無線電力伝送装置およびその方法
【課題】送電側および受電側のコイルの向きが異なって配置されている場合でも効率的な電力伝送を可能にする。
【解決手段】本発明の一態様としての無線電力伝送装置は、第1の共振コイルと、第1の磁性体と、第2の共振コイルとを備える。前記第1の共振コイルは、交流エネルギーの供給を受けて、磁界を発生させる。前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルで発生させられた磁界の形状を変化させる。前記第2の共振コイルは、前記第1の磁性体によって変化させられた磁界と結合することで、前記交流エネルギーを受ける。前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルと前記第2の共振コイルとの間に配置される。
【解決手段】本発明の一態様としての無線電力伝送装置は、第1の共振コイルと、第1の磁性体と、第2の共振コイルとを備える。前記第1の共振コイルは、交流エネルギーの供給を受けて、磁界を発生させる。前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルで発生させられた磁界の形状を変化させる。前記第2の共振コイルは、前記第1の磁性体によって変化させられた磁界と結合することで、前記交流エネルギーを受ける。前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルと前記第2の共振コイルとの間に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、無線電力伝送装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送に用いるコイルを機器などに内蔵するための技術が報告されている。この報告によれば、送電コイルの近傍、具体的に送電コイルと、導体部品の配置場所との間に、磁性体を配置する。受電コイルは、送電コイルに対し磁性体と反対側に配置する。磁性体を配置することで、送電コイルからの磁力線の形状を変化させ、当該導体部品の配置場所への磁力線を減少させる。これにより、当該配置場所での渦電流の発生が抑圧される。渦電流の発生はエネルギー損失となるため、このように渦電流の発生が抑圧されることで、伝送効率を高くすることができる。すなわち送電コイルから、受電コイルへ効率的なエネルギー伝送ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−239848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成では、受電側または送電側のコイルの向きが変わって互いに対向しなくなった場合に、渦電流の発生が抑圧される効果は維持されるものの、送電コイルから受電コイルへの伝送効率が劣化する問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであって、送電側および受電側のコイルの向きが異なって配置されている場合でも効率的な伝送を可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としての無線電力伝送装置は、第1の共振コイルと、第1の磁性体と、第2の共振コイルとを備える。前記第1の共振コイルは、交流エネルギーの供給を受けて、磁界を発生させる。前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルで発生させられた磁界の形状を変化させる。前記第2の共振コイルは、前記第1の磁性体によって変化させられた磁界と結合することで、前記交流エネルギーを受ける。前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルと前記第2の共振コイルとの間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態1に係る無線電力伝送装置の構成を示す図。
【図2】コイルの巻き軸、および磁界の変化を説明するための図。
【図3】実施形態2の無線電力伝送装置の構成を示す図。
【図4】実施形態3に係る無線電力伝送装置の構成を示す図。
【図5】実施形態4に係る無線電力伝送装置の構成を示す図。
【図6】実施形態4に係る無線電力伝送装置の構成を示す別の図。
【図7】周波数の関係を説明するための図。
【図8】第1の磁性体の配置例を示す図。
【図9】第1の磁性体の他の配置例を示す図。
【図10】第1の磁性体のさらに他の配置例を示す図。
【図11】第1の磁性体のさらに他の配置例を示す図。
【図12】第1の磁性体の形状例を示す図。
【図13】第1の磁性体の他の形状例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る無線電力伝送装置を示す。
【0010】
この無線電力伝送装置は、大きく、送電筐体102と、受電筐体108とを備える。送電筐体102と、受電筐体108はそれぞれ分離および結合可能である。ただし、送電筐体102と受電筐体108が一体化されていても、かまわない。
【0011】
送電筐体102は、所定の伝送周波数で共振する第1の共振コイル101を内蔵する。第1の共振コイル101は、図示しない高周波生成回路から、交流エネルギー、たとえば高周波の電力(エネルギー)の供給を受け、当該交流エネルギーの一部を、磁気結合により第2の共振コイル104に伝送する。
【0012】
ここで第1の共振コイル101は、導体がコイル状に巻かれたものである。ここで導体とは、1本の線で構成されていてもよいし、複数の線を束ねてもよいし、複数の絶縁された線を束ねたリッツ線であってもよい。
【0013】
また、コイルの形状は、平面状に巻かれていてもよいし、立体的に巻かれていてもよい。また、円形、楕円形、長方形、6角形、など任意の外形を有する巻き方でよい。
【0014】
送電筐体102は、第1の共振コイル101以外にも、無線電力伝送用に必要な電気回路や、バッテリーなど任意の部品を内蔵してもよい。
【0015】
受電筐体108は、側壁部105と、底部107とを含む。
【0016】
側壁部105は、第1共振コイル101の巻き軸103の方向に伸びた形状を有する。 コイルの巻軸とは、図2(A)に示すように、コイル面に垂直であり、コイルの中心を通る軸である。
【0017】
側壁部105には、第2の共振コイル104が内蔵されている。第2の共振コイル104の巻き軸方向は、第1の共振コイル101と異なっており、ここでは互いに垂直である。第2の共振コイル104は、第1の共振コイルと同様に構成される。第2の共振コイル104は、第1の共振コイル101との磁気結合により、上記交流エネルギーを受信し、当該交流エネルギーを、図示しない後段のデバイスに送る。後段のデバイスとして蓄電池を用いた場合、蓄電池は当該交流エネルギーの電力を充電する。
【0018】
底部107は、送電筐体102と対向配置され、第1の磁性体106を内蔵する。第1の磁性体106は、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104との間に配置される。第1の磁性体106は、第1の共振コイル101の両端面のうちの一方と、対向配置される。第1の磁性体106は、第1および第2の共振コイル間の磁気結合効率を高めるよう機能する。詳細は後述する。
