説明

焼成パターン形成用シート

【課題】 焼成処理による炭素系残渣が少なく、白色度等の着色状態の維持性や、被着体に対する焼成密着力等に優れる焼成ラベル等を形成しうると共に、無焼成の状態で仮着して水洗しても被着体より脱落しにくい焼成パターン形成用シートの開発。
【解決手段】 焼成用のセラミックグリーンシート層(1)と粘着層(2)を少なくとも有してなり、その粘着層が低温分解性で焼成後における炭素系残渣が少ない内側層(21)と、耐水洗性の外側層(22)の重畳層からなる焼成パターン形成用シート。
【効果】 焼成前の粘着層が被着体に対する仮着力に優れ、特にその外側の粘着層が水洗処理で脱落しない接着力を発揮し、かつセラミックグリーンシート層を従来に準じて形成した場合にもそれを焼成する際に粘着層が低温側で消失し、かつその消失の際に良好な熱分解性を示して焼成パターン形成用シートの全体として炭素やカーボンやタール等を残存させにくい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、被着体に仮着して焼成前に水洗しても脱落せず、かつ粘着層の消失性に優れて着色維持性や焼成密着性等に優れる焼成パターン形成用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、セラミックグリーンシートに粘着層を設けてなる焼成パターン形成用シートが知られていた(特公平4−5258号公報)。これは、そのセラミックグリーンシート上に耐熱性インクでパターン等の情報を付与してラベル等としたのち、その粘着層を被着体に仮着して焼成処理するようにしたものである。
【0003】すなわち前記の焼成処理により、有機バインダや粘着層等の有機成分は消失し、セラミックグリーンシートが焼成体化して被着体に焼き付き、焼成ラベルとして被着体に固着する。従ってかかる焼成パターン形成用シートは、高耐久性、高耐熱性等の焼成ラベルの形成などに好ましく用いられ、ガラスや琺瑯やタイル等のセラミックなどからなる製品や半製品ないし部品の多品種少量生産体制における管理等に有利に用いうる。
【0004】しかしながら、従来の焼成パターン形成用シートにあっては、それをブラウン管等のガラス製品に仮着し、焼成処理で焼き付けて焼成ラベル等とした場合に、炭素やカーボンやタール等の炭素系残渣が多くて焼成ラベル等における着色度を低下させる問題点があった。かかる着色度の低下は、白色等のコントラスト付与を目的とした場合などに特に問題となる。また前記の炭素系残渣が被着体との界面に発生してウイーク・バウンダリー・レイヤとなり、被着体に対する焼成ラベル等の密着性を低下させる問題点もあった。
【0005】
【発明の技術的課題】前記に鑑みて本発明者らが属するグループは先に、焼成処理による炭素系残渣が少なく、白色度等の着色状態の維持性や、被着体に対する焼成密着力等に優れる焼成ラベル等を形成しうる焼成パターン形成用シートを提案した(特願平8−171880号公報)。
【0006】しかし、前記の焼成パターン形成用シートをセラミック等からなる被着体に仮着後、水洗処理した場合に脱落する問題点のあることが判明した。すなわちブラウン管等の製造工程では蛍光体を塗布する前に水洗処理されるが、その場合に焼成パターン形成用シートの予備焼成なしに水洗すると粘着界面に水が浸入して脱落問題が多発する。焼成パターン形成用シートを予備焼成した場合にはかかる問題を回避しうるが、ブラウン管等の製造効率の向上をはかるため予備焼成の不要化が強く望まれている。
【0007】従って本発明は、焼成処理による炭素系残渣が少なく、白色度等の着色状態の維持性や、被着体に対する焼成密着力等に優れる焼成ラベル等を形成しうると共に、無焼成の状態で仮着して水洗しても被着体より脱落しにくい焼成パターン形成用シートの開発を課題とする。
【0008】
【課題の解決手段】本発明は、焼成用のセラミックグリーンシート層と粘着層を少なくとも有してなり、その粘着層が低温分解性で焼成後における炭素系残渣が少ない内側層と、耐水洗性の外側層の重畳層からなることを特徴とする焼成パターン形成用シートを提供するものである。
【0009】
【発明の効果】本発明によれば、焼成前の粘着層が被着体に対する仮着力に優れ、特にその外側の粘着層が水洗処理で脱落しない接着力を発揮し、かつセラミックグリーンシート層を従来に準じて形成した場合にもそれを焼成する際に粘着層が低温側で消失し、かつその消失の際に良好な熱分解性を示して焼成パターン形成用シートの全体として炭素やカーボンやタール等を残存させにくく、炭素系残渣による汚れが少なくて白色度等の着色状態を良好に維持すると共に、被着体に対する焼成密着力に優れる焼成パターン形成用シートを得ることができる。
【0010】
【発明の実施形態】本発明の焼成パターン形成用シートは、焼成用のセラミックグリーンシート層と粘着層を少なくとも有してなり、その粘着層が低温分解性で焼成後における炭素系残渣が少ない内側層と、耐水洗性の外側層の重畳層からなるものである。その例を図1に示した。1がセラミックグリーンシート層、2が粘着層であり、21がその内側層、22がその外側層ある。なお図は、セラミックグリーンシート層1にパターンを付与してなる焼成用のラベルを被着体に仮着した状態を示しており、3がパターン層、4が被着体である。
【0011】本発明の焼成パターン形成用シートにおいては、粘着層以外について特に限定はなく、セラミックグリーンシート層やシート形態などについては例えば特公平4−5258号公報における如く、従来に準じて形成することができる。従ってセラミックグリーンシート層は、例えば焼成時に熱分解するなどして消失する有機バインダと無機粉末の1種又は2種以上を有機溶剤等を介してボールミル等で混合し、その混合液をドクターブレード法等の適宜な方式でセパレータ等の支持基材上に展開して乾燥させたシート状保形物などとして得ることができる。
