説明

照明カバーおよび照明機器

【課題】メンテナンス性を高めることができ、且つコストの増大を招くことなく美観の向上を図ることが可能な照明カバーおよび照明機器を提供する。
【解決手段】照明カバーの構成は、複数の点光源が配列された照明機器の前面に取り付けられる照明カバー100であって、当該照明カバーは、透明の板材からなり、透明の板材の両面の重複する範囲(多面体領域100a)に、縦横方向に繰り返しの多面体形状102(表面多面体形状102aおよび裏面多面体形状102b)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の点光源が配列された照明機器、およびその照明カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
照明機器は光源によって光を照射する。この照明機器は、様々な構成のものがあり、光源が露出しているものもあれば、光源がカバー等によって覆われているものもある。また光源においても、蛍光灯のように線状のものや、LEDのように点状のもの(点光源)等、様々な種類がある。
【0003】
特許文献1には、点光源であるLEDを収納した光源収納ケースの開口部を覆うシートを備える照明装置が開示されている。特許文献1のシートは、光透過性であり、光源側とは反対側の面に、多数個のほぼ多角錐形状の多面体が形成されたマイクロプリズムシートである。特許文献1によれば、1個の光源が複数個の光源に見せることができるプリズム効果が得られるため、光源の数を減らしても多数個の光源があるように見せることができるとともに、複数個の光源を模様のようにでき、美観の向上を図れるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−157622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで照明機器においては、ユーザに様々な趣向の違いがあり、光源を単にカバーで覆ったような落ち着いた照明を好むユーザもいれば、シャンデリアのような華やかな照明を求めるユーザもいる。特許文献1では、1つの光源の周囲に複数個の光源がある状態を模様のように見せているが、シート(照明カバー)の表面のプリズムだけでは光源の照射範囲が狭く、複数に見えるといってもぶれたように見える程度である。これを、さらに光源が散在するかのように見せるためには光源の数を増やすことが考えられるが、単に光源を増やすとコストの増大を招いてしまう。
【0006】
また、点光源を用いる照明機器では、概して線状の光源よりも大量の数の光源を要するため、線状の光源を用いた照明機器よりも寿命等による玉切れでの交換頻度が高く、メンテナンス性において優れているとは言い難い。このため、交換頻度の低下、ひいてはメンテナンス性の向上を図るべく、できるだけ玉切れが目立たないような配置や構成が望まれる。しかしながら、特許文献1の構成であると、1つの点光源(LED)の近くに複数個の光源があるように見えるに過ぎないため、1つの点光源が玉切れしてしまうとその周囲の複数個の光源が見えない状態となる。故に、玉切れした点光源だけでなくその周囲もがぽっかりと穴が開いたように観察され、玉切れがより一層目立ってしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、メンテナンス性を高めることができ、且つコストの増大を招くことなく美観の向上を図ることが可能な照明カバーおよび照明機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる照明カバーの代表的な構成は、複数の点光源が配列された照明機器の前面に取り付けられる照明カバーであって、当該照明カバーは、透明の板材からなり、透明の板材の両面の重複する範囲に、縦横方向に繰り返しの多面体形状が形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、点光源から出た光は照明カバーの内面または外面の多面体形状によって屈折し、点光源の見かけ上の位置にずれを生じる。換言すれば、点光源と見る者の目を結ぶ直線上に位置するにもかかわらず、点光源が見えない面が存在する。したがって見る角度によって異なるように、粗密を生じさせることができる。また屈折により複数の経路から点光源が見えるようになるため、光源が増えて見える。これらのことから、板材であるにもかかわらず、見る者にとってシャンデリアのようにきらめいて観察され、美観に優れた照明機器とすることができる。特に、板材の両面に繰り返しの多面体形状を形成したことにより、片面にのみ多面体を形成した場合よりも照射範囲を広げることができ、飛躍的に複雑に、あたかも不規則に屈折させることができる。