【0019】
ここで、コイルを軸に対して垂直に巻いた場合に、コイルの端部を通り該軸に垂直な面であって、コイルを含むコイルの内側の領域に一致する面を、該コイルの端面と称する。
【0020】
第1の磁性体106は、比透磁率μrが1より大きな性質を有する材料である。フレキシブルな磁性シートでも良いし、固いフェライトでも良い。任意の磁性体を用いることができる。
【0021】
ここで、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104は、所定の周波数で共振するようになっている。ここで共振とは、コイルのインダクタンスLとコイルのキャパシタンスCから、次式で計算される周波数である。
fr=1/2π√(LC)
【0022】
このように第1の共振コイル101と第2の共振コイル104間に第1の磁性体106を配置することで、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104の各々の端面が互いに対向配置されていない場合でも、伝送効率を高くすることが可能となる。
【0023】
すなわち、第1の磁性体106は、第1の共振コイル101により発生させられた磁力線の形状を変化させる。第1の磁性体106は、第1の共振コイル101と、第2の共振コイル104の間に配置されていることから、第1の共振コイル101の伝送方向において磁力線の形状を変化させることができる。磁力線の形状が変化することで、第2の共振コイル104と結合する、第1の共振コイル101の磁力線の本数を多くすることができ、高い伝送効率を維持できるようになる。第1の磁性体106が存在しない場合は、図2(B)に示すように、第1の共振コイル101からの磁力線の少ししか、第2の共振コイル104と結合せず、伝送効率が低下する。これに対し、第1の磁性体106を配置した場合、磁力線の形状が変化させられて、図2(C)に示すように、より多くの磁力線を第2の共振コイル104と結合させることができる。よって、伝送効率を高くすることができる。
【0024】
ここで、第1の磁性体106の中心は、第1の共振コイル301の巻軸に対してオフセットして配置されている。この結果、第1の共振コイル101の磁力線を、第1の磁性体106が遮る量が減少し、高効率な無線電力伝送が可能となる。
【0025】
すなわち、磁力線は第1の共振コイル101の巻軸を中心に分布している。第1の磁性体106の中心を、巻軸に対してオフセットして配置することで、磁力線と第1の磁性体106の結合量が減少する。この結合量の減少により、第1の磁性体106で発生しうる損失を減少させることが可能となる。
【0026】
ここで、第1の磁性体106の中心とは、磁性体が正方形や長方形の場合には、それらの対角線の交点である。または、任意の形状であれば、磁性体の重心を意味する。また、オフセットとは、第1の共振コイル101の巻軸と、第1の磁性体106の中心が一致していないことを意味する。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104が対向しない場合でも、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104間に第1の磁性体106を配置することで、無線電力伝送の伝送効率を高くすることが可能となる。
【0028】
(実施形態2)
図3に、本発明の実施形態2に係る無線電力伝送装置を示す。
【0029】
側壁部305には第2の磁性体309が内蔵されている。第2の磁性体309は、第2の共振コイル304の両端面のうちの一方と、対向配置されている。すなわち、第2の共振コイル304の巻き軸310に垂直に、第2の磁性体309が、配置される。その他の要素は、実施形態1の同一名称の要素と同様であり、番号を301,302、303、306、307、308に振り直している。
【0030】
この第2の磁性体309は、第2の共振コイル304から見て第2の磁性体309の裏側への磁力線を減少させるためのものである。磁力線が減少した部分、すなわち第2の磁性体309の第2の共振コイル304との反対側に、他の部品を内蔵することが可能となる。例えば、電子回路、バッテリー、ディスプレイなどの部品を配置することが出来るようになる。つまり、他の部品への磁力線を減少させることで、渦電流の発生を抑制して、伝送効率の劣化を改善できる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、第2の磁性体309を第2の共振コイル304に対向配置しているので、第2の共振コイル304から見て第2の磁性体309の裏側に別に部品を配置しても、高い伝送効率を維持することが出来るようになる。
【0032】
(実施形態3)
図4に、本発明の実施形態3に係る無線電力伝送装置を示す。
【0033】
無線電力伝送装置は、送電筐体402に対する受電筐体408の配置位置に応じて、図4(A)に示す第1の伝送状態と、図4(B)に示す第2の伝送状態を有する。
【0034】
図4(A)に示す第1の伝送状態では、底部407内の第1の磁性体406が、第1の共振コイル401の一方の端面と対向配置されるように受電筐体408が配置される。
【0035】
図4(B)に示す第2の伝送状態では、側壁部405内の第2の磁性体409が、第2の共振コイル404を挟んで、第1の共振コイル401の一方の端面と対向配置されるように、受電筐体408が配置される。
【0036】
本発明の実施形態では、受電筐体408を、図4(A)および図4(B)のいずれの位置に配置しても、共に高い伝送効率を維持することが可能である。
【0037】
磁性体の効果としては、既に説明しているように磁力線の形状を変える効果がある。一方、別の効果として、コイルの共振周波数を変化させる効果がある。具体的に、磁性体は、コイルのインダクタンスLを増加させる効果がある。2つのコイルのうちの一方のインダクタンスが増加すると、一方のコイルの共振周波数が変化し、他方のコイルとの間で共振周波数ずれが生じ、伝送効率が劣化してしまう問題がある。そこで、本実施形態では、図4(A)および図4(B)の配置間で、第1の共振コイルの共振周波数の変化が最小化されるようにすることで、いずれの配置の場合も、高い伝送効率を得ることを特徴としている。
【0038】
図4(A)では第1の共振コイル401に対向する第1の磁性体406が、図4(B)では第1の共振コイル401に対向する第2の磁性体409が、第1の共振コイルのインダクタンスLを増加させるように機能する。つまり、第1の伝送状態でも、第2の伝送状態でも、第1の共振コイル401に対向配置されるように磁性体が存在している。その結果、2つの伝送状態間での第1の共振コイル401の共振周波数の変化を、最小化することが可能である。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の共振コイルの共振周波数の変化が、第1および第2の伝送状態間で、最小化されるように、第1および第2の磁性体が配置されるので、2つの伝送状態で共に、高い伝送効率を実現することが可能となる。
