説明

焦点調整装置、画像形成装置、及び焦点調整方法

【課題】テストパターン画像の濃度から、焦点距離を正確に調整する。
【解決手段】テストパターン画像の濃度を調整することにより、焦点調整を行う焦点調整装置であって、露光手段と感光体との距離を調整する距離調整手段と、テストパターン画像の濃度検出を行う濃度検出手段と、露光手段のエネルギー密度を増減させることにより、エネルギー密度に対する感光体の表面電位を変化させるエネルギー密度変更手段と、エネルギー密度変更手段により、エネルギー密度を、感光体の表面電位を飽和させる電位に至るまで増加させた状態で、距離調整手段により露光手段と感光体との距離を変化させ、濃度検出手段によりテストパターン画像の濃度が最も薄いと検知される焦点位置に距離を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストパターン画像の濃度を調整することにより、テストパターン画像の焦点調整を行う焦点調整装置、焦点調整装置を搭載する画像形成装置、及び焦点調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複写機やファクシミリ等の露光部に用いられているLED(Light Emitting Diode)アレイプリントヘッドは、焦点深度が非常に浅いため、感光体表面とLEDヘッドの間隔が焦点距離の公差に収まるよう、取り付け精度を非常に厳しく管理する必要がある。しかしながら、生産時に部品精度を高めて感光体表面とLEDヘッドとの間隔を厳密に設定していても、磨耗等による経時変化で感光体の厚みが変化するため、LEDヘッドと感光体表面の距離が変化してしまい、焦点距離の公差から外れること(所謂、ピントボケ)が懸念される。そこで、感光体表面とLEDヘッドの距離を変えながら、感光体や転写ベルト上にテストパターン画像を作成し、それらテストパターン画像の検知結果に基づいて焦点距離を調整する技術が一般的に知られている。
【0003】
しかしながら、焦点距離を変えながら形成したテストパターン画像の検知結果に基づいて、焦点距離の良否を判断する今までの方法では、露光条件(露光エネルギー、テストパターン形状)や、帯電バイアスの関係によって、潜像の傾向が変わってしまうため、表面電位やトナー像の濃淡、線幅等から正確に焦点距離の良否を判断することができないという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1では、LEDプリンタヘッドを露光手段として用いる電子写真装置において、LEDプリンタヘッドの焦点距離を自動修正することを目的とし、焦点距離調節時には、所定のテストパターン画像の印刷を、当該焦点距離調節用の自動位置決め装置により感光体とLEDプリンタヘッドとの距離を連続的に変化させながら行う焦点調節制御部と、感光体上、中間転写体上、又は印刷媒体上に、焦点距離を連続的に変化させながら印刷することで形成された、焦点距離調節用のテストパターン画像の印刷濃度を検出する濃度センサとを備え、焦点調節制御部において、濃度センサによる濃度の検出により、最も濃度の薄い位置の焦点距離を最適な焦点距離として、LEDプリンタヘッドの自動位置決め装置により焦点距離を調節する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、特許文献1は、焦点距離を変化させながら形成された、焦点距離調節用のテストパターン画像の印刷濃度を濃度センサで検出し、検出した濃度により焦点距離を調整する焦点調整方法を採用している。この方法は、焦点距離を変化させながら形成されたテストパターン画像の濃度が最も薄くなる点を最適な焦点距離とみなしている。しかしながら、この焦点調整方法では、焦点距離の良否を決める他の要因である露光条件や現像バイアス等の条件については全く考慮されていないため、テストパターン画像の濃度が薄くなれば、必ず焦点ずれのない位置に調整されるとはいい切れず、上述した焦点距離の良否を定める他の要因である露光条件や現像バイアス等の条件を考慮しなければ正確に焦点距離の良否を判断することはできないという問題は依然として解消されていない。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、安定して焦点距離の良否を判定することができるテストパターン画像の焦点調整を行う焦点調整装置、焦点調整装置を搭載する画像形成装置、及び焦点調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明における焦点調整装置は、テストパターンの原画像に印字されるテストパターン画像の濃度を調整することにより、前記テストパターン画像の焦点調整を行う焦点調整装置であって、露光手段と感光体との距離を調整する距離調整手段と、前記テストパターン画像の濃度検出を行う濃度検出手段と、前記露光手段のエネルギー密度を増減させることにより、前記エネルギー密度に対する前記感光体の表面電位を変化させるエネルギー密度変更手段と、前記エネルギー密度変更手段により、前記エネルギー密度を、前記感光体の表面電位を飽和させる電位に至るまで増加させた状態で、前記距離調整手段により前記露光手段と感光体との距離を変化させ、前記濃度検出手段により前記テストパターン画像の濃度が最も薄いと検