説明

無線通信システム、送信システム、無線端末および無線通信方法

【課題】伝搬路特性が高速に変動する場合やチャネル推定値に推定誤差が含まれる場合であっても、協調MIMO技術を利用して信号分離性能を向上させることができる無線通信システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る無線通信システム10Aは、送信システム20Aと無線端末300とを有する。送信システム20Aは、遅延ストリームS1delayと通信ストリームS1とを重ねて送信し、遅延ストリームS1delayと遅延量が異なる遅延ストリームS2delayと通信ストリームS2とを重ねて送信する。送信システム20Aは、遅延ストリームS1delayに関する遅延情報S1infoと、遅延ストリームS2delayに関する遅延情報S2infoとを通知する。無線端末300は、通知された遅延情報S1infoに応じて通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを合成し、通知された遅延情報S2infoに応じて通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多入力多出力型の通信が適用される無線通信システム、送信システム、無線端末および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信システムでは、有限な周波数帯域を効率的に利用するための様々な技術が実現されている。このような技術の一つとして、複数の送信アンテナを介して同一の周波数帯を用いる信号系列を複数同時に送信するとともに、複数の受信アンテナを介して当該信号系列を受信し、各信号系列に分離する多入力多出力(MIMO)技術が知られている。
【0003】
MIMO技術が用いられる無線通信システムでは、受信側は、複数の信号系列を混信状態で受信した後、各信号系列の伝搬路特性の相違に基づいて各信号系列を分離する。具体的には、受信側は、伝搬路特性を推定するチャネル推定技術により得られたチャネル推定値を用いて、各信号系列を分離する。
【0004】
このようなMIMO技術では、アンテナの設置間隔を大きくすることによって、各信号系列の伝搬路特性をより確実に異ならせることができ、信号系列の分離性能(以下、信号分離性能)を向上させることができる。このため、複数の無線基地局(無線通信装置)のそれぞれのアンテナを介して、同一の周波数帯を用いる信号系列を1つの無線端末に複数同時に送信する協調MIMO技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−523665号公報([請求項1]など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した協調MIMO技術には、次のような問題がある。具体的には、無線端末の移動などにより伝搬路特性が高速に変動する場合や、チャネル推定により得られたチャネル推定値に推定誤差が含まれる場合には、信号分離性能を向上させることができない。したがって、上述した協調MIMO技術には、信号分離性能を向上させる点において改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、伝搬路特性が高速に変動する場合やチャネル推定値に推定誤差が含まれる場合であっても、協調MIMO技術を利用して信号分離性能を十分に向上させることができる無線通信システム、送信システム、無線端末および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、第1信号系列(通信ストリームS1)を送信する第1無線通信装置(例えば無線基地局100A)と、前記第1信号系列と同一の周波数帯を用いる第2信号系列(通信ストリームS2)を前記第1信号系列と同一の時間帯において送信する第2無線通信装置(例えば無線基地局200A)とを含む送信システム(例えば送信システム20A)と、前記第1信号系列および前記第2信号系列を同一の時間帯において前記送信システムから受信する受信部(無線受信部310)と、前記受信部が受信した前記第1信号系列および前記第2信号系列を分離する分離処理を実行する分離処理部(分離処理部330)とを含む無線端末(無線端末300)とを有する無線通信システム(例えば無線通信システム10A)であって、前記第1無線通信装置は、前記第1信号系列を遅延させて生成した第1遅延信号系列(遅延ストリームS1delay)と、前記第1信号系列とを重ねて送信し、前記第2無線通信装置は、前記第1遅延信号系列と遅延量が異なり、前記第2信号系列を遅延させて生成した第2遅延信号系列(遅延ストリームS2delay)と、前記第2信号系列とを重ねて送信し、前記送信システムは、前記第1遅延信号系列に関する第1遅延情報(遅延情報S1info)と、前記第2遅延信号系列に関する第2遅延情報(遅延情報S2info)とを前記無線端末に通知する通知部(例えば遅延情報通知部140および遅延情報通知部240)を備え、前記分離処理部は、前記分離処理を実行する際に、通知された前記第1遅延情報に応じて前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを合成し、通知された前記第2遅延情報に応じて前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを合成することを要旨とする。
【0008】
このような無線通信システムによれば、分離処理の際に、第1遅延情報に応じて第1信号系列と第1遅延信号系列とが合成され、第2遅延情報に応じて第2信号系列と第2遅延信号系列とが合成される。これにより、第1信号系列および第2信号系列のそれぞれの品質を高めることができ、第1信号系列と第2信号系列とを分離し易くすることができる。したがって、第1の特徴に係る無線通信システムによれば、伝搬路特性が変動する場合やチャネル推定値に推定誤差が含まれる場合であっても、協調MIMO技術を利用して信号分離性能を十分に向上させることができる。
【0009】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記第1無線通信装置は、前記第1信号系列および前記第2信号系列として同一の信号系列を用いるダイバシティ送信を実行する場合に、前記第1信号系列と、前記第2遅延信号系列と遅延量が等しい前記第1遅延信号系列とを重ねて送信し、前記第2無線通信装置は、前記ダイバシティ送信を実行する場合に、前記第2信号系列と、前記第1遅延信号系列と遅延量が等しい前記第2遅延信号系列とを重ねて送信することを要旨とする。