【0040】
(実施形態4)
図5に、本発明の実施形態4に係る無線電力伝送装置を示す。
【0041】
受電筐体は、第1の筐体605と、第2の筐体608とに分割可能に構成される。
【0042】
第1の筐体605は、中継共振コイル604と、第1の磁性体603を有する。
【0043】
第2の筐体608は、受電アンテナ606と、第2の磁性体607と、回路基板609を有する。
【0044】
第1の筐体605と第2の筐体608が結合している場合は、結合された状態で、送電筐体602から電力伝送を受ける。具体的に、第1の共振コイル601から中継共振コイル604を介して、受電アンテナ606に電力伝送が行われる。また、第1の筐体605と第2の筐体608が分割されている場合には、図6に示すように、送電筐体602は、第2の筐体608と直接、無線電力伝送をおこなう。
【0045】
図7に示すように、第1の共振コイル601は第1の共振周波数f1と第1の周波数帯域範囲Δf1を有する。第1の共振コイル601からは、第4の周波数範囲内の第4の周波数f4の交流エネルギーが送電される。
【0046】
中継共振コイル604は、第3の共振周波数f3と、第3の周波数帯域範囲Δf3を有する。
【0047】
受電アンテナ606は、第2の共振周波数f2と、第2の周波数帯域範囲Δf2を有する。
【0048】
上記の第4の周波数f4は、周波数帯域範囲Δf1の内の周波数であり、第1の共振周波数f1から第2の共振周波数までの周波数範囲の全てが、第4の周波数範囲に含まれない。
【0049】
このように、受電アンテナ606の共振周波数f2を、送電周波数f4の範囲より高くしている。共振周波数が高いということは、小さなLと小さなCで実現可能となる。このため、受電アンテナ606のサイズを小型化することが出来る。つまり、受電アンテナ606は、少ない巻き数で構成できる。
【0050】
図5のように第2の筐体608と第1の筐体605が結合される場合、小型化した受電アンテナ606と結合する中継共振コイル604を用いて、送電筐体602から電力伝送を受ける。すなわち、中継共振コイル604と第1の共振コイル601が結合することで電力伝送がおこなわれ、さらに中継共振コイル604と受電アンテナ606が結合することで電力伝送がおこなわれる。これにより、第1の共振コイル601から受電アンテナ606までの無線電力伝送が可能となる。中継共振コイル604と受電アンテナ606は近距離のため、各々の共振周波数が異なっていても、中継共振コイル604と受電アンテナ606間で、電力伝送可能である。つまり、電力伝送距が短い場合には、送信側のコイルと受電側のコイルの共振周波数が異なっていても、高い伝送効率を維持することが出来る。
【0051】
また、図6に示すように、第2の筐体608のみを用いて送電筐体602と無線電力伝送をおこなう場合、受電アンテナ606と第1の共振コイル601が近距離のため、高い伝送効率が維持される。第2の筐体608は、中継共振コイルおよび第1の磁性体を内蔵していないため、小型、軽量化が可能である。第2の筐体608側に入出力インターフェース、電子回路、バッテリー、メモリなど、必要な機能を内蔵しておけば、第2の筐体608のみの持ち運びが可能であり、また、容易に持ち運びが可能となる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、受電筐体を第1の筐体605と第2の筐体608に分割して、第2の筐体608のみでも受電可能な構成としている。この結果、受電筐体の小型、軽量化が可能となる。
【0053】
(変形例)
図8に、第1の変形例を示す。
【0054】
第1の磁性体806は、底部807の中心に内蔵されることを特徴とする。受電筐体808は、底部807の中心が、送電筐体の中心軸上に位置するように、配置される場合が多い。しかし、この中心軸上から前後左右にずれて、受電筐体808が配置される場合がある。このようにずれた場合にも、第1の磁性体の効果を高くすることが必要である。
【0055】
そこで、図8に示すように、底部807の中心に第1の磁性体806を内蔵する。これにより、送電筐体の中心軸からずれて受電筐体808が配置された場合でも、第1の磁性体806の効果を得ることが可能となる。その結果、高効率な無線電力伝送が可能となる。
【0056】
図9は、第2の変形例を示す平面図である。
【0057】
第1の磁性体906が、第1の共振コイル901の巻線に対向して、第1の共振コイル901の端面に平行に、配置されている。無線電力伝送をおこなう場合には、第1の共振コイル901に電流が流れる。このとき、この電流と第1の磁性体906の結合を大きくすることで、第1の磁性体906の効果が大きくなる。第1の磁性体906の効果が大きければ、より小さな磁性体を用いることが可能となる。なお、本例では第1の共振コイルは、平面状に巻かれている。
【0058】
そこで、本例のように、第1の共振コイル901の巻線に対向する部分に第1の磁性体906を配置することで、第1の共振コイル901に流れる電流と第1の磁性体906の結合量を大きくできる。この結果、小型、軽量な磁性体で無線電力伝送装置を実現することが可能となる。
【0059】
図10は、第3の変形例を示す平面図である。
【0060】
第1の共振コイル1001の巻き初めと巻き終わりの中間点に対向して、第1の共振コイル1001の端面に平行に、第1の磁性体1006が配置されている。第1の共振コイル1001に流れる電流分布は、巻きはじめと巻き終わりの中間点に、最大の電流振幅を有する。この電流最大の部分に対向させて第1の磁性体1006を配置することで、磁性体の効果を最大限に得ることが可能である。
【0061】
その結果、磁性体の効果による共振周波数変化の量が大きくできるので、第1の磁性体1006の小面積化、小型化、軽量化、低コスト化が可能となる。
【0062】
図11は、第4の変形例を示す平面図である。
【0063】
第1の磁性体1016は、第1の共振コイル1011の巻き初めと巻き終わりの中間点に対向する部分には配置しない。先に説明したように、この中間点には最大の電流が流れる。つまり、無線電力伝送量全体に対する割合の大きな部分である。そこで、この部分を避けるように、つまり、この部分と異なる部分に対向するように、第1の磁性体1016を配置している。
【0064】
その結果、磁性体による損失が減少し、高効率な無線電力伝送が可能となる。
【0065】
(その他の変形例)
第1の磁性体の透磁率を、第2の磁性体の透磁率に比べて、大きくしてもよい。この場合には、第1の磁性体の効果が大きいので、第1の磁性体の小面積化が可能となる。
【0066】
また、第1の磁性体と第2の磁性体の透磁率を同一としても良い。この場合には、2つの伝送状態(図4参照)で、第1の共振コイルの共振周波数を同一にすることが可能となる。また、同一の磁性体を用いるので、部品の種類を削減することが可能であり、低コスト化につながる。
【0067】
