説明

照明器具

【課題】固体発光素子とレンズとを組み合わせた照明器具において、照射むらやグレアの発生を低減又は防止する。
【解決手段】照明器具1は、複数のLED22を有する発光部2と、これらLED22の各々に対向して設けられた複数のレンズ32を有する配光制御部3と、発光部2と配光制御部3との間隔を調整する位置調整部4と、を備える。配光制御部3は、レンズ32間に位置する平坦部33に、LED22から出射されて平坦部33に直接入射した直進光Lを拡散透過する、又は遮光する光学処理部又は部材を有する。直進光Lを拡散してから照明器具1の外部に照射する、又は直進光Lを遮光して照明器具1の外部に照射されないようにするので、照明器具1から照射される光の照射むらやグレアの発生を低減又は防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light emitting diode)等の固体発光素子とレンズとを組み合わせた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からLEDとレンズとを組み合わせ、照射する光の配光角を可変とする照明器具が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。このような照明器具は、図8に示されるように、複数のLED10を有する発光部20と、各々のLED10に対向して設けられた複数のレンズ30を有する配光制御部40と、発光部20及び配光制御部40を収容する筐体50と、を備える。配光制御部40は、略円柱形状とされ、その外周に雄ねじ溝41を有する。筐体50は、上面が開口した円柱形状とされ、その内周に雄ねじ溝41と螺合する雌ねじ溝51を有する。これら雄ねじ溝41と雌ねじ溝51とを螺合させることにより、筐体50は、配光制御部40を回転可能に保持する。配光制御部40を筐体50に対して回転させると、LED10とレンズ30との間隔が変化する。そのため、LED10から出射された光のレンズ30における屈折パターンが変わり、照明器具から照射される光の配光角が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−221042号公報
【特許文献2】特開2007−299679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような照明器具では、LED10から出射されてレンズ30間に位置する平坦部に入射した光(破線矢印で示す)は、レンズ30によって配光制御されないので、照明器具が照射する光に照射むらやグレアを生じ易い。例えば、平坦部を直線透過したLED10からの光は、各々のレンズ30から出射された光の外側に現れる輪光となって照射むらを生じ易い。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、発光部と配光制御部との間隔を変化させることで照射する光の配光を可変とする照明器具において、照射むらやグレアの発生を低減又は防止することができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の照明器具は、複数の光源を有する発光部と、前記複数の光源の各々に対向して設けられた複数のレンズを有する配光制御部と、前記発光部と前記配光制御部との間隔を調整する位置調整部と、を備え、前記配光制御部は、前記レンズ間に位置する平坦部に、前記複数の光源から出射されて前記平坦部に直接入射した直進光を拡散透過する、又は遮光する光学処理部又は部材を有することを特徴とする。
【0007】
前記直進光を拡散透過する光学処理部又は部材は、表面粗面化されている、又は光散乱粒子を含むことが好ましい。
【0008】
前記直進光を拡散透過する光学処理部又は部材は、その光出射面に曲面で形成される凸部を有し、前記曲面の最大傾斜角度は、前記直進光と前記光源の光軸に直交する面とが成す角度よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の照明器具によれば、平坦部に直接入射した光源からの直進光を拡散してから照明器具の外部に照射する、又は該直進光を遮光して照明器具の外部に照射されないようにすることができる。そのため、照明器具から照射される光の照射むらやグレアの発生を低減又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る照明器具の分解斜視図。
【図2】(a)は上記照明器具の断面図、(b)は(a)の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図。
