説明

煙突多筒用養生蓋構造

【課題】複数の煙突に選択的に蓋をして、操業停止中の煙突に雨水が浸入するのを防止することのできる煙突多筒用養生蓋構造を提供すること。
【解決手段】複数の煙突の排煙開口部を開閉可能に配設された煙突多筒用養生蓋構造であって、前記複数の煙突の中心から等距離に配設されたアーム機構と、前記アーム機構の先端に取り付けられ前記複数の煙突を選択的に閉じる蓋体とを備えるとともに、前記アーム機構は、基床上に立設された支柱と、前記支柱に揺動及び回動可能に支承され、前記蓋体を着脱自在に保持するアームと、前記アームの一端に取り付けられ、前記蓋体とほぼ釣り合うカウンターバランスと、前記アームの先端を昇降させるウインチとを備えたので、焼却炉等の操業休止時に作業者が一人で使用していない煙突に蓋をして、雨水等の浸入を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば焼却炉等から排出される排気を大気中に拡散するための煙突の養生蓋構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に焼却炉等の煙突は、複数設置されたゴミ焼却炉を一定の操業ローテーションに従って操業されている。この時、操業を停止している煙突から雨水が浸入して、錆や腐食が発生するおそれがあった。
そこで、操業を停止している煙突の頂部に手作業でキャップを取り付けたり、引用文献1に示すように煙突を水平方向に開閉するシャッター状の蓋で覆う構成や平板状の蓋を開閉させる構成のものが提案されている。
【特許文献1】特開平10−160154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような構成の従来の煙突多筒用養生蓋構造において、シャッター状の蓋をそれぞれの煙突に設置するのでは装置が複雑で故障し易いとともに、装置が大掛かりとなる欠点があった。
また、手作業で蓋体の開閉を行うものにあっては、重量のある蓋体を複数の煙突に1人で取り付けたり、取り外す作業は困難であり、危険を伴う可能性があった。
【0004】
この発明は、上記に鑑み提案されたもので、作業者が一人で操業停止時に複数の煙突に選択的に蓋をして、雨水等の浸入を防止することにより、煙突内部の錆や腐食の発生を防止し、煙突中の酸化物が周囲に飛散するのを防止できる煙突多筒用養生蓋構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する為に、本発明の煙突多筒用養生蓋構造は、複数の煙突の排煙開口部を開閉可能に配設された煙突多筒用養生蓋構造であって、前記複数の煙突の中心から等距離に配設されたアーム機構と、前記アーム機構の先端に取り付けられ前記複数の煙突を選択的に閉じる蓋体とを備えるとともに、前記アーム機構は、基床上に立設された支柱と、前記支柱に揺動及び回動可能に支承され、前記蓋体を着脱自在に保持するアームと、前記アームの一端に取り付けられ、前記蓋体とほぼ釣り合うカウンターバランスと、前記アームの先端を昇降させるウインチとを備えたことを特徴としている。
【0006】
また、本発明において蓋体は、偏心した位置で前記アーム先端に連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明は上記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0008】
本発明では、複数の煙突の排煙開口部を開閉可能に配設された煙突多筒用養生蓋構造であって、前記複数の煙突の中心から等距離に配設されたアーム機構と、前記アーム機構の先端に取り付けられ前記複数の煙突を選択的に閉じる蓋体とを備えるとともに、前記アーム機構は、基床上に立設された支柱と、前記支柱に揺動及び回動可能に支承され、前記蓋体を着脱自在に保持するアームと、前記アームの一端に取り付けられ、前記蓋体とほぼ釣り合うカウンターバランスと、前記アームの先端を昇降させるウインチとを備えたので、操業を停止した煙突に選択的に養生蓋を閉じることができ、雨水等の浸入や煙突内部の錆を防止できる。また、従来の手作業で蓋体を操作する場合に比較して、安全に作業を行うことができる。更に、ウインチによって作業すれば、1人で開閉作業をすることができる。
【0009】
また、本発明において前記蓋体は、偏心した位置で前記アーム先端に連結されるので、閉じた際にアーム先端で蓋体を押さえるので、風等で不用意に開くのを防止することができる。特に、蓋体に設置された係止手段と反対側に偏心した位置でアームに取り付けられているので、蓋体が開き難い。また、ウインチによって、一人でも開閉操作を安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
