説明

照明システム

【課題】論理アドレスが消去された照明器具を容易に判別することを可能にし、論理アドレスの設定を容易に行うことができる照明システムを提供する。
【解決手段】照明システムは、個別の論理アドレスが割り当てられる複数の照明器具2(2a〜2q)と、この論理アドレスを用いて所望の照明器具2を制御するコントローラ1とを備える。コントローラ1は、コントローラ1を統括的に制御する制御部11と、各照明器具2との間で伝送信号を送受信する送受信部12と、各照明器具2に設定した論理アドレスを記憶する記憶部13とを備える。制御部11のアドレス設定部11aは、アドレス消去信号を送信して照明器具2の論理アドレスを消去するとともに、論理アドレスが設定されていない照明器具2の点灯状態を「点滅」に設定する調光制御信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数台の照明器具が接続された通信線にコントローラを接続し、このコントローラから個々の照明器具に制御信号を送信することで、照明器具ごとに点灯/消灯の制御や調光レベルの調整を可能にした照明システムが提供されている。
【0003】
この種の照明システムでは、コントローラが照明器具を個別に認識する必要があり、工場からの出荷時や照明システムの初回通電時に、重複する可能性の低い数値や文字列が識別IDとして個々の照明器具に割り振られる。コントローラは、この識別IDを用いて照明器具の制御を行い、例えば、タイムスケジュールやスイッチ操作、又は、センサからの出力などに連動して、特定の識別IDが設定された照明器具の点灯/消灯の制御や調光レベルの調整が可能である。
【0004】
しかしながら、このような識別IDを用いた場合には、照明器具の物理的な位置と照明器具に割り当てられた識別IDに関連性が無いため、設定者がコントローラを操作する際に識別IDから照明器具の物理的な位置を特定することが困難であった。
【0005】
そこで、上述の識別IDとは異なる論理アドレスを個々の照明器具に設定し、設定者はこの論理アドレスを用いてコントローラの設定を行うようにした照明システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−283757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のような論理アドレスを用いた照明システムでは、照明器具の追加・削除などの設計変更や、論理アドレスの設定を間違った場合には、一度設定した照明器具の論理アドレスを消去できることが望ましい。特許文献1に記載されたような照明システムでは、論理アドレスを空に設定(論理アドレスを消去)できるものの、論理アドレスが消去された照明器具とそれ以外の照明器具とを見た目で判断することが困難であるといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、論理アドレスが消去された照明器具を容易に判別することを可能にし、論理アドレスの設定を容易に行うことができる照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願の照明システムでは、個別の論理アドレスが割り当てられた複数の照明器具と、各照明器具に割り当てられた論理アドレスを用いて所望の照明器具を制御するコントローラとを備え、コントローラは、照明器具の点灯状態を制御する制御部と、照明器具に論理アドレスを設定又は消去するアドレス設定部と、照明器具に設定した論理アドレスを記憶する記憶部とを備え、制御部は、複数の照明器具の点灯状態を各々の照明器具における論理アドレスの設定状況に応じた点灯状態に設定することを特徴とする。
【0010】
この照明システムにおいて調光制御部は、論理アドレスが設定されていない照明器具の点灯状態を所定の点灯状態に設定することが好ましい。
【0011】
またアドレス設定部は、所定の消去操作に応じて直前に論理アドレスを設定した照明器具の論理アドレスを消去するとともに、当該論理アドレスを消去した照明器具の点灯状態を所定の点灯状態に設定してもよい。
【0012】
