説明

無線認証システムおよびそのセンサ

【課題】検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、各センサ間で共通の無線通信帯域を使用して時分割多元接続で前記無線タグと通信を行うにあたって、初期設定時のスロット設定作業を簡略化する。
【解決手段】上流側のセンサS1から下流側のセンサS4へ、順次自機の使用スロットおよび受信した隣接センサの使用スロットを通知し、通知を受けたセンサは、SL1のように、直接隣接するセンサで使用されていない空きスロットの内で、優先順位の高いスロットを自機のスロットに選択する。これによって、使用スロット数を最小限に抑え、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【選択図】図

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ(子局)を携帯したユーザや前記無線タグが貼付けられた商品などの検知対象を、前記無線タグがセンサ(親局、リーダー)と通信を行うことで検出するようにした無線認証システムおよびそのセンサに関し、特に前記無線タグの所在や通過した軌跡を検知できるように、前記検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置されて、漏れなく検知するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入退室管理用途などに、ユーザが携帯したり、商品に貼付けられた前記無線タグ(子局)をセンサ(親局、リーダー)で検知して、適切なサービスを行う無線認証システムが使用されている。たとえば、前記ユーザが携帯する無線タグとの間で認証処理を実行して、近傍の自動ドアに開閉制御をかける入退室制御のシステムであったり、携帯型コンピュータ等の資産に取付けた無線タグを出入り口に設置したセンサで検知することで資産の持ち出し管理を行う資産管理システムであったり、荷物パレットなどに取り付けた無線タグを物流の拠点毎に検出して荷物の所在を管理する物流管理システムなどである。
【0003】
ところが、これらのシステムは、移動する無線タグを点で管理するものであり、通常、前記センサは空間的に離れて設置されることになる。しかしながら、この無線タグを利用して、人や物を面で管理する用途、たとえばオフィス内での在室管理や位置検出などを行うことを考える場合、抜け目なく無線タグを検知しようとすると、検知対象の移動空間に沿って複数のセンサを、隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置する必要がある。この場合、センサ間で無線タグとの通信の干渉を防止するために、たとえば特許文献1のようにセンサ毎に使用する周波数CHを変えることが考えられる。前記特許文献1では、子局(無線タグ)が干渉を検知すると、親局(センサ)にチャネルホップさせることで干渉を回避させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3405322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術は、無線タグとの通信方式として、UWBのように周波数CHを持たない方式を利用する場合には対応できない。また、広い検知対象エリアに対応するために多くのセンサを設置したり、検知対象エリアを拡げたりするためにセンサを増設する場合には、周波数CHの総数に制限されてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、前記周波数CHを分けずにセンサ間の干渉を防ぐ方法として、一定の期間(周期)を複数のスロットに分割し、各センサが相互に異なるスロットを使用するTDMA−TDD方式によって通信を行うことが考えられる。このTDMA−TDD方式ならば、センサが増えても、その都度スロット数を増やせば対処可能となる。
【0007】
しかしながら、前記TDMA−TDD方式では、隣接するセンサ間で同じスロットを使用しないように事前にスロット割当てを行う必要があり、新設時には机上で予めどのセンサにどのスロットを割当てるということを判断可能であるが、特に一旦運用を開始すると、センサの増設や移設にあたって、追加するセンサにどのスロットを割当てればよいのかの判断が難しいという問題がある。