説明

無線通信装置、無線通信方法及び無線通信システム

【課題】フェージングの影響が少ない時間は周波数ダイバーシチを独立した信号列として割り当てる方式に切り替えることにより、フェージングの増減に適応的に対応して安定な無線通信を行い、周波数リソースを有効に活用する。
【解決手段】無線通信システムは、無相関の空中線2つを用いた空間ダイバーシチと周波数f1、f2の2波を用いた周波数ダイバーシチとにより構成される4重ダイバーシチ、又は空間ダイバーシチのみの2重ダイバーシチを選択して行う。整合ろ波器211は、適応整合フィルタ207〜210からのタップ情報の全てが閾値以上の値を示しているときは、フェージングの影響が少ないと判断し、切り替えスイッチ104、215を切り替えて、空間ダイバーシチのみで動作させると共に、変調器102、103でそれぞれ変調される独立した2つの送信データを送受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信装置、無線通信方法及び無線通信システムに係り、特に周波数ダイバーシチと空間ダイバーシチとを備えてダイバーシチ送受信を行う無線通信装置、無線通信方法及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周波数ダイバーシチと空間ダイバーシチとを備えてダイバーシチ送受信を行う無線通信システムが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1には、周波数ダイバーシチと空間ダイバーシチとを備えた無線通信システムにおいて、受信側では受信電界に基づいて、電波伝搬の状況(回線品質)が良好と判断した場合は、ダイバーシチ動作を停止し、周波数帯域を有効利用してデータ量を2倍にする構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、互いに異なる少なくとも2つの周波数に変調された無線信号を受信し、周波数ダイバーシチと空間ダイバーシチとを実現する受信側において、各周波数にそれぞれ対応する受信機の組を周波数と同数組備えており、全ての受信機の受信レベルを比較して受信レベルの最も大きい受信機を選択し、更にその受信機との同一の受信周波数を受信する複数の受信機中から最も受信レベルの大きい受信機を選択する構成の無線通信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−277910号公報
【特許文献2】特開平9−307490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2記載の周波数ダイバーシチと空間ダイバーシチとを備えた無線通信システムや無線通信装置では、フェージングが最も激しい時点においても回線品質を維持できるようにダイバーシチ次数を決定しているが、フェージングには短周期及び長周期(季節単位など)での変動があるため、フェージングの影響が少なくなる時間においては、決定したダイバーシチ次数が過剰となる場合がある。
【0006】
また、特許文献2では、電波伝搬特性が良好な場合は、周波数帯域を有効利用してデータ量を2倍にする無線通信システムが開示されているが、電波伝搬特性が良好な場合は、ダイバーシチ動作を停止するため、短周期で変動するフェージングに対してダイバーシチ動作の停止、再開などを繰り返す必要があり、安定な通信が行えない可能性がある。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、フェージングの影響が少ない時間は周波数ダイバーシチを独立した信号列として割り当てる方式に切り替えることにより、フェージングの増減に適応的に対応して安定な無線通信を行い、周波数リソースを有効に活用する無線通信装置、無線通信方法及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の無線通信装置は、周波数ダイバーシチによる第1の無線通信手段と、空間ダイバーシチによる第2の無線通信手段と、受信信号に基づいて、電波伝搬状況を監視してフェージングの影響が大であるか否かを判定する監視手段と、監視手段によりフェージングの影響が大であると判定された期間は、第1及び第2の無線通信手段により一の送信データを送受信させる4重ダイバーシチによる無線通信を行わせ、監視手段によりフェージングの影響が小であると判定された期間は、第2の無線通信手段により複数の送信データを別々に送受信させる2重ダイバーシチによる