また、第2の磁性体の透磁率に比べて、第1の磁性体の透磁率は小さくてもよい。この場合には、第1の磁性体の面積を大きく、また、厚さを大きくする必要がある。この結果、第1の磁性体の重量が増加し、受電筐体が倒れにくくなる。
【0068】
また、図12に示すように、第1の磁性体1026は1つ以上の穴1026aを有してもよい。磁力線が第1の磁性体1026を通過しやすくなり、伝送効率の向上が可能となる。
【0069】
また、図13に示すように、第1の磁性体1036は複数の磁性体片1036aで構成されてもよい。磁力線が第1の磁性体1036を通過しやすくなり、伝送効率の向上が可能となる。
【0070】
また、第1の磁性体の代わりに、金属板を用いても良い。金属板を用いた場合には、金属板と第1の共振コイルの間に寄生容量が発生する。その結果、第1の共振コイルの共振周波数は変化する。磁性体に比べて低コスト化が可能となる。
【0071】
なお、上記の説明では、送電筐体から受電筐体へ電力を送る場合でも説明したが、逆に、受電筐体が電力を送電して、送電筐体が電力を受電する場合にも同様に適用することができる。
【0072】
なお、上記の実施形態は無線電力伝送以外の用途であっても利用することが出来る。例えば、伝送する高周波を変調することで無線通信をおこなうことができる。この場合には、送受信のハードウエアとして無線通信用を利用すればよい。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、無線電力伝送装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送に用いるコイルを機器などに内蔵するための技術が報告されている。この報告によれば、送電コイルの近傍、具体的に送電コイルと、導体部品の配置場所との間に、磁性体を配置する。受電コイルは、送電コイルに対し磁性体と反対側に配置する。磁性体を配置することで、送電コイルからの磁力線の形状を変化させ、当該導体部品の配置場所への磁力線を減少させる。これにより、当該配置場所での渦電流の発生が抑圧される。渦電流の発生はエネルギー損失となるため、このように渦電流の発生が抑圧されることで、伝送効率を高くすることができる。すなわち送電コイルから、受電コイルへ効率的なエネルギー伝送ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−239848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成では、受電側または送電側のコイルの向きが変わって互いに対向しなくなった場合に、渦電流の発生が抑圧される効果は維持されるものの、送電コイルから受電コイルへの伝送効率が劣化する問題がある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであって、送電側および受電側のコイルの向きが異なって配置されている場合でも効率的な伝送を可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としての無線電力伝送装置は、第1の共振コイルと、第1の磁性体と、第2の共振コイルとを備える。前記第1の共振コイルは、交流エネルギーの供給を受けて、磁界を発生させる。前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルで発生させられた磁界の形状を変化させる。前記第2の共振コイルは、前記第1の磁性体によって変化させられた磁界と結合することで、前記交流エネルギーを受ける。前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルと前記第2の共振コイルとの間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態1に係る無線電力伝送装置の構成を示す図。
【図2】コイルの巻き軸、および磁界の変化を説明するための図。
【図3】実施形態2の無線電力伝送装置の構成を示す図。
【図4】実施形態3に係る無線電力伝送装置の構成を示す図。
【図5】実施形態4に係る無線電力伝送装置の構成を示す図。
【図6】実施形態4に係る無線電力伝送装置の構成を示す別の図。
【図7】周波数の関係を説明するための図。
【図8】第1の磁性体の配置例を示す図。
【図9】第1の磁性体の他の配置例を示す図。
【図10】第1の磁性体のさらに他の配置例を示す図。
【図11】第1の磁性体のさらに他の配置例を示す図。
【図12】第1の磁性体の形状例を示す図。
【図13】第1の磁性体の他の形状例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る無線電力伝送装置を示す。
【0010】
この無線電力伝送装置は、大きく、送電筐体102と、受電筐体108とを備える。送電筐体102と、受電筐体108はそれぞれ分離および結合可能である。ただし、送電筐体102と受電筐体108が一体化されていても、かまわない。
【0011】
送電筐体102は、所定の伝送周波数で共振する第1の共振コイル101を内蔵する。第1の共振コイル101は、図示しない高周波生成回路から、交流エネルギー、たとえば高周波の電力(エネルギー)の供給を受け、当該交流エネルギーの一部を、磁気結合により第2の共振コイル104に伝送する。
【0012】
ここで第1の共振コイル101は、導体がコイル状に巻かれたものである。ここで導体とは、1本の線で構成されていてもよいし、複数の線を束ねてもよいし、複数の絶縁された線を束ねたリッツ線であってもよい。
【0013】
また、コイルの形状は、平面状に巻かれていてもよいし、立体的に巻かれていてもよい。また、円形、楕円形、長方形、6角形、など任意の外形を有する巻き方でよい。
【0014】
送電筐体102は、第1の共振コイル101以外にも、無線電力伝送用に必要な電気回路や、バッテリーなど任意の部品を内蔵してもよい。
【0015】
受電筐体108は、側壁部105と、底部107とを含む。
【0016】
側壁部105は、第1共振コイル101の巻き軸103の方向に伸びた形状を有する。 コイルの巻軸とは、図2(A)に示すように、コイル面に垂直であり、コイルの中心を通る軸である。
【0017】
側壁部105には、第2の共振コイル104が内蔵されている。第2の共振コイル104の巻き軸方向は、第1の共振コイル101と異なっており、ここでは互いに垂直である。第2の共振コイル104は、第1の共振コイルと同様に構成される。第2の共振コイル104は、第1の共振コイル101との磁気結合により、上記交流エネルギーを受信し、当該交流エネルギーを、図示しない後段のデバイスに送る。後段のデバイスとして蓄電池を用いた場合、蓄電池は当該交流エネルギーの電力を充電する。
【0018】
底部107は、送電筐体102と対向配置され、第1の磁性体106を内蔵する。第1の磁性体106は、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104との間に配置される。第1の磁性体106は、第1の共振コイル101の両端面のうちの一方と、対向配置される。第1の磁性体106は、第1および第2の共振コイル間の磁気結合効率を高めるよう機能する。詳細は後述する。
