説明

無線電力伝送装置

【課題】従来の電磁誘導方式でなく磁気共鳴を用いた方式を利用した無線電力供給方法の内、平面に共振コイルを並べて構成する方法は、僅かな共振コイル間の間隔の変化で、大きく結合係数が変化するので、設計や製造上で特性調整が難しいと言った課題が存在するため、従来例が殆ど無かった。
【解決手段】各種機器間で電気伝導線を用いることなく電力を伝送する無線電力伝送装置であって、所定の周波数で共振し、共振のための導線を備えた共振コイルを複数有し、複数の共振コイルが平面配置されているとともに、隣り合う共振コイル同士の電磁界結合を強める位置に、軟磁性体が設けられていることを特徴としている。また、平面視して、隣り合う共振コイルの隣り合う辺を包含して、周回している結合コイルが設けられたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機器間で電気伝導線を用いることなく電力を伝送する無線電力伝送装置に関し、特に電磁界結合を用いた方式による無線電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や携帯情報端末等の携帯型機器の多くは、再充電可能な二次電池を組み込み、定期的に充電を繰り返しながら使用されている。この充電に際して、専用のコネクタがつながれた線を携帯型機器に接続して行ったり、専用のアダプタに携帯型機器をセットして行ったりするが、その不便さや煩わしさから、非接触で充電できる技術の要求が高まってきた。そして、非接触で電力を伝送する方式として、特許文献1や特許文献2に示されるような、電磁誘導を用いて行う方式が一般的である。しかし、電磁誘導方式は、伝送間の距離が非常に短く、使い勝手が悪いものであった。そこで、近年、電力の伝送の距離を長くできる磁気共鳴を用いた方式が注目されてきた。
【0003】
磁気共鳴を用いた方式の無線電力供給方法として、特許文献3(従来例3)では、図11に示すような無線電力供給システム900が提案されている。図11に示す無線電力供給システム900は、送電共振コイル912と電源部911と制御部916とを備えた送電装置901と、受電共振コイル922と電力受給部921とを備えた受電装置902とから構成される。そして、ヘリカルコイルを用いた送電共振コイル912とヘリカルコイルを用いた受電共振コイル922とをコイル軸方向CDに対向させ、磁気共鳴を用いて磁界エネルギーとして送受信している。また、ヘリカルコイルを用いなく、平面コイルを用いた場合でも同様に、平面コイル同士をコイル軸方向に対向させて送受信するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008/032746号
【特許文献2】特開平11−95922号公報
【特許文献3】特開2010−239816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電磁誘導方式でなく磁気共鳴を用いた方式を利用して、特許文献1や特許文献2に示されるように平面上の数箇所から送電させようとする場合、従来例3のような構成の無線電力供給システム900を幾つも横に並べて構成するか、平面に共振コイルを並べて隣接した共振コイル同士を電磁界結合させて、任意の箇所から伝送させるように構成するかのどちらかを選択することになる。
【0006】
しかしながら、従来例3のような無線電力供給システム900を幾つも並べて構成する方法は、製造コストがかかりすぎて現実的でない。また、平面に共振コイルを並べて構成する方法は、従来例が殆ど無い。何故なら、隣り合う共振コイルを電磁界結合させる際に、並列方向の磁界で結合させるため、僅かな共振コイル間の間隔の変化で、大きく結合係数が変化するので、設計や製造上で特性調整が難しいと言った課題が存在するためである。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するもので、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合を強くでき、しかも特性調整が容易にできる無線電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の請求項1による無線電力伝送装置は、各種機器間で電気伝導線を用いることなく電力を伝送する無線電力伝送装置であって、所定の周波数で共振し、共振のための導線を備えた共振コイルを複数有し、前記複数の共振コイルが平面配置されているとともに、隣り合う前記共振コイル同士の電磁界結合を強める位置に、軟磁性体が設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の請求項2による無線電力伝送装置は、前記共振コイルが、渦巻き状の導線と、該導線の端部同士を接続するキャパシタとからなることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の請求項3による無線電力伝送装置は、前記各軟磁性体が、平面視して、2つの共振コイルのみに重なって設けられていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項4による無線電力伝送装置は、各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、多角形であり、前記多角形の角の部分に軟磁性体を設けないことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項5による無線電力伝送装置は、各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、正多角形状であることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項6による無線電力伝送装置は、前記正多角形状が、正平面充填形であることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項7による無線電力伝送装置は、各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、円形状であることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項8による無線電力伝送装置は、前記共振コイルと前記軟磁性体とが、絶縁されていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の請求項9による無線電力伝送装置は、各種機器間で電気伝導線を用いることなく電力を伝送する無線電力伝送装置であって、所定の周波数で共振し、共振のための導線を備えた共振コイルを複数有し、前記複数の共振コイルが平面配置されているとともに、隣り合う前記共振コイル同士の電磁界結合を行う位置に、平面視して、前記隣り合う共振コイルの隣り合う辺を包含して、周回している結合コイルが設けられたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項10による無線電力伝送装置は、前記共振コイルが、渦巻き状の導線と、該導線の端部同士を接続するキャパシタとからなることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の請求項11による無線電力伝送装置は、前記結合コイルが、スイッチと該スイッチの一端と他端とを接続する導電線からなることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の請求項12による無線電力伝送装置は、前記スイッチが、電界効果トランジスタからなることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の請求項13による無線電力伝送装置は、各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、正多角形状であることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の請求項14による無線電力伝送装置は、前記正多角形状が、正平面充填形であることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の請求項15による無線電力伝送装置は、各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、円形状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、無線電力伝送装置は、隣り合う共振コイル同士の電磁界結合を強める位置に、軟磁性体が設けられているので、発生する磁界を強くでき、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合を強くできる。このことにより、隣り合う共振コイル間の間隔が製造時の作製誤差等で多少ばらついても、結合特性の変化を小さくできる。したがって、特性調整が容易にでき、無線電力伝送装置が製造しやすくなる。
【0024】
請求項2の発明によれば、無線電力伝送装置は、共振コイルが、渦巻き状の導線とキャパシタとからなるので、所定の周波数で容易に共振させることができる。このことにより、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合を確実に強くでき、しかも特性調整が容易にできるようになる。
【0025】
請求項3の発明によれば、無線電力伝送装置は、各軟磁性体が、2つの共振コイルのみに重なって設けられているので、隣り合う共振コイル間で所望しない電磁界結合をより抑えることができる。このことにより、伝送効率をより向上させることができる。
【0026】
請求項4の発明によれば、無線電力伝送装置は、軟磁性体が、各共振コイルの導線の多角形の角に設けていないので、隣り合う共振コイル間で所望しない電磁界結合を抑えることができる。このことにより、伝送効率を向上させることができる。
【0027】
請求項5の発明によれば、無線電力伝送装置は、各共振コイルの導線の外周形状が正多角形状であるので、隣り合う共振コイル間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合をより確実に強くでき、しかも特性調整がより容易にできるようになる。
