照明構造、照明方法および携帯式コンピュータ
【課題】携帯式コンピュータのキーボート・ライトに適した照明構造を提供する。
【解決手段】照明構造は、透明なアクリル板401、光源23、および導光体11で構成されている。アクリル板はそれぞれ平坦な表面401bと裏面401aを備える。光源は、光軸100がアクリル板の裏面に対してほぼ臨界角となる傾斜角θで配置される。導光体は光源と裏面との間に配置される。そして、光源が放射した光線が導光体および光透過性パネルで屈折して表面に近い方向を進行し照射面203を照明する。
【解決手段】照明構造は、透明なアクリル板401、光源23、および導光体11で構成されている。アクリル板はそれぞれ平坦な表面401bと裏面401aを備える。光源は、光軸100がアクリル板の裏面に対してほぼ臨界角となる傾斜角θで配置される。導光体は光源と裏面との間に配置される。そして、光源が放射した光線が導光体および光透過性パネルで屈折して表面に近い方向を進行し照射面203を照明する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平坦な表面から当該表面に近い方向を照明する照明構造に関し、さらに詳細にはフラット・デザインを採用する携帯式コンピュータのキーボード・ライトに利用が可能な照明構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、キーボード表面を照射する照明装置(キーボード・ライト)を設けたノート・ブック型パーソナル・コンピュータ(以下、ノートPCという。)を開示する。照明装置はLEDを収納するLEDホルダで実現されている。表示装置の上縁は表示装置の表面に対して庇のように延びており、照明装置をその上縁に取り付けることでLEDホルダからの光線が直下に配置されたキーボードを照射できるようになっている。
【0003】
近年の携帯式コンピュータでは、表示装置の周囲の縁の表面と表示装置の表面とを同一の平面に存在させるようにしたいわゆるフラット・デザインという方式が採用されるようになってきた。この場合、表示装置の表面には庇のような構造物が存在しないので、特許文献1のような構造のキーボード・ライトを採用することはできない。また、LEDホルダをばね構造で支持してノートPCの蓋の開閉に応じて、筐体の内部から飛び出させたり筐体内部に押し込んだりする方法も考えられるが部品点数が増加したり表面に開口部が発生するので好ましくない。
【0004】
特許文献2は、光源と導光板で構成した光照射装置を開示する。導光板は、光源から入射した光線を多重反射させて、底面に対する鉛直方向と水平方向の間から出射させるように構成している。特許文献3は、壁面に埋め込んで床を照射する照明装置を開示する。同文献の照明装置は、蛍光ランプから放射された光が楔型の導光体の内部で全反射を繰り返しながら進行する際に、臨界角を越えた時点で斜め下方向に徐々に出射していくようになっている。そして同文献には出射した光が壁面に対する法線に対して65度±10度の出射角で出射することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−22470号公報
【特許文献2】特許第3982174号公報
【特許文献3】特開平8−17209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3の方法は、全反射の繰り返しを利用するために長い導光体が必要になり、ディスプレイの周辺に実装するには適さない。また、キーボードのディスプレイに近い領域を照射できるほど出射角(屈折角)が大きな光線を含んでいないためその原理をキーボード・ライトに適用することはできない。特許文献2に記載された導光板を上下反転してキーボード・ライトに利用しようとする場合には、導光板は表面Fと裏面Rとの間で多重反射をするための長さが必要になり、かつキーボードの全体を照射できるほど大きな出射角の光線を含まないため特許文献3と同様の理由でキーボード・ライトへの適用には適さない。
【0007】
そこで本発明の目的は、平坦な表面から表面に近い方向に光線を屈折させて照明できる照明構造を提供することにある。さらに本発明の目的は、入射角に応じて変化する光透過性パネルにおける光透過率の低減を補償しながら照度が均一な照明をすることができる照明構造を提供することにある。さらに本発明の目的は、携帯式コンピュータのキーボート・ライトに適した照明構造を提供することにある。さらに本発明の目的はそのような照明構造を採用した携帯式コンピュータ、およびそのような照明構造を利用した照明方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は平坦な表面からその表面に近い方向に光線を放射する照明構造を提供する。本発明にかかる照明構造は、光透過性パネル、光源、および導光体で構成されている。光透過性パネルと導光体は両者の屈折率がほぼ等しい材料で形成することができる。光透過性パネルはそれぞれ平坦な表面と裏面を備える。光源は、光軸が光透過性パネルの裏面に対してほぼ臨界角となる傾斜角で配置される。導光体は光源と裏面との間に配置される。そして、光源が放射した光線は導光体および光透過性パネルを透過して屈折し光透過性パネルの表面に近い方向に進行する。
【0009】
表面に近い方向を進行する光線は、光透過性パネルに垂直な照射面があるときには、当該照射面の光透過性パネルに近い領域を照明することができる。傾斜角は、光透過性パネルに入射する光の臨界角から当該臨界角よりも3度大きい角度の範囲で選定すると面的に広がる平坦な放射面から放射される光を有効に活用することができる。導光体は、光源の光が入射する入射面と、入射面に対向する位置に配置された出射面とを有し、出射面に入射した光線の一部が最大屈折角で屈折して光透過性パネルに入射するように構成することができる。
【0010】
最大屈折角で導光体から出射した光線は、光透過性パネルの表面からも大きな屈折角で出射する。そのときの屈折角は最大屈折角から60度の範囲とすることができる。導光体は、入射面と出射面に連絡し取り付け面を提供する平坦な底面と、入射面と出射面に連絡し底面に対向する位置に配置され、光軸を含む底面に垂直な平面で切断された断面が曲線で形成された反射面を備えるように構成することもできる。反射面は光源から直接入射した光を全反射させて出射面に入射させることができる。出射面は断面が3次曲線または円弧で形成することができる。
【0011】
導光体は光源の光軸を進行する光線が出射面の曲線のなかで裏面に最も近い位置に入射するように構成することができる。さらに出射面の最も近い位置と裏面は離れていてもよいが、光透過性パネル上における光が出射する位置を導光体の位置に対してシフトさせないためには両者が接触していることが望ましい。導光体は底面に密着して配置され底面における全反射を抑制してそこに入射する光を吸収する吸収層を備えることができる。その結果、光透過性パネルの正面方向(法線方向)にはほとんど光線が進行しないため、キーボード・ライトに使用したときにユーザにまぶしさを感じさせないようにすることができる。吸収層は底面にスクリーン印刷で黒色インキを塗布して形成することができる。
【0012】