【0010】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1または第2の特徴に係り、前記分離処理部は、前記分離処理において前記第1信号系列を抽出する第1抽出部(第1抽出部331)と、前記分離処理において前記第2信号系列を抽出する第2抽出部(第2抽出部332)とを含み、前記第1抽出部は、前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを同位相で合成する同相合成、または前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを逆位相で合成する逆相合成のうち、少なくとも一方を用いて前記第1信号系列を抽出し、前記第2抽出部は、前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを逆位相で合成する逆相合成、または前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを同位相で合成する同相合成のうち、少なくとも一方を用いて前記第2信号系列を抽出することを要旨とする。
【0011】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1〜第3の何れかの特徴に係り、前記第1遅延情報は、前記第1遅延信号系列の遅延量を示す情報を含み、前記第2遅延情報は、前記第2遅延信号系列の遅延量を示す情報を含むことを要旨とする。
【0012】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1〜第4の何れかの特徴に係り、前記第1遅延信号系列および前記第2遅延信号系列は、互いに振幅が異なり、前記第1遅延情報は、前記第1遅延信号系列の振幅を示す情報を含み、前記第2遅延情報は、前記第2遅延信号系列の振幅を示す情報を含むことを要旨とする。
【0013】
本発明の第6の特徴は、本発明の第1〜第5の何れかの特徴に係り、前記第1無線通信装置および前記第2無線通信装置は、互いに異なる無線基地局(例えば無線基地局100A、無線基地局200A)であることを要旨とする。
【0014】
本発明の第7の特徴は、第1信号系列(通信ストリームS1)を送信する第1無線通信装置(例えば無線基地局100A)と、前記第1信号系列と同一の周波数帯を用いる第2信号系列(通信ストリームS2)を前記第1信号系列と同一の時間帯において送信する第2無線通信装置(例えば無線基地局200A)とを含む送信システム(例えば送信システム20A)であって、第1遅延信号系列(遅延ストリームS1delay)に関する第1遅延情報(遅延情報S1info)と第2遅延信号系列(遅延ストリームS2delay)に関する第2遅延情報(遅延情報S2info)とを前記無線端末に通知する通知部(例えば遅延情報通知部140および遅延情報通知部240)を備え、前記第1無線通信装置は、前記第1信号系列を遅延させて生成した前記第1遅延信号系列と、前記第1信号系列とを重ねて送信し、前記第2無線通信装置は、前記第1遅延信号系列と遅延量が異なり、前記第2信号系列を遅延させて生成した前記第2遅延信号系列と、前記第2信号系列とを重ねて送信することを要旨とする。
【0015】
本発明の第8の特徴は、第1信号系列(通信ストリームS1)を送信する第1無線通信装置(例えば無線基地局100A)と、前記第1信号系列と同一の周波数帯を用いる第2信号系列(通信ストリームS2)を前記第1信号系列と同一の時間帯において送信する第2無線通信装置(例えば無線基地局200A)とを含む送信システム(例えば送信システム20A)から、前記第1信号系列および前記第2信号系列を同一の時間帯において受信する受信部(無線受信部310)と、前記受信部が受信した前記第1信号系列および前記第2信号系列を分離する分離処理を実行する分離処理部(分離処理部330)とを含む無線端末(無線端末300)であって、前記受信部は、前記第1信号系列と、前記第1信号系列を遅延させて生成された第1遅延信号系列(遅延ストリームS1delay)と、前記第1遅延信号系列に関する第1遅延情報(遅延情報S1info)とを受信し、前記第2信号系列と、前記第1遅延信号系列と遅延量が異なり、前記第2信号系列を遅延させて生成された第2遅延信号系列(遅延ストリームS2delay)と、前記第2遅延信号系列に関する第2遅延情報(遅延情報S2info)とを受信し、前記分離処理部は、前記分離処理を実行する際に、前記第1遅延情報に応じて前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを合成し、前記第2遅延情報に応じて前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを合成することを要旨とする。
【0016】
本発明の第9の特徴は、第1信号系列を送信する第1無線通信装置と、前記第1信号系列と同一の周波数帯を用いる第2信号系列を前記第1信号系列と同一の時間帯において送信する第2無線通信装置とを含む送信システムと、前記第1信号系列および前記第2信号系列を同一の時間帯において前記送信システムから受信する受信部と、前記受信部が受信した前記第1信号系列および前記第2信号系列を分離する分離処理を実行する分離処理部とを含む無線端末とを用いた無線通信方法であって、前記第1無線通信装置が、前記第1信号系列を遅延させて生成された第1遅延信号系列と、前記第1信号系列とを重ねて送信するステップ(例えばステップS104)と、前記第2無線通信装置が、前記第2信号系列を遅延させて生成され、前記第1遅延信号系列と遅延量が異なる第2遅延信号系列と、前記第2信号系列とを重ねて送信するステップ(例えばステップS204)と、前記第1遅延信号系列に関する第1遅延情報と、前記第2遅延信号系列に関する第2遅延情報とを前記送信システムから前記無線端末に通知するステップ(例えばステップS103およびS203)と、前記分離処理部が、前記分離処理を実行する際に、通知された前記第1遅延情報に応じて前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを合成し、通知された前記第2遅延情報に応じて前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを合成するステップ(ステップS303)とを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、伝搬路特性が高速に変動する場合やチャネル推定値に推定誤差が含まれる場合であっても、協調MIMO技術を利用して信号分離性能を十分に向上させることができる無線通信システム、送信システム、無線端末および無線通信方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0019】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態では、(1)無線通信システムの概略構成、(2)無線通信システムの詳細構成、(3)分離処理の一例、(4)無線通信システムの動作、(5)作用・効果について説明する。
