説明

照明器具

【課題】バンドアの使用時に、照射面に光むらが発生するのを低減することが期待できる照明器具を提供する。
【解決手段】照射開口23を有する器具本体12を備える。照射開口23に対向して器具本体12内に配置され、複数の発光部32が隙間35を開けて並設された光源部30を備える。光源部30の複数の発光部32が並ぶ方向に対して斜めとなる方向に開閉し、器具本体12の照射開口23から外部へ照射する光を遮光可能とするバンドア14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドアを備えた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、スタジオや舞台などの照明用として、光源からの光を照射する範囲を制限するための遮光板であるバンドアを備えた照明器具が用いられている。
【0003】
この照明器具は、光源を収容し、前面に光源からの光を外部へ照射する照射開口が設けられた器具本体を備え、この器具本体の前端上下部に縦方向に開閉する縦方向のバンドアが取り付けられ、器具本体の前端両側部に横方向に開閉する横方向のバンドアが取り付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、この照明器具では、光源として、複数の蛍光ランプや、複数のLED素子など、複数の発光部を用いたものもあり、この場合、これら複数の発光部が一方向に沿って隙間を開けて並設されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−59220号公報
【特許文献2】特開2006−210077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数の発光部を有する照明器具では、複数の発光部が並ぶ方向にあるバンドアで光を遮ると、光が照射される照射面において、バンドアで遮られて影となる部分と光が照射される部分との境界付近に、暗部と明部とが交互に並ぶ縞模様の光むらが生じているように見える現象が生じやすい。
【0007】
これは、バンドアで遮られて影となる部分と光が照射される部分との境界付近では、明るさが徐々に変化していくが、複数の発光部間にある各隙間の影響によって明るさの変化量が一定とならないことにより、目の錯覚によって暗部と明部とが交互に並ぶ縞模様の光むらが生じているように見えやすい。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、バンドアで光を遮った際に、照射面に光むらが発生するのを低減できる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の照明器具は、照射開口を有する器具本体を備える。照射開口に対向して器具本体内に配置され、複数の発光部が隙間を開けて並設された光源部を備える。光源部の複数の発光部が並ぶ方向に対して斜めとなる方向に開閉し、器具本体の照射開口から外部へ照射する光を遮光可能とするバンドアを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の照明器具によれば、光源部の複数の発光部が並ぶ方向に対して斜めとなる方向にバンドアが開閉するため、バンドアで光を遮った際に、複数の発光部間の隙間の影響が少なくなり、照射面に光むらが発生するのを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態を示す照明器具の正面図である。
【図2】同上照明器具の側面図である。
【図3】同上照明器具の正面方向から見た断面図である。
【図4】同上照明器具の平面方向から見た断面図である。
【図5】同上照明器具のバンドアを使用した場合に照射面に映る影の状態を模式的に示す説明図である。
【図6】光源部の複数の発光部が並ぶ方向にバンドアが開閉する比較例の照明器具の場合に、照射面に映る縞模様の影の状態を模式的に示す説明図である。
【図7】実施形態の照明器具および比較例の照明器具において、照射面の各位置毎の照度を測定した結果を示すグラフである。
【図8】比較例の照明器具において、発光部と照射面における照度との関係を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を、図1ないし図7を参照して説明する。
【0013】
図1および図2に示すように、照明器具11は、例えばスタジオや舞台などの照明に用いられるもので、器具本体12、この器具本体12をスタジオや舞台などの天井に設置されるバトンに対して吊下げ支持する器具支持体13、および光照射範囲を制限する遮光板であるバンドア14を備えている。
【0014】