また、前記増設や移設を行う際には、運用中のシステムを停止する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、運用中のシステムを停止することなく、センサの追加を容易に行うことができる無線認証システムおよびそのセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線認証システムおよびそのセンサは、検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが、直接隣接するセンサ間でのみそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムおよびそのセンサにおいて、前記各センサは、共通の無線通信帯域を時分割多重で使用して、前記無線タグと通信を行うとともに、隣接するセンサ間で通信を行うことができる無線通信部と、初期設定時に前記無線通信帯域において自機で使用すべきスロットを選択するスロット選択部とを含み、前記スロット選択部は、自機の使用スロットと、前記無線通信部で隣接する他のセンサからの使用スロットを受信した場合には、その他のセンサからの使用スロット通知とを合わせて前記無線通信部から送信させるとともに、前記無線通信部で使用スロット通知が受信されると、前記直接隣接するセンサで使用されていない空きスロットの内で、優先順位の高いスロットを自機のスロットに選択することを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、無線タグを携帯したユーザや無線タグが貼付けられた商品などの検知対象を、漏れなく、その所在や通過した軌跡を検知できるように、前記検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムおよびそのセンサにおいて、前記各センサ間で共通の無線通信帯域を使用して時分割多元接続(TDMA)で前記無線タグと通信を行うにあたって、無線タグと通信を行う無線通信部を使用して隣接するセンサ間でも通信を行えるようにし、システムの新設や移設の初期設定時に、どのスロットを選択すべきかを決定するスロット選択部を設け、初期設定モードとなると、そのスロット選択部は、前記無線通信帯域において自機で使用すべきスロットを選択し、その使用スロット通知を前記無線通信部から送信させて残余のセンサに自機の使用スロットを宣言し、前記無線通信部で使用スロット通知が受信されると、隣接するセンサで使用されていない空きスロットを自機のスロットに選択する。
【0011】
したがって、初期設定モードにおいて使用スロット通知によって、隣接するセンサ間で同一のスロットを使用しないように使用スロットを自動的に設定することができる。これによって、センサの新設作業を容易に行うことができる。
【0012】
また、その使用スロット通知に隣接する他のセンサからの通知も含めておき、直接隣接するセンサで使用されていない空きスロットの内で、優先順位の高いスロットを自機のスロットに選択することで、たとえば優先順位の高い順に、第1のスロット、第2のスロット・・・とすると、前記検知対象エリアが、たとえば一直線状に並んでいると、第1のスロットと第2のスロットとが繰返して使用されてゆき、優先順位の低い第3のスロットは使用されなくなり、使用スロット数を最小限に抑え(前記の場合2スロット)、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無線認証システムおよびそのセンサは、以上のように、無線タグを携帯したユーザや無線タグが貼付けられた商品などの検知対象を、漏れなく、その所在や通過した軌跡を検知できるように、前記検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、前記各センサ間で共通の無線通信帯域を使用して時分割多元接続(TDMA)で前記無線タグと通信を行うにあたって、無線タグと通信を行う無線通信部を使用して隣接するセンサ間でも通信を行えるようにし、システムの新設や移設の初期設定時に、どのスロットを選択すべきかを決定するスロット選択部を設け、初期設定モードとなると、そのスロット選択部は、前記無線通信帯域において自機で使用すべきスロットを選択し、その使用スロット通知を前記無線通信部から送信させて残余のセンサに自機の使用スロットを宣言し、前記無線通信部で使用スロット通知が受信されると、隣接するセンサで使用されていない空きスロットを自機のスロットに選択する。
【0014】
それゆえ、初期設定モードにおいて、隣接するセンサ間で同一のスロットを使用しないように使用スロットを自動的に設定することができセンサの新設作業を容易に行うことができる。
【0015】