さらにアドレス設定部は、複数の照明器具の論理アドレスを順次に設定した後、所定の消去操作に応じて当該論理アドレスが設定された照明器具のうち任意の照明器具の論理アドレスを消去するとともに、当該論理アドレスを消去した照明器具の点灯状態を所定の点灯状態に設定してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本願の照明システムによれば、論理アドレスが消去された照明器具を容易に判別することを可能にし、論理アドレスの設定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態にかかる照明システムを示す概略ブロック図である。
【図2】同照明システムを構成する照明器具の配置を示す概略図である。
【図3】同照明システムを構成する照明器具の論理アドレスを設定するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態にかかる照明システムは、図1に示すように、1台のコントローラ1と、個別の論理アドレスが割り当てられた複数台の照明器具2とを備え、コントローラ1及び複数台の照明器具2が信号線L1を介して接続されている。この照明システムは、例えばコントローラ1に接続される各種センサ(図示せず)やタイムスケジュールに応じて、コントローラ1により各照明器具2の点灯/消灯/点滅制御及び調光レベルの調整が行われる照明システムである。なお、本実施の形態においては、図2に示すように、17台の照明器具2(2a〜2q)が信号線L1を介してコントローラ1に接続されている。以下の説明では、個別の照明器具について説明する場合には照明器具2a、2b、2c…2qと表記し、全体的な説明をする場合には照明器具2と表記する。
【0016】
各々の照明器具2は、例えば蛍光ランプなどの光源21と、光源21に供給する点灯電力を制御する点灯制御部22と、信号線L1を介してコントローラ1との間で伝送信号の送受信を行う送受信部23と、記憶部24とを備える。
【0017】
各照明器具2は、他の照明器具2との間で重複しない個別の識別IDが割り振られており、例えばEEPROM(Electical Erasable Programable ROM)からなる記憶部24に記憶されている。この識別IDとしては、工場出荷時に記憶部24に書き込まれる任意の数値や文字列を用いても良く、通信用のハードウェアに設定されたMAC(Media Access Control)アドレスなどを用いてもよい。
【0018】
また各照明器具2は、識別IDとは異なる論理アドレスが個別に割り当てられ、この論理アドレスは記憶部24に記憶される。この論理アドレスとしては、例えば任意の数値や文字列を用いても良く、IPパケットによる伝送信号の送受信を行う場合にはIPアドレスを用いても良い。
【0019】
送受信部23は、後述するコントローラ1の送受信部12から送信される伝送信号を受信する。このコントローラ1との間の送受信には、例えばイーサネット(登録商標)フレーム上に乗せたIPパケットによる通信を用いることができる。ここで、送受信部23により送受信される伝送信号としては、照明器具2の論理アドレスを設定するアドレス設定信号、照明器具2の論理アドレスを消去するアドレス消去信号、照明器具2の点灯状態を制御する調光制御信号などが含まれる。
【0020】
送受信部23は、伝送信号としてアドレス設定信号を受信すると、記憶部24に記憶された論理アドレスをアドレス設定信号内に含まれる新たな論理アドレスに書き換える。以降は、この論理アドレスを用いて、送信された伝送信号が自機を送信対象として送信されたものであるか否かを判定する。
【0021】
また送受信部23は、伝送信号としてアドレス消去信号を受信すると、記憶部24に記憶された論理アドレスを消去する。これにより、照明器具2は論理アドレスが設定されていない状態となる。
【0022】
また送受信部23は、伝送信号として調光制御信号を受信すると、調光制御信号を点灯制御部22に出力する。点灯制御部22は、この送受信部23から入力された調光制御信号に基づいて、光源21の点灯状態を点灯、消灯、点滅の何れかに設定するとともに、店頭時には光源21の調光レベルを調整する。点灯制御部22が光源21の点灯状態を設定し、調光レベルを調整する具体的な制御方法については、従来既知の技術であるので説明を省略する。
【0023】
コントローラ1は、コントローラ1を統括的に制御する制御部11と、信号線L1を介して上述の伝送信号を各照明器具2との間で送受信する送受信部12とを備える。またコントローラ1は、信号線L1を介して接続された照明器具2の論理アドレスを記憶する記憶部13と、使用者の操作入力に応じて制御部11に操作信号を出力する操作部14を備える。
