説明

無線通信端末およびアンテナインピーダンスの制御方法

【課題】上りリンクと下りリンクでの無線性能を統合的に判断してアンテナの負荷インピーダンス値を適応的に制御するアンテナ制御装置とそれを有する無線通信端末およびアンテナインピーダンスの制御方法を提供する。
【解決手段】MIMO伝送に対応可能な無線通信端末10であって、同一の物理量で表された上りリンクの特性値および下りリンクの特性値を変数とする評価関数を用いて評価量を算出する評価量算出部14と、前記算出された評価量に基づいて、一つ以上のアンテナの負荷インピーダンス値を制御するインピーダンス制御部16とを備える。これにより、MIMO伝送を用いた通信で、周辺環境やユーザ利用によって通信端末の入力インピーダンスが変化した場合に、上りリンク・下りリンク双方の性能を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO伝送可能な無線通信端末およびアンテナインピーダンスの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機に代表される小型の無線通信端末では、周辺の環境変化やユーザの利用状態により入力インピーダンスが変化することで、インピーダンスの不整合が生じ、送受信特性が劣化することが知られている。そのため、無線通信端末の負荷インピーダンスを適応的に変化させることにより性能を補償する制御手法や回路構成が多く考案されている。
【0003】
例えば特許文献1記載のアンテナ整合回路用制御装置では、アンテナの反射損失(VSWR)を最小化するように負荷インピーダンスを適応的に制御し整合状態を確保している。一方、負荷インピーダンスを変化させるとそれに伴いアンテナ放射パターンが変化する。そのため、アンテナ特性と伝搬特性を統合的に考慮した等価チャネル応答も変化する。MIMO伝送のように複数のアンテナを用いる場合は、通信性能がVSWRのみではなくアンテナ間相関等のアンテナ特性や伝搬特性にも大きく依存する。
【0004】
そのため、特許文献2記載のインピーダンス制御方法は、受信側で負荷インピーダンスを変化させた場合のSNRおよびアンテナ間のチャネル相関特性を取得し、これらの値から予測されるスループット値、もしくは推定したチャネル行列から計算される伝送容量値が大きくなるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−244340号公報
【特許文献2】特許第4198552号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術をMIMO伝送に適用し、全受信アンテナでのVSWRを最小化した場合、アンテナ・伝搬特性を考慮していないので、受信相関が高い場合に高い性能を得ることができない。特許文献2の技術を用いても、端末での受信スループットを基準とした制御技術であるために、上りリンクのスループットを高速化できない場合がある。たとえば、FDD(Frequency Division Duplex)のように送受信で異なる周波数帯域を用いる場合、TDDのように同一帯域でも、上りと下りで使用する帯域幅が異なる場合である。後者については、特に、上りと下りどちらか一方は対象となる帯域の一部(サブバンド)のみを用いる場合等が考えられる。
【0007】
また、MIMO伝送を用いる通信システムでは空間多重や時空間・周波数符号、ビームフォーミング等の伝送モードが複数存在する。これらのモードは無線環境に応じて切り替えて用いるのが一般的であり、上りと下りで異なるモードを用いることや、異なるアンテナ数を用いることも考えられる。このような場合も同様に上り品質を保証するのが困難になる。例えば端末が上りリンクで送信アンテナ1本、下りリンクで受信アンテナ2本を用いる場合を考える。この場合、下りの受信SNRと相関値を考慮して最適化されたインピーダンス値は、たとえアンテナ・伝搬の周波数特性が同一であっても上りの信号レベルを最大化できるとは限らない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、上りリンクと下りリンクでの無線性能を統合的に判断してアンテナの負荷インピーダンス値を適応的に制御するアンテナ制御装置とそれを有する無線通信端末およびアンテナインピーダンスの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の無線通信端末は、MIMO伝送に対応可能な無線通信端末であって、同一の物理量で表された上りリンクの特性値および下りリンクの特性値を変数とする評価関数を用いて評価量を算出する評価量算出部と、前記算出された評価量に基づいて、一つ以上のアンテナの負荷インピーダンス値を制御するインピーダンス制御部とを備えることを特徴としている。
