説明

無線受信装置

【課題】耐マルチパスフェージング特性を改善し、周波数特性の落ち込みを考慮してチャネル推定を行う、無線受信装置を提供する。
【解決手段】周波数帯が互いに異なる複数のチャネルの中から、無線端末から送信される信号のチャネルを無線端末から受信した信号に基づいて判断する無線受信装置であって、受信信号に基づいて各チャネルの伝達関数を算出する伝達関数算出部と、伝達関数の周波数特性の落ち込みを考慮して、最も低いビット誤り率のチャネルを判断するチャネル判断部376と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線受信装置に係り、特に、マルチパスフェージングの環境下で受信した信号に基づいてチャネルを選択する無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線モードを用いて通信を行う無線通信システムが従来から知られている。たとえば、通信モードとしてシングルキャリア(以下、SCと呼ぶ。)伝送とマルチキャリア(以下、MCと呼ぶ。)伝送とを行う無線端末と、この無線端末と通信することが可能な基地局と、を備えた無線通信システムが提案されている。以下、SC/MCハイブリッド無線通信システムと呼ぶ場合がある。
【0003】
ここではアップリンク伝送を例として以下に説明する。図19は無線端末の無線送信装置70のブロック図であり、図20は基地局の無線受信装置80のブロック図である。
【0004】
無線送信装置70は、送信部71と、切り替え制御部72と、を備えている。
送信部71は、データ系列の送信信号をシンボル系列の送信信号に変換するデータ変調部711と、シングルキャリア伝送用変調部712と、マルチキャリア伝送用変調部713と、シングルキャリア伝送用変調部712とマルチキャリア伝送用変調部713からの周波数領域成分の信号を時間領域成分の信号に変換する逆フーリエ変換(以下、IFFTと呼ぶ場合がある。)部714と、逆フーリエ変換部714からの時間領域成分の信号にガードインタバルを付加するガードインタバル部715と、ガードインタバルを付加された時間領域成分のディジタル信号をアナログ信号に変換するDAコンバータ部716と、DAコンバータ部716からのアナログ信号をRF信号に変換する周波数変換部717と、シングルキャリア伝送とマルチキャリア伝送の2つの無線モードに対応して切り替えを行うスイッチ部718と、を備えている。
【0005】
シングルキャリア伝送用変調部712は、シンボル系列の送信信号を周波数領域成分の信号に変換するフーリエ変換(以下、FFTと呼ぶ場合がある。)部712Aと、フーリエ変換部712Aの出力にフィルタ係数を乗積する送信フィルタ処理部712Bと、送信フィルタ処理部712Bの出力に無線モードに対応して周波数配置を与える周波数マッピング部712Cと、を備えている。
【0006】
マルチキャリア伝送用変調部713は、シンボル系列の信号を並列に並び替える直並列変換部713Aと、直並列変換部713Aの出力に無線モードに対応して周波数配置を与える周波数マッピング部712Cと、を備えている。
切り替え制御部72は2つの無線モードを切り替える。
【0007】
無線受信装置80は、受信部81と伝搬路推定部82とを備えている。
受信部81は、RF信号に対応して周波数を変換する周波数変換部811と、周波数変換されたアナログ信号をディジタル信号に変換するADコンバータ部812と、ADコンバータ部812からのディジタル信号からガードインタバルを除去するガードインタバル除去部813と、時間領域成分の信号を周波数領域成分の信号に変換するフーリエ変換部814と、シングルキャリア伝送用復調部815と、マルチキャリア伝送用復調部816と、を備えている。
【0008】
シングルキャリア伝送用復調部815は、周波数配置を変更する周波数デマッピング部815Aと、伝送路の線形歪みを周波数上で補償する周波数領域等化部(Frequency Domain Equalization:以下、FDEと呼ぶ場合がある。)815Bと、周波数領域等化部815Bからの出力にフィルタ係数を乗積する受信フィルタ部815Cと、周波数領域成分の信号を時間領域成分の信号に変換する逆フーリエ変換部815Dと、復調されたシンボル系列の受信信号をデータ系列の受信信号に変換するデータ復調部815Eと、を備えている。
【0009】
マルチキャリア伝送用復調部816は、周波数配置を変更する周波数デマッピング部815Aと、伝送路の線形歪みを周波数上で補償する周波数領域等化部815Bと、周波数領域等化部815Bからの並列配置された信号を直列に並び替える並直列変換部816Aと、復調されたシンボル系列の受信信号をデータ系列の受信信号に変換するデータ復調部816Bと、を備えている。
【0010】
伝搬路推定部82は、各無線モードに対して伝搬路を推定評価する。具体的には、伝搬路推定部82が伝達関数の推定を行い、この推定に基づいてFDEが伝送路歪の補償を行う。
【0011】
無線受信装置20の伝搬路推定部82で推定評価された結果に基づいて、周波数領域等化部815Bの係数を制御することにより伝搬路の線形歪みを補償するとともに、無線受信装置20の伝搬路推定部82で推定評価された結果の制御情報に基づいて、無線送信装置70の切り替え制御部72を介して、データ変調部711、周波数マッピング部712Cおよびスイッチ部718を切り替え制御することで、無線送信装置70から送出する信号の無線モードを適応的に切り替えることができる。
【0012】