【0019】
ここで、コイルを軸に対して垂直に巻いた場合に、コイルの端部を通り該軸に垂直な面であって、コイルを含むコイルの内側の領域に一致する面を、該コイルの端面と称する。
【0020】
第1の磁性体106は、比透磁率μrが1より大きな性質を有する材料である。フレキシブルな磁性シートでも良いし、固いフェライトでも良い。任意の磁性体を用いることができる。
【0021】
ここで、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104は、所定の周波数で共振するようになっている。ここで共振とは、コイルのインダクタンスLとコイルのキャパシタンスCから、次式で計算される周波数である。
fr=1/2π√(LC)
【0022】
このように第1の共振コイル101と第2の共振コイル104間に第1の磁性体106を配置することで、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104の各々の端面が互いに対向配置されていない場合でも、伝送効率を高くすることが可能となる。
【0023】
すなわち、第1の磁性体106は、第1の共振コイル101により発生させられた磁力線の形状を変化させる。第1の磁性体106は、第1の共振コイル101と、第2の共振コイル104の間に配置されていることから、第1の共振コイル101の伝送方向において磁力線の形状を変化させることができる。磁力線の形状が変化することで、第2の共振コイル104と結合する、第1の共振コイル101の磁力線の本数を多くすることができ、高い伝送効率を維持できるようになる。第1の磁性体106が存在しない場合は、図2(B)に示すように、第1の共振コイル101からの磁力線の少ししか、第2の共振コイル104と結合せず、伝送効率が低下する。これに対し、第1の磁性体106を配置した場合、磁力線の形状が変化させられて、図2(C)に示すように、より多くの磁力線を第2の共振コイル104と結合させることができる。よって、伝送効率を高くすることができる。
【0024】
ここで、第1の磁性体106の中心は、第1の共振コイル301の巻軸に対してオフセットして配置されている。この結果、第1の共振コイル101の磁力線を、第1の磁性体106が遮る量が減少し、高効率な無線電力伝送が可能となる。
【0025】
すなわち、磁力線は第1の共振コイル101の巻軸を中心に分布している。第1の磁性体106の中心を、巻軸に対してオフセットして配置することで、磁力線と第1の磁性体106の結合量が減少する。この結合量の減少により、第1の磁性体106で発生しうる損失を減少させることが可能となる。
【0026】
ここで、第1の磁性体106の中心とは、磁性体が正方形や長方形の場合には、それらの対角線の交点である。または、任意の形状であれば、磁性体の重心を意味する。また、オフセットとは、第1の共振コイル101の巻軸と、第1の磁性体106の中心が一致していないことを意味する。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104が対向しない場合でも、第1の共振コイル101と第2の共振コイル104間に第1の磁性体106を配置することで、無線電力伝送の伝送効率を高くすることが可能となる。
【0028】
(実施形態2)
図3に、本発明の実施形態2に係る無線電力伝送装置を示す。
【0029】
側壁部305には第2の磁性体309が内蔵されている。第2の磁性体309は、第2の共振コイル304の両端面のうちの一方と、対向配置されている。すなわち、第2の共振コイル304の巻き軸310に垂直に、第2の磁性体309が、配置される。その他の要素は、実施形態1の同一名称の要素と同様であり、番号を301,302、303、306、307、308に振り直している。
【0030】
この第2の磁性体309は、第2の共振コイル304から見て第2の磁性体309の裏側への磁力線を減少させるためのものである。磁力線が減少した部分、すなわち第2の磁性体309の第2の共振コイル304との反対側に、他の部品を内蔵することが可能となる。例えば、電子回路、バッテリー、ディスプレイなどの部品を配置することが出来るようになる。つまり、他の部品への磁力線を減少させることで、渦電流の発生を抑制して、伝送効率の劣化を改善できる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、第2の磁性体309を第2の共振コイル304に対向配置しているので、第2の共振コイル304から見て第2の磁性体309の裏側に別に部品を配置しても、高い伝送効率を維持することが出来るようになる。
【0032】
(実施形態3)
図4に、本発明の実施形態3に係る無線電力伝送装置を示す。
【0033】
無線電力伝送装置は、送電筐体402に対する受電筐体408の配置位置に応じて、図4(A)に示す第1の伝送状態と、図4(B)に示す第2の伝送状態を有する。
【0034】
図4(A)に示す第1の伝送状態では、底部407内の第1の磁性体406が、第1の共振コイル401の一方の端面と対向配置されるように受電筐体408が配置される。
【0035】
図4(B)に示す第2の伝送状態では、側壁部405内の第2の磁性体409が、第2の共振コイル404を挟んで、第1の共振コイル401の一方の端面と対向配置されるように、受電筐体408が配置される。
【0036】
本発明の実施形態では、受電筐体408を、図4(A)および図4(B)のいずれの位置に配置しても、共に高い伝送効率を維持することが可能である。
【0037】
磁性体の効果としては、既に説明しているように磁力線の形状を変える効果がある。一方、別の効果として、コイルの共振周波数を変化させる効果がある。具体的に、磁性体は、コイルのインダクタンスLを増加させる効果がある。2つのコイルのうちの一方のインダクタンスが増加すると、一方のコイルの共振周波数が変化し、他方のコイルとの間で共振周波数ずれが生じ、伝送効率が劣化してしまう問題がある。そこで、本実施形態では、図4(A)および図4(B)の配置間で、第1の共振コイルの共振周波数の変化が最小化されるようにすることで、いずれの配置の場合も、高い伝送効率を得ることを特徴としている。
【0038】
図4(A)では第1の共振コイル401に対向する第1の磁性体406が、図4(B)では第1の共振コイル401に対向する第2の磁性体409が、第1の共振コイルのインダクタンスLを増加させるように機能する。つまり、第1の伝送状態でも、第2の伝送状態でも、第1の共振コイル401に対向配置されるように磁性体が存在している。その結果、2つの伝送状態間での第1の共振コイル401の共振周波数の変化を、最小化することが可能である。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の共振コイルの共振周波数の変化が、第1および第2の伝送状態間で、最小化されるように、第1および第2の磁性体が配置されるので、2つの伝送状態で共に、高い伝送効率を実現することが可能となる。
【0040】
(実施形態4)
図5に、本発明の実施形態4に係る無線電力伝送装置を示す。
【0041】