また、前記スロット選択部が、その使用スロット通知に隣接する他のセンサからの通知も含めておき、直接隣接するセンサで使用されていない空きスロットの内で、優先順位の高いスロットを自機のスロットに選択することで、使用スロット数を最小限に抑え、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の一形態に係る無線認証システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る各センサの初期設定モードでの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】サブスロットの構成を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の一形態に係る各センサの運用モードでの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施の一形態に係る各センサの追加モードでの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施の他の形態に係る各センサの追加モードでの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施の一形態に係るセンサの一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の一形態に係る無線認証システムの構成を示すブロック図である。この無線認証システムは、検知対象であるユーザの移動空間1に沿って複数のセンサS1,S2,S3,S4,・・・(総称するときは、以下参照符号Sで示す)が配置され、前記ユーザに携行される無線タグTGがいずれかのセンサSと通信を行ってゆき、その検知結果が上位装置2でモニタされることで、該上位装置2によってユーザの所在や通過した軌跡を検知するものである。前記各センサSは、天井などに取付けられ、その検知対象エリアA1,A2,A3,A4,・・・(総称するときは、以下参照符号Aで示す)は、そのようなユーザを漏れなく検知できるように、隣接するセンサS間でその一部が相互に重なるように配置されている。無線タグTGは、前記検知対象エリアA内であれば、どこに移動してもその検知対象エリアAを有するセンサSで検知可能となっている。
【0018】
そして、本実施の形態では、各センサSが共通の無線通信帯域を使用してTDMA−TDD方式で前記無線タグTGと通信を行うにあたって、後述する設定釦の操作や無線(リモコン)での設定指示などに応答して、注目すべきは、各センサSが相互に通信を行い、新設時の初期設定モードにおいて、各センサSが通信に使用するタイムスロットが干渉を回避できるように自動的に割当てられ、またセンサSの増設や移設時の追加モードにおいて、運用中のまま、運用の支障にならない空きスロットが自動的に割当てられることである。
【0019】
前記各センサSは、通信にUHF帯などを使用して、その検知対象エリアAは、隣接するセンサ間の干渉を防止するために、通常、直径で7m程度であるが、前記初期設定モードや追加モードでは、受信感度を大きく、たとえば4倍として、図1において、参照符号A1’,A2’,A3’,A4’,・・・(総称するときは、以下参照符号A’で示す)で示すように受信範囲を2倍とし、前記検知対象エリアAがぎりぎり重なるようにセンサSの間隔を広げて設置しても、スロット設定は充分な通信品質で確実に行えるようになっている。
【0020】
具体的には、前記受信感度のアップは、ノイズを増やさず、信号レベルのみ増加させるために、たとえばアンテナの指向性を絞ったり、通信速度は遅いが感度は高い方式に切換える等で実現することができる。受信感度のアップは、回路上の制約や通信規格・法規上の制約によって送信パワーが上げられない場合に、センサSの間隔を広げることが可能になり、好適である。
【0021】
図2は、各センサSの前記初期設定モードでのスロット設定動作を説明するためのタイミングチャートである。設定にあたって、前述のように設定釦の操作や無線での設定指示などによって、各センサSは初期設定モードとなっており、作業者が任意のセンサ、好ましくはセンサ配列の端部に位置するセンサ(図1および図2の例ではS1)が選択され、そのセンサS1から、スタート釦の操作または前記無線(リモコン)でのスタート指示に応答して、設定動作が開始される。設定動作では、先ず前記無線通信帯域における空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロット(図2の例ではNo.1)を選択して、自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.1を使用スロット通知として他のセンサへ向けて送信する。
【0022】