【0012】ちなみに前記の無機粉末としては、例えば被着体に焼成接着するための鉛ガラス系やホウ珪酸鉛ガラス系、ソーダガラス系や各種フリット系の如きガラス粉末、シートを着色するためのシリカや炭酸カルシウム、酸化チタンや亜鉛華、ジルコニアや酸化カルシウム、アルミナやチタン酸カリウムの如き白色系やその他の顔料ないし充填剤、シートの物性等を制御するための焼成温度以上の融点を有するセラミックや金属(合金)等からなる粉末や繊維などが必要に応じた適宜な組合せで用いうる。
【0013】また有機バインダとしては、例えば炭化水素系やビニル系ないしスチレン系、アセ炭素系やブチラール系、アクリル系やポリエステル系、ウレタン系や繊維素系の如きプラスチック、あるいはパラフィン系や天然系、エステル系や高級アルコール系、高級アミド系の如き各種のワックス類などが必要に応じた適宜な組合せで用いうる。
【0014】セラミックグリーンシート層の厚さは、使用目的などに応じて適宜に決定されるが一般には10〜500μm、就中30〜100μmの厚さである。またセラミックグリーンシート層は、必要に応じてガラスクロス等の補強基材との複合物や、焼失性プラスチックフィルム等とのラミネート体などとして形成することもできる。
【0015】粘着層は、低温分解性の粘着性物質からなる内側層と、粘着界面からの水の浸入を阻止して水洗による脱落を防止する耐水洗性の外側層の重畳層にて形成され、通例、焼成パターン形成用シートの片面に設けられる。
【0016】低温分解性や焼成による炭素系残渣発生の防止性などの点より、内側層の形成に好ましく用いうる粘着性物質は、メタクリル酸エステルを主体としたメタクリル酸系ポリマーを主成分とするガラス転移温度(Tg)が30℃以下のものである。特にメタクリル酸エステルを80重量%以上含有してTgが−20℃以下のメタクリル酸系ポリマーが好ましい。
【0017】前記メタクリル酸系ポリマーの形成に用いうるメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸n−ブチル(Tg:20℃)、メタクリル酸n−ヘキシル(Tg:−5℃)、メタクリル酸n−オクチル(Tg:−20℃)、メタクリル酸ラウリル(Tg:−65℃)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(Tg:26℃)などがあげられる。Tg30℃以下の条件を満足してもアクリル酸エステルを主体とするアクリル酸系ポリマーでは、目的とする低温分解性や炭素系残渣発生の防止性が満足されない。
【0018】メタクリル酸系ポリマーは、1種又は2種以上のメタクリル酸エステルを用いて形成されたものであってよく、Tg30℃以下等の前記した条件を満足する範囲でメタクリル酸やアクリル酸、その他のビニル系モノマーなどの共重合成分を含有していてもよい。
【0019】メタクリル酸系ポリマーは、通例の粘着剤組成物などとして内側の粘着層の形成に用いることができる。就中、粘着特性の向上等には低温揮発性の液状物を添加した粘着剤組成物とすることが好ましい。その液状物としては、例えばDOPやDBP、キシレンオイルやテルペンオイルなどの、メタクリル酸系ポリマーと相溶性の適宜なものを用いうる。
【0020】耐水洗性の外側粘着層を形成する粘着性物質としては、スライドガラスに粘着層を接着して約10分間放置し、それを室温下の水中に10分間浸漬して、水の浸入による端部等の剥がれを生じないものを用いることができる。従って例えば、ゴム系粘着剤や上記した内側の粘着層で例示した粘着性物質以外のアクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤やシリコーン系粘着剤などの適宜なものを用いてよく、親水性のものなども用いうる。
【0021】ちなみに前記したゴム系粘着剤の例としては、天然ゴムやポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴムやスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体ゴムや再生ゴム、ブチルゴムやポリイソブチレン、NBRの如きゴム系ポリマーをベースポリマーとし、必要に応じて石油系樹脂やテルペン系樹脂、ロジン系樹脂やキシレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂やフェノール系樹脂、キシレン系樹脂やアルキド系樹脂の如き粘着付与樹脂、軟化剤、老化防止剤、着色剤、充填剤等の配合剤を添加したものなどがあげられる。
【0022】またアクリル系粘着剤の例としては、ブチル基やアミル基、イソアミル基やヘキシル基、ヘプチル基やシクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基やオクチル基、イソオクチル基やノニル基、イソノニル基やデシル基、ウンデシル基やラウリル基、トリデシル基やテトラデシル基、ステアリル基やオクタデシル基の如き炭素数が4〜18の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステルからなるアクリル酸系アルキルエステルの1種又は2種以上を用いたアクリル系重合体やそれに改質用モノマーを共重合させたものなどをベースポリマーとするものがあげられる。
【0023】なお前記の改質用モノマーの例としては、アクリル酸やメタクリル酸、カルボキシエチルアクリレートやカルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸やマレイン酸、フマール酸やクロトン酸の如きカルボキシル基含有モノマー、あるいは無水マレイン酸や無水イタコン酸の如き酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルや(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルや(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートの如きヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸や(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸の如きスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートの如き燐酸基含有モノマー、(メタ)アクリルアミドやN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドの如き(N−置換)アミド系モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチルや(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルの如き(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチルや(メタ)アクリル酸エトキシエチルの如き(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー、N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミドの如きマレイミド系モノマー、N−メチルイタコンイミドやN−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミドやN−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミドやN−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドの如きイタコンイミド系モノマー、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドの如きスクシンイミド系モノマー、エチル基やプロピル基の如き低級アルキル基を有するアルキル系アクリルエステルモノマー、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドンやメチルビニルピロリドン、ビニルピリジンやビニルピペリドン、ビニルピリミジンやビニルピペラジン、ビニルピラジンやビニルピロール、ビニルイミダゾールやビニルオキサゾール、ビニルモルホリンやN−ビニルカルボン酸アミド類、スチレンやα−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムの如きビニル系モノマー、アクリロニトリルやメタクリロニトリルの如きシアノアクリレート系モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジルの如きエポキシ基含有アクリル系モノマー、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールや(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールや(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールの如きグリコール系アクリルエステルモノマー、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルやフッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートの如きアクリル酸エステル系モノマー、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートや(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートやネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレートやポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートの如き多官能アクリレート系モノマーなどがあげられる。
【0024】アクリル系粘着剤にも必要に応じて、例えば粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、炭酸カルシウムやクレーの如き充填剤、顔料、着色剤、老化防止剤などの各種の添加剤が配合される。さらにトリレンジイソシアネートやトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートの如き多官能イソシアネート系架橋剤、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルやジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの如きエポキシ系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤や金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤やアミノ樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤の如き架橋剤も必要に応じて配合される。
【0025】一方、親水性の粘着剤としては、例えばポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドやアクリル酸共重合体、セルロース系ポリマーやポリビニルメチルエーテルの如き水溶性高分子や親水性高分子をベースポリマーとし、必要に応じてグリセリンやポリエチレングリコール、ポリエーテルポリオールやポリオキシエチレンフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルの如き粘着付与剤、架橋剤、充填剤などの適宜な成分を配合してなる、ポリビニルアルコール系粘着剤やポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤やアクリル酸共重合体系粘着剤、セルロース系粘着剤やポリビニルメチルエーテル系粘着剤などがあげられる。
