説明

焼成用容器

【課題】
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって形成された容器本体の外周縁に弾性芯材を装着し、周壁を補強して変形し難くした焼成用容器を提供する。
【解決手段】
焼成用容器1の容器本体2は、底壁3と、底壁3の周縁に形成された周壁5とからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形されている。周壁5の外周縁7には、弾性芯材10が設けられている。弾性芯材10は、金属線であり、容器本体2の外周縁7に、折り返されて形成された折返部8内に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって形成された焼成用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって形成された焼成用容器は、底壁と、底壁の周縁に形成された周壁とからなる。また、周壁の上縁には、厚みの非常に薄く変形し易い箔で形成された周壁を補強するため、湾曲して折り曲げられたカール部が形成されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−202176号公報
【特許文献2】実開昭55−157888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の焼成用容器は、主にケーキ、菓子、パン等の焼成物を作るのに用いられるが、壁が厚みの非常に薄いアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔で形成されているので、変形し易く、形状の不均一な焼成物が焼き上がってしまうという問題点があった。また、手で容器本体を把持した場合、周壁が内側に変形するので、焼き上がった焼成物を容器本体から取り出す前に損傷してしまうという問題点があった。さらに、何度でも使用できるが、焼成後に焼成物を容器本体から取り出す際に周壁が塑性変形するので、その度に元の形状に戻さなければならず面倒であるという問題点があった。また上記したように、焼き上げる度に塑性変形するので、周壁自体が破損し易く、従って、繰り返して使用することが困難であり、使い捨て状態となって不経済であるという問題点があった。さらにまた、鍋焼きうどん等の汁付き食品にも利用されるが、手で容器本体を把持した際、周壁が内側に変形して中の汁が溢れ、服や床を汚してしまうという問題点もあった。
【0005】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって形成された容器本体の外周縁に弾性芯材を装着し、周壁を補強して変形し難くした焼成用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1記載の焼成用容器は、上記目的を達成するため、底壁と、底壁の周縁に形成された周壁とからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形された容器本体であって、周壁の外周縁に弾性芯材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本願請求項2記載の焼成用容器は、上記目的を達成するため、底壁と、底壁の周縁に形成された周壁と、周壁の上縁に形成されたフランジとからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形された容器本体であって、フランジの外周縁に弾性芯材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本願請求項3記載の焼成用容器は、上記目的を達成するため、弾性芯材は、金属線であることを特徴とする。
【0009】
本願請求項4記載の焼成用容器は、上記目的を達成するため、容器本体の外周縁には、折り返された折返部が形成され、当該折返部内に金属線が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る焼成用容器は、底壁と、底壁の周縁に形成された周壁とからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形された容器本体であって、周壁の外周縁に弾性芯材が設けられている。また、本願発明に係る焼成用容器は、底壁と、底壁の周縁に形成された周壁と、周壁の上縁に形成されたフランジとからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形された容器本体であって、フランジの外周縁に弾性芯材が設けられている。
【0011】
本願発明に係る焼成用容器は、壁が厚みの非常に薄いアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔で形成されているが、外周縁が弾性芯材で補強されているため、周壁が変形し難く、そのため、形状の均一なケーキ、菓子、パン等の焼成物を焼き上げることができるという効果がある。また、手で容器本体を把持した場合であっても、弾性芯材により周壁が内側に変形し難くなっているので、焼き上がった焼成物を容器本体から取り出す前に損傷してしまう可能性が少ないという効果がある。さらにまた、弾性芯材により壁が変形し難いので、焼成後に焼成物を容器本体から取り出す際に生じる塑性変形した壁を元の形状に戻すという面倒な作業から解放されるという効果がある。また弾性芯材により周壁が変形し難いので、周壁が破損し難く、何度でも繰り返して使用することが可能であり、経済的であるという効果がある。さらにまた、鍋焼きうどん等の汁付き食品にも利用でき、弾性芯材により周壁が変形し難いので、手で容器本体を把持した際、周壁が内側に変形して中の汁が溢れ、服や床を汚してしまうという虞が少ないという効果がある。