本発明は、光線が光り透過性パネルを透過する際に、入射角に応じて変化する透過率の低減を補償しながら照度が均一な照明をする方法として捕らえることもできる。最初に、光軸が光透過性パネルの裏面に対してほぼ臨界角となる傾斜角で光源を配置する。つづいて、屈折角が小さくなるに従って光線密度が低下するように光源が放射した光線を最大屈折角から所定の範囲までの屈折角まで屈折させて導光体から出射する。最後に導光体から出射した光線を光透過性パネルの裏面から入射させて最大屈折角から所定の範囲までの屈折角で屈折させ表面から出射させる。導光体から出射した光線は屈折角が大きい光線群の光線密度が高くなる。そして、光透過性パネルでは入射角が大きい光線ほど光透過率が小さくなるため、照射面の照度は両者が補償されて均一になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、平坦な表面から表面に近い方向に光線を屈折させて照明できる照明構造を提供することができた。さらに本発明により、入射角に応じて変化する光透過性パネルにおける光透過率の低減を補償しながら照度が均一な照明をすることができる照明構造を提供することができた。さらに本発明により、携帯式コンピュータのキーボート・ライトに適した照明構造を提供することができた。さらに本発明によりそのような照明構造を採用した携帯式コンピュータ、およびそのような照明構造を利用した照明方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態にかかる照明構造に適用する照明アセンブリを説明する図である。
【図2】空気とアクリルの境界面における光線の挙動を説明する図である。
【図3】入射面に照射した平行光線が対向面に入射する際の入射角αを位置ごとに示す図である。
【図4】照明アセンブリにおける典型的な光線の経路を示す図である。
【図5】照明アセンブリを壁に取り付けて壁の開口から照射面の壁に近い領域を照射する第1の照明構造を説明する断面図である。
【図6】照明アセンブリの配向特性を説明する図である。
【図7】透過性のパネルを通過する光線の特性を説明する図である。
【図8】照明アセンブリをアクリル板の裏側に配置して照射面のアクリル板に近い領域を照射する第2の照明構造を説明する断面図である。
【図9】照明アセンブリをアクリル板の裏側に配置して照射面のアクリル板に近い領域を照射する第2の照明構造を説明する断面図である。
【図10】照明アセンブリをキーボード・ライトに適用する例を説明する図である。
【図11】ディスプレイ筐体の表面を覆うアクリル板の構成を説明する図である。
【図12】光軸の傾斜角を決定する方法を説明する図である。
【図13】導光体の断面形状の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[照明アセンブリ]
図1は、本実施の形態にかかる照明構造に適用する照明アセンブリを説明する図である。図1(A)は照明アセンブリ10の前方斜め上からみた斜視図で、図1(B)は上から見た平面図で、図1(C)は図1(B)のA−A矢視において、光源23の光軸を含み幅W方向の中心でかつ底面に垂直な平面で切断した断面図である。導光体11は、A−A矢視の断面に平行な平面でいずれの場所で切断しても図1(C)の形状になっている。
【0016】
導光体11は、材料に光の透過率が高いアクリル(PMMA)樹脂を使用して圧縮成形や射出成形などの方法で一体成形している。導光体11は、入射面13と底面12と対向面50と側面19、21を含んでいる。入射面13と側面19、21は底面12に対して垂直な平面である。導光体11は、一例として幅Wを12mm、長さLを6mm、高さHを2.5mmとしている。対向面50の断面における形状は3次曲線を採用したり、所定の半径および中心角の円弧を組み合わせたり、さらにそれらに直線を組み合わせたりして形成することができる。
【0017】
光源23には発光ダイオードを採用している。光源23の放射面は一例として直径2mmの放射面からその中心をとおり放射面に垂直な光軸に対して60度の角度で円錐状に光線が放射するように構成されている。光源23から放射された光は入射面13を通じて導光体11に進入する。対向面50のなかで、入射面13に対向する領域を先端部ということにする。対向面50には、先端部に出射面51を定義し、出射面51と入射面13との間に反射面53を定義することができる。出射面51は光源23が放射した光が導光体11から空気中に出射する領域である。
【0018】
出射面51には、入射面13から入射した光が、内部で一度も全反射しない光線と、反射面53で一度だけ全反射した光線が入射する。導光体11の内部で一度も全反射しないで対向面50に入射する光線を直接光線といい、対向面50で1回または複数回全反射してから入射する光線を反射光線ということにする。以下、最初の全反射を一次全反射といい、1次全反射した光線の全反射を二次全反射という。直接光線と反射光線の中で対向面50に、臨界角未満の入射角で入射した光線は対向面50を透過して空気中に出射し、臨界角を越える入射角で入射した光線は全反射する。
【0019】
したがって、出射面51を光源23の光が出射する導光体の領域としと定義すれば、その範囲は入射する光線ごとに異なることになる。本明細書においては、光源23が放射したいずれかの直接光線または反射光線が出射する導光体11の先端部にある対向面50の領域を出射面51ということにする。本明細書では導光体11の内部に生ずる散乱光の挙動については必要がないので説明を省略する。
【0020】
導光体11の底面12には、底面12との間に空気層が形成されないように密着させて配置した吸収層25が設けられている。吸収層25の底面27は、照明アセンブリ10の底面に相当し、照明アセンブリ10の取り付け面を提供する。吸収層25は、入射光が導光体11の底面12で全反射しないようにアクリルの屈折率に近い材料で形成されている。したがって、底面12に臨界角を越える入射角で入射した光は全反射しないで吸収層25に入る。
【0021】
本実施の形態では吸収層25に黒色系の半透明の材料を使用することで吸収層25に入射した光を吸収し、入射光が吸収層25の底面27と空気または取り付け材料との境界で全反射して対向面50に入射しないようにしている。吸収層25は、黒色のインクを導光体11の底面12にスクリーン印刷により塗布することで形成することができる。ただし、底面12と吸収層25との間に空気層を挟まないこと、入射光を効率的に吸収できること、およびアクリルと屈折率が近いことの3つの条件を満たすことができれば、吸収層25を黒色の樹脂と透明な樹脂との2色の材料で成型した他の材料または他の方法で形成することができる。
【0022】
[屈折角と反射角]
図2は、空気と接するアクリル板の内部の光線の挙動を説明する図である。屈折率はアクリル板61が約1.5で空気が1である。この場合スネルの法則によりアクリル板61と空気の境界63にアクリル板61の内部から入射する光線の臨界角θmは42度となる。図2(A)は、0度から臨界角θmまで入射角αを変化させた光線が境界板61に入射するときの様子を示す。入射角αが臨界角θm未満の間は入射光線が屈折角β(β>α)でアクリル板61から空気中に出射される。このときの入射角αと屈折角βの関係を図2(C)に示す。
【0023】
図2(C)からは、入射角αが35度程度までは屈折角βは入射角αにほぼ比例して増加するが、入射角αが35度を超えたあたり(屈折角が60度に対応)から入射角の増加の割合に対して屈折角βが増加する割合が増大し、臨界角θmに近づくにしたがって屈折角βが急激に増大することがわかる。屈折角βは入射角αが臨界角θmに到達する直前に最大になるが、このときの入射角を透過最大入射角といい屈折角を最大屈折角ということにする。
【0024】
後に説明する本実施の形態の照明構造では、出射面51に各入射位置で35度≦α<θmの範囲の入射角αで入射する光線ができるだけ多くなるように光源23の光軸の方向、出射面51の形状、および反射面53の形状などを決めている。図2(B)は、臨界角θmを越えた入射角αで入射する光線が境界63において反射角γで全反射する様子を示す。全反射する場合は入射角αと反射角γが一致するように光線が進行する。
【0025】
[平行光線の対向面に対する入射角]
