説明

照射野輪郭候補点正誤判定方法

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、被写体の放射線画像が記録された記録シートの読取りにより該記録シート上の各画素にそれぞれ対応する多数の画像データを得た後、これらの画像データに基づいて記録シート上に形成された放射線の照射野の輪郭上の点と考えられる輪郭候補点を求め、この輪郭候補点が上記輪郭上に位置する輪郭点であるか、または上記輪郭上にない誤検出点であるかを判定する照射野輪郭候補点正誤判定方法に関するものである。
(従来の技術)
記録された放射線画像を読み取って画像データを得、この画像データに適切な画像処理を施した後、画像を再生記録することは種々の分野で行なわれている。たとえば、後の画像処理に適合するように設計されたガンマ値の低いX線フィルムを用いてX線画像を記録し、このX線画像が記録されたフィルムからX線画像を読み取って電気信号に変換し、この電気信号(画像データ)に画像処理を施した後コピー写真等に可視像として再生することにより、コントラスト,シャープネス,粒状性等の画質性能の良好な再生画像を得ることのできるシステムが開発されている(特公昭61−5193号公報参照)。
また本願出願人により、放射線(X線,α線,β線,γ線,電子線,紫外線等)を照射するとこの放射線エネルギーの一部が蓄積され、その後可視光等の励起光を照射すると蓄積されたエネルギーに応じて輝尽発光を示す蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)を利用して、人体等の被写体の放射線画像を一旦シート状の蓄積性蛍光体に撮影記録し、この蓄積性蛍光体シートをレーザー光等の励起光で走査して輝尽発光光を生ぜしめ、得られた輝尽発光光を光電的に読み取って画像データを得、この画像データに基づき被写体の放射線画像を写真感光材料等の記録材料、CRT等に可視像として出力させる放射線画像記録再生システムがすでに提案されている(特開昭55−12429号,同56−11395号,同55−163472号,同56−104645号,同55−116340号等)。
このシステムは、従来の銀塩写真を用いる放射線写真システムと比較して極めて広い放射線露出域にわたって画像を記録しうるという実用的な利点を有している。すなわち、蓄積性蛍光体においては、放射線露光量に対して蓄積後に励起によって輝尽発光する発光光の光量が極めて広い範囲にわたって比例することが認められており、従って種々の撮影条件により放射線露光量がかなり大幅に変動しても、蓄積性蛍光体シートより放射される輝尽発光光の光量を読取ゲインを適当な値に設定して光電変換手段により読み取って電気信号に変換し、この電気信号を用いて写真感光材料等の記録材料、CRT等の表示装置に放射線画像を可視像として出力させることによって、放射線露光量の変動に影響されない放射線画像を得ることができる。
上記システムにおいて、蓄積性蛍光体シートに照射された放射線の線量等に応じて最適な読取条件で読み取って画像データを得る前に、予め低レベルの光ビームにより蓄積性蛍光体シートを走査してこのシートに記録された放射線画像の概略を読み取る先読みを行ない、この先読みにより得られた先読画像データを分析し、その後上記シートに上記先読みの際の光ビームよりも高レベルの光ビームを照射して走査し、この放射線画像に最適な読取条件で読み取って画像データを得る本読みを行なうように構成されたシステムもある(特開昭58−67240号,同58−67241号,同58−67242号等)。
ここで読取条件とは、読取りにおける輝尽発光光の光量と読取装置の出力との関係に影響を与える各種の条件を総称するものであり、例えば入出力の関係を定める読取ゲイン,スケールファクタあるいは、読取りにおける励起光のパワー等を意味するものである。