知される焦点位置に前記距離を調整する濃度調整手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明における焦点調整装置は、前記濃度検出手段は、前記感光体上、転写体上、又は印刷媒体上において前記テストパターン画像の濃度を検出する濃度センサを含み、前記濃度センサは走査方向に複数設けられ、前記複数設けられた濃度センサの平均値を前記テストパターン画像の濃度として検出することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明における焦点調整装置は、前記テストパターンの原画像と前記露光手段との解像度は同一であり、前記テストパターン画像は、前記解像度の単位当たりの画素サイズである印字領域と、前記印字領域の四方を囲む辺を共有する複数の非印字領域とから構成される市松模様であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明における焦点調整装置は、前記露光手段は前記画素サイズより大なるビーム径を有し、前記焦点位置に調整されると前記ビーム径は最小値をとり、前記印字領域と前記非印字領域との間隔は、前記最小値のビーム径以上離れていることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明における画像形成装置は、上記記載の焦点調整装置を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明における焦点調整方法は、テストパターンの原画像に印字されるテストパターン画像の濃度を調整することにより、前記テストパターン画像の焦点調整を行う焦点調整方法であって、露光手段と感光体との距離を調整する工程と、前記テストパターン画像の濃度検出を行う工程と、前記露光手段のエネルギー密度を増減させることにより、前記エネルギー密度に対する前記感光体の表面電位を変化させる工程と、前記感光体の表面電位を変化させる工程により、前記エネルギー密度を、前記感光体の表面電位を飽和させる電位に至るまで増加させた状態で、前記露光手段と感光体との距離を調整する工程により前記距離を変化させ、前記濃度検出を行う工程により前記テストパターン画像の濃度が最も薄いと検知される焦点位置に前記距離を調整する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、焦点距離の良否を決める他の要因(露光条件や現像バイアス等)を考慮しつつテストパターン画像の濃度から、焦点距離を正確に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る焦点調整装置を搭載する画像形成装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、露光エネルギー密度と、感光体の表面電位との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、露光エネルギー密度が小さい場合における(a)感光体上の位置(感光体表面上での位置(座標))と露光強度との関係を示す図、(b)感光体上の位置(感光体表面上での位置(座標))と感光体の表面電位(潜像電位)との関係を示す図、(c)焦点位置にある場合と焦点ずれ位置にある場合のテストパターン画像のイメージについて説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、露光エネルギー密度が十分大きい場合における(a)感光体上の位置(感光体表面上での位置(座標))と露光強度との関係を示す図、(b)感光体上の位置(感光体表面上での位置(座標))と感光体の表面電位(潜像電位)との関係を示す図、(c)焦点位置にある場合と焦点ずれ位置にある場合のテストパターン画像のイメージについて説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る焦点調整方法の動作を説明する流れ図である。
【図6】本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、テストパターンの原画像の例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、実際にトナーが塗布された場合のテストパターン画像について、露光ビーム径と、印字領域と非印字領域との間隔を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化乃至省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る焦点調整装置を搭載する画像形成装置の全体構成を示す構成図である。画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ等周知のものであり、本発明を適用した焦点調整装置を用いることができるタイプの画像形成装置であればどのようなものであっても構わない。本実施の形態における画像形成装置は、カラー画像の形成が可能である。
【0017】
まず始めに、本発明の概要を説明する。本発明は、書き込みヘッドと感光体との距離を段階的に変化させながら形成された各テストパターン画像の濃度を検知し、距離とテストパターン画像の濃度との関係から、書き込みヘッドと感光体との間の距離を決定する焦点調整装置に際して、以下の特徴を有する。