図3は、入射面13の全体に平行光線を放射する面光源を配置した場合に、平行光線が対向面50に入射する際の入射角αを底面12に対応する対向面50の位置ごとに示す図である。ここでは、対向面50の全体を3次曲線で形成した例で説明する。対向面50に対する入射角αは、対向面50上での位置が入射面13から遠ざかるにしたがって小さくなり、入射面13側から測定した底面12の長さPに対応する位置で臨界角θmに達する。そして、さらに前方に近付くにしたがって入射角αが低下し、対向面50の最も先端に相当する底面12の長さLの位置では入射角αがゼロになる。よって対向面50は底面12に平行な光線に対し底面の長さPに対応する位置までは全反射し、長さPから長さLに対応する位置までは透過するように作用する。
【0026】
よって、底面12に平行な光線に対する対向面50は、長さ0から長さPに対応する位置までは反射面53となり、長さPから長さLに対応する位置までが出射面51となる。ここでは3次曲線を例示して説明したが、図のように変曲点がなく外側に膨らんだ連続する曲線の場合は、臨界角の位置はそれぞれ異なるが入射面13からの距離と入射角の関係は同様の傾向になる。実際の光源23は入射面13に対して光軸に平行な光線だけを放射するものではなく、さらに光源23の放射面は入射面13の面積より小さく約60度の円錐ビーム状に広がる配向特性を備えているので、対向面50のそれぞれの位置にはさまざまな入射角αで光線が入射する。
【0027】
[照明アセンブリの光線の経路]
図4は、照明アセンブリ10における典型的な光線の経路(光路)を示す図である。図4は、図1のA−A矢視の光軸100を通り底面12に垂直な断面を示している。ここでは、図1に示したサイズの導光体において、対向面50の先端部を断面が半径1.5mmで中心角が60度の円弧で形成し、それ以外の領域を半径9mmで中心角が30度の円弧で形成している。光源23は底面12に垂直な放射面から、入射面13に60度の広がりで円錐ビーム状の光を放射しており、図では放射光の上下方向の外延を光線101と光線109で示し、光源23の放射面の上下方向の範囲を位置S1と位置S3で示している。
【0028】
光源の中心位置S2を通り放射面に垂直な光軸100上を光線106が進行する。光軸100は、底面12に平行になるように入射面13と光源23の放射面が調整されている。また、光線106が入射する対向面50上の位置P5の接線131に対する光線106の入射角は、臨界角に一致するように光源23の高さ方向の位置を設定している。
【0029】
最初に光源の位置S1と位置S3の間から放射されて、対向面の位置P5に入射する直接光線の経路を説明する。図4ではこの場合の代表的な光線として、光線105、106、107を示している。光源の位置S2よりわずかに位置S3よりの位置から放射されて位置P5に入射する直接光線は入射角が臨界角θmよりわずかに小さくなって透過し、図2(C)から明らかなように最大屈折角で屈折して光線121として出射する。出射する光線121の方向は、接線131よりもわずかに右方向に回転している。光源の位置S2と位置S3の間から放射されて位置P5に入射する直接光線は、放射位置が位置S3に近づくにしたがって入射角が小さくなり、光線121が位置P5を中心にして矢印Aで示す右回りに回転した方向に出射する。
【0030】
光源の位置S2よりわずかに位置S1に近づいた位置から放射された直接光線は、臨界角に近い反射角で全反射して底面12に入射する。光源の位置S2と位置S1の間から放射されて位置P5に入射する直接光線は、放射位置が位置S1に近づくにしたがって入射角が大きくなって反射角も大きくなるため、底面12と対向面50が連絡する位置P8に近づくような底面12上の位置に入射する。底面12に入射した光線は、吸収層25でほぼ吸収されるため底面27ではほとんど全反射が発生しない。
【0031】
つぎに光源の位置S1と位置S3の間から放射されて光軸100に平行な光線の経路について説明する。図3(A)から類推できるように、光源の位置S1と位置S2の間から放射された光軸100に平行な光線は入射角が臨界角を越えるので位置P4と位置P5の間で一次全反射して底面12に入射するか対向面50の先端部で二次全反射して底面12に入射する。図4では光線104が位置P4で一次全反射して底面12に入射する様子を示している。光源の位置S2と位置S3の間から放射された光軸100に平行な光線は、入射角が臨界角よりも小さくなるのですべて透過する。
【0032】
光源の位置S2よりわずかに位置S3よりの位置から放射された光軸100に平行な光線は図2(C)から明らかなように透過最大入射角で対向面50に入射して透過し最大屈折角で屈折する。そして、放射位置が位置S3に近づくにしたがってあるいは入射位置が位置P6に近づくにしたがって、入射角および屈折角が小さくなりそれぞれの入射位置での接線から離れる方向に進行する。図4では、光線108が位置P6で透過して光線123として出射する様子を示している。透過光の屈折角は、それぞれの入射位置での入射角により、最大屈折角からそれより所定範囲だけ小さい範囲の屈折角まで各放射位置により連続的に変化する。
【0033】
つぎに、光源23から放射されて対向面の位置P4から位置P6の範囲以外の位置に入射する代表的な直接光線の経路を説明する。照明アセンブリ10は光線101が対向面50の位置P1で全反射するように光学的な形状を設定している。したがって、位置P1から対向面50と入射面13が連絡する位置である位置P0までの範囲は光学的に機能しない。また、光線109は直接底面12に入射するが、底面12では全反射しないで吸収層25で吸収される。
【0034】
光源23から対向面の位置P1からP4までの間に入射する直接光線は、この例ではいずれも対向面50で一次全反射する。図4には、光線101が位置P1で一次全反射して底面12に入射し、光線102が位置P2で一次全反射して位置P7に入射し透過する様子を示している。位置P7から出射する光線102は、位置P5における接線131よりも右方向(導光体11に近付く方向)に進行する。光線103は位置P3で一次全反射して位置P6と位置P7の間で二次全反射し底面12に入射する。このように位置P1から位置P4までの間で一次全反射した反射光線は、位置P6と位置P8の間に入射して透過するものを含むが、対向面50で一次全反射した光線のなかで、さらに対向面50で二次全反射する光線はほとんどが底面12に入射して対向面50から出射しない。
【0035】
光源23から放射されて対向面の位置P6と位置P8の間に入射する直接光線は、この例においては、一次全反射して底面12に入射するかまたは透過する。位置P6と位置P8の間で透過する直接光線は、光線102のように接線131よりも左方向に回転した方向(導光体11に近付く方向)に屈折するものを含む。光源23から放射されて対向面50の先端部分に入射する直接光線の多くは、屈折角が最大屈折角から約60度の範囲となり、それぞれの光線の入射位置における接線にほぼ近い方向から接線に対して約30度までの間で方向を変えて出射する。
【0036】
以上は、照明アセンブリ10の典型的な光線の経路を説明したものであるが、照明アセンブリ10の第1の特徴は、光軸100上にある位置P5から位置P8までの曲面で形成された領域が、そこに入射するさまざまな経路の光線を透過させて最大屈折角から所定の屈折角の範囲までの屈折角で屈折さて放射する点にある。なお、所定の屈折角は60度から45度程度の範囲に設定することもできる。第2の特徴は、吸収層25により底面12における全反射を抑制することで反射面53から出射する光線を抑制している点にある。第3の特徴は対向面50上の位置P1と位置P4の範囲にある対向面50は、そこに入射する光線を一次全反射させ、その一部の光線を位置P5から位置P8の範囲に入射させて透過するようにしている点にある。
【0037】
導光体11は、先端部分に形成された最大屈折角から60度程度までの範囲の屈折角で入射光を屈折させる対向面50を利用して、光軸100に対して下向きの方向または底面12の方向を照射するのに適した構造になっている。そして、対向面50と底面12との間での多重全反射を利用するものではないため導光体の長さLは光学的な制約を受けない。したがって、対向面50からの一次全反射の光線を照明に利用する必要がない場合は、長さLを物理的に可能な範囲まで短くすることができる。よって照明アセンブリ10は、特に小型の電子機器に組み込む上で有利な構成になっている。