無線通信を行わせる切り替え手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明の無線通信方法は、周波数ダイバーシチによる第1の無線通信ステップと、空間ダイバーシチによる第2の無線通信ステップと、受信信号に基づいて電波伝搬状況を監視して、フェージングの影響が大であるか否かを判定する監視ステップと、監視ステップによりフェージングの影響が大であると判定された期間は、第1及び第2の無線通信ステップにより一の送信データを送受信させる4重ダイバーシチによる無線通信を行わせ、監視ステップによりフェージングの影響が小であると判定された期間は、第2の無線通信ステップにより複数の送信データを別々に送受信させる2重ダイバーシチによる無線通信を行わせる電波伝搬状況監視切り替えステップとを含むことを特徴とする。
【0010】
更に、上記の目的を達成するため、本発明の無線通信システムは、対向する無線通信装置間で無線通信を行う無線通信システムであって、対向する無線通信装置のそれぞれは、
周波数ダイバーシチによる第1の無線通信手段と、空間ダイバーシチによる第2の無線通信手段と、受信信号に基づいて、電波伝搬状況を監視してフェージングの影響が大であるか否かを判定する監視手段と、監視手段によりフェージングの影響が大であると判定された期間は、第1及び第2の無線通信手段により一の送信データを送受信させる4重ダイバーシチによる無線通信を行わせ、監視手段によりフェージングの影響が小であると判定された期間は、第2の無線通信手段により複数の送信データを別々に送受信させる2重ダイバーシチによる無線通信を行わせる切り替え手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周波数ダイバーシチと空間ダイバーシチとによる無線通信を行うときに、フェージングの影響が大である期間は、周波数ダイバーシチと空間ダイバーシチの両方により通信が可能な状態を維持し、フェージングの影響が小である期間は、空間ダイバーシチのみにより通信が可能な状態を維持しつつ、周波数ダイバーシチを行わない分の通信容量を増加させることで、周波数リソースを有効に活用して効率の良い通信を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の無線通信装置、無線通信方法及び無線通信システムの一実施の形態のブロック図である。
【図2】適応整合フィルタの一例の構成図である。
【図3】フェージングの影響が大きい期間であるときの図1の無線通信システムの要部のブロック図である。
【図4】フェージングの影響が小さい期間であるときの図1の無線通信システムの要部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明になる無線通信装置、無線通信方法及び無線通信システムの一実施の形態のブロック図を示す。本実施の形態の無線通信システムは、対向する2つの無線通信装置からなり、便宜上、図1には、そのうち一方の無線通信装置内の無線送信装置100と、他方の無線通信装置内の無線受信装置200とを示す。一方の無線通信装置内には無線受信装置200と同じ構成の無線受信装置も備えられており、同様に他方の無線通信装置内には無線送信装置100と同じ構成の無線送信装置も備えられている。
【0015】
同じ無線通信装置内の無線送信装置と無線受信装置とは、例えば送受信分離用サーキュレータに接続されて2本の空中線109及び110、201及び202を送受信に共用できるようになされていてよい。本実施の形態の無線通信システムは、無相関の空中線2つを用いた空間ダイバーシチと周波数f1、f2の2波を用いた周波数ダイバーシチとにより構成される4重ダイバーシチ、又は空間ダイバーシチのみの2重ダイバーシチを選択して行う構成例である。
【0016】
無線送信装置100は、送信インタフェース101、変調器(MOD:Modulator)102及び103、切り替えスイッチ104、送信器(TX)105及び106、電力増幅器(HPA:High Power Amplifier)107及び108、空中線(アンテナ)109及び110を有する。切り替えスイッチ104は、変調器102及び103の各出力信号のうちの一方を選択して送信器106に入力する。
【0017】