【0028】
請求項6の発明によれば、無線電力伝送装置は、各共振コイルの導線の外周形状が正平面充填形であるので、共振コイルを効率良く配置できるとともに、隣り合う共振コイル間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合をより一層確実に強くでき、しかも特性調整がより一層容易にできるようになる。
【0029】
請求項7の発明によれば、無線電力伝送装置は、各共振コイルの導線の外周形状が円形状であるので、隣り合う共振コイル間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合をより確実に強くでき、しかも特性調整がより容易にできるようになる。
【0030】
請求項8の発明によれば、無線電力伝送装置は、共振コイルと軟磁性体とが絶縁されているので、導電性を有する軟磁性体を用いることができる。このことにより、磁束密度の大きい軟磁性体を選択することができるので、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合をより強くできる。
【0031】
請求項9の発明によれば、無線電力伝送装置は、隣り合う共振コイル同士の電磁界結合を行う位置に、結合コイルが設けられているので、結合コイルを介して電磁界結合を行うことができ、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合を強くできる。このことにより、隣り合う共振コイル間の間隔が製造時の作製誤差等で多少ばらついても、結合特性の変化を小さくできる。したがって、特性調整が容易にでき、無線電力伝送装置が製造しやすくなる。
【0032】
請求項10の発明によれば、無線電力伝送装置は、共振コイルが、渦巻き状の導線とキャパシタとからなるので、所定の周波数で容易に共振させることができる。このことにより、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合を確実に強くでき、しかも特性調整が容易にできるようになる。
【0033】
請求項11の発明によれば、無線電力伝送装置は、結合コイルが導電線と導線の一端と他端とを接続したスイッチとからなるので、スイッチをON/OFFさせることにより、伝送経路を任意に決めることができる。このことにより、隣り合う共振コイル間で所望しない電磁界結合を抑えることができ、伝送効率を向上させることができる。
【0034】
請求項12の発明によれば、無線電力伝送装置は、スイッチが電界効果トランジスタからなるので、簡単な配線でしかも小型にできるスイッチ構造が得られる。このことにより、無線電力伝送装置が製造しやすくなる。
【0035】
請求項13の発明によれば、無線電力伝送装置は、各共振コイルの導線の外周形状が正多角形状であるので、隣り合う共振コイル間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合をより確実に強くでき、しかも特性調整がより容易にできるようになる。
【0036】
請求項14の発明によれば、無線電力伝送装置は、各共振コイルの導線の外周形状が正平面充填形であるので、共振コイルを効率良く配置できるとともに、隣り合う共振コイル間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合をより一層確実に強くでき、しかも特性調整がより一層容易にできるようになる。
【0037】
請求項15の発明によれば、無線電力伝送装置は、各共振コイルの導線の外周形状が円形状であるので、隣り合う共振コイル間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合をより確実に強くでき、しかも特性調整がより容易にできるようになる。
【0038】
したがって、本発明の無線電力伝送装置は、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合を強くでき、しかも特性調整が容易にできる無線電力伝送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態の無線電力伝送装置を説明する構成図であって、平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の無線電力伝送装置を説明する構成図であって、図1に示すII−II線における断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態の無線電力伝送装置を説明する構成図であって、平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の無線電力伝送装置を説明する構成図であって、図3に示すIV−IV線における断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の無線電力伝送装置を説明する構成図であって、平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の無線電力伝送装置を説明する構成図であって、図5に示すVI−VI線における断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の無線電力伝送装置を説明する構成図であって、共振コイルを示した平面図である。