また、光ビームの高レベル/低レベルとは、それぞれ、上記シートの単位面積当りに照射される光ビームの強度の大/小、もしくは上記シートから発せられる輝尽発光光の強度が上記光ビームの波長に依存する(波長感度分布を有する)場合は、上記シートの単位面積当りに照射される光ビームの強度を上記波長感度で重みづけした後の重みづけ強度の大/小をいい、光ビームのレベルを変える方法としては、異なる波長の光ビームを用いる方法、レーザ光源等から発せられる光ビームの強度そのものを変える方法、光ビームの光路上にNDフィルター等を挿入,除去することにより光ビームの強度を変える方法、光ビームのビーム径を変えて走査密度を変える方法、走査速度を変える方法等、公知の種々の方法を用いることができる。
また、この先読みを行なうシステムか先読みを行なわないシステムかによらず、得られた画像データ(先読画像データを含む)を分析し、画像データに画像処理を施す際の最適な画像処理条件を決定するようにしたシステムもある。この画像データに基づいて最適な画像処理条件を決定する方法は、蓄積性蛍光体シートを用いるシステムに限られず、たとえば従来のX線フィルム等の記録シートに記録された放射線画像から画像データを得るシステムにも適用されている。
上記画像データ(先読画像データを含む)を分析して最適な読取条件、画像処理条件を求める方法は種々提案されているが、その方法のひとつとして、画像データのヒストグラムを作成する方法が知られている(たとえば、特願昭59−12658号)。画像データのヒストグラムを求めることにより、たとえば画像データの最大値,最小値や、頻度が最大となる点の画像データの値等を知ることができ、これらの各値から蓄積性蛍光体シート,X線フィルム等の記録シートに記録された放射線画像の特徴を把握することができる。そこでこのヒストグラムに基づいて最適な読取条件,画像処理条件を求めることにより、観察適正のすぐれた放射線画像を再生出力することが可能となる。
一方、記録シートに放射線画像を撮影記録するに際しては、被写体の観察に必要の無い部分に放射線を照射しないようにするため、あるいは観察に不要な部分に放射線を照射するとその部分から観察に必要な部分に散乱線が入り画質性能が低下するため、放射線が被写体の必要な部分および記録シートの一部にのみ照射されるように放射線の照射域を制限する照射野絞りを使用して撮影を行なうことも多い。
ところが、前述のようにして画像データを分析して読取条件,画像処理条件を求めるにあたって、分析に用いた画像データが、照射野絞りを用いて撮影した記録シートから得られた画像データである場合、この照射野の存在を無視して画像データを分析しても撮影記録された放射線画像が正しく把握されず、誤った読取条件、画像処理条件が求められ観察適正の優れた放射線画像が再生記録されない場合が生ずる。
これを解決するためには、読取条件,画像処理条件を求める前に、照射野を認識し、照射野内の画像データに基づいて読取条件,画像処理条件を求める必要がある。
照射野を認識する方法のうち、照射野が不規則な形状をしていても正確に照射野を認識することのできる汎用性のある方法としては、例えば、照射野内に含まれる所定の点とシート端部とを結ぶ放射状の複数の線分上に沿った各画素に対応する画像データに基づいて、照射野の輪郭上にあると考えられる輪郭点を上記各線分について求め、これらの輪郭点に沿った線で囲まれる領域を照射野と認識する方法が、本出願人により既に提案されている(特願昭62−93633号)。
(発明が解決しようとする課題)
上記のようにしてまず照射野を求め、その後求められた照射野内に対応する画像データを分析することにより、適切な読取条件,画像処理条件が求められる。
しかし、撮影の際に被写体以外の異物(たとえば放射線保護のための鉛プロテクターや被写体を固定するための固定具等)が被写体とともに撮影された場合や、放射線画像の一部に放射野の輪郭と類似した変化を示す部分が存在した場合等に、照射野を求める演算が有効に行なわれない場合があり、この場合には誤って認識した照射野内に対応する画像データに基づいて読取条件,画像処理条件が求められ、照射野を認識する演算を行なったにもかかわらず観察適正の優れた放射線画像が再生記録されない場合が生ずるという問題点がある。
