説明

無線通信システム

【目的】 システムIDに基づいて発着呼を許容する無線通信システムにおいて移動局である子機が盗難等に遭った場合、この盗難子機による不正通話を防止する。
【構成】 子機が盗難された場合、盗難子機に対し基地局である親機からシステムIDの消去命令または変更命令を送信し盗難子機のシステムIDを消去または変更する。また、盗難子機が不正通話を行うべく制御信号を送信してもこの制御信号は無効となる。この結果、盗難子機による不正通話が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無線送受信部を備える基地局と、この無線送受信部と無線回線を介して結ばれる複数の移動局とからなる無線通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】基地局に複数の移動局を収容したこの種の無線通信システムにおいては、基地局及び移動局に予めシステムIDが登録されており、かつそれぞれの移動局にはそれぞれ固有の番号が割り当てられている。そして基地局と移動局との通信の際には、必ずこれらシステムIDや移動局番号がデータフレームに付加されて送信されており、基地局においては、これらシステムIDや移動局に割り当てられ各番号をチェックしながら、移動局の発着呼を制御するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような無線通信システムにおいて、移動局である子機が例えば盗難等に遭い紛失した場合、盗難子機による不正通話が可能であるため、この対応として盗難子機に対し基地局である親機側から発信規制を行っている。しかし、発信規制されている場合でも着信応答通話は可能であり、盗難子機による不正通話が完全に阻止できないという問題があった。また、発信規制を行わずに、盗難に遭った子機の代わりに新たな子機を購入し、盗難に遭った子機の番号と同一の番号を登録して使用すると、盗難に遭った子機も同一番号であることから、盗難子機と新規購入子機とが同時に使用可能となり、場合によっては、盗難子機のデータと新規購入子機のデータとが重複し新規購入子機が使用不能になる恐れが生じる。
【0004】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決するために本発明は、移動局(子機)の各々に割り当てられた移動局番号(子機番号)を指定した基地局(親機)または移動局による設定操作に応じて移動局番号を記憶する記憶手段と、設定操作または所定の無効設定要求に応じて移動局番号に該当する移動局に対しシステムIDを消去または変更する命令を送出する無効設定手段とを基地局に設けると共に、命令に応じて自己に登録されているシステムIDを消去または変更する手段を移動局に設けたものである。また、記憶手段に記憶された移動局番号に該当する移動局から送出された制御信号を検出する検出手段を基地局に設け、検出手段の検出出力を無効設定要求としたものである。
【0005】
【作用】移動局である子機が盗難に遭い紛失したような場合、基地局である親機からシステムIDの消去命令または変更命令が送信されて盗難子機のシステムIDが消去または変更されるため、盗難子機による不正通話が阻止される。また、盗難子機から制御信号が送信されてもこの制御信号は無効となる。
【0006】
【実施例】以下、本発明について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る無線通信システムの一実施例を示すブロック図であり、この無線通信システムは、基地局である親機1及び移動局である子機31 〜3nから構成されている。そして親機1は、電話回線(以下、回線)Lに接続されそのループ及び転極を検出するループ及び転極検出回路10、ダイオードブリッジ11,12、着信検出回路13、回線Lのループを閉成するトランジスタ14、通話回路15、回線Lへダイヤル信号を送出するダイヤルIC16、CPU17、電気的な書き込み・消去が可能なIDROM18、フックスイッチ19、各種のキーからなるキー部20、表示部21、各子機と無線通信を行う無線送受信部25、及び電波ノイズを検出する無線受信部26等から構成されている。また、各子機31 〜3n はそれぞれ同一構成となっており、親機1と無線通信を行う無線送受信部30、CPU31、電気的な書き込み・消去が可能なIDROM32、及びキー部33等から構成されている。
【0007】ここで、親機1のIDROM18内にはこのシステムに共通のシステムIDコード及び収容した各子機に割り当てられる子機番号が全子機分記憶されており、また各子機内のIDROM32には、それぞれ上記システムIDコード及び子機番号が記憶されている。そして、子機が発信等を行う場合には送信データと共に、システムIDコードや子機番号がデータフレームに付加されて親機へ送信され、親機においては、これらシステムIDコードや子機番号をチェックして発着信を許容するものとなっている。このような親機1や各子機31 〜3n を備えるシステムにおいて、或子機が盗難に遭い紛失した場合、この盗難子機の親機1を介する不正通話が行われる可能性があるため、親機1ではこの盗難子機を使用不可とするために所定操作によりメモリにこの旨を記憶して盗難子機からアクセスがあってもこれを無効にすると共に、盗難子機へデータを送信しIDROM32の記憶内容をクリアする。
【0008】図2,図3は、盗難子機の発着信を阻止するためのシステムIDコードの消去動作を示すフローチャートであり、このうち図2のフローチャートは親機1内のCPU17の動作を、また図3のフローチャートは子機3内のCPU31の動作をそれぞれ示している。
【0009】まず、図2のフローチャートに基づいて親機1の動作を説明する。例えば子機31 が盗難に遭った場合、親機1ではこの子機31 を使用不可とするために、キー部20の所定キーの操作による設定操作が行われる。ステップ200ではこの設定操作を判断し、これが「Y」と判定された場合は、ステップ201の「使用不可電話機設定」を判断のうえ、操作された使用不可電話機、即ち使用不可子機の番号を入力する(ステップ202)と共に、この入力番号に相当する指定子機(この場合は子機31 )の番号を使用不可としてこの旨をIDROM18へ記憶する(ステップ203)。そして使用不可子機に対しシステムIDコードを消去させるID消去データを送信する(ステップ204)。なお、設定操作が使用不可子機の設定操作ではなく、ステップ201で「N」と判定される場合は、その他の設定処理が行われる(ステップ205)。