【0038】
[第1の照明構造]
つぎに図5の断面図を参照して、照明アセンブリ10を壁に取り付けて照射面203の壁に近い領域を照射する第1の照明構造を説明する。壁201は照射面203から上方に垂直に延びている。照明アセンブリ10が照射する範囲は壁からの距離L2で示している。壁の位置から距離L2の半2にある照射面203の領域を要求照射領域という。照明アセンブリ10は、図4と同じ断面を示しているが、光源23の光軸100上を進行する光線106が入射する対向面50上の位置Q5は、壁の表面205から最も飛び出た位置であるが図4の位置P5とはわずかに異なっている。
【0039】
その理由は、面積的に広がる光源23の放射面から放射される光線を有効に活用するために光軸100を壁の表面205に対して傾斜角θで傾斜させて、傾斜角θを臨界角θm(42度)よりわずかに大きい45度にした点にあるが、これについては図12を参照して後に説明する。ここに傾斜角θは、壁の表面205の法線に対する角度をいう。
【0040】
壁201には、照明アセンブリ10を固定する位置に開口202が形成されている。壁201は位置209でわずかに内側に傾斜してさらに傾斜角θで傾斜した取り付け部207に連絡する。照明アセンブリ10は取り付け部207に底面27が取り付けられる。第1の照明構造においては、照明センブリ10を壁201に取り付けることは一例であり、壁201を利用しないで取り付けてもよい。底面27と光軸100は平行なので、光軸100は壁の表面205に対して傾斜角θで傾斜していることになる。壁201が位置209でわずかに壁の内側方向に傾斜しているのは、導光体11の先端部分に形成された出射面が出射する光線を有効に照射面203の照明に利用するためである。
【0041】
また、光軸100を照射面203に対して傾斜させたのは、位置Q5における接線221の方向から30度程度の範囲の方向までに存在する照射面203の要求照射領域に多くの光線を照射するためである。対向面50の先端部の一部は、開口202を通じて壁の表面205よりもわずかに外側に突き出ている。光軸100上を進行する光線106が入射する対向面50上の位置Q5は、対向面の中で壁の表面205から外側に最も飛び出た位置になるように光源23の入射面に対する位置を設定している。位置Q5と壁の表面205との間隔L1は約2mmに設定している。間隔L1は、有効照射領域の壁201に近い領域に要求される照度および光源の輝度などに基づいて決定することができる。位置Q5における接線221は、壁の表面205に平行または照射面203に垂直になるように設定している。
【0042】
この照明構造では、対向面50上の位置Q5から位置Q8の間が要求照射領域を有効に照射する出射面となる。対向面50上の位置Q5から位置Q4までの間では、それぞれの位置における接線が照射面203において距離L2の範囲に入る位置に入射した光線の一部が、要求照射領域を照射することができる。したがって、位置Q4と位置Q5の間で位置Q5の近辺にある対向面50も出射面になる。
【0043】
出射面の範囲にある代表的な位置Q5および位置Q6に光源23から入射した直接光線または一次全反射した反射光線は、入射角に応じて接線221または接線223に対して最大屈折角から約60度までの範囲の屈折角で出射して要求照射領域を照射することができる。また位置Q5から位置Q8の範囲に入射した直接光線または反射光線は、出射面から最も突き出ている位置Q5に対する接線221を含む接平面よりも壁の表面205の方向に出射する光線225も含む。
【0044】
なお図5では、導光体11と光源23を壁201の内側に配置して壁に形成した開口202を利用して導光体11の一部を壁の表面205より外側に配置する例を示したが、本発明はこのような配置方法に限定するものではない。たとえば壁の端部に形成した切り欠きを利用したり、壁に形成した窪みの中に導光体と光源を配置して導光体の少なくとも一部の領域が壁の表面より突き出るようにしたりして配置することができる。
【0045】
[照明アセンブリの配向特性]
図6は、図4に示した照明アセンブリ10の配向特性を説明する図である。代表例として光源23の中心位置S2から位置S3の範囲の放射面から放射されて対向面50から出射する直接光線の経路を説明する。図6には、位置S2から位置S3までの等しい間隔の放射面上の位置から放射される直接光線の光線群251を示している。光源の位置S2から放射されて光軸100上を進行する光線は、対向面50上の位置R1から最大屈折角で出射して照射面231の壁201に最も近い位置を照射する。
【0046】
位置R1に入射した光線群251は、それぞれの入射角に対応する屈折角で出射して照射面231の壁201に近い領域である光線251から光線253の範囲で画定される領域を照明する。対向面50上の位置R2は光源23からの光線群に対して位置R1よりも小さな入射角を与える。したがって、位置R2では光源の位置S2よりも位置S1に近い位置から放射された光線も出射することができる。光源23から放射されて位置R2に入射した直接光線の光線群は、照射面231の光線255から光線257の範囲で画定される領域を照明する。
【0047】
対向面50上の位置R2は光源23からの光線群に対して位置R2よりも小さな入射角を与える。したがって、位置R3では位置R2に入射する光線よりもより位置S1に近い位置から放射された光線も出射することができる。光源23から放射されて位置R3に入射した直接光線の光線群は、この例では壁201から最も遠い領域である照射面231の光線259から光線261で画定される領域を照明する。
【0048】
位置R1から位置R3までの対向面50は、断面の形状が円弧で形成されているためそれぞれの位置に異なる入射角で入射した光線は、光線の密度が壁201に近い位置では高くなり壁201から離れるに従って低くなる配向特性の光線として出射する。したがって図5の照明構造では、照射面231の照度が壁201に近い位置で高くなり壁201から離れるに従って低くなる。図5の照明構造は、壁201の近辺にある照射面203を照射する上では有効であるが、照度のムラを排除することが必要な場合もある。照明アセンブリ10は照射面203の照度ムラを排除することができる照明構造に適用することもできるので以下にその方法を説明する。
【0049】
[第2の照明構造]
図7(A)は透明なアクリル板に入射した光線が出射するときの様子を説明する図である。アクリル板301はそれぞれ平坦な入射面303と出射面305を備えている。入射光305は空気中から入射面303に入射角α1で入射し、アクリル板301の内部を透過光307となって透過して、出射面305から屈折角β2の出射光309となって出射する。入射角α1と屈折角β2は等しく、入射角α1が0度を超えるときは入射光305と出射光309は平行になり、入射角が0度のときは入射光305と出射光309は同一直線上を進行する。
【0050】
アクリルの屈折率は空気の屈折率より大きいため入射角の大きさにかかわらず入射面303では全反射は発生せず、すべての入射光はアクリル板301の中に入り込む。また、透過光307が出射面305に入射する入射角は、つねに臨界角よりも小さくなるので出射面305では全反射が発生しない。いま、アクリル板301の内部での光の吸収や散乱がないとしたときに、可視光領域での入射光305に対する出射光309の放射発散度の割合として与えられる透過率は、フレネル反射の式で計算することができる。
【0051】