本発明は、上記問題点に鑑み、照射野の輪郭上にあると考えられる輪郭候補点を一旦求めた後、求められた輪郭候補点が照射野の輪郭上にあるか否かを判定する照射野輪郭候補点正誤判定方法を提供することを目的とするものである。
(課題を解決するための手段)
本発明の照射野輪郭候補点正誤判定方法は、 被写体の放射線画像が記録された、蓄積性蛍光体シート,写真フィルム等記録シートの読取りにより該記録シート上の各画素に対応する多数の画像データを得た後、 記録シート上に形成された放射線の照射野に含まれる所定点と記録シートの端部とを結ぶ線分上の各画素にそれぞれ対応する画像データに基づいて、照射野の輪郭と上記線分との交叉点と考えられる輪郭候補点を求め、この輪郭候補点が求められたとき、上記所定点から離れる方向に輪郭候補点から延びる1つまたは複数の線分上の各画素にそれぞれ対応する画像データの特性値を各線分のそれぞれについて1つ求め、この特性値を所定値と比較し、該特性値と該所定値との大小に応じて輪郭候補点が、輪郭上に位置する輪郭点であるか、または輪郭上に位置しない誤検出点であるかを判定することを特徴とするものである。
本発明の好ましい実施態様においては、被写体の放射線画像が記録された記録シートの読取りは、記録シート上の各画素から得られた放射線画像を表わす光の光電的読取りによって行なわれるが、ここにおける上記「記録シート上の各画素から得られた放射線画像を表わす光」には、蓄積性蛍光体シートから発せられた輝尽発光光や、写真フィルムを透過し、または写真フィルムから反射した光等が含まれる。
また、上記所定点から離れる方向に輪郭候補点から延びる線分は、必ずしも上記所定点と輪郭候補点を結ぶ線分の延長である必要はない。
また、上記「画像データの特性値」は、後述するように、照射野の外側の領域では内側の領域と比較して、放射線の平均の照射量が低いこと、及び/又は画像が平坦であり変化が少ないこと、を利用して照射野の内外を区別する演算処理に基づく値を指し、具体的には、たとえば対応する線分上の各画素の画像データの平均値、メジアン値、最大値、(最大値+最小値)/2、分散値、該画像データを上記線分に沿って微分した微分値の絶対値の平均値、該微分値の分散値等をいう。また、上記「画像データ」は、放射線照射量と比例する画像データ、反比例する画像データ、放射線照射量の対数値と比例する画像データ、又は該対数値と反比例する画像データ等のいずれでもよい。
(作用)
記録シートの照射野の外側は、散乱放射線のみが照射された部分であるため、この領域から得られた画像データは、たとえばこの画像データが放射線照射量と比例する画像データ、または該照射野の対数値と比例する画像データである場合に画像データの値が小さく、また、各隣接した画素の画像データ同士に大きな変化がない(略一様である)という特徴を有する。また照射野内は放射線を積極的に照射した領域であるから、上記画像データの値は大きく、照射野の境界で急激に変化するという特徴を有する。したがって、一旦求められた輪郭候補点が照射野の輪郭上にある場合は、その点より外側においては上記画像データが所定値以上となることはなく、また、各隣接した画素の画像データ同士に大きな変化が生ずることはない。
本発明は上記観点からなされたものであり、照射野に含まれる上記所定点から離れる方向に輪郭候補点から延びる1つまたは複数の線分上の各画素にそれぞれ対応する画像データの特性値(たとえば画像データの平均値)を各線分のそれぞれについて1つ求め、この特性値を所定値と比較し、該特性値と該所定値との大小に応じて、輪郭候補点が、輪郭点であるかまたは誤検出点であるか(たとえば上記平均値が所定値以下のときは輪郭点、所定値以上のときは誤検出点等)を判定することにより、さらに正確に照射野を認識することができる。
一旦求められた輪郭候補点が誤検出点であると判定された場合、上記輪郭候補点より外側において他の輪郭候補点を求めてもよく、誤検出点であると判定された輪郭候補点に対応する線分は無視して、他の多数の線分上にある多数の輪郭候補点に基づいて、照射野を求めるようにしてもよい。