【0010】
これにより、MIMO伝送を用いた通信で、周辺環境やユーザ利用によって通信端末の入力インピーダンスが変化した場合に、上りリンク・下りリンク双方の性能を改善することができる。
【0011】
(2)本発明の無線通信端末は、基地局スケジューラが採用する基準と同一の基準で計算対象のMIMOモードを選択するMIMOモード選択部を備え、前記評価量算出部は、前記選択されたMIMOモードで、各リンクの伝送容量を算出し、前記各リンクの伝送容量を変数として前記評価量を算出することを特徴としている。
【0012】
このように、MIMOモードを選択することで、各リンクで異なるMIMOモードを用いる場合にも両リンクの性能を改善できる。また、伝送容量を変数として評価量を算出することで、特にスループットを向上させることができる。
【0013】
(3)本発明の無線通信端末は、前記評価量算出部は、前記評価関数として、各リンクの伝送容量をそれぞれの使用アプリケーションに応じて決まる定数で重み付けして加算する関数を用いて前記評価量を算出することを特徴としている。これにより、各リンクの使用アプリケーションに応じて、両リンクの通信性能を向上させることができる。
【0014】
(4)本発明の無線通信端末は、前記評価量算出部は、前記それぞれの使用アプリケーションに応じて決まる定数として、所要のデータ量に対する使用帯域幅の割合を用いて前記評価量を算出することを特徴としている。これにより、適応的に帯域幅が変化する場合においても、両リンクの通信性能を向上させることができる。ただし、アプリケーション・帯域幅によって決定するこれらの定数を事前に取得しテーブル参照する構成であっても良い。
【0015】
(5)本発明の無線通信端末は、前記評価量算出部は、チャネル情報として基地局からのフィードバック情報を用いて前記評価量を算出することを特徴としている。これにより、チャネル情報がフィードバックされる通信システムで両リンクの通信性能を向上させることができる。
【0016】
(6)本発明の無線通信端末は、前記評価量算出部は、変換テーブルを用いて基地局で制御される送信電力値から上りリンクのSINRを推定し、前記推定された上りリンクのSINRを用いて前記評価量を算出することを特徴としている。このように変換テーブルを用いて等価的なSNRを推定し、シングルストリームモードでの伝送容量計算値を用いることで一定の品質を保証することができる。
【0017】
(7)本発明の無線通信端末は、前記MIMOモード選択部は、上りリンクで用いるアンテナ数と下りリンクで用いるアンテナ数が異なる場合、少ないアンテナ数のリンクでインピーダンスを制御し、得られるSINRが良好なアンテナから順次選択することを特徴としている。これにより、各リンクで異なる数のアンテナを用いる場合でも、容易に両リンクの性能を改善できる。特に、LTEについて対応が容易になる。
【0018】
(8)本発明のアンテナインピーダンスの制御方法は、MIMO伝送に対応可能な無線通信端末を用いて行うアンテナインピーダンスの制御方法であって、同一の物理量で表された上りリンクの特性値および下りリンクの特性値を変数とする評価関数を用いて評価量を算出するステップと、前記算出された評価量に基づいて、一つ以上のアンテナの負荷インピーダンス値を制御するステップとを含むことを特徴としている。
【0019】
これにより、MIMO伝送を用いた通信で、周辺環境やユーザ利用によって通信端末の入力インピーダンスが変化した場合に、上りリンク・下りリンク双方の性能を改善することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、MIMO伝送を用いた通信で、周辺環境やユーザ利用によって通信端末の入力インピーダンスが変化した場合において上りリンク・下りリンク双方の性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の無線通信端末の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施例2の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施例2の一部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(基本的構成)