これによって、図1および図2の例では、後続のセンサS2,S3が前記使用スロット通知を受信すると、それをトリガとして、それらのセンサS2,S3も設定動作を開始し、前記スロットNo.1を自機のスロット割当てに使用せず、他のスロットで同様に空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロット(図2の例ではNo.2)を選択して自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.2を使用スロット通知として他のセンサへ向けて送信する。このとき、他のセンサ(図1および図2の例ではS1)から受信した使用スロット通知も合わせて送信することで、センサ配列の末端側のセンサに、過去に使用されたスロット通知の履歴を蓄積してゆくようになっている。したがって、センサS2,S3は、自機で使用しようとするスロットNo.2に、上位のセンサS1で使用されているスロットNo.1を合わせて送信する。
【0023】
ここで、図1および図2の例では、センサS1が前記移動空間1の分岐部分に位置し、該センサS1に縦続するセンサは上述のようにS2,S3の2つとなり、待受け中のセンサS1には、2つのセンサから同時に使用スロット通知が送信され、衝突によってデータを再現できなくなる。その衝突を検知したセンサS1は、他のセンサS2,S3へ衝突検知通知を送信する。前記衝突検知通知は、他のセンサからの通知と衝突しても検知できるように、受信タイミングのみで判断して行う。具体的には、1送信周期W1内で、前記使用スロット通知の送信が終了してからの所定期間W2のWindowを設定し、そのWindow中で、一定長以上の信号を受信したら、衝突検知通知であると判定する。このWindow中は、使用スロット通知を送信しないようにする。
【0024】
こうして衝突を検知すると、前記センサS2,S3は、前記Windowが終了し、次の送信周期W1となると、通常のCSMA−CAなどの方法でキャリアセンスしながら他のセンサとの衝突を避けつつ、前記使用スロット通知を再度送信する。図2の例では、前記次の送信周期W1となってから、前記CSMA−CA方式でセンサS2,S3は任意の時間待機した後送信を開始しており、待機時間の短いセンサS2からの使用スロット通知(前記No.2+No.1)が優先となって、該センサS2は、ひとまずそのスロットNo.2を自機のスロットに割当てる。このとき、前記待機時間が長かったセンサS3は、前記CSMA−CA方式のキャリアセンスによってセンサS2からの使用スロット通知の送信を検知すると、使用スロット通知処理を再度実行することになり、このとき受信したスロットNo.2と、先に受信しているスロットNo.1とを共に自機のスロット割当てに使用せず、他のスロットで同様に空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロット(図2の例ではNo.3)を選択して自機で使用すべきスロットに割当て、その使用スロット通知(No.3+No.1)を、次の送信周期W1に他のセンサへ向けて送信する。
【0025】
これによって、衝突なく使用スロット通知の送信が完了すると、センサS2,S3の使用スロットは前記のNo.2およびNo.3でそれぞれ決定し、それらに続くセンサ(図2の例ではS4)が設定動作を開始する。このとき、センサS4では、前記センサS1,S2と設定に関する信号の受信範囲A1’,A2’;A4’が重なっておらず、すなわちセンサS4ではセンサS1,S2が送信した前記使用スロット通知は受信していない。しかしながら、隣のセンサS3からの使用スロット通知に表されている履歴から、隣のセンサS3が使用したスロットNo.3だけでなく、隣の隣のセンサS1が使用したスロットNo.1も認識している。
【0026】
このため、設定によって、近接するセンサS1,S2,S3と干渉せず、優先順位の高い任意のスロットを選択することができる。たとえば、図2において、参照符号SL1で示す使用スロット通知のように、単に隣のセンサS3で使用されたスロットNo.3以外で、優先順位の高いスロットであるスロットNo.1を選択したり、隣の隣のセンサS1が使っているスロットNo.1までも考慮して、参照符号SL2で示す使用スロット通知のように、スロットNo.4を選択したりする等である。
【0027】
ここで、前記使用スロット通知SL2では、隣の隣のセンサS1までも考慮するにあたって、使用スロット通知SL3のように、スロットNo.2は選択されず、より優先順位の低い前記スロットNo.4が選択されている。これは、隣の隣のセンサS1がスロットNo.1を選択しているのに対して、隣のセンサS3は、次の順位であるそのスロットNo.2を使用していないことから、該センサS3が他のセンサ(この場合はS2)との関係で使用しなかったものと推定できるためである。このように構成することで、直接は通信できなくても、近接するセンサが使用しているスロットを回避してスロット選択を行うことができ、干渉を確実に防止することができる。
【0028】
