説明

焼成チョコレート菓子及びその製造方法

【課題】チョコレート生地を所定形状に成形し、焼成して得られる焼成チョコレート菓子であって、焼成時のダレを抑制できるようにする。
【解決手段】HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する常温硬化性のチョコレート生地を、モールド成形、押出成形及びドロップ成形から選ばれたいずれかの方法で成形し、180〜300℃で、1〜10分焼成することにより、焼成チョコレート菓子を得る。ポリグリセリン脂肪酸エステルが、HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステルであるか、あるいはHLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルであることが好ましい。更に、前記チョコレート生地が、上昇融点35℃以上の油脂を0.2〜5.0質量%含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温硬化性のチョコレート生地を所定形状に成形し、焼成して得られる焼成チョコレート菓子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼成チョコレート菓子は、少なくとも表面が硬化しているため、手指を汚さずに食べることができ、焼成による独特の風味も付与されているという特徴がある。
【0003】
しかしながら、焼成の際に、成形したチョコレート生地がダレやすく、製品形状を一定にすることが難しいという問題があった。
【0004】
このため、下記特許文献1には、チョコレート生地に気泡を含有させた後、成形し、焼成して固化することを特徴とする焼菓子の製造法が開示されている。
【0005】
一方、クッキーやビスケット等の原料ドウに混入し、焼成する焼菓子用チョコレートとして、下記特許文献2には、砂糖20〜66重量%、HLB値が10以上のポリグリセリン脂肪酸エステル0.2〜1重量%、常温可塑性油脂34〜42重量%含む常温可塑性焼菓子用チョコレートが開示されている。
【0006】
また、下記特許文献3には、スナック菓子生地中に入れて、焼成するためのチョコレート類として、ポリグリセリンオレイン酸モノエステルが0.05〜1重量%及びHLB5以下のポリグリセリンオレイン酸エステルが0.05〜1重量%添加されていることを特徴とするチョコレート類が開示されている。
【特許文献1】特開平10−210934号公報
【特許文献2】特公平2−11220号公報
【特許文献3】特開平11−225674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の焼菓子の製造法では、チョコレート生地に気泡を含有させることにより、焼成時にチョコレート生地がダレるのを防止しているが、気泡を含有するため、内部まで熱変性しやすく、サク味のある軽い食感が得られるという特徴はあるものの、チョコレート本来のトロッとした軟らかい食感が乏しくなるという問題点があった。
【0008】
また、上記特許文献2の常温可塑性焼菓子用チョコレートは、クッキーやビスケット等の原料ドウに混入し、焼成するためのものであり、原料ドウに混入しやすくするため、常温可塑性のチョコレート生地を用いている。したがって、常温硬化性のチョコレート生地を成形し、焼成して得られる、チョコレートを主体とする焼菓子を提供することを目的としたものではなかった。
【0009】
更に、上記特許文献3のチョコレート類も、例えばエクストルーダーで膨化した中空のスナック菓子生地に注入し、焼成して複合菓子を得るためのチョコレート類を提供することを目的としており、常温硬化性のチョコレート生地を成形し、焼成して得られる、チョコレートを主体とする焼菓子を提供することを目的としたものではなかった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、チョコレート生地を所定形状に成形し、焼成して得られる焼成チョコレート菓子であって、焼成時のダレを抑制できるようにした焼成チョコレート菓子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の焼成チョコレート菓子は、常温硬化性のチョコレート生地を所定形状に成形し、焼成して得られる焼成チョコレート菓子であって、HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の焼成チョコレート菓子の製造方法は、HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する常温硬化性のチョコレート生地を、モールド成形、押出成形、エリクセン成形、パンワーク成形及びスチールベルト成形から選ばれたいずれかの方法で成形し、180〜300℃で、1〜10分焼成することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することにより、焼成時のダレを抑制することができ、焼成後の形状のばらつきが少ない製品を得ることができる。また、気泡を含有させなくても、ダレを十分に抑制できるので、チョコレート本来の食感を有する製品を得ることができる。
【0014】