【0026】粘着層の付設は、適宜な塗工機を用いてセラミックグリーンシート層の被着体接着側に所定の粘着剤を塗工して重畳粘着層を形成する方式や、セパレータ上に所定の順序で設けた重畳粘着層をセラミックグリーンシート層に移着する方式などの粘着テープ等の形成方法に準じた適宜な方式で行うことができる。
【0027】付設する重畳粘着層の厚さは、使用目的などに応じて決定することができる。就中、仮着力や焼成後のセラミック層におけるクラックやバブル等の発生の防止などの点より、内側の粘着層の厚さは、1〜50μm、就中3〜30μmとすることが好ましい。
【0028】耐水洗性の外側粘着層の厚さは、焼成後の炭素系残渣による着色度、特に白色度の低下の防止や密着力の低下防止などの点より、5μm以下、就中3μmとすることが好ましい。また内側の粘着層の表面物性を変える点よりは、0.05μm以上、就中0.1μm以上の厚さとすることが好ましい。なお粘着層は、実用に供するまでの間、セパレータを仮着するなどして保護しておくことが好ましい。
【0029】本発明の焼成パターン形成用シートは、例えば焼成ラベルの形成などに好ましく用いうる。焼成ラベルは、焼成パターン形成用シートのセラミックグリーンシート層側に耐熱性インクからなるパターンを付与する方式などにより得ることができる。
【0030】耐熱性インクは、例えば1種又は2種以上の無機系着色剤を溶媒を用いて、必要に応じセラミック粉末や有機バインダ、可塑剤や分散剤等の適宜な添加剤の併用下、ボールミル等で混合してペースト状等の流動物などとして得ることができる。従って従来の例えばガラス粉末と無機顔料等の任意成分、又は有色ガラス系顔料単独をバインダと共に混合してなるペースト状のインクなどが耐熱性インクの代表例としてあげられる。
【0031】焼成用のラベル等とした焼成パターン形成用シートは、その粘着層を介し被着体に仮着し、必要に応じて水洗処理したのち焼成処理に供されるが、その焼成処理はセラミックグリーンシート層の焼成温度などに応じて適宜な加熱方式で行ってよい。ブラウン管等では、通例400〜470℃の加熱温度とされる。
【0032】前記の焼成処理により、粘着層が焼成開始の比較的低温側で熱分解して良好に消失すると共に、有機バインダ等の他の有機成分も良好に消失し、セラミックグリーンシート層中のガラス粉末等の無機粉末が一体化しつつ焼成体化して被着体と固着する。耐熱性インクのパターン等を有する場合には、そのパターン等もインク中の有機成分を消失しつつセラミックグリーンシート層の焼成体と一体化し、焼成パターンを形成する。
【0033】前記において、従来の焼成パターン形成用シートにおける炭素やカーボン等の炭素系残渣の原因となる有機成分は、セラミックグリーンシート中の有機バインダや粘着層であると考えられるが、本発明の如く低温分解性の内側粘着層を用いることで、それまで炭素やカーボン等の炭素系残渣を生じていた有機バインダや耐水洗性の外側粘着層を用いた場合にもその発生を防止することができる。すなわち詳細な理由は不明であるが、低温分解性の粘着層を用いることで有機バインダや外側粘着層に基づく炭素系残渣の発生も防止して全体として炭素系残渣の発生を抑制することができる。
【0034】従って本発明の焼成パターン形成用シートは、例えば識別ラベル等の表示体の形成や装飾の付与などの種々の目的に用いることができる。焼成パターン等の付与対象である被着体については特に限定はなく、その形態も例えば平板形態や容器形態など任意である。就中、本発明の焼成パターン形成用シートは、ガラスや琺瑯やタイル等のセラミック物品に仮着して水洗しても脱落しないことより、焼成パターン形成用シートを無焼成のまま仮着して水洗処理する工程におけれる物品に好ましく用いることができる。
【0035】
【実施例】
参考例1アクリル酸ブチル100部(重量部、以下同じ)とアクリル酸10部をアゾビスイソブチロニトリル1部含有の酢酸エチル125部中、60℃で8時間溶液重合したのち、その反応溶液に重合体100部あたり2部の多官能性イソシアネート(トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加物)を添加して粘着剤Aを調製した。
【0036】参考例2参考例1に準じてメタクリル酸ラウリルのホモポリマーを重合し、それを用いて粘着剤Bを調製した。
【0037】参考例3参考例1に準じてメタクリル酸ステアリリルのホモポリマーを重合し、それを用いて粘着剤Cを調製した。
【0038】参考例4参考例1に準じてメタクリル酸2−エチルヘキシルのホモポリマーを重合し、それを用いて粘着剤Dを調製した。
【0039】参考例5天然ゴム系粘着剤Eを用いた。
【0040】参考例6参考例1に準じてアクリル酸ブチル100部とアクリル酸3部を共重合し、それを用いて粘着剤Fを調製した。
【0041】実施例1参考例1の粘着剤Aを酢酸エチルで2%の濃度に希釈してドクターブレード法により厚さ38μmのポリエステルフィルムにシリコーン系剥離コートを設けたセパレータ上に塗工し、乾燥させて厚さ3μmの外側粘着層を形成し、その上に参考例2の粘着剤Bを直接塗工して乾燥させ、厚さ12μmの内側粘着層を形成して重畳粘着層を得た。
【0042】一方、重量平均分子量10万のアクリル系バインダ100部を含むトルエン溶液に、PbO・SiO2・B23・Al23を主成分とする平均粒径10μmのガラス粉末150部、及びウィスカ状のチタン酸カリウム粉末30部を加えてボールミルで均一に混合し、それをドクターブレード法でセパレータ上に展開し乾燥させて厚さ50μmのセラミックグリーンシート層を形成し、そのグリーンシート層上に前記の重畳粘着層を接着して焼成パターン形成用シートを得た。なお前記のセパレータは、厚さ70μmのグラシン紙にシリコーン系剥離コートを設けたものである。
【0043】次に、前記の焼成パターン形成用シートにおけるセラミックグリーンシート面にインクリボンと熱転写プリンタを介して所定のバーコードを印刷し焼成用のラベルを得た。なおインクリボンは、重量平均分子量10万のポリジメチルシロキサン100部を含むキシレン溶液に、酸化クロム・酸化コバルト・酸化鉄・酸化マンガン系黒色顔料(平均粒径0.5μm)100部を加えて均一に混合した耐熱性インクをグラビア塗工機にて、厚さ6μmのポリエステルフィルムに塗布し乾燥させて厚さ6μmのインク層を形成したものである。