【図3】(a)は上記実施形態の第1の変形例に係る照明器具の断面図、(b)は(a)の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図。
【図4】上記実施形態の第2の変形例に係る照明器具の断面図。
【図5】上記実施形態の第3の変形例に係る照明器具の断面図。
【図6】(a)は上記実施形態の第4の変形例に係る照明器具の断面図、(b)は(a)の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図。
【図7】(a)は上記実施形態の第5の変形例に係る照明器具の断面図、(b)は(a)の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図。
【図8】従来の照明器具の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る照明器具について、図1乃至図7を参照して説明する。本照明器具は、光源としてLEDを用いている。
【0012】
図1及び図2に示されるように、照明器具1は、発光部2と、発光部2の発光面側に被せられたキャップ状の配光制御部3と、発光部2と配光制御部3との間隔を調整する位置調整部4と、を備える。位置調整部4は、発光部2に設けられた位置調整部4aと、配光制御部3に設けられた位置調整部4bと、から成る。
【0013】
発光部2は、配線基板21と、配線基板21上に実装された光源となる複数のLED22と、を有する。これらLED22は、それぞれ白色光を発する白色LEDから構成される。各々のLED22の光軸は、それぞれ照明器具1の軸線と平行になっている。なお、配線基板21上に実装されるLED22の数及び配線基板21上におけるLED22の配置は、図例のものに限定されない。
【0014】
配線基板21は、高い熱伝導率を有する材料、例えば、アルミニウム等の金属、ガラスエポキシ等の樹脂、又はセラミック等の無機材料を母材として構成される。配線基板21は、円盤形状とされ、その外周にゴムパッキンから成る位置調整部4aを有する。また、配線基板21は、そのLED22実装面に高い光反射率を有する光反射部材(図示なし)を有する。光反射部材は、例えば、銀やアルミニウムから構成される。また、配線基板21は、LED22への給電を担う配線パターン(図示なし)を有する。更に、配線基板21は、配線基板21を投光機等に取り付けるための保持構造(図示なし)を有する。
【0015】
配光制御部3は、LED22から出射された光が入射する面にレンズアレイ31を有する。レンズアレイ31は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、又はガラス等の透光性材料から構成される。レンズアレイ31は、各々のLED22に対向して設けられた複数のレンズ32と、レンズ32間に位置する平坦部33と、から成る。平坦部33は、その光出射面側に光を拡散透過する光学処理部34を有する(図2(a)参照)。光学処理部34は、本実施形態においては、粗面化された光出射面を有する(図2(b)参照)。なお、レンズ32は、本実施形態においてはLED22からの光が入射する面に凹部を有したレンズとされるが、これに限定されず、例えば、一般的な凸レンズから構成されてもよい。
【0016】
光学処理部34は、例えば、平坦部33の光出射面にサンドブラストやフロスト加工を施して微細な凹凸を形成することにより得られる。また、レンズアレイ31を成型する際に、成型金型の平坦部33の光出射面に対応する部分にサンドブラストや放電加工等を施して微細な凹凸を形成しておき、その成型金型を用いてレンズアレイ31を作製することで光学処理部34を形成してもよい。また、レンズアレイ31を成型する際に、レンズ32の部分には透光性材料を用い、光学処理部34の部分には光拡散透過性材料を用いて、レンズアレイ31を一体成型してもよい。また、これらの材料を用いてレンズ32と光学処理部34とを別々に作成した後、レンズ32と光学処理部34とを嵌合又は接合させることにより一体化してもよい。
【0017】
レンズアレイ31は、筐体35により保持されている。筐体35は、配線基板21の直径よりもやや大きい直径を有する円筒形状とされ、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属やポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂から構成される。筐体35は、その内周下端部に、ゴムパッキンから成り、発光部2の位置調整部4aと摺接する位置調整部4bを有する。
【0018】