一方、無線受信装置200は、空中線(アンテナ)201及び202、受信器(RX)203〜205、適応整合フィルタ(AMF:Adaptive Matched Filter)207〜210、整合ろ波器211、加算器212〜214、切り替えスイッチ215、復調器(DEM:Demodulator)216及び217、及び受信インタフェース218を有する。加算器212は、適応整合フィルタ207及び209から出力された信号を加算する。加算器213は、適応整合フィルタ208及び210から出力された信号を加算する。切り替えスイッチ215は、加算器213から出力される信号を、加算器214又は復調器217へ出力する。
【0018】
適応整合フィルタ207〜210は、それぞれ時間変化する伝送路インパルスを推定し、そのインパルス応答の時間反転複素共役を受信信号に畳み込み、S/N最大比合成する公知の適応フィルタであって、通常はトランスバーサルフィルタの構成とされている。
【0019】
図2は、適応整合フィルタの一例の構成図を示す。同図に示すように、適応整合フィルタは、入力信号をそれぞれ時間τずつ遅延する縦続接続された遅延素子301及び302と、各タップ(R1,R2,R3)での信号と復調信号との相関を演算してタップ係数(wa,wb,wc)として出力する相関器303、305及び307と、各タップ上の信号とタップ係数とを乗算する乗算回路304、306及び308と、乗算回路304、306及び308の各出力信号を合成する合成器309と、タップ検出部310とを有する構成とされている。
【0020】
遅延素子301及び302の遅延時間τは、例えばシンボル周期Tの1/2倍の値に設定されている。相関器303、305及び307は、各タップR1、R2、R3上の信号と復調器216又は217により復調された復調信号との相関演算をそれぞれ行い、その演算結果をタップ係数wa,wb及びwcとして乗算回路304、306及び308へ供給する。タップ係数wa,wb及びwcの値が大きい場合は、復調信号との相関性が高いことを示している。
【0021】
なお、図1において、周波数f1の受信信号を所定周波数に変換して得られた信号が入力される適応整合フィルタ207及び209には、復調器216からの復調信号が入力され、周波数f2の受信信号を所定周波数に変換して得られた信号が入力される適応整合フィルタ208及び210には、復調器217からの復調信号が入力される。ただし、後述する4重ダイバーシチの動作時には、すべての適応整合フィルタ207〜210に復調器216からの復調信号が入力される。
【0022】
乗算回路304、306及び308は、各タップR1、R2、R3上の信号にタップ係数wa,wb及びwcをそれぞれ乗算し、各タップR1、R2、R3上の信号にタップ係数wa,wb及びwcを重み付けした信号を生成する。合成器309は、乗算回路304、306及び308から出力された信号を合成し、後段の加算器212又は213へ出力する。また、タップ検出部310は、タップ係数wa,wb及びwcを比較して、例えば最大のタップ係数をタップ情報Wとして図1の整合ろ波器211へ出力する。
【0023】
次に、図1に示す本実施の形態の動作について説明する。送信インタフェース101は入力された送信データを変調器102及び103にそれぞれ供給する。変調器102は、入力された第1の送信データを所定の変調方式で変調し、得られた第1の変調後の信号を送信器105及び切り替えスイッチ104の第1の入力端子に供給する。変調器103は、入力された第2の送信データを変調器102と同じ所定の変調方式で変調し、得られた第2の変調後の信号を切り替えスイッチ104の第2の入力端子に供給する。
【0024】
切り替えスイッチ104は、フェージングが大きいか否かに応じて後述するように切り替えられ、第1の変調後の信号又は第2の変調後の信号を選択して送信器106に供給する。送信器105は、入力された第1の変調後の信号を、例えばマイクロ波帯等の高周波数帯の周波数f1の第1の送信信号に周波数変換して電力増幅器107に供給する。一方、送信器106は、入力された第1又は第2の変調後の信号を、例えばマイクロ波帯等の高周波数帯の周波数f2の第2の送信信号に周波数変換して電力増幅器108に供給する。
【0025】
電力増幅器107は、入力された第1の送信信号を所要のレベルに電力増幅した後、空中線109から空間へ送信する。同様に、電力増幅器108は、入力された第2の送信信号を所要のレベルに電力増幅した後、空中線110から空間へ送信する。空中線109及び110からそれぞれ送信された2波の送信信号は、それぞれ異なる2つの伝搬路を伝搬し、空間的に無相関になるように設置された無線受信装置200の2つの空中線201及び202で受信される。
【0026】