図1ないし図4に示すように、器具本体12の内部には、複数であって例えば2つの光源ユニット16、これら光源ユニット16からの光を前方へ向けて反射させる反射体17、反射体17の前方に設けられた例えばアクリル樹脂などからなる透明な透光板18、点灯用の直流電源を供給する2つの電源装置19、および点灯用の直流電源の供給を受けて各光源ユニット16を点灯させる2つの点灯装置20が配置されている。
【0015】
そして、器具本体12は、横長の箱形に形成され、前面には光源ユニット16からの光を外部である前方へ向けて照射する横長の照射開口23が形成され、この照射開口23の内側に図示しない拡散板やカラーフィルタなどのフィルタが着脱可能に取り付けられるフィルタ取付部24が形成されている。
【0016】
また、各光源ユニット16は、発光モジュール27、およびこの発光モジュール27を取り付けた放熱体28を備えている。
【0017】
発光モジュール27は、例えば、熱伝導性に優れたアルミニウムなどの金属あるいはセラミックスなどの材料で略矩形状に形成された四角形状のモジュール基板29を有し、このモジュール基板29の前面に光源部30が形成されている。この光源部30には、円形の周壁部31の内側に、細長いライン状の複数の発光部32が、これら発光部32の長手方向に対して直交する方向に互いに間隔を開けて並設されている。
【0018】
発光モジュール27は、COB(Chip On Board)モジュールで構成されている。すなわち、各発光部32には、モジュール基板29に実装される例えばLED素子などの複数の半導体発光素子33が発光部32の長手方向に沿って1列状に配列されているとともに、これら半導体発光素子33を覆う蛍光体層34が形成されている。半導体発光素子33が、例えば、LED素子の場合、LED素子は青色光を発し、蛍光体層34はLED素子が発した青色光によって励起されて主に黄色光を発する蛍光体を含有したシリコーン樹脂で形成され、これにより、蛍光体層34の表面から青色光と黄色光とが混色された白色系の光が放出される。
【0019】
複数の発光部32間であって、発光部32の半導体発光素子33と隣り合う発光部32の半導体発光素子33との間には、モジュール基板29の前面に絶縁層を介して形成された配線パターンに対して各半導体発光素子33を電気的に接続する配線スペースのための隙間35が形成されている。この隙間35の寸法は、各発光部32内での半導体発光素子33の実装ピッチより大きくなっている。
【0020】
したがって、光源部30は、見かけ上、複数の半導体発光素子33の列毎に発光部32が形成され、これら複数列の発光部32が隙間35を開けて設けられているように見える。
【0021】
放熱体28は、例えば、熱伝導性および放熱性に優れたアルミダイカストで形成され、前面に四角形状の発光モジュール取付面36が形成され、後面側に複数の放熱フィン37が形成されている。
【0022】
放熱体28の発光モジュール取付面36の中央には、発光モジュール27のモジュール基板29の背面が接触して配置され、これらがモジュール基板29の四隅を通じて放熱体28に螺着される各ねじ38で締め付け固定され、モジュール基板29の背面が発光モジュール取付面36に効率よく熱伝導可能に密着されている。このとき、発光モジュール27は、複数の発光部32が隙間35を開けて並ぶ方向が水平方向および上下方向に対して例えば45°傾斜する状態で放熱体28に取り付けられている。
【0023】
発光モジュール27と放熱体28との1つずつを組として2組の光源部30が個別に形成され、これら光源部30が器具本体12内に水平方向に並んで取り付けられている。すなわち、器具本体12の上面部および底面部からそれぞれ器具本体12の内方へ突出された上下の取付板39に、各放熱体28の前面上下部が熱伝導可能に接触して取り付けられている。各発光モジュール27は、配線によって対応する各点灯装置20に接続されている。
【0024】
また、反射体17には、各発光モジュール27に対応して2つの反射体部42が水平方向に並んで形成されている。各反射体部42には、中央に発光モジュール27の光源部30が対向する開口部43が形成され、この開口部43の周辺部から前方へ向かって拡開するように反射面44が形成されている。
【0025】
また、電源装置19は、各発光モジュール27毎に用いられ、外部から交流電源を入力し、直流電源に変換して点灯装置20に供給する。
【0026】
また、点灯装置20は、各発光モジュール27毎に用いられ、電源装置19から点灯用の直流電源の供給を受け、外部から入力される調光信号を含む制御信号に応じて、PWM制御などで半導体発光素子33を調光点灯させる。
【0027】
次に、図1ないし図4に示すように、器具支持体13は、器具本体12の両側面部に取り付けられる軸部材49,50、これら軸部材49,50を介して回動可能に支持するアーム51を有し、アーム51によってスタジオや舞台のバトンに吊下げ支持されている。
