説明

無線タグ読み取り装置

【課題】対象物に設置した無線タグとの無線通信に適さない状況を解消し、無線タグからの情報読み取りの信頼性を向上する。
【解決手段】無線タグ読み取り装置10は、対象物11に設けられた無線タグTに対し無線通信を実行可能なアンテナ15と、少なくとも1つの対象物11を収納した荷物12を上部に配置する荷台20と、荷台20を変位させる駆動力を発生するモータ21とを備える。そしてアンテナ15を用いた無線タグTに対する情報読み取り結果が、予め定めた第1読み取り完了条件を満たすかどうかを判定し、第1読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、モータ21の駆動を制御して荷台20を振動し、荷物12の内部において対象物11の姿勢を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグに対して情報読み取りを行う無線タグ読み取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信性能の向上を目的として、無線タグ読み取り装置のアンテナと、情報読み取り対象である無線タグとの、位置関係に着目した技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術では、無線タグがそれぞれ取り付けられた複数の対象物が箱等の収納体に収納され、この収納体が回転テーブルの上に載せられる。回転テーブルの周囲には、上下左右の異なった方向それぞれに無線タグ読み取り装置の複数のアンテナが設けられている。収納体を載せた回転テーブルが水平方向に回転すると、各対象物に取り付けられた無線タグのタグアンテナの方向が水平面内において変化する。この結果、回転の途中で、タグアンテナの方向が、無線タグ読み取り装置の複数のアンテナのいずれかに合致する。これにより、その合致したときに、無線タグ読み取り装置が当該無線タグより情報を確実に読み取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−223480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、無線タグ読み取り装置のアンテナと無線タグのタグアンテナとの位置関係が無線通信に適していない場合に、当該位置関係を改善することにより、無線タグ読み取り装置の情報読み取り性能が向上する。
【0006】
一方、収納体に複数の対象物が収納されている状態では、無線タグと当該無線タグを備えた対象物との位置関係、又は、無線タグと当該無線タグを備えた対象物以外の対象物との位置関係(以下適宜、「無線タグと対象物との位置関係」と総称する)が、無線通信にあまり適していない場合がある。特に対象物に金属製の部分がある場合には、当該部分と無線タグとが近接していると、無線タグとの無線通信が阻害される傾向が顕著である。
【0007】
上記従来技術では、上記のような無線タグと対象物との位置関係の是非には特に配慮されていない。すなわち、回転テーブルが回転しても、無線タグと対象物との位置関係は変わらないまま、収納体全体として水平面内における向きが変わるに過ぎない。この結果、上記した、無線タグと対象物との位置関係が無線通信に適さない状況を解消できず、無線タグからの情報読み取りにおける信頼性を向上することができなかった。
【0008】
本発明の目的は、無線タグと対象物との位置関係を変更して、無線タグからの情報読み取りにおける信頼性を向上することができる、無線タグ読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、対象物に備えられた無線タグに対し、無線通信により情報読み取りを行う無線タグ読み取り装置であって、前記無線タグに対し無線通信による情報読み取りを実行可能なアンテナ手段と、少なくとも1つの前記対象物が収納された収納体を、前記対象物に備えられた前記無線タグが前記アンテナ手段と通信可能な範囲内に配置する配置手段と、前記配置手段を変位させる駆動力を発生する駆動手段と、前記アンテナ手段を用いた前記無線タグに対する情報読み取り結果が、予め定めた第1読み取り完了条件を満たすかどうかを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段により、前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第1読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を振動又は傾斜させるように、前記駆動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本願第1発明においては、無線タグが備えられた少なくとも1つの対象物が、収納体に収納される。この収納体は、配置手段によって、無線タグがアンテナ手段と通信可能な範囲内となるように、配置される。この結果、収納された無線タグに対しアンテナ手段を用いた無線通信により情報読み取りが実行される。
【0011】
この情報読み取り実行時において、無線タグと当該無線タグを備えた対象物との位置関係、又は、無線タグと当該無線タグを備えた対象物以外の対象物との位置関係が、無線タグとの無線通信にあまり適していない場合がある。特に対象物に金属製の部分がある場合には、当該部分と無線タグとが近接していると、無線タグとの無線通信が阻害される傾向が顕著である。
【0012】
このような場合には、情報読み取り結果が所定の第1読み取り完了条件を満たさず、第1判定手段による判定が満たされない。この結果、制御手段の制御に基づく駆動手段の駆動力によって、配置手段が振動するか又は傾斜する。これにより、配置手段上の収納体が揺れたり傾いたりするので、収納体の内部において対象物の姿勢や収納態様が変化する。この結果、無線タグと当該無線タグを備えた対象物との位置関係、又は、無線タグと当該無線タグを備えた対象物以外の対象物との位置関係が変化する。これにより、前述した、無線タグとの無線通信に適さない状況が解消されるので、無線タグからの情報読み取りにおける信頼性を向上することができる。
【0013】
第2発明は、上記第1発明において、前記アンテナ手段は、前記駆動手段により、前記配置手段が振動又は傾斜した後、若しくは、当該振動又は傾斜している最中に、前記無線タグに対して情報再読み取りを行う。
【0014】
配置手段の振動や傾斜により、前述の無線タグとの無線通信に適さない状況が解消された状態で、アンテナ手段が情報再読み取りを行うことにより、無線タグからの情報読み取りにおける信頼性を確実に向上することができる。
【0015】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記収納体に対する振動又は傾斜の実行の可否を判定する第2判定手段を有し、前記制御手段は、前記第1判定手段により、前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記所定の第1読み取り完了条件を満たさないと判定され、かつ、前記第2判定手段により、前記収納体に対する振動又は傾斜を実行してもよいと判定された場合に、前記配置手段を振動又は傾斜させるように、前記駆動手段を制御することを特徴とする。
