説明

焼成炉

【目的】被焼成物の寸法等や焼成条件の変更に容易に対応することができる焼成炉の提供。
【構成】両端が開放された筒体からなる一対の炉体ユニット2,3を備え、これら炉体ユニット2,3の一端どうしを連結するとともに、他端それぞれに扉7を設けた焼成炉。なお、連結の際には、両炉体ユニット2,3内部の焼成室4,5を互いに連通させる延長焼成室22を備えた延長炉体21を間に入れてもよく、隔壁31を間に入れてもよい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、セラミック成形体を焼成する際に用いられる焼成炉に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、セラミック製品の焼成条件の確立等を目的にして行われるセラミック成形体の焼成実験には小型の実験炉が用いられている。そして、このような実験炉においては、焼成物の形状、もしくは焼成仕様に合わせて、その形状や仕様が変えられて用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このように実験炉には、次のような問題があった。すなわち、これらの実験炉は、生産炉ではないために、小型化や小スペース化を優先させる必要があり、大型(特に長尺物)の被焼成物の焼成が難しいという問題があった。
【0004】また、焼成条件に応じて実験炉の仕様(例えば、ヒータレイアウトや雰囲気ガスの給排気方法等)の変更が簡単には行えず、焼成条件をいろいろ変更して焼成実験を行う場合には、一台の実験炉を仕様を変えて繰り返し用いて焼成するか、複数台の実験炉を用意するか、もしくは多室式焼成炉と呼ばれる複数の焼成室を有する実験炉で焼成しなければならなかった。しかしながら、一台の実験炉で行う場合には、実験が長時間化するという問題があり、また、複数台の実験炉で行う場合には、小型化や小スペース化が図れなくなるという問題があり、さらに、多室式焼成炉で行う場合には、焼成炉の構造が複雑になるという問題があった。
【0005】本発明はこのように問題に鑑みてなされたものであって、被焼成物の寸法等や焼成条件の変更に容易に対応することができる焼成炉の提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的に鑑みてなされたものであって、両端が開放された筒体からなる一対の炉体ユニットを備え、これら炉体ユニットの一端どうしを連結するとともに、他端それぞれに扉を設けて焼成炉を構成した。
【0007】なお、連結の際には、前記両炉体ユニット内部の焼成室を互いに連通させる延長焼成室を備えた延長炉体を間に入れたり、隔壁を間に入れたりしてもよい。
【0008】
【作用】上記構成によれば、一対の炉体ユニットを連結するので、その分、炉体長が延びることになる。また、延長炉体を間に入れて炉体ユニットを連結すると、炉体長はより延びることになる。さらに、隔壁を間に入れて炉体ユニットを連結すると各炉体ユニットははそれぞれ個別に分離された焼成室が形成されることになる。
【0009】
【実施例】以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の第1実施例の断面図である。この焼成炉1は実験炉として用いられるものであって、断熱体からなる一対の炉体ユニット2,3を備えている。これら炉体ユニット2,3は左右両端が開放された筒体形状をしており、その内部には焼成室4.5が形成されている。この炉体ユニット2,3の一方の端部2a,3aには連結部6が配設されており、他方の端部2b,3bには扉7が形成されている。連結部6は炉体ユニット2,3の一端2a,3aに形成されたフランジ部8に連結ねじ部9を設けて構成されている。また、各炉体ユニット2,3には、例えばSiCからなるU字型ヒータ10が配設されている。これらU字型ヒータ10は各焼成室4,5の幅方向両端に立設されている。各焼成室4.5の底には炉床板11が配設されている。そして、両炉体ユニット2,3は連結部6を連結して互いに接合されている。このようにして構成することにより、焼成炉1は内部に互いに連通した焼成室4,5を備えるとともに、両端には扉7,7を配した構造となっている。さらに、炉体ユニット2,3の底面には車輪12が取り付けられており、この車輪12をレール13に載せることによって焼成炉1は架台14上に載置されている。なお、各焼成室4,5には図示しないが、雰囲気ガスの給排気孔が設けられている。
【0010】この焼成炉1は、上記したように、炉体ユニット2,3を連結して構成されており、連結した分、内部の焼成室4,5は延長され、長尺状の被焼成物であっても焼成することができるようになっている。なお、この焼成炉1では、各炉体ユニット2,3は車輪12をレール13に載せて架台14に配置されているため、炉体ユニット2,3の架台14上移動が比較的簡単に行えるようになっている。そのため、炉体ユニット2,3を架台14上で相対移動させて行う炉体ユニット2,3の連結作業が比較的容易に行えるようになっている。
【0011】図2は本発明の第2実施例の断面図である。この焼成炉20は一対の炉体ユニット2,3を備えているなど、基本的な構成は第1実施例と同様であり、同一ないし同様の部分には同一の符号を付している。