図7(B)は、フレネル反射の式で計算した入射光305に対する出射光309の入射角α1ごとの透過率を示す図である。透過率は入射角α1が0度から50度程度までは92%程度でほぼ一定であるが、入射角が60度を超えると急激に低下し、85度では20%程度まで低下する。このことは、透明なアクリル板301の表面を大きな入射角の光線で照射したときに、出射面305からはそれに応じた大きな屈折角β2の光線が出射するが、出射光の放射発散度が低下して出射面305に近い方向では十分な照度を確保できないことを意味する。
【0052】
図8はこの問題を解決した第2の照明構造を説明する図である。第2の照明構造は、図5で説明した第1の照明構造において、開口202を設けないで照明アセンブリ10の前面に光透過性の平坦なアクリル板401を配置したものである。アクリル板401は、照射面203に垂直に配置されており、光源23の光線が入射する入射面401aと光線が出射する出射面401bを備えている。入射面401aと出射面401bはいずれも平坦に形成されている。アクリル板401の厚さは一例では1.2ミリ・メートルとすることができる。また一例として、アクリル板401は導光体11と屈折率が等しくなるように選定している。
【0053】
光軸100は、入射面401aに対して傾斜角θで傾斜している。傾斜角θは光軸100上を進行する光線403が出射面51から最大屈折角に近い屈折角で出射するように選定している。入射面401aと対向面50は光線403が入射する入射面401a上の位置409で接触するように配置されている。アクリル板401と導光体11の屈折率は等しいため光線403は入射面401aで屈折しないでアクリル板401の中を進行し、出射面401b上の位置411から最大屈折角に近い屈折角で空中に出射する。導光体11は、入射面401aに位置409以外の場所では接触しないため、位置409以外の対向面50上の位置から出射する光線は、一旦空気中を進行してから入射面401aに入射する。
【0054】
図8では、光源の位置S1から放射された光線407と光源の位置S3から放射された光線405の経路を示している。図7(A)で説明したように、入射面401aに入射する光線と出射面401bから出射する光線は平行になる。したがって、位置409から入射する光線以外の光線は、図6で説明したように照射面231の壁201に近い位置ほど光線の密度が高くなるように空気中に出射して図6とほぼ同じ配向特性で放射面401bから放射される。位置409から入射する光線403は、アクリル板401の厚さ分だけ位置409よりも下に下がった位置411から出射するが、出射光403の方向は直接対向面50から空気中に出射する場合の光線の方向と同じである。
【0055】
したがって、アクリル板401から出射する光線の配向特性は、全体として図6とほぼ同じになって最大屈折角から約60度までの範囲の屈折角で出射して要求照射領域を照射することができる。ここで、図7(B)の入射角α1と透過率の関係をみると、入射角α1が大きいほど透過率が小さくなっている。この性質は導光体11で大きな屈折率で屈折しさらにアクリル板401を通過して大きな屈折率で出射した光線に対して照射面203の照度のムラを相殺し、照射面203上の壁201の位置からの距離に対応する領域の照度を均一にするように作用する。
【0056】
図8では、導光体11の一部が入射面401bに接触するように配置したが、図9に示すように導光体11の先端部と入射面401aは間隔L3だけ離隔して配置してもよい。その場合は、対向面50から出射する光線はすべて空気中を下側に進んでから入射面401aに入射する。入射する位置は、導光体11と入射面401aの間隔が大きくなるほど下側になるが、出射面401bから出射する光線の配向特性は両者を接触させた場合とほぼ同じになる。
【0057】
[照明アセンブリの適用例]
図10は、照明アセンブリ10をノートPCに適用した例を示す図である。ノートPC500は、ディスプレイ筐体501がシステム筐体505にヒンジ503で結合されて開閉可能なように支持されている。ディスプレイ筐体501は液晶表示装置(LCD)509を収納している。システム筐体505の表面にはキーボード507が実装されている。LCD509の周囲は、縁枠511a〜511dで囲まれている。縁枠511a〜511dは、LCD509とディスプレイ筐体501の隙間を隠す役割を果たす。ディスプレイ筐体501のLCD509側の表面は、1枚の透明で平坦なアクリル板521(図11参照)で覆われている。
【0058】
図11は、ディスプレイ筐体501の表面を覆うアクリル板521の平面図である。アクリル板521は厚さが1.2ミリ・メートルの薄板である。アクリル板521は縁枠511a〜511dに相当する領域が黒色系のインクがスクリーン印刷されている。そして縁枠511bの中央部では一部にスクリーン印刷を施さない領域を設けてウインドウ523を形成している。ウインドウ523は、図8、図9で説明した第2の照明構造のアクリル板401に対応する。ウインドウ523のサイズは、一例として12ミリ・メートル×6ミリ・メートルとしている。ウインドウ523の裏側において、ディスプレイ筐体501に照明アセンブリ10が取り付けられる。照明アセンブリ10は、アクリル板401に取り付けることもできる。
【0059】
照明アセンブリ10は、アクリル板521の裏面に対する法線に対して光軸が傾斜角θで傾斜するように取り付けられる。照明アセンブリ10は、導光体11をアクリル板11の裏側に設けるため、アクリル板521の表面を完全な平面にするデザイン上の要求に対応することができる。そして、ディスプレイ筐体501を開いた状態では、照明アセンブリ10の出射面51から出射した光線がウインドウ523を透過してキーボード507を照射することができる。しかも、キーボード507上の照度は全体に渡って均一になる。
【0060】
[傾斜角θの決定方法]
つぎに図12を参照して、第1の照明構造および第2の照明構造において、光軸100の照射面203に対する傾斜角θを45度にして臨界角より3度大きくした理由を説明する。図12(A)は、照明アセンブリ10を底面に並行で光軸を含む平面で切断した断面を示す。ライン231は、図5の接線221を含む接平面231が切断されて形成されている。図12(B)は、図12(A)のB−B矢視において底面に垂直で光軸を含む平面で切断した断面図である。図12(C)は、図12(A)のC−C矢視において底面に垂直で光線16cを含む平面で切断した断面図である。図12(A)で光線106a、106、106cは同一平面上を進行して、それぞれ接平面231に接する対向面上の位置Q1a、Q1、Q1cに入射する。
【0061】
図12(C)において、接線231cは接平面231を切断した状態を示し、図12(B)の接平面231を切断した接線221よりわずかに左方向に回転している。すなわち、対向面上の位置Q1cでは、光軸を含み底面に平行な平面上を進行する光線106cの入射角θcは、光軸上を進行して対向面上の位置Q1に入射する光線106の入射角θよりも小さくなる。光線106aが入射する位置Q1aでも同様になる。
【0062】
図12(B)において、接線221の法線251に対する角度は45度の傾斜角θに対応する。したがって、光軸100上を進行する光線は対向面の位置Q1で一次全反射するので有効に利用できない。しかし、光源23の放射面は、上下方向に面積的な広がりをもっているため、光線105と光線107は光軸100に対してそれぞれ約8度程度傾斜する。したがって、放射面の位置S5から放射された光線が対向面の位置Q1から最大屈折角で出射するとすれば、位置S5より下側の位置から放射された光線はすべて位置Q1から出射する。
【0063】
これに対して光線106cが接平面231に入射する位置Q1cでは光線106cの入射角θcは、傾斜角θよりも約5度小さくなる。したがって、放射面の位置S6から放射された光線が対向面の位置Q1cから最大屈折角で出射するとすれば、放射面の位置S6より下側の位置から放射された光線はすべて位置Q1cから出射する。位置Q1aに対する光線も同様に出射する。よって、位置Q1a、Q1、Q1cを含む接平面231に接する対向面の位置に入射する光線の中で、図12(A)の平面上で光軸上の位置Q1を挟んだXaからXcの範囲に入射した光線は透過しない。