【0016】
これにより、振動や傾斜を実行してはならない収納体については振動や傾斜を確実に行わないようにし、内部に収納した対象物の破損のおそれ等を防止することができる。
【0017】
第4発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記第1判定手段により、複数の前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記所定の第1読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記アンテナ手段を用いた前記無線タグに対する情報読み取り結果が、予め定めた少なくとも1つの読み取り評価条件を満たすかどうかを判定する第3判定手段を有し、前記制御手段は、前記第3判定手段により前記少なくとも1つの読み取り評価条件を満たすと判定されたかどうかに応じて前記配置手段の振動態様又は傾斜態様を変化させるように、前記駆動手段を制御することを特徴とする。
【0018】
これにより、無線タグ読み取り評価条件の満足状況が、比較的少数の無線タグからしか情報を読み取れていないことを表した場合には、収納体の内部における対象物の姿勢や収納態様を大きく変化させるように制御することができる。無線タグ読み取り評価条件の満足状況が、比較的多数の無線タグから情報を読み取れていないことを表した場合には、収納体の内部における対象物の姿勢や収納態様をそれほど変化させないように制御することができる。このように振動態様や傾斜態様を制御することにより、無線タグからの情報読み取り率の向上と、読み取り作業時間の短縮化との、両立を図ることができる。
【0019】
第5発明は、上記第4発明において、前記駆動手段は、前記配置手段を振動させるための駆動力を発生する振動駆動手段を含み、前記制御手段は、前記第1判定手段により前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第1読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を所定の期間振動させるように、前記振動駆動手段を制御する第1振動制御手段を含み、前記第1振動制御手段の制御に基づき、前記振動駆動手段が前記配置手段を所定の期間振動させた後、前記アンテナ手段を用いた前記無線タグに対する情報読み取り結果が、予め定めた第2読み取り完了条件を満たすかどうかを判定する第4判定手段を設け、前記制御手段は、前記第4判定手段により前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第2読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を連続的に往復振動させるように、前記振動駆動手段を制御する第2振動制御手段を含むことを特徴とする。
【0020】
本願第5発明においては、情報読み取り結果が第1読み取り完了条件を満たさない場合、まず所定の期間、収納体が振動する。その後、情報読み取り結果が第2読み取り完了条件を満たさない場合、収納体が連続的に往復振動する。これにより、必要最小限の振動で無線通信に適さない状況が解消された場合には、それ以上の振動を行わず、読み取り作業時間の短縮化を図ることができる。必要最小限の振動では無線通信に適さない状況が十分に解消されない場合は、さらに連続的な往復振動を行うことで、情報読み取り率を確実に向上することができる。
【0021】
第6発明は、上記第5発明において、前記無線タグから情報を取得するための読み取りコマンドを生成し、前記アンテナ手段を介し前記無線タグに送信する送信制御手段と、前記送信制御手段で生成され送信された前記読み取りコマンドに応じて前記無線タグから送信された応答信号を、複数の識別スロットに区分して受信可能な受信制御手段とを有し、前記第2振動制御手段は、前記受信制御手段で用いる前記識別スロットの数ごとに決まる最大通信時間の2倍以上の周期で、前記配置手段を振動させることを特徴とする。
【0022】
収納体が往復振動する場合、周期の1/2である往路移動時間又は復路移動時間の間は、無線タグと当該無線タグを備えた対象物との位置関係、若しくは、無線タグと当該無線タグを備えた対象物以外の対象物との位置関係、が変わった状態が維持される可能性が高い。そこで本願第6発明においては、受信制御手段で用いる識別スロットの数で決まる最大通信時間を基準に、当該最大通信時間の2倍以上の周期で収納体が往復振動する。これにより、収納体が往復振動する周期の1/2の時間、すなわち上述した往路移動時間又は復路移動時間が、最大通信時間よりも大きくなる。この結果、無線タグとの通信時間が最も長引いた場合を想定しても、上記位置関係が変わった状態が維持されている間に、無線タグとの情報送受信が確実に完了する。これにより、無線タグからの情報読み取りにおける信頼性をさらに向上することができる。
【0023】
第7発明は、上記第4発明において、前記駆動手段は、前記配置手段を振動させるための駆動力を発生する振動駆動手段と、前記配置手段を傾斜させるための駆動力を発生する伸縮駆動手段と、を含み、前記制御手段は、前記第1判定手段により前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第1読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を所定の期間振動させるように、前記振動駆動手段を制御する第1振動制御手段を含み、前記第1振動制御手段の制御に基づき、前記振動駆動手段が前記配置手段を所定の期間振動させた後、前記アンテナ手段を用いた前記無線タグに対する情報読み取り結果が、予め定めた第3読み取り完了条件を満たすかどうかを判定する第5判定手段を設け、前記制御手段は、前記第5判定手段により前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第3読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を所定の角度で傾斜させるように、前記伸縮駆動手段を制御する傾斜制御手段を含むことを特徴とする。
【0024】
本願第7発明においては、情報読み取り結果が第1読み取り完了条件を満たさない場合、まず所定の期間、収納体が振動する。その後、情報読み取り結果が第3読み取り完了条件を満たさない場合、収納体が傾斜する。これにより、必要最小限の振動で無線通信に適さない状況が解消された場合には、以降の傾斜は行わず、読み取り作業時間の短縮化を図ることができる。必要最小限の振動では無線通信に適さない状況が十分に解消されない場合は、さらに傾斜を行うことで、情報読み取り率を確実に向上することができる。
【0025】
第8発明は、上記第1乃至第7発明のいずれかにおいて、前記配置手段は、前記収納体を載せる非金属製のステージ部と、前記ステージ部の下に位置し、前記アンテナ手段から放射された電波を反射させ、前記ステージ部に載せられた前記収納体の下方から電波を入射させるための反射面とを備えることを特徴とする。
【0026】