前記使用スロット通知に含める履歴の数は、前記移動空間に収容が予定されるセンサ数、拡張の予定、考慮すべきセンサの数、および要求される応答性(1周期に許容できる最大スロット数)などに応じて適宜定められればよい。
【0029】
こうして、検知対象エリアA1〜A4が重なっていないセンサ間S1,S4では同じスロットNo.1の使用も可能になるので、干渉が発生することなく、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用スロット数を最小限に抑え(スロット割当てを効率的に行い)、検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。また、その干渉を回避するスロット選択に、上位のセンサから送信されてきた使用スロット通知に含まれる選択の履歴を考慮することで、たとえば3台以上先のセンサで使用しているスロットは使用可能にするなど、干渉の防止と、応答性の向上との両方に配慮したスロット割当てを自動的に行うことができる。
【0030】
一方、前記初期設定モードは、所定時間、前記使用スロット通知や衝突検知通知を受信しないときにタイムアウト処理によって終了するようにしてもよく、前記設定釦が再度操作されることで終了するようにしてもよく、スタート釦が操作されたセンサ(図1および図2の例ではS1)への終了操作によって、順次設定終了通知を転送してゆくことで終了するようにしてもよい。
【0031】
前記初期設定モードが終了すると、各センサSは運用モードに入り、無線タグTGと通信を行う。その運用モードでは、図3で示すように、予め定めるスロット数のフレーム周期F内で、前記各センサSは上述のようにして選択されたスロットとなると、その前半の予め定める期間、自機の識別情報IDを含む同期信号を送信し、これに応答して検知対象エリアA内の無線タグTGは、自機の識別情報IDに、受信したセンサの識別情報IDを合わせて返信することで、各センサSは自機の検知対象エリアA内に存在する無線タグTGを認識することができる。図3の例では、センサS4は、前記スロットNo.4を選択した例を示している。
【0032】
前記各検知対象エリアAにおける無線タグTGの収容数が多い場合などでは、前記各スロットをサブフレームとし、図4で示すように、そのサブフレームの前半にフレーム同期信号を送信し、後半を複数のスロットTG1,TG2,・・・から空きスロットに分割すればよい。そして、先ず新規に検知対象エリアA内に入った無線タグは前記空きスロットで自機の識別情報IDを含む発信要求を送信し、各センサSが次のフレームのフレーム同期信号で応答すべき無線タグの識別情報IDと、スロットNo.とを指定して、指定されたセンサが指定されたスロットで応答を行うことで認証を行うようにすればよい。
【0033】
その運用モードにおいて、注目すべきは、各センサSは、図4で示すように、前記同期信号中に、自機における使用スロットおよび初期設定モードにおいて隣接するセンサからの使用スロット通知を受信して判明したその隣接センサの使用スロットの情報を含めて送信していることである。したがって、センサを増設や移設のために任意のセンサの下位に追加するにあたって、作業者がその追加されるセンサの追加釦の操作や無線での追加指示などによって、追加モードとすると、そのセンサは、前記受信感度をアップして、少なくとも1フレーム周期Fに亘って、運用中の他のセンサが送信する同期信号を受信することで、空きスロットを検出することができるとともに、前記同期信号から、周囲で使用されているスロットの状況も把握することができる。追加されるべきセンサは、そのような使用スロットの状況を参照して、空きスロットの中で優先順位の最も高いスロットを自機が使用するスロットとして決定し、次のフレームから運用を開始して、自機からの同期信号に含めて、使用スロット通知を隣接するセンサへ送信する。
【0034】
自機の下位にセンサが追加されるセンサは、前記追加釦の操作や無線での追加指示などによって追加モードとなって前記受信感度をアップしており、前記使用スロット通知を受信すると、前記自機における使用スロット情報を更新しておく。こうして、追加すべきセンサおよびそれに隣接したセンサは、追加モードを終了して、自動的に運用に入ることができる。
【0035】
図5は、そのような追加モードでの動作を説明するためのタイミングチャートである。この例は、前記図1におけるセンサS4を追加する場合を示している。したがって、既設のセンサS1〜S3は、各フレームF1,F2,・・・における自機のスロットタイミングに、この図4で示すように同期信号を送信し、無線タグTGからの応答を待受けている。
【0036】