【図8】本発明の第3実施形態の無線電力伝送装置を説明する構成図であって、結合コイルを示した平面図である。
【図9】本発明の実施形態の座標入力装置における変形例1を説明した構成図であって、共振コイルを示した平面図である。
【図10】本発明の実施形態の座標入力装置における変形例2を説明した構成図であって、共振コイルを示した平面図である。
【図11】従来例3における無線電力供給システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の無線電力伝送装置101を説明する構成図である。図2は、本発明の第1実施形態の無線電力伝送装置101を説明する構成図であって、図1に示すII−II線における断面図である。
【0042】
本発明の第1実施形態の無線電力伝送装置101は、図1及び図2に示すように、複数の共振コイル11と、複数の軟磁性体15と、共振コイル11と軟磁性体15とが形成された基材19とを備えて構成されている。
【0043】
共振コイル11は、図1及び図2に示すように、後述する基材19上に設けられ、渦巻き状の導線12と、導線12の端部同士を接続するキャパシタ13とから構成され、所定の周波数F1で共振するように形成されている。また、複数の共振コイルは、基材19上に平面配置されている。
【0044】
また、導線12は、導電性の材料からなり、例えば銅または銅合金を好適に用い、図1に示すように、導線12の外周形状は、正方形になるように形成されている。なお、導線12の材料として、銅または銅合金を好適に用いたが、他の導電性の材料でも良く、例えば銀または銀合金,ニッケルまたはニッケル合金,アルミニウムまたはアルミニウム合金等でも良い。
【0045】
また、キャパシタ13は、一般に広く用いられている積層セラミックチップコンデンサを好適に用い、導線12の端部同士を接続するように、図2に示すように、はんだHD付けされて実装されている。なお、キャパシタ13に積層セラミックチップコンデンサを好適に用いたが、無機系或いは有機系の誘電体膜を用いたコンポジットコンデンサ等でも良い。
【0046】
このようにして、渦巻き状の導線12のインダクタンスLとキャパシタ13の容量Cから、LC共振回路(F=1/(2π√(LC)))を用いて、所定の周波数F1で容易に共振させることができる。
【0047】
軟磁性体15は、絶縁性の材料からなり、例えばフェライト系の材質を用い、図1に示すように、隣り合う共振コイル11同士の電磁界結合を強める位置に、配置されている。このため、発生する磁界を強くでき、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合を強くできる。特に、図1に示す本発明の無線電力伝送装置101は、各軟磁性体15が、平面視して(図1の平面図)、2つの共振コイル11のみに重なって、設けられた構成になっている。それ故に、正方形の角の部分に軟磁性体15は設けられていない。このため、隣り合う共振コイル11間で所望しない電磁界結合をより抑えることができる。なお、軟磁性体15にフェライト系の材質を用いたが、絶縁性の軟磁性材料であれば良く、フェライト系の材質に限るものではない。
【0048】
基材19は、ガラス入りのエポキシ樹脂からなり、一般に広く知られている片面のプリント配線板(PCB)を用いて、プリント配線板上に設けられた銅(Cu)等の金属箔を導線12の配線パターンが得られるようにパターニングして、導線12を形成するとともに、基材としている。なお、片面のプリント配線板の替わりに、ポリイミド樹脂(PI)等の素材のフレキシブルプリント配線板(FPC)を用いて、基材としても良い。
【0049】
このようにして構成された無線電力伝送装置101に、例えば、図1に示す共振コイル11Aへ電磁界結合を用いた方式等により電力が伝送されると、軟磁性体15によって共振コイル間の電磁界結合が強められた隣り合う共振コイル11Bに電力が伝送される。同様にして、共振コイル11Bから共振コイル11Cへ、共振コイル11Cから共振コイル11Dへ、共振コイル11Dから共振コイル11Eへ、順次電力が伝送される。そして、共振コイル11Eと電磁界結合する共振体(図示していない)を共振コイル11Eに近づけると、電磁界結合により、共振体に電力が伝送される。このようにして、共振コイル11Aへ伝送された電力が、無線電力伝送装置101によって、共振体に伝送される。なお、上記伝送経路は、伝送経路の一例であって、例えば共振コイル11Aから、軟磁性体15によってコイル間の電磁界結合が強められた隣り合う共振コイル11Fに電力が伝送され、違う伝送経路を通って共振コイル11Eに電力が伝送される場合がある。
【0050】