複数の対象物が収納された収納体の内部において、下方に位置する対象物に備えられた無線タグは、情報読み取りが困難な場合がある。本願第8発明においては、配置手段のステージ部の下に反射面が設けられ、この反射面での反射を利用して、電波が下方から収納体へと入射する。これにより、収納体内部で下方に位置する対象物に備えられた上記無線タグに対しても、確実に情報読み取りを行え、情報読み取り率をさらに確実に向上することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、無線タグと対象物との位置関係を変更して、無線タグからの情報読み取りにおける信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態の無線タグ読み取り装置の使用態様を示す説明図である。
【図2】無線タグを設置した対象物の箱への収納を説明する説明図である。
【図3】無線タグからの情報読み取り時に制御部が実行する制御内容を表すフローチャートである。
【図4】振動周期の詳細な設定を行う変形例において、アンテナを介し、リーダ本体と無線タグとの間で送受される信号のタイムチャート例である。
【図5】鉛直方向の振動を与える変形例での無線タグ読み取り装置の使用態様を示す説明図である。
【図6】振動ではなく傾斜を与える変形例での無線タグ読み取り装置の使用態様を示す説明図である。
【図7】無線タグからの情報読み取り時に制御部が実行する制御を表すフローチャートである。
【図8】荷台に反射部を設ける変形例での無線タグ読み取り装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1(a)に示すように、本実施形態では、無線タグTを設けた少なくとも1つの対象物11が、収納体としての荷物12に収納されている。無線タグ読み取り装置10は、配置手段としての荷台20と、アンテナ手段としての少なくとも1つのアンテナ15と、振動手段及び駆動手段としてのモータ21と、制御部23とを備えている。
【0031】
対象物11は、後述するように、例えば服やアクセサリー類などである。無線タグTには対象物11に関する各種情報が記録されている。
【0032】
アンテナ15は、無線タグTに対し無線通信を実行する。アンテナ15は、この例では2つ設置されている。各アンテナ15は無線通信を実行するための所定の処理を行うリーダ本体16と接続され、リーダ本体16は上記制御部23と接続されている。
【0033】
制御部23は、モータ21をモータ駆動部22を介して制御する。また制御部23は図示しないサーバに接続されている。サーバには、例えば、荷物情報リストが荷物12の数だけ格納されている。各荷物情報リストには、荷物12に収納された全対象物11の対象物識別情報と、全対象物11それぞれに設けられた無線タグTのタグ情報が記録されている。対象物識別情報には、例えば、各対象物11の種類、品名、品番等が含まれる。また、対象物識別情報には、振動・傾斜の可否情報も含まれる。例えば、荷物12の中に、揺らしたり傾斜することにより破損する恐れがあるガラス製品等の対象物11があった場合、荷台20の振動・傾斜が禁止される(詳細は後述)。また、タグ情報にはタグ識別情報としてのタグIDが含まれている。
【0034】
荷台20は、荷物12を上部に配置する。荷台20は、この例では略平板状の台板である。荷台20の下面には、主として図示の左側部分に長手方向にラック24が設けられている。荷台20は、右側が可動軸25上に載置されると共に、左側の上記ラック24が上記モータ21に取り付けたピニオン26に歯合されている。モータ21は、荷台20を変位させる駆動力を発生する。
【0035】
上記構造の結果、荷台20は、ラック24とピニオン26とのラップ・アンド・ピニオン機構により、水平面内を左右方向に振動可能である。すなわち、図1(b)に示すように、モータ21が矢印方向に正転すると、荷台20は左方向に移動する。またモータ21が矢印とは反対方向に逆転すると、荷台20は右方向に移動する。荷台20の左方向への移動は、ラック24の右端がピニオン26の位置に達するまで可能である。荷台20の右方向への移動は、ラック24の左端がピニオン26の位置に達するまで可能である。このような左右方向への移動により、荷台20には、振動が与えられる。なお、荷台20には、左右方向へ交互に移動させる往復変位の振動のみならず、左方向のみ又は右方向のみへ移動させる片道変位の振動が与えられてもよい。
【0036】
荷物12は、図2に示すように、段ボール箱等の適宜な箱13に、少なくとも1つの対象物11が収納されている。対象物11は、この例では、3枚の洋服である。各対象物11には無線タグTが取り付けられている。
【0037】
前述したように、対象物11を収納した荷物12は荷台20上に載置される。そして、リーダ本体16によりアンテナ15を介して対象物11の無線タグTと無線通信が行われる。この無線通信により、無線タグTに記憶された上記タグ情報が読み取られる。このとき、箱13の中における対象物11の収納状態によって、無線タグTと、当該無線タグTを設置した対象物11との位置関係は、様々である。複数の対象物11が収納されている場合には、無線タグTと、当該無線タグTを設置した対象物11以外の対象物11、例えば隣り合った対象物11との位置関係も、様々である。以下適宜、上記の位置関係をまとめて、単に「無線タグTと対象物11との位置関係」と総称する。
【0038】
箱13内における収納状態によっては、上記の無線タグTと対象物11との位置関係が、アンテナ15による無線タグTとの無線通信にあまり適していない場合がある。この場合、リーダ本体16と無線タグTとの無線通信が阻害されることがある。特に、対象物11が例えばラメや金属ボタンを有する洋服である場合、無線タグTが、当該ラメの部分や金属ボタンに近接した状態で箱13に収納されると、無線タグTとの無線通信が阻害される傾向が顕著である。
【0039】
本実施形態では、上記のような場合に、制御部23が、上記図1(b)に示したように荷台20を左右方向に振動させる。これにより、荷台20上の荷物12が揺れ、荷物12の内部において対象物11の姿勢や収納態様が変化する。この結果、無線タグTと対象物11との位置関係が変化し、無線タグTと対象物11との無線通信に適さない状況が解消される。
【0040】
制御部23が実行する制御手順を図3により説明する。
【0041】
図3において、例えば、対象物11を収納した荷物12が荷台20上に載置されるとこのフローが開始する。
【0042】
まず、ステップS5において、制御部23は、サーバから、上記荷台20に載せられた荷物12に対応する、上記荷物情報リストを取得する。例えば、荷台20上に載せられた荷物12を見た操作者が当該荷物12を特定する情報を操作入力し、その操作入力により制御部23が上記リストの取得を行う。あるいは、適宜の検出手段が荷台20上に載せられた荷物12を検出し、その検出信号により制御部23が上記リストの取得を行ってもよい。検出手段は、箱に取り付けられた無線タグを読み取ることにより上記検出を行っても良い。取得された荷物情報リストには、前述したように、荷物12内に収納された全対象物11それぞれに設けられた、無線タグTのタグIDの個数が、少なくとも記載されている。
【0043】