図1は、無線通信端末10の構成を示すブロック図である。無線通信端末10は、アンテナA−1〜n、送受切替部B−1〜n、受信回路11、チャネル推定部12、MIMOモード選択部13、評価量算出部14、アプリケーション情報取得部15、インピーダンス制御部16、インピーダンス調整部17および送信回路18を備えている。
【0024】
アンテナA−1〜nは、それぞれ通信方式に対応して変調された高周波を送受信する。各アンテナA−1〜nは送受切替部を介し送受信回路B−1〜nに接続することで共用されている。
【0025】
送受切替部B−1〜nは、アンテナA−1〜nに対して受信回路11または送信回路18の接続を切り替え、送受信に応じて信号の入出力に方向性を持たせる。受信回路11は、受信信号を処理する回路である。チャネル推定部12は、受信チャンネル状況を推定する。具体的には受信信号からチャンネル推定値を計算する。
【0026】
MIMOモード選択部13は、チャネル推定部12で得られた受信チャネル状況、基地局側からの上りリンク制御情報およびそれらの値を用いて計算できる所要の物理量から評価量を算出しモードを選択する。このように、MIMOモードを選択することで、各リンクで異なるMIMOモードを用いる場合にも両リンクの性能を改善できる。また、伝送容量を変数として評価量を算出することで、特に通信性能を向上させることができる。なお、無線通信端末10は、上りおよび下りのモードを事前に把握し、基地局側で採用されるモード選択基準を事前に記憶しておく。
【0027】
また、MIMOモード選択部13は、上りリンク送信と下りリンク受信を行う無線通信端末10側のアンテナ本数が異なる場合、用いるアンテナ数の少ないリンクでは、アンテナを選択して用いるアンテナ選択機能を有する。アンテナ選択機能の制御により良好な特性値を得ることができる。
【0028】
評価量算出部14は、アプリケーション情報取得部15で得られた使用アプリケーションの情報と、チャネル推定部12で得られた受信チャネル状況および基地局側からの制御情報から予測される送受信の特性に基づいて現状のインピーダンス値での評価量を計算する。これにより、MIMO伝送を用いた通信で、周辺環境やユーザ利用によって通信端末の入力インピーダンスが変化した場合に、上りリンク・下りリンク双方の性能を改善することができる。
【0029】
評価量算出部14は、送受信の両特性値を変数とする評価関数fm(fm(UL),fm(DL))を用いて評価量を算出する。mは、無線通信端末10側で選択可能なインピーダンス候補のインデックスを表し、fm(UL)およびfm(DL)は各候補に対する上りリンク、下りリンクでの特性値を表す。評価関数fmは両リンクの特性を同一の物理量で統一して算出する。特性値fm(UL)およびfm(DL)は例えば伝送容量であるが、これに限定されず消費電力であってもよく省電力の基準を含めて評価量を算出してもよい。
【0030】
また、評価関数fmはアプリケーション情報取得部15から通知される使用アプリケーション情報および上りまたは下りの帯域幅等に応じて適応的に変化させる。上りおよび下りのそれぞれの特性値、fm(UL)およびfm(DL)はMIMOモードやアンテナ数により計算方法が異なり、通常これらのモードは基地局スケジューラにより決定される。
【0031】
アプリケーション情報取得部15は、使用アプリケーション情報を評価量算出部14に通知する。インピーダンス制御部16は、算出された評価量に基づき、次に調整すべきインピーダンス値候補を決定し、インピーダンス調整部17に制御情報を通知する。
【0032】
インピーダンス調整部17は、インピーダンス制御部からの制御信号に基づいて、アンテナのインピーダンスを適応的に調整する。これは、アンテナ毎独立に制御する負荷インピーダンスを調整して行ってもよい。その場合は、全アンテナの負荷インピーダンス値の組み合わせで定義される評価量を用いて適切な組み合わせを選択するように制御する。送信回路18は、送信信号を処理する回路である。以上のように構成される無線通信端末10の動作の一例を実施例として以下に説明する。