位置調整部4a、4bは、発光部2に配光制御部3を被せたときに、互いに摺接し、その結果生じる摩擦力により、発光部2に対して配光制御部3を軸線に沿って位置調整可能に、発光部2と配光制御部3とを一体保持する。なお、位置調整部4は、発光部2に対して配光制御部3を軸線に沿って平行移動できるものから構成されていればよく、ゴムパッキン以外に、例えば、ストレートギアとギアを用いたラック&ピニオン構造やカムを用いた平行移動機構から構成されてもよい。
【0019】
照明器具1は、配線基板21の配線パターンと電気的に接続された配電線(図示なし)を導出しており、この配電線は、スイッチやマイコン等を備えた調光装置(図示なし)に接続されている。調光装置は、更に、商用電源(図示なし)と電気的に接続されており、この商用電源からLED22への電力供給を調節することによりLED22をオン/オフ制御及び調光制御する。
【0020】
上記のように構成された本実施形態の照明器具1の作用を図2(a)(b)を参照して説明する。照明器具1は、発光部2と配光制御部3との間隔を位置調整部4により調節することで、LED22から出射された光のレンズ32における屈折パターンを変化させ、照射する光の配光角を可変とする。ここで、発光部2と配光制御部3とが離れている場合、LED22から出射された光の一部は、図2(a)に示されるように、レンズ32に入射せず、平坦部33に直接入射することがある。このような直進光Lは、図2(b)に示されるように、平坦部33から出射される際に、光学処理部34により種々の方向に拡散されてから照明器具1の外部へと照射される。
【0021】
次に、本実施形態の第1の変形例に係る照明器具を図3(a)(b)を参照して説明する。本変形例の照明器具1は、平坦部33の光出射面側表面に直進光Lを拡散透過する拡散透過部材36を着脱可能に有する。拡散透過部材36は、例えば、透明ポリカーボネート樹脂や透明アクリル樹脂を母材として構成され、図3(b)に示されるように、その内部に光散乱粒子36aを含む。光散乱粒子36aは、例えば、炭酸カルシウム結晶やアクリル樹脂等から構成される。直進光Lは、拡散透過部材36を透過する際に、光散乱粒子36aに衝突して種々の方向に拡散されてから照明器具1の外部へ照射される。
【0022】
次に、本実施形態の第2の変形例に係る照明器具を図4を参照して説明する。本変形例の照明器具1は、平坦部33の光出射面側に直進光Lを遮光する光学処理部37を有する。光学処理部37は、平坦部33の光出射面に顔料等の遮光性塗料が塗布されたものである。直進光Lは、光学処理部37により遮光されるので、照明器具1の外部に照射されない。
【0023】
次に、本実施形態の第3の変形例に係る照明器具を図5を参照して説明する。本変形例の照明器具1は、平坦部33の光出射面側表面に直進光Lを遮光する遮光部材(遮光マスク)38を着脱可能に有する。遮光部材38は、LED22からの光を透過しない材料から構成されていればよく、例えば、黒色のプラスチック板から構成される。直進光Lは、遮光部材38により遮光されるので、照明器具1の外部に照射されない。
【0024】
次に、本実施形態の第4の変形例に係る照明器具を図6(a)(b)を参照して説明する。本変形例の照明器具1は、平坦部33の光出射面側に直進光Lを拡散透過する光学処理部39を有する。光学処理部39は、図6(b)に示されるように、その光出射面に曲面で形成される微少な凸部39aを有する。凸部39aは、略半球形状とされ、その曲面の最大傾斜角度θ1は、平坦部33を伝搬する直進光LとLED22の光軸に直交する面Pとが成す角度θ2よりも大きく設定されている。こうすることにより、光学処理部39の光出射面において、直進光Lが全反射される角度を有する部分が少なくなる。直進光Lは、光学処理部39を透過する際に、凸部39aにおいて種々の方向に拡散されてから照明器具1の外部へ照射される。
【0025】
次に、本実施形態の第5の変形例に係る照明器具を図7(a)(b)を参照して説明する。本変形例の照明器具1は、平坦部33の光出射面側表面に直進光Lを拡散透過する拡散透過部材40を有する。拡散透過部材40は、拡散透過部材36と同様に、透明ポリカーボネート樹脂や透明アクリル樹脂等から構成され、図7(b)に示されるように、その光出射面に凸部39aを有する。直進光Lは、拡散透過部材40を透過する際に、凸部39aにおいて種々の方向に拡散されてから照明器具1の外部へ照射される。
【0026】
上述のように、本実施形態及びその変形例に係る照明器具1によれば、平坦部33に直進光Lを拡散透過する光学処理部34又は39若しくは拡散透過部材36又は40が設けられているので、直進光Lを拡散してから照明器具1の外部へ照射することができる。これにより、直進光Lによって引き起こされ得る照射むらやグレアの発生を抑制することができる。また、平坦部33に直進光Lを遮光する光学処理部37又は遮光部材38が設けられていれば、直進光Lを遮光することが可能となるので、直進光Lにより引き起こされ得る照射むらやグレアの発生を防止することができる。