【0064】
しかし光軸よりも下方向にある放射位置から放射されて、位置Q1aとXaの間または位置Q1cと位置Xcの間に入射する光線は透過するので、光源全体から放射される光線の利用率が高くなるようになっている。このように傾斜角θを45度にすることで、特に接線221にほぼ平行に出射する光線の量を多くして壁201に近い領域を照明する光線の入射効率を高めることができる。なお、傾斜角θは臨界角である42度から45度の範囲に選定することができる。
【0065】
[導光体の他の例]
図13は、導光体の断面形状の他の例を示す断面図である。図13(A)〜図13(D)はいずれも図1のA−A矢視に対応する位置での断面を示し、さらに底面には吸収層を備えているものとする。図13(A)の導光体では対向面501が、位置T1から位置T3までの範囲の平面状の出射面503と、3次曲線または所定の半径および中心角の円弧で形成された反射面505を備えている。
【0066】
光源23の光軸に対する出射面503の傾斜は、光軸上を進行する光線507が出射面503の位置T2に対して臨界角で入射するように設定している。この場合、光源の位置S1からS3の間から光軸に平行に放射された光線は透過しないが、臨界角よりも小さな角度で入射する光線は透過する。屈折角は、出射面503における入射位置と光源の放射位置で決まるが、最大屈折角から所定の範囲までの角度で均等に分散する屈折角の出射光を得ることができる。
【0067】
ただしこの場合は、反射面505で一次全反射して出射面503に入射する光線は、出射面503で二次全反射して底面509に入射するため光源23から放射される光の利用率は低下する。これを補うために、点線で示したように位置R2から底面509に垂直な平面を形成することもできる。そして出射面503を光軸に対してさまざまな角度で傾斜する平面が隣接するように形成すると、最も効率のよい図4の形状に到達することになる。
【0068】
図13(B)は、出射面513を図4の出射面と同じ形状にし、反射面515を平面状に形成した例を示す。図13(C)は、出射面を含む対向面の領域521は図4と同じ形状であるが、光源に近い領域523は光源に近付くにしたがって底面525側に湾曲している。領域523は、入射光の入射角および反射角を大きくして一次全反射した光線ができるだけ多く出射面に入射できるようにしている。図13(D)は、光軸537を傾斜角θで傾斜させて照明アセンブリを取り付ける場合に、導光体自体を傾斜させないで取り付けることができるようにしたものである。図13(D)では、光軸に対して傾斜角θで交わる平面531と、平面531と入射面535を連絡する領域533で形成されている。
【0069】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0070】
10…照明アセンブリ
11…導光体
12…導光体の底面
13…入射面
23…光源
25…吸収層
27…照明アセンブリの底面
50…対向面
51…出射面
53…反射面
100…光軸
401、521…透明なアクリル板
500…携帯式コンピュータ
523…ウインドウ
【技術分野】
【0001】
本発明は平坦な表面から当該表面に近い方向を照明する照明構造に関し、さらに詳細にはフラット・デザインを採用する携帯式コンピュータのキーボード・ライトに利用が可能な照明構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、キーボード表面を照射する照明装置(キーボード・ライト)を設けたノート・ブック型パーソナル・コンピュータ(以下、ノートPCという。)を開示する。照明装置はLEDを収納するLEDホルダで実現されている。表示装置の上縁は表示装置の表面に対して庇のように延びており、照明装置をその上縁に取り付けることでLEDホルダからの光線が直下に配置されたキーボードを照射できるようになっている。
【0003】
近年の携帯式コンピュータでは、表示装置の周囲の縁の表面と表示装置の表面とを同一の平面に存在させるようにしたいわゆるフラット・デザインという方式が採用されるようになってきた。この場合、表示装置の表面には庇のような構造物が存在しないので、特許文献1のような構造のキーボード・ライトを採用することはできない。また、LEDホルダをばね構造で支持してノートPCの蓋の開閉に応じて、筐体の内部から飛び出させたり筐体内部に押し込んだりする方法も考えられるが部品点数が増加したり表面に開口部が発生するので好ましくない。
【0004】
特許文献2は、光源と導光板で構成した光照射装置を開示する。導光板は、光源から入射した光線を多重反射させて、底面に対する鉛直方向と水平方向の間から出射させるように構成している。特許文献3は、壁面に埋め込んで床を照射する照明装置を開示する。同文献の照明装置は、蛍光ランプから放射された光が楔型の導光体の内部で全反射を繰り返しながら進行する際に、臨界角を越えた時点で斜め下方向に徐々に出射していくようになっている。そして同文献には出射した光が壁面に対する法線に対して65度±10度の出射角で出射することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−22470号公報
【特許文献2】特許第3982174号公報
【特許文献3】特開平8−17209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3の方法は、全反射の繰り返しを利用するために長い導光体が必要になり、ディスプレイの周辺に実装するには適さない。また、キーボードのディスプレイに近い領域を照射できるほど出射角(屈折角)が大きな光線を含んでいないためその原理をキーボード・ライトに適用することはできない。特許文献2に記載された導光板を上下反転してキーボード・ライトに利用しようとする場合には、導光板は表面Fと裏面Rとの間で多重反射をするための長さが必要になり、かつキーボードの全体を照射できるほど大きな出射角の光線を含まないため特許文献3と同様の理由でキーボード・ライトへの適用には適さない。
【0007】
そこで本発明の目的は、平坦な表面から表面に近い方向に光線を屈折させて照明できる照明構造を提供することにある。さらに本発明の目的は、入射角に応じて変化する光透過性パネルにおける光透過率の低減を補償しながら照度が均一な照明をすることができる照明構造を提供することにある。さらに本発明の目的は、携帯式コンピュータのキーボート・ライトに適した照明構造を提供することにある。さらに本発明の目的はそのような照明構造を採用した携帯式コンピュータ、およびそのような照明構造を利用した照明方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は平坦な表面からその表面に近い方向に光線を放射する照明構造を提供する。本発明にかかる照明構造は、光透過性パネル、光源、および導光体で構成されている。光透過性パネルと導光体は両者の屈折率がほぼ等しい材料で形成することができる。光透過性パネルはそれぞれ平坦な表面と裏面を備える。光源は、光軸が光透過性パネルの裏面に対してほぼ臨界角となる傾斜角で配置される。導光体は光源と裏面との間に配置される。そして、光源が放射した光線は導光体および光透過性パネルを透過して屈折し光透過性パネルの表面に近い方向に進行する。
【0009】
表面に近い方向を進行する光線は、光透過性パネルに垂直な照射面があるときには、当該照射面の光透過性パネルに近い領域を照明することができる。傾斜角は、光透過性パネルに入射する光の臨界角から当該臨界角よりも3度大きい角度の範囲で選定すると面的に広がる平坦な放射面から放射される光を有効に活用することができる。導光体は、光源の光が入射する入射面と、入射面に対向する位置に配置された出射面とを有し、出射面に入射した光線の一部が最大屈折角で屈折して光透過性パネルに入射するように構成することができる。
