説明

無菌作業装置

【課題】作業室4内に外部雰囲気が流入することなく、また、作業室4内の雰囲気が外部に流出することもない無菌作業装置を提供する。
【解決手段】外部雰囲気から隔離された作業室4に、過酸化水素蒸気を供給して作業室4内を除染する過酸化水素蒸気供給手段54と、エアを供給して作業室4内を陽圧に維持するブロワ34が接続されている。作業室4の入口開口6を介して連通する通路室12を設ける。通路室12に外部と連通する外部開口16を設ける。通路室12内を、連通開口22、24が形成された2枚の隔壁18、20によって3つの区域12A、12B、12Cに区画する。3つの区域12A、12B、12Cのうち外部開口16により外部に連通する区域12Aに排気手段72を設け、通路室12内を、作業室4側の区域12Cから外部側の区域12Aに向けて順次圧力が低下するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部雰囲気から隔離され、無菌状態に維持された作業室内で作業、例えば、ヒト細胞・組織の培養操作等の作業を行う無菌作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ヒト細胞・組織の培養操作を行う場合に、細胞や組織が入った培養容器を開放する際の環境は、清浄度がクラス100(ISOクラス5)の無菌管理区域(グレードA)とすることとされている。グレードAの環境としては、クリーンベンチ、セーフティキャビネット(特許文献1参照)、クリーンブースおよびアイソレータの内部が該当する。
【0003】
クリーンベンチ、セーフティキャビネット、クリーンブースの場合は、除染機能を有するパスボックスを備えていないため、周囲の環境は、清浄度がクラス10,000(ISOクラス7)の直接支援区域(グレードB)であることが望ましく、また、直接支援区域(グレードB)は、清浄度がクラス100,000(ISOクラス8)の支援区域(グレードC)内にあり、さらに、この支援区域Cは、それ以下のその他の支援区域(グレードD)から区画されている必要がある。このように少なくとも3段階の区域を設ける必要があり、設備が大がかりになってしまう。
【0004】
これに対し、除染機能を有するパスボックスを備えたアイソレータ(特許文献2参照)であれば、パスボックスは周囲環境に開放されるものであるが、除染をしてからアイソレータに開放されるので、外部雰囲気と内部雰囲気とが直接ふれあうことがなく、その他の支援区域(グレードD)に直接設置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4096886号公報
【特許文献2】特開2010−51351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように除染機能を有するパスボックスを備えたアイソレータであれば、その他の支援区域(グレードD)に直接設置することができる。しかしながら、培養に必要な資材等をアイソレータ内に搬入する際には、その都度除染をする必要があり時間がかかってしまう。また、ウイルス等の汚染物が外部に流出しないように、搬出の際にも除染が必要となる。特に、アイソレータ内は外部雰囲気の流入を防ぐために陽圧管理されているため、開放時には内部雰囲気が外部に流出しないように配慮する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、外部雰囲気から隔離された作業室と、この作業室内を陽圧に維持する陽圧維持手段を備え、前記作業室内を無菌状態に維持して作業を行うための無菌作業装置において、前記作業室に設けた入口開口を介して作業室に連通する通路室を設け、この通路室は、外部と連通する外部開口を備えるとともに、この外部開口と前記作業室の入口開口との間に、それぞれに連通開口を形成した少なくとも2つの隔壁を備えて、前記通路室の内部を少なくとも3つの空間からなる区域に区画し、これら区域のうち外部開口により外部と連通する区域に排気手段を設け、この外部と連通する区域を陰圧に維持し、通路室内を前記作業室の入口開口側から外部開口側に向けて、各区域の圧力が順次低下するように構成することによって、前記作業室と外部の間に外部雰囲気の流入を阻止可能な少なくとも2段階の区域を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記通路室が、作業室への搬入物を搬送する搬送手段を備えるとともに、前記作業室の入口開口により作業室と連通する区域には、他の区域とは独立した搬送手段を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記通路室の、外部開口により外部と連通する区域と、前記作業室の入口開口により作業室と連通する区域の間の区域に、搬入物を消毒する消毒手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