【0018】
すなわち、焦点距離調整用のテストパターン画像を形成するにあたり、露光ビーム径を、感光体表面電位を残留電位(飽和領域)にまで減衰させるほど十分大きい光量に設定する点が特徴になっている。
【0019】
以下、本発明の特徴について、図面を用いて詳細に解説する。この画像形成装置100は、一般的なタンデム方式のカラー画像形成装置であり、モノクロ用のブラック、カラー用の3色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー)の各プロセスカートリッジ102a〜102d(特に必要がなければ、以下、プロセスカートリッジ102という。)は、画像形成装置本体100に着脱自在に装着されており、また画像形成装置本体100内には、露光装置103a〜103d(特に必要がなければ、以下、露光装置103という。)、転写ローラ101a〜101d(特に必要がなければ、以下、転写ローラ101という。)、給紙トレイ104、定着装置106などが配設されている。
【0020】
プロセスカートリッジ102が画像形成装置本体100の所定の位置にセットされ、感光体108a〜108d(特に必要がなければ、以下、感光体108という。)は、円筒形の感光体ドラムであり、線速50mm/sで回転している。感光体108の表面には帯電手段であるローラ形状の帯電器110a〜110d(特に必要がなければ、以下、帯電器110という。)が圧接されており、感光体108の回転により従動回転しており、図示しない高圧電源により直流あるいは直流に交流が重畳されたバイアスが印加されることで、感光体108は一様にほぼ均一な表面電位に帯電されている。
【0021】
続いて感光体108は潜像形成手段である露光装置103により画像情報が露光され、静電潜像が形成される。現像手段111a〜111d(特に必要がなければ、以下、現像手段111という。)は1成分接触現像器であり、図示しない高圧電源から供給される所定の現像バイアスによって、感光体108の静電潜像をトナー像として顕像化する。現像手段111には初期的に1成分トナーが収納される。
【0022】
プロセスカートリッジ102は並列に4個配設され、フルカラー画像形成時はブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順で可視像を形成し、各色の可視像が、感光体108に対向配置される転写ローラ101に、図示しない各色独立の高圧電源から供給される所定の転写バイアスを印加させることで転写電界を形成し、感光体108上のトナー像を転写材である用紙に順次転移させることでフルカラー画像が形成され、その後、定着装置106によって熱と圧力により用紙に定着されたあと排紙される。
【0023】
また、転写後に感光体108上に残留した転写残トナーは、クリーニング手段127a〜d(特に必要がなければ、以下、クリーニング手段127という。)によって回収され廃棄される。なお、感光体108上にクリーニング手段127を設けず、現像手段111で転写残トナーを回収するクリーナレス方式もあり、本発明においては種々公知のクリーニング手段を採用できる。
【0024】
転写材である用紙は、給紙トレイ104に保持されており、給紙ローラ105によって、レジストローラ対107まで搬送され、感光体108上のトナー像先端部が転写部に到達するタイミングに合わせて給紙され、転写部に入っていく。
【0025】
転写ベルト120は、駆動ローラ122、転写ローラ101、テンションローラ121にて張架されており、図示しない駆動モータにより駆動ローラ122を介して回転駆動されるようになっている。さらに、ベルト張力としてテンションローラ121の両側にて、ばねにより加圧している。テンションローラ121は、両端部には図示しないフランジが圧入され転写ベルト120の蛇行を規制する規制部材としている。
【0026】
なお、転写ベルト120を張架している各ローラは、図示しない転写ベルトユニット側板によって転写ベルト120の両側より支持されている。また、感光体108と転写ベルト120とは、図示しない接離機構により、任意のタイミングで離間可能となっている。
【0027】
123は転写ベルトのクリーニングブレードであり、転写ベルト120上のトナーを掻き取ることでクリーニングを行う。掻き取られた転写残トナーは図示しないトナー搬送経路を通り転写体用廃トナー収納部に収納される。
【0028】
126a〜126dは感光体108上に形成されたトナーパッチのトナー量を検出するトナー濃度検知手段である(特に必要なければ、以下、トナー濃度検知手段126という。)。トナー濃度検知手段126は、正反射型センサと拡散反射型センサで構成される光学センサである。図1においては、この光学センサは、感光体上に形成された場合を示しているが、転写体上や、印刷媒体(用紙)上に設けることも可能である。
【0029】
また、光学センサは、露光装置103のうねりや、感光体108の膜厚ムラ等により、主走査方向で焦点距離のばらつきが発生する場合においても、複数設けられている光学センサにおいて検知されたテストパターン画像の濃度の平均値を算出することにより、これらのばらつきを吸収するようにしている。