【0044】実施例2内側粘着層を参考例3の粘着剤Cで形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0045】実施例3内側粘着層を参考例4の粘着剤Dで形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0046】実施例4外側粘着層を参考例5の粘着剤Eで形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0047】実施例5外側粘着層を参考例5の粘着剤Eで形成したほかは実施例2に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0048】実施例6外側粘着層を参考例5の粘着剤Eで形成したほかは実施例3に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0049】実施例7外側粘着層を参考例6の粘着剤Fで形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0050】実施例8外側粘着層を参考例6の粘着剤Fで形成したほかは実施例2に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0051】実施例9外側粘着層を参考例6の粘着剤Fで形成したほかは実施例3に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0052】比較例1粘着層を参考例2の粘着剤Bによる厚さ3μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0053】比較例2粘着層を参考例3の粘着剤Cによる厚さ3μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0054】比較例3粘着層を参考例4の粘着剤Dによる厚さ3μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0055】比較例4粘着層を参考例1の粘着剤Aによる厚さ3μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0056】比較例5粘着層を参考例5の粘着剤Eによる厚さ3μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0057】比較例6粘着層を参考例6の粘着剤Fによる厚さ3μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0058】比較例7粘着層を参考例2の粘着剤Bによる厚さ15μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0059】比較例8粘着層を参考例3の粘着剤Cによる厚さ15μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0060】比較例9粘着層を参考例4の粘着剤Dによる厚さ15μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0061】比較例10粘着層を参考例1の粘着剤Aによる厚さ15μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0062】比較例11粘着層を参考例5の粘着剤Eによる厚さ15μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0063】比較例12粘着層を参考例6の粘着剤Fによる厚さ15μmの単独層としたほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0064】比較例13重畳粘着層を参考例1の粘着剤Aで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例2の粘着剤Bで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0065】比較例14重畳粘着層を参考例5の粘着剤Eで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例2の粘着剤Bで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0066】比較例15重畳粘着層を参考例6の粘着剤Fで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例2の粘着剤Bで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0067】比較例16重畳粘着層を参考例1の粘着剤Aで厚さ12μmの内側粘着層を形成し、参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0068】比較例17重畳粘着層を参考例5の粘着剤Eで厚さ12μmの内側粘着層を形成し、参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0069】比較例18重畳粘着層を参考例6の粘着剤Fで厚さ12μmの内側粘着層を形成し、参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0070】比較例19重畳粘着層を参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例1の粘着剤Aで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0071】比較例20重畳粘着層を参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