本発明においては、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル、又はHLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルであることが好ましい。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することにより、焼成時のダレをより効果的に抑制することができる。
【0015】
また、本発明で用いるチョコレート生地は、上昇融点35℃以上の油脂を0.2〜5.0質量%含有することが好ましく、前記上昇融点35℃以上の油脂が、飽和脂肪酸トリグリセリドであることが更に好ましい。これによれば、焼成時のダレをより効果的に抑制することができる。
【0016】
更にまた、前記チョコレート生地を成形した後、相対湿度50〜70%、温度15〜30℃の雰囲気下で1時間以上放置し、その後に焼成を行うことが好ましい。これによれば、焼成時のダレを更に効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する常温硬化性のチョコレート生地を用いて、所定形状に成形し、焼成することによって、焼成時のダレを抑制して、焼成後の形状のばらつきが少ない製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において、チョコレートとは、規約や法規上の規定によって限定されるものではなく、カカオマス、ココア、ココアバター、ココアバター代用脂等を使用した油脂加工食品全般を意味するものとする。また、チョコレート生地としては、例えば、純チョコレート生地、準チョコレート生地、ミルクチョコレート生地、準ミルクチョコレート生地、純ミルクチョコレート生地、ホワイトチョコレート生地、その他の一般的に用いられているチョコレート生地を採用することができる。
【0019】
このようなチョコレート生地は、通常のチョコレートに使用されているカカオマス及び/又はココア、糖類、粉乳、乳化剤、ココアバター及び/又はココアバター代用脂、香料等を主原料とし、更に必要に応じて上記副原料を用いて、製造することができる。
【0020】
糖類としては、例えば、砂糖に、必要に応じて乳糖などの他の糖類や、糖アルコールなどを配合したものが好ましく用いられる。ただし、チョコレート本来の軟らかく滑らかな食感を得るためには、乳糖などの還元糖を含有しないことが好ましい。
【0021】
粉乳としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等を用いることができる。しかしながら、チョコレート本来の軟らかく滑らかな食感を得るためには、乳蛋白の含有量をできるだけ少なくする方が好ましい。
【0022】
ココアバター及び/又はココアバター代用脂としては、ヤシ油、パーム油、パーム核油を原料としたハードバター、エライジン酸を構成脂肪酸とするトランス型ハードバター等のノンテンパリング型の油脂、ココアバター等のテンパリング型油脂を用いることができる。
【0023】
本発明は、焼成時のダレを抑制するため、このチョコレート生地に、乳化剤として、HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させることを特徴としている。この場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステルであるか、あるいはHLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0024】
HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステルとしては、例えばデカグリセリンモノカプリル酸エステル、デカグリセリンモノカプリン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンジステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、テトラグリセリンモノラウリン酸エステル又はテトラグリセリンモノステアリン酸エステルなどが挙げられる。
【0025】
HLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルとしては、例えばデカグリセリンモノオレイン酸エステル、テトラグリセリンモノオレイン酸エステルまたはヘキサグリセリンモノオレイン酸エステルなどが挙げられる。
【0026】
上記HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルは、チョコレート生地中に0.01〜1.0質量%添加することが好ましく、0.05〜0.5質量%添加することが更に好ましい。
【0027】
本発明においては、乳化剤として、上記HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルの他に、グリセリンの重合度が2〜3のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することが更に好ましい。グリセリンの重合度が2〜3のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルが更に好ましい。これによって、焼成時のダレを抑制できると共に、チョコレート本来の軟らかく滑らかな食感を得ることができる。