従来は、この伝送の際に、隣り合う共振コイル11間の距離が近過ぎると結合係数が強過ぎて、伝送特性の最適化ができず、逆に、遠過ぎると電磁界結合が弱過ぎてやはり伝送特性の最適化ができなかった。このため、共振コイル11間の距離をある程度離して配置する必要があったが、僅かな共振コイル11間の間隔の変化で大きく結合係数が変化してしまい、同様にして、伝送特性の最適化ができなかった。
【0051】
本発明の無線電力伝送装置101は、この共振コイル11間の距離をある程度離して配置された共振コイル11間に、軟磁性体15を配置することによって、共振コイル11同士の電磁界結合を強め、共振コイル11間の間隔のバラツキによる結合係数の変化を小さくすることができる。このことにより、隣り合う共振コイル11間の間隔が製造時の作製誤差等で多少ばらついても、結合特性の変化を小さくできるので、特性調整が容易にでき、無線電力伝送装置101が製造しやすくなる。
【0052】
また、導線12の外周形状は、正多角形状の正方形なので、隣り合う共振コイル11間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合をより確実に強くでき、しかも特性調整がより容易にできるようになる。
【0053】
さらに、導線12の外周形状は、正平面充填形の正多角形状なので、共振コイル11を効率良く配置できるとともに、隣り合う共振コイル11間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル同士の電磁界結合をより一層確実に強くでき、しかも特性調整がより一層容易にできるようになる。
【0054】
以上により、本発明の無線電力伝送装置101は、隣り合う共振コイル11同士の電磁界結合を強める位置に、軟磁性体15が設けられているので、発生する磁界を強くでき、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合を強くできる。このことにより、隣り合う共振コイル11間の間隔が製造時の作製誤差等で多少ばらついても、結合特性の変化を小さくできる。したがって、特性調整が容易にでき、無線電力伝送装置101が製造し易くなる。
【0055】
また、共振コイル11が、渦巻き状の導線12とキャパシタ13とからなるので、所定の周波数F1で容易に共振させることができる。このことにより、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合を確実に強くでき、しかも特性調整が容易にできるようになる。
【0056】
また、各軟磁性体15が、2つの共振コイル11のみに重なって設けられているので、隣り合う共振コイル11間で所望しない電磁界結合をより抑えることができる。このことにより、伝送効率をより向上させることができる。
【0057】
また、軟磁性体15が、各共振コイル11の導線12の多角形の角に設けていないので、隣り合う共振コイル11間で所望しない電磁界結合を抑えることができる。このことにより、伝送効率を向上させることができる。
【0058】
また、各共振コイル11の導線12の外周形状が正多角形状であるので、隣り合う共振コイル11間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合をより確実に強くでき、しかも特性調整がより容易にできるようになる。
【0059】
また、各共振コイル11の導線12の外周形状が正平面充填形であるので、共振コイル11を効率良く配置できるとともに、隣り合う共振コイル11間の間隔のバラツキを抑えることができる。このことにより、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合をより一層確実に強くでき、しかも特性調整がより一層容易にできるようになる。
【0060】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態の無線電力伝送装置102を説明する構成図である。図4は、本発明の第2実施形態の無線電力伝送装置102を説明する構成図であって、図3に示すIV−IV線における断面図である。第2実施形態の無線電力伝送装置102は、第1実施形態に対し、絶縁体79を設けている点が異なる。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
本発明の第2実施形態の無線電力伝送装置102は、図3及び図4に示すように、複数の共振コイル11と、複数の軟磁性体25と、共振コイル11と軟磁性体25とを絶縁するための絶縁体79と、共振コイル11、軟磁性体25及び絶縁体79が形成された基材19とを備えて構成されている。
【0062】
絶縁体79は、絶縁性の材料からなり、例えば有機系の材質を用い、図3及び図4に示すように、基材19上に、共振コイル11と軟磁性体25とが絶縁されるように、パターン状に形成されている。絶縁体79の形成は、例えばスクリーン印刷によって行われ、印刷が可能である熱硬化型レジスト等の材質が好適に用いられる。
【0063】