【0028】
次に、図1および図2に示すように、バンドア14は、器具本体12の前端上下部に取り付けられて縦方向に開閉可能とする縦方向バンドア54と、器具本体12の前端両側部に取り付けられて横方向に開閉可能とする横方向バンドア55とを備えている。
【0029】
縦方向バンドア54は、器具本体12の照射開口23の横幅より広く、器具本体12の幅寸法と同程度の幅の長方形板状に形成され、バンドア支持機構56によって器具本体12の前端上下部に縦方向へ開閉可能に支持されている。横方向バンドア55は、器具本体12の照射開口23の縦幅より広く器具本体12の縦寸法と同程度の幅に形成され、バンドア支持機構57によって器具本体12の前端両側部に横方向へ開閉可能に支持されている。これらバンドア54,55の先端縁は、器具本体12の前面と平行な直線状に形成されている。
【0030】
次に、照明器具11の動作を説明する。
【0031】
各点灯装置20に、各電源装置19から直流電源が供給されるとともに、調光信号を含む制御信号が入力されることにより、制御信号に応じて例えばPWM制御などで各発光モジュール27の各発光部32の各半導体発光素子33を調光点灯させる。
【0032】
各発光部32の各半導体発光素子33の点灯により放出される光は、反射体17内に入り、透光板18を透過し、フィルタ取付部24にフィルタが配置されている場合にはそのフィルタを透過して照射面に照射される。
【0033】
また、バンドア14を開閉することにより、照射面に対して光を照射する範囲を調整できる。すなわち、光の照射範囲を狭くする場合には、バンドア14を閉じ、器具本体12の照射開口23を通じて光が放出される領域内に進入させて光を遮り、また、光の照射範囲を広くする場合には、バンドア14を開き、器具本体12の照射開口23を通じて光が放出される領域から後退させて光を遮るのを少なくまたは無くす。
【0034】
このとき、バンドア14の縦方向バンドア54および横方向バンドア55のそれぞれの開閉方向と、光源部30の複数の発光部32が並ぶ方向とは、互いに例えば45°傾斜してずれている。これにより、光が照射される照射面において、縦方向バンドア54および横方向バンドア55で遮られて影となる部分と光が照射される部分との境界付近では、明るさが連続的に変化し、縞模様となるなどの光むらが発生するのを低減できる。
【0035】
すなわち、図5は縦方向バンドア54を使用した場合に照射面に映る影の状態を模式的に示すもので、光が照射される照射面において、縦方向バンドア54で完全に遮られて影となる影部aと光が全く遮られずに照射される全光照射部bとの境界付近では、明るさが連続的に変化しており、縞模様となるなどの光むらが発生するのを低減できる。
【0036】
ここで、比較例として、光源部30の複数の発光部32が並ぶ方向を照明器具11の縦方向とし、縦方向バンドア54で光を遮った場合について説明する。この場合、図6に照射面に映る縞模様の影の状態を模式的に示し、光が照射される照射面において、縦方向バンドア54で光が完全に遮られて影となる影部aと光が全く遮られずに照射される全光照射部bとの境界付近に、暗部cと明部dとが交互に並ぶ縞模様の光むらが生じているように見える現象が生じる。
【0037】
そこで、比較例において、受光部分の小さい照度計により、照射面の各暗部cの位置を含むように縦方向に等ピッチで照度を測定した結果を図7の線Sに示す。図7の横軸には縦方向バンドア54で光が完全に遮られて影となる影部aから光が全く遮られずに照射される全光照射部bへの測定位置を示し、縦軸には各測定位置の照度を示す。
【0038】
図7の線Sに示すように、縞模様の各暗部cの部分は、周囲と比較して暗くなっているというわけではなく、複数の発光部32間にある各隙間35の影響によって、周囲より明るさの増加量が少なく、その周囲との明るさの増加量とのギャップがあったために、暗く認識されたものと考えられる。そのため、目の錯覚によって暗部cと明部dとが交互に並ぶ縞模様の光むらが生じているように見えていると考えられる。
【0039】
そして、この比較例のように、縦方向バンドア54の先端縁と複数の発光部32とが平行であると、光むらが顕著に現れやすいと考えられる。これを模式的に示すと、図8のようになる。図8において、縦方向に隙間35をあけて並ぶA〜Eの各発光部32の下辺をそれぞれA1〜E1、上辺をそれぞれA2〜E2とし、これらA〜Eの各発光部32の光が照射される照射面をXとする。図8に示すように、縦方向バンドア54の先端縁とA〜Eの発光部32とが平行であると、照射面Xにおいて、A〜Eの各発光部32の光が全て照射される全光照射部bから全て遮られる暗部cに向かうに従い、E、D、C、B、Aの順に発光部32からの光が遮られ、照度が減少していくように変化していくが、A〜Eの各発光部32の各隙間35に対応する部分では照度の変化が少ない平滑部eが生じる。この平滑部eに関しては、照度の値のうえでは、強い光むらにとれる分布にはなっていないが、このような平滑部eを有する分布であると、明暗を強調させる錯視によって強いむらが確認されると考えられる。