その後、ステップS10で、制御部23は、リーダ本体16に制御信号を出力する。リーダ本体16が、アンテナ15を介し、荷台20上の荷物12内の対象物11それぞれに設けられた無線タグTと無線通信を行う。これにより、リーダ本体16が無線タグTよりタグIDを含むタグ情報を読み取り、制御部23は読み取られたタグIDを取得する。
【0044】
そして、ステップS15で、制御部23は、荷物12内の対象物11の無線タグTに対する読み取り結果が、予め定めた第1読み取り完了条件を満たすかどうかを判定する。この例では、第1読み取り完了条件は、荷物12内の対象物11の全無線タグTについてタグIDを読み取れたことである。したがって、このステップS15では、制御部23は、ステップS10において取得されたタグIDの個数と、ステップS5において取得された荷物情報リストに記載されたタグIDの個数とを比較する。そして、制御部23は、ステップS10で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載のタグIDの個数に達しているかどうかを判定する。この手順が各請求項記載の第1判定手段として機能する。ステップS10で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載のタグIDの個数に達していればステップS15の判定が満たされ、このフローを終了する。
【0045】
一方、ステップS15において、ステップS10で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載のタグIDの個数に達していない場合は、制御部23は、荷物12の中に、まだ無線タグTからの情報読み取りが行われていない対象物11があるとみなす。この場合、ステップS15の判定が満たされず、ステップS25に移る。
【0046】
ステップS25では、制御部23は、上記ステップS5で取得した荷物情報リストに含まれる上記振動・傾斜の可否情報に基づき、荷物12が揺らして良いか否かを判定する。この手順が各請求項記載の第2判定手段として機能する。振動が禁止されている場合は、ステップS25の判定が満たされず、ステップS30に移る。ステップS30で、制御部23は、リーダ本体16に制御信号を出力し、リーダ本体16の表示部にエラーを表示させるエラー報知を行った後、このフローを終了する。これにより、振動を実行してはならない荷物12については振動を確実に行わないようにし、内部に収納した対象物11の破損のおそれ等を防止することができる。
【0047】
一方、上記ステップS25において、上記振動・傾斜の可否情報において荷物12の振動が許容されている場合には、ステップS25の判定が満たされ、ステップS35に移る。
【0048】
ステップS35では、制御部23はモータ駆動部22に制御信号を出力する。これにより、モータ駆動部22がモータ21の回転を制御し、所定の期間、荷台20が振動する。この例では、所定の期間は、左右方向の振動の1周期である。この手順が、各請求項記載の第1振動制御手段として機能すると共に、制御手段としても機能する。
【0049】
その後、ステップS40で、制御部23は、上記ステップS10と同様、リーダ本体16に制御信号を出力し、荷台20上の荷物12内の対象物11に設けた無線タグTからタグIDを取得する。すなわち、制御部23は、再び無線タグTからの情報読み取りを実行する。その後、ステップS45に移る。
【0050】
ステップS45では、上記ステップS15と同様、制御部23は、荷物12内の対象物11の無線タグTに対する読み取り結果が、予め定めた第2読み取り完了条件を満たすかどうかを判定する。この例では、第2読み取り完了条件は、荷物12内の対象物11の全無線タグTについてタグIDを読み取れたことである。したがって、このステップS45では、ステップS15と同様、制御部23は、ステップS40において取得されたタグIDの個数と、ステップS5において取得された荷物情報リストに記載されたタグIDの個数とを比較する。そして、制御部23は、ステップS40で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載の全タグID数に達しているかどうかを判定する。この手順が各請求項記載の第4判定手段として機能すると共に、第1判定手段としても機能する。またステップS45が第1判定手段として機能する場合には、上述した、荷物12内の対象物11の全無線タグTについてタグIDを読み取れたことは、第1読み取り完了条件にも相当している。ステップS40で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載のタグIDの個数に達していればステップS45の判定が満たされ、このフローを終了する。
【0051】
一方、ステップS45において、ステップS40で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載のタグIDの個数に達していない場合は、制御部23は、荷物12の中に、依然として無線タグTからの情報読み取りが行われていない対象物11が残っているとみなす。この場合、ステップS45の判定が満たされず、ステップS55に移る。
【0052】
ステップS55では、制御部23がモータ駆動部22に制御信号を出力する。これにより、モータ駆動部22がモータ21の回転を制御し、荷台20の左右方向へ往復変位による振動を開始する。この手順が、各請求項記載の第2振動制御手段として機能すると共に、制御手段としても機能する。
【0053】
その後、ステップS60に移り、制御部23は、上記ステップS10やステップS40と同様、リーダ本体16に制御信号を出力し、荷台20上の荷物12内の対象物11に設けた無線タグTからタグIDを取得する。すなわち、制御部23は、再び無線タグTからの情報読み取りを実行する。その後、ステップS65に移る。
【0054】
ステップS65では、上記ステップS15及びステップS45と同様、制御部23は、ステップS60において取得されたタグIDの個数と、ステップS5において取得された荷物情報リストに記載されたタグIDの個数とを比較する。そして、制御部23は、ステップS60で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載のタグIDの個数に達しているかどうかを判定する。ステップS60で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載の全タグID数に達していればステップS65の判定が満たされ、ステップS85に移る。
【0055】
ステップS85では、制御部23がモータ駆動部22に制御信号を出力し、モータ駆動部22がモータ21の回転を停止する。この手順は、各請求項記載の制御手段として機能する。これにより、ステップS55で開始した荷台20の振動を停止する。その後、このフローを終了する。
【0056】
一方、ステップS65において、ステップS60で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載の全タグID数に達していない場合は、制御部23は、荷物12の中に、依然として無線タグTからの情報読み取りが行われていない対象物11が残っているとみなす。この場合、ステップS65の判定が満たされず、ステップS70に移る。
【0057】