【0024】
制御部11は、例えばマイコン(図示せず)をその主構成要素として備えており、上述のアドレス設定信号、アドレス消去信号、及び、調光制御信号を含む伝送信号を生成し、送受信部12により生成した伝送信号を送信対象の照明器具2に送信させる。
【0025】
記憶部13は、例えばEEPROMからなり、照明器具2に設定されている論理アドレスと照明器具2に設定されている識別IDとをそれぞれ対応付けた表形式で記憶している。この表形式で記憶された論理アドレスと識別IDとの対応付けは、制御部11により常に最新の状態に保たれている。具体的には、アドレス設定信号を送信して照明器具2の論理アドレスを新たに設定した場合や、アドレス消去信号を送信して照明器具2に設定された論理アドレスを消去した場合には、その設定・消去の内容に合わせて記憶部13の内容を制御部11が更新する。これにより、制御部11は送受信部12を介して所望の照明器具2に対して、伝送信号の送信を行うことができる。
【0026】
操作部14は、例えばコントローラ1の表面に設けられた操作パネルや、無線信号により制御部11との間で操作信号の授受を行うリモコン装置であり、コントローラ1の設置場所や利用形態に応じて適宜設定される。なお、本実施の形態では、テンキーなどからなる数値入力手段(図示せず)と、論理アドレスが消去された照明器具2を確認する為の設定確認手段(図示せず)と、設定した論理アドレスを消去するための設定取消手段(図示せず)とを少なくとも備える。
【0027】
次に、各照明器具2の論理アドレスを設定する際の動作について説明を行う。以下の説明では、各照明器具2a〜2qはその初期状態として論理アドレスが設定されておらず、図2に示すよう配置されるとともに、図2に記載された識別IDがそれぞれ割り当てられているものとして説明を行う。すなわち、各照明器具2a〜2qには、それぞれ重複しない3桁の数値が識別IDとして割り当てられている。なお、初期状態として論理アドレスが割り当てられている場合には、例えば全ての照明器具2に対してアドレス消去信号を送信すれば、以下の動作と同じ手順により設定することができる。
【0028】
まず、コントローラ1の制御部11は、任意の照明器具2に対して所定の点灯状態に設定する制御信号を送信する。ここでは、最も小さな数値の識別IDが割り当てられた照明器具2cに対して、その点灯状態を「点滅」に設定する調光制御信号を送信する。これにより、照明器具2cは点滅状態となって周囲に居る設定者がどの照明器具2の論理アドレスを設定すれば良いのかを知ることができる。
【0029】
次に設定者は、図3のように照明器具2の物理的な位置と設定すべき論理アドレスとを記載した図面を見ながら、照明器具2cに対応する論理アドレスを操作部14の数値入力手段により入力する(ここでは、[003]と入力)。制御部11は、操作部14から操作信号が入力されると、入力された論理アドレス[003]を設定する論理アドレスとしてアドレス設定信号に含め、照明器具2cに送信する。このアドレス設定信号を受信した照明器具2cは、自機の記憶部24にこの論理アドレス[003]を記憶させる。また制御部11は、照明器具2cの識別ID[001]とこの論理アドレス[003]とを対応付けて、記憶部13に記憶させる。
【0030】
その後、コントローラ1は、照明器具2cの点灯状態を「点灯」に設定する調光制御信号を送信して照明器具2cを点灯状態に設定し、2番目に小さな識別IDが割り当てられた照明器具2aに対して点灯状態を「点滅」に設定する調光制御信号を送信する。これにより照明器具2aを点滅させ、上述と同様の手順で照明器具2aの論理アドレスを設定する。これらの動作を順に繰り返すことで、図3に示すように、全ての照明器具2a〜2qに論理アドレスが割り当てられる。
【0031】
ところで、上述のような手順で各照明器具2の論理アドレスを設定する場合、途中で何処まで設定したのかが分からなくなる可能性がある。その場合、設定者が操作部14の設定確認手段を押すことで、制御部11は記憶部13から必要な情報を読み出し、論理アドレスが設定されていない照明器具2に対して、その点灯状態を例えば「調光レベル25%」に設定する調光制御信号を送信する。これにより、例えば図3に示すように、論理アドレスが割り当てられていない照明器具2m〜2pの調光レベルが25%に設定され、設定者は照明器具2m〜2pの設定を引き続き行えば良いことが容易に理解することができる。
【0032】