軟磁性体25は、鉄を主成分とする材料、例えばパーマロイ(Fe−Ni合金)を用い、図3に示すように、隣り合う共振コイル11同士の電磁界結合を強める位置に、配置されている。このため、発生する磁界を強くでき、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合を強くできる。また、共振コイル11と軟磁性体25とが絶縁体79により絶縁されているので、導電性を有する軟磁性体25を用いることができる。このことにより、磁束密度の大きい軟磁性体を選択することができるので、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合をより強くできる。なお、軟磁性体25にパーマロイ(Fe−Ni合金)を用いたが、軟磁性材料であれば良く、他の鉄系材料であるセンダスト(Fe−Si−Al合金)や非鉄系のアモルファス磁性合金等でも良い。
【0064】
以上により、本発明の無線電力伝送装置102は、隣り合う共振コイル11同士の電磁界結合を強める位置に、軟磁性体25が設けられているので、発生する磁界を強くでき、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合を強くできる。このことにより、隣り合う共振コイル11間の間隔が製造時の作製誤差等で多少ばらついても、結合特性の変化を小さくできる。したがって、特性調整が容易にでき、無線電力伝送装置102が製造し易くる。
【0065】
また、共振コイル11と軟磁性体25とが絶縁体79により絶縁されているので、導電性を有する軟磁性体25を用いることができる。このことにより、磁束密度の大きい軟磁性体を選択することができるので、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合をより強くできる。
【0066】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態の無線電力伝送装置103を説明する構成図である。図6は、本発明の第3実施形態の無線電力伝送装置103を説明する構成図であって、図5に示すVI−VI線における断面図である。図7は、本発明の第3実施形態の無線電力伝送装置103を説明する構成図であって、共振コイル11を示した平面図である。図8は、本発明の第3実施形態の無線電力伝送装置103を説明する構成図であって、結合コイル36を示した平面図である。第3実施形態の無線電力伝送装置103は、第1実施形態に対し、結合コイル36を設けている点が異なる。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
本発明の第3実施形態の無線電力伝送装置103は、図5ないし図8に示すように、複数の共振コイル11と、共振コイル11が形成された基材19と、複数の結合コイル36と、結合コイル36が形成された絶縁基材39とを備えて構成されている。
【0068】
結合コイル36は、図5ないし図8に示すように、後述する絶縁基材39上に設けられ、スイッチ38と、スイッチ38の一端と他端とを接続している導電線37とから構成され、隣り合う共振コイル11同士の電磁界結合を行う位置に配置されている。また、結合コイル36は、平面視して(図5の平面図)、隣り合う共振コイル11の隣り合う辺を包含して、周回するように設けられている。このため、結合コイル36を介して電磁界結合を行うことができ、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合を強くできる。
【0069】
また、導電線37は、導電性の材料からなり、例えば銅または銅合金を好適に用い、図5に示すように、隣り合う共振コイル11の隣り合う辺を包含して、周回するように設けられている。なお、導電線37の材料として、銅または銅合金を好適に用いたが、他の導電性の材料でも良く、例えば銀または銀合金,ニッケルまたはニッケル合金,アルミニウムまたはアルミニウム合金等でも良い。
【0070】
また、スイッチ38は、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)を好適に用い、図8に示すように、導電線37の一端と他端とを接続するように、はんだ付けされて実装されている。このため、簡単な配線でしかも小型にできるスイッチ構造が得られる。なお、スイッチ38に電界効果トランジスタを好適に用いたが、機械式のプッシュスイッチ等でも良い。また、説明を容易にするため、スイッチ38への配線パターンは、省略している。
【0071】
このスイッチ38をONさせることにより、結合コイル36を介して電磁界結合を行うことができ、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合を強めることができる。また、このスイッチ38をOFFさせることにより、スイッチ38をONさせた場合と比較して、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合を弱めることができる。このようにして、スイッチ38をON/OFFさせることにより、共振コイル11同士の電磁界結合の強さを任意に決めることができる。
【0072】
