説明

照明システム

【課題】人の心理的な快適性を向上させることが可能な照明システムを提供する。
【解決手段】室内Rに設けられてこの室内Rに光を照射する照明器具11と、少なくとも照明器具の照射領域(室内R)を撮像する顔認識センサと、顔認識センサで撮像した照射領域(室内R)における画像情報(画像データ)から画像情報内の人の目線方向を検出する演算部とを備える。更に、目線方向の周辺に位置する範囲S2の光の輝度が目線方向の中心側に位置する範囲S1の光の輝度よりも相対的に高くなるように照明器具を制御する制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内における人の位置や顔の向きを検知することで、照明装置(照明器具)の発光出力を制御し、省エネルギーを図りながら、作業に適した照明環境を実現する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の照明装置は、画像センサを備えた照明システムであり、この照明システムでは、顔の状態(向き)から目線方向を検知し、人が移動するときは前方領域を明るくし、人が止まり細かな視作業状態と判断した場合は、手元を明るくするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−123373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような照明システムでは、移動方向や視作業状態等の作業に合わせて明るさを確保するものであるが、近年では心理的な快適性を向上することが可能な照明システムの開発が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、人の心理的な快適性を向上させることが可能な照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の照明システムは、室内に設けられて該室内に光を照射する照明器具と、少なくとも前記照明器具の照射領域を撮像する画像センサと、前記画像センサで撮像した照射領域における画像情報から画像情報内の人の目線方向を検出する目線検出部と、前記目線検出部にて検出された前記目線方向に基づいて前記照明器具を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記目線方向の周辺に位置する光の輝度が前記目線方向の中心側に位置する光の輝度よりも相対的に高くなるように前記照明器具を制御することを特徴とする。
【0008】
上記構成において、制御部は、前記人の目線方向から外れた視野外の照度が前記目線方向位置よりも低くなるように前記照明器具を制御することが好ましい。
上記構成において、制御部は、前記目線方向の中心側の位置を前記目線方向中心から水平30度の範囲とし、前記目線方向の周辺の位置を前記目線方向中心から水平30度〜100度の範囲として、前記照明器具を制御することが好ましい。
【0009】
上記構成において、照明器具は、室内の隅角部毎に少なくとも1つ設けられたことが好ましい。
上記構成において、照明器具は、複数の光源を備え、前記光源は前記室内の隅角部を照射するように構成されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人の心理的な快適性を向上させることが可能な照明システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)(b)は本実施形態の照明システムについて説明するための説明図である。
【図2】照明システムの概略構成について説明するためのブロック図である。
【図3】人の視野について説明するための説明図である。
【図4】評価実験について説明するための説明図である。
【図5】(a)〜(c)は別例における照明システムについて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の照明システムは、照明器具11と、この照明器具11の電源オンオフや調光等の点灯制御を行う制御部12と、人検知部13とを備える。
【0013】
照明器具11は、図1(a)(b)に示すように例えば室内Rの天井R1に取り付けられて下方側(室内Rの床面側)に光を照射するものであり、室内Rの4つの隅角部R2を照射するように天井R1の各角部にそれぞれ1つ、計4つ設けられる。
【0014】
制御部12は、図2に示すように前記照明器具11と電気的に接続され、後述する人検知部13からの検知信号に基づく点灯制御を行うものである。
人検知部13は、前記制御部12と電気的に接続される演算部21と、画像センサからなる人検知センサ22と、顔認識センサ23とを備える。
【0015】
人検知センサ22は、赤外線画像センサ、CCD画像センサやCMOS画像センサ等の撮像素子を備え、前記演算部21にその測定情報(画像データ)を出力するものである。
顔認識センサ23は、赤外線画像センサ、CCD画像センサやCMOS画像センサ等の撮像素子を備え、前記演算部21にその測定結果(画像データ)を出力するものである。