【0010】
また、屈折によって点光源の位置が移動して見え、規則的に配列された点光源であっても粗密が生じる。すると逆に、点光源に粗密が生じていてもこれを感知することができない。このことから、点光源の一部が切れていても気にならなくなるため、メンテナンス性を向上させると共に、製造時の歩留まりを向上させることができる。
【0011】
更に、点光源から出た光は屈折する際にプリズム効果によって分光し、他の色を生じる。すると逆に、点光源が基本的に例えば白色であるとき、他の色の点光源が混じっていてもこれを感知することができない。特に点光源が白色LEDであった場合、製造上の理由からある程度の頻度で黄色味を帯びたものが製造されてしまう。しかし本発明にかかる照明カバーを用いれば、白色LEDの中に黄色味を帯びたLEDが混じっていても気になることがない。したがって、LEDを選別することなく組み付けることが可能となり、生産性を向上させ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0012】
上記の多面体形状とは、多角錘または多角錘台形であるとよい。多面体形状が多角錘または多角錘台形であることにより、全方向に対して光を屈折させることができる。なお多角錘または多角錘台形を、三角錘、四角錘、六角錘、またはこれらの台形にすることにより、完全に隙間なく連続させることができるため好ましい。ただし多面体形状の間に若干の平坦面が形成されたとしても支障なく本発明の効果を得ることができるため、五角錘や八角錘、その他の形状であってもよい。
【0013】
ここで、多角錘の面の数が増えると円錐に近づくが、円錐では凸レンズ効果によって点光源が広がって観察されるものの、位置のずれを生じなくなる。したがって面の数は比較的少ないほうがよく、好ましくは四角錘または六角錘、多くとも八角錘程度であることが好ましい。
【0014】
上記の板材の外面の多面体形状と内面の多面形状と大きさまたは高さが異なる比例形であって、外面の多面体形状と内面の多面体形状とは、板材の法線を軸として位相がずれているとよい。
【0015】
本発明の作用効果を得るためには外面と内面が全く同じ形状であってもよいが、この場合は板材の厚みが均一になるため、屈折が比較的単調になる。これに対し比例形、すなわち個々の多面体形状の大きさを変えたり、高さを変えたりすることにより、板材の厚みに不均一を生じさせることができ、個々の点光源がゆがんで見えるようになるため、さらに見る者を飽きさせない景色の変化を得ることができる。
【0016】
さらに、外面と内面の位相をずらして(回転させて)配置することにより、内面の多面体形状と外面の多面体形状の相対する面の角度を大幅に変化させることができる。これにより、さらに大きく屈折させて不規則に近い変化を見せたり、さらに数が増えたように見せたりすることができる。
【0017】
上記の外面の多面体形状と内面の多面体形状とで面の数が異なるとよい。面の数が異なるとは、例えば外面は四角錐で内面は三角錐であるというように、形状が異なっていることをいう。これにより、内面の多面体形状と外面の多面体形状の相対する面の角度を大幅に変化させることができ、さらに大きく屈折させて不規則に近い変化を見せたり、さらに数が増えたように見せたりすることができる。
【0018】
上記の外面の多面体形状の繰り返しピッチと、内面の多面体形状の繰り返しピッチが異なるとよい。かかる構成によれば、ピッチが小さな方の面では主に点光源の見かけ上の数を増やす役割となり、ピッチが大きな方の面では主に粗密を生じさせる役割となる。これにより、点光源の増え方と粗密の程度を容易に調節することが可能となる。
【0019】
なお、繰り返しピッチが大幅に異なると、小さな点光源の集合が散在(点在)するように見えるようになる。したがって、繰り返しピッチは極端に大きく異ならないことが好ましい。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明にかかる照明機器の代表的な構成は、所定間隔ごとに配列された複数の点光源と、透明の板材からなり、前面に取り付けられる照明カバーと、を備え、照明カバーは、板材の両面の重複する範囲に、縦横方向に繰り返しの多面体形状が形成されていることを特徴とする。上述した照明カバーの技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該照明機器にも適用可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、メンテナンス性を高めることができ、且つコストの増大を招くことなく美観の向上を図ることが可能な照明カバーおよび照明機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態にかかる照明カバーを備える照明機器を例示する図である。