ステップS70では、制御部23は、上記ステップS55での荷台20の連続振動の開始後、予め定められた一定時間が経過したかどうかを判定する。一定時間が経過するまではステップS70の判定が満たされず、上記ステップS60に戻り、同様の手順を繰り返す。上記ステップS55での荷台20の連続振動の開始後、ステップS65の判定が満たされないまま上記一定時間が経過したら、ステップS70の判定が満たされ、ステップS75に移る。
【0058】
ステップS75では、上記ステップS30と同様、制御部23は、リーダ本体16に制御信号を出力してエラー報知を行う。その後、上記したステップS85に移る。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、無線タグTが設けられた少なくとも1つの対象物11が、荷物12に収納される。そして、対象物11に設けられた無線タグTへのアンテナ15による情報読み取りが実行される。この際、無線タグTと対象物11との位置関係が、無線タグTとの無線通信にあまり適していない場合には、アンテナ15による情報読み取り結果が上記第1読み取り完了条件を満たさなくなる。この結果、ステップS35やステップS55において、荷台20が振動し、荷物12の内部において対象物11の姿勢や収納態様が変化する。したがって、無線タグTと対象物11との位置関係が変化し、前述した、無線タグTとの無線通信に適さない状況が解消される。これにより、無線タグTからの情報読み取りにおける信頼性を向上することができる。
【0060】
また、本実施形態では特に、ステップS35において、荷台20が一周期のみ振動した後、さらにステップS45での読み取り結果が上記第2読み取り完了条件を満たさない場合、ステップS55において荷台20が連続的に往復振動する。
【0061】
これにより、必要最小限の振動で無線通信に適さない状況が解消された場合には、それ以上の振動を行わず、読み取り作業時間の短縮化を図ることができる。必要最小限の振動では無線通信に適さない状況が十分に解消されない場合は、さらに連続的な往復振動を行うことで、情報読み取り率を確実に向上することができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限られず、技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。以下の各変形例の説明において、上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0063】
(1)取得できたタグIDの数に応じて振動態様を変化
上記実施形態では、第1判定手段としてのステップS15やステップS45において、上記第1読み取り完了条件が満たされなかったら、それぞれ予め定められた態様で振動が行われた。しかしながら、これに限られない。すなわち、上記第1読み取り完了条件を満たさない場合に、予め定めた少なくとも1つの読み取り評価条件を満たすかどうかを制御部23が判定するようにしてもよい。読み取り評価条件としては、例えば、荷物12内の全無線タグTのうち、半数の無線タグTのタグIDが読み取れたことである。このときの制御部23の実行する判定が、各請求項記載の第3判定手段として機能する。そして、この読み取り評価条件が満たされるかどうかに応じて荷台20の振動態様が変化するように、モータ21が制御される。
【0064】
例えば、上記の例で、情報を読み取れた無線タグTの数が、荷物12内の全無線タグTの半数未満であった場合には、制御部23が、荷物12の内部における対象物11の姿勢や収納態様を大きく変化させるように、モータ21の駆動力による振動を制御する。逆に、情報を読み取れた無線タグTの数が、荷物12内の全無線タグTの半数以上であった場合には、制御部23が、荷物12の内部における対象物11の姿勢や収納態様をそれほど変化させないように、モータ21の駆動力による振動を制御する。このように振動態様を制御することにより、無線タグTからの情報読み取り率の向上と、読み取り作業時間の短縮化との、両立を図ることができる。
【0065】
(2)振動周期の詳細な設定
本変形例では、上記のように荷台20を振動させるとき、その振動周期が、無線タグTとの通信に要する時間と対応付けて決定される。
【0066】
まず、本変形例における、制御部23の制御に基づきリーダ本体16がアンテナ15を介し無線タグTとの間で実行する、無線通信の信号の送受について、図4を用いて説明する。なお、図4では、リーダ本体16と無線タグTとの間に記載されている矢印は信号の送信方向を示しており、送信相手が不特定である場合には破線で示し、送信相手が特定されている場合には実線で示している。
【0067】
本変形例では、アンテナ15を介したリーダ本体16と無線タグTとの無線通信は、例えば国際規格ISO/IEC18000−6 TypeCのプロトコルにしたがって信号の送受が行われる。図4に示すように、リーダ本体16はまず最初に、アンテナ15の通信可能領域内に存在する全ての無線タグTに対して「Select」コマンドを送信する。この「Select」コマンドは、各種の条件を指定して情報の読み取り対象とする無線タグTの個数を限定し、無線通信の効率化を図るためのコマンドである。この「Select」コマンドを受信した無線タグTのうちで、指定された条件を満たす無線タグTだけが、その後に無線通信を行える状態となる。図4ではこの条件を満たす一つ無線タグTのみが示されている。
【0068】
次に、リーダ本体16は、無線タグTに対してそれぞれのタグ情報を含む応答を要求する読み取りコマンドである「Query」コマンドを送信する。リーダ本体16の制御部23によるこの機能が、各請求項記載の送信制御手段に相当する。この「Query」コマンドには、例えば0から15までのいずれかの所定数で指定するスロット数指定値Qが含まれている。「Query」コマンドが送信されると、各無線タグTは0から2のQ乗−1までの乱数を乱数発生器(図示せず)により生成し、その生成した乱数をスロットカウント値Sとして保持する。
【0069】
リーダ本体16は、アンテナ15を介して上記「Query」コマンドを送信した後、複数の識別スロットで無線タグTからの応答を待ち受ける。この識別スロットとは、この「Query」コマンド又は後述する「QueryRep」コマンドを始めに送信してから、所定の期間で区分される時間枠である。識別スロットは、通常、所定回数が連続して繰り返される。すなわち、識別スロットの回数は、「Query」コマンドの第1識別スロットが1回と、「QueryRep」コマンドの第2以降の識別スロット2−1回との、合計2回である。
【0070】
図示の無線タグTが、スロットカウント値Sとして値0を生成した場合は、この「Query」コマンドを含んだ第1識別スロットで応答する。すなわち、当該無線タグTは、タグ情報を送信する許可を得るための例えば16ビットの擬似乱数を用いた「RN16」コマンドを、応答信号としてリーダ本体16へ送信する。
【0071】
上記「RN16」コマンドを受信したリーダ本体16は、この「RN16」コマンドに対応する内容でタグ情報の送信を許可する「Ack」コマンドを、当該無線タグTへ送信する。この「Ack」コマンドを受信した無線タグTは、タグ情報の送信を許可されたものとみなし、タグIDを含むタグ情報を送信する。このようにして、一つの識別スロットにおける信号の送受信が行われる。