作業室に設けた入口開口を介して通路室を連結し、この通路室内を連通開口を有する少なくとも2つの隔壁によって少なくとも3つの空間からなる区域に区画し、作業室を陽圧に維持するとともに、通路室の外部開口側の区域を陰圧に維持するようにして、通路室内を作業室の入口開口から出口開口へ向けて圧力が低下するように構成したので、作業室に外部雰囲気が流入することがなく、また作業室の雰囲気が外部に流出することもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る無菌作業装置を側面から見た概略構成図である。(実施例1)
【図2】図2は前記無菌作業装置の平面図である。
【図3】図3は第2の実施例に係る無菌作業装置の平面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0012】
外部雰囲気から隔離された作業室内を無菌状態に維持してその内部で作業を行う装置であり、作業室の入口開口に通路室を連結している。この通路室は、前記入口開口と逆側に外部に連通する外部開口が形成されており、この外部開口と前記作業室の入口開口との間に、少なくとも2つの隔壁を設けて少なくとも3つの空間からなる区域に区画する。これら各隔壁には両側の区域を連通する連通開口が形成されている。前記作業室は陽圧維持手段によって陽圧に維持されるようになっており、さらに、通路室の外部開口によって外部と連通する区域に排気手段を設けてこの区域内を陰圧に維持するようにしているので、通路室内は、前記作業室の入口開口側の区域から外部開口側の区域に向けて、陽圧から陰圧に各区域の圧力が順次低下するように構成されるので、作業室内に外部雰囲気が流入することを阻止するとともに、作業室内の雰囲気が外部に流出することを防止するという目的を達成する。
【実施例1】
【0013】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。四方の側壁2A、2B、2C、2Dと床面2Eおよび天井壁2Fによって囲まれて、外部の雰囲気から隔離された空間が作業室4であり、この作業室4内で、例えば、ヒト細胞・組織の培養操作等の作業を行う。この作業室4を囲む四方の側壁2A、2B、2C、2Dのうち図1および図2の左方の側壁2Aに入口開口6が形成されている。この入口開口6は、作業室4内に培養容器8や資材10などの物品の搬入、搬出を行うものであり、前記物品8、10が通過可能な大きさを有している。作業室4内は、仕切り板5によって上部空間と下部空間に区画されている。
【0014】
前記作業室4の入口開口6を介して、この作業室4と連通する通路室12が設けられている。通路室12も、周囲の壁面14A、14B、14D、床面14Eおよび天井壁14Fによって囲まれて外部雰囲気と隔離された空間になっている。通路室12の、前記作業室4の入口開口6に連結された面(作業室4と共通の壁面2A)と逆の壁面14Aに、外部に連通する外部開口16が形成されている。この通路室12内は、2枚の隔壁18、20によって少なくとも3つの空間からなる区域(図1および図2の左側から順に、第1区域12A、第2区域12B、第3区域12Cと呼ぶ)に区画されている。これら2枚の隔壁18、20にも、前記入口開口6および外部開口16とほぼ同じ位置にほぼ同じ大きさの連通開口22、24が形成されている。通路室12の外部開口16には扉26が設けられており、この外部開口26を密閉できるようになっている。この通路室12内も、前記作業室4の仕切り板5と同じ高さに配置された仕切り板13によって上部空間と下部空間に区画されている。
【0015】