【図2】照明カバーの斜視図である。
【図3】照明カバーの多面体領域に形成される多面体形状の説明図である。
【図4】多面体形状とLED(光源)の位置について説明する図である。
【図5】照明カバーの両面に多面体形状を形成した場合と、片面のみに多面体形状を形成した場合とを比較する図である。
【図6】照明カバーとLEDの間隔について説明する図である。
【図7】多面体形状の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
(照明機器200)
図1は、本実施形態にかかる照明カバーを備える照明機器を例示する図である。図1(a)は照明機器200の外観図であり、図1(b)は図1(a)の分解図であり、図1(c)は図1(b)のLEDユニット210の分解図である。なお、理解を容易にするために、図1では、後述する照明カバーの外観(構造)を簡略化して図示している。
【0025】
図1(a)および(b)に示すように、照明機器200は主に、LEDユニット210、電源ユニット220、ベース230およびカバー240から構成される。図1(c)に示すように、LEDユニット210はLED基板212を備える。LED基板212には、点光源である複数のLED(Light-Emitting Diode)212aが略同一平面にマトリクス状に所定間隔ごとに配列されている。かかるLED基板212をホルダー214に嵌め込み、そのホルダー214に本実施形態の照明カバー100を破線矢印方向に向かって取り付けることにより、図1(b)に示すようにLEDユニット210が組み立てられる。
【0026】
電源ユニット220は、ベース230に配置され、LEDユニット210と接続されてかかるLEDユニット210に電力を供給する。ベース230は、図1(a)に示すようにLEDユニット210および電源ユニット220を収容する、いわゆる照明機器200の基体である。
【0027】
ベース230には、ヒンジ機構によって開閉可能なカバー240が取り付けられる。図1(b)に示すように、カバー240には開口部242aおよび242b(左側の開口部242bは破線にて図示)が形成されている。なお、図1(b)では、開口部242aにはLEDユニット210が取り付けられていない状態を、開口部242bにはLEDユニット210が取り付けられている状態を示している。開口部242aに、照明カバー100を対向させるようにLEDユニット210を取り付けると、開口部242bのように嵌め込められた状態となる。そして、開口部242aおよび242bにLEDユニット210を取り付けた後にカバー240を閉めると、照明機器200は図1(a)に示す状態となる。
【0028】
(照明カバー100)
次に、本実施形態にかかる照明カバー100について詳述する。上述したように、照明カバー100は、複数の点光源(本実施形態ではLED212a)が配列された照明機器200(厳密にはLED基板212)の前面に取り付けられるカバーである。
【0029】
図2は、照明カバー100の斜視図であり、図2(a)は100の全体斜視図であり、図2(b)は図2(a)の部分拡大図である。図2に示す照明カバー100は、透明の板材からなり、後に詳述するように板材の両面の重複する範囲に、縦横方向に繰り返しの多面体形状102が形成されている。以下の説明では、便宜上、この多面体形状102が形成されている領域(破線で囲った領域)を多面体領域100aと称する。かかる多面体領域100aの周囲には、多面体形状102が形成されていない平坦なフランジ100bが形成されている。これにより、照明カバー100をカバー240に容易に固定することが可能となる。
【0030】
図3は、照明カバー100の多面体領域100aに形成される多面体形状102の説明図であり、図3(a)は照明カバー100の表面を示す斜視図であり、図3(b)は照明カバー100の裏面を示す斜視図である。なお、以下の説明では、照明カバー100の多面体領域100aの表面(外面)に形成されている多面体形状102を表面多面体形状102a、多面体領域100aの裏面(内面)に形成されている多面体形状102を裏面多面体形状102bと呼び分ける。