【0072】
その後、さらに2番目以降の識別スロットでは、リーダ本体16は「Query」コマンドの代わりに「QueryRep」コマンドを送信し、その直後に設けられる識別スロット時間枠で他の無線タグT(図示せず)の応答を待つ。リーダ本体16の制御部23によるこの機能も、各請求項記載の送信制御手段に相当する。「QueryRep」コマンドを受信した各無線タグTは、自身の上記スロットカウント値Sの値を一つだけ減算して保持する。そして、各無線タグTは、スロットカウント値Sが値0になった時点の識別スロットで、上記と同様の「RN16」コマンドを初めとした信号の送受信をリーダ本体16との間で行う。
【0073】
このようにして、各無線タグTが、異なる識別スロットで応答信号を返信する。これにより、アンテナ15を介し、リーダ本体16は、混信を受けることなく一つ一つの無線タグTのタグ情報を明確に受信し取り込むことができる。リーダ本体16の制御部23による上記の機能が、各請求項記載の受信制御手段に相当する。
【0074】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0075】
また本変形例においては、以下の効果をさらに得ることができる。すなわち、前述のようにして荷物12が往復振動する場合、周期の1/2である往路移動時間又は復路移動時間の間は、移動による加速度により、無線タグTと対象物11との位置関係、が変化した状態が維持される可能性が高い。そこで本変形例では、上記ステップS55(図3参照)において荷台20が往復振動する際、上記識別スロットの数で決まる最大通信時間を基準に、当該最大通信時間の2倍以上の周期で荷台20が往復振動するように、制御部23がモータ21を制御する。
【0076】
これにより、荷物12が往復振動する周期の1/2の時間、すなわち上述した往路移動時間又は復路移動時間が、最大通信時間よりも大きくなる。最大通信時間とは、上記における「Select」コマンドから2−1回目の「QueryRep」コマンドの応答までの時間で、全ての「Query」及び「QueryRep」コマンドに応答が合った場合にかかる時間もしくは荷物12内の全無線タグTから応答があった場合にかかる時間のことである。この結果、無線タグTとの通信時間が最も長引いた場合を想定しても、上記位置関係が変わった状態が維持されている間に、無線タグTとの情報送受信が確実に完了する。これにより、無線タグTからの情報読み取りにおける信頼性をさらに向上することができる。
【0077】
(3)鉛直方向の振動を与える場合
上記実施形態では、ラック・アンド・ピニオン機構により荷台20に水平面内で振動を与えるようにした。本変形例では、カム機構を使用し荷台20に鉛直面内で振動を与える。
【0078】
本変形例の無線タグ読み取り装置10は、図5(a)に示すように、荷台20の長手方向に間隔をあけて脚部27,28が配置されている。荷台20の図示左側部が脚部27上に載置されている。荷台20の図示右側部が、脚部28の上端に支軸28aにより回転可能に結合されている。荷台20の左端の下面には、モータ21に取り付けたカム29の一端が接触して配置されている。モータ21で駆動されるカム29により、荷台20は、支軸28aを支点として鉛直面内で揺動可能である。
【0079】
すなわち、図5(b)に示すように、モータ21がカム29を矢印方向に回転すると、カム29により荷台20の左端側が押し上げられ、荷台20の左端側が支軸28aを支点として上方へ持ち上がる。その後、カム29の回転がさらに進むと、カム29が荷台20から外れ、荷台20の左端側が脚部27上に落下して荷台20は元の水平姿勢に戻る。これにより、モータ21によるカム29の1回転で、荷台20に上下方向の振動を1回与えることができる。
【0080】
本変形例のその他の構成、及び、制御部23による制御内容は、上記実施形態と同様であるので、説明を省略する。本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0081】
(4)荷物を傾斜させる場合
以上では、荷台20を振動させることで無線タグTと対象物11との位置関係を変化させたが、これに代えて、本変形例では、油圧ジャッキにより荷台20を傾斜させる。
【0082】
図6(a)に示すように、本実施形態の無線タグ読取装置10は、荷台20への駆動力を発生する駆動手段として、荷台20を振動させるための駆動力を発生する振動駆動手段としてのモータ21と、荷台20を傾斜させるための駆動力を発生する伸縮駆動手段としての油圧ジャッキ36とを備える。
【0083】
荷台20の下方には、荷台20の長手方向に間隔をあけて脚部31,32が配置され、脚部31,32上に荷台20と平行な案内フレーム33が設置されている。荷台20は、長手方向の図示左側部の下面にローラ34を備え、図示右側部の下面に支軸35を備えている。荷台20の右側部には、荷台20と直角の衝立部30が一体に設けられている。
【0084】
案内フレーム33は、上フレーム33aと、上フレーム33aより幅広の下フレーム33bとを備えている。上フレーム33aから幅方向に突出した下フレーム33bがローラ34の載置面となっている。また、上下のフレーム33a,33bの間に、支軸35を摺動自在に嵌合する案内溝33が形成されている。
【0085】
荷台20の下面には、ローラ34と支軸35との間にラック24が長手方向に設けられている。ラック24は、上記実施形態と同様、モータ21に取り付けたピニオン26に噛合されている。モータ21は、モータ駆動部22を介して制御部23に接続されている。モータ21が正方向又は逆方向に回転すると、ローラ34を載置した上フレーム33aと支軸35を嵌合した案内溝33cとにより荷台20が案内されつつ、荷台20が、ラック24及びピニオン26により左右方向に振動する。
【0086】
油圧ジャッキ36は、荷台20の図示左端に取り付けられている。油圧ジャッキ36のロッド36aは、制御部23の制御によってジャッキ駆動部37から供給される圧油により、伸縮駆動する。油圧ジャッキ36が駆動されてロッド36aが伸張すると、図6(b)に示すように、荷台20の左端側が支軸35を支点として押し上げられ、荷台20が傾斜する。これにより、荷台20上に置かれた荷物12が傾く。
【0087】
本変形例の制御部23が実行する制御手順を図7により説明する。図7のフローでは、図3のフローのステップS45に代え、ステップS45Aが設けられる。また、ステップS45AとステップS55との間にステップS51が新たに設けられる。さらに、このステップS51から分岐して、ステップS75、ステップS76、ステップS77、及びステップS78の手順が新たに設けられている。
【0088】