【0030】
なお、ここではタンデム方式のカラー画像形成装置を例にとって説明したが、本発明は4サイクル方式のカラー画像形成装置や、モノクロ画像形成装置にも適用可能である。また、2成分トナーによる現像方式を採用しても良いことはもちろんである。
【0031】
露光装置103は、所望の画素数(画像幅×画素密度)のLED素子と、その駆動回路と、LED素子で発光した光を集光するレンズを筐体に組み付けたデバイス(以下、LEDヘッドともいう。)で、各LED素子を画像信号に応じて発光させ、感光体108上に潜像を形成する露光装置である。該レンズは、発光光量を効率よく確保するために開口数が大きく焦点距離が短い。そのため、LEDヘッドを感光体108に、感光体から数mmの距離に近接させて設置される。
【0032】
また、複数のレンズを配列したものをレンズアレイとして筐体内に組み込んでいる。筐体内には、LEDヘッドを実装するための形状(穴、突起、平面等)が形成されている。このLEDヘッドに対して、電源や画像データに合わせた画像信号を供給するためのハーネスが結合される。LEDヘッドと感光体108との距離は、図示しない焦点調整機構により、所定の範囲内で変化させることが可能である。
【0033】
次に、本発明のポイントとなる焦点距離の良否を決める要因となる露光条件や現像バイアス等の諸条件を定める上で、重要なパラメータである露光エネルギー密度と感光体の表面電位との関係について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、露光エネルギー密度と、感光体の表面電位との関係を示す図である。
【0034】
図2によれば、露光装置の単位面積当たりの露光エネルギーである露光エネルギー密度の値を大きくするにしたがって、感光体の表面電位は減衰していく。そして、露光エネルギー密度がある値を境に十分大きな値となると、それ以上露光エネルギー密度の値を増大しても、感光体の表面電位はそれ以上減衰せず、一定値をとるようになる。このときの感光体の表面電位を残留電位Vrとする。
【0035】
図2において、感光体の表面電位が残留電位Vrまで減衰しない領域、すなわち、露光エネルギー密度の値が小さい領域では、露光前の帯電バイアスによって感光体の表面電位である潜像電位の値が大きく変動する。以下の説明において、感光体の表面電位(潜像電位)の値が、露光エネルギー密度の値に対して変動を持つ領域を「非飽和領域」、変動を持たない(残留電位Vrまで減衰している)領域を「飽和領域」と呼ぶこととする。
【0036】
まず、非飽和領域、すなわち、感光体の表面電位(潜像電位)の値が、露光エネルギー密度の値に対して変動を持つ領域において、図3を参照し、ある1つのLED素子に注目して考える。ここで、図3は、それぞれ本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、露光エネルギー密度が小さい場合における(a)感光体上の位置(感光体表面上での位置(座標))と露光強度との関係を示す図、(b)感光体上の位置(感光体表面上での位置(座標))と感光体の表面電位(潜像電位)との関係を示す図、(c)焦点位置にある場合と焦点ずれ位置にある場合のテストパターン画像のイメージについて説明する図である。
【0037】
図3(a)を参照すると、光源であるLEDの発光量が一定の場合、LEDヘッドと感光体108との間の距離が、焦点距離からずれている場合には(以下、「焦点ずれ」という。)、焦点があっている位置にある場合(以下、「焦点位置」という。)と比べて、露光強度分布の波形はなだらかに広がるので、LEDから発せられるビーム径は大きくなる。しかし、露光強度は、焦点位置で最大値となる。
【0038】
1つのLED素子当たりの露光エネルギー密度が非飽和領域にある場合、図3(b)に示すように、感光体の表面電位(潜像電位)は、図3(a)の露光強度分布の波形形状をトレースしたような形状になる。すなわち、焦点位置の場合、焦点ずれの場合に比べ、電位の減衰量は大きいが、波形形状としてはシャープな形状になる。潜像電位全体を平均すると、焦点位置の場合と焦点ずれの場合とでは、潜像電位の積算値はほぼ同等の値となるので、潜像電位の測定結果を持って焦点位置と焦点ずれの両者を区別するのは困難である。
【0039】
次に、図3(c)を参照して、露光エネルギー密度が非飽和領域にある場合の、テストパターン画像におけるトナーの付着量を比較すると、焦点位置の場合は、小さい面積に濃くトナーが付着し、焦点ずれの場合は、広い面積に比較的淡くトナーが付着する。何れの場合においてテストパターン画像にトナーが濃く再現されるかは、露光条件や現像バイアスといった変動可能性のあるパラメータに左右されるため、テストパターン画像におけるトナーの濃淡具合から、焦点位置か焦点ずれかの何れの場合であるかを判断することは困難である。
【0040】
次に、飽和領域、すなわち、感光体の表面電位(潜像電位)の値が、露光エネルギー密度の値に対して変動を持たない領域において、図4を参照し、ある1つのLED素子に注目して考える。ここで、図4は、それぞれ本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、露光エネルギー密度が大きい場合における(a)感光体上の位置(感光体表面上での位置(座標))と露光強度との関係を示す図、(b)感光体上の位置(感光体表面上での位置(座標))と感光体の表面電位(潜像電位)との関係を示す図、(c)焦点位置にある場合と焦点ずれ位置にある場合のテストパターン画像のイメージについて説明する図である。
