説明

煙突内部の調査装置

【課題】煙突が高温のままでも、煙突の内壁面を計測することで、煙突の劣化状態を容易に且つ精度良く調査できる煙突内部の調査装置を提供する。
【解決手段】計測器14を設置した計測室15を煙突11の内部に吊り下げて、耐熱ガラス17を通して計測器14により煙突11の上端部分の内壁面を計測することで、煙突11の劣化状態を調査する調査装置であって、内側筒状体18及び外側筒状体19からなり、重なり長さを変化させることで上下に伸縮可能な二重構造の伸縮筒状体20と、計測室15とを含んで構成される。外側筒状体19を内側筒状体18に対して上下にスライド移動させて、計測室15を昇降させると共に、送風開口24を介して送り出された送風を、ワイヤ13が配設された伸縮筒状体20の中空内部と、通風孔25及び排風孔27を介して計測室15の中空内部とを通過させながら、計測器14によって煙突11の内壁面を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突内部の調査装置に関し、特に、計測器を設置した計測室を煙突の内部に昇降可能に吊り下げて、煙突の内壁面を計測又は撮影することで、煙突の劣化状態を管理できるようにする煙突の劣化管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば廃棄物処分場に設けられた焼却炉や、製鉄所や精錬所などの各種の工場に設けられた高炉やコークス炉等は、煙突と連通されており、これらの施設や工場において様々な処理工程で生じた高温の排ガスや排熱等は、煙突から大気に排出されるようになっている。したがって、煙突は、内部が高温に曝されることから、長期間に亘って使用され続けると、例えば内壁面を構成する耐火レンガが剥落したり目地に亀裂が生じるなどして、劣化が進行することになる。このため、煙突の内壁面の劣化状態を調査して、必要に応じて煙突の改修や改築を行う必要がある。
【0003】
このようなことから、ビデオカメラにより煙突の内部を撮影し、その映像によって煙突の内壁面の劣化状態を調査できるようにした、煙突内部の調査装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1の調査装置は、施設や工場の稼動を一旦停止し、煙突を十分に冷却させた後に、ビデオカメラを煙突の内部に吊り降ろして撮影を行うものであるが、煙突を十分に冷却させるために長時間を要すると、施設や工場の稼動に影響を及ぼすことから、これらの稼動を長時間停止させることなく、高熱状態のまま煙突の内部を調査できるようにした、煙突内部の診断装置も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−294243号公報
【特許文献2】特開2010−236265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の煙突内部の診断装置は、例えば焼却施設において、例えば150℃程度の高温のままの煙突や、150℃程度の高温の排ガス等が流通している使用中の煙突に対しても、テレビカメラ等をドライアイスを用いて冷却することで、煙突の内部の調査を行うことが可能であるが、例えば製鉄所や精錬所において、例えば6時間以上の長時間、停止しておくと炉が傷んでしまうおそれのある高炉やコークス炉等と連通していて、例えば200℃程度の高温の状態で内部の調査を行う必要がある煙突に対しては、ドライアイスを用いただけでは、テレビカメラ等の計測器を高温に曝されないようにすることが困難になって、調査を行うことができなくなることが考えられる。このため、例えば200℃程度の高温の状態でも、煙突内部の調査を行うことができるようにする新たな技術の開発が望まれている。
【0006】
また、ビデオカメラやテレビカメラ等の計測器を、例えば吊下げ用重機から煙突の内部に昇降可能に吊り下げるためのワイヤは、高温に曝されると伸びることで、煙突の上下方向の計測誤差が生じることになりやすいので、ワイヤが高温に曝されないようにすることも重要である。
【0007】