このように、SC伝送とMC伝送とを行う無線通信システムが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−42492号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】D.C. Chu, “Polyphase codes with good periodic correlation properties,” IEEE Trans. Info. Theory, July 1972, pp 531-532)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のSC/MCハイブリッド無線通信システムでは、図20に示すように、無線受信装置80が伝搬路推定部82を備え、チャネルの推定が行われる。ここで、従来のチャネル推定手法について説明する。
【0016】
図21は3ユーザの伝達関数例を示す。縦軸は、スケジューリング手法の一つであるProportional Fairness 法のユーザ選択指標である。ユーザiのユーザ選択指標Γは下記の式(1)により定義される。
【数1】

ここで、γii′は、それぞれユーザiの瞬時信号対雑音電力比(Signal to Noise ratio; 以下、SNRと呼ぶ。)と平均SNRである。この指標を用いることで基地局付近のユーザとセル端側にいるユーザの公平性を保つことができる。
【0017】
図21は周波数選択性の小さな場合のユーザ選択例を示す。各ユーザのΓは全体的になだらかな変化であり、各チャネルa〜g内での変化も少ない。このため、ユーザ選択はチャネルa〜g内のΓの平均値が一番高いユーザにチャネルを割り当てることが最適であると考えられる。なお、図21において、下側の1〜3の数字は、当該チャネルを割り当てられたユーザの番号iを表している。
【0018】
図22は高速伝送を想定し周波数選択性の大きな場合のユーザ選択例を示す。各ユーザのΓは非常に大きく変化しており、各チャネルa〜g内でのΓも大きく変化する。この時、チャネルa〜g内での深い周波数軸上での伝達関数の落ち込みはビット誤り率(Bit Error Rate: 以下、BERと呼ぶ。)特性の劣化を引き起こすと考えられる。
【0019】
しかし、Γの平均は高いが、深い落ち込みがある伝達関数である場合にBER特性が悪いチャネルにも拘らず、選択される可能性がある。このように、高速伝送を想定し、チャネルa〜g内での周波数の深い落ち込みがある場合には、Γの平均値のみでは、最適なチャネル割り当てが難しいと考えられる。これは最適なチャネルを選択する場合に重要である。
【0020】
そこで、本発明は、耐マルチパスフェージング特性を改善し、周波数特性の落ち込みを考慮してチャネル推定を行う、無線受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は、周波数帯が互いに異なる複数のチャネルの中から、無線端末から送信される信号のチャネルを上記無線端末から受信した信号に基づいて判断する無線受信装置であって、上記無線端末から受信した信号に基づいて各チャネルの伝達関数を算出する伝達関数算出部と、上記伝達関数の周波数特性の落ち込みを考慮して、最も低いビット誤り率のチャネルを判断するチャネル判断部と、を備えていることを特徴としている。
【0022】
本発明の無線受信装置において、チャネル判断部は、好ましくは、評価値Pave,Pmin,Pdiffを算出する評価値算出部と、評価値Paveと評価値Pdiffとに対応したビット誤り率の関係を示す参考情報と、上記評価値算出部で算出された各チャネルの評価値Paveと評価値Pdiffとに基づいて、各チャネルのビット誤り率を求め、最も低いビット誤り率のチャネルを選択する選択部と、を備えている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、伝達関数の周波数特性の落ち込みを考慮して、低BER特性のチャネルを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムのブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線端末の無線送信装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基地局の無線受信装置のブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る無線受信装置の伝搬路推定部のブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る無線受信装置のチャネル判断部での処理内容を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係る無線受信装置の選択部での処理に用いる情報を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る無線受信装置の選択部での処理を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態に係るチャネル推定手法のシミュレーション条件を説明するための図である。
【図9】伝達関数とチャネルの評価値Paveの変動例を示す図である。
【図10】評価値Pdiffの累積分布関数特性を示す図である。
【図11】(A)はPave=0[dB]時における各チャネルの伝達関数、(B)はMMSE等化重み係数の一例を示す図である。
【図12】等化による雑音増加量の算出処理を示すブロック図である。
【図13】評価値PdiffとMMSE等化による雑音増加量NMMSEを示す図である。
【図14】評価値Pave=0[dB]時の評価値PdiffとBER特性との関係を示す図である。
【図15】MMSE等化による雑音増加を考慮した際の信号対雑音電力比とBER特性を示す図である。