【0041】
1つのLED素子当たりの露光エネルギー密度が飽和領域にある場合、図4(a)に示すように、露光強度分布は、露光エネルギーが非飽和領域にある場合と同様、焦点位置ではシャープ、焦点ずれではなだらかな波形形状になり、露光強度は、焦点位置で最大値となる。
【0042】
しかし、1つのLED素子当たりの露光エネルギー密度が飽和領域にある場合、図4(b)に示すように、感光体の表面電位(潜像電位)は露光エネルギー密度が十分に大きいために、焦点位置の場合と焦点ずれの場合における潜像電位分布の波形形状は、露光強度の影響は受けることなく、両者の間には露光ビーム径の差が顕著に現れる状態となっている。
【0043】
そこで、図4(c)を参照して、露光エネルギー密度が飽和領域にある場合の、テストパターン画像におけるトナーの付着量を比較すると、焦点位置の場合、すなわち露光ビーム径が最小となるとき、テストパターン画像におけるトナー付着が最小になり、焦点ずれの場合、すなわち、露光ビーム径が大きくなるほどテストパターン画像におけるトナー付着が多くなるため、テストパターン画像におけるトナーの濃淡具合をもって、焦点位置を正確に判断することが可能である。
【0044】
次に、具体的に焦点調整装置を用いた焦点調整方法について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る焦点調整方法の動作を説明する流れ図である。
【0045】
まず、ステップ(以下、「S」という。)50において、焦点位置の調整が開始されると、S51において、露光手段のエネルギー密度を増加させる。そして、S52において、感光体の表面電位(潜像電位)が、飽和領域に達したか否かが判断される。
【0046】
S52において、感光体の表面電位(潜像電位)が、飽和領域に達したと判断されれば(S52:Y)S53に移行し、飽和領域に達していない(未だ非飽和領域である)と判断されれば(S52:N)、S51に移行し、再び露光手段の露光エネルギー密度を増加させる。
【0047】
S53において、露光手段と感光体との距離を調整し、S54において、光学センサにより、テストパターン画像のトナーの濃度検出を行う。そして、S55において、テストパターン画像のトナーの濃度が、最も薄くなったか否かが判断される。
【0048】
S55において、テストパターン画像のトナーの濃度が最も薄くなったと判定されれば(S55:Y)、S56へ移行し、焦点位置の調整が終了する。S55において、テストパターン画像のトナーの濃度が最小濃度に達していないと判定されれば(S55:N)、S53に戻り、再び露光手段と感光体との距離を調整すると共に、S54において、光学センサにより、テストパターン画像のトナーの濃度検出を行う。
【0049】
次に、本発明の焦点調整装置に用いられるテストパターンの原画像の例について説明する。図6の(a)〜(c)は、本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、テストパターンの原画像の例を示す図である。本発明の焦点調整装置を用いるに当たり、テストパターンの原画像とLEDヘッドを実装するレンズアレイとの解像度が同一である必要がある。そして、図6に示すように、テストパターンの原画像は、この解像度の1画素サイズの印字領域と、この1画素サイズの印字領域の四方を囲む辺を共有する複数の非印字領域とから構成される市松模様である。
【0050】
次に、本発明の焦点調整装置に用いられるテストパターンの原画像に実際にトナーが塗布された場合の具体的なテストパターン画像について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る焦点調整装置において、実際にトナーが塗布された場合のテストパターン画像について、露光ビーム径と、印字領域と非印字領域との間隔を説明する図である。実際にテストパターン画像を作成するに当たり、露光ビーム径は、LEDヘッドを実装するレンズアレイの解像度で定義される1画素サイズの一辺の長さよりも大きめに設定されることがある。そのため、本発明の実施の形態のように強い露光エネルギー密度で1画素分のドットを形成すると、そのドット径が本来の1画素よりも大きくなってしまう。したがって、例えば、図7(b)の左図に示すテストパターンの原画像のように、1画素おきに印字領域と非印字領域を繰り返すパターンでは、焦点位置であってもテストパターン画像がつぶれてしまう。
【0051】
図7(a)、(b)において、左側の図はテストパターンの原画像、右側の図は、実際にトナーが塗布された場合のテストパターン画像で、露光ビーム径が1画素の一辺の長さのほぼ2倍になっている場合を示す。
【0052】
図7(a)の左図は、印字領域の間隔を露光ビーム径以上としたテストパターンの原画像で、図7(b)は、印字領域の間隔を1画素(露光ビーム径未満)としたテストパターンの原画像である。テストパターン画像は、露光ビーム径相当サイズの大きさで形成されるため、印字領域の端部は、露光ビーム径と1画素の一辺の長さの差の半分程度トナーが塗布される。