【0027】
光学処理部34又は39若しくは拡散透過部材36又は40が設けられていれば、光学処理部37又は遮光部材38が設けられている場合に比べて、直進光Lが平坦部33から出射される分だけ、照明器具1の平均照度を高めることができる。
【0028】
光学処理部39や拡散透過部材40が直進光Lを全反射しにくい構造とされていれば、光学処理部34や拡散透過部材36に比べて、照明器具1の内部方向へ戻る直進光Lを低減することができる。これにより、照明器具1の光取り出し効率を向上させることができる。
【0029】
また、拡散透過部材36、40や遮光部材38が着脱可能とされていれば、照明器具1の使用目的に応じて適当な部材を適宜平坦部33に装着することが可能となるので、照明器具1の汎用性を高めることができる。また、拡散透過部材36、40や遮光部材38が比較的硬度の高い材料から構成されていれば、これら部材を照明器具1を衝撃等から保護する外殻部材として機能させることができる。
【0030】
また、配線基板21や筐体35が熱伝導率の高い材料から構成されていれば、LED22の発光に伴って生じた熱を効率良く外界へ放熱することができる。これにより、照明器具1内の異常な温度上昇を防ぐことが可能となるので、LED22の寿命を延ばすと共に、照明器具1を安定に動作させることができる。
【0031】
また、配線基板21のLED22実装面に光反射部材が設けられていれば、照明器具1の内部方向へ戻ってきた直進光Lを、光反射部材により反射して再び照明器具1の外部方向へ向かわせることができる。これにより、照明器具1の光取り出し効率を向上させることができる。
【0032】
なお、本発明に係る照明器具は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、光を拡散透過する光学処理部は、本実施形態で用いられた表面粗面化されたものや凸部を有するものに限定されず、例えば、光拡散性顔料を塗布されたもの等、光を拡散透過するものから構成されていればよい。また、拡散透過部材は、粗面化された光出射面を有する構成とされてもよい。また、直進光を拡散透過する、又は遮光する光学処理部又は部材は、本実施形態においては平坦部の光出射面側に設けられているが、平坦部の光出射面側又は光入射面側の少なくとも一方に設けられていればよい。また、光源は、本実施形態においては白色LEDとされたが、白色LEDに限定されず、他色の光を発するLEDから構成されてもよいし、LEDとは発光機構が異なる有機EL等の光源から構成されてもよい。また、複数の光源は、すべて同一とされる必要はなく、複数種類の光源から構成されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 照明器具
2 発光部
22 光源(LED)
3 配光制御部
32 レンズ
33 平坦部
34、39 直進光を拡散透過する光学処理部
36、40 直進光を拡散透過する(拡散透過)部材
36a 光散乱粒子
37 直進光を遮光する光学処理部
38 直進光を遮光する(遮光)部材
39a 凸部
4、4a、4b 位置調整部
L 直進光
P 光源の光軸に直交する面
θ1 曲面の最大傾斜角度
θ2 直進光と光源の光軸に直交する面とが成す角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源を有する発光部と、
前記複数の光源の各々に対向して設けられた複数のレンズを有する配光制御部と、
前記発光部と前記配光制御部との間隔を調整する位置調整部と、を備え、
前記配光制御部は、前記レンズ間に位置する平坦部に、前記複数の光源から出射されて前記平坦部に直接入射した直進光を拡散透過する、又は遮光する光学処理部又は部材を有することを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記直進光を拡散透過する光学処理部又は部材は、表面粗面化されている、又は光散乱粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記直進光を拡散透過する光学処理部又は部材は、その光出射面に曲面で形成される凸部を有し、
前記曲面の最大傾斜角度は、前記直進光と前記光源の光軸に直交する面とが成す角度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−243531(P2012−243531A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111790(P2011−111790)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】