【0020】
(1)無線通信システムの概略構成
図1は、第1実施形態に係る無線通信システム10Aの概略構成図である。無線通信システム10Aには、協調MIMO技術が導入されている。
【0021】
図1(a)に示すように、無線通信システム10Aは、送信システム20Aおよび無線端末300を有する。送信システム20Aは、無線基地局100A、無線基地局200Aおよび分配装置400を有する。
【0022】
分配装置400は、無線端末300に送信すべき情報データ系列を無線基地局100Aおよび無線基地局200Aに振り分ける。例えば、分配装置400は、シリアル/パラレル変換により、情報データ系列を2つの情報データ系列に変換する。変換により得られた2つの情報データ系列のうち、一方の情報データ系列が無線基地局100Aに入力され、他方の情報データ系列が無線基地局200Aに入力される。
【0023】
無線基地局100Aは、分配装置400から入力された情報データ系列から通信ストリームS1(第1信号系列)を生成し、生成した通信ストリームS1を無線端末300に送信する。第1実施形態において無線基地局100Aは、通信ストリームS1を無線端末300に送信する第1無線通信装置を構成する。
【0024】
無線基地局200Aは、分配装置400から入力された情報データ系列から通信ストリームS2(第2信号系列)を生成し、生成した通信ストリームS2を無線端末300に送信する。通信ストリームS1および通信ストリームS2は、互いに異なる信号系列である。第1実施形態において無線基地局200Aは、通信ストリームS2を無線端末300に送信する第2無線通信装置を構成する。
【0025】
無線基地局100Aおよび無線基地局200Aは、同一の無線リソースを用いて、通信ストリームS1および通信ストリームS2をそれぞれ送信する。すなわち、無線基地局100Aは、通信ストリームS2と同一の時間帯(時間スロット)において、通信ストリームS2と同一の周波数帯を用いる通信ストリームS1を無線端末300に送信する。同様に、無線基地局200Aは、通信ストリームS1と同一の時間帯において、通信ストリームS1と同一の周波数帯を用いる通信ストリームS2を無線端末300に送信する。
【0026】
無線基地局100Aは、通信ストリームS1を遅延させて生成した遅延ストリームS1delay(第1遅延信号系列)と、通信ストリームS1とを重ねて送信する。無線基地局200Aは、通信ストリームS2を遅延させて生成した遅延ストリームS2delay(第2遅延信号系列)と、通信ストリームS2とを重ねて送信する。遅延ストリームS1delayおよび遅延ストリームS2delayは、互いに遅延量が異なる。
【0027】
無線基地局100Aおよび無線基地局200Aは、遅延ストリームS1delayに関する遅延情報S1info(第1遅延情報)と、遅延ストリームS2delayに関する遅延情報S2info(第2遅延情報)とを無線端末300に通知する(図2参照)。
【0028】
無線端末300は、通信ストリームS1および通信ストリームS2を混信状態で受信した後、例えば通信ストリームS1および通信ストリームS2それぞれの伝搬路特性の相違に基づいて通信ストリームS1および通信ストリームS2を分離する。無線端末300は、伝搬路特性を推定するチャネル推定技術により得られたチャネル推定値を用いて、通信ストリームS1および通信ストリームS2を分離する。
【0029】
ただし、無線端末300の移動などにより伝搬路特性が高速に変動する場合や、チャネル推定により得られたチャネル推定値に推定誤差が含まれる場合には、信号分離性能を向上させることができない。そこで、無線端末300は、分離処理を実行する際に、送信システム20Aから通知された遅延情報S1infoに応じて通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを合成し、送信システム20Aから通知された遅延情報S2infoに応じて通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを合成する。これにより、信号分離性能が改善される。
【0030】
第1実施形態では、図1(b)に示すように、送信システム20Aの無線基地局100Aはアンテナ101を有し、無線基地局200Aはアンテナ102を有する。無線端末300は、2つのアンテナ301,302を有する。すなわち、第1実施形態に係る無線通信システム10Aにおいては、2×2のアンテナ構成を用いたMIMO通信が実行される。
【0031】
(2)無線通信システムの詳細構成
次に、図2および図3を参照して、無線通信システム10Aの詳細構成について説明する。具体的には、(2.1)無線基地局の構成、(2.2)無線端末の構成について説明する。ここでは、本発明に関連する構成のみを説明する。
【0032】
(2.1)無線基地局の構成
図2(a)は、無線基地局100Aの構成を示す機能ブロック図である。
【0033】
図2(a)に示すように、無線基地局100Aは、通信ストリーム生成部110、遅延ストリーム重畳部120、遅延情報保持部130、遅延情報通知部140および無線送信部150を有する。無線送信部150には、アンテナ101が接続される。
【0034】
通信ストリーム生成部110は、分配装置400から入力された情報データ系列から通信ストリームS1を生成する。
【0035】
遅延情報保持部130は、遅延ストリームS1delayに関する遅延情報S1infoを予め保持する。遅延情報S1infoは、遅延ストリームS1delayのパラメータの情報を含む。具体的には、遅延情報S1infoは、遅延ストリームS1delayの遅延量(遅延時間または位相遅延量の少なくとも一方)を示す情報を含む。ここで遅延量を示す情報とは、遅延量の値自体でもよく、遅延量に対応付けられたインデックスでもよい。遅延情報S1infoは、遅延ストリームS1delayの振幅を示す情報を含んでもよい。
【0036】
遅延ストリーム重畳部120は、遅延情報保持部130が保持する遅延情報S1infoに基づいて通信ストリームS1を遅延させることにより遅延ストリームS1delayを生成し、生成した遅延ストリームS1delayを通信ストリームS1に重ねる。遅延情報S1infoが遅延ストリームS1delayの振幅を示す情報を含む場合、遅延ストリーム重畳部120は、当該情報に従って遅延ストリームS1delayの振幅を調整する。