また、上述のような手順で順次に各照明器具2の論理アドレスを設定する場合に、本来割り当てるべき論理アドレスとは異なる論理アドレスを割り当ててしまう可能性もある。例えば、照明器具2gに論理アドレスを設定する際に、本来は論理アドレス[007]を設定するべきところを操作を間違えて[017]を設定してしまった場合などである。この場合には、操作部14の設定取消手段を設定者が操作することで、制御部11は直前に設定された照明器具2gに対してアドレス消去信号を送信し、照明器具2gの論理アドレスを消去する。この時、制御部11は照明器具2gに対して、その点灯状態を例えば「調光レベル25%」に設定する調光制御信号を送信する。これにより、論理アドレスを消去された照明器具2を視覚的に確認することができ、この照明器具2が設定者が論理アドレスの設定を間違えた照明器具21gであるか否かを容易に判断することができる。なお、その後は、再度上述の操作によって照明器具2gの論理アドレスを論理アドレス[007]と設定することで、容易に正しい論理アドレスに設定し直すことができる。
【0033】
また、設定を間違えたことを後から気付いた場合には、例えば、操作部14の数値入力手段を操作して消去したい照明器具2の識別IDを入力した後、続けて設定取消手段を操作する。この操作入力に応じて、制御部11は入力された識別IDが割り当てられた照明器具2の論理アドレスを消去する。例えば、照明器具2c、照明器具2a、照明器具2k、照明器具2g、照明器具2hと順に論理アドレスを設定した後、照明器具2aの論理アドレスを間違えたと気付いた場合には、設定者は[002]と入力した上で設定取消手段を操作する。これにより制御部11は、識別IDが[002]である照明器具2aに対してアドレス消去信号を送信し、照明器具2aの論理アドレスを消去する。そして制御部11は、照明器具2aに対してその点灯状態を例えば「調光レベル25%」に設定する調光制御信号を送信する。これにより、設定者は論理アドレスが消去された照明器具2aを視覚的に確認することができる。
【0034】
このようにして、コントローラ1の制御部11は、照明器具2の論理アドレスを消去すると、照明器具2の点灯状態を通常とは異なる点灯状態に設定するので、設定者は、論理アドレスが消去された照明器具2を容易に判別することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 コントローラ
11 制御部
11a アドレス設定部
12 送受信部
13 記憶部
14 操作部
2(2a〜2q) 照明器具
21 光源
22 点灯制御部
23 送受信部
24 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別の論理アドレスが割り当てられた複数の照明器具と、各照明器具に割り当てられた論理アドレスを用いて所望の照明器具を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記照明器具の点灯状態を制御する制御部と、前記照明器具に前記論理アドレスを設定又は消去するアドレス設定部と、前記照明器具に設定した論理アドレスを記憶する記憶部とを備え、
前記制御部は、前記複数の照明器具の点灯状態を各々の照明器具における論理アドレスの設定状況に応じた点灯状態に設定することを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記調光制御部は、前記論理アドレスが設定されていない照明器具の点灯状態を所定の点灯状態に設定することを特徴とする請求項1記載の照明システム。
【請求項3】
前記アドレス設定部は、所定の消去操作に応じて直前に前記論理アドレスを設定した前記照明器具の前記論理アドレスを消去するとともに、当該論理アドレスを消去した照明器具の点灯状態を所定の点灯状態に設定することを特徴とする請求項1〜2の何れか一項に記載の照明システム。
【請求項4】
前記アドレス設定部は、複数の前記照明器具の前記論理アドレスを順次に設定した後、所定の消去操作に応じて当該論理アドレスが設定された照明器具のうち任意の照明器具の論理アドレスを消去するとともに、当該論理アドレスを消去した照明器具の点灯状態を所定の点灯状態に設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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