【0012】本実施例の焼成炉20は炉体ユニット2,3の間に延長炉体21を介在させたことが特徴となっている。この延長炉体21は炉体ユニット2,3と同様、断熱体からなっているとともに左右両端が開放された筒型形状をしており、その内部には延長焼成室22が形成されている。この延長焼成室22には、焼成室4,5と同様のU字型ヒータ10が配設されており、さらにはその両端には炉体ユニット2,3と同様の連結部6,6が形成されている。
【0013】そして、延長炉体20の一方の連結部6と一方の炉体ユニット2の連結部6とを連結し、さらには、延長炉体20の他方の連結部6と他方の炉体ユニット3の連結部6とを連結ねじ部8によって連結して焼成炉20は構成されている。この焼成炉20はこのように構成されることにより、両端に扉7を備え、かつ、その内部には焼成室4,5と延長焼成室22とが互いに連続して配置された焼成室が形成されることになる。そのため、延長焼成室22が追加された分、この焼成室は延長されることになり、さらに、長尺物の被焼成物の焼成が行えるようになっている。
【0014】図3は本発明の第3実施例の断面図である。この焼成炉30も一対の炉体ユニット2,3を備えているなど、基本的な構成は第1実施例と同様であり、同一ないし同様の部分には同一の符号を付している。
【0015】本実施例の焼成炉30は炉体ユニット2,3の間に隔壁31を介在させたことが特徴となっている。この隔壁31は炉体ユニット2,3と同じく断熱体からなっており、その両端には炉体ユニット2,3と同様の連結部6,6が設けられている。そして、一方の炉体ユニット2の連結部6と隔壁31の一面側の連結部6とを連結し、さらには、他方の炉体ユニット3の連結部6と隔壁31の他面側の連結部6とを連結して焼成炉30は構成されている。そのため、各炉体ユニット2,3の焼成室4,5は互いに分離されることになり、各焼成室4,5をそれぞれ違った焼成条件(焼成温度条件や焼成雰囲気条件)に設定することができるようになっている。
【0016】なお、本発明は上記各実施例だけではなく、焼成室内の温度分布を均一化するために、炉体ユニットの間に介在させる隔壁にヒータを取り付けるといった構造のものや、雰囲気ガスの給排気効率を調べるために、雰囲気ガスの給排気孔の大きさや数を違えた炉体ユニットどうしを連結するといった構造のものなど、他にいろいろな変形例が考えられることはいうまでもない。
【0017】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、一対の炉体ユニットを連結するので、その分、炉体長が延び、長尺物の被焼成物であっても、焼成することができるようになった。
【0018】また、延長炉体を間に入れて炉体ユニットを連結した場合には、炉体長をより延長することができ、その分さらに、長尺物の被焼成物を焼成することができるようになった。
【0019】さらに、隔壁を間に入れて炉体ユニットを連結した場合には、各炉体ユニットに形成される焼成室を個別に分離することができるようになり、一つの焼成炉を用いて違った焼成条件の焼成を行うことができるようになった。
【0020】このように、本発明の焼成炉によれば、被焼成物の寸法等や焼成条件の変更に容易に対応することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例の焼成炉の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の第2し実施例の焼成炉の構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施例の焼成炉の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
2,3 炉体ユニット
4,5 焼成室
7 扉
21 延長炉体
22 延長焼成室
31 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 両端が開放された筒体からなる一対の炉体ユニット(2,3)を備え、これら炉体ユニット(2,3)の一端どうしを連結するとともに、他端それぞれに扉(7,7)を設けたことを特徴とする焼成炉。
【請求項2】 前記両炉体ユニット(2,3)は延長炉体(21)を間に入れて連結されており、該延長炉体(21)はその内部に前記両炉体ユニット(2,3)内部の焼成室(4,5)を互いに連通させる延長焼成室(22)を備えていることを特徴とする請求項1記載の焼成炉。
【請求項3】 前記両炉体ユニット(2,3)は隔壁(31)を間に入れて連結されていることを特徴とする請求項1記載の焼成炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平6−82163
【公開日】平成6年(1994)3月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−234673
【出願日】平成4年(1992)9月2日
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)