受電筐体は、第1の筐体605と、第2の筐体608とに分割可能に構成される。
【0042】
第1の筐体605は、中継共振コイル604と、第1の磁性体603を有する。
【0043】
第2の筐体608は、受電アンテナ606と、第2の磁性体607と、回路基板609を有する。
【0044】
第1の筐体605と第2の筐体608が結合している場合は、結合された状態で、送電筐体602から電力伝送を受ける。具体的に、第1の共振コイル601から中継共振コイル604を介して、受電アンテナ606に電力伝送が行われる。また、第1の筐体605と第2の筐体608が分割されている場合には、図6に示すように、送電筐体602は、第2の筐体608と直接、無線電力伝送をおこなう。
【0045】
図7に示すように、第1の共振コイル601は第1の共振周波数f1と第1の周波数帯域範囲Δf1を有する。第1の共振コイル601からは、第4の周波数範囲内の第4の周波数f4の交流エネルギーが送電される。
【0046】
中継共振コイル604は、第3の共振周波数f3と、第3の周波数帯域範囲Δf3を有する。
【0047】
受電アンテナ606は、第2の共振周波数f2と、第2の周波数帯域範囲Δf2を有する。
【0048】
上記の第4の周波数f4は、周波数帯域範囲Δf1の内の周波数であり、第1の共振周波数f1から第2の共振周波数までの周波数範囲の全てが、第4の周波数範囲に含まれない。
【0049】
このように、受電アンテナ606の共振周波数f2を、送電周波数f4の範囲より高くしている。共振周波数が高いということは、小さなLと小さなCで実現可能となる。このため、受電アンテナ606のサイズを小型化することが出来る。つまり、受電アンテナ606は、少ない巻き数で構成できる。
【0050】
図5のように第2の筐体608と第1の筐体605が結合される場合、小型化した受電アンテナ606と結合する中継共振コイル604を用いて、送電筐体602から電力伝送を受ける。すなわち、中継共振コイル604と第1の共振コイル601が結合することで電力伝送がおこなわれ、さらに中継共振コイル604と受電アンテナ606が結合することで電力伝送がおこなわれる。これにより、第1の共振コイル601から受電アンテナ606までの無線電力伝送が可能となる。中継共振コイル604と受電アンテナ606は近距離のため、各々の共振周波数が異なっていても、中継共振コイル604と受電アンテナ606間で、電力伝送可能である。つまり、電力伝送距が短い場合には、送信側のコイルと受電側のコイルの共振周波数が異なっていても、高い伝送効率を維持することが出来る。
【0051】
また、図6に示すように、第2の筐体608のみを用いて送電筐体602と無線電力伝送をおこなう場合、受電アンテナ606と第1の共振コイル601が近距離のため、高い伝送効率が維持される。第2の筐体608は、中継共振コイルおよび第1の磁性体を内蔵していないため、小型、軽量化が可能である。第2の筐体608側に入出力インターフェース、電子回路、バッテリー、メモリなど、必要な機能を内蔵しておけば、第2の筐体608のみの持ち運びが可能であり、また、容易に持ち運びが可能となる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、受電筐体を第1の筐体605と第2の筐体608に分割して、第2の筐体608のみでも受電可能な構成としている。この結果、受電筐体の小型、軽量化が可能となる。
【0053】
(変形例)
図8に、第1の変形例を示す。
【0054】
第1の磁性体806は、底部807の中心に内蔵されることを特徴とする。受電筐体808は、底部807の中心が、送電筐体の中心軸上に位置するように、配置される場合が多い。しかし、この中心軸上から前後左右にずれて、受電筐体808が配置される場合がある。このようにずれた場合にも、第1の磁性体の効果を高くすることが必要である。
【0055】
そこで、図8に示すように、底部807の中心に第1の磁性体806を内蔵する。これにより、送電筐体の中心軸からずれて受電筐体808が配置された場合でも、第1の磁性体806の効果を得ることが可能となる。その結果、高効率な無線電力伝送が可能となる。
【0056】
図9は、第2の変形例を示す平面図である。
【0057】
第1の磁性体906が、第1の共振コイル901の巻線に対向して、第1の共振コイル901の端面に平行に、配置されている。無線電力伝送をおこなう場合には、第1の共振コイル901に電流が流れる。このとき、この電流と第1の磁性体906の結合を大きくすることで、第1の磁性体906の効果が大きくなる。第1の磁性体906の効果が大きければ、より小さな磁性体を用いることが可能となる。なお、本例では第1の共振コイルは、平面状に巻かれている。
【0058】
そこで、本例のように、第1の共振コイル901の巻線に対向する部分に第1の磁性体906を配置することで、第1の共振コイル901に流れる電流と第1の磁性体906の結合量を大きくできる。この結果、小型、軽量な磁性体で無線電力伝送装置を実現することが可能となる。
【0059】
図10は、第3の変形例を示す平面図である。
【0060】
第1の共振コイル1001の巻き初めと巻き終わりの中間点に対向して、第1の共振コイル1001の端面に平行に、第1の磁性体1006が配置されている。第1の共振コイル1001に流れる電流分布は、巻きはじめと巻き終わりの中間点に、最大の電流振幅を有する。この電流最大の部分に対向させて第1の磁性体1006を配置することで、磁性体の効果を最大限に得ることが可能である。
【0061】
その結果、磁性体の効果による共振周波数変化の量が大きくできるので、第1の磁性体1006の小面積化、小型化、軽量化、低コスト化が可能となる。
【0062】
図11は、第4の変形例を示す平面図である。
【0063】
第1の磁性体1016は、第1の共振コイル1011の巻き初めと巻き終わりの中間点に対向する部分には配置しない。先に説明したように、この中間点には最大の電流が流れる。つまり、無線電力伝送量全体に対する割合の大きな部分である。そこで、この部分を避けるように、つまり、この部分と異なる部分に対向するように、第1の磁性体1016を配置している。
【0064】
その結果、磁性体による損失が減少し、高効率な無線電力伝送が可能となる。
【0065】
(その他の変形例)
第1の磁性体の透磁率を、第2の磁性体の透磁率に比べて、大きくしてもよい。この場合には、第1の磁性体の効果が大きいので、第1の磁性体の小面積化が可能となる。
【0066】
また、第1の磁性体と第2の磁性体の透磁率を同一としても良い。この場合には、2つの伝送状態(図4参照)で、第1の共振コイルの共振周波数を同一にすることが可能となる。また、同一の磁性体を用いるので、部品の種類を削減することが可能であり、低コスト化につながる。
【0067】
また、第2の磁性体の透磁率に比べて、第1の磁性体の透磁率は小さくてもよい。この場合には、第1の磁性体の面積を大きく、また、厚さを大きくする必要がある。この結果、第1の磁性体の重量が増加し、受電筐体が倒れにくくなる。
【0068】
また、図12に示すように、第1の磁性体1026は1つ以上の穴1026aを有してもよい。磁力線が第1の磁性体1026を通過しやすくなり、伝送効率の向上が可能となる。