作業室4内には、搬送手段(コンベヤ28)が配置されており、通路室12側から搬入されてきた培養容器8あるいは資材10などがこのコンベヤ(以下、メインコンベヤ28と呼ぶ)に載せられて作業位置(図1の物品8、10が停止している位置)まで搬送される。また、作業室4内で処理が行われた後このメインコンベヤ28によって、前記培養容器8、資材10等の物品が通路室12側へ搬出される。通路室12の内部にも、前記作業室4のメインコンベヤ28と同じ高さで同一直線上に連続するコンベヤ30、32が設置されている。この実施例では、第1区域12Aおよび第2区域12B内に1本のコンベヤ(以下、第1コンベヤ30と呼ぶ)が連続して配置され、第3区域12Cには別の独立したコンベヤ(以下、第2コンベヤ32と呼ぶ)が配置されている。これら各コンベヤ28、30、32は、搬送面が、作業室4および通路室12の上部空間と下部空間を区画する仕切り板5、13上に配置されている。通路室12の外部開口16を閉鎖している蓋26を開けて、前記培養容器8等の物品を通路室12内の第1コンベヤ30上に載せると、この第1コンベヤ30によって搬送され隔壁18の通路開口22を通過し、さらに、次の隔壁20の通路開口24を通過しつつ第2コンベヤ32に引き渡され、その後、入口開口6を通過するとともに、作業室4内のメインコンベヤ28に引き渡されて前記作業位置まで搬送される。なお、前記のように作業室4に隣接した第3区域12Cには、第1区域12Aおよび第2区域12Bに配置した第1コンベヤ30とは独立した第2コンベヤ32を配置することにより、外部に接触する可能性のある第1コンベヤ30が作業室4の入口開口6の近くまで入り込まないようにしている。
【0016】
作業室4の天井壁2Fには、この作業室4内にエアを供給する陽圧維持手段としてのブロア34が接続されている。このブロア34からの給気通路36に開閉弁38が設けられている。また、ブロア34の吸気側には触媒40が設けられており、ブロア34が作動していない状態で開閉弁38が開かれた場合に、作業室4内の過酸化水素蒸気がそのまま外部に流出する危険性を排除するようにしている。作業室4の天井壁2Fの近くにHEPAフィルタ42が取り付けられており、このHEPAフィルタ42を通して浄化したエアが作業室4の内部に供給される。作業室4には室内の圧力を検出する圧力計44が設けられており、この圧力計44の検出値に応じて作業室4内にエアを供給して所定の陽圧に維持するようにしている。また、このブロア34は、後に説明する除染作業後のエアレーションを行う際のエアの供給に使用される。
【0017】
作業室4の下部空間にエア排出通路46が接続されている。このエア排出通路46には開閉弁48が設けられており、作業中は陽圧に維持されている作業室4内の圧力を開放する際に、あるいは、エアレーションを行う際にこの開閉弁48を開放する。作業室4を囲む一方の側壁2Cの、エア排出通路46が接続されている位置の内面にHEPAフィルタ50が取り付けられており、開閉弁48が開放してエア排出通路46によって外部と連通状態になったときに、外気がそのまま流入する危険性を排除するようにしている。また、エア排出通路46の出口には触媒52が装着されており、作業室4内から排出するエアに除染ガスが含まれている場合に、この触媒52で除染ガスを分解し無毒化して排出する。なお、作業室4の上部空間と下部空間を区画する仕切り板5には排気口53が形成されており、上部空間に供給されたエアは、この排気口53から下部空間に入り、エア排出通路46を介して排出される。
【0018】
前記作業室4には、除染手段としての過酸化水素蒸気発生手段54が接続されて作業室4内を除染するようになっている。過酸化水素蒸気発生手段54は、作業室4を囲む天井壁2Fに接続された供給通路56と、一方の側壁2Cの下部の、前記HEPAフィルタ50が設けられている位置に接続された還流通路58からなる循環通路によって作業室4に接続されており、この循環通路の供給通路56側と還流通路58側とにそれぞれ開閉弁60、62が設けられている。過酸化水素蒸気発生手段54の還流通路58側にブロワ64が設けられ、このブロワ64の作動によって供給通路56から作業室4内に過酸化水素蒸気を供給し、還流通路58を介して還流させる。この過酸化水素蒸気発生手段54は、例えば、あるヒトの細胞の培養を行った後、異なるヒトの細胞を扱う際に作業室4内を除染するために使用する。
【0019】