例5の粘着剤Eで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0072】比較例21重畳粘着層を参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例6の粘着剤Fで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0073】比較例22重畳粘着層を参考例1の粘着剤Aで厚さ12μmの内側粘着層を形成し、参考例5の粘着剤Eで厚さ3μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0074】比較例23重畳粘着層を参考例5の粘着剤Eで厚さ12μmの内側粘着層を形成し、参考例1の粘着剤Aで厚さ3μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0075】比較例24重畳粘着層を参考例1の粘着剤Aで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例5の粘着剤Eで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0076】比較例25重畳粘着層を参考例5の粘着剤Eで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例1の粘着剤Aで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0077】比較例26重畳粘着層を参考例2の粘着剤Bで厚さ12μmの内側粘着層を形成し、参考例3の粘着剤Cで厚さ3μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0078】比較例27重畳粘着層を参考例3の粘着剤Cで厚さ12μmの内側粘着層を形成し、参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0079】比較例28重畳粘着層を参考例4の粘着剤Dで厚さ12μmの内側粘着層を形成し、参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0080】比較例29重畳粘着層を参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例3の粘着剤Cで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0081】比較例30重畳粘着層を参考例2の粘着剤Bで厚さ3μmの内側粘着層を形成し、参考例4の粘着剤Dで厚さ12μmの外側粘着層を形成したほかは実施例1に準じて焼成パターン形成用シートと焼成用のラベルを得た。
【0082】評価試験実施例、比較例で得た焼成用のラベルよりセパレータを剥がしてその粘着層を介し仮着する方式で下記の特性を調べた。
【0083】仮着性表面粗さ:Raが0.1mmのガラス梨地面に圧着し、その密着性を調べて、強固に密着している場合を良好、簡単に剥がれる場合を不良として判定した。
【0084】耐水洗性スライドガラスに仮着し、10分間放置後、室温の水中に2時間浸漬して取出し、ラベルの密着性を調べて、強固に密着している場合を良好、簡単に剥がれる場合を不良として判定した。
【0085】焼成固着性スライドガラスに仮着し、大気中で室温から昇温速度10℃/分にて440℃に昇温し、その温度に12分間維持後、降温速度10℃/分にて室温まで冷却する条件で焼成処理し、その焼成ラベルの固着性を調べて、強固に固着している場合を良好、簡単に剥がれる場合を不良として判定した。
【0086】白色度(着色維持性)
前記の焼成処理で得られた、白色地の上に黒色のバーコードパターンを有する焼成ラベルにおける白色地の光反射率(633nm)を調べ、その反射率が60%以上の場合を良好、60%未満の場合を不良として判定した。
【0087】前記の結果を表1、表2、表3、表4、表5に示した。
【表1】


【0088】
【表2】


【0089】
【表3】


【0090】
【表4】


【0091】
【表5】


【0092】なお実施例の焼成ラベルにおいて、白色地の上に形成された黒色のバーコードパターンは鮮明性に優れるものであった。また比較例における焼成固着性と白色度の不良は、炭素やカーボンやタール等の炭素系残渣によるものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の断面図
【符号の説明】
1:セラミックグリーンシート層
2:粘着層
21:内側粘着層 22:外側粘着層
3:パターン層
4:被着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 焼成用のセラミックグリーンシート層と粘着層を少なくとも有してなり、その粘着層が低温分解性で焼成後における炭素系残渣が少ない内側層と、耐水洗性の外側層の重畳層からなることを特徴とする焼成パターン形成用シート。
【請求項2】 請求項1において、粘着層の内側層がメタクリル酸エステルを主体としたメタクリル酸系ポリマーを主成分とするガラス転移温度が30℃以下のもので厚さが3〜30μmであり、粘着層の外側層の厚さが5μm以下である焼成パターン形成用シート。
【請求項3】 請求項2において、メタクリル酸エステルの含有率が80重量%以上でガラス転移温度が−20℃以下であり、接着対象がセラミック系物品である焼成パターン形成用シート。

【図1】
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【公開番号】特開平10−207368
【公開日】平成10年(1998)8月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−19785
【出願日】平成9年(1997)1月17日
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)