【0012】
本願発明に係る焼成用容器は、弾性芯材が金属線であるので、安価に製造することができるという効果がある。また、本願発明に係る焼成用容器は、容器本体の外周縁に、折り返された折返部が形成され、当該折返部内に金属線が設けられているので、金属線の装着が容易であり、しかも確実且つ強固に装着することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明に係る焼成用容器の一つの実施の形態を示す全体斜視図である。
【図2】本願発明に係る焼成用容器の他の実施の形態を示す全体斜視図である。
【図3】本願発明に係る焼成用容器の他の実施の形態を示す全体斜視図である。
【図4】本願発明に係る焼成用容器の一つの弾性芯材の説明図である。
【図5】本願発明に係る焼成用容器の他の弾性芯材の説明図である。
【図6】弾性芯材の一つの装着形態を示す説明図である。
【図7】弾性芯材の他の装着形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1、3に示すように、焼成用容器1,21の容器本体2,22は、底壁3,23と、底壁3,23の周縁に形成された周壁5,25とからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形されている。周壁5,25の外周縁7,27には、弾性芯材10,30が設けられている。
【0015】
図2に示すように、焼成用容器11の容器本体12は、底壁13と、底壁13の周縁に形成された周壁15と、周壁15の上縁に形成されたフランジ16とからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形されている。フランジ16の外周縁17には、弾性芯材10が設けられている。
【0016】
焼成用容器1,11,21は、壁が厚みの非常に薄いアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔で形成されているが、外周縁7,17,27が弾性芯材10,10,30で補強されているため、周壁5,15,25が変形し難く、そのため、形状の均一なケーキ、菓子、パン等の焼成物を焼き上げることができる。また、手で容器本体2,12,22を把持した場合であっても、弾性芯材10,30により周壁5,15,25が内側に変形し難くなっているので、焼き上がった焼成物を容器本体2,12,22から取り出す前に損傷してしまう可能性が少ない。さらにまた、弾性芯材10,30により周壁5,15,25が変形し難いので、焼成後に焼成物を容器本体2,12,22から取り出す際に生じる塑性変形した周壁5,15,25を元の形状に戻すという面倒な作業から解放される。また弾性芯材10,30により周壁5,15,25が変形し難いので、周壁5,15,25が破損し難く、何度でも繰り返して使用することが可能であり、経済的である。さらにまた、鍋焼きうどん等の汁付き食品にも利用でき、弾性芯材10,30により周壁5,15,25が変形し難いので、手で容器本体2,12,22を把持した際、周壁5,15,25が内側に変形して中の汁が溢れ、服や床を汚してしまうという虞が少ない。
【0017】
図4,5に示すように、上記弾性芯材10,30は、金属線であることが望ましい。図6,7にも示すように、上記焼成用容器1,11,21は、容器本体2,12,22の外周縁7,17,27に、折り返された折返部8,18,28が形成され、当該折返部8,18,28内に金属線10,10,30が設けられている。
【0018】
焼成用容器1,11,21は、弾性芯材10,30が金属線であるので、安価に製造することができる。また、焼成用容器1,11,21は、折返部8,18,28内に金属線10,10,30が設けられているので、金属線10,10,30の装着が容易であり、しかも確実且つ強固に装着することができる。
【0019】
さらに、焼成用容器について詳細に説明する。図1に示すように、焼成用容器1の容器本体2は、底壁3と、底壁3の周縁に形成された周壁5とからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形されている。容器本体2の周壁5の上端縁(外周縁)7には、折り返された折返部8が形成されている。折返部8内には、弾性芯材として金属線10が設けられている。金属線10は、強度、耐久性、弾性復元力等の観点から、図4(a)に示すように、無端リング状のピアノ線、又は、図4(b)に示すように、所定箇所に切り欠き部10aが形成されたリング状のピアノ線であることが望ましい。
【0020】
図6に示すように、折返部8は、少なくも4種類ある。図6(a)に示すように、折返部8aは、上端縁7の外側に湾曲して折り返され、内部に金属線10が保持される。また、図6(b)に示すように、折返部8bは、カール部9を備え、上端縁7の外側に湾曲して折り返され、内部に金属線10が保持される。さらに、図6(c)に示すように、折返部8cは、上端縁7の内側に湾曲して折り返され、内部に金属線10が保持される。さらにまた、図6(d)に示すように、折返部8dは、カール部9を備え、上端縁7の内側に湾曲して折り返され、内部に金属線10が保持される。折返部8(8a〜8d)は、金属製なので周壁5に密着し、金属線10を保持する力が強い。図1に示す焼成用容器1の折返部8は、図6(a)に示す折返部8aと略同じ構成のものである。
【0021】