通路室12の第1区域12Aの下部にも、過酸化水素蒸気発生手段54から供給された過酸化水素蒸気を還流させる還流通路66が接続されている。この還流通路66の通路室12に近い位置に開閉弁68が設けられ、下流側は前記作業室4からの還流通路58に接続されている。通路室12の側壁14Aの、還流通路66が接続された位置にHEPAフィルタ70が取り付けられており、開閉弁76が開放してエア排出通路74によって外部と連通状態になったときに、外気がそのまま流入する危険性を排除するようにしている。
【0020】
通路室12の外部開口16が設けられている第1区域12Aには、この第1区域12A内を吸引するブロア72が接続されている。このブロワ72による排出通路74には開閉弁76が設けられ、また排出通路74の出口側には触媒78が設けられている。通路室12内を上部空間と下部空間に区画する仕切り板13の、第1区域12A内に位置する部分に排気口80が形成されており、この排気口80から第1区域12Aの上部空間内のエアを下部空間に吸引し排出通路74を介して排出する。このブロワ72は第1区域12A内を吸引して陰圧を発生させるもので、この第1区域12A内の圧力を検出する圧力計82の検出値に応じて所定の陰圧に維持するようになっている。
【0021】
通路室12の中央に位置する第2区域12Bに、消毒液ノズル84が設けられており、外部開口16から通路室12の第1区域12A内に搬入され、第1コンベヤ30によってこの第2区域12Bまで搬送されてきた培養容器8や資材10等の物品に消毒液を噴射して消毒を行う。
【0022】
作業室4内には、一対のロボットハンド86が挿入されており、この作業室4内での作業を行う。また、作業室4の一方の側壁2Dには一対のグローブ88が取り付けられており、作業員がこのグローブ88内に両手を入れて作業を行うことができる。通路室12の第2区域12Bにも、作業室4と同様の一対のグローブ90が取り付けられており、作業員が両手を入れて作業を行うことができる。
【0023】
前記構成に係る作業室4および通路室12を備えた無菌作業装置は、その他の支援区域(グレードD)の環境内に設置されている。
【0024】
以上の構成に係る無菌作業装置の作動について説明する。まず、過酸化水素蒸気発生手段54からの供給通路56内の開閉弁60と、作業室4からの還流通路58および通路室12からの還流通路66に設けられている開閉弁62、68を開放してブロワ64を作動させ、過酸化水素蒸気発生手段54から作業室4内に過酸化水素蒸気を供給する。作業室4内に供給された過酸化水素蒸気は、入口開口6を通って通路室12内にも供給される。作業室4内に供給された過酸化水素蒸気は還流通路58から過酸化水素蒸気発生手段54に還流し、また、入口開口6を通って通路室12内に供給された過酸化水素蒸気は還流通路66から過酸化水素蒸気発生手段54に還流する。このように作業室6および通路室12に過酸化水素蒸気を供給し循環させることにより、これら作業室4および通路室12内を除染する。
【0025】
その後、過酸化水素蒸気の循環通路内の開閉弁60、62、68を閉じ、給気通路36の開閉弁38および作業室4からのエア排出通路46の開閉弁48を開放してエア供給用のブロワ34を作動させ、作業室4内にエアを流通させてエアレーションを行う。また、通路室12の外部開口16が形成されている第1区域12Aに接続されている排気通路74の開閉弁76を開放するとともに、排気手段としてのブロワ72を作動させて、入口開口6から通路室12の各区域12A、12B、12C内にもエアを導入してエアレーションを行う。その後、エア排出通路46の開閉弁48を閉じて、エア供給用ブロア34から作業室4内にエアを供給して陽圧を発生させる。作業室4内の圧力を圧力計44で測定し、所定の陽圧に維持する。また、ブロア72の吸引により、第1区域12A内に陰圧を発生させる。第1区域12Aの圧力を圧力計82で検出しており、この第1区域12Aの圧力を所定の陰圧に維持する。このように作業室4内を陽圧に維持し、通路室12の、作業室4に対して最も外部側に位置する第1区域12Aは陰圧に維持しているので、通路室12内の各区域12A、12B、12Cは、陽圧の作業室4から、作業室4よりもやや圧力の低下した陽圧の第3区域12C、さらに第3区域12Cよりもやや圧力の低下した陽圧の第2区域12Bおよび陰圧の第1区域12Aに向けて陽圧から陰圧に順次圧力が低下するように構成されている。
【0026】