【0069】
また、図13に示すように、第1の磁性体1036は複数の磁性体片1036aで構成されてもよい。磁力線が第1の磁性体1036を通過しやすくなり、伝送効率の向上が可能となる。
【0070】
また、第1の磁性体の代わりに、金属板を用いても良い。金属板を用いた場合には、金属板と第1の共振コイルの間に寄生容量が発生する。その結果、第1の共振コイルの共振周波数は変化する。磁性体に比べて低コスト化が可能となる。
【0071】
なお、上記の説明では、送電筐体から受電筐体へ電力を送る場合でも説明したが、逆に、受電筐体が電力を送電して、送電筐体が電力を受電する場合にも同様に適用することができる。
【0072】
なお、上記の実施形態は無線電力伝送以外の用途であっても利用することが出来る。例えば、伝送する高周波を変調することで無線通信をおこなうことができる。この場合には、送受信のハードウエアとして無線通信用を利用すればよい。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流エネルギーの供給を受けて、磁界を発生させる第1の共振コイルと、
前記第1の共振コイルで発生させられた磁界の形状を変化させる第1の磁性体と、
前記第1の磁性体によって変化させられた磁界と結合することで、前記交流エネルギーを受ける第2の共振コイルと、
を備え、
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルと前記第2の共振コイルとの間に配置された、無線電力伝送装置。
【請求項2】
前記第2の共振コイルの両端面のうちの一方に対向配置された第2の磁性体
をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の無線電力伝送装置。
【請求項3】
前記第1の共振コイルを含む送電筐体と、
前記第2の共振コイルと前記第1の磁性体とを含む受電筐体を備え、
前記第1の磁性体が前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方と対向配置されるように前記受電筐体が配置される第1の伝送状態と、
前記第2の磁性体が前記第1の共振コイルの両端面のうちの前記一方と対向配置されるように前記受電筐体が配置される第2の伝送状態とを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線電力伝送装置。
【請求項4】
前記第1の共振コイルを含む送電筐体と、
前記第2の共振コイルと前記第1の磁性体とを含む第1筐体と、
受電アンテナと、前記受電アンテナに対向配置された第2の磁性体とを含む第2筐体と、を備え、
前記第1筐体と前記第2筐体とは互いに結合および分離が可能であり、
結合状態では、前記第1筐体および前記第2筐体の結合体が、前記第1の磁性体が前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方と対向配置されるように前記送電筐体に対して配置され、前記受電アンテナは前記第2の共振コイルで発生した磁界と結合して、前記交流エネルギーを受信し、
分離状態では、前記第2筐体が、前記第2の磁性体が前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方と対向しかつ前記受電アンテナが前記第2の磁性体と前記第1の共振コイルの間において前記第1の共振コイルの前記両端面のうちの前記一方と対向するように前記送電筐体に対して配置され、前記受電アンテナは、前記第1の共振コイルで発生した磁界と結合して、前記交流エネルギーを受信する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線電力伝送装置。
【請求項5】
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方に対向配置され、
前記第1の磁性体の中心は、前記第1の共振コイルの前記一方の端面の中心に対して、オフセットしている
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項6】
前記第1の共振コイルを含む送電筐体と、
前記第2の共振コイルと前記第1の磁性体とを含む受電筐体を備え、
前記第2の共振コイルは、前記受電筐体の側壁部に配置され、前記第1の磁性体は、前記受電筐体の底部の中心に配置された、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項7】
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方に平行で、かつ、前記第1の共振コイルの巻き線に対向して配置された
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項8】
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方に平行で、かつ、前記第1の共振コイルの巻き初めと巻き終わりの中間点に対向して配置された
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項9】
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方に平行で、かつ、前記第1の共振コイルの巻き初めと巻き終わりの中間点と異なる部分に対向するように配置された
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項10】
前記第2の磁性体の透磁率に比べて前記第1の磁性体の透磁率は大きい
ことを特徴とする請求項2または3に記載の無線電力伝送装置。
【請求項11】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の透磁率は同一である
ことを特徴とする請求項3に記載の無線電力伝送装置。
【請求項12】
前記第2の磁性体の透磁率に比べて前記第1の磁性体の透磁率は小さい
ことを特徴とする請求項2または3に記載の無線電力伝送装置。
【請求項13】
前記第1の磁性体は、1つ以上の穴を有する
ことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載の無線電力伝送装置。
【請求項14】
前記第1の磁性体は複数の磁性体片で構成される
ことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載の無線電力伝送装置。
【請求項15】
前記第1の磁性体の代わりに金属板を用いることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載の無線電力伝送装置。
【請求項16】
交流エネルギーを第1の共振コイルに供給して、磁界を発生させるステップと、
前記第1の共振コイルで発生させられた磁界の形状を第1の磁性体によって変化させるステップと、
前記第1の磁性体によって変化させられた磁界を、前記第1の共振コイルと異なる向きに配置された第2の共振コイルに結合させ、前記第2の共振コイルで前記交流エネルギーを受けるステップと、