【0031】
図3(a)に示すように、本実施形態の照明カバー100の多面体領域100aの表面には、四面体形状(四角錐)の表面多面体形状102aが縦横方向に繰り返して形成されている。一方、図3(b)に示すように、照明カバー100の多面体領域100aの裏面には、八面体形状(八角錐)の裏面多面体形状102bが縦横方向に繰り返して形成されている。すなわち、照明カバー100(透明の板材)の多面体領域100aの両面に、縦横方向に繰り返す表面多面体形状102aおよび裏面多面体形状102bが重複するように形成されている。これにより、LED212a(図1(c)参照)からの光を全方向に対して屈折させることができる。
【0032】
図4は、多面体形状102とLED212a(光源)の位置について説明する図であり、図4(a)は図2(a)のA−A断面図であり、図4(b)は図4(a)の外観写真である。図4(a)に示すように、本実施形態では、表面多面体形状102aと裏面多面体形状102bを同じ繰り返しピッチで形成している。そして、隣接する多面体形状102同士の境界各々にLED212aを配置している。
【0033】
上述した構成により、LED212aを点灯すると、そこから発せられた光が照明カバー100の表面多面体形状102aや裏面多面体形状102bによって屈折するため、LED212aの見かけ上の位置にずれを生じ、複数の経路からLED212aが見えるようになる。このため、照明カバー100の外観は、図4(b)に示すように複数の点状の光(白抜きのドット)が分散し、あたかもLED212a(点光源)が増えたかのように観察される。したがって、照明カバー100が板材であるにもかかわらず、照明機器200を、見る者にとってシャンデリアのようにきらめいて観察され、美観に優れた照明機器とすることができる。
【0034】
特に、本実施形態のように照明カバー100(板材)において多面体領域100aの両面に繰り返しの多面体形状102(表面多面体形状102aおよび裏面多面体形状102b)を形成すると、片面にのみ多面体形状102を形成した場合よりも、LED212aの照射範囲を広げることができ、且つLED212aから発せられる光を飛躍的に複雑に、不規則に屈折させることができる。
【0035】
図5は、照明カバー100の両面に多面体形状102を形成した場合(照明カバー194b)と、片面のみに多面体形状102を形成した場合(照明カバー194a、194c)とを比較する図である。図5(a)は、LED基板212となる試験体190上へのLEDの配置を示す模式図であり、図5(b)は試験体190と照明カバーとの間隔を9mmとしてLEDを点灯したときの外観写真であり、図5(c)は試験体190と照明カバーとの間隔を12mmとしてLEDを点灯したときの外観写真であり、図5(d)は、試験体190と照明カバーとの間隔を21mmとして212aを点灯したときの外観写真である。なお、説明の都合上、図5(a)では、15個のLEDにLED212a〜212yと符号を付している。
【0036】
図5(a)に示すように、試験体190では、5行5列、計15個のLED212a〜212yを配置している。これらのLED212a〜212yのうち、LED212c、212lおよび212xは、遮光可能なシート192a、192bおよび192cで被覆されている。これにより、LED212a〜212yの全てを点灯したときに、LED212c、212lおよび212xが消灯した状態、すなわち玉切れした状態が擬似的に再現される。
【0037】
上記のLED212a〜212yのうち、LED212a〜212eまでの上方には、表面に多面体形状を形成した照明カバー194a(図5(b)〜(d)参照)を配置する。LED212f〜212oまでの上方には、両面に多面体形状を形成した照明カバー194b(図5(b)〜(d)参照)を配置する。LED212p〜212yまでの上方には、裏面に多面体形状を形成した照明カバー194c(図5(b)〜(d)参照)を配置する。そして、LED212a〜212yを点灯する。
【0038】
図5(b)において、照明カバー194aはLED側に多面体形状を形成し、外側が平坦になっている。照明カバー194bは両面に多面体形状を形成している。照明カバー194cはLED側が平坦になっていて、外側に多面体形状を形成している。図5(b)に示すように、試験体190と照明カバー194a〜194cとの間隔が9mmの場合、表面または裏面の一方のみに多面体形状が形成された照明カバー194aまたは194cが配置されたLED212cおよび212xでは玉切れが顕著に認識できる。一方、両面に多面体形状が形成された照明カバー194aが配置されたLED212lは若干ながら玉切れが認められる程度である。