空中線201で受信された信号は周波数f1とf2とに分岐され、周波数f1の受信信号は受信器203に供給され、周波数f2の受信信号は受信器204に供給される。同様に、空中線202で受信された信号は周波数f1とf2とに分岐され、周波数f1の受信信号は受信器205に供給され、周波数f2の受信信号は受信器206に供給される。
【0027】
受信器203、204、205及び206は、それぞれ入力された受信信号を増幅すると共に、同一の所定周波数帯の信号(例えば、中間周波数帯の中間周波信号)に周波数変換した後、対応して設けられた適応整合フィルタ207、208、209及び210へ供給する。適応整合フィルタ207、208、209及び210は、それぞれ入力信号に対して図2と共に説明した公知の適応整合フィルタリング処理によるS/N最大比合成を行うと共に、使用したタップ係数のうちの最大値のタップ係数であるタップ情報W1、W2、W3及びW4を整合ろ波器211へ供給する。
【0028】
加算器212は、異なる空中線201及び202で受信された、同じ周波数f1の受信信号に対して適応整合フィルタ207及び209によりS/N最大比合成した信号同士を加算する。また、加算器213は、異なる空中線201及び202で受信された、同じ周波数f2の受信信号に対して適応整合フィルタ208及び210によりS/N最大比合成した信号同士を加算する。
【0029】
加算器214は、加算器212から出力された第1の加算信号のみを出力するか、又は切り替えスイッチ215を通して加算器213からの第2の加算信号が入力されるときは、第1の加算信号に第2の加算信号を加算した第3の加算信号を生成して出力する。
【0030】
復調器216は、加算器214から供給される第1の加算信号又は第3の加算信号を復調し、その復調信号を受信インタフェース218へ供給すると共に、適応整合フィルタ207及び209又は適応整合フィルタ207〜210へ供給する。復調器217は、切り替えスイッチ215を通して入力された第2の加算信号を復調し、その復調信号を受信インタフェース218へ供給すると共に、適応整合フィルタ208及び210へ供給する。受信インタフェース218は、復調器216から出力された第1の復調信号と、復調器217から出力された第2の復調信号とを入力信号として受け、それらを合成して出力する。なお、第1の復調信号のみが入力されるときには、受信インタフェース218は、第1の復調信号のみを出力する。
【0031】
ここで、本実施の形態では、ダイバーシチ次数の切り替えを、電波伝搬状況を監視し、自動的に行う。すなわち、本実施の形態では、整合ろ波器211により、適応整合フィルタ207〜210から入力されたタップ情報W1〜W4を監視し、それらタップ情報W1〜W4が全て予め設定した所定の閾値以上であるか否かにより、フェージングの影響が少ないか否かを判定し、4重ダイバーシチ又は2重ダイバーシチで動作する。
【0032】
まず、整合ろ波器211により、AMF207〜210から入力された4つのタップ情報W1〜W4のうちいずれか一以上のタップ情報の値が、予め設定した所定の閾値未満の値を示していると判定した期間では、フェージングの影響が大きい期間であると判断し、整合ろ波器211は、切り替えスイッチ215を加算器213からの第2の加算信号を加算器214へ供給するように制御する。
【0033】
同様に、無線送信装置100と同じ無線通信装置内に設けられた、図示しない無線受信装置200と同一の構成の無線受信装置は、無線受信装置200と同じ無線通信装置内に設けられた無線送信装置100と同一構成の無線送信装置から、周波数f3とf4の2波の送信信号を受信し、無線受信装置200と同様の動作により、フェージングの影響が大きい期間であると判断したときは、切り替えスイッチ104を変調器102からの第1の変調後の信号を送信器106へ供給するように制御する。
【0034】
すなわち、フェージングの影響が大きい期間であると判断したときは、図3に示すように、無線送信装置100では、送信器105に供給される変調器102からの第1の変調後の信号を、切り替えスイッチ104が選択して送信器106にも供給するため、変調器103は使用されない。また、無線受信装置200では、図3に示すように、加算器213からの第2の加算信号を切り替えスイッチ215が選択して加算器214に供給するため、復調器217は使用されない。従って、フェージングの影響が大きい期間であると判断したときは、回線品質維持のために4重ダイバーシチでの通信が行われる。
【0035】