また、上記所定点から離れる方向に輪郭候補点から延びる線分は、1つでもよいが、該輪郭候補点から複数の方向に延びる複数の線分に沿って演算すると、たとえば各線分毎に判定結果が異なったときに多数決で判定する等、より正確な判定をすることができる。
(実 施 例)
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
第4図は、本発明の照射野輪郭候補点正誤判定方法の一例を用いた、放射線画像読取装置の一実施例を示した斜視図である。この実施例は蓄積性蛍光体シートを用い、先読みを行なうシステムである。
放射線画像が記録された蓄積性蛍光体シート11は、まず弱い光ビームで走査してこのシート11に蓄積された放射線エネルギーの一部のみを放出させて先読みを行なう先読手段100の所定位置にセットされる。この所定位置にセットされた蓄積性蛍光体シート11は、モータ12により駆動されるエンドレスベルト等のシート搬送手段13により、矢印Y方向に搬送(副走査)される。一方、レーザー光源14から発せられた弱い光ビーム15はモータ23により駆動され矢印方向に高速回転する回転多面鏡16によって反射偏向され、fθレンズ等の集束レンズ17を通過した後、ミラー18により光路を変えて前記シート11に入射し副走査の方向(矢印Y方向)と略垂直な矢印X方向に主走査する。この光ビーム15が照射されたシート11の箇所からは、蓄積記録されている放射線画像情報に応じた光量の輝尽発光光19が発散され、この輝尽発光光19は光ガイド20によって導かれ、フォトマルチプライヤ(光電子増倍管)21によって光電的に検出される。上記光ガイド20はアクリル板等の導光性材料を成形して作られたものであり、直線状をなす入射端面20aが蓄積性蛍光体シート11上の主走査線に沿って延びるように配され、円環状に形成された出射端面20bに上記フォトマルチプライヤ21の受光面が結合されている。上記入射端面20aから光ガイド20内に入射した輝尽発光光19は、該光ガイド20の内部を全反射を繰り返して進み、出射端面20bから出射してフォトマルチプライヤ21に受光され、放射線画像を表わす輝尽発光光19の光量がフォトマルチプライヤ21によって電気信号に変換される。
フォトマルチプライヤ21から出力されたアナログ出力信号Sは増幅器26で増幅され、A/D変換器27でディジタル化され、先読画像データSpが得られる。
上記先読みにおいては、蓄積性蛍光体シート11に蓄積された放射線エネルギーの広い領域にわたって読み取ることができるように、フォトマルチプライヤ21に印加する電圧値や増幅器26の増幅率等の読取条件が定められている。
得られた先読画像データSpは、記録手段28に入力され、一旦記憶される。その後、記憶手段28に記憶された先読画像データSpが読み出されて演算手段29に入力され、演算手段29では、入力された先読画像データSpに基づいて蓄積性蛍光体シート11上に形成された放射線の照射野が求められ、この照射野に対応した先読画像データSpに基づいて本読みの際の読取条件G1、たとえばフォトマルチプライヤ21′に印加する電圧や増幅器26′の増幅率等が求められる。
先読みの終了した蓄積性蛍光体シート11′は、本読手段100′の所定位置にセットされ、上記先読みに使用した光ビームより強い光ビーム15′によりシート11′が走査され、前述のようにして定められた読取条件G1により画像データが得られるが、本読手段100′の構成は上記先読手段100の構成と略同一であるため、先読手段100の各構成要素と対応する構成要素には先読手段100で用いた番号にダッシュを付して示し、説明は省略する。
A/D変換器27′でディジタル化されることにより得られた画像データSQは、画像処理手段50に送られる。画像処理手段50では画像データSQに適切な画像処理が施される。この画像処理の施された画像データは再生装置60に送られ、この画像データに基づく放射線画像が再生表示される。
ここで、演算手段29で先読画像データSpに基づいて照射野を求める方法について詳細に説明する。
第1図は、本発明の照射野輪郭候補点正誤判定方法の一実施例を説明するために、放射線画像の一例とこの放射線画像から得られた先読画像データSpとその微分値ΔSpとを表わした図である。