煙突多筒用養生蓋構造であって、複数の煙突の中心から等距離に配設されたアーム機構とこのアーム機構の先端に取り付けられ、複数の煙突を選択的に閉じる蓋体とを備え、アーム機構は支柱と、支柱に揺動及び回動可能に支承され、蓋体を着脱自在に保持するアームと、蓋体とほぼ釣り合うカウンターバランスと、アームの先端を昇降させるウインチとを備えることにより、作業者が一人で複数の煙突を選択的に開閉操作するという目的が達成できる。
【実施例】
【0011】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係る煙突多筒用養生蓋構造における双方の煙突を開成した状態を示す斜視図、図2は本発明の煙突多筒用養生蓋構造における双方の煙突を開成した状態を示す側面図、図3は煙突を開成した状態を示す平面図である。ここで、煙突多筒用養生蓋構造10は、複数の煙突11の排煙開口部12を開閉可能に配設されたものであって、前記複数の煙突11の中心Cから等距離に配設されたアーム機構13と、前記アーム機構の先端に取り付けられ前記複数の煙突を選択的に閉じる蓋体14とを備えている。
【0012】
図3に示すように、本実施例では2本の煙突11の中心Cから等距離にアーム機構13が配設されており、1本のアームで双方の煙突に蓋体14を取り付けることができる。また、アーム機構13は、基床上に立設された支柱15と、この支柱15に揺動及び回動可能に支承され、前記蓋体14を着脱自在に保持するアーム16と、前記アーム16の一端に取り付けられ、前記蓋体14とほぼ釣り合うカウンターバランス17と、前記アーム16の先端を昇降させるウインチ18とを備えている。
【0013】
支柱15は、基床から立設されるとともに、サポート19によって壁面に支持されている。また、支柱15には、手動のウインチ18と旋回用ハンドル20が取り付けられており、基床に固定された基端部15aに対して回動可能に支承されている。ウインチ18は、ハンドル18aによってワイヤー21を弛めたり、巻き取ることにより、アーム16を揺動させることができる。旋回用ハンドル20は、棒状の腕が半径方向に90°間隔で突出しており、この腕を持って支柱15及びアーム16を旋回することができる。
【0014】
アーム16は、支点16aで支柱15の頂部に揺動可能に支承されるとともに、一端が支柱15に固定されたバネ22に蓋体14を取り付ける先端側が下降する方向に付勢されている。また、アーム16の基端側には、蓋体14とほぼ釣り合うカウンターバランス17が取り付けられている。カウンターバランス17の重量は、アームに対する支点16aの位置、及び蓋体14の重量によって決定される。更に、アーム16の基端側には、ワイヤー21の一端が固定されている。
【0015】
アーム16の先端側は、鉤形に折曲するとともに先端部には、蓋体14を取り付けるための取付片16bが形成されている。この取付片16bに係止ボルト23を挿通するためのボルト穴が形成されている(図6参照)。この取付片16bに蓋体14が係止ボルト23を介して揺動可能に連結されている。
【0016】
蓋体14は、煙突の排煙開口部12を覆う大きさで全体がほぼ円板状に形成されて、上端に吊り下げ用の突起24を有している。また、蓋体14の先端には、係止用突片25を有しており、煙突11側に形成された頂部ノズルタラップ26に形成された係止片27と係合する。係止用突片25と係止片27は、形成されたボルト穴に係止ボルトを挿通することにより固定する。更に、突起24は、吊り下げ用のボルト穴を有するとともに、図5に示すように中心CからXだけ係止用突片25と反対方向に偏心している。
【0017】
図7は、煙突多筒用養生蓋構造における外れ止め機構を示す要部平面図、図8は、その要部側面図である。外れ止め機構は、蓋体14の係止用突片25とは逆方向の下縁に外れ止めプレート28が形成されている。外れ止めプレート28は、蓋体14の装着時に煙突11の頂部近傍外縁に形成された突出部29に係合するように設置されている。
【0018】
次に、以上のように構成された煙突多筒用養生蓋構造の動作について説明する。先ず、双方の焼却炉等を操業する場合は、図1、2に示すように2本の煙突11とも開放しており、蓋体14はアーム機構13から外して基床上に載置されている。アーム機構13もアーム16を下げて、風等の影響を受けないようにしておく。
【0019】