【図16】評価値Paveと評価値PdiffによるBER特性の関係を示す図である。
【図17】評価値Paveと評価値PdiffとBERとの関係を示す図である。
【図18】あるユーザの送信信号の各チャネルの各評価値Paveと評価値PdiffとBERとの関係を示す図である
【図19】従来の無線端末の無線送信装置を示すブロック図である。
【図20】従来の基地局の無線受信装置を示すブロック図である。
【図21】従来の基地局の無線受信装置でのチャネル推定方法を説明するための図である。
【図22】従来の基地局の無線受信装置でのチャネル推定方法の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る無線通信システム1のブロック図である。無線通信システム1は、複数の無線モードを切り替えて送信する機能を有する複数の無線端末2と、複数の無線モードを同時に受信する機能を有する基地局3と、を備えている。
【0026】
図2は本発明の実施形態に係る無線端末2の無線送信装置20のブロック図である。
無線送信装置20は、データ変調部21と、シングルキャリア伝送用変調部22と、マルチキャリア伝送用変調部23と、逆フーリエ変換部24と、ガードインタバル挿入部25と、D/A変換部26と、周波数変換部27と、スイッチ部28と、制御部29と、を備えている。
【0027】
データ変調部21は、データ系列の送信信号をシンボル系列の送信信号に変換する。
【0028】
シングルキャリア伝送用変調部22は、シングルキャリア伝送用に送信信号を変調する。シングルキャリア伝送用変調部22は、シンボル系列の送信信号を周波数領域成分の信号に変換するフーリエ変換部221と、フーリエ変換部221の出力にフィルタ係数を乗積する波形成形部222と、波形成形部222の出力にSCモードに対応して周波数配置を与える周波数マッピング部223と、を備えている。
【0029】
マルチキャリア伝送用変調部23は、マルチキャリア伝送用に送信信号を変調する。マルチキャリア伝送用変調部23は、シンボル系列の信号を並列に並び替える直並列変換部231と、直並列変換部の出力にMCモードに対応して周波数配置を与える周波数マッピング部223と、を備えている。
【0030】
逆フーリエ変換部24は、シングルキャリア伝送用変調部22とマルチキャリア伝送用変調部23からの周波数領域成分の信号を時間領域成分の信号に変換する。
【0031】
ガードインタバル挿入部25は、逆フーリエ変換部24からの時間領域成分の信号にガードインタバルを付加する。本明細書では、ガードインタバルをGIと呼ぶ場合がある。
【0032】
D/A変換部26は、ガードインタバルを付加された時間領域成分のディジタル信号をアナログ信号に変換する。
【0033】
周波数変換部27は、D/A変換部からのIF(中間周波数)信号をRF信号に変換する。
【0034】
スイッチ部28は、シングルキャリア伝送とマルチキャリア伝送の2つの無線モードに対応して、信号の出力方向の切り替えを行う。
【0035】
制御部29は、2つの無線モード、つまりシングルキャリア伝送のモードとマルチキャリア伝送のモードとを、後述する基地局3からの制御信号に基づいて切り替える。具体的には、無線送信装置20の制御部29が、データ変調部21、周波数マッピング部223及びスイッチ部28を切り替え制御することによって、無線送信装置20から送出する信号の無線モードが切り替えられる。
【0036】
図3は本発明の実施形態に係る基地局3の無線受信装置30のブロック図である。
無線受信装置30は、周波数変換部31と、A/D変換部32と、ガードインタバル除去部33と、フーリエ変換部34と、シングルキャリア伝送用復調部35と、マルチキャリア伝送用復調部36と、伝搬路推定部37と、を備えている。
【0037】
周波数変換部31は、RF信号をIF(中間周波数)信号に変換する。A/D変換部32は周波数変換されたアナログ信号をディジタル信号に変換する。ガードインタバル除去部33はA/D変換部32からのディジタル信号からガードインタバルを除去する。フーリエ変換部34は時間領域成分の信号を周波数領域成分の信号に変換する。
【0038】
シングルキャリア伝送用復調部35は、周波数配置を変更する周波数デマッピング部351と、伝送路の線形歪みを周波数上で補償する周波数領域等化部352と、周波数領域等化部352からの出力にフィルタ係数を乗積する波形整形部353と、波形整形部353の信号を時間領域成分の信号に変換する逆フーリエ変換部354と、復調されたシンボル系列の受信信号をデータ系列の受信信号に変換するデータ復調部355と、を備えている。
【0039】
マルチキャリア伝送用復調部36は、周波数配置を変更する周波数デマッピング部351と、伝送路の線形歪みを周波数上で補償する周波数領域等化部352と、周波数領域等化部352からの並列配置された信号を直列に並び替える並直列変換部361と、復調されたシンボル系列の受信信号をデータ系列の受信信号に変換するデータ復調部362と、を備えている。
【0040】
ここで、受信信号からGIを除去した後の受信信号をr(t)とすると、受信信号r(t)をフーリエ変換部で周波数領域に変換して、信号R(n)を得る。そして周波数領域等化部352でのFDE処理後の信号R′(n)は、次式(2)で表される。
【数2】

式(2)において、w(n)は等化重みである。
【0041】
伝搬路推定部37は、受信信号の伝搬路歪みを周波数領域等化部352で等化するために、等化重みw(n)を演算する。
このため、伝搬路推定部37は、図4に示すように、逆フーリエ変換部371と、ウィンドウィング処理部372と、フーリエ変換部373と、ノイズ推定部374と、重み計算部375と、を備えている。
【0042】