本発明は、施設や工場の稼動を長時間停止することなく、例えば200℃程度の高温のままでも、煙突の内壁面を計測又は撮影することで煙突の劣化状態を容易に調査することができると共に、ワイヤが高温に曝されないようにして、煙突の劣化状態を精度良く調査することのできる煙突内部の調査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、計測器を設置した計測室を、煙突の上端開口を介して煙突の内部に昇降可能に吊り下げて、前記計測室の周壁部の耐熱ガラスを通して前記計測器により前記煙突の内壁面を計測又は撮影することで、前記煙突の劣化状態を調査できるようにする煙突内部の調査装置であって、内側筒状体及び外側筒状体を備え、重なり長さを変化させることで上下に伸縮可能な少なくとも二重構造の伸縮筒状体と、前記計測室とを含んで構成され、前記伸縮筒状体の前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか一方の下端部に、前記計測室の天井部が一体として接合されていると共に、他方の上端部を覆う天面板の中央部に形成されたワイヤ挿通孔を介して、吊下げ用のワイヤが前記伸縮筒状体の中空内部に導入され、導入された前記ワイヤの下端部が前記計測室の天井部に連結されており、前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか他方の上端部分に、送風装置からの送風を前記伸縮筒状体の中空内部に送り出す送風開口が形成されていると共に、前記計測室の天井部には通風孔が、前記計測室の底部には排風孔が各々形成されており、前記ワイヤの繰り出し長さを調整することで、前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか一方を、他方に対して上下にスライド移動させて、前記計測室を前記煙突の内部で昇降させると共に、前記送風開口を介して前記送風装置から送り出された送風を、前記ワイヤが配設された前記伸縮筒状体の中空内部と、前記通風孔及び前記排風孔を介して前記計測室の中空内部とを通過させながら、前記計測器によって前記煙突の内壁面を計測又は撮影する煙突内部の調査装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明の煙突内部の調査装置は、前記計測室が下端部に接合されている前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか一方が、前記外側筒状体となっており、該外側筒状体の外周面を覆って、断熱材が巻き付けられていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の煙突内部の調査装置は、吊下げ用重機のブームの先端から前記煙突の内部に昇降可能に吊り下げられており、前記送風開口が上端部分に形成されている前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか他方の上端が、前記ブームの先端に固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の煙突内部の調査装置によれば、施設や工場の稼動を長時間停止することなく、例えば200℃程度の高温のままでも、煙突の内壁面を計測又は撮影することで煙突の劣化状態を容易に調査することができると共に、ワイヤが高温に曝されないようにして、煙突の劣化状態を精度良く調査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る煙突内部の調査装置によって煙突の内部を調査する状況を説明する、煙突の内部を断面で示す略示側面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る煙突内部の調査装置の構成を説明する略示断面図である。
【図3】煙突内部の調査装置の好ましい他の形態を例示する略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2に示す本発明の好ましい一実施形態に係る煙突内部の調査装置10は、例えば製鉄所や精錬所において、高炉やコークス炉と連通して設けられた煙突11の内部を調査することによって、煙突11の特に上端部分の内壁面の劣化状態を管理するための装置として採用されたものである。
【0014】
ここで、煙突11は、高炉やコークス炉から送られてくる例えば200℃以上の高温の排ガスや排熱等を、上端開口11aから大気に排出するようになっており、内部が高温に曝されることで、長期間に亘って使用され続けると、特に排出された排ガスや排熱等が大気によって急激に冷されることになる上端開口11aと近接する上端部分において、例えば内壁面を構成する耐火レンガが剥落したり目地に亀裂が生じるなどして、劣化が進行し易くなる。このため、煙突11は、このような内壁面の劣化状態を適切に調査及び管理して、必要に応じて改修や改築を行う必要がある。
【0015】