そして、追加されるセンサS4は、隣接するセンサの同期信号を少なくとも1フレーム周期Fだけ受信して総スロット数を判定し、フレームF1において、自機に隣接することになるセンサS3からの同期信号を受信したセンサS4は、その同期信号に含まれる使用スロット情報を参照して、前述の図4で述べたように、隣のセンサS3ではスロットNo.3が使用中であることを認識し、また隣の隣のセンサS1,S2ではスロットNo.1,No.2が使用中であることを認識したことから、自機ではスロットNo.4を選択し、次のフレームF2で同期信号の送信を開始する。前記1フレーム周期Fの判定は、受信された同期信号のスロットNo.(この場合は3)を記憶し、再び同じスロットNo.の同期信号が受信されるまでの期間をカウントすることで行うことができ、総スロット数は、そのカウント値を、一定である1スロット期間W0で除算することで求めることができる。
【0037】
ここで、前述のように追加されるセンサS4は、追加モードとなると受信感度をアップしているが、スロット選択に参照すべきセンサが、隣の隣のセンサ程度までである場合、前記受信感度のアップで、直接その隣の隣のセンサからの同期信号を受信可能であると、前記使用スロット情報は必ずしも必要ではない。しかしながら、前記使用スロット情報を用いることで、センサS間の通信状況に拘わらず、所望範囲のセンサで使用されているスロットの状況を正確に把握することができ、好適である。
【0038】
好ましくは、前記同期信号に含まれる使用スロット情報は、追加されるセンサから要求があった場合にのみ送信されることである。具体的には、図6で示すように、前記追加釦の操作などによって追加モードとなったセンサS4は、上述のように少なくとも1フレーム周期に亘って、運用中の他のセンサが送信する同期信号を受信して空きスロットを検出するとともに、自機が従属すべきセンサS3の前記同期信号に対する無線タグTGの応答期間に、使用スロット情報の要求を送信する。これを受信した既設(運用中)のセンサS3は、次のフレームにおける前記同期信号中に、自機における使用スロット情報を返信し、これを受信した追加されるべきセンサは、その使用スロット情報を参照して、空きスロットの中で優先順位の高いスロットを自機が使用するスロットとして決定し、次のフレームから運用を開始して、自機からの同期信号に含めて、使用スロット通知を隣接するセンサへ送信する。
【0039】
図7は、図6のような機能を実現するセンサSの一構成例を示すブロック図である。このセンサSは、他のセンサおよび無線タグTGと通信を行い、無線通信部である無線信号送受信部11と、前記無線信号送受信部11を介して他のセンサとの間で上述のようなスロット設定動作を行うスロット選択部12と、前記スロット設定動作などに使用されるユーザインタフェイス13と、前記無線信号送受信部11を介して無線タグTGと通信を行い、それを認証するタグ管理部14と、前記タグ管理部14で得られた認証データを前記上位装置2へ送信するとともに、前記上位装置2からこのセンサSの制御データを受信するネットワークインタフェイス15とを備えて構成される。
【0040】
スロット選択部12は、図2で示すように、自機で使用すべきスロットを選択し、使用スロット通知を送信するスロット割当て処理部21と、自機から前記使用スロット通知を送信した後、衝突検知通知を受信すると前記スロット割当て処理部21に使用スロット通知を再送信させ、前記使用スロット通知を受信して、再現できなかった場合は前記衝突検知通知を送信する衝突検出処理部22と、無線通信の同期を取るスロット同期部23と、スロット設定動作の終了を判定する設定終了検知部24と、該スロット選択部12全体を制御する送受信スロット管理部25と、図4で示すようなセンサの追加処理を実現するセンサ追加処理部26とを備えて構成される。
【0041】
前記ユーザインタフェイス13は、たとえば通常の無線タグTGの検知動作を行う運用モードであることを表示し、また前記初期設定モードや追加モードであることや、それらの設定モードが正常に終了したか不調に終わったかなどをランプ表示などでユーザへ報知する状態表示手段31と、異常の発生や不審な無線タグを検知すると警報を発したり、無線タグTGを正常に認識できてドアの解錠などを行うことを通知するブザーなどの警報/通知音発生装置32と、前記設定釦、スタート釦、追加釦などの設定スイッチ33とを備えて構成される。
【0042】