蓄積性蛍光体シート11には、照射野2内に人体の胸部を被写体とした被写体像3が撮像記録されている。
ここでは、照射野2内の所定点として蓄積性蛍光体シートの中心Cを選択し、この中心Cから放射状に延びる複数の線分5の各々に沿って、各線分上の各画素に対応する先読画像データSpに微分演算が施され、先読画像データSpの値が急に下がった点が輪郭候補点として求められる。
以下、上記複数の線分5のうち、ξ軸に沿った線分上の輪郭候補点を求める場合について説明する。
グラフAは、ξ軸に沿う各画素から得られた先読画像データSpの値を表わすグラフである。
照射野2内の被写体像3以外の、放射線が蓄積性蛍光体シート11に直接照射された直接放射線部6の先読画像データSpの値が最も高く、照射野2の輪郭で急激に先読画像データSpの値が下っている。また肋骨4の輪郭でも先読画像データSpの値が急激に変化している。
グラフBは、グラフAに示す先読画像データSpを、中心Cからξの正方向(図の右方向)、ξの負方向(図の左方向)に微分して得られたグラフである。
グラフBにおいて中心Cからξ軸の正の方向に向かう線分上には、下方に突出した主なピークはピークa1とピークa2の2つであるが、ピークa2の高さがピークa1の高さよりも高いためピークa2が輪郭候補点として定められる。次に中心Cから離れる方向にこの輪郭候補点Dから延びる、ξ軸方向に長さl(ξ軸上の点dから点eまで)の3つの線分8a,8b,8c上の画素にそれぞれ対応する先読画像データSpの平均値▲■▼,▲■▼,▲■▼が求められ、これら平均値▲■▼,▲■▼,▲■▼があらかじめ定めた所定値(しきい値)SPthと比較される。▲■▼,▲■▼,▲■▼とも所定値SPthよりも小さい値であるため、3つの線分8a,8b,8cは、いずれも照射野の外側の領域であると判断され、したがって、輪郭候補点Dは、照射野の輪郭上にある輪郭点であると判定される。
グラフBにおいて中心Cからξ軸の負の方向に向かう線分上には、下方に突出した主なピークは、ピークa3とピークa4との2つであるが、ピークa3の高さがピークa4の高さよりも高いため、前述したピークa2の場合と同様に、ピークa3が一旦輪郭候補点として定められる。次に中心Cから離れる方向に、この輪郭候補点Eから延びる、ξ軸上の点fから点gまでの、ξ軸方向に長さlの3つの線分9a,9b,9c上の画素にそれぞれ対応する先読画像データSpの平均値▲■▼,▲■▼,▲■▼が求められ、これら平均値▲■▼,▲■▼,▲■▼が所定値SPthと比較される。▲■▼,▲■▼,▲■▼とも所定値SPthよりも大きい値であるため、輪郭候補点Eは照射野の輪郭上にない該検出点であると判定される。
ピークa3が誤検出点であると判定されたため、次にピークa4が中心Cからξ軸の負の方向に向う線分上の輪郭候補点Fとして定められる。その後上記と同様にして、ξ軸上の点hから点iまでの、ξ軸方向に長さlの3つの線分10a,10b,10c上の画素に対応する先読画像データSpの平均値▲■▼,▲■▼,▲■▼が求められ、これら平均値▲■▼,▲■▼,▲■▼が所定値SPthと比較される。▲■▼は所定値SPthよりも大きい値であるが、▲■▼,▲■▼が所定値SPthよりも小さい値であるため、本実施例では多数決で判断され、輪郭候補点Fが照射野の輪郭上にある輪郭点であると判定される。
上記実施例においては、中心Cから離れる方向に、各輪郭候補点から延びる線分として、それぞれ3本の線分について平均値を求めたが、これは3本に限られるものではなく、演算時間や判定の正確さ等を考慮して、1本又は複数本が選択される。また、上記実施例では、照射野の外側の領域では放射線の照射量が少ないことを利用して、画像データの平均値を特性値として採用したが、このほかメジアン値、最大値、(最大値+最小値)/2等その線分に対応する画像データの、種々の代表的な値を採用することができる。また、画像データの特性値として、画像データの分散値、画像データを線分に沿って微分した微分値の平均値、該微分値の分散値等、照射野の外側の領域では画像が平坦であり変化が少ないことをを利用した特性値を採用してもよい。また、上記各種の特性値を複数組み合わせて判定の精度を向上させてもよい。