一方、例えば高炉やコークス炉と連通する煙突11は、これらの高炉やコークス炉は、例えば6時間以上の長時間に亘って稼動を停止すると、炉が傷んでしまうので、煙突11が十分に冷却していなくても、例えば200℃程度の温度のまま、煙突11の内部を調査する必要がある。本実施形態の調査装置10は、このような高温の煙突11に対しても、例えば吊下げ用重機のブーム12の先端部から、ワイヤ13によって上端開口11aを介して計測器14を煙突11の内部に吊り下げて、計測器14やワイヤ13を高温に曝すことなく、計測器14によって、煙突11aの特に上端部分の内壁面の劣化状態を、容易に且つ精度良く管理できるようにするものである。
【0016】
そして、本実施形態の煙突内部の調査装置10は、計測器14を設置した計測室15を、好ましくは吊下げ用重機のブーム12の先端から煙突11の上端開口11aを介して煙突11の内部に昇降可能に吊り下げて、計測室15の周壁部16を構成する耐熱ガラス17を通して、計測器14により煙突11の上端部分の内壁面を計測又は撮影することで、煙突11の劣化状態を調査できるようにする調査装置であって、内側筒状体18及び外側筒状体19を備え、重なり長さを変化させることで上下に伸縮可能な少なくとも二重構造(本実施形態では二重構造)の伸縮筒状体20と、計測室15とを含んで構成される。
【0017】
伸縮筒状体20の内側筒状体18又は外側筒状体19のいずれか一方の下端部に、計測室15の天井部21が一体として接合されていると共に、他方の上端部を覆う天面板22の中央部に形成されたワイヤ挿通孔23を介して、吊下げ用重機のワイヤ13が伸縮筒状体20の中空内部に導入され、導入されたワイヤ13の下端部が計測室15の天井部21に連結されており、内側筒状体18又は外側筒状体19のいずれか他方の上端部分に、送風装置(図示せず)からの送風を伸縮筒状体20の中空内部に送り出す送風開口24が形成されていると共に、計測室13の天井部21には通風孔25a,25bが、計測室16の底部26には排風孔27が各々形成されている。
【0018】
ブーム12の先端からのワイヤ13の繰り出し長さを調整することで、内側筒状体18又は外側筒状体19のいずれか一方を、他方に対して上下にスライド移動させて、計測室15を煙突の内部で昇降させると共に、送風開口24を介して送風装置から送り出された送風を、ワイヤ13が配設された伸縮筒状体20の中空内部と、通風孔25a,25b及び排風孔27を介して計測室15の中空内部とを通過させながら、計測器14によって煙突11の上端部分の内壁面を計測又は撮影するようになっている。
【0019】
また、本実施形態の煙突内部の調査装置10では、計測室15が下端部に一体として接合されている内側筒状体18又は外側筒状体19のいずれか一方が、外側筒状体19となっており、この外側筒状体19の外周面を覆って、断熱材28が巻き付けられている。
【0020】
さらに、本実施形態の煙突内部の調査装置10では、送風開口24が上端部分に形成されている内側筒状体18又は外側筒状体19のいずれか他方が、内側筒状体18となっており、この内側筒状体18の上端が、吊下げ用重機のブーム12の先端に固定されている。
【0021】
本実施形態では、計測器14を設置した計測室15を煙突11の内部に吊り下げるための吊下げ用重機としては、レッカー等の、好ましくは伸縮可能なブーム12を備える公知の各種の吊下げ用重機を使用することができる。吊下げ用重機のブーム12の先端には、滑車部29が設けられている。ワイヤ13は、滑車部29に巻き付けられて、伸縮筒状体20の外側筒状体19及び計測室15を一体として吊り下げることができるようになっている。また、吊下げ用重機の操作室からの操作によって、ワイヤ13を繰り出したり巻き上げたりすることによって、外側筒状体19及び計測室15を、内側筒状体18に対して上下にスライド移動させることができるようになっている。さらに、本実施形態では、ブーム12に支持されて、内側筒状体18の上端部分に設けられた送風開口24と、送風装置(図示せず)とを連通する送風配管30が、当該ブーム12に沿って配設されている。
【0022】
二重構造の伸縮筒状体20を構成する内側筒状体18及び外側筒状体19は、本実施形態では、例えば直径が400mm程度、長さが5〜10mm程度の大きさの、鋼製の中空の円筒体からなる。内側筒状体18の外径は、外側筒状体19の内径よりも僅かに小さくなっている。これによって、外側筒状体19は、これの内周面に沿って内側筒状体18を摺動させながら、内側筒状体18に対して上下にスライド移動できるようになっている。また、内側筒状体18と外側筒状体19との重なり長さを調整することで、伸縮筒状体20の全体の長さを伸縮できるようになっている。
【0023】