前記設定スイッチ33の設定釦やスタート釦の操作によって初期設定動作を開始すると、スロット割当て処理部21の空きスロット検出処理部211が前述のように空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロットを選択して、自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.に、使用スロット通知受信処理部213で受信されたスロットNo.の内の必要分を合わせて、使用スロット通知送信処理部212から送受信スロット管理部25および無線信号送受信部11を介して他のセンサへ送信させる。一方、無線信号送受信部11から送受信スロット管理部25を介して受信された使用スロット通知は、前記使用スロット通知受信処理部213に記憶され、前記空きスロット検出処理部211によるスロット選択に使用される。前記使用スロット通知受信処理部213で使用スロット通知が受信されたとき、未だスロット設定動作を開始していないセンサであれば、それをトリガとして、設定動作を開始し、前記空きスロット検出処理部211にスロット選択を開始させる。
【0043】
こうして送信された使用スロット通知は、衝突検出処理部22の衝突検出部221において、前記のようにデータを再現できないものの、何らかのデータの受信か検知される場合、衝突と判定される。その判定結果に応答して、衝突通知送信処理部222は、送受信スロット管理部25から無線信号送受信部11を介して前記衝突検知通知を送信する。一方、無線信号送受信部11から送受信スロット管理部25を介して前記衝突検知通知が衝突通知受信処理部223で受信されると、再送制御部224が、前記スロット割当て処理部21に空きスロットの探索から再送信を行わせる。
【0044】
それらの使用スロット通知や衝突検知通知の送受信にあたって、スロット同期部23のスロット同期信号検出処理部231が、前記送受信スロット管理部25での受信データから前記送信周期W1などの同期を検出しており、同期タイミング調整処理部232が自機のタイミングがシステムのタイミングに一致するように、前記送受信スロット管理部25を制御することで同期が得られている。また、スロット設定動作の終了は設定終了検知部24において前述のようにして行われ、初期設定モードや追加モードが終了すると、通常の無線タグの検知を行う運用モードとなる。
【0045】
一方、前記設定スイッチ33の追加釦の操作によってセンサ追加動作を開始すると、センサ追加処理部26の空きスロット検出部265が前記1フレーム周期Fを判定するとともに、センサ追加要求送信処理部261が送受信スロット管理部25および無線信号送受信部11を介して、前述のように使用スロット情報の要求を他のセンサへ送信する。無線信号送受信部11および送受信スロット管理部25を介してこれを受信した既設(運用中)のセンサのセンサ追加要求受信処理部262は、前記スロット割当て処理部21の使用スロット通知受信処理部213を参照し、自機で使用中のスロットNo.に、周囲のセンサで使用中のスロットNo.の必要分を合わせて、使用スロット通知送信処理部263に同期信号として他のセンサへ送信させる。
【0046】
前記同期信号から、使用スロット通知受信処理部264が前記使用スロット情報を受信すると、空きスロット検出部265が総てのスロットの中から使用スロットを除外して空きスロットを求め、その中で優先順位の最も高いスロットを自機の使用スロットに決定し、使用スロット通知送信処理部263に送信させる。これを使用スロット通知受信処理部264で受信すると、前記使用スロット通知受信処理部213における使用スロット情報が更新される。
【0047】
通常の無線タグの検知を行う運用モードでは、タグ管理部14が無線信号送受信部11に、前記スロット割当て処理部21で選択されたスロットの同期信号に、自機のIDを含む質問信号を含めて送信させ、無線タグTGから応答信号を受信すると、その無線タグTGのIDが予め登録されているものか否かを判断し、解錠動作などを行う。
【0048】
このように構成することで、干渉が発生しないように所望とする任意の範囲で使用スロットの重複を許容し、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用スロット数を最小限に抑え(スロット割当てを効率的に行い)、検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。また、そのようなスロットの初期設定や追加設定を、空きスロットを探索して自動的に行うことで、センサSの新設作業や追加作業を容易に行うことができる。さらにまた、センサの追加を、既設のセンサを運用中のまま行うこともできる。なお、増設センサ数や移設センサ数が多い場合には、前記新設作業時と同様に、システム全体のスロットNo.をリセットして再度スロット設定をやり直してもよい。
【0049】
また、前記空きスロット検出処理部211,265によるスロット選択には、隣接するセンサと干渉することのない空きスロットの内で、優先順位の高いスロットから使用するので、使用スロット数を最小限に抑え、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【0050】