この状態で、通路室12の外部開口16の扉26を開放して、資材10などおよび培養容器8などの物品を搬入し第1コンベヤ30上に載せる。これらの物品8、10は、第1コンベヤ30の走行により第1区域12Aから第2区域12B内に搬送される。第2区域12Bには消毒液ノズル84が設けられており、前記物品8、10に消毒液を噴射して消毒する。第1コンベヤ30によって搬送されてきた物品8、10は、第2区域12Bから第3区域12Cに移送されて、第1コンベヤ30から第3区域12Cの第2コンベヤ32に乗り移り第3区域12C内を搬送される。その後、入口開口6を通って作業室4内に搬入され、作業室4内のメインコンベヤ28によって作業位置まで搬送される。図2に示すように培養容器8や資材10などを作業位置に停止させ、ロボットハンド86によって所定の作業を行う。
【0027】
作業室4内で、例えばヒト細胞・組織の培養等の操作を行った後、培養容器8などの物品は、作業室4のメインコンベヤ28によって通路室12へ搬送し、通路室12の第2コンベヤ32および第1コンベヤ30の作動によって第3区域12Cから第2区域12Bおよび第1区域12Aを通って、蓋26を開けた外部開口16からこの無菌作業装置外に排出する。
【0028】
続いて、作業室4内で異なるヒトの細胞を扱う場合には、再度、過酸化水素蒸気発生手段54から過酸化水素蒸気を供給して除染を行い、次に、エアレーションを行った後、前記と同様に作業室4内を陽圧にするとともに、通路室12の第1区域12A内を陰圧にする。この状態で次の培養操作等を行う。この実施例に係る無菌作業装置では、外部環境がグレードDの場合に、通路室12の外部開口16を有する第1区域12Aは、外部開口16の扉26を開けると外部の雰囲気が流入するので、外部と同じDグレードであるが、その次の第2区域12Bは、第1区域12Aより高圧であり外部からの雰囲気は流入しないので、グレードCとみなすことができる。さらに、その次の第3区域12Cは、グレードCとみなすことができる第2区域12Bからの雰囲気が流入することはないので、グレードBとみなすことができる。そして、作業室4は、グレードBとみなすことができる第3区域12Cからの雰囲気の流入がないので、グレードAとみなすことができる。このように外部雰囲気の流入を阻止可能な少なくとも2段階の区域を設けたことにより、除染機能を有するパスボックスを付帯しなくとも、前記作業室4を、直接支援区域(グレードB)に設置した安全キャビネットやクリーンベンチと同等の無菌管理区域(グレードA)とみなすことができる。従来のパスボックスを備えたアイソレータであれば、パスボックスとアイソレータの間で境界を開閉しているため、作業の自動化を図る場合には自動開閉手段が必要となる等種々の問題があったが、本実施例の構成では、通路室12と作業室4の間の開口(入口開口6)は常に開放されているため、通路室12に搬入物を入れると自動的に作業室4に搬入することが可能であり、システムの自動化を図ることが容易である。なお、前記第2区域12Bおよび第3区域12Cについても、作業室4と同様に陽圧維持手段としてブロアを接続して、第3区域12Cは作業室4よりもやや圧力の低下した陽圧に、第2区域12Bは第3区域12Cよりもやや圧力の低下した陽圧に、それぞれ維持するようにしてもよい。
【実施例2】
【0029】
前記第1実施例では、通路室12の外部開口16から培養容器8等の物品を搬入し、作業室4内に供給して作業を行った後、これらの物品を同じ通路室12を通って搬出しているが、図3に示すように、搬入側の通路室12と逆方向(作業室4を挟んで逆側)に、搬出用の通路室を設けるようにしてもよい。なお、この第2実施例の作業室4と搬入側の通路室12は前記第1実施例と同一の構成なので、同一の部分に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
搬出側の通路室は、搬入側の通路室12と逆転した配置になっており、主要な部分は同一の構成になっているので、搬出側の通路室の、搬入側の通路室12の構成と対応する部分には、同一の符号にHを付して説明する。搬出側の通路室12Hは、作業室4の出口開口6Hを介して連通している。通路室12Hの内部は、2枚の隔壁18H、20Hで3つの空間からなる区域(第1区域12AH、第2区域12BHおよび第3区域12CH)に区画されている。また、第1区域12AHと第2区域12BH内に第1コンベヤ30Hが、そして、第3区域12CH内に第2コンベヤ32Hが配置されている。通路室12Hの、前記出口開口6Hと逆側(図3の右端側)に外部開口16Hが形成され、扉26Hによって開閉できるようになっている。また、第1区域12AHの底面に排気口80Hが形成されており、図示しないブロワによって吸引することにより陰圧に維持することができる。従って、陽圧に維持される作業室4から、中間の第3区域12CHおよび第2区域12BH、陰圧に維持される外部開口16H側の第1区域12AHまでの各室内が、順次高圧から低圧に圧力が低下するように構成されている。