また、微分処理の方向の起点となる照射野2内の点を蓄積性蛍光体シートの中心Cとしているが、この点はシートの中心点に限らず、照射野2内に存在する点ならばどのような点が利用されてもよい。たとえば照射野2が極めて小さく絞られる場合は、シートの中心点Cが照射野外に位置することもあるので、その場合は先読画像データの値が最大となる点、各画素を対応する各先読画像データで重みづけしたときの重心点、さらには先読画像データを2値化した際の先読画像データの値の大きい側に対応する多数の画素の重心等、必ず照射野内に存在することになる点を利用するのが望ましい。
以上述べたようにして、中心Cと蓄積性蛍光体シート11の端部とを結ぶ複数の線分5の各々について輪郭点7が求められる。これら輪郭点7が求められた後、これらの輪郭点7に沿った線を求めれば、その線が照射野の輪郭となる。この輪郭点7に沿った線は、例えばそれらの点を平滑化処理した後残った点を連結する方法、局所的に最小二乗法を適用して複数の直線を求め、それらを連結する方法、スプライン曲線等を当てはめる方法等によって求めることができるが、本実施例における演算手段29は、Hough変換を利用して輪郭点7に沿った複数の直線を求めるように構成されている。以下、この直線を求める処理について詳しく説明する。
第1図に示す蓄積性蛍光体シート11の一端(図の左下端)を原点として、図に示すようにx軸,y軸を定めたときに、各輪郭点の座標が(x1,y1),(x2,y2),……,(xn,yn)として求められるが、ここではこれらの座標を代表させて座標(x0,y0)で表わす。演算手段29(第4図4図参照)は、上記輪郭点の座標を(x0,y0)としたときこれらのx0,y0を定数としてρ=x0 cosθ+y0 sinθで表わされる曲線を、すべての輪郭点座標(x0,y0)について求める。この曲線は第2図に示すようなものとなり、輪郭点座標(x0,y0)の数だけ存在する。
次いで演算手段29では、上述の複数の曲線のうち所定数Q以上の曲線が互いに交わる交点(ρ0)を求められる。なお輪郭点座標(x0,y0)の誤差等のため、多数の曲線が厳密に一点で交わることは少ないので、実際には例えば2本の曲線の交点が互いに微小所定値以下の間隔で存在するとき、それらの交点群の中心を上記交点(ρ0)とする。次に、交点(ρ0)から前記x−y直交座標系において次式ρ=x cosθ+y sinθで規定される直線が求められる。この直線は、複数の輪郭点座標(x0,y0)に沿って延びる直線となる。この直線は、第1図に示すように輪郭点7が並ぶ場合、第3図に示すように照射野2(第1図参照)の輪郭を形成する各線分を延長した直線L1〜L5として求められる。次に、こうして求めた複数の直線L1,L2,L3,…Lnによって囲まれる領域が求められ、この領域が照射野2として認識される。この領域は、詳しくは例えば以下のようにして認識される。演算手段29(第4図参照)では蓄積性蛍光体シート11の隅部と中心Cとを結ぶ線分M1,M2,M3,…Mm(蓄積性蛍光体シート11が矩形の場合は4本)を記憶しており、この各線分M1〜Mmと上記各直線L1〜Lnとの交点の有無が調べられる。この交点が存在した場合、上記直線によって2分される平面のうち、シート隅部を含む側の平面が切り捨てられる。この操作がすべての直線L1〜Ln、線分M1〜Mmに関して行なわれることにより、直線L1〜Lnによって囲まれる領域が残される。この残された領域は、すなわち照射野2(第1図参照)である。
このようにして照射野2が求められると、この照射野2に対応する先読画像データSpに基づいて、本読みの際にこの照射野2内の画像を適切な読取条件で読取るように読取条件が定められる。
尚、上記実施例では、先読手段100と本読手段100′とが別々に構成されているが、前述したように先読手段100と本読手段100′の構成は略同一であるため、先読手段100と本読手段100′とを一体にして兼用してもよい。この場合、弱い光ビームで走査して先読みを行なった後、蓄積性蛍光体シート11を一回バックさせ、再度、今度は強い光ビームで走査して本読みを行なうようにすればよい。