【0040】
それに対して、本実施形態の照明器具11では、バンドア14の縦方向バンドア54および横方向バンドア55のそれぞれの開閉方向と、光源部30の複数の発光部32が並ぶ方向とが、互いに例えば45°傾斜してずれており、縦方向バンドア54および横方向バンドア55の先端縁と複数の発光部32とが平行とならずに傾斜している。そのため、図5に示したように、照射面において、縦方向バンドア54(横方向バンドア55も同様)で光が完全に遮られて影となる影部aと光が全く遮られずに照射される全光照射部bとの境界付近では、複数の発光部32間の隙間35の影響が少なくなり、明るさが連続的に変化し、縞模様となるなどの光むらが発生するのを低減できる。
【0041】
本実施形態の照明器具11において、比較例と同様に、照度を測定した結果を図7の線Tに示す。図7の線Sと線Tとの対比から明らかなように、本実施形態は照度が直線的に変化している。
【0042】
このように、本実施形態の照明器具11によれば、光源部30の複数の発光部32が並ぶ方向に対して斜めとなる方向にバンドア14が開閉するため、バンドア14で光を遮った際に、複数の発光部32間の隙間35の影響が少なく、照射面に光むらが発生するのを低減できる。
【0043】
そのため、透光板18を使用して光を投影する場合でも、照射面に光むらが発生するのを低減でき、また、光むらの低減のために拡散フィルタを使用する必要がなく、光量の低下を防止できる。
【0044】
また、光源部30を、バンドア14の縦方向バンドア54および横方向バンドア55に対して、複数の発光部32が並ぶ方向が斜めとなるように器具本体12内に配置するため、バンドア14側を斜めにする場合よりも、器具本体12やバンドア14の構造を変えずに簡単に構成することができる。
【0045】
なお、発光モジュール27は、モジュール基板29の周辺部に対して斜め方向に沿って複数の発光部32を形成し、このモジュール基板29の周辺部を放熱体28の発光モジュール取付面36の周辺部とそれぞれ平行になるように取り付けてもよい。
【0046】
また、発光モジュール27の複数の発光部32が並ぶ方向に対してバンドア14側が斜めになるように、器具本体12に対してバンドア14を斜めに設けてもよい。
【0047】
また、バンドア14は、器具本体12の縦方向、横方向に限らず、斜め方向に備えてもよく、これらバンドア14の位置や個数については任意である。これらバンドア14と発光部32とを斜めとする角度は15°〜75°の範囲、好ましくは30°〜60°の範囲であり、より好ましくは45±5°の範囲である。
【0048】
また、前記実施形態では、器具本体12内に2つの光源部30を配置した場合を示したが、2つに限らず、器具本体12内に3つ以上の光源部30を配置したものでもよく、あるいは、器具本体12内に1つの光源部30を配置したものでもよい。
【0049】
また、光源部の複数の発光部は、複数の直管形の蛍光ランプや複数の直管部を有する蛍光ランプでもよい。
【符号の説明】
【0050】
11 照明器具
12 器具本体
14 バンドア
23 照射開口
30 光源部
32 発光部
35 隙間
54 縦方向バンドア
55 横方向バンドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射開口を有する器具本体と;
照射開口に対向して器具本体内に配置され、複数の発光部が隙間を開けて並設された光源部と;
光源部の複数の発光部が並ぶ方向に対して斜めとなる方向に開閉し、器具本体の照射開口から外部へ照射する光を遮光可能とするバンドアと;
を具備していることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
バンドアは、器具本体の上下部に設けられて縦方向に開閉可能とする縦方向バンドア、および器具本体の両側部に設けられて横方向に開閉可能とする横方向バンドアを有し、
光源部は、縦方向バンドアおよび横方向バンドアに対して、複数の発光部が並ぶ方向が斜めとなるように器具本体内に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−22875(P2012−22875A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159615(P2010−159615)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】