【0033】
(実施例1)
本実施例では、基地局および無線通信端末10が2本のアンテナで送受信を行うものとする。負荷インピーダンス値mに対する、無線通信端末10の第kアンテナでの受信信号rk,m(DL)は以下のように表すことができる。
【数1】

【0034】
hkl,m(DL)は負荷インピーダンスがmの場合の無線通信端末10の第k受信アンテナ、基地局第l送信アンテナ間のチャネル応答を表す。ただし、伝搬遅延時間が大きい場合、各周波数帯域での周波数応答として考えてもよい。sl(DL)は基地局第l送信アンテナからの送信信号、nk(DL)は無線通信端末10の第k受信アンテナでの加法性雑音を表す。同様に上りリンク基地局第lアンテナでの受信信号rl,m(UL)は以下のように表すことができる。
【数2】

【0035】
図2は、無線通信端末10の動作を示すフローチャートである。負荷インピーダンスの第0番目の候補から順次処理を行う(ステップS1)。まず、fm(UL)およびfm(DL)を伝送容量として計算する。最初に、fm(DL)を次のように計算する。
【0036】
そして、下りリンクについて、チャネル推定部12が受信信号からチャネル推定値を計算する(ステップS2)。さらに、推定値から受信平均SINRγm(DL)およびチャネル相関を計算し、MIMOモード選択部13が伝送容量計算対象のMIMOモードを選択する(ステップS3)。なお、本実施例では、MIMOモードの選択に、SINRとチャネル相関を用いているが、基地局スケジューラが別の基準を用いる場合は、その基準の計算手法で計算する。空間多重伝送を用いる場合fm(DL)を以下の式で計算する(ステップS4)。
【数3】

【0037】
なお、MIMOモード選択部13で送信ダイバーシティ等のシングルストリーム伝送方式を選択した場合は、チャネル推定値を用いて、ダイバーシティゲイン等を換算した等価的なSNRを計算し、以下の伝送容量計算を行う。なお、MIMO伝送がこれらと異なるモードに対応している場合には、モードに対応した別の計算手法を用いてもよい。
【数4】

【0038】
上りリンクについては、上りリンク制御情報を取得する(ステップS5)。そして、上りリンク制御情報に基づき、下りリンクと同様にチャネル推定値を用いてMIMOモード選択部13が送容量計算対象のMIMOモードを選択する(ステップS6)。選択されたモードに対応して上りリンクの伝送容量fm(UL)を以下の式で計算する(ステップS7)。
【数5】

【0039】
評価量算出部14は、各リンクのデータ量に対する帯域幅で重み付けを行う以下の関数を用いて、評価量として、上りリンク、下りリンクの伝送容量を算出する(ステップS8)。
【数6】

【0040】
Bw(UL)、Bw(DL)およびD(UL)、D(DL)は、上りリンク、下りリンクそれぞれの使用帯域幅および所要データ量を表す。これらの値は、アプリケーション情報取得部15および制御情報から得ることができる。上記評価量の変化量を最大にするインピーダンス候補mを求めることで、最適な負荷インピーダンスを決定する。これにより、適応的に帯域幅が変化する場合においても、両リンクの通信性能を向上させることができる。
【0041】
このように評価関数fmとして、各リンクの伝送容量をそれぞれの使用アプリケーションに応じて決まる定数で重み付けして加算を行い、評価量を算出することができる。定数は、使用アプリケーションで決まる各リンクの伝送能力を表すものであることが好ましい。なお、重み付けの係数については、各リンクの使用帯域幅、データ量、スロット時間間隔使用アプリケーションおよび使用アプリケーションによって決まる。したがって、これらの数値の関係によって、重み付けの係数を適応的に決めることが可能である。
【0042】
そして、負荷インピーダンスの候補mが最後の候補Mか否かを判定する(ステップS9)。負荷インピーダンスの候補mが最後の候補Mでない場合には、候補mを1増加させて(ステップS10)ステップS1に戻る。最後の候補Mである場合には、fmを最大化させるmを決定する(ステップS11)。
【0043】
FDDを用いる場合は無線通信端末10側で上りリンクチャネル情報を推定するのは困難である。本実施例では、基地局から制御される送信電力から上りリンクのSINRを推定するための変換テーブルを用いることで、等価的なSNRを推定し、シングルストリームモードでの伝送容量計算値を用いることで一定の品質を保証する。なお、基地局側からチャネル情報がフィードバックされる通信システムでは、フィードバックされた値を用いてもよい。