【0010】また、子機からの送信されるデータを受信し、ステップ201で「Y」と判定された場合は、データと共に送信される子機番号に基づいてIDROM18の子機毎の使用可否状況をステップ211で判断し、データ送信を行った子機が使用可能であれば、この子機から送信されたデータの処理へ移行する(ステップ212)と共に、この子機が例えば盗難子機であり既に使用不可状態が設定中であれば、受信データ処理を行わずにこの子機に対しID消去データを送信(ステップ213)し、システムIDコードを消去させる。
【0011】こうして使用不可子機のシステムIDコードが消去されると、使用不可子機に代わる新たな子機、即ち増設子機或いは上記使用不可子機が返却された場合にこの使用不可子機に対するシステムIDコードの登録操作が行われる。ステップ220では増設子機に対する登録操作を判断し、これが「Y」と判定されると、増設子機に対してシステムIDコードを送信(ステップ221)すると共に、このIDコード送信により増設子機がIDコードをIDROM32へ書き込み完了(登録完了)したかどうかを例えば増設子機から返送されるデータをチェックして判断する(ステップ222)。そして増設子機の登録完了が「Y」となると、IDROM18中のこの増設子機に相当する子機番号の使用不可状態をクリアし使用可能状態にする(ステップ223)。また、IDコード送信にもかかわらず増設子機における登録完了が検出されない場合は、再度、IDコードを送信するようにし、所定の時間IDコードを送信し続けてもまだ増設子機の登録が検出できず、ステップ224で「Y」と判定される場合は、ステップ225のその他の処理を実行する。
【0012】次に、図2のフローチャートに基づいて子機3のシステムID消去動作を説明する。上記したように、親機1において盗難された子機を使用不可とするために、所定の設定操作が行われ、続いて子機番号が入力されると、該当子機に対しID消去データを送信する。また、使用不可状態の設定されている子機からデータが送信されると、この子機に対しID消去データを返送する。これらの場合、ステップ300の「親機からデータ送信」の判断が「Y」となり、続いてステップ301の「受信データはID消去データ」の判断も「Y」となる。そして子機3はID消去データを受信すると、ステップ302でIDROM32の内部に記憶されているシステムIDコードを消去する。また、受信したデータがID消去データではないときには、その他の受信データ処理を行う(ステップ303)。
【0013】次に、子機3においてキー操作が行われると、ステップ310において「Y」と判定される。この場合、キー操作により親機1へ送信すべきデータが生じステップ311で「Y」と判定されると、次にステップ312ではIDROM32内にシステムIDコードが記憶されているか否かを判定する。そして、システムIDコードが記憶されていれば、直ちにステップ313でキー動作に基づくデータを親機へ送信すると共に、システムIDコードが記憶されていなければ、データの送信を行わずに操作されたキーに基づくキーデータ処理を行う(ステップ314)。
【0014】次に、子機3においてシステムIDの登録操作が行われた場合は、ステップ320の判定が「Y」となる。このような場合には、子機3はシステムID登録モードとなり、親機1から送信されるシステムIDコードの受信待ちとなる。そして、親機1からシステムIDコードが受信されステップ321で「Y」と判定された場合は、受信したIDコードをIDROM32へ書き込む(ステップ322)。また、所定時間内に親機1からのシステムIDコードが受信できずステップ323で「Y」と判定される場合は、ステップ324へ移行してその他の処理を実行する。
【0015】このように、子機3が盗難された場合、所定操作によりこの盗難子機のシステムIDコードを消去して盗難子機による不正通話を防止すると共に、この盗難子機が返却されたような場合、通常の増設子機登録操作を行えば、再使用が可能となり、不特定の利用者に対して子機を一時的に貸出すような、盗難の危険性が高いような場合に特に有効となる。なお、ID消去データが送信された子機(盗難子機)から応答があった場合、親機1から該当子機に対してID消去データが送信された旨を通知して表示させるようにしても良い。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば、移動局である子機が盗難に遭い紛失した場合、基地局である親機からシステムIDの消去命令または変更命令が送信され盗難子機のシステムIDが消去または変更されると共に、盗難子機からの制御信号は無効となるため、盗難子機による不正使用を完全に阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る無線通信システムの一実施例を示すブロック図である。
【図2】上記システム内の基地局(親機)の動作を示すフローチャートである。
【図3】上記システム内の移動局(子機)の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 親機(基地局)
1 〜3n 子機(移動局)
17,31 CPU
18,32 IDROM
26,30 無線送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも無線送受信部を備える基地局と、前記無線送受信部と無線回線を介して結ばれる複数の移動局とからなり、前記基地局及び移動局に予め登録されたシステムIDに基づき発着呼の可否を判断する無線通信システムにおいて、前記移動局の各々に割り当てられた移動局番号を指定した前記基地局または移動局による設定操作に応じて移動局番号を記憶する記憶手段と、前記設定操作または所定の無効設定要求に応じて移動局番号に該当する移動局に対し前記システムIDを消去または変更する命令を送出する無効設定手段とを前記基地局に備えると共に、前記命令に応じて自己に登録されているシステムIDを消去または変更する手段を前記移動局に備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】 請求項1記載の無線通信システムにおいて、前記記憶手段に記憶された移動局番号に該当する移動局から送出された制御信号を検出する検出手段を前記基地局に備え、前記検出手段の検出出力を前記無効設定要求とすることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平6−46004
【公開日】平成6年(1994)2月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−215803
【出願日】平成4年(1992)7月22日
【出願人】(000003632)株式会社田村電機製作所 (18)