本実施形態では、内側筒状体18の上端開口は、天面板22によって覆われて閉塞されており、この天面板22を介して、内側筒状体18が、例えば溶接等によってブーム12の先端に固定されている。なお、内側筒状体18は、ブーム12の先端に固定しておく必要は必ずしも無く、ブーム12に設けられている補助ワイヤや補助滑車部を介して、ブーム12の先端から吊り下げた状態とすることもできる。
【0024】
また、内側筒状体18の上端開口を覆う天面板22の中央部分には、ワイヤ挿通孔23が開口形成されている。このワイヤ挿通孔23を介して、ブーム12の滑車部29に巻き付けられたワイヤ13が、伸縮筒状体20の中空内部に導入されるようになっている。さらに、内側筒状体18の上端部分の側面には、送風開口24が設けられている。この送風開口24に、一端部が送風装置と接続された送風配管30の他端部が接続されることで、送風開口24を送風装置と連通させて、送風装置から送り出される、好ましくは冷却された送風を、送風開口24から伸縮筒状体20の中空内部に吹き出させることができるようになっている。
【0025】
なお、送風装置から送り出される送風は、例えばドライアイス等を用いることで、煙突11の内部の温度に応じて、所望の低温に冷却された送風となるように容易に調整することができる。
【0026】
本実施形態では、外側筒状体19の下端開口は、底面板31によって覆われて閉塞されている。本実施形態では、外側筒状体19の底面板31は、計測室15の天面板32と共に、計測室15の二重構造の天井部21を形成している。計測室15の二重構造の天井部21の上面である、外側筒状体19の底面板31の上面には、これの中央部分から上方に一体として突出して、ワイヤ係着部33が設けられている。このワイヤ係着部32に、伸縮筒状体20の中空内部に導入されたワイヤ13の端部が係着されることで、ワイヤ13によって、計測室15と共に外側筒状体19を、ブーム12から昇降可能に吊り下げることができるようになっている。外側筒状体19の底面板31には、計測室13の天面板32に設けられた下側通風孔25bと対応する位置に、上側通風孔25aが開口形成されている。
【0027】
また、本実施形態では、外側筒状体19の外周面を覆って、断熱材28が巻き付けられている。断熱材28としては、例えばロックウール等の公知の各種の断熱材を用いることができる。外側筒状体19の外周面に断熱材28が巻き付けられていることにより、外側筒状体19の内部が高温に曝されるのを、さらに効果的に回避することが可能になる。外側筒状体19の下端部には、計測室15が、例えば溶接等によって一体として接合されて取り付けられている。
【0028】
計測室15は、煙突11の内壁面を計測したり撮影したりすることによって、その劣化状態を調査したり管理したりすることが可能な機能を備える計測器14を、当該計測器14が高温に曝されるのを回避しつつ稼動制御することが可能な状態で収容する部分であって、鋼製の円盤形状の天面板32と、鋼製の円盤形状の底部26と、天面板32及び底部26によって上下が閉塞された、耐熱ガラス17による円筒形状の周壁部16とを含んで構成される。天面板32は、上述のように、外側筒状体19の底面板31と共に、計測室15の二重構造の天井部21を形成している。
【0029】
本実施形態では、計測室15の天面板32の上面から上方に突出して、円環状の接合リブ34が設けられている。この接合リブ34を介して、天面板32を溶接等によって外側筒状体19の底面板31に下方から接合することによって、計測室15が、外側筒状体19の下端部に一体として取り付けられている。また、天面板32には、円環状の接合リブ34によって周囲を囲まれる部分に、外側筒状体19の底面板31に設けられた上側通風孔25aと対応させて、下側通風孔25bが開口形成されている。一方、計測室15の底部には、送風開口24から吹き出された後に、上側通風孔25a及び下側通風孔25bを介して伸縮筒状体20の中空内部や計測室15の中空内部を通過した送風を、煙突11の内部に排出させるための、排風孔27が開口形成されている。
【0030】
本実施形態では、計測室15の周壁部16は、その全周が、耐熱ガラス17によって構成されている。耐熱ガラス17としては、例えば500〜600℃程度の高温に曝されても、その形状や物性を変化させない機能を備える、公知の各種の透明な耐熱ガラス17を用いることができる。耐熱ガラス17は、断熱機能に優れたものを用いることが好ましい。耐熱ガラス17は、計測室15の周壁部16の全体を形成するように設ける必要は必ずしもなく、計測室15の内部に設置される計測器14の種類によっては、当該計測器14によって煙突11の内壁面を計測したり撮影したりするのに必要な部分にのみ、例えば周壁部16の開口窓に嵌め込むようにして設けることもできる。