【0044】
(実施例2)
本実施例では、基地局が2本のアンテナで送受信を行い、無線通信端末10が2本のアンテナを、下りリンクの受信で2本、上りリンクの送信で1本用いる場合を考える。この場合、下りリンクはMIMO伝送を行い、上りリンクではSIMO伝送を行う。
【0045】
図3は、無線通信端末10の動作を示すフローチャートである。負荷インピーダンスの第0番目の候補から順次処理を行う(ステップT1)。下りリンクについて受信信号に基づく伝送容量計算は、実施例1と同様である。まず、fm(UL)およびfm(DL)を伝送容量として計算する。
【0046】
そして、下りリンクについて、チャネル推定部12が受信信号からチャネル推定値を計算する(ステップT2)。さらに、推定値から受信平均SINRγm(DL)およびチャネル相関を計算し、MIMOモード選択部13が伝送容量計算対象のMIMOモードを選択する(ステップT3)。なお、本実施例では、MIMOモードの選択に、SINRとチャネル相関を用いているが、基地局スケジューラが別の基準を用いる場合は、その基準の計算手法で計算する。空間多重伝送を用いる場合fm(DL)を計算する(ステップT4)。
【0047】
一方、上りリンクについては、第0〜3のアンテナについて、上りリンク制御情報を取得する(ステップT5)。上りリンク基地局の第lアンテナでの受信信号rl,m(UL)は以下のように表すことができる。なお、sk(UL)は、無線通信端末10の第kアンテナからの上りリンク送信信号を表す。
【数7】

【0048】
上りリンクでは、無線通信端末10が具備するアンテナ数よりも少ないアンテナ数を用いるため、アンテナ選択を行う(ステップT6)。図3に示す通り、同一のインピーダンス候補に対してアンテナを順次切り替えて使用し、SINRの高いアンテナを選択し、選択されたアンテナでの伝送容量fm(UL)を計算する(ステップT7)。計算には、以下で表されるSIMOの伝送容量の数式を用いる。
【0049】
このようにMIMOモード選択部13は、上りリンクで用いるアンテナ数と下りリンクで用いるアンテナ数が異なる場合、少ないアンテナ数のリンクでインピーダンスを制御し、得られるSINRが良好なアンテナから順次選択することができる。これにより、各リンクで異なる数のアンテナを用いる場合でも、容易に両リンクの性能を改善できる。特に、LTEについて対応が容易になる。アンテナ選択処理の詳細については後述する。
【数8】

【0050】
なお、等価的なSNRは、基地局側でダイバーシティ受信を行った場合の等価的なSINRを表し、送信電力制御を行うための制御情報から基地局側でのSINRを推測するための変換テーブルを用いて決定する。
【0051】
以降の処理は実施例1と同様である。評価量算出部14は、評価量として、各リンクのデータ量に対する帯域幅で重み付けを行う関数を用いて上りリンク、下りリンクの伝送容量を算出する(ステップT8)。
【0052】
Bw(UL)、Bw(DL)およびD(UL)、D(DL)は、上りリンク、下りリンクそれぞれの使用帯域幅および所要データ量を表す。これらの値は、アプリケーション情報取得部15および制御情報から得ることができる。上記評価量の変化量を最大にするインピーダンス候補mを求めることで、最適な負荷インピーダンスを決定する。
【0053】
そして、負荷インピーダンスの候補mが最後の候補Mか否かを判定する(ステップT9)。負荷インピーダンスの候補mが最後の候補Mでない場合には、候補mを1増加させて(ステップT10)ステップS1に戻る。最後の候補Mである場合には、fmを最大化させるmを決定する(ステップT11)。このようにして、MIMO伝送を用いた通信で、周辺環境やユーザ利用によって通信端末の入力インピーダンスが変化した場合に、上りリンク・下りリンク双方の性能を改善することができる。
【0054】
次にアンテナ選択処理を説明する。図4は、実施例2の一部の動作としてアンテナ選択処理を示すフローチャートである。kはアンテナインデックスを表し、γは第kアンテナでのSNR、N、Nはそれぞれ端末が有するアンテナ本数、使用数が少ないリンクでのアンテナ本数を表す。アンテナ選択処理では、まず図4に示すように、k=0として初期化する(ステップP1)。次に、インピーダンス候補mに対する第kアンテナのSNRγを取得する(ステップP2)。そして、第kアンテナがN以下か否かを判定する(ステップP3)。判定の結果、kがN以下のときkを1増加させて(ステップP4)ステップP2に戻る。kがNより大きいときγをオーダリングして(ステップP5)、γが大きいkをN個選択し(ステップP6)、終了する。