【0037】
無線送信部150は、アップコンバータおよびパワーアンプなどを含む。無線送信部150は、遅延ストリーム重畳部120によって遅延ストリームS1delayが重ねられた通信ストリームS1を無線端末300に送信する。
【0038】
遅延情報通知部140は、遅延情報保持部130が保持する遅延情報S1infoを、無線送信部150を介して無線端末300に通知する。例えば、遅延情報通知部140は、無線端末300との通信開始時に実行されるネゴシエーションの際に遅延情報S1infoを通知する。あるいは、遅延情報通知部140は、遅延情報S1infoを定期的に報知(ブロードキャスト)することによって、遅延情報S1infoを無線端末300に通知する。
【0039】
図2(b)は、無線基地局200Aの構成を示す機能ブロック図である。
【0040】
図2(b)に示すように、無線基地局200Aは、通信ストリーム生成部210、遅延ストリーム重畳部220、遅延情報保持部230、遅延情報通知部240および無線送信部250を有する。無線送信部250には、アンテナ201が接続される。
【0041】
通信ストリーム生成部210は、分配装置400から入力された情報データ系列から通信ストリームS2を生成する。
【0042】
遅延情報保持部230は、遅延ストリームS2delayに関する遅延情報S2infoを予め保持する。遅延情報S2infoは、遅延ストリームS2delayのパラメータの情報を含む。具体的には、遅延情報S2infoは、遅延ストリームS2delayの遅延量(遅延時間または位相遅延量の少なくとも一方)を示す情報を含む。遅延情報S2infoは、遅延ストリームS2delayの振幅を示す情報を含んでもよい。ここで、遅延情報保持部230が保持する遅延情報S2infoの内容と、遅延情報保持部130が保持する遅延情報S1infoの内容とは異なる。
【0043】
遅延ストリーム重畳部220は、遅延情報保持部230が保持する遅延情報S2infoに基づいて通信ストリームS2を遅延させることにより遅延ストリームS2delayを生成し、生成した遅延ストリームS2delayを通信ストリームS2に重ねる。
【0044】
遅延情報S1infoの内容と遅延情報S2infoの内容とが異なるため、遅延ストリームS2delayの遅延量は、遅延ストリームS1delayの遅延量と異なっている。例えば、遅延ストリームS2delayの遅延量τ2は、遅延ストリームS1delayの遅延量τ1よりも大きい(図4参照)。
【0045】
無線送信部250は、アップコンバータおよびパワーアンプなどを含む。無線送信部250は、遅延ストリーム重畳部220によって遅延ストリームS2delayが重ねられた通信ストリームS2を無線端末300に送信する。
【0046】
遅延情報通知部240は、遅延情報保持部230が保持する遅延情報S2infoを、無線送信部250を介して無線端末300に通知する。遅延情報S2infoの通知方法は、遅延情報S1infoの通知方法と同様である。第1実施形態において遅延情報通知部140および遅延情報通知部240は、遅延情報S1infoおよび遅延情報S2infoを無線端末300に通知する通知部を構成する。
【0047】
(2.2)無線端末の構成
図3は、無線端末300の構成を示す機能ブロック図である。
【0048】
図3に示すように、無線端末300は、無線受信部310、遅延情報取得部320および分離処理部330を有する。無線受信部310には、アンテナ301,302が接続される。
【0049】
無線受信部310は、アンテナ301,302のそれぞれに対応するローノイズアンプおよびダウンコンバータなどを含む。無線受信部310は、遅延ストリームS1delayが重ねられた通信ストリームS1と、遅延ストリームS2delayが重ねられた通信ストリームS2とを混信状態で受信する。混信状態で受信された通信ストリームS1および通信ストリームS2は、分離処理部330に入力される。
【0050】
無線受信部310は、無線基地局100Aから通知された遅延情報S1infoと、無線基地局200Aから通知された遅延情報S2infoとを受信する。遅延情報取得部320は、遅延情報S1infoおよび遅延情報S2infoを無線受信部310から取得する。遅延情報取得部320は、遅延情報S1infoおよび遅延情報S2infoを分離処理部330に伝達する。
【0051】
分離処理部330は、伝搬路特性の相違に基づいて、混信状態で受信された通信ストリームS1および通信ストリームS2を分離する分離処理を実行する。このような分離処理としては、例えば、MLD(Maximum Likelihood Detection)またはMMSE(Minimum Mean Square Error)などの既存の信号分離手法が利用できる。
【0052】
分離処理部330は、分離処理を実行する際に、遅延情報S1infoに応じて通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを合成し、遅延情報S2infoに応じて通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを合成する。
【0053】
分離処理部330は、通信ストリームS1を抽出する第1抽出部331と、通信ストリームS2を抽出する第2抽出部332とを有する。
【0054】
第1抽出部331は、通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを同位相で合成する同相合成、または通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを逆位相で合成する逆相合成のうち、少なくとも一方を用いて通信ストリームS1を抽出する。
【0055】
第1抽出部331は、遅延情報S1infoに応じて通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを時間軸上で一致させた後、通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを同相合成する。第1抽出部331は、遅延情報S2infoに応じて通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを時間軸上で一致させた後、通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを逆相合成する。
【0056】
第2抽出部332は、通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを逆位相で合成する逆相合成、または通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを同位相で合成する同相合成のうち、少なくとも一方を用いて通信ストリームS2を抽出する。