【0016】
演算部21は、マイコンシステムから構成され、人検知センサ22の検知結果に基づいて人H(図2参照)の存否を判定する。演算部21では、人検知方法として、例えば背景差分法やフレーム間差分法を用いて人検知を行っている。背景差分法は、室内に人がいない状態の基準画像(背景画像)と、人の有無に関わらず室内を撮像した評価画像の差分を抽出し、2値化することによって検知エリア(室内)の人を検知可能とするものである。一方、フレーム間差分法は、或る時刻tにおける入力画像と、時刻(t+n)における入力画像との間の差分をとることにより、検知エリア(室内)の人を検知可能とするものである。
【0017】
また演算部21は、前記人検知方法にて人が検知されると、続いて該当する人の顔や視線の向きを判定する。演算部21では、視線(目線)の方向を算出する方法として、人の移動方向を目線方向S(図3参照)とするなど、例えば特開2010−123373号公報(特許文献1)等で知られる方法を利用して検出(推定)する。
【0018】
また、演算部21は、図2及び図3に示すように目線方向Sを検出した後に、その目線方向Sから水平30度の角度θ1(目線方向Sの中心側)の範囲S1と、水平30度〜100度の角度θ2(誘導視野である目線方向Sの周辺側)の範囲S2とを算出する。そして、演算部21は目線方向S周辺位置の範囲である角度θ2の範囲S2と、目線方向S中心側の範囲である角度θ1の範囲S1の照明器具11の点灯状態を決定する。具体的には、演算部21は、目線方向S周辺位置(範囲S2)の照明器具11の出力を、目線方向S中心側(範囲S1)の照明器具11よりも相対的に高く点灯させるための信号を制御部12に出力するようになっている。そして、演算部21は、角度範囲θ1〜θ3から逸脱した視野外(図3にてθ4で図示)に位置する照明器具11を消灯させる信号を制御部12に出力するようになっている。
【0019】
次に、上記のように構成された照明システムが及ぼす心理的な快適性向上、つまりくつろぎ感について説明する。
本発明者は、上記構成の照明システムが及ぼすくつろぎ感について他のシステムとの差異を明確にするべく評価実験を行った(図4参照)。なお、図4に示す条件A、比較例1及び比較例2は以下の条件にて評価実験を行っている。
【0020】
(条件A)本照明システムの隅角部R2を照射する照明器具11と、室内R中心を照射する光の指向性の高い所謂ダウンライトを用い、水平面照度を47lx、人の顔面の鉛直面照度を20lxと設定する。
【0021】
(比較例1)前記ダウンライトを用い、水平面照度を47lx、人の顔面の鉛直面照度を27lxと設定する。
(比較例2)室内R全体を照射する所謂シーリングライトを用い、水平面照度を51lx、人の顔面の鉛直面照度を41lxと設定する。
【0022】
上記の条件によって室内環境(視環境)を被験者に提供し、各条件に即した環境でのくつろぎ感を1〜7の7段階で複数の被験者で評価し、それらの平均評価値を算出する。すると、条件Aでは評価値が5.3、比較例1では評価値が4.3、比較例2では評価値が3.6となり、本照明システムによるくつろぎ感の向上(心理的な快適性向上)の効果が確認された。
【0023】
次に、本実施形態の照明システムの一動作例(作用)について説明する。
上記構成の照明システムでは、人検知センサ22の画像データによって演算部21が室内Rに人が存在していないと判断した場合には、制御部12によって各照明器具11を消灯させる。
【0024】
そして、照明システムは、人検知センサ22の画像データによって演算部21が室内Rに人が存在したと判断すると、例えば全ての照明器具11を点灯させるとともに、顔認識センサ23の画像データからその人の目線方向Sを演算部21によって検出させる。
【0025】
次いで、照明システムは、目線方向S周辺位置の範囲である角度θ2の範囲S2と、目線方向S中心側の範囲である角度θ1の範囲S1及び視野外(角度θ4の範囲)の照明器具11の点灯状態を決定する。ここで、目線方向S周辺位置の範囲S2の照明器具11は目線方向S中心側の範囲S1の照明器具よりも発光出力(輝度)を高くなるように演算部21及び制御部12にて制御される。さらに、角度θ1〜θ3から逸脱した視野外(図3にてθ4で図示)に位置する照明器具11が点灯されていた場合、各角度θ1〜θ3から逸脱した視野外の照明器具11を演算部21及び制御部12にて消灯(照度を0と)させる。
【0026】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)室内Rに設けられてこの室内Rに光を照射する照明器具11と、少なくとも照明器具の照射領域(室内R)を撮像する顔認識センサ23と、顔認識センサ23で撮像した照射領域(室内R)における画像情報(画像データ)から画像情報内の人の目線方向Sを検出する演算部21とを備える。更に、目線方向Sの周辺に位置する範囲S2の光の輝度が目線方向Sの中心側に位置する範囲S1の光の輝度よりも相対的に高くなるように照明器具11を制御する制御部12を備える。このような構成とすることで、図3に示すようにくつろぎ感を向上させることができ、人の心理的な快適性を向上させることができる。