この場合、無線送信装置100では送信インタフェース101は送信すべき送信データを変調器102のみに供給する。変調器102から出力された送信データで変調された変調後の信号が、それぞれ送信器105、106で増幅及び無線周波数f1、f2の送信信号に周波数変換された後、電力増幅器107、108を経由して空中線109、110から空間へ送信される。この2波の送信信号は、それぞれ異なる2つの伝搬路を伝搬し、無線受信装置200の空中線201及び202で受信される。
【0036】
無線受信装置200では、前述したように、空中線201及び202で受信された周波数f1の受信信号は、受信器203及び205、適応整合フィルタ207及び209を経由して加算器212に供給されて所定周波数帯の第1の加算信号とされる。また、周波数f2の受信信号は、受信器204及び206、適応整合フィルタ208及び210を経由して加算器213に供給されて上記と同じ所定周波数帯の第2の加算信号とされる。
【0037】
これら第1及び第2の加算信号は、図3に示したように加算器214で加算されて第3の加算信号とされた後、復調器216に供給される。第3の加算信号は、空中線201で受信された2波の受信信号と、空中線202で受信された2波の受信信号とから生成された信号であり、これら4波の受信信号をダイバーシチ合成した信号である。復調器216は、この4波の受信信号をダイバーシチ合成した信号である第3の加算信号を復調する。このようにして、フェージングの影響が大きい期間であると判断したときは、回線品質維持のために4重ダイバーシチでの通信が行われる。
【0038】
他方、整合ろ波器211により、適応整合フィルタ207〜210から入力された4つのタップ情報W1〜W4の全ての値が、予め設定した所定の閾値以上の値を示している期間では、フェージングの影響が小さい期間であると判断し、整合ろ波器211は、切り替えスイッチ215を加算器213からの第2の加算信号を復調器217へ供給するように制御する。
【0039】
同様に、無線送信装置100と同じ無線通信装置内に設けられた、図示しない無線受信装置200と同一の構成の無線受信装置は、無線受信装置200と同じ無線通信装置内に設けられた無線送信装置100と同一構成の無線送信装置から、周波数f3とf4の2波の送信信号を受信し、無線受信装置200と同様の動作により、フェージングの影響が小さい期間であると判断したときは、切り替えスイッチ104を変調器103からの第2の変調後の信号を送信器106へ供給するように制御する。
【0040】
すなわち、フェージングの影響が小さい期間であると判断したときは、図4に示すように、無線送信装置100では、変調器103からの第2の変調後の信号を、切り替えスイッチ104が選択して送信器106に供給する。また、無線受信装置200では、図4に示すように、加算器213からの第2の加算信号を切り替えスイッチ215が選択して復調器217に供給し、加算器214での加算動作は行わない。従って、フェージングの影響が小さい期間であると判断したときは、ダイバーシチ次数を下げても回線品質の影響がない期間であると判断し、2重ダイバーシチでの通信が行われる。このときには、周波数2波を別々のデータの送信に用いて伝送容量を2倍にする。
【0041】
この場合、無線送信装置100では送信インタフェース101は送信すべき第1の送信データを変調器102に供給すると共に、送信すべき第2の送信データを変調器103に供給する。変調器102か、103ら出力された第1、第2の変調後の信号が、それぞれ送信器105、106で増幅及び無線周波数f1、f2の送信信号に周波数変換された後、電力増幅器107、108を経由して空中線109、110から空間へ送信される。この2波の送信信号は、それぞれ異なる2つの伝搬路を伝搬し、無線受信装置200の空中線201及び202で受信される。
【0042】
無線受信装置200では、前述したように、空中線201及び202で受信された周波数f1の受信信号は、受信器203及び205、適応整合フィルタ207及び209を経由して加算器212に供給されて所定周波数帯の第1の加算信号とされる。また、周波数f2の受信信号は、受信器204及び206、適応整合フィルタ208及び210を経由して加算器213に供給されて上記と同じ所定周波数帯の第2の加算信号とされる。
【0043】
これら第1及び第2の加算信号のうち、第1の加算信号は、図4に示したように加算器214を経由して復調器216に供給されて第1の送信データが復調される。第2の加算信号は、図4に示したように切り替えスイッチ215により復調器217に供給されて第2の送信データが復調される。