【0031】
この実施例に係る無菌作業装置では、前記第1実施例と同様に、搬入側の外部開口16から通路室12の第1区域12Aに培養容器8等の物品を搬入し、第2区域12Bおよび第3区域12Cを通って作業室4内に供給して作業を行う。作業が終わった後、培養容器8等は、搬出側の連通室12Hを通って搬出される。この搬出側の通路室12Hも、搬入側の通路室12と同様に、外部雰囲気が流入する第1区域12AHが最も低圧であり、この第1区域12AHの雰囲気は第2区域12BHに流入することはない。さらに、第2区域12BHの雰囲気は第3区域12CHに流入することがなく、第3区域12CHの雰囲気が作業室4Hに流入することもない。このように、前記第1実施例と同様に、搬入側の通路室12内を、作業室4の入口開口6から外部開口16側に向けて、陽圧から陰圧に順次圧力が低下するように構成するとともに、搬出側の通路室12H内を、作業室4の出口開口6Hから外部開口16H側に向けて、陽圧から陰圧に順次圧力が低下するように構成したので、前記実施例と同様の効果を奏することができる。なお、前記各実施例では、入口開口6、連通開口22、24、22H、24Hおよび出口開口6Hには扉を設けていないが、外部開口16、16Hに設けた扉26、26Hと同様の扉を設けて閉鎖するようにしてもよい。但し、この場合には、通路室12の各区域12B、12C、12BH、12CHにも、作業室4と同様の陽圧維持手段を設けて陽圧に維持するとともに、順次圧力が低下するように構成する必要がある。
【符号の説明】
【0032】
4 作業室
6 入口開口
34 陽圧維持手段(ブロワ)
12 通路室
12A 外部と連通する区域(第1区域)
12B 区域(第2区域)
12C 区域(第3区域)
16 外部開口
18 隔壁
20 隔壁
22 連通開口
24 連通開口
72 排気手段(ブロワ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部雰囲気から隔離された作業室と、この作業室内を陽圧に維持する陽圧維持手段を備え、前記作業室内を無菌状態に維持して作業を行うための無菌作業装置において、
前記作業室に設けた入口開口を介して作業室に連通する通路室を設け、この通路室は、外部と連通する外部開口を備えるとともに、この外部開口と前記作業室の入口開口との間に、それぞれに連通開口を形成した少なくとも2つの隔壁を備えて、前記通路室の内部を少なくとも3つの空間からなる区域に区画し、これら区域のうち外部開口により外部と連通する区域に排気手段を設け、この外部と連通する区域を陰圧に維持し、通路室内を前記作業室の入口開口側から外部開口側に向けて、各区域の圧力が順次低下するように構成することによって、前記作業室と外部の間に外部雰囲気の流入を阻止可能な少なくとも2段階の区域を設けたことを特徴とする無菌作業装置。
【請求項2】
前記通路室は、作業室への搬入物を搬送する搬送手段を備えるとともに、前記作業室の入口開口により作業室と連通する区域には、他の区域とは独立した搬送手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の無菌作業装置。
【請求項3】
前記通路室の、外部開口により外部と連通する区域と、前記作業室の入口開口により作業室と連通する区域の間の区域に、搬入物を消毒する消毒手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無菌作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−44964(P2012−44964A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192488(P2010−192488)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】