伝搬路推定部37は、受信信号に含まれるパイロット信号P(t)に基づいて伝達関数H(n)を求める。本実施形態では、チャネル推定手法として、無線送信装置20と無線受信装置30の双方が既知の信号、つまりパイロット信号P(t)を伝搬信号に挿入する手法を利用する。このパイロット信号P(t)には、例えば時間領域と周波数領域とにおいて振幅が一定なChuシーケンス(非特許文献1)を利用する。
【0043】
伝搬路推定部37は、デマッピング部351(図3)からの周波数信号P(n)から伝達関数H(n)を求める際、ノイズや遅延の影響を除去するために、ウィンドウィング処理を行う。これをウィンドウィング処理部372が行う。ウィンドウィング処理部372では、周波数信号P(n)を逆フーリエ変換部371で時間領域に変換した信号P(t)に対して、周波数信号P(n)のインパルス応答に基づいてGI時間外の振幅信号を0にした信号P′(t)を生成する。その後、フーリエ変換部373で再び信号P′(t)を周波数領域に変換して伝達関数H(n)を得る。これらの逆フーリエ変換部371、ウィンドウィング処理部372、フーリエ変換部373が、伝達関数算出部として機能する。
【0044】
また、伝搬路推定部37では、ノイズ推定部374が伝達関数のインパルス応答に基づいてノイズ電力σ2を求める。
【0045】
そして、重み計算部375が、伝達関数H(n)とノイズ電力σ2とを用いて等化重みw(n)を算出する。例えば、等化重みw(n)は規範として、MMSE(Minimum Mean Square Error)基準、ZF(Zero Forcing)基準などを利用する。ここで、下記の式(3)がMMSEに基づく等化重み係数を示し、式(4)がZFに基づく等化重み係数を示している。
【数3】

【数4】

これらの式に、伝達関数H(n)とノイズ電力σ2とを代入することで、等化重みw(n)を算出することができる。なお、式(3)、(4)において、H(n)は伝達関数のn番目の周波数要素であることを意味し、*は複素共役演算を意味する。
このようにして得られた等化重みw(n)を用いて、周波数領域等化部352では、受信信号と等化重みの乗算が各周波数点で行われる。
【0046】
伝搬路推定部37は、上記のように等化重みw(n)を算出する処理(以下、第1処理と呼ぶ。)に加えて、下記の第2及び第3処理を行う。
第2処理: チャネル判断
第3処理: 伝送モード判断
これらの処理を以下、順に説明する。
【0047】
チャネル判断部376での第2処理、つまりマルチパスフェージング環境下で受信した信号に関して、BERの低いチャネルを選択するチャネル判断処理について説明する。ここで、図5はチャネル判断部376での処理内容を説明するための図である。図5は、あるユーザが使用する無線端末2が送信した信号を基地局3で受信し、その受信信号を周波数で表した図である。横軸が周波数、縦軸が強度を表している。言い換えれば、図5はあるユーザからの受信信号に関して、使用可能な全帯域40MHz内での伝達関数H(n)を表している。図5に示す例では、全帯域を5MHz毎に帯域(チャネルCH1〜チャネルCH8)を区切っており、以下、8つの帯域に区分する場合を前提に説明する。
【0048】
チャネル判断部376は、伝達関数算出部で得られた伝達関数H(n)に基づいて、使用すべき帯域、BERの低いチャネルを判断する。
このため、チャネル判断部376は、図4に示すように、評価値算出部376Aと、選択部376Bと、記憶部376Cと、を備えている。
【0049】
評価値算出部376Aは、各チャネルの有効性を評価するための指標、つまり各チャネルのBERを求めるための情報を作成する。具体的には、本実施形態では、以下の式(5)〜(7)の評価関数を利用して、これらの式から求める値、つまり評価値Pave,Pmin,Pdiffを、BERを求めるための情報として取り扱う。評価値算出部376Aは、これらの評価値Pave,Pmin,Pdiffを算出する。
【0050】
【数5】

【数6】

【数7】

【0051】
ここで,NCは1チャネルのFFTポイント数であり、評価値Paveは1チャネルの平均電力、評価値Pminは1チャネル内の最小電力、評価値Pdiffは1チャネルの平均電力から最小電力の比であり伝達関数H(n)の落ち込みの程度を示す。以下、各評価値Pave,Pmin,Pdiffの記述に関して、「評価値」の語句を外してPave,Pmin,Pdiffとだけ表す。
【0052】
Paveはチャネルの平均SNRに影響を与え、Paveが大きいほどBER特性は良好である。一方、伝達関数H(n)の深い落ち込みが発生するほどPdiffは小さな値となる。そして、Pdiffが小さい場合は、周波数領域等化部352によって伝送路歪を補償することが難しく、BER特性に非常に大きな影響を与える。
チャネル判断部376の評価値算出部376Aは、これらのPave,Pmin及びPdiffをチャネルごと、図5に示す例で言えばチャネルCH1〜CH8ごとに算出する。評価値算出部376Aは、伝達関数算出部で得られた伝達関数H(n)、つまり各チャネルの帯域における伝達関数H(n)に基づいて各チャネルのPaveとPdiffとを算出する。
【0053】
選択部376Bは、各チャネルCH1〜CH8のPaveとPdiffとからBERを判断し、いずれかのチャネルを選択する。BERを判断する際、選択部376Bは、図6に示すPaveとPdiffとBERの関係を示すグラフ状の情報(以下、グラフ情報Refと呼ぶ。)を利用する。なお、図6に示すPaveとPdiffとBERの相関関係を示すグラフ情報Refは、各基地局3に固有の情報であり、基地局3毎に予め作成されたものを利用する。作成するタイミングとしては、基地局3を設置する際が該当するが、基地局3を設置した周辺の環境に応じて、当該グラフ情報Refを更新して利用しても良い。この情報Refは、記憶部376Cに格納されている。