絶縁基材39は、ポリイミド樹脂(PI)からなり、一般に広く知られている片面のフレキシブルプリント配線板(FPC)を用いて、フレキシブルプリント配線板上に設けられた銅(Cu)等の金属箔を、導電線37のパターンと、スイッチ38への配線パターン(図示していない)が得られるようにパターニングして、導電線37及び配線パターン(図示していない)を形成するとともに、絶縁基材としている。また、図8に示すように、絶縁基材39には、図7に示すキャパシタ13の位置に対応した孔59が、複数個設けられている。なお、片面のフレキシブルプリント配線板(FPC)の替わりに、バインダー樹脂と導電性部材とを有した導電性インクを、PET(ポリエチレンテレフタレート)或いはPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルム基材にスクリーン版で印刷し、乾燥,固化する方法を用いて作製しても良い。
【0073】
そして、図6に示すように、図7に示す共振コイル11が設けられた基材19と、図8に示す結合コイル36が設けられた絶縁基材39とを、各キャパシタ13が各孔59に入るように重ね合わせ、接着剤AD等で接着して貼り合わせる。このようにして、図5に示す無線電力伝送装置103が作製される。
【0074】
このようにして構成された無線電力伝送装置103に、例えば、図5に示す共振コイル11Aへ電磁界結合を用いた方式等により電力が伝送されると、スイッチ38がONになった結合コイル36Fによって、共振コイル間の電磁界結合が強められ、隣り合う共振コイル11Fに電力が伝送される。この際に、共振コイル11Aと隣り合うもう一つの共振コイル11Bのとの間に設けられた結合コイル36Bは、スイッチ38がOFFにされている。
【0075】
同様にして、共振コイル11Fから共振コイル11Gへ、共振コイル11Gから共振コイル11Dへ、共振コイル11Dから共振コイル11Eへ、順次電力が伝送されるように、結合コイル36G、結合コイル36D及び結合コイル36Eのスイッチ38をONにしておく。また、上記以外の伝送経路にある結合コイル36のスイッチ38は、OFFにしておく。そして、共振コイル11Eと電磁界結合する共振体(図示していない)を共振コイル11Eに近づけると、電磁界結合により、共振体に電力が伝送される。このようにして、共振コイル11Aへ伝送された電力が、無線電力伝送装置101によって、共振体に伝送される。なお、上記伝送経路は、伝送経路の一例であって、結合コイル36のスイッチ38をON/OFFさせることにより、伝送経路を任意に決めることができる。
【0076】
以上により、本発明の無線電力伝送装置103は、隣り合う共振コイル11同士の電磁界結合を行う位置に、結合コイル36が設けられているので、結合コイル36を介して電磁界結合を行うことができ、平面配置された共振コイル11同士の電磁界結合を強くできる。このことにより、隣り合う共振コイル11間の間隔が製造時の作製誤差等で多少ばらついても、結合特性の変化を小さくできる。したがって、特性調整が容易にでき、無線電力伝送装置103が製造し易くなる。
【0077】
また、結合コイル36が導電線37と導電線37の一端と他端とを接続したスイッチ38とからなるので、スイッチ38をON/OFFさせることにより、伝送経路を任意に決めることができる。このことにより、隣り合う共振コイル11間で所望しない電磁界結合を抑えることができ、伝送効率を向上させることができる。
【0078】
また、スイッチ38が電界効果トランジスタ(FET)からなるので、簡単な配線でしかも小型にできるスイッチ構造が得られる。このことにより、無線電力伝送装置103が製造し易くなる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0080】
<変形例1>
図9は、本発明の実施形態の座標入力装置における変形例1を説明した構成図であって、共振コイル21を示した平面図である。
上記実施形態では、共振コイル11の導線12の外周形状は、正方形になるように構成したが、図9に示すように、共振コイル21の導線22の外周形状が、円形状であっても良い。
【0081】
<変形例2>
図10は、本発明の実施形態の座標入力装置における変形例2を説明した構成図であって、共振コイル31を示した平面図である。
上記実施形態では、共振コイル11の導線12の外周形状は、正平面充填形の正方形になるように構成したが、図10に示すように、共振コイル31の導線32の外周形状が、同じ正平面充填形の正六角形であっても良い。他に、同じ正平面充填形の正三角形であっても良い。
【0082】
<変形例3>
上記実施形態では、共振コイル11の導線12の外周形状は、正多角形の正方形になるように構成したが、共振コイルの導線の外周形状が、同じ正多角形状の正五角形であっても良い。他に、同じ正多角形状の正八角形等であっても良い。
【0083】
<変形例4>
上記実施形態では、共振コイル11は、導線12とキャパシタ13とから構成したが、キャパシタ13が無く導線12のみで構成しても良い。
【0084】
<変形例5>