【0028】
上記グリセリンの重合度が2〜3のポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、例えばジグリセリンモノオレイン酸エステル、ジグリセリンジオレイン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸エステル又はトリグリセリンジオレイン酸エステルなどが挙げられる。
【0029】
上記グリセリンの重合度が2〜3のポリグリセリン脂肪酸エステルは、チョコレート生地中に0.05〜5.0質量%添加することが好ましく、0.1〜1.0質量%添加することが更に好ましい。
【0030】
更に、本発明で用いるチョコレート生地は、上昇融点35℃以上の油脂を0.2〜5.0質量%含有することが好ましく、上記上昇融点35℃以上の油脂が、飽和脂肪酸トリグリセリドであることが更に好ましい。上昇融点35℃以上の油脂を0.2〜5.0質量%含有させることより、焼成中のチョコレート生地のダレをより効果的に防止できる。
【0031】
本発明で用いるチョコレート生地は、常法に従って上記原料をミキシングし、リファイニングを行った後、コンチングを行うことで製造できる。また、必要に応じて、コンチング工程後、加熱、冷却、加圧、減圧しながら激しく撹拌する、いわゆるホイップ処理を施して、気泡を含有させてもよい。撹拌は、例えば、ミキサー、含気ミキサー装置等を用いて行うことができる。しかしながら、チョコレート本来の軟らかく滑らかな食感を得るためには、気泡を含有させないことが好ましい。
【0032】
なお、チョコレート生地中には、例えばナッツ類の粉砕物、果汁パウダー、果物凍結乾燥チップ、コーヒーチップ、キャラメル、抹茶、カカオニブ、膨化型スナック食品、ビスケットチップ、キャンディーチップ、チョコレートチップ、ドライフルーツ、又はマシュマロなどの具材を含有させてもよい。
【0033】
こうして調製したチョコレート生地を、例えば、モールド(型)に入れて成形するモールド成形、押出機のダイから所定形状に押出して切断する押出成形、スチールベルトまたは布ベルト上等にチョコレート生地を直接落として固化させるスチールベルト成形またはシート状に固化した後カットするシート成形等の方法で所定形状に成形する。
この場合、焼成後の内部を軟らかく滑らかな食感に維持するため、成形後の製品の最小径が0.5cm以上、好ましくは1.0〜2.5cmとなるようにすることが好ましい。
【0034】
更に、本発明の好ましい態様では、こうして得られたチョコレート成形品を焼成するに先立って、該成形品を相対湿度50〜70%、温度15〜30℃の雰囲気下、好ましくは湿度及び温度が上記範囲となるように調湿、調温された部屋に入れて、1時間以上放置し、その後に焼成を行うことが好ましい。これによれば、焼成時のダレを更に効果的に防止することができる。
【0035】
更にまた、焼成によるダレを抑制し、焼成後の内部を軟らかく滑らかな食感にするために、チョコレート成形品の表面に粉糖をまぶしてから、焼成を行ってもよい。使用する粉糖は、その粒径が50メッシュパスであることが好ましく、更には100メッシュパスであることが好ましい。この場合、粉糖の付与量は、チョコレート生地に対して1〜5質量%とすることが好ましい。また、粉糖の融点が150℃以下であることが好ましい。この粉糖処理工程により、外観が透明でパリッとした食感の焼成チョコレートが得られる。好ましい粉糖としては、例えば含水マルトース、含水トレハロースまたはグルコースなどが挙げられる。
【0036】
焼成は、例えばオーブン、ガスバーナー、電子レンジまたは電気ヒーター(トースター)等を用いて行うことができるが、特にオーブンが好ましく用いられる。焼成温度は、180〜300℃で1〜10分間行うことが好ましく、200〜270℃で1〜10分間行うことが更に好ましい。このような条件下で焼成することにより、表面は適度な硬さの食感を有し、内部はしっとりとした滑らかな口溶けを有し、チョコレートの風味がより良好に維持された焼き菓子を得ることができる。
【0037】
こうして焼成した後、放冷又は送風等による強制冷却を行うことにより、本発明の焼き菓子を得ることができる。
【実施例】
【0038】
試験例1(ダレ防止のための乳化剤の比較)
表1に示す原料を基本配合として、これに表2に示す各種乳化剤を同表に示す割合でチョコレート生地中に添加し、常法に従って上記原料をミキシングし、粒度25μmになるようリファイニングを行った後、コンチングを行って、チョコレート生地を調製した。
【0039】
このチョコレート生地をモールド(内径20mm四方、深さ10mm)に充填し、冷却、固化させた後、モールドから取り出してオーブンに入れ、200℃で5分間焼成して、焼成チョコレート菓子を製造した。
【0040】