【0054】
図6では、実線L1より下側の領域R1ではBERが10-3より大きく、実線L1と一点鎖線L2の間の領域R2ではBERが10-3より小さく10-4より大きく、一点鎖線L2と二点鎖線L3の間の領域R3ではBERが10-4より小さく10-5より大きく、二点鎖線L3より上側の領域R4ではBERが10-5より小さいことを表している。
【0055】
選択部376Bは、図6に示す情報Refと、評価値算出部376Aで算出した各チャネルCH1〜CH8のPaveとPdiffとに基づいて、各チャネルCH1〜CH8のBERを求める。図7の黒丸(●)印は各CH1〜CH8のBER特性を示している。ここで、選択部376Bは、最も低いBER特性を示すチャネルを選択する。本実施形態では、領域R4に含まれるチャネルを優先して選択するが、R4領域に該当するチャネルが無い場合はBER特性が領域R4より劣る領域R3に属するチャネルを選択する。この領域R3にチャネルが存在しない場合はさらに領域R2を対象とする。なお、同じ領域内に複数のチャネルが属する場合は、Paveが高い方を選択する。図7では領域R4にチャネルCH3とチャネルCH1とが含まれるが、選択部376BはPaveが高いチャネルCH1を選択する。
【0056】
さらに、チャネル判断部376は、第3処理、つまり無線端末2からの送信モードを選択する伝送モード判断処理を行う。
このため、伝搬路推定部37は、さらに図4に示すように、モード選択部377を備えている。
モード選択部377は、チャネル判断部376が選択したチャネルの周波数帯域における伝達関数H(n)のSNRを所定の参照値と比較し、SNRが参照値以下であればSC伝送、SNRが参照値より大きければMC伝送と判断する。この選択信号が制御信号として、無線送信装置20の制御部29へ送られる。
なお、モード選択部377は、FFT373からの伝達関数H(n)に代えて、図4で二点鎖線Bで示すように重み計算部375からの等化重みw(n)の情報を利用してもよい。
【0057】
以上の伝搬路推定部37はコンピュータなどの情報処理装置から構成される。この情報処理装置は、前もってインストールされたソフトウェアとしてのチャネル選択プログラムを実行することで、上記のチャネル選択手法を実現する。具体的には、情報処理装置がチャネル選択プログラムを実行することで、情報処理装置が前述の逆フーリエ変換部371と、ウィンドウィング処理部372と、フーリエ変換部373と、ノイズ推定部374と、重み計算部375と、チャネル判断部376と、評価値算出部376Aと、選択部376Bと、記憶部376Cと、モード選択部377として機能する。
【0058】
なお、情報処理装置は、従来公知の構成のものを使用することができ、RAM,ROM,ハードディスクなどの記憶装置と、キーボード,ポインティング・デバイスなどの操作装置と、操作装置等からの指示により記憶装置に格納されたデータやソフトウェアを処理する中央処理装置(CPU)と、処理結果等を表示するディスプレイなどを備えている。この情報処理装置は汎用の装置であっても、専用の装置として構成されたものであってもよい。
【0059】
本発明の実施形態に係る無線通信システム1は以上のように構成されており、伝搬路推定部37が、従来の第1処理に加えて、第2処理として、基地局3の無線受信装置30が無線端末2から送信された信号をマルチパスフェージングの環境下で受信した場合、その受信信号を周波数変換し、それらを細分化して分析する。つまり、各チャネルCH1〜CH8の評価関数(1)〜(3)に基づいて各チャネルCH1〜CH8のBERを求めて、BERの低いチャネルを選択する。
【0060】
さらに、伝搬路推定部37が、第2処理で推定評価した結果、つまり伝達関数に基づいて、携帯端末の無線送信装置への制御情報を作成する(第3処理)。例えば選択された伝達関数H(n)のSNRが所定の参照値以下であれば無線端末2の伝送モードをSC伝送に切り換えるように、制御信号が作成される。無線端末2の無線送信装置20では、基地局3の無線受信装置30の伝搬路推定部37からの制御信号に基づいて制御部29が、データ変調部21(送信側)、周波数マッピング部223(送信側)及びスイッチ部28(送信側)を切り替え制御することで、無線送信装置20から送出する信号の無線モードをSC伝送に切り替える。なお、SC伝送モード時に、基地局3で選択チャネルのSNRが所定の参照値より大きければ、伝送モードをMC伝送に切り換えるように、無線端末2は基地局3から制御信号を受信する。
【0061】
このように、本実施形態では、無線受信装置30のチャネル判断部376は、各チャネルのPave,Pmin,Pdiffに基づいて各チャネルのBER特性を評価し、最適なチャネルを選択する。この場合において、Pave,Pmin,Pdiffは伝達関数のみから簡易に算出可能であり、リアルタイムなチャネル選択が可能である。特に各チャネルに関して、各チャネルのPaveとPdiffを図6に示すPaveとPdiffとBERとの相関関係を示すグラフにプロットすること、つまりPaveに加えPdiffを考慮することによって、最も低BER特性のチャネルを選択することができる。
【0062】
次に、各チャネルの伝達関数に基づいたPave,Pmin,PdiffとBER特性とが相関関係があることを、シミュレーション結果に基づいて、以下の項目順に説明する。
(A1)シミュレーション条件
(A2)シミュレーションの目的
(A3)MMSE等化による雑音増加について
(A4)MMSE等化による雑音増加量の算出
(A5)MMSE等化による雑音増加を考慮した信号対雑音電力比とBER特性
(A6)チャネル推定手法
(A6−1)PaveとPdiffによるBER特性の関係