先読手段と本読手段とを兼用した場合、先読みの場合と本読みの場合とで光ビームの強度を切替える必要があるが、この切替えの方法としては、前述したように、レーザー光源からの光強度そのものを切替える方法等、種々の方法を使用することができる。
また、上記実施例では、演算手段29で本読みの際の読取条件を求める装置について説明したが、本読みの際は、先読画像データSpにかかわらず所定の読取条件で読取ることとし、演算手段29では、先読画像データSpに基づいて、画像処理手段50において画像データSQに画像処理を施す際の画像処理条件G2を求め、第4図に破線で示すように演算手段29で求めた画像処理条件を画像処理手段50に入力するようにしてもよく、また、演算手段29で上記読取条件と画像処理条件の双方を求めるようにしてもよい。
さらに、上記実施例は、先読みを行なう放射線画像読取装置について説明したが、本発明は先読みを行なわずにいきなり上記本読みに相当する読取りを行なう放射線画像読取装置にも適用することができる。この場合、読取りの際は所定の読取条件で読み取られて画像データが得られ、この画像データに基づいて、演算手段により画像処理条件が求められ、この求められた画像処理条件は画像データに画像処理を施す際に考慮される。
また、本発明は、蓄積性蛍光体シートを用いる装置のほか、従来のX線フィルムを用いる装置等にも用いることができる。
第5図は、X線フィルムに記録されたX線画像を読み取るX線画像読取装置の一実施例の斜視図である。
所定位置にセットされた、X線画像が記録されたX線フィルム30がフィルム搬送手段31により、図に示す矢印Y″方向に搬送される。
また、一次元的に長く延びた光源32から発せられた読取光33は、シリンドリカルレンズ34により収束され、X線フィルム上を矢印Y″方向と略直角なX″方向に直線状に照射する。読取光33が照射されたX線フィルム30の下方には、X線フィルム30を透過し、X線フィルム30に記録されたX線画像により強度変調された読取光33を受光する位置に、上記X線画像のX″方向の各画素間隔に対応した多数の固体光電変換素子が直線状に配置されたMOSセンサ35が設けられている。このMOSセンサ35は、X線フィルム30が読取光33により照射されながら矢印Y″方向に搬送される間、X線フィルム30を透過した読取光をX線画像のY″方向の各画素間隔に対応した所定の時間間隔で受光する。
第6図は、上記MOSセンサ35の等価回路を示した回路図である。
多数の固体光電変換素子36に読取光33が当たって発生するフォトキャリアによる信号は、固体光電変換素子36内のキャパシタCi(i=1,2,……,n)に蓄積される。蓄積されたフォトキャリアの信号は、シフトレジスタ37によって制御されるスイッチ部38の順次開閉により順次読み出され、これにより時系列化された画像信号が得られる。この画像信号は、その後増幅器39で増幅されてその出力端子40から出力される。
出力されたアナログの画像信号はサンプリングされてディジタルの画像信号に変換され、その後、画像信号に基づいて、前述した実施例と同様にして、X線照射野の輪郭候補点が求められ、この輪郭候補点の正誤が判定され、照射野が認識される。尚、本実施例において、MOSセンサ35の代わりにCCD,CPD(Charge Priming Device)等を用いることができることはいうまでもない。またX線フィルムの読取りにおいて、前述した蓄積性蛍光体シートの読取りと同様に光ビームで2次元的に走査して読取りを行なってもよいことももちろんである。また上記実施例ではX線フィルム30を透過した光を受光しているが、X線フィルム30から反射した光を受光するように構成することができることももちろんである。
このように、本発明の照射野輪郭候補点正誤判定方法は、被写体の放射線画像が記録された記録シートの読取りにより該記録シート上の各画素に対応する多数の画像データを得る放射線画像読取装置一般に適用することができる。