図2に示すように、焼成用容器11の容器本体12は、底壁13と、底壁13の周縁に形成された周壁15と、周壁15の上縁に形成されたフランジ16とからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形されている。フランジ16の外周縁17には、折り返された折返部18が形成されている。折返部18内には、弾性芯材として前記した金属線10が設けられている。
【0022】
図7に示すように、折返部18は、少なくも4種類ある。図7(a)に示すように、折返部18aは、外周縁17の下側に湾曲して折り返され、内部に金属線10が保持される。また、図7(b)に示すように、折返部18bは、カール部19を備え、外周縁17の下側に湾曲して折り返され、内部に金属線10が保持される。さらに、図7(c)に示すように、折返部18cは、外周縁17の上側に湾曲して折り返され、内部に金属線10が保持される。さらにまた、図7(d)に示すように、折返部18dは、カール部19を備え、外周縁17の上側に湾曲して折り返され、内部に金属線10が保持される。折返部18(18a〜18d)は、金属製なのでフランジ16に密着し、金属線10を保持する力が強い。図2に示す焼成用容器11の折返部18は、図7(c)に示す折返部18cと略同じ構成のものである。
【0023】
上記実施の形態は、容器本体2,12を円盤状に形成したが、容器本体22を矩形箱状に形成しても構わない。図3に示すように、焼成用容器21の容器本体22は、底壁23と、底壁23の周縁に形成された周壁25とからなり、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって一体成形されている。周壁25は、底壁23の前縁に形成された前壁25aと、底壁23の後縁に形成された後壁25bと、底壁23の右縁に形成された右壁25cと、底壁23の左縁に形成された左壁25dとからなる。周壁25の上端縁(外周縁)27には、折り返された折返部28が形成されている。即ち、容器本体22の前壁25a、後壁25b、右壁25c、左壁25dの上端縁(外周縁)27a〜27dには、折り返された折返部28a〜28dが形成されている。折返部28a〜28d内には、弾性芯材として金属線30が設けられている。金属線30は、強度、耐久性、弾性復元力等の観点から、図5(a)に示すように、無端矩形状のピアノ線、又は、図5(b)に示すように、所定箇所に切り欠き部30aが形成された矩形状のピアノ線であることが望ましい。
【0024】
折返部28a〜28dは、前述したように、少なくも4種類の折り返す形態があり、どのような形態を採用しても構わない。本実施の形態では、折返部28a〜28dは、上端縁27a〜27dの外側に湾曲して折り返され、内部に金属線30が保持されている。折返部28a〜28dは、金属製なので前壁25a、後壁25b、右壁25c、左壁25dに密着し、金属線10を確実に保持する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本願発明は、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって形成された焼成用容器に利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 焼成用容器
2 容器本体
3 底壁
5 周壁
7 外周縁(上端縁)
8 折返部
8a 折返部
8b 折返部
8c 折返部
8d 折返部
9 カール部
10 弾性芯材(金属線)
10a 切り欠き部
11 焼成用容器
12 容器本体
13 底壁
15 周壁
16 フランジ
17 外周縁
18 折返部
18a 折返部
18b 折返部
18c 折返部
18d 折返部
19 カール部
21 焼成用容器
22 容器本体
23 底壁
25 周壁
25a 前壁
25b 後壁
25c 右壁
25d 左壁
27 上端縁(外周縁)
27a 上端縁(外周縁)
27b 上端縁(外周縁)
27c 上端縁(外周縁)
27d 上端縁(外周縁)
28 折返部
28a 折返部
28b 折返部
28c 折返部
28d 折返部
30 弾性芯材(金属線)
30a 切り欠き部






【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、
底壁の周縁に形成された周壁とからなり、
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形された容器本体であって、
周壁の外周縁に弾性芯材が設けられていることを特徴とする焼成用容器。
【請求項2】
底壁と、
底壁の周縁に形成された周壁と、
周壁の上縁に形成されたフランジとからなり、
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔によって成形された容器本体であって、
フランジの外周縁に弾性芯材が設けられていることを特徴とする焼成用容器。
【請求項3】
弾性芯材は、金属線であることを特徴とする請求項1又は2記載の焼成用容器。
【請求項4】
容器本体の外周縁には、折り返された折返部が形成され、当該折返部内に金属線が設けられていることを特徴とする請求項3記載の焼成用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−83(P2012−83A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140702(P2010−140702)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(505386096)小野工芸株式会社 (9)