を備え、
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルと前記第2の共振コイルとの間に配置された、無線電力伝送方法。
【請求項1】
交流エネルギーの供給を受けて、磁界を発生させる第1の共振コイルと、
前記第1の共振コイルで発生させられた磁界の形状を変化させる第1の磁性体と、
前記第1の磁性体によって変化させられた磁界と結合することで、前記交流エネルギーを受ける第2の共振コイルと、
を備え、
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルと前記第2の共振コイルとの間に配置された、無線電力伝送装置。
【請求項2】
前記第2の共振コイルの両端面のうちの一方に対向配置された第2の磁性体
をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の無線電力伝送装置。
【請求項3】
前記第1の共振コイルを含む送電筐体と、
前記第2の共振コイルと前記第1の磁性体とを含む受電筐体を備え、
前記第1の磁性体が前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方と対向配置されるように前記受電筐体が配置される第1の伝送状態と、
前記第2の磁性体が前記第1の共振コイルの両端面のうちの前記一方と対向配置されるように前記受電筐体が配置される第2の伝送状態とを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線電力伝送装置。
【請求項4】
前記第1の共振コイルを含む送電筐体と、
前記第2の共振コイルと前記第1の磁性体とを含む第1筐体と、
受電アンテナと、前記受電アンテナに対向配置された第2の磁性体とを含む第2筐体と、を備え、
前記第1筐体と前記第2筐体とは互いに結合および分離が可能であり、
結合状態では、前記第1筐体および前記第2筐体の結合体が、前記第1の磁性体が前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方と対向配置されるように前記送電筐体に対して配置され、前記受電アンテナは前記第2の共振コイルで発生した磁界と結合して、前記交流エネルギーを受信し、
分離状態では、前記第2筐体が、前記第2の磁性体が前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方と対向しかつ前記受電アンテナが前記第2の磁性体と前記第1の共振コイルの間において前記第1の共振コイルの前記両端面のうちの前記一方と対向するように前記送電筐体に対して配置され、前記受電アンテナは、前記第1の共振コイルで発生した磁界と結合して、前記交流エネルギーを受信する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線電力伝送装置。
【請求項5】
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方に対向配置され、
前記第1の磁性体の中心は、前記第1の共振コイルの前記一方の端面の中心に対して、オフセットしている
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項6】
前記第1の共振コイルを含む送電筐体と、
前記第2の共振コイルと前記第1の磁性体とを含む受電筐体を備え、
前記第2の共振コイルは、前記受電筐体の側壁部に配置され、前記第1の磁性体は、前記受電筐体の底部の中心に配置された、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項7】
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方に平行で、かつ、前記第1の共振コイルの巻き線に対向して配置された
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項8】
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方に平行で、かつ、前記第1の共振コイルの巻き初めと巻き終わりの中間点に対向して配置された
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項9】
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルの両端面のうちの一方に平行で、かつ、前記第1の共振コイルの巻き初めと巻き終わりの中間点と異なる部分に対向するように配置された
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項10】
前記第2の磁性体の透磁率に比べて前記第1の磁性体の透磁率は大きい
ことを特徴とする請求項2または3に記載の無線電力伝送装置。
【請求項11】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の透磁率は同一である
ことを特徴とする請求項3に記載の無線電力伝送装置。
【請求項12】
前記第2の磁性体の透磁率に比べて前記第1の磁性体の透磁率は小さい
ことを特徴とする請求項2または3に記載の無線電力伝送装置。
【請求項13】
前記第1の磁性体は、1つ以上の穴を有する
ことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載の無線電力伝送装置。
【請求項14】
前記第1の磁性体は複数の磁性体片で構成される
ことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載の無線電力伝送装置。
【請求項15】
前記第1の磁性体の代わりに金属板を用いることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載の無線電力伝送装置。
【請求項16】
交流エネルギーを第1の共振コイルに供給して、磁界を発生させるステップと、
前記第1の共振コイルで発生させられた磁界の形状を第1の磁性体によって変化させるステップと、
前記第1の磁性体によって変化させられた磁界を、前記第1の共振コイルと異なる向きに配置された第2の共振コイルに結合させ、前記第2の共振コイルで前記交流エネルギーを受けるステップと、
を備え、
前記第1の磁性体は、前記第1の共振コイルと前記第2の共振コイルとの間に配置された、無線電力伝送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−62987(P2013−62987A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201007(P2011−201007)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
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