【0039】
図5(c)に示すように、試験体190と照明カバー194a〜194cの間隔を12mmとすると、LED212lの玉切れはほぼ識別されない状態となる。これに対し、LED212cおよび212xでは依然として玉切れがはっきりとわかる状態である。図5(d)に示すように、試験体190と照明カバー194a〜194cの間隔を21mmとすると、LED212lの玉切れは全く確認されなくなる。一方、LED212cおよび212xで輪郭が多少ボヤけたものの玉切れは確認可能である。
【0040】
以上の結果から、本実施形態のように、照明カバー100の多面体領域100aの両面に多面体形状102を形成することにより、玉切れ等で点灯しないLED212aによって粗密が生じていても、それを認識不可能にすることができることが理解できる。故に、照明機器200において玉切れを目立たなくすることができるため交換頻度を低下させることが可能となる。したがって、メンテナンス性を向上させると共に、製造時の歩留まりを向上させることができる。
【0041】
またLED212a(点光源)から出た光は屈折する際にプリズム効果によって分光して他の色を生じるため、LED212aが例えば白色であるとき、他の色の点光源が混じっていてもこれを感知することができない。このため、LED212aが白色LEDであった場合、製造上の理由からある程度の頻度で黄色味を帯びたものが製造されたとしても、本実施形態の照明カバー100によれば、白色LEDの中に混じった黄色味を帯びたLEDが気になることがない。故に、LED212aを選別することなく組付可能であり、生産性の向上ひいては製造コストの削減が図られる。
【0042】
ここで、上述したように、片面のみに多面体形状が形成された照明カバー194aまたは194cが配置されたLED212cおよび212xでは、それらと照明カバーとの間隔を9mmから21mmに広げることにより、玉切れが確認可能ではあるものの、その輪郭が多少ボヤけるため光が抜けている領域が狭まる。したがって、LED212cおよび212xと、照明カバー照明カバー194aまたは194cとの間隔を更に広げれば、片面のみに多面体形状を形成した照明カバー194aおよび194cによっても、両面に多面体形状を形成した照明カバー194bと同様の効果が得られると仮定される。そこで、以下に、照明カバーとLEDの間隔についての考察について説明する。
【0043】
図6は、照明カバーとLEDの間隔について説明する図であり、図6(a)は、本実施形態のように両面に多面体形状が形成された照明カバー194bとLED212aとの間隔を示す図であり、図6(b)は、表面(片面)にのみ多面体形状が形成された照明カバー194aとLED212aとの間隔を示す図である。
【0044】
なお、図6(a)に示す照明カバー194bは、表面と裏面との多面体形状のピッチを異ならせたものを例示しているが、両面に多面体形状を形成した照明カバーであれば、ピッチによって若干の差が生じるものの、ほぼ同様の傾向を示すため支障はない。また図6では、点灯しているLED212aを実線で、消灯している(玉切れしている)LED212aを破線で示している。
【0045】
図6(a)および(b)では、LED212aから照明カバー194aおよび194bの裏面までの距離を約18mmに設定し、LED212aから約56mm離れた地点までの光の屈折を実線によって示している。また照明カバー194aおよび194bはアクリルからなり、その屈折率は1.49であると仮定し、LED212aの照射角度を120度と仮定する。
【0046】
図6(a)に示すように、両面に多面体形状が形成された照明カバー194bでは、実線で示すLED212aからの光が、照明カバー194bを通過する際に複雑に屈折して範囲Lにおいて重なる。このため、2点鎖線で示すLED212a(範囲Lに配置されているLED212a)が玉切れしていてもそれが視認されづらい。一方、図6(b)に示すように、片面(表面)のみに多面体形状が形成された照明カバー194aでは、実線で示すLED212aからの光の屈折が単調であるため範囲Lにおいて光が重なり合わない。このため、2点鎖線で示すLED212aが玉切れしているとそれが容易に認識されてしまう。
【0047】