【0057】
第2抽出部332は、遅延情報S1infoに応じて通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを時間軸上で一致させた後、通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを逆相合成する。第2抽出部332は、遅延情報S2infoに応じて通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを時間軸上で一致させた後、通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを同相合成する。
【0058】
(3)分離処理の一例
次に、図4を用いて、分離処理部330が実行する分離処理の一例を説明する。ここでは、第1抽出部331が通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを同相合成する場合について説明する。
【0059】
無線基地局100Aは、図4(a)に示すように、通信ストリームS1と共に、通信ストリームS1を遅延量τ1だけ遅延させた遅延ストリームS1delayを送信している。一方、無線基地局200Aは、通信ストリームS2と共に、通信ストリームS2を遅延量τ2だけ遅延させた遅延ストリームS2delayを送信している。
【0060】
通信ストリームS1、遅延ストリームS1delay、通信ストリームS2および遅延ストリームS2delayのそれぞれは、同一の無線リソースを用いて送信されるため、無線端末300の無線受信部310が受信する信号には、通信ストリームS1、遅延ストリームS1delay、通信ストリームS2および遅延ストリームS2delayが混在している。
【0061】
第1抽出部331は、遅延情報取得部320が取得した遅延情報S1infoから遅延量τ1を特定し、遅延量τ1に従って、通信ストリームS1および遅延ストリームS1delayを検出する。ここで、遅延量τ1および遅延量τ2は互いに異なるため、第1抽出部331は、通信ストリームS1および遅延ストリームS1delayを、通信ストリームS2および遅延ストリームS2delayと区別することができる。
【0062】
第1抽出部331は、遅延量τ1に従って、通信ストリームS1および遅延ストリームS1delayを時間軸上で一致させる。その際、遅延量τ1および遅延量τ2は互いに異なるため、通信ストリームS2および遅延ストリームS2delayは一致しない。そして、第1抽出部331は、通信ストリームS1および遅延ストリームS1delayを同相合成する。これにより、図4(b)に示すように、通信ストリームS1の品質が改善される。
【0063】
(4)無線通信システムの動作
次に、図5および図6を参照して、無線通信システム10Aの動作について説明する。具体的には、(4.1)無線基地局の動作、(4.2)無線端末の動作について説明する。
【0064】
(4.1)無線基地局の動作
図5(a)は、無線基地局100Aの動作を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS101において、通信ストリーム生成部110は、通信ストリームS1を生成する。
【0066】
ステップS102において、遅延ストリーム重畳部120は、遅延情報保持部130が保持する遅延情報S1infoに基づいて遅延ストリームS1delayを生成し、生成した遅延ストリームS1delayを通信ストリームS1に重ねる。
【0067】
ステップS103において、遅延情報通知部140は、遅延情報保持部130が保持する遅延情報S1infoを無線端末300に通知する。なお、ステップS103の処理は、ステップS101の前に実行されてもよく、ステップS101とステップS102との間に実行されてもよい。
【0068】
ステップS104において、無線送信部150は、遅延ストリーム重畳部120によって遅延ストリームS1delayが重ねられた通信ストリームS1を無線端末300に送信する。
【0069】
図5(b)は、無線基地局200Aの動作を示すフローチャートである。
【0070】
ステップS201において、通信ストリーム生成部210は、通信ストリームS2を生成する。
【0071】
ステップS202において、遅延ストリーム重畳部220は、遅延情報保持部230が保持する遅延情報S2infoに基づいて遅延ストリームS2delayを生成し、生成した遅延ストリームS2delayを通信ストリームS2に重ねる。
【0072】
ステップS203において、遅延情報通知部240は、遅延情報保持部230が保持する遅延情報S2infoを無線端末300に通知する。
【0073】
ステップS204において、無線送信部250は、遅延ストリーム重畳部220によって遅延ストリームS2delayが重ねられた通信ストリームS2を無線端末300に送信する。ステップS204の処理は、ステップS104の処理と同時に実行される。
【0074】
(4.2)無線端末の動作
図6は、無線端末300の動作を示すフローチャートである。
【0075】
ステップS301において、遅延情報取得部320は、遅延情報S1infoおよび遅延情報S2infoを取得する。
【0076】
ステップS302において、無線受信部310は、遅延ストリームS1delayが重ねられた通信ストリームS1と、遅延ストリームS2delayが重ねられた通信ストリームS2とを混信状態で受信する。
【0077】
ステップS303において、分離処理部330は、分離処理を実行する。具体的には、分離処理部330は、遅延情報S1infoに応じて通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを合成し、遅延情報S2infoに応じて通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを合成する。
【0078】
(5)作用・効果
以上説明したように、無線通信システム10Aにおいては、遅延情報S1infoに応じて通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとが合成され、遅延情報S2infoに応じて通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとが合成される。これにより、通信ストリームS1および通信ストリームS2のそれぞれの品質を高めることができ、通信ストリームS1と通信ストリームS2とを分離し易くすることができる。