この焼成チョコレート菓子の形状を、焼成前の成形形状と比較して、14名のパネラーによりダレの程度を評価した。その結果を表2に示す。表2中、◎はダレが十分に抑制されていることを、○はダレが抑制されていることを、△はダレがやや発生していることを、×はダレが顕著に発生していることを示し、全パネラーの平均で表した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表2の結果から、HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加した試料No.2〜7は、いずれもダレが抑制されており、特に、試料No.2のヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、試料No.4のデカグリセリンモノミリスチン酸エステル(いずれもHLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル)、及び試料No.3のテトラグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル)が優れた効果を発揮した。
【0044】
試験例2(高融点油脂の添加効果の比較)
表1に示す原料を基本配合として、これに表3に示す高融点油脂を同表に示す割合でチョコレート生地中に添加し、このチョコレート生地を用いて、試験例1と同様な方法で、焼成チョコレート菓子を製造した。
【0045】
この焼成チョコレート菓子の形状を、焼成前の成形形状と比較して、14名のパネラーによりダレの程度を評価した。その結果を表3に示す。表3中、◎、○、△、×の評価基準は、前記試験例1と同じであり、全パネラーの平均で表した。
【0046】
【表3】

【0047】
表3の結果から、上昇融点温度58℃のトリ飽和グリセリドを1.0質量%添加した試料No.12は、ダレが良好に抑制されることがわかる。
【0048】
試験例3(加湿処理の有無の比較)
チョコレート生地を冷却、固化した後、モールドから取り出し成形したチョコレートを、表4に示す温度と相対湿度の環境下に6時間放置しその後焼成する以外は試験例1と同様な方法で焼成チョコレート菓子を製造した。
【0049】
この焼成チョコレート菓子について、14名のパネラーにより試験例1と同様にダレの程度を評価し、その結果を表4に示す。表4中、◎、○、△、×の評価基準は、前記試験例1と同じであり、全パネラーの平均で表した。
【0050】
【表4】

【0051】
試験例4(粉乳及び乳糖の添加の有無の比較)
下記表5に示すA〜Dの配合を基本配合として、チョコレート生地を調製し、このチョコレート生地を用いて、試験例1と同様な方法で、焼成チョコレート菓子を製造した。
【0052】
この焼成チョコレート菓子について、14名のパネラーにより、チョコレート内部の食感の軟らかさを三段階で評価した。その結果を表6に示す。表6中、◎は十分な柔らかい食感であることを、〇は柔らかな食感であることを、×は硬い食感であることを示し、全パネラーの平均で表した。
【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
表6に示すように、粉乳を添加せず、かつ、乳糖も添加しない試料No.24(配合D)が、チョコレート内部の食感が最も軟らかく保たれていることがわかる。また、粉乳を添加し、乳糖を添加しない試料No.22(配合B)、及び、粉乳を添加せず、乳糖を添加した試料No23.(配合C)は、粉乳及び乳糖を添加した試料No.21(配合A)のものよりは、チョコレート内部の食感が軟らかく保たれていることがわかる。
【0056】
試験例5(粉糖がけの有無の比較)
前記表5のAの配合により、試験例1と同様な方法で、チョコレートを成形し、このチョコレートの表面に、下記表7に示す粉糖を、同表に示す割合で振りかけ、試験例1と同様な方法で焼成して、焼成チョコレート菓子を製造した。なお、コントロールとして、粉糖がけをしないものを同様に製造した。
【0057】
こうして得られた各試料について、14名のパネラーにより、見た目の外観の良さと、チョコレート内部の食感の軟らかさを三段階で評価した。その結果を表7に示す。表7中、外観については、◎は透明であること、○は半透明であること、×は白濁していることを示し、食感については、試験例4と同様に行い、全パネラーの平均で表した。
【0058】
【表7】

【0059】
表7に示されるように、粉糖がけを行って焼成することにより、チョコレート内部の食感を軟らかく保てることがわかる。
【0060】
試験例6(食感改善のための乳化剤の比較)
表5のAの配合を基本配合とし、これに下記表8の乳化剤を同表に示す割合で添加し、試験例1と同様な方法で焼成チョコレートを製造した。
この焼成チョコレート菓子について、14名のパネラーにより、試験例4と同様な方法で、チョコレート内部の食感の軟らかさを三段階で評価した。この結果を表8に示す。表8中、◎、○、×の評価基準は、前記試験例4と同じであり、全パネラーの平均で表した。
【0061】
【表8】

【0062】
表8に示されるように、乳化剤として、グリセリンの重合度が2〜3のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルを添加した試料No.32、33は、他の試料に比べて、チョコレート内部の食感の軟らかさが良好に維持されることがわかる。
【0063】
比較例1(コントロール)
カカオマス50g、ココアパウダー100g、砂糖300g、全粉乳100g、脱脂粉乳100g、植物油脂300g、レシチン3gを常法に従ってミキシングし、粒度が25μmになるようにリファイニングを行った後、コンチングを行ってチョコレート生地を調製した。このチョコレート生地をモールド(内径20mm四方、深さ10mm)に充填し、冷却、固化させた後モールドから取り出してオーブンに入れ、200℃で5分間焼成して焼成チョコレート菓子を製造した。