【0027】
(2)制御部12は、人の目線方向Sから外れた視野外(角度θ4)の照度を0として(消灯)、目線方向Sの各範囲S1,S2及び角度θ3内の照明器具11の照度よりも低くなるように照明器具11を制御する。このような構成とすることで、視野外の無駄な照明器具11の消費電力を抑えることができ、省エネルギー効果に寄与することができる。
【0028】
(3)制御部12は、目線方向Sの中心側の位置の範囲S1を目線方向S中心から水平30度の範囲とし、目線方向の周辺の位置の範囲S2を目線方向S中心から水平30度〜100度の範囲とする。このように、周辺位置の範囲S2を人間の空間座標感覚に影響を与える誘導視野(水平30度〜100度)として、人に対して過度なまぶしさを感じさせずに心理的快適性の向上を図ることができる。
【0029】
(4)照明器具11は、室内Rの隅角部R2毎に1つ設けられる。このように室内Rにおいて比較的離れた各隅角部R2に照明器具11を設けることで、適度に照明器具11を離間させることができる。このため、目線方向の中心位置(範囲S1)に位置する照明器具11と目線方向の周辺位置(範囲S2)に位置する照明器具11とで演算部21内で判定しやすくなり、中心位置(範囲S1)及び周辺位置(範囲S2)の照度を個別制御し易くすることができる。
【0030】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、照明器具11を室内Rの隅角部R2毎に対応するように設けたが、これに限らない。例えば図5(a)〜(c)に示すように1つの照明器具30に複数の光源部31,32を設けてそのいずれかの光源部32にて隅角部R2を照射する構成としてもよい。この場合、照明器具30は室内Rの天井R1の略中央(中心)に設けることが好ましい。
【0031】
・上記実施形態では、人検知部13を複数のセンサ部22,23にて構成したが、人検知センサ22と顔認識センサ23とを1つの画像センサで構成してもよい。
・上記実施形態では、視野外の照明器具11を消灯させる構成としたが、視野内(範囲S1、範囲S2及び角度θ3内の範囲)の照明器具11と比較して照度が低い構成であれば省エネルギー効果に寄与することができる。なお、視野外の照明器具11を点灯させてもよい。
【符号の説明】
【0032】
11,30…照明器具、12…制御部、21…目線検出部を構成する演算部、23…画像センサとしての顔認識部、H…人、R…室内、S…目線方向、R2…隅角部、S1,S2…範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設けられて該室内に光を照射する照明器具と、
少なくとも前記照明器具の照射領域を撮像する画像センサと、
前記画像センサで撮像した照射領域における画像情報から画像情報内の人の目線方向を検出する目線検出部と、
前記目線検出部にて検出された前記目線方向に基づいて前記照明器具を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記目線方向の周辺に位置する光の輝度が前記目線方向の中心側に位置する光の輝度よりも相対的に高くなるように前記照明器具を制御することを特徴とする照明システム。
【請求項2】
請求項1に記載の照明システムにおいて、
前記制御部は、前記人の目線方向から外れた視野外の照度が前記目線方向位置よりも低くなるように前記照明器具を制御することを特徴とする照明システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の照明システムにおいて、
前記制御部は、前記目線方向の中心側の位置を前記目線方向中心から水平30度の範囲とし、前記目線方向の周辺の位置を前記目線方向中心から水平30度〜100度の範囲として、前記照明器具を制御することを特徴とする照明システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明システムにおいて、
前記照明器具は、室内の隅角部毎に少なくとも1つ設けられたことを特徴とする照明システム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明システムにおいて、
前記照明器具は、複数の光源を備え、
前記光源は前記室内の隅角部を照射するように構成されたことを特徴とする照明システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−8453(P2013−8453A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138382(P2011−138382)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】