【0079】
したがって、無線通信システム10Aによれば、伝搬路特性が高速に変動する場合やチャネル推定値に推定誤差が含まれる場合であっても、協調MIMO技術を利用して信号分離性能を向上させることができる。
【0080】
さらに、無線端末300における受信品質(例えば受信電界強度(RSSI)または受信信号対雑音比(SNR)など)が劣化している場合においても、信号分離性能を十分に向上させることができる。
【0081】
また、第1抽出部331が通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを同相合成することにより、通信ストリームS1の品質が改善され、通信ストリームS1の抽出を容易にすることができる。
【0082】
第1抽出部331が通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを逆相合成することにより、通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとが互いに打ち消し合うため、通信ストリームS1の抽出を容易にすることができる。
【0083】
第2抽出部332が通信ストリームS2と遅延ストリームS2delayとを同相合成することにより、通信ストリームS2の品質が改善され、通信ストリームS2の抽出を容易にすることができる。
【0084】
第2抽出部332が通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとを逆相合成することにより、通信ストリームS1と遅延ストリームS1delayとが互いに打ち消し合うため、通信ストリームS2の抽出を容易にすることができる。
【0085】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態の構成および動作に加えて、ダイバシティ送信を併用する実施形態である。
【0086】
無線端末300の構成および動作は、第1実施形態と同様である。このため、第2実施形態では、(1)無線基地局の構成、(2)無線基地局の動作、(3)作用・効果について説明する。
【0087】
(1)無線基地局の構成
図7は、第2実施形態に係る無線基地局100B(第1無線通信装置)、および無線基地局200B(第2無線通信装置)の構成を示す機能ブロック図である。
【0088】
無線基地局100Bは2つのアンテナ101,102を有し、無線基地局200Bは2つのアンテナ201,202を有する。すなわち、第2実施形態に係る無線通信システムでは、4×2のアンテナ構成を用いたMIMO通信が実行される。
【0089】
図7(a)に示すように、無線基地局100Bは、通信ストリーム生成部111,112、遅延ストリーム重畳部121,122、遅延情報保持部131,132、遅延情報通知部141,142、および無線送信部151,152を有する。無線送信部151には、アンテナ101が接続される。無線送信部152には、アンテナ102が接続される。
【0090】
図7(b)に示すように、無線基地局200Bは、通信ストリーム生成部211,212、遅延ストリーム重畳部221,222、遅延情報保持部231,232、遅延情報通知部241,242、および無線送信部251,252を有する。無線送信部251には、アンテナ201が接続される。無線送信部252には、アンテナ202が接続される。
【0091】
無線基地局100Bの遅延情報保持部131と、無線基地局200Bの遅延情報保持部231とは、同一の遅延情報S1infoを保持する。無線基地局100Bの遅延情報保持部132と、無線基地局200Bの遅延情報保持部232とは、同一の遅延情報S2infoを保持する。無線送信部151,152,251および252は、同一の無線リソース(周波数帯および時間スロット)を用いた送信を実行する。
【0092】
(2)無線基地局の動作
次に、図8を参照して、無線基地局100Bおよび無線基地局200Bの動作について説明する。図8(a)は、無線基地局100Bの動作を示すフローチャートである。
【0093】
ステップS401において、通信ストリーム生成部111は、通信ストリームS1を生成する。通信ストリーム生成部112は、通信ストリームS2を生成する。通信ストリームS1および通信ストリームS2は、互いに異なる信号系列である。
【0094】
ステップS402において、遅延ストリーム重畳部121は、遅延情報保持部131が保持する遅延情報S1infoに基づいて遅延ストリームS1delayを生成し、生成した遅延ストリームS1delayを通信ストリームS1に重ねる。遅延ストリーム重畳部122は、遅延情報保持部132が保持する遅延情報S2infoに基づいて遅延ストリームS2delayを生成し、生成した遅延ストリームS2delayを通信ストリームS2に重ねる。
【0095】
ステップS403において、遅延情報通知部141は、遅延情報保持部131が保持する遅延情報S1infoを無線端末300に通知する。遅延情報通知部142は、遅延情報保持部132が保持する遅延情報S2infoを無線端末300に通知する。第2実施形態において遅延情報通知部141,142は、遅延情報S1infoおよび遅延情報S2infoを無線端末300に通知する通知部を構成する。なお、ステップS403の処理は、ステップS401の前に実行されてもよく、ステップS401とステップS402との間に実行されてもよい。
【0096】
ステップS404において、無線送信部151は、遅延ストリーム重畳部121によって遅延ストリームS1delayが重ねられた通信ストリームS1を無線端末300に送信する。無線送信部152は、遅延ストリーム重畳部122によって遅延ストリームS2delayが重ねられた通信ストリームS2を無線端末300に送信する。
【0097】
図8(b)は、無線基地局200Bの動作を示すフローチャートである。
【0098】
ステップS501において、通信ストリーム生成部211は、通信ストリームS1を生成する。通信ストリーム生成部212は、通信ストリームS2を生成する。
【0099】
ステップS502において、遅延ストリーム重畳部221は、遅延情報保持部231が保持する遅延情報S1infoに基づいて遅延ストリームS1delayを生成し、生成した遅延ストリームS1delayを通信ストリームS1に重ねる。また、遅延ストリーム重畳部222は、遅延情報保持部232が保持する遅延情報S2infoに基づいて遅延ストリームS2delayを生成し、生成した遅延ストリームS2delayを通信ストリームS2に重ねる。
【0100】