次に、何れかの煙突11の操業を停止し、蓋体14を閉じる場合は、先ずアーム機構13のアーム16先端に蓋体14を取り付ける。蓋体14を取り付けた後、ウインチ18のハンドル18aを廻してアーム16を上昇させ、蓋体14が煙突11の上まで上昇させる。その後、旋回用ハンドル20を持って、蓋をする煙突の上に旋回させる(図3、4参照)。蓋体14が煙突の排煙開口部12の真上に来たら、係止用突片25と係止片27が一致するように下降し、外れ止めプレート28と突出部29を係合する。最後に、作業者は煙突11の頂部ノズルタラップ26を昇って、係止ボルトで係止用突片25と係止片27を固定する。この状態で、蓋体14は外れ止めプレート28及び係止用突片25、係止片27によって固定されるとともに、バネ22で下方に付勢されたアーム16で押さえられる。したがって、蓋体14を強固に固定することができ安全である。
【0020】
また、他の煙突11を覆う場合は、作業者は頂部ノズルタラップ26を昇って、係止用突片25及び係止片27を固定する係止ボルトを外した後、アーム機構13側に廻って、ウインチ18により吊り上げ、旋回用ハンドル20によって旋回させる。所定の煙突11の真上で、下降させ外れ止めプレート28を突出部29に係合した後、係止ボルトで係止用突片25及び係止片27を固定する。このようにして、所望の煙突11を蓋体14で覆い固定することができる。
【0021】
このように本発明の煙突多筒用養生蓋構造では、重量のある蓋体14であっても、ウインチ18を使用することにより、一人で容易に開閉作業をすることができる。また、複数の煙突の内で操業を停止している煙突のみに蓋をして雨水の浸入を防止し、煙突内部の錆を防止できる。また、煙突内の酸化物が周囲に飛散するのを防止できる。
【0022】
なお、以上の実施例では、煙突が2本の場合について説明したが、3本以上であっても同様に蓋体を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る煙突多筒用養生蓋構造における双方の煙突を開成した状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、同煙突多筒用養生蓋構造における双方の煙突を開成した状態を示す側面図である。
【図3】図3は、同煙突多筒用養生蓋構造における双方の煙突を開成した状態を示す平面図である。
【図4】図4は、同煙突多筒用養生蓋構造における閉成動作を示す側面図である。
【図5】図5は、同煙突多筒用養生蓋構造における一方の煙突を閉成した状態を示す側面図である。
【図6】図6は、同煙突多筒用養生蓋構造における一方の煙突を閉成した状態を示す斜視図である。
【図7】図7は、同煙突多筒用養生蓋構造における外れ止め機構を示す要部平面図である。
【図8】図8は、同煙突多筒用養生蓋構造における外れ止め機構を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 煙突多筒用養生蓋構造
11 煙突
12 排煙開口部
13 アーム機構
14 蓋体
15 支柱
15a 基端部
16 アーム
16a 支点
16b 取付片
17 カウンターバランス
18 ウインチ
18a ハンドル
19 サポート
20 旋回用ハンドル
21 ワイヤー
22 バネ
23 係止ボルト
24 突起
25 係止用突片
26 頂部ノズルタラップ
27 係止片
28 外れ止めプレート
29 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の煙突の排煙開口部を開閉可能に配設された煙突多筒用養生蓋構造であって、
前記複数の煙突の中心から等距離に配設されたアーム機構と、
前記アーム機構の先端に取り付けられ前記複数の煙突を選択的に閉じる蓋体とを備えるとともに、
前記アーム機構は、基床上に立設された支柱と、前記支柱に揺動及び回動可能に支承され、前記蓋体を着脱自在に保持するアームと、前記アームの一端に取り付けられ、前記蓋体とほぼ釣り合うカウンターバランスと、前記アームの先端を昇降させるウインチとを備えたことを特徴とする煙突多筒用養生蓋構造。
【請求項2】
前記蓋体は、偏心した位置で前記アーム先端に連結されることを特徴とする請求項1に記載の煙突多筒用養生蓋構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−187400(P2007−187400A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6933(P2006−6933)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(391039829)東洋テクノ株式会社 (7)