ステップS5〜ステップS40までの手順は、図3のフローチャートと同様である。ステップS40の後のステップS45Aでは、制御部23は、荷物12内の対象物11の無線タグTに対する読み取り結果が、予め定めた第3読み取り完了条件を満たすかどうかを判定する。この例では、第3読み取り完了条件は、前述の第2読み取り完了条件と同様、荷物12内の対象物11の全無線タグTについてタグ情報を読み取れたことである。したがって、このステップS45Aでは、ステップS45と同様、制御部23は、ステップS40において取得されたタグIDの個数と、ステップS5において取得された荷物情報リストに記載されたタグIDの個数とを比較する。そして、制御部23は、ステップS40で取得されたタグIDの個数が、荷物情報リストに記載のタグIDの個数に達しているかどうかを判定する。この手順が各請求項記載の第5判定手段として機能すると共に、第1判定手段としても機能する。またステップS45Aが第1判定手段として機能する場合には、上述した、荷物12内の対象物11の全無線タグTについてタグIDを読み取れたことは、第1読み取り完了条件にも相当している。ステップS40で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載の全タグID数に達していればステップS45Aの判定が満たされ、新たに設けた上記ステップS51に移る。
【0089】
ステップS51では、制御部23は、上記ステップS5で取得した荷物情報リストに含まれる上記振動・傾斜の可否情報に基づき、荷物12内を傾斜して良いか否かを判定する。この手順もまた、ステップS25と同様、各請求項記載の第2判定手段として機能する。傾斜が禁止されている場合は、上記図3と同様のステップS55に移る。以降、ステップS55、ステップS60、ステップS65、ステップS70、ステップS75、及びステップS85は、図3と同様であるので説明を省略する。
【0090】
一方、上記ステップS51において、上記振動・傾斜の可否情報において荷物12の傾斜が許容されている場合には、ステップS51の判定が満たされ、新たに設けたステップS76に移る。
【0091】
ステップS76では、制御部23は、ジャッキ駆動部37に制御信号を出力する。これにより、ジャッキ駆動部37からの圧油により油圧ジャッキ36のロッド36aが伸張し、支軸35を支点として荷台20を上方へ持ち上げて傾斜させる。これにより、荷台20上の荷物12が傾くので、荷物12の箱13の内部において対象物11の姿勢や収納態様が変化する。この結果、無線タグTと対象物11との位置関係が変化し、無線タグTと対象物11との上記無線通信に適さない状況が解消される。なお、この手順が、各請求項記載の傾斜制御手段として機能すると共に、制御手段としても機能する。
【0092】
その後、ステップS77で、制御部23は、上記ステップS10等と同様に、リーダ本体16に制御信号を出力し、荷台20上の荷物12内の対象物11に設けた無線タグTからタグIDを取得する。すなわち、制御部23は、再び無線タグTからの情報読み取りを実行する。その後、ステップS78に移る。
【0093】
ステップS78では、制御部23は、ジャッキ駆動部37に制御信号を出力する。これにより、ジャッキ駆動部37からの圧油を用いた制御により油圧ジャッキ36のロッド36aが後退し、支軸35を支点として荷台20が下方へ下がり水平状態に戻る。これにより、荷物12が元の傾きのない姿勢に戻る。なお、この手順もまた、各請求項記載の制御手段として機能する。
【0094】
その後、ステップS79で、制御部23は、上記ステップS45A等と同様、荷物12内の全部の対象物11について無線タグTからタグ情報を読み取ったか否かを判定する。すなわち、前述と同様、制御部23は、ステップS77において取得されたタグIDの個数と、ステップS5において取得された荷物情報リストに記載されたタグIDの個数とを比較する。そして、制御部23は、ステップS77で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載のタグIDの個数に達しているかどうかを判定する。ステップS77で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載のタグIDの個数に達していればステップS79の判定が満たされ、上記フローを完了する。ステップS77で取得されたタグIDの数が、荷物情報リストに記載の全タグID数に達していなければステップS79の判定が満たされず、上記ステップS55に移る。上記以外は図3と同様であり、説明を省略する。
【0095】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0096】
また、本変形例においては、荷物12内の無線タグTからの情報読み取り結果が上記第1読み取り完了条件を満たさない場合、ステップS35で、まず所定の期間、荷物12が振動する。その後、さらに情報読み取り結果が上記第3読み取り完了条件を満たさない場合には、ステップS76で、荷物12が傾斜する。これにより、必要最小限の振動で無線通信に適さない状況が解消された場合には、以降の傾斜は行わず、読み取り作業時間の短縮化を図ることができる。また、上記必要最小限の振動では無線通信に適さない状況が十分に解消されない場合は、さらに傾斜を行うことで、情報読み取り率を確実に向上することができる。
【0097】
(5)荷台に反射部を設ける場合
本変形例の無線タグ読み取り装置10は、図8に示すように、配置手段である荷台40が、荷物12を載せるプラスチック等の非金属製のステージ部41と、そのステージ部41の下に設けられた金属部42と、から構成されている。金属部42の上面の中央部は、三角形状に突出した反射面42aとなっている。反射面42aは、図示破線矢印で示すように、アンテナ15から放射された電波43を、斜め上方に反射可能である。
【0098】
荷台40は、既に述べた荷台20と同様、可動軸25上に載置される。そして、金属部42の下面に設けたラック24がモータ21のピニオン26と噛合した、ラック・アンド・ピニオン機構により、荷台40は水平面内を左右方向に振動可能である。その他の構成、及び、制御部23の制御内容は、上記実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0099】
例えば、複数の対象物11が収納された荷物12の内部において、下方に位置する対象物11に設けられた無線タグTは、情報読み取りが困難な場合がある。本変形例においては、荷台40のステージ部41の下に反射面42aが設けられている。そして、この反射面42での反射を利用して、アンテナ15から放射された電波43が下方から荷物12へと入射する。これにより、荷物12の内部で下方に位置する対象物11に設けられた無線タグTに対しても、確実に情報読み取りを行え、情報読み取り率をさらに確実に向上することができる。
【0100】
(6)その他
以上においては、対象物11を収納した荷物12を上部に配置する配置手段として、荷台20,40を例にとって説明したが、これに限られず、荷物12を載置するコンベア等であってもよい。
【0101】
また、以上においては、収納体である荷物12を、配置手段である荷台20,40やコンベアの上部に配置したが、これに限られない。すなわち、それら配置手段から荷物12を吊り下げるように配置してもよい。いずれの場合も、配置手段が、収納体である荷物12を、無線タグTがアンテナ15と通信可能な範囲内となるように、配置するようにすれば足りる。
【0102】
以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0103】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0104】