【0044】
このように、フェージングの影響が小さい期間であると判断したときは、本実施形態の無線通信システムによれば、変調器102−復調器216間と、変調器103−復調器217間との2経路で別個の空間ダイバーシチによる2重ダイバーシチ通信を行うため、4重ダイバーシチ通信の時よりも伝送容量を2倍にすることができる。
【符号の説明】
【0045】
100 無線送信装置
101 送信インタフェース
102、103 変調器(MOD)
104、215 切り替えスイッチ
105、106 送信器(TX)
107、108 電力増幅器(HPA)
109、110、201、202 空中線
200 無線受信装置
203〜206 受信器(RX)
207〜210 適応整合フィルタ(AMF)
211 整合ろ波器
212〜214 加算器
216、217 復調器(DEM)
218 受信インタフェース
301、302 遅延素子
303、305、307 相関器
304、306、308 乗算回路
309 合成器
310 タップ検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数ダイバーシチによる第1の無線通信手段と、
空間ダイバーシチによる第2の無線通信手段と、
受信信号に基づいて、電波伝搬状況を監視してフェージングの影響が大であるか否かを判定する監視手段と、
前記監視手段によりフェージングの影響が大であると判定された期間は、前記第1及び第2の無線通信手段により一の送信データを送受信させる4重ダイバーシチによる無線通信を行わせ、前記監視手段によりフェージングの影響が小であると判定された期間は、前記第2の無線通信手段により複数の送信データを別々に送受信させる2重ダイバーシチによる無線通信を行わせる切り替え手段と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
送信データをそれぞれ変調する複数の変調手段と、
入力された変調後の送信データを、互いに異なる送信周波数の複数の送信信号に変換する送信信号生成手段と、
前記複数の変調手段からそれぞれ出力された複数の変調後の送信データ、又は前記複数の変調手段のうち所定の一の変調手段から出力された変調後の送信データを選択して前記送信信号生成手段へ供給する第1のスイッチ手段と、
前記複数の送信信号をそれぞれ別々に空間に送信する複数の送信用空中線と
を備えた送信側装置と、
空間的に無相関になるように設置された複数の受信用空中線により複数の送信信号を受信して、その受信信号を周波数別に分岐する受信手段と、
前記周波数別に分岐された各受信信号に対して、別々に同一の所定の周波数帯の信号に変換して複数の変換後の受信信号を出力する変換後受信信号生成手段と、
前記複数の受信信号に基づいて電波伝搬状況を監視し、フェージングの影響が大であるか小であるかを判定する監視手段と、
前記複数の変換後の受信信号のうち、変換前の周波数が同じである変換後の受信信号同士を加算して複数の第1の加算信号を生成する合成手段と、
複数の復調手段と、
前記複数の第1の加算信号を前記複数の復調手段によりそれぞれ復調させるか、又は前記複数の第1の加算信号を加算して第2の加算信号を生成し、その第2の加算信号を所定の一の復調手段により復調させるように、前記複数の第1の加算信号を選択する第2のスイッチ手段と
を備えた受信側装置とを有し、
前記監視手段によりフェージングの影響が大であると判定された期間は、前記第1のスイッチ手段により前記複数の変調手段のうち所定の一の変調手段から出力された変調後の送信データを選択させて前記送信信号生成手段へ供給すると共に、前記第2のスイッチ手段により前記第2の加算信号を所定の一の復調手段により復調させるように前記複数の第1の加算信号を選択させ、前記監視手段によりフェージングの影響が大であると判定された期間は、前記第1のスイッチ手段により前記複数の変調手段からそれぞれ出力された複数の変調後の送信データを選択させて前記送信信号生成手段へ供給すると共に、前記第2のスイッチ手段により前記複数の第1の加算信号を前記複数の復調手段によりそれぞれ復調させることを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
前記監視手段は、
前記複数の受信信号に対して別々にS/N最大比合成する複数の適応整合フィルタ手段と、
