタの場合、RFIDタグが送信するデータフレームのうちプリアンブルを読み取れたか否かのみによって、通信規格が適合するか否かを判定している。そして、その判定結果に基づいて通信規格を切り替える。したがって、従来よりも短時間でRFIDタグに適合する通信規格を選定することができる。つまり、本発明のRFIDリーダライタは、従来よりもRFIDタグとの通信時間を短縮することが可能である。
【0066】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本発明の実施の形態にかかるRFIDリーダライタは、ISO18092のプリアンブルを「Preamble+SYNC+LENGTH」として説明したが、これに限られない。例えば、ISO18092のプリアンブルを「Preamble」のみとした場合の回路構成にも適宜変更することが可能である。なお、この場合、プリアンブル読み取り部301は、ISO18092のプリアンブルとして「Preamble」のみを読み取る。
【0067】
また、本発明の実施の形態では、無線タグリーダライタにおいて、無線タグからの応答信号によってI相ベースバンド信号とQ相ベースバンド信号の2種類の信号が生成される場合の例について説明したが、これに限られない。例えば、I相ベースバンド信号のみが生成される回路構成にも適宜変更することが可能である。あるいは、趣旨を逸脱しない限りにおいて、無線タグからの応答信号を受信する方式として、ダイレクトコンバージョン方式に代わる他の方式(例えば、スーパーヘテロダイン方式)を用いても良い。
【符号の説明】
【0068】
100 アンテナ
101 CPL
102 ミキサ
103 HPF
104 LPF
105 VGA
106 ADC
107 ミキサ
108 HPF
109 LPF
110 VGA
111 ADC
112 IQSEL
113 エンベロップ検出回路
114 LPF
115 信号処理部
116 データI/F回路
117 DAC
118 ASK変調器
119 SPI
120 レジスタ
121 レジスタ
122 RF部
123 モデム部
124 演算処理部
300 データフレーム受信部
301 プリアンブル読み取り部
302 通信規格判定部
303 通信規格切替部
304 データフレーム送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信規格の異なる複数の無線タグとの間で非接触通信を行うための無線タグリーダライタであって、
無線タグから送信される信号に含まれるプリアンブルを読み取るプリアンブル読み取り部と、
前記プリアンブル読み取り部が所定の時間内に前記プリアンブルを読み込めたか否かににより、選択されている通信規格が前記無線タグの規格に適合するか否かを判定する通信規格判定部と、
前記通信規格判定部の判定結果に基づいて、前記通信規格を切り替える通信規格切替部と、を備えた無線タグリーダライタ。
【請求項2】
前記通信規格切替部は、
選択されている前記通信規格が前記無線タグの規格に適合しない場合には、選択されていない別の通信規格に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の無線タグリーダライタ。
【請求項3】
選択されている前記通信規格が前記無線タグの規格に適合する場合には、前記無線タグから送信される前記プリアンブルに続くデータを読み込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線タグリーダライタ。
【請求項4】
通信規格の異なる複数の無線タグとの間で非接触通信を行うための無線タグリーダライタであって、
無線タグから送信される信号に含まれるプリアンブルを所定の時間内に読み込めたか否かにより、選択されている通信規格が前記無線タグの規格に適合するか否かを判定し、
前記判定結果に基づいて、前記通信規格を切り替える無線タグリーダライタの通信方法。
【請求項5】
前記プリアンブルを所定の時間内に読み込めたか否かにより、選択されている通信規格が前記無線タグの規格に適合するか否かを判定し、
選択されている前記通信規格が前記無線タグの規格に適合しない場合には、選択されていない別の通信規格に切り替えることを特徴とする請求項4に記載の無線タグリーダライタの通信方法。
【請求項6】
前記プリアンブルを所定の時間内に読み込めたか否かにより、選択されている通信規格が前記無線タグの規格に適合するか否かを判定し、
選択されている前記通信規格が前記無線タグの規格に適合する場合には、前記無線タグから送信される前記プリアンブルに続くデータを読み込むことを特徴とする請求項4又は5に記載の無線タグリーダライタの通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−198396(P2010−198396A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43294(P2009−43294)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】