(発明の効果)
以上詳細に説明したように、本発明の照射野輪郭候補点正誤判定方法は、輪郭候補点を求め、この輪郭候補点が求められたとき、照射野内の所定点から離れる方向に輪郭候補点から延びる1つまたは複数の線分上の前記各画素にそれぞれ対応する前記画像データの特性値を前記各線分のそれぞれについて1つ求め、この特性値を所定値と比較し、該特性値と該所定値との大小に応じて輪郭候補点が、照射野の輪郭上に位置する輪郭点であるか、または輪郭上に位置しない誤検出点であるかを判定するようにしたため、正確に照射野を認識することができ、適切な読取条件,画像処理条件を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、放射線画像の一例と、この放射線画像から得られた先読画像データおよびその微分値のグラフを表わした図、
第2図は、輪郭点に沿った直線を求める方法を説明するためのグラフ、
第3図は、輪郭点に沿った直線で囲まれる領域を抽出する方法を説明するための説明図、
第4図は、本発明の照射野輪郭候補点正誤判定方法の一例を使用した、放射線画像読取装置の一実施例の斜視図、
第5図は、X線フィルムに記録されたX線画像を読み取るX線画像読取装置の一実施例の斜視図、
第6図は、MOSセンサの等価回路を示した回路図である。
2……照射野、3……被写体像
4……肋骨、5……線分
6……直接放射線部、7……輪郭点
11,11′……蓄積性蛍光体シート
19,19′……輝尽発光光
21,21′……フォトマルチプライヤ
26,26′……増幅器
27,27′……A/D変換器
28……記憶手段、29……演算手段
30……X線フィルム、35……MOSセンサ
50……画像処理手段、60……再生装置
100……先読手段、100′……本読手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】被写体の放射線画像が記録された記録シートの読取りにより該記録シート上の各画素に対応する多数の画像データを得た後、前記記録シート上に形成された放射線の照射野に含まれる所定点と前記記録シートの端部とを結ぶ線分上の前記各画素にそれぞれ対応する前記画像データに基づいて、前記照射野の輪郭と前記線分との交叉点と考えられる輪郭候補点を求め、この輪郭候補点が求められたとき、前記所定点から離れる方向に前記輪郭候補点から延びる1つまたは複数の線分上の前記各画素にそれぞれ対応する前記画像データの特性値を前記各線分のそれぞれについて1つ求め、該特性値を所定値と比較し、該特性値と該所定値との大小に応じて、前記輪郭候補点が前記輪郭上に位置する輪郭点であるか、または前記輪郭上に位置しない誤検出点であるかを判定することを特徴とする照射野輪郭候補点正誤判定方法。

【第2図】
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【第3図】
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【第1図】
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【第4図】
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【第6図】
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【第5図】
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【特許番号】第2525650号
【登録日】平成8年(1996)5月31日
【発行日】平成8年(1996)8月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−217591
【出願日】昭和63年(1988)8月31日
【公開番号】特開平2−66683
【公開日】平成2年(1990)3月6日
【出願人】(999999999)富士写真フイルム株式会社