(A6−2)PaveとPdiffを活用したチャネル選択手法
(A7)まとめ
【0063】
(A1)シミュレーション条件
下記の表1にシミュレーション条件を示す。伝送方式はSC−FDMA、システム帯域幅は40MHz、サブチャネル帯域幅は5MHzとする。サブチャネルと全チャネル当たりのFFTポイント数はそれぞれ256と2048とした。GI長はシンボル長の1/8とした。RRC(Root Raised Cosine)フィルタのロールオフファクタを0.2、オーバサンプリングを8倍とした。図8に遅延波モデルを示す。具体的には、レイリーフェージングに基づく8パスの遅延波モデルを利用する。この時、各チャネルでのPaveとPdiffが変動することを想定して、遅延時間はシンボル時間の8倍以内でランダムに設定した。この遅延波モデルにおける遅延スプレッドは0.4μsである。
【表1】

【0064】
(A2)シミュレーションの目的
シミュレーションの目的は、Pdiffの発生確率と、PaveとPdiffによるBER特性の変化と、を確認する。これは、以下の事項に基づいている。
図9は3ユーザ(user1〜3)の伝達関数とPaveの変動例を示す。図9(A)に示すように、伝達関数の変動は非常に大きく変動しており、各ユーザ共に-30dBを下回る伝達関数の深い落ち込みが発生している。このような落ち込みがあると、Pdiffは-10dB〜-40dBと大きな幅をもって変化する。一方、Paveは、図9(B)に示すように、数dB以内で変動している。
【0065】
ここで、二点鎖線で示すuser3に注目すると、例えば30〜35MHzの帯域では、伝達関数は-30dBと非常に伝達関数の深い落ち込み(図中の円c1参照)があるにも拘わらずPaveは1dBと大きい。また、35〜40MHzの帯域では伝達関数は-10dBと伝達関数の落ち込みは小さい(図中の円c2参照)にも拘わらずPaveは-2dBと小さい。このように、PdiffとPaveの相関特性はあまり強くない。言い換えれば、Paveが高くともPdiffが小さい、つまり伝達関数の落ち込みが深いユーザが選択される可能性がある。
【0066】
図10はPdiffの累積分布関数(Cumulative Distribution Function:以下、CDFと呼ぶ。)特性を示す。各凡例はPaveが-4.0〜3.0dBのCDF特性である。図10に示すように、PdiffのCDF特性はPaveに拠らずほぼ同じである。これは、Paveの大小に拠らず、小さなPdiffが発生することを示している。よって、各Paveにおいて伝達関数の大きな落ち込みが発生するため、各PaveとPdiffに対応したBER特性を評価する必要がある。また、例えばPdiffが-30dB時のCDFは14〜16%発生することから、PdiffがBER特性に影響を与える可能性がある。
以上のことから、Pdiffの発生確率を確認し、PaveとPdiffによるBER特性の変化についてシミュレーションを行う。
【0067】
(A3)MMSE等化による雑音増加について
本発明者らは、PdiffがBER特性に与える影響の要因としてMMSE等化による雑音増加効果について検討を行った。MMSE等化では、通信路の白色雑音を強調する『雑音強調効果』と、伝達関数をすべての周波数要素において1に戻さないことによる『残留干渉効果』と、の二つの加算によって雑音増加量が決まると考えられる。以下、Pdiffと雑音増加量との相関性について説明する。
【0068】
(A4)MMSE等化による雑音増加量の算出
図11(A)はPave=0[dB]時における各ユーザ(user1〜3)の伝達関数|H(n)|2、図11(B)は|w(n)|2の一例を示す。この時、雑音電力は-18[dB]である。チャネル帯域幅は5MHzであり、FFTポイント数は256である。この時、伝達関数の深い落ち込みは各ユーザ共に1〜2箇所発生している。また、伝達関数|H(n)|2の落ち込みにはある程度の幅があり、-30[dB]の伝達関数|H(n)|2の落ち込み周辺では2〜5点程度が雑音電力を下回っている。MMSE等化重み係数|w(n)|2に注目すると、残留干渉効果が大きく発生すると考えられる。また、伝達関数|H(n)|2の最小点付近において強い雑音強調効果が発生している。ここで、伝達関数の最小電力が雑音電力以上であれば『雑音強調効果』とPdiffは比例関係になると考えられ、この時『残留干渉効果』の影響は小さいと考えられる。
以上のことより、5MHzで区切った各チャネル内で強い伝達関数|H(n)|2の落ち込みは数箇所しか発生せず、且つそれが雑音増加の要因である雑音強調効果と残留干渉効果と相関特性を持つと考えられるため、Pdiffによって雑音増加量を推定可能であると考えられる。
【0069】
図12は等化による雑音増加量の算出処理を示すブロック図である。パイロット信号とデータ信号は共にレイリーフェージングチャネル部を通過後、パイロット信号によって等化重み係数w(n)と通信路の雑音電力σ12を算出する。また、データ信号は等化重み係数w(n)を用い等化された後に、等化後の雑音電力Neqを算出する。ここで、MMSE等化による雑音増加量NMMSEは以下の式(8)で定義される。
【数8】

なお、この雑音増加量NMMSEは、『雑音強調効果』の雑音増加量と『残留干渉効果』の雑音増加量との和である。
【0070】