前記複数の適応整合フィルタ手段から出力される複数のタップ情報に基づいて電波伝搬状況を監視し、前記複数のタップ情報の全てが所定の閾値以上の値を示しているときはフェージングの影響が小であると判定し、前記複数のタップ情報のどれか一以上のタップ情報が前記閾値未満の値を示しているときはフェージングの影響が大であると判定する整合ろ波手段と
よりなることを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2のスイッチ手段は、
前記複数の第1の加算信号のうち、所定の一の第1の加算信号をそのまま通過させるか、又は前記所定の一の第1の加算信号とその所定の一の第1の加算信号以外の他の第1の加算信号とを加算して前記第2の加算信号を生成する加算器と、
前記所定の一の第1の加算信号以外の他の第1の加算信号を、前記加算器又は前記所定の一の第1の加算信号以外の他の第1の加算信号をそれぞれ復調する復調手段へ選択して供給する切り替えスイッチと
よりなることを特徴とする請求項2又は3記載の無線通信装置。
【請求項5】
周波数ダイバーシチによる第1の無線通信ステップと、
空間ダイバーシチによる第2の無線通信ステップと、
受信信号に基づいて電波伝搬状況を監視して、フェージングの影響が大であるか否かを判定する監視ステップと、
前記監視ステップによりフェージングの影響が大であると判定された期間は、前記第1及び第2の無線通信ステップにより一の送信データを送受信させる4重ダイバーシチによる無線通信を行わせ、前記監視ステップによりフェージングの影響が小であると判定された期間は、前記第2の無線通信ステップにより複数の送信データを別々に送受信させる2重ダイバーシチによる無線通信を行わせる電波伝搬状況監視切り替えステップと
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
送信データをそれぞれ変調して複数の変調後の送信データを生成する変調ステップと、
前記複数の変調後の送信データ、又は前記複数の変調後の送信データのうち所定の一の変調後の送信データを選択する第1の切り替えステップと、
前記第1の切り替えステップで選択された変調後の送信データを、互いに異なる送信周波数の複数の送信信号に変換する送信信号生成ステップと、
前記複数の送信信号をそれぞれ複数の送信用空中線を用いて別々に空間に送信する送信ステップと、
空間的に無相関になるように設置された複数の受信用空中線により複数の送信信号を受信して、その受信信号を周波数別に分岐する受信ステップと、
前記周波数別に分岐された各受信信号に対して、別々に同一の所定の周波数帯の信号に変換して複数の変換後の受信信号を出力する変換後受信信号生成ステップと、
前記複数の受信信号に基づいて電波伝搬状況を監視し、フェージングの影響が大であるか小であるかを判定する監視ステップと、
前記複数の変換後の受信信号のうち、変換前の周波数が同じである変換後の受信信号同士を加算して複数の第1の加算信号を生成する合成ステップと、
前記監視ステップによりフェージングの影響が大であると判定された期間は、前記第1の切り替えステップにより前記所定の一の変調後の送信データを選択させると共に、前記前記複数の第1の加算信号を加算して得た第2の加算信号を所定の一の復調手段により復調させるように前記複数の第1の加算信号を選択させ、前記監視ステップによりフェージングの影響が小であると判定された期間は、前記第1の切り替えステップにより前記複数の変調後の送信データを選択させると共に、前記複数の第1の加算信号を前記複数の復調手段にそれぞれ供給する第2の切り替えステップと
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
前記監視ステップは、
複数の適応整合フィルタにより前記複数の受信信号に対して別々にS/N最大比合成するフィルタリングステップと、
前記複数の適応整合フィルタから出力される複数のタップ情報に基づいて電波伝搬状況を監視し、前記複数のタップ情報の全てが所定の閾値以上の値を示しているときはフェージングの影響が小であると判定し、前記複数のタップ情報のどれか一以上のタップ情報が前記閾値未満の値を示しているときはフェージングの影響が大であると判定する整合ろ波ステップと
を含むことを特徴とする請求項6記載の無線通信方法。
【請求項8】
対向する無線通信装置間で無線通信を行う無線通信システムであって、
前記対向する無線通信装置のそれぞれは、
周波数ダイバーシチによる第1の無線通信手段と、
空間ダイバーシチによる第2の無線通信手段と、