【0055】
なお、上記のインピーダンス制御の適用は、無線通信端末10に限定されず、基地局に適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 無線通信端末
11 受信回路
12 チャネル推定部
13 モード選択部
14 評価量算出部
15 アプリケーション情報取得部
16 インピーダンス制御部
17 インピーダンス調整部
18 送信回路
A アンテナ
B 送受切替部
fm 評価関数
fm(UL)、fm(DL) 特性値(伝送容量)
k アンテナ番号
l 基地局番号
m インピーダンス候補
M インピーダンス候補数
rk、rl 受信信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIMO伝送に対応可能な無線通信端末であって、
同一の物理量で表された上りリンクの特性値および下りリンクの特性値を変数とする評価関数を用いて評価量を算出する評価量算出部と、
前記算出された評価量に基づいて、一つ以上のアンテナの負荷インピーダンス値を制御するインピーダンス制御部とを備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
基地局スケジューラが採用する基準と同一の基準で計算対象のMIMOモードを選択するMIMOモード選択部を備え、
前記評価量算出部は、前記選択されたMIMOモードで、各リンクの伝送容量を算出し、前記各リンクの伝送容量を変数として前記評価量を算出することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記評価量算出部は、前記評価関数として、各リンクの伝送容量をそれぞれの使用アプリケーションに応じて決まる定数で重み付けして加算する関数を用いて前記評価量を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記評価量算出部は、前記それぞれの使用アプリケーションに応じて決まる定数として、所要のデータ量に対する使用帯域幅の割合を用いて前記評価量を算出することを特徴とする請求項3に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記評価量算出部は、チャネル情報として基地局からのフィードバック情報を用いて前記評価量を算出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記評価量算出部は、変換テーブルを用いて基地局で制御される送信電力値から上りリンクのSINRを推定し、前記推定された上りリンクのSINRを用いて前記評価量を算出することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記MIMOモード選択部は、上りリンクで用いるアンテナ数と下りリンクで用いるアンテナ数が異なる場合、少ないアンテナ数のリンクでインピーダンスを制御し、得られるSINRが良好なアンテナから順次選択することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の無線通信端末。
【請求項8】
MIMO伝送に対応可能な無線通信端末を用いて行うアンテナインピーダンスの制御方法であって、
同一の物理量で表された上りリンクの特性値および下りリンクの特性値を変数とする評価関数を用いて評価量を算出するステップと、
前記算出された評価量に基づいて、一つ以上のアンテナの負荷インピーダンス値を制御するステップとを含むことを特徴とするアンテナインピーダンスの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−188385(P2011−188385A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53772(P2010−53772)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】