【0064】
この焼成チョコレートは、焼成前の成形チョコレートの形状に比較して大きなダレが発生していた。
【0065】
比較例2(ショ糖脂肪酸エステル;ダレ防止効果無し)
比較例1の配合にショ糖ステアリン酸エステル5gを加えた以外は、比較例1と同様にして焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、比較例1のものと同様、焼成前の成形チョコレートの形状に比較して大きなダレが発生していた。
【0066】
実施例1(HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル0.01%添加のダレ防止効果)
比較例1の配合にHLBが11であるヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル0.1gを加えた以外は、比較例1と同様にして焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、比較例1と比較するとダレの発生が抑制されていたが、焼成前の成形チョコレートの形状に比較してややダレが発生していた。
【0067】
実施例2(HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル0.1%添加のダレ防止効果)
比較例1の配合にHLBが11であるヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル1gを加えた以外は、比較例1と同様にして焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、焼成前の成形チョコレートの形状に比較すると形状的に見劣りがしたが、実施例1よりも更にダレの発生が抑制されていた。
【0068】
実施例3(HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル0.5%添加のダレ防止効果)
比較例1の配合にHLBが11であるヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル5gを加えた以外は、比較例1と同様にして焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、実施例2よりもよりダレの発生が抑制されており、焼成前の成形チョコレートの形状に比較しても形状的に見劣りがせず十分にダレの発生が抑制されていた。
【0069】
実施例4(HLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル0.5%添加のダレ防止効果)
比較例1の配合にHLBが8であるテトラグリセリンモノオレイン酸エステル5gを加えた以外は、比較例1と同様にして焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、実施例2よりもよりダレの発生が抑制されており、焼成前の成形チョコレートの形状に比較しても形状的に見劣りがせず十分にダレの発生が抑制されていた。
【0070】
比較例3(SUS型トリグリセリド単独添加のダレ防止効果)
比較例1の配合に上昇融点が37℃であるSUS型トリグリセリド10gを加えた以外は、比較例1と同様にして焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、比較例1よりもダレの発生が抑制されていたが、焼成前の成形チョコレートの形状に比較して形状的に大きく見劣りがし、ダレの発生が十分には抑制されなかった。
【0071】
比較例4
(トリ飽和グリセリド単独添加のダレ防止効果)
比較例1の配合に上昇融点が58℃であるトリ飽和グリセリド10gを加えた以外は、比較例1と同様にして焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、比較例3よりもダレの発生が抑制されていたが、十分とは言えなかった。
【0072】
実施例5(HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル0.5%+トリ飽和グリセリド添加のダレ防止効果)
比較例1の配合に、HLBが11であるヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル5g及び上昇融点が58℃であるトリ飽和グリセリド10gを加えた以外は、比較例1と同様にして焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、実施例3よりも更にダレの発生が抑制されており、焼成前の成形チョコレートの形状とほぼ同じでありダレの発生が十分に抑制されていた。
【0073】
実施例6(HLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル0.5%+トリ飽和グリセリド添加のダレ防止効果)
比較例1の配合に、HLBが8であるテトラグリセリンモノオレイン酸エステル5g及び上昇融点が58℃であるトリ飽和グリセリド10gを加えた以外は、比較例1と同様にして焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、実施例4よりも更にダレの発生が抑制されており、焼成前の成形チョコレートの形状とほぼ同じでありダレの発生が十分に抑制されていた。