ステップS504において、無線送信部251は、遅延ストリーム重畳部221によって遅延ストリームS1delayが重ねられた通信ストリームS1を無線端末300に送信する。無線送信部252は、遅延ストリーム重畳部222によって遅延ストリームS2delayが重ねられた通信ストリームS2を無線端末300に送信する。なお、ステップS504の処理は、ステップS404の処理と同時に実行される。
【0101】
(3)作用・効果
第2実施形態では、無線基地局100Bの無線送信部151と、無線基地局200Bの無線送信部251とは、同一の通信ストリームS1をダイバシティ送信するとともに、同一の遅延情報S1infoに基づき生成された遅延ストリームS1delayを通信ストリームS1に重ねて送信する。
【0102】
また、無線基地局100Bの無線送信部152と、無線基地局200Bの無線送信部252とは、同一の通信ストリームS2をダイバシティ送信するとともに、同一の遅延情報S2infoに基づき生成された遅延ストリームS2delayを通信ストリームS2に重ねて送信する。
【0103】
したがって、第2実施形態によれば、通信ストリームS1および通信ストリームS2それぞれが二重化されて、ダイバシティ効果を得ることができる。したがって、第1実施形態よりも高品質な通信を実現できる。
【0104】
[その他の実施形態]
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0105】
例えば、上述した第2実施形態では、無線基地局100Bのみが遅延情報S1infoおよび遅延情報S2infoを無線端末300に通知していたが、図9に示すように、無線基地局200Bも遅延情報S1infoおよび遅延情報S2infoを無線端末300に通知してよい。
【0106】
図9(a)に示す無線基地局100Cは、第2実施形態に係る無線基地局100Bと同様に構成される。図9(b)に示す無線基地局200Cは、第2実施形態に係る無線基地局200Bとは異なり、遅延情報通知部241,242を有している。遅延情報通知部241は、遅延情報S1infoを無線端末300に通知する。遅延情報通知部242は、遅延情報S2infoを無線端末300に通知する。
【0107】
上述した第1実施形態では、送信システム20Aは、遅延ストリームS1delayを通信ストリームS1に重ねて送信する無線基地局100Aと、遅延ストリームS2delayを通信ストリームS2に重ねて送信する無線基地局200Aとを有していた。
【0108】
しかしながら、図10に示すような送信システム20Dを具備する無線通信システム10Dの構成でもよい。送信システム20Dは、分配装置400D、および無線送信機150D,250Dを有する。無線送信機150D,250Dは、例えば無線基地局の設置間隔と同等の間隔をおいて設置されている。分配装置400Dおよび無線送信機150Dは、中継網501を介して接続される。分配装置400Dおよび無線送信機250Dは、中継網502を介して接続される。
【0109】
分配装置400Dには、図2(a)に示した通信ストリーム生成部110、遅延ストリーム重畳部120、遅延情報保持部130および遅延情報通知部140が設けられている。また、分配装置400Dには、図2(b)に示した通信ストリーム生成部210、遅延ストリーム重畳部220、遅延情報保持部230および遅延情報通知部240が設けられている。
【0110】
無線送信機150Dは、遅延ストリームS1delayを通信ストリームS1に重ねて送信する第1無線通信装置を構成する。無線送信機250Dは、遅延ストリームS2delayを通信ストリームS2に重ねて送信する第2無線通信装置を構成する。
【0111】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る無線基地局の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る無線端末の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る無線端末が実行する分離処理の一例を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係る無線基地局の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る無線端末の動作を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係る無線基地局の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】第2実施形態に係る無線基地局の動作を示すフローチャートである。
【図9】その他の実施形態に係る無線基地局の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】その他の実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0113】
10A,10D…無線通信システム、 20A,20D…送信システム、 100A〜100C,200A〜200C…無線基地局、 101,102,201,202,301,302…アンテナ、 110,111,112,210,211,212…通信ストリーム生成部、 120,121,122,220,221,222…遅延ストリーム重畳部、 130,131,132,230,231,232…遅延情報保持部、 140,141,142,240,241,242…遅延情報通知部、 150,151,152,250,251,252…無線送信部、 150D,250D…無線送信機、 300…無線端末、 310…無線受信部、 320…遅延情報取得部、 330…分離処理部、 331…第1抽出部、 332…第2抽出部、 400,400D…分配装置、 501,502…中継網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号系列を送信する第1無線通信装置と、前記第1信号系列と同一の周波数帯を用いる第2信号系列を前記第1信号系列と同一の時間帯において送信する第2無線通信装置とを含む送信システムと、
前記第1信号系列および前記第2信号系列を同一の時間帯において前記送信システムから受信する受信部と、前記受信部が受信した前記第1信号系列および前記第2信号系列を分離する分離処理を実行する分離処理部とを含む無線端末と
を有する無線通信システムであって、
前記第1無線通信装置は、前記第1信号系列を遅延させて生成した第1遅延信号系列と、前記第1信号系列とを重ねて送信し、
前記第2無線通信装置は、前記第1遅延信号系列と遅延量が異なり、前記第2信号系列を遅延させて生成した第2遅延信号系列と、前記第2信号系列とを重ねて送信し、