図13はPdiffとMMSE等化による雑音増加量NMMSEを示す。シミュレーションでは、Paveが0[dB]である結果のみを抽出して雑音増加量NMMSEの算出を行った。実線L4はシミュレーション結果の平均値を示し、Pdiff=18[dB]におけるCDF10%とCDF90%時のNMMSEはそれぞれ2.7[dB]と7.7[dB]であった。破線L5はシミュレーションでデータが得られなかった点であるが、Pdiff=0[dB]の時、伝達関数は全てのFFTポイントにおいて1となるため、等化による雑音増加は発生せずNMMSEは0[dB]になると考えられる。ここで、Pdiffが雑音電力である-18[dB]以上の領域では、雑音強調効果が支配的であると考えられるため、Pdiffの減少に比例してNMMSEは増加する。一方、Pdiffが-18[dB]以下の領域では、MMSE等化重み係数w(n)は折り返しが発生するために雑音強調効果は飽和し、残留干渉効果によって雑音増加がNMMSEの総量としては飽和傾向を示している。
以上のことから、PdiffとNMMSEに相関特性がある。よって、Pdiffによって雑音増加量NMMSEを簡易に推定可能であり、BER特性も推定可能になると考えられる。そこで、本発明者らは、雑音増加を考慮した際の信号対雑音電力比とBER特性の関係についてさらに以下の検討を行った。
【0071】
(A5)MMSE等化による雑音増加を考慮した信号対雑音電力比とBER特性について
図14はPave=0[dB]時のPdiffとBER特性との関係を表すグラフである。シミュレーション上において、Pave=0[dB]となる結果のみを抽出したものである。また、Pdiffが小さくなるにつれて、BER特性が劣化する。これは、MMSE等化によって発生する雑音増加のためであると考えられる。
【0072】
図15は図13で示したMMSE等化による雑音増加を考慮した際の信号対雑音電力比と、図14で示したBER特性の関係を示している。横軸は雑音増加量を考慮した信号対雑音電力比であり、図13によりPdiffに対応したNMMSEとEb/N0から算出した。等化による雑音増加を考慮したシミュレーション結果はAWGN環境下のBER特性と同等の傾向を示している。これは、簡易的ながらPdiffを活用することでBER特性を推定可能であることを示している。また、Pdiffの算出にはPaveとPminのみが必要であり、簡易な演算により高速に算出可能であることから、リアルタイムなチャネル選択に適している。
このようなことから、本発明者らは、各PaveとPdiffとによって、チャネルを選択する手法について検討した。
【0073】
(A6)チャネル推定手法
以下、(A6−1)でPaveとPdiffによるBER特性を示し、(A6−2)でPaveとPdiffとを活用したチャネル選択手法について説明する。
【0074】
(A6−1)PaveとPdiffによるBER特性の関係
図16はPaveとPdiffによるBER特性の関係を示している。各凡例は、各PaveにおけるPdiffとBER特性である。ここで、Paveが小さくなるにつれてSNRが劣化することで、BER特性が低下する。また、Pdiffが小さくなるにつれてMMSE等化による雑音増加が発生するために、BER特性が劣化する。この時、Pave=0[dB]且つPdiff=-25[dB]のチャネルのBERは10-4となる。一方、Pave=-1[dB]とPaveが低いチャネルであっても、Pdiff=-15[dB]のチャネルであれば、BERは2×10-5となり、Paveが低くてもPdiffが大きければ、低BER特性のチャネルが存在する。
以上のことから、PaveとPdiffを活用することによって簡易かつ高速にBER特性が推定可能であり、伝達関数H(n)を活用したリアルタイムなチャネル選択が可能になると考えられる。
【0075】
(A6−2)PaveとPdiffを活用したチャネル選択手法
図17はPaveとPdiffとBERとの関係を表している。各凡例は、図16より求まるBER=10-3,10-4,10-5における各Pave,Pdiffをプロットして得たグラフである。このグラフを用いてPaveとPdiffを算出することで、BERが算出可能である。図17では、実線L1より下側はBERが10-3より大きい領域を示し、実線と一点鎖線の間はBERが10-3より小さく10-4より大きい領域を示し、一点鎖線と二点鎖線の間はBERが10-4より小さく10-5より大きい領域を示し、二点鎖線より上側はBERが10-5より大きい領域を示している。
【0076】
図17を作成するためのPdiffはPminとPaveにより算出可能であり、PminとPaveの算出も簡易かつ高速で可能である。よって、図17を利用した、リアルタイムなチャネル選択が可能である。
【0077】
図18は、あるユーザの送信信号をマルチパスフェージング(レイリーフェージング)の環境下で受信した場合の信号を8つの帯域で区分した場合に、各チャネルCh1〜Ch8の各PaveとPdiffとBERとの関係を示すグラフである。図中の黒点●は各チャネルCh1〜Ch8におけるPaveとPdiffを示している。ここで、8チャネルCh1〜Ch8から1つのチャネルを選択する場合について説明する。
先ず、従来式にPaveを考慮したチャネル選択を行う場合は、最もPaveの高いチャネルが選択されるため、本例ではCh7が選択される。このCh7のBER特性は、プロットされた位置から10-4〜10-5と推定される。
【0078】
一方、PaveとPdiffとを考慮した際のチャネル選択を行う場合、図18を活用することでCh1が選択される。このCh1のBER特性は、プロットされた位置から10-5以下と推定される。
以上より、Paveに加えPdiffをも考慮することで、より高精度にBER特性が推定可能である。従って、図17などに示すPaveとPdiffとBERとの関係に基づいて、低BER特性のチャネルを選択することが可能である。
【0079】
(A7)まとめ
以上のように、伝搬路推定部37によって得られる伝達関数H(n)に基づいて、各チャネルを判断するための評価値としてPave,Pmin,Pdiffを定義し、BER特性との関係について評価を行った。Pave,Pmin,Pdiffは伝達関数H(n)のみから簡易に算出可能であり、伝搬路推定部37を活用したリアルタイムなチャネル選択が可能であると考えられる。