【0010】
最大屈折角で導光体から出射した光線は、光透過性パネルの表面からも大きな屈折角で出射する。そのときの屈折角は最大屈折角から60度の範囲とすることができる。導光体は、入射面と出射面に連絡し取り付け面を提供する平坦な底面と、入射面と出射面に連絡し底面に対向する位置に配置され、光軸を含む底面に垂直な平面で切断された断面が曲線で形成された反射面を備えるように構成することもできる。反射面は光源から直接入射した光を全反射させて出射面に入射させることができる。出射面は断面が3次曲線または円弧で形成することができる。
【0011】
導光体は光源の光軸を進行する光線が出射面の曲線のなかで裏面に最も近い位置に入射するように構成することができる。さらに出射面の最も近い位置と裏面は離れていてもよいが、光透過性パネル上における光が出射する位置を導光体の位置に対してシフトさせないためには両者が接触していることが望ましい。導光体は底面に密着して配置され底面における全反射を抑制してそこに入射する光を吸収する吸収層を備えることができる。その結果、光透過性パネルの正面方向(法線方向)にはほとんど光線が進行しないため、キーボード・ライトに使用したときにユーザにまぶしさを感じさせないようにすることができる。吸収層は底面にスクリーン印刷で黒色インキを塗布して形成することができる。
【0012】
本発明は、光線が光り透過性パネルを透過する際に、入射角に応じて変化する透過率の低減を補償しながら照度が均一な照明をする方法として捕らえることもできる。最初に、光軸が光透過性パネルの裏面に対してほぼ臨界角となる傾斜角で光源を配置する。つづいて、屈折角が小さくなるに従って光線密度が低下するように光源が放射した光線を最大屈折角から所定の範囲までの屈折角まで屈折させて導光体から出射する。最後に導光体から出射した光線を光透過性パネルの裏面から入射させて最大屈折角から所定の範囲までの屈折角で屈折させ表面から出射させる。導光体から出射した光線は屈折角が大きい光線群の光線密度が高くなる。そして、光透過性パネルでは入射角が大きい光線ほど光透過率が小さくなるため、照射面の照度は両者が補償されて均一になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、平坦な表面から表面に近い方向に光線を屈折させて照明できる照明構造を提供することができた。さらに本発明により、入射角に応じて変化する光透過性パネルにおける光透過率の低減を補償しながら照度が均一な照明をすることができる照明構造を提供することができた。さらに本発明により、携帯式コンピュータのキーボート・ライトに適した照明構造を提供することができた。さらに本発明によりそのような照明構造を採用した携帯式コンピュータ、およびそのような照明構造を利用した照明方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態にかかる照明構造に適用する照明アセンブリを説明する図である。
【図2】空気とアクリルの境界面における光線の挙動を説明する図である。
【図3】入射面に照射した平行光線が対向面に入射する際の入射角αを位置ごとに示す図である。
【図4】照明アセンブリにおける典型的な光線の経路を示す図である。
【図5】照明アセンブリを壁に取り付けて壁の開口から照射面の壁に近い領域を照射する第1の照明構造を説明する断面図である。
【図6】照明アセンブリの配向特性を説明する図である。
【図7】透過性のパネルを通過する光線の特性を説明する図である。
【図8】照明アセンブリをアクリル板の裏側に配置して照射面のアクリル板に近い領域を照射する第2の照明構造を説明する断面図である。
【図9】照明アセンブリをアクリル板の裏側に配置して照射面のアクリル板に近い領域を照射する第2の照明構造を説明する断面図である。
【図10】照明アセンブリをキーボード・ライトに適用する例を説明する図である。
【図11】ディスプレイ筐体の表面を覆うアクリル板の構成を説明する図である。
【図12】光軸の傾斜角を決定する方法を説明する図である。
【図13】導光体の断面形状の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[照明アセンブリ]
図1は、本実施の形態にかかる照明構造に適用する照明アセンブリを説明する図である。図1(A)は照明アセンブリ10の前方斜め上からみた斜視図で、図1(B)は上から見た平面図で、図1(C)は図1(B)のA−A矢視において、光源23の光軸を含み幅W方向の中心でかつ底面に垂直な平面で切断した断面図である。導光体11は、A−A矢視の断面に平行な平面でいずれの場所で切断しても図1(C)の形状になっている。
【0016】
導光体11は、材料に光の透過率が高いアクリル(PMMA)樹脂を使用して圧縮成形や射出成形などの方法で一体成形している。導光体11は、入射面13と底面12と対向面50と側面19、21を含んでいる。入射面13と側面19、21は底面12に対して垂直な平面である。導光体11は、一例として幅Wを12mm、長さLを6mm、高さHを2.5mmとしている。対向面50の断面における形状は3次曲線を採用したり、所定の半径および中心角の円弧を組み合わせたり、さらにそれらに直線を組み合わせたりして形成することができる。
【0017】
光源23には発光ダイオードを採用している。光源23の放射面は一例として直径2mmの放射面からその中心をとおり放射面に垂直な光軸に対して60度の角度で円錐状に光線が放射するように構成されている。光源23から放射された光は入射面13を通じて導光体11に進入する。対向面50のなかで、入射面13に対向する領域を先端部ということにする。対向面50には、先端部に出射面51を定義し、出射面51と入射面13との間に反射面53を定義することができる。出射面51は光源23が放射した光が導光体11から空気中に出射する領域である。
【0018】
出射面51には、入射面13から入射した光が、内部で一度も全反射しない光線と、反射面53で一度だけ全反射した光線が入射する。導光体11の内部で一度も全反射しないで対向面50に入射する光線を直接光線といい、対向面50で1回または複数回全反射してから入射する光線を反射光線ということにする。以下、最初の全反射を一次全反射といい、1次全反射した光線の全反射を二次全反射という。直接光線と反射光線の中で対向面50に、臨界角未満の入射角で入射した光線は対向面50を透過して空気中に出射し、臨界角を越える入射角で入射した光線は全反射する。
【0019】
したがって、出射面51を光源23の光が出射する導光体の領域としと定義すれば、その範囲は入射する光線ごとに異なることになる。本明細書においては、光源23が放射したいずれかの直接光線または反射光線が出射する導光体11の先端部にある対向面50の領域を出射面51ということにする。本明細書では導光体11の内部に生ずる散乱光の挙動については必要がないので説明を省略する。
【0020】
導光体11の底面12には、底面12との間に空気層が形成されないように密着させて配置した吸収層25が設けられている。吸収層25の底面27は、照明アセンブリ10の底面に相当し、照明アセンブリ10の取り付け面を提供する。吸収層25は、入射光が導光体11の底面12で全反射しないようにアクリルの屈折率に近い材料で形成されている。したがって、底面12に臨界角を越える入射角で入射した光は全反射しないで吸収層25に入る。
【0021】