【0031】
本実施形態では、計測室15の内部に設置される計測器14としては、例えば測定対象物にターゲットがなくても計測できる機能を備えるノンプリズム式の測距器を、水平方向に360度回転させることが可能な、トータルステーションとして公知の各種の計測器を使用することができる。具体的には、1点ごとに座標値を読み取るのではなく、対象物を面的に計測して大量の測量点を取得することが可能であり、且つ短時間で計測することが可能な、商品名「Trimble GX 3Dスキャナ」(株式会社ニコン・トリンブル製)を使用することができる。計測器14は、公知の各種の固定手段によって、計測室15の内部に回転制御可能な状態で取り付ることができる。
【0032】
なお、計測室15の内部に設置される計測器14としては、上述の特許文献1や特許文献2と同様に、煙突11の内壁面を撮影することで調査することが可能な、ビデオカメラやテレビカメラ等の撮影機器を用いることもできる。また、計測室15には、計測器14を稼動させたり制御したりするのに必要な、バッテリー、照明器具、制御装置、配線類等の各種の機器を設けておくことができる。計測器14は、有線又は無線のネットワークを介して、遠隔操作や遠隔制御を可能とすることができる。
【0033】
上述の構成を備える本実施形態の煙突内部の調査装置10によれば、例えば吊下げ用重機やブーム12を駆動制御して、例えば伸縮筒状体20を収縮させた状態で煙突11の上端部にセットした後に、ワイヤ13を繰り出して伸縮筒状体20を伸長させることで、計測室15を煙突11の内部で所定の速度で吊り降ろしながら、計測器14によって、煙突11の上端部分の内壁面の形状を計測する(図1参照)。計測された煙突11の内壁面のデータは、例えば有線又は無線のネットワークを介してコンピュータ等に送られて、煙突11の劣化状態が管理される。
【0034】
そして、本実施形態の煙突内部の調査装置10によれば、施設や工場の稼動を長時間停止することなく、例えば200℃程度の高温のままでも、煙突の内壁面を計測又は撮影することで煙突の劣化状態を容易に調査することができると共に、ワイヤが高温に曝されないようにして、煙突の劣化状態を精度良く調査することができる。
【0035】
すなわち、本実施形態によれば、調査装置10は、内側筒状体18及び外側筒状体19の重なり長さを変化させることで上下に伸縮可能な二重構造の伸縮筒状体20と、計測器14を設置した計測室15とを含んで構成され、外側筒状体19の下端部に計測室15が一体として接合されていると共に、内側筒状体18の天面板22のワイヤ挿通孔23から伸縮筒状体20の中空内部に導入されたワイヤ13が、計測室15の天井部21に連結されており、また送風装置からの送風を伸縮筒状体20の中空内部に送り出す送風開口24が、内側筒状体18の上端部分に形成されていると共に、計測室13の天井部21には通風孔25a,25bが、計測室16の底部26には排風孔27が各々形成されている。
【0036】
したがって、ワイヤ13の繰り出し長さを調整することで、外側筒状体19を内側筒状体18に対して上下にスライド移動させて計測室15を昇降させることが可能になると共に、送風開口24を介して送風装置から送り出された、好ましくは所望の低温に冷却された送風を、ワイヤ13が配設された伸縮筒状体20の中空内部と、通風孔25a,25b及び排風孔27を介して計測室15の中空内部とを通過させながら、計測器14によって煙突11の上端部分の内壁面を計測することが可能なので、送風装置から好ましくは適度の低温に冷却された送風を、伸縮筒状体20の中空内部に送り続けることによって、伸縮筒状体20の中空内部や計測室15の中空内部が高温に曝されることになるを効果的に抑制して、煙突11の内部が高温のままでも、計測器14によって煙突11の内壁面の劣化状態を支障なく計測して調査することが可能になる。
【0037】
また、本実施形態によれば、計測室15を吊り下げるワイヤ13が、送風が通過する伸縮筒状体20の中空内部に配置されることで、高温に曝されないようになっているので、ワイヤ13が高温なって伸びるのを回避して、煙突11の上下方向に対して精度良い劣化状態の調査を行うことが可能になる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の煙突内部の調査装置は、200℃程度の高温に曝される煙突の他、200℃程度以下又は200℃程度以上の高温に曝される煙突に対しても、内壁面の劣化状態の調査を行うために用いることができる。また、計測室が下端部に接合されている内側筒状体又は外側筒状体のいずれか一方が、内側筒状体であっても良く、送風開口が上端部分に形成されている内側筒状体又は外側筒状体がのいずれか他方が、外側筒状体であっても良い。さらに、外側筒状体の外周面を覆って断熱材が巻き付けられている必要は必ずしもない。内側筒状体や外側筒状体は、中空の円筒体である必要は必ずしも無く、四角形の断面形状を有する筒状体等、その他の種々の断面形状を備える筒状体であっても良い。