そこで、図6(b)に示す照明カバー194aを用いて、図6(a)の照明カバー194bのように範囲Lにおいて光を重なり合わせようとすると、実線のLED212aを図6(b)の黒塗りの位置まで後退させなければならない。このため、照明カバー194aとLED212aとの間隔は約29mmになってしまい、照明機器200を高さ方向においておおよそ1.5倍ほど大型化しなければならなくなる。したがって、本実施形態のように両面に多面体形状を形成すれば、照明機器200の大型化を招くことなく、LED212aの玉切れを視認困難としてメンテナンス性の向上が図れることが理解できる。
【0048】
なお、本実施形態では多面体形状102を四角錐や八角錐すなわち多角錘としている。このような四角錐や八角錐であったり、三角錘や六角錘であったりすることにより、多面体領域100aに多面体形状102を隙間なく完全に連続させることが可能である。ただし、これらは一例にすぎず、五角錘や八角錘、その他の形状を除外するものではない。五角錘や八角錘等では、多面体形状102の間に若干の平坦面が形成されるものの、上述した効果を支障なく得ることができる。
【0049】
加えて、本実施形態の表面多面体形状102aと裏面多面体形状102bのように、照明カバー100の表面(外面)と裏面(内面)との多面体形状102の面の数を異ならせることにより、表面多面体形状102aと裏面多面体形状102bの相対する面の角度を大幅に変化させることができる。したがって、光をさらに大きく屈折させて不規則に近い変化を見せたり、さらに数が増えたように見せたりすることが可能となる。
【0050】
ここで、多角錘は、面の数が増えると円錐に近づく。円錐では凸レンズ効果によって点光源が広がって観察されるものの、位置のずれを生じなくなる。このため、上述した光の屈折効果を得るためには、多面体形状102となる多角錘の面の数は比較的少ないほうがよく、好ましくは四角錘または六角錘、多くとも八角錘程度であることが好ましい。
【0051】
図7は、多面体形状102の他の例を示す図である。多面体形状102は、上述したような多角錘の他に、図7(a)に示すような多角錘台形であってもよい。他にも、図7(b)に示すように多面体形状102を、多角錘台形と多角錘とを組み合わせたような形状、いわゆる宝石カット(ブリリアンカットとも称される)としてもよい。多面体形状102を図7(a)および(b)に示すような形状にしても、多面体形状102を多角錘とした場合(図2(b)参照)と同様の効果を得ることができる。
【0052】
なお、照明カバー100の多面体領域100aの両面のうち、図7(a)では、一方の面には四角錘台形状の多面体形状102を形成し、他方の面には図2(a)と同様に八角錘形状の多面体形状を形成している。また図7(b)では、一方の面には宝石カット形状の多面体形状102を形成し、他方の面には八角錘台形状の多面体形状を形成している。ただし、これらの構成はあくまでも例示であり限定するものではない。
【0053】
更に、表面および裏面に形成される各々の多面体形状102(表面多面体形状102aおよび裏面多面体形状102b)は、必ずしも面数が異なる必要はなく、同じ面数であってもよい。しかしながら、この場合、外面と内面が全く同じ形状になるため板材の厚みが均一になり、屈折が比較的単調になってしまう。そこで、このような場合には、照明カバー100(板材)の表面多面体形状102aと裏面多面体形状102bとを、大きさまたは高さが異なる比例形としたり、それぞれの多面体形状102の位相を、板材の法線を軸としてずれるように(回転させたように)設定したりすることが好ましい。
【0054】
具体的には、図7(c)では、表面多面体形状102aおよび裏面多面体形状102bのいずれもが四面体形状(四角錐)であるが、それらを、高さが異なる比例形としている。これにより、表面多面体形状102aおよび裏面多面体形状102bは異なる形状となるため、板材の厚みが不均一になる。したがって、個々のLED212a(点光源)をゆがんで見せることができる。
【0055】
また図7(c)では、上述したように比例形である表面多面体形状102aおよび裏面多面体形状102bを、照明カバー100の法線100cを軸として位相がずれるように回転させて配置している。これにより、表面多面体形状102aと裏面多面体形状102bの相対する面の角度を大幅に変化させることができるため、LED212a(点光源)からの光をより屈折させて不規則に近い変化を見せたり、LED212aの数を更に増えたように見せたりすることが可能となる。
【0056】