前記送信システムは、前記第1遅延信号系列に関する第1遅延情報と、前記第2遅延信号系列に関する第2遅延情報とを前記無線端末に通知する通知部を備え、
前記分離処理部は、前記分離処理を実行する際に、通知された前記第1遅延情報に応じて前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを合成し、通知された前記第2遅延情報に応じて前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを合成する無線通信システム。
【請求項2】
前記第1無線通信装置は、前記第1信号系列および前記第2信号系列として同一の信号系列を用いるダイバシティ送信を実行する場合に、前記第1信号系列と、前記第2遅延信号系列と遅延量が等しい前記第1遅延信号系列とを重ねて送信し、
前記第2無線通信装置は、前記ダイバシティ送信を実行する場合に、前記第2信号系列と、前記第1遅延信号系列と遅延量が等しい前記第2遅延信号系列とを重ねて送信する請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記分離処理部は、
前記分離処理において前記第1信号系列を抽出する第1抽出部と、
前記分離処理において前記第2信号系列を抽出する第2抽出部と
を含み、
前記第1抽出部は、前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを同位相で合成する同相合成、または前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを逆位相で合成する逆相合成のうち、少なくとも一方を用いて前記第1信号系列を抽出し、
前記第2抽出部は、前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを逆位相で合成する逆相合成、または前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを同位相で合成する同相合成のうち、少なくとも一方を用いて前記第2信号系列を抽出する請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1遅延情報は、前記第1遅延信号系列の遅延量を示す情報を含み、
前記第2遅延情報は、前記第2遅延信号系列の遅延量を示す情報を含む請求項1〜3の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1遅延信号系列および前記第2遅延信号系列は、互いに振幅が異なり、
前記第1遅延情報は、前記第1遅延信号系列の振幅を示す情報を含み、
前記第2遅延情報は、前記第2遅延信号系列の振幅を示す情報を含む請求項1〜4の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1無線通信装置および前記第2無線通信装置は、互いに異なる無線基地局である請求項1〜5の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
第1信号系列を送信する第1無線通信装置と、
前記第1信号系列と同一の周波数帯を用いる第2信号系列を前記第1信号系列と同一の時間帯において送信する第2無線通信装置と
を含む送信システムであって、
第1遅延信号系列に関する第1遅延情報と第2遅延信号系列に関する第2遅延情報とを前記無線端末に通知する通知部を備え、
前記第1無線通信装置は、前記第1信号系列を遅延させて生成した前記第1遅延信号系列と、前記第1信号系列とを重ねて送信し、
前記第2無線通信装置は、前記第1遅延信号系列と遅延量が異なり、前記第2信号系列を遅延させて生成した前記第2遅延信号系列と、前記第2信号系列とを重ねて送信する送信システム。
【請求項8】
第1信号系列を送信する第1無線通信装置と、前記第1信号系列と同一の周波数帯を用いる第2信号系列を前記第1信号系列と同一の時間帯において送信する第2無線通信装置とを含む送信システムから、前記第1信号系列および前記第2信号系列を同一の時間帯において受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記第1信号系列および前記第2信号系列を分離する分離処理を実行する分離処理部と
を含む無線端末であって、
前記受信部は、
前記第1信号系列と、前記第1信号系列を遅延させて生成された第1遅延信号系列と、前記第1遅延信号系列に関する第1遅延情報とを受信し、
前記第2信号系列と、前記第1遅延信号系列と遅延量が異なり、前記第2信号系列を遅延させて生成された第2遅延信号系列と、前記第2遅延信号系列に関する第2遅延情報とを受信し、
前記分離処理部は、前記分離処理を実行する際に、前記第1遅延情報に応じて前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを合成し、前記第2遅延情報に応じて前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを合成する無線端末。
【請求項9】
第1信号系列を送信する第1無線通信装置と、前記第1信号系列と同一の周波数帯を用いる第2信号系列を前記第1信号系列と同一の時間帯において送信する第2無線通信装置とを含む送信システムと、
前記第1信号系列および前記第2信号系列を同一の時間帯において前記送信システムから受信する受信部と、前記受信部が受信した前記第1信号系列および前記第2信号系列を分離する分離処理を実行する分離処理部とを含む無線端末と
を用いた無線通信方法であって、
前記第1無線通信装置が、前記第1信号系列を遅延させて生成された第1遅延信号系列と、前記第1信号系列とを重ねて送信するステップと、
前記第2無線通信装置が、前記第2信号系列を遅延させて生成され、前記第1遅延信号系列と遅延量が異なる第2遅延信号系列と、前記第2信号系列とを重ねて送信するステップと、
前記第1遅延信号系列に関する第1遅延情報と、前記第2遅延信号系列に関する第2遅延情報とを前記送信システムから前記無線端末に通知するステップと、
前記分離処理部が、前記分離処理を実行する際に、通知された前記第1遅延情報に応じて前記第1信号系列と前記第1遅延信号系列とを合成し、通知された前記第2遅延情報に応じて前記第2信号系列と前記第2遅延信号系列とを合成するステップと
を備える無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−81204(P2010−81204A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246037(P2008−246037)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】