【0039】
また、本発明の調査装置の煙突内部への昇降可能な吊り下げは、吊下げ用重機のブームを用いて行う必要は必ずしもなく、吊下げ用の架台等、その他の公知の種々の装置や設備を用いて昇降可能に吊り下げることもできる。さらに、伸縮筒状体は、例えば図3に示すように、内側筒状体18と外側筒状体19との間に中間筒状体35を介在させて、三重以上の構造とすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
10 煙突の劣化管理装置
11 煙突
11a 上端開口
12 ブーム
13 ワイヤ
14 計測器
15 計測室
16 計測室の周壁部
17 耐熱ガラス
18 内側筒状体
19 外側筒状体
20 伸縮筒状体
21 計測室の天井部
22 内側筒状体の天面板
23 ワイヤ挿通孔
24 送風開口
25a 上側通風孔
25b 下側通風孔
26 計測室の底部
27 排風孔
28 断熱材
29 滑車部
30 送風配管
31 外側筒状体の底面板(計測室の天井部)
32 計測室の天面板(計測室の天井部)
33 ワイヤ係着部
34 接合リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測器を設置した計測室を、煙突の上端開口を介して煙突の内部に昇降可能に吊り下げて、前記計測室の周壁部の耐熱ガラスを通して前記計測器により前記煙突の内壁面を計測又は撮影することで、前記煙突の劣化状態を調査できるようにする煙突内部の調査装置であって、
内側筒状体及び外側筒状体を備え、重なり長さを変化させることで上下に伸縮可能な少なくとも二重構造の伸縮筒状体と、前記計測室とを含んで構成され、
前記伸縮筒状体の前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか一方の下端部に、前記計測室の天井部が一体として接合されていると共に、他方の上端部を覆う天面板の中央部に形成されたワイヤ挿通孔を介して、吊下げ用のワイヤが前記伸縮筒状体の中空内部に導入され、導入された前記ワイヤの下端部が前記計測室の天井部に連結されており、
前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか他方の上端部分に、送風装置からの送風を前記伸縮筒状体の中空内部に送り出す送風開口が形成されていると共に、前記計測室の天井部には通風孔が、前記計測室の底部には排風孔が各々形成されており、
前記ワイヤの繰り出し長さを調整することで、前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか一方を、他方に対して上下にスライド移動させて、前記計測室を前記煙突の内部で昇降させると共に、前記送風開口を介して前記送風装置から送り出された送風を、前記ワイヤが配設された前記伸縮筒状体の中空内部と、前記通風孔及び前記排風孔を介して前記計測室の中空内部とを通過させながら、前記計測器によって前記煙突の内壁面を計測又は撮影する煙突内部の調査装置。
【請求項2】
前記計測室が下端部に接合されている前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか一方が、前記外側筒状体となっており、該外側筒状体の外周面を覆って、断熱材が巻き付けられている請求項1記載の煙突内部の調査装置。
【請求項3】
吊下げ用重機のブームの先端から前記煙突の内部に昇降可能に吊り下げられており、前記送風開口が上端部分に形成されている前記内側筒状体又は前記外側筒状体のいずれか他方の上端が、前記ブームの先端に固定されている請求項1又は2記載の煙突内部の調査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−211476(P2012−211476A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77774(P2011−77774)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)