受信信号に基づいて、電波伝搬状況を監視してフェージングの影響が大であるか否かを判定する監視手段と、
前記監視手段によりフェージングの影響が大であると判定された期間は、前記第1及び第2の無線通信手段により一の送信データを送受信させる4重ダイバーシチによる無線通信を行わせ、前記監視手段によりフェージングの影響が小であると判定された期間は、前記第2の無線通信手段により複数の送信データを別々に送受信させる2重ダイバーシチによる無線通信を行わせる切り替え手段と
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
対向する無線通信装置間で無線通信を行う無線通信システムであって、
前記対向する無線通信装置のそれぞれは、
送信データをそれぞれ変調する複数の変調手段と、
入力された変調後の送信データを、互いに異なる送信周波数の複数の送信信号に変換する送信信号生成手段と、
前記複数の変調手段からそれぞれ出力された複数の変調後の送信データ、又は前記複数の変調手段のうち所定の一の変調手段から出力された変調後の送信データを選択して前記送信信号生成手段へ供給する第1のスイッチ手段と、
前記複数の送信信号をそれぞれ別々に空間に送信する複数の送信用空中線と
を備えた送信側装置と、
空間的に無相関になるように設置された複数の受信用空中線により複数の送信信号を受信して、その受信信号を周波数別に分岐する受信手段と、
前記周波数別に分岐された各受信信号に対して、別々に同一の所定の周波数帯の信号に変換して複数の変換後の受信信号を出力する変換後受信信号生成手段と、
前記複数の受信信号に基づいて電波伝搬状況を監視し、フェージングの影響が大であるか小であるかを判定する監視手段と、
前記複数の変換後の受信信号のうち、変換前の周波数が同じである変換後の受信信号同士を加算して複数の第1の加算信号を生成する合成手段と、
複数の復調手段と、
前記複数の第1の加算信号を前記複数の復調手段によりそれぞれ復調させるか、又は前記複数の第1の加算信号を加算して第2の加算信号を生成し、その第2の加算信号を所定の一の復調手段により復調させるように、前記複数の第1の加算信号を選択する第2のスイッチ手段と
を備えた受信側装置とを有し、
前記監視手段によりフェージングの影響が大であると判定された期間は、前記第1のスイッチ手段により前記複数の変調手段のうち所定の一の変調手段から出力された変調後の送信データを選択させて前記送信信号生成手段へ供給すると共に、前記第2のスイッチ手段により前記第2の加算信号を所定の一の復調手段により復調させるように前記複数の第1の加算信号を選択させ、前記監視手段によりフェージングの影響が大であると判定された期間は、前記第1のスイッチ手段により前記複数の変調手段からそれぞれ出力された複数の変調後の送信データを選択させて前記送信信号生成手段へ供給すると共に、前記第2のスイッチ手段により前記複数の第1の加算信号を前記複数の復調手段によりそれぞれ復調させることを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
前記監視手段は、
前記複数の受信信号に対して別々にS/N最大比合成する複数の適応整合フィルタ手段と、
前記複数の適応整合フィルタ手段から出力される複数のタップ情報に基づいて電波伝搬状況を監視し、前記複数のタップ情報の全てが所定の閾値以上の値を示しているときはフェージングの影響が小であると判定し、前記複数のタップ情報のどれか一以上のタップ情報が前記閾値未満の値を示しているときはフェージングの影響が大であると判定する整合ろ波手段と
よりなることを特徴とする請求項9記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記第2のスイッチ手段は、
前記複数の第1の加算信号のうち、所定の一の第1の加算信号をそのまま通過させるか、又は前記所定の一の第1の加算信号とその所定の一の第1の加算信号以外の他の第1の加算信号とを加算して前記第2の加算信号を生成する加算器と、
前記所定の一の第1の加算信号以外の他の第1の加算信号を、前記加算器又は前記所定の一の第1の加算信号以外の他の第1の加算信号をそれぞれ復調する復調手段へ選択して供給する切り替えスイッチと
よりなることを特徴とする請求項9又は10記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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