上記第1実施形態及び第2実施形態では、各軟磁性体15が、平面視して、2つの共振コイル11のみに重なって、設けられた構成にしたが、各軟磁性体15の全て或いは一部がつながっていても良い。
【0085】
<変形例6>
上記第2実施形態では、絶縁体79について、印刷が可能である熱硬化型レジスト等の材質を選定しスクリーン印刷によってパターン状に形成するように構成したが、絶縁体79の替わりに、共振コイル11を覆うように、絶縁性のフィルムシートを基材19に貼り合わせても良い。
【0086】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
11、21、31、11A、11B、11C、11D、11E、11F、11G 共振コイル
12、22、32 導線
13 キャパシタ
15、25 軟磁性体
36、36B、36D、36E、36F、36G 結合コイル
37 導電線
38 スイッチ
101、102、103 無線電力伝送装置
F1 所定の周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種機器間で電気伝導線を用いることなく電力を伝送する無線電力伝送装置であって、
所定の周波数で共振し、共振のための導線を備えた共振コイルを複数有し、
前記複数の共振コイルが平面配置されているとともに、
隣り合う前記共振コイル同士の電磁界結合を強める位置に、軟磁性体が設けられていることを特徴とする無線電力伝送装置。
【請求項2】
前記共振コイルは、渦巻き状の導線と、該導線の端部同士を接続するキャパシタとからなることを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項3】
前記各軟磁性体は、平面視して、2つの共振コイルのみに重なって設けられていることを特徴とする請求項2に記載の無線電力伝送装置。
【請求項4】
各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、多角形であり、
前記多角形の角の部分に軟磁性体を設けないことを特徴とする請求項2に記載の無線電力伝送装置。
【請求項5】
各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、正多角形状であることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の無線電力伝送装置。
【請求項6】
前記正多角形状は、正平面充填形であることを特徴とする請求項5に記載の無線電力伝送装置。
【請求項7】
各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、円形状であることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の無線電力伝送装置。
【請求項8】
前記共振コイルと前記軟磁性体とが、絶縁されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の無線電力伝送装置。
【請求項9】
各種機器間で電気伝導線を用いることなく電力を伝送する無線電力伝送装置であって、
所定の周波数で共振し、共振のための導線を備えた共振コイルを複数有し、
前記複数の共振コイルが平面配置されているとともに、
隣り合う前記共振コイル同士の電磁界結合を行う位置に、平面視して、前記隣り合う共振コイルの隣り合う辺を包含して、周回している結合コイルが設けられたことを特徴とする無線電力伝送装置。
【請求項10】
前記共振コイルは、渦巻き状の導線と、該導線の端部同士を接続するキャパシタとからなることを特徴とする請求項9に記載の無線電力伝送装置。
【請求項11】
前記結合コイルは、スイッチと該スイッチの一端と他端とを接続する導電線からなることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の無線電力伝送装置。
【請求項12】
前記スイッチは、電界効果トランジスタからなることを特徴とする請求項11に記載の無線電力伝送装置。
【請求項13】
各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、正多角形状であることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれかに記載の無線電力伝送装置。
【請求項14】
前記正多角形状は、正平面充填形であることを特徴とする請求項13に記載の無線電力伝送装置。
【請求項15】
各前記共振コイルの前記導線の外周形状が、円形状であることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれかに記載の無線電力伝送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−5523(P2013−5523A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132367(P2011−132367)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)