【0074】
実施例7(HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル0.5%+トリ飽和グリセリド添加+20℃、RH60%、6時間処理のダレ防止効果)
比較例1の配合に、HLBが11であるヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル5g及び上昇融点が58℃であるトリ飽和グリセリド10gを加えた以外は、比較例1と同様にしてチョコレートを成形し、オーブンで焼成する前に成形チョコレートを20℃で相対湿度60%の雰囲気下に6時間放置し、それ以外は比較例1と同様に焼成した焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、実施例5よりも更にダレの発生が抑制されており、焼成前の成形チョコレートの形状とほぼ同じでありダレの発生が十分に抑制されていた。
【0075】
実施例8(HLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル0.5%+トリ飽和グリセリド添加+20℃、RH60%、6時間処理のダレ防止効果)
比較例1の配合に、HLBが8であるテトラグリセリンモノオレイン酸エステル5g及び上昇融点が58℃であるトリ飽和グリセリド10gを加えた以外は、比較例1と同様にしてチョコレートを成形し、オーブンで焼成する前に成形チョコレートを20℃で相対湿度60%の雰囲気下に6時間放置し、それ以外は比較例1と同様に焼成した焼成チョコレート菓子を製造した。この焼成チョコレートは、実施例6よりも更にダレの発生が抑制されており、焼成前の成形チョコレートの形状とほぼ同じでありダレの発生が十分に抑制されていた。
【0076】
以上の比較例1〜4及び実施例1〜8の配合並びに試験結果を表9,10に示す。表9,10中、評価基準は試験例1と同様であるが、ダレ防止効果の高い順に◎◎◎>◎◎>◎>〇>△>×で表した。
【0077】
【表9】

【0078】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温硬化性のチョコレート生地を所定形状に成形し、焼成して得られる焼成チョコレート菓子であって、HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とする焼成チョコレート菓子。
【請求項2】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステルである請求項1記載の焼成チョコレート菓子。
【請求項3】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、HLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルである請求項1記載の焼成チョコレート菓子。
【請求項4】
上昇融点35℃以上の油脂を0.2〜5.0質量%含有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の焼成チョコレート菓子。
【請求項5】
前記上昇融点35℃以上の油脂が、飽和脂肪酸トリグリセリドである請求項4記載の焼成チョコレート菓子。
【請求項6】
HLB8以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する常温硬化性のチョコレート生地を、モールド成形、押出成形、エリクセン成形、パンワーク成形及びスチールベルト成形から選ばれたいずれかの方法で成形し、180〜300℃で、1〜10分焼成することを特徴とする焼成チョコレート菓子の製造方法。
【請求項7】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、HLB10以上のポリグリセリン飽和脂肪酸エステルである請求項6記載の焼成チョコレート菓子の製造方法。
【請求項8】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、HLB8以上のポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルである請求項6記載の焼成チョコレート菓子の製造方法。
【請求項9】
前記チョコレート生地が、上昇融点35℃以上の油脂を0.2〜5.0質量%含有する請求項6〜8のいずれか1つに記載の焼成チョコレート菓子の製造方法。
【請求項10】
前記上昇融点35℃以上の油脂が、飽和脂肪酸トリグリセリドである請求項9記載の焼成チョコレート菓子の製造方法。
【請求項11】
前記チョコレート生地を成形した後、相対湿度50〜70%、温度15〜30℃の雰囲気下で1時間以上放置し、その後に焼成を行う請求項6〜10のいずれか1つに記載の焼成チョコレート菓子の製造方法。

【公開番号】特開2008−206457(P2008−206457A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47042(P2007−47042)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】