10 無線タグ読み取り装置
11 対象物
12 荷物(収納体)
15 アンテナ(アンテナ手段)
16 リーダ本体
20 荷台(配置手段)
21 モータ(振動駆動手段、駆動手段)
23 制御部
36 油圧ジャッキ(伸縮駆動手段、駆動手段)
40 荷台(配置手段)
41 ステージ部
42a 反射面
T 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に備えられた無線タグに対し、無線通信により情報読み取りを行う無線タグ読み取り装置であって、
前記無線タグに対し無線通信による情報読み取りを実行可能なアンテナ手段と、
少なくとも1つの前記対象物が収納された収納体を、前記対象物に備えられた前記無線タグが前記アンテナ手段と通信可能な範囲内に配置する配置手段と、
前記配置手段を変位させる駆動力を発生する駆動手段と、
前記アンテナ手段を用いた前記無線タグに対する情報読み取り結果が、予め定めた第1読み取り完了条件を満たすかどうかを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段により、前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第1読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を振動又は傾斜させるように、前記駆動手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする無線タグ読み取り装置。
【請求項2】
前記アンテナ手段は、
前記駆動手段により、前記配置手段が振動又は傾斜した後、若しくは、当該振動又は傾斜している最中に、前記無線タグに対して情報再読み取りを行う
ことを特徴とする請求項1記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項3】
前記収納体に対する振動又は傾斜の実行の可否を判定する第2判定手段を有し、
前記制御手段は、
前記第1判定手段により、前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記所定の第1読み取り完了条件を満たさないと判定され、かつ、前記第2判定手段により、前記収納体に対する振動又は傾斜を実行してもよいと判定された場合に、前記配置手段を振動又は傾斜させるように、前記駆動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項4】
前記第1判定手段により、複数の前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記所定の第1読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記アンテナ手段を用いた前記無線タグに対する情報読み取り結果が、予め定めた少なくとも1つの読み取り評価条件を満たすかどうかを判定する第3判定手段を有し、
前記制御手段は、
前記第3判定手段により前記少なくとも1つの読み取り評価条件を満たすと判定されたかどうかに応じて前記配置手段の振動態様又は傾斜態様を変化させるように、前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記配置手段を振動させるための駆動力を発生する振動駆動手段を含み、
前記制御手段は、前記第1判定手段により前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第1読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を所定の期間振動させるように、前記振動駆動手段を制御する第1振動制御手段を含み、
前記第1振動制御手段の制御に基づき、前記振動駆動手段が前記配置手段を所定の期間振動させた後、前記アンテナ手段を用いた前記無線タグに対する情報読み取り結果が、予め定めた第2読み取り完了条件を満たすかどうかを判定する第4判定手段を設け、
前記制御手段は、前記第4判定手段により前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第2読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を連続的に往復振動させるように、前記振動駆動手段を制御する第2振動制御手段を含む
ことを特徴とする請求項4記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項6】
前記無線タグから情報を取得するための読み取りコマンドを生成し、前記アンテナ手段を介し前記無線タグに送信する送信制御手段と、
前記送信制御手段で生成され送信された前記読み取りコマンドに応じて前記無線タグから送信された応答信号を、複数の識別スロットに区分して受信可能な受信制御手段と
を有し、
前記第2振動制御手段は、
前記受信制御手段で用いる前記識別スロットの数ごとに決まる最大通信時間の2倍以上の周期で、前記配置手段を振動させる
ことを特徴とする請求項5記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記配置手段を振動させるための駆動力を発生する振動駆動手段と、前記配置手段を傾斜させるための駆動力を発生する伸縮駆動手段と、を含み、
前記制御手段は、前記第1判定手段により前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第1読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を所定の期間振動させるように、前記振動駆動手段を制御する第1振動制御手段を含み、
前記第1振動制御手段の制御に基づき、前記振動駆動手段が前記配置手段を所定の期間振動させた後、前記アンテナ手段を用いた前記無線タグに対する情報読み取り結果が、予め定めた第3読み取り完了条件を満たすかどうかを判定する第5判定手段を設け、
前記制御手段は、前記第5判定手段により前記無線タグに対する前記情報読み取り結果が前記第3読み取り完了条件を満たさないと判定された場合に、前記配置手段を所定の角度で傾斜させるように、前記伸縮駆動手段を制御する傾斜制御手段を含む
ことを特徴とする請求項4記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項8】
前記配置手段は、
前記収納体を載せる非金属製のステージ部と、
前記ステージ部の下に位置し、前記アンテナ手段から放射された電波を反射させ、前記ステージ部に載せられた前記収納体の下方から電波を入射させるための反射面と
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の無線タグ読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−165019(P2011−165019A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28366(P2010−28366)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】