また、評価値Pdiffに注目した場合、評価値Pdiffによって等化による雑音増加量が簡易に推定可能であり、且つBER特性が推定可能である。そこで、シミュレーションによって各評価値Paveと評価値Pdiffに対応したBER特性が推定可能であることを示した。
【0080】
以上、本発明を説明したが、本発明は発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
チャネル判断部376が評価値Paveと評価値PdiffとによってBERを判断する際の情報として、図6に示す評価値Paveと評価値PdiffとBERの関係図では、説明の便宜上、BER特性の線を3本(実線L1、一点鎖線L2、二点鎖線L3)だけを描いたが、BERの領域を区分する境界線の数は3本に限定されるものではない、例えば4本以上であってもよいことは勿論である。
【0081】
上記説明では、SC伝送とMC伝送とを利用できるハイブリッド無線通信システムについて説明したが、SC伝送とMC伝送との何れか一方の伝送モードにだけ対応できるように、携帯端末と基地局とを構成してもよいことは勿論である。
【0082】
また、上記説明では、アップリンク時の伝送で、基地局がチャネルを推定する場合を説明したが、ダウンリンクできるように、基地局が無線送信装置を備え、携帯端末が無線受信装置を備えることは勿論である。
【0083】
また、無線端末は、携帯電話の他、携帯通信機能を備えたPDA(Personal Digital Assistant)、タブレット型のPCなどの携帯型の電子計算機を含む。
【符号の説明】
【0084】
1 無線通信システム
2 無線端末
20 無線送信装置
21 データ変調部
22 シングルキャリア伝送用変調部
23 マルチキャリア伝送用変調部
24 逆フーリエ変換部
25 ガードインタバル挿入部
26 D/A変換部
27 周波数変換部
28 スイッチ部
29 制御部
3 基地局
30 無線受信装置
31 周波数変換部
32 A/D変換部
33 ガードインタバル除去部
34 フーリエ変換部
35 シングルキャリア伝送用復調部
351 周波数デマッピング部
352 周波数領域等化部
353 波形整形部
354 逆フーリエ変換部
355 データ復調部
36 マルチキャリア伝送用復調部
361 並直列変換部
362 データ復調部
37 伝搬路推定部
371 逆フーリエ変換部
372 ウィンドウィング処理部
373 フーリエ変換部
374 ノイズ推定部
375 重み計算部
376 チャネル判断部
376A 評価値算出部
376B 選択部
376C 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数帯が互いに異なる複数のチャネルの中から、無線端末から送信される信号のチャネルを上記無線端末から受信した信号に基づいて判断する無線受信装置であって、
上記無線端末から受信した信号に基づいて各チャネルの伝達関数を算出する伝達関数算出部と、
上記伝達関数の周波数特性の落ち込みを考慮して、最も低いビット誤り率のチャネルを判断するチャネル判断部と、を備えていることを特徴とする、無線受信装置。
【請求項2】
前記チャネル判断部は、
下記の式(1)〜(3)で定義される評価値Pave,Pmin,Pdiffを算出する評価値算出部と、
上記評価値Paveと上記評価値Pdiffとに対応したビット誤り率の関係を示す参考情報と、上記評価値算出部で算出された各チャネルの評価値Paveと評価値Pdiffとに基づいて、各チャネルのビット誤り率を求め、最も低いビット誤り率のチャネルを選択する選択部と、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の無線受信装置。
【数1】

【数2】

【数3】

ここで,NCは1チャネルのFFTポイント数であり、評価値Pave,Pmin,Pdiffはそれぞれの1チャネル内の平均電力、1チャネル内の最小電力、1チャネル内の平均電力から最小電力の比であり伝達関数の落ち込みの程度を示す。
【請求項3】
前記選択は、複数の信号のビット誤り率が同じである場合、Paveが高いチャネルを選択することを特徴とする、請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記参考情報は、チャネルの評価値Paveと評価値Pdiffとで複数のビット誤り率の何れかを特定できるように、チャネルの評価値Paveと評価値Pdiffとによってビット誤り率が定まる相関関係を示すグラフ情報であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記参考情報は、無線受信装置を設置する環境を考慮して当該無線受信装置専用に作成されていることを特徴とする、請求項2〜4の何れかに記載の無線受信装置。
【請求項6】
前記参考情報が更新可能であることを特徴とする、請求項2〜5の何れかに記載の無線受信装置。
【請求項7】
シングルキャリア伝送及びマルチキャリア伝送の少なくとも何れか一方の伝送モードに対応した、請求項1〜6の何れかに記載の無線受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−102309(P2013−102309A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244036(P2011−244036)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)