【0053】
すなわち、印字領域に囲まれた非印字領域は、露光ビーム径と1画素の一辺の長さの差に相当する分だけトナーが塗布されることにより狭くなる。テストパターン画像として、少なくとも1画素分の非印字領域を残すためには、最初から非印字領域の幅が露光ビーム径の分だけ確保されている必要がある。
【0054】
図7の例では、非印字領域はトナー塗布により丁度1画素分狭くなる。図7(a)左図のテストパターンの原画像の非印字領域は2画素分の幅があるため、トナーの塗布によって非印字領域が1画素分狭くなったとしても、残り1画素分が非印字領域として残り、白黒のラインが解像できる。図7(b)の場合は、左図のようにテストパターンの原画像の非印字領域が元々1画素分の幅しかないため、トナーの塗布によって非印字領域がつぶれて印字領域と非印字領域との判別がしにくくなる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨及び範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 画像形成装置
101 転写ローラ
103 露光装置
104 給紙トレイ
105 給紙ローラ
106 定着装置
107 レジストローラ対
108 感光体
110 帯電器
111 現像手段
120 転写ベルト
121 テンションローラ
122 駆動ローラ
123 クリーニングブレード
126 トナー濃度検知手段
127 クリーニング手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開2004−306454号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストパターンの原画像に印字されるテストパターン画像の濃度を調整することにより、前記テストパターン画像の焦点調整を行う焦点調整装置であって、
露光手段と感光体との距離を調整する距離調整手段と、
前記テストパターン画像の濃度検出を行う濃度検出手段と、
前記露光手段のエネルギー密度を増減させることにより、前記エネルギー密度に対する前記感光体の表面電位を変化させるエネルギー密度変更手段と、
前記エネルギー密度変更手段により、前記エネルギー密度を、前記感光体の表面電位を飽和させる電位に至るまで増加させた状態で、前記距離調整手段により前記露光手段と感光体との距離を変化させ、前記濃度検出手段により前記テストパターン画像の濃度が最も薄いと検知される焦点位置に前記距離を調整する濃度調整手段と、を有することを特徴とする焦点調整装置。
【請求項2】
前記濃度検出手段は、前記感光体上、転写体上、又は印刷媒体上において前記テストパターン画像の濃度を検出する濃度センサを含み、前記濃度センサは走査方向に複数設けられ、前記複数設けられた濃度センサの平均値を前記テストパターン画像の濃度として検出することを特徴とする請求項1に記載の焦点調整装置。
【請求項3】
前記テストパターンの原画像と前記露光手段との解像度は同一であり、前記テストパターンの原画像は、前記解像度の単位当たりの画素サイズである印字領域と、前記印字領域の四方を囲む辺を共有する複数の非印字領域とから構成される市松模様であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焦点調整装置。
【請求項4】
前記露光手段は前記画素サイズより大なるビーム径を有し、前記焦点位置に調整されると前記ビーム径は最小値をとり、前記印字領域と前記非印字領域との間隔は、前記最小値のビーム径以上離間していることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の焦点調整装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の焦点調整装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
テストパターンの原画像に印字されるテストパターン画像の濃度を調整することにより、前記テストパターン画像の焦点調整を行う焦点調整方法であって、
露光手段と感光体との距離を調整する工程と、
前記テストパターン画像の濃度検出を行う工程と、
前記露光手段のエネルギー密度を増減させることにより、前記エネルギー密度に対する前記感光体の表面電位を変化させる工程と、
前記感光体の表面電位を変化させる工程により、前記エネルギー密度を、前記感光体の表面電位を飽和させる電位に至るまで増加させた状態で、前記露光手段と感光体との距離を調整する工程により前記距離を変化させ、前記濃度検出を行う工程により前記テストパターン画像の濃度が最も薄いと検知される焦点位置に前記距離を調整する工程と、を有することを特徴とする焦点調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−108198(P2012−108198A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254982(P2010−254982)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】