さらにまた、運用中のシステムに自機が加わるにあたって、隣接するセンサの使用スロット通知送信処理部263が送信している同期信号を使用スロット通知受信処理部264で受信し、その同期信号中に表されている隣接するセンサが使用しているスロットの情報を空きスロット検出処理部265での空きスロットの選択に参照するので、単に隣のセンサで使用されているスロットだけでなく、直接同期信号を受信できない隣の隣のセンサが使っているスロットまでも認識でき、直接同期信号を受信できないけれど、検知対象エリアの一部が重なっている可能性のある前記隣の隣のセンサとの干渉も考慮して、一層干渉の防止を図ることができる。
【0051】
また、前記運用中のセンサの使用スロット通知送信処理部263は、隣接するセンサの使用スロット情報を常時送信しているのではなく、追加されるセンサのセンサ追加要求送信処理部261から送信された前記使用スロット情報の要求をセンサ追加要求受信処理部262で受信した極希な場合にのみ、前記同期信号に使用スロット情報を含めて送信することで、通信のオーバーヘッドを減らすことが可能になる。
【符号の説明】
【0052】
1 移動空間
2 上位装置
11 無線信号送受信部
12 スロット選択部
13 ユーザインタフェイス
14 タグ管理部
15 ネットワークインタフェイス
21 スロット割当て処理部
211 空きスロット検出処理部
212 使用スロット通知送信処理部
213 使用スロット通知受信処理部
22 衝突検出処理部
221 衝突検出部
222 衝突通知送信処理部
223 衝突通知受信処理部
224 再送制御部
23 スロット同期部
231 スロット同期信号検出処理部
232 同期タイミング調整処理部
24 設定終了検知部
25 送受信スロット管理部
26 センサ追加処理部
261 センサ追加要求送信処理部
262 センサ追加要求受信処理部
263 使用スロット通知送信処理部
264 使用スロット通知受信処理部
265 空きスロット検出処理部
31 状態表示手段
32 警報/通知音発生装置
33 設定スイッチ
A1,A2,A3,A4,・・・ 検知対象エリア
S1,S2,S3,S4,・・・ センサ
TG 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが、直接隣接するセンサ間でのみそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、
前記各センサは、
共通の無線通信帯域を時分割多重で使用して、前記無線タグと通信を行うとともに、隣接するセンサ間で通信を行うことができる無線通信部と、
初期設定時に前記無線通信帯域において自機で使用すべきスロットを選択するスロット選択部とを含み、
前記スロット選択部は、自機の使用スロットと、前記無線通信部で隣接する他のセンサからの使用スロットを受信した場合には、その他のセンサからの使用スロット通知とを合わせて前記無線通信部から送信させるとともに、前記無線通信部で使用スロット通知が受信されると、前記直接隣接するセンサで使用されていない空きスロットの内で、優先順位の高いスロットを自機のスロットに選択することを特徴とする無線認証システム。
【請求項2】
検知対象の移動空間に沿って複数が、直接隣接するもの同士でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムのセンサにおいて、
共通の無線通信帯域を時分割多重で使用して前記無線タグと通信を行うとともに、隣接するセンサ間で通信を行うことができる無線通信部と、
初期設定時に前記無線通信帯域において自機で使用すべきスロットを選択するスロット選択部とを含み、
前記スロット選択部は、自機の使用スロットと、前記無線通信部で隣接する他のセンサからの使用スロットを受信した場合には、その他のセンサからの使用スロット通知とを合わせて前記無線通信部から送信させるとともに、前記無線通信部で使用スロット通知が受信されると、前記直接隣接するセンサで使用されていない空きスロットの内で、優先順位の高いスロットを自機のスロットに選択することを特徴とするセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60657(P2012−60657A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234746(P2011−234746)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2007−114016(P2007−114016)の分割
【原出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】