更に、上記説明した図2〜図4および図7では、表面多面体形状102aおよび裏面多面体形状102bの繰り返しピッチが同じ場合(1:1の場合)を例示したが、これらの繰り返しピッチは、100の表面と裏面とで異なってもよい(図6(a)参照)。これにより、ピッチが小さい多面体形状では主としてLEDの見かけ上の数を増やすことができ、ピッチが大きい多面体形状では主に粗密を生じさせることができるため、LEDの増え方と粗密の程度を容易に調節することが可能となる。
【0057】
なお、繰り返しピッチが大幅に異なると、小さな点光源の集合が散在(点在)するように見えてしまうため、繰り返しピッチは極端に大きく異ならないことが好ましく、3倍以内であることが望ましい。例えば図6(a)では、表面の多面体形状のピッチに対し、裏面の多面体形状のピッチを2倍としている。
【0058】
以上説明したように、本実施形態にかかる照明カバー100によれば、多面体領域100aの両面に形成された多面体形状102(表面多面体形状102aおよび裏面多面体形状102b)によってLED212a(点光源)からの光が屈折するため、LED212aの見かけ上の位置にずれを生じる。これにより、LED212aが増えたように見えるためシャンデリアのようにきらめいて観察され、美観に優れた照明機器200とすることができる。また屈折によってLED212aの位置が移動して見えるため、LED212aの粗密が感知されづらくなる。したがって、LED212aの一部が切れていても確認されづらく、メンテナンス性や製造時の歩留まりを向上させることができる。更に、LED212aからの光は屈折時に分光して他の色を生じるため、白色のLEDに黄色味を帯びたLEDが混じっていてもそれが感知されにくい。したがって、組付時のLED212aの選別が不要になるため、生産性の向上ひいては製造コストの削減が図られる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、複数の点光源が配列された照明機器、およびその照明カバーに利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
100…照明カバー、100a…多面体領域、100b…フランジ、100c…法線、102…多面体形状、102a…表面多面体形状、102b…裏面多面体形状、190…試験体、194a〜194c…照明カバー、200…照明機器、210…LEDユニット、212…LED基板、212a〜212y…LED、220…電源ユニット、230…ベース、240…カバー、242a・242b…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の点光源が配列された照明機器の前面に取り付けられる照明カバーであって、
当該照明カバーは、透明の板材からなり、該透明の板材の両面の重複する範囲に、縦横方向に繰り返しの多面体形状が形成されていることを特徴とする照明カバー。
【請求項2】
前記多面体形状とは、多角錘または多角錘台形であることを特徴とする請求項1に記載の照明カバー。
【請求項3】
前記板材の外面の多面体形状と内面の多面形状と大きさまたは高さが異なる比例形であって、
外面の多面体形状と内面の多面体形状とは、前記板材の法線を軸として位相がずれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の照明カバー。
【請求項4】
外面の多面体形状と内面の多面体形状とで面の数が異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の照明カバー。
【請求項5】
外面の多面体形状の繰り返しピッチと、内面の多面体形状の繰り返しピッチが異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の照明カバー。
【請求項6】
所定間隔ごとに配列された複数の点光源と、
透明の板材からなり、前面に取り付けられる照明カバーと、
を備え、
前記照明カバーは、前記板材の両面の重複する範囲に、縦横方向に繰り返しの多面体形状が形成されていることを特徴とする照明機器。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−248457(P2012−248457A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120194(P2011−120194)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(505348968)有限会社アスクミー (2)
【Fターム(参考)】