本実施の形態では吸収層25に黒色系の半透明の材料を使用することで吸収層25に入射した光を吸収し、入射光が吸収層25の底面27と空気または取り付け材料との境界で全反射して対向面50に入射しないようにしている。吸収層25は、黒色のインクを導光体11の底面12にスクリーン印刷により塗布することで形成することができる。ただし、底面12と吸収層25との間に空気層を挟まないこと、入射光を効率的に吸収できること、およびアクリルと屈折率が近いことの3つの条件を満たすことができれば、吸収層25を黒色の樹脂と透明な樹脂との2色の材料で成型した他の材料または他の方法で形成することができる。
【0022】
[屈折角と反射角]
図2は、空気と接するアクリル板の内部の光線の挙動を説明する図である。屈折率はアクリル板61が約1.5で空気が1である。この場合スネルの法則によりアクリル板61と空気の境界63にアクリル板61の内部から入射する光線の臨界角θmは42度となる。図2(A)は、0度から臨界角θmまで入射角αを変化させた光線が境界板61に入射するときの様子を示す。入射角αが臨界角θm未満の間は入射光線が屈折角β(β>α)でアクリル板61から空気中に出射される。このときの入射角αと屈折角βの関係を図2(C)に示す。
【0023】
図2(C)からは、入射角αが35度程度までは屈折角βは入射角αにほぼ比例して増加するが、入射角αが35度を超えたあたり(屈折角が60度に対応)から入射角の増加の割合に対して屈折角βが増加する割合が増大し、臨界角θmに近づくにしたがって屈折角βが急激に増大することがわかる。屈折角βは入射角αが臨界角θmに到達する直前に最大になるが、このときの入射角を透過最大入射角といい屈折角を最大屈折角ということにする。
【0024】
後に説明する本実施の形態の照明構造では、出射面51に各入射位置で35度≦α<θmの範囲の入射角αで入射する光線ができるだけ多くなるように光源23の光軸の方向、出射面51の形状、および反射面53の形状などを決めている。図2(B)は、臨界角θmを越えた入射角αで入射する光線が境界63において反射角γで全反射する様子を示す。全反射する場合は入射角αと反射角γが一致するように光線が進行する。
【0025】
[平行光線の対向面に対する入射角]
図3は、入射面13の全体に平行光線を放射する面光源を配置した場合に、平行光線が対向面50に入射する際の入射角αを底面12に対応する対向面50の位置ごとに示す図である。ここでは、対向面50の全体を3次曲線で形成した例で説明する。対向面50に対する入射角αは、対向面50上での位置が入射面13から遠ざかるにしたがって小さくなり、入射面13側から測定した底面12の長さPに対応する位置で臨界角θmに達する。そして、さらに前方に近付くにしたがって入射角αが低下し、対向面50の最も先端に相当する底面12の長さLの位置では入射角αがゼロになる。よって対向面50は底面12に平行な光線に対し底面の長さPに対応する位置までは全反射し、長さPから長さLに対応する位置までは透過するように作用する。
【0026】
よって、底面12に平行な光線に対する対向面50は、長さ0から長さPに対応する位置までは反射面53となり、長さPから長さLに対応する位置までが出射面51となる。ここでは3次曲線を例示して説明したが、図のように変曲点がなく外側に膨らんだ連続する曲線の場合は、臨界角の位置はそれぞれ異なるが入射面13からの距離と入射角の関係は同様の傾向になる。実際の光源23は入射面13に対して光軸に平行な光線だけを放射するものではなく、さらに光源23の放射面は入射面13の面積より小さく約60度の円錐ビーム状に広がる配向特性を備えているので、対向面50のそれぞれの位置にはさまざまな入射角αで光線が入射する。
【0027】
[照明アセンブリの光線の経路]
図4は、照明アセンブリ10における典型的な光線の経路(光路)を示す図である。図4は、図1のA−A矢視の光軸100を通り底面12に垂直な断面を示している。ここでは、図1に示したサイズの導光体において、対向面50の先端部を断面が半径1.5mmで中心角が60度の円弧で形成し、それ以外の領域を半径9mmで中心角が30度の円弧で形成している。光源23は底面12に垂直な放射面から、入射面13に60度の広がりで円錐ビーム状の光を放射しており、図では放射光の上下方向の外延を光線101と光線109で示し、光源23の放射面の上下方向の範囲を位置S1と位置S3で示している。
【0028】
光源の中心位置S2を通り放射面に垂直な光軸100上を光線106が進行する。光軸100は、底面12に平行になるように入射面13と光源23の放射面が調整されている。また、光線106が入射する対向面50上の位置P5の接線131に対する光線106の入射角は、臨界角に一致するように光源23の高さ方向の位置を設定している。
【0029】
最初に光源の位置S1と位置S3の間から放射されて、対向面の位置P5に入射する直接光線の経路を説明する。図4ではこの場合の代表的な光線として、光線105、106、107を示している。光源の位置S2よりわずかに位置S3よりの位置から放射されて位置P5に入射する直接光線は入射角が臨界角θmよりわずかに小さくなって透過し、図2(C)から明らかなように最大屈折角で屈折して光線121として出射する。出射する光線121の方向は、接線131よりもわずかに右方向に回転している。光源の位置S2と位置S3の間から放射されて位置P5に入射する直接光線は、放射位置が位置S3に近づくにしたがって入射角が小さくなり、光線121が位置P5を中心にして矢印Aで示す右回りに回転した方向に出射する。
【0030】
光源の位置S2よりわずかに位置S1に近づいた位置から放射された直接光線は、臨界角に近い反射角で全反射して底面12に入射する。光源の位置S2と位置S1の間から放射されて位置P5に入射する直接光線は、放射位置が位置S1に近づくにしたがって入射角が大きくなって反射角も大きくなるため、底面12と対向面50が連絡する位置P8に近づくような底面12上の位置に入射する。底面12に入射した光線は、吸収層25でほぼ吸収されるため底面27ではほとんど全反射が発生しない。
【0031】
つぎに光源の位置S1と位置S3の間から放射されて光軸100に平行な光線の経路について説明する。図3(A)から類推できるように、光源の位置S1と位置S2の間から放射された光軸100に平行な光線は入射角が臨界角を越えるので位置P4と位置P5の間で一次全反射して底面12に入射するか対向面50の先端部で二次全反射して底面12に入射する。図4では光線104が位置P4で一次全反射して底面12に入射する様子を示している。光源の位置S2と位置S3の間から放射された光軸100に平行な光線は、入射角が臨界角よりも小さくなるのですべて透過する。
【0032】
光源の位置S2よりわずかに位置S3よりの位置から放射された光軸100に平行な光線は図2(C)から明らかなように透過最大入射角で対向面50に入射して透過し最大屈折角で屈折する。そして、放射位置が位置S3に近づくにしたがってあるいは入射位置が位置P6に近づくにしたがって、入射角および屈折角が小さくなりそれぞれの入射位置での接線から離れる方向に進行する。図4では、光線108が位置P6で透過して光線123として出射する様子を示している。透過光の屈折角は、それぞれの入射位置での入射角により、最大屈折角からそれより所定範囲だけ小さい範囲の屈折角まで各放射位置により連続的に変化する。
【0033】
つぎに、光源23から放射されて対向面の位置P4から位置P6の範囲以外の位置に入射する代表的な直接光線の経路を説明する。照明アセンブリ10は光線101が対向面50の位置P1で全反射するように光学的な形状を設定している。したがって、位置P1から対向面50と入射面13が連絡する位置である位置P0までの範囲は光学的に機能しない。また、光線109は直接底面12に入射するが、底面12では全反射しないで吸収層25で吸収される。
【0034】
光源23から対向面の位置P1からP4までの間に入射する直接光線は、この例ではいずれも対向面50で一次全反射する。図4には、光線101が位置P1で一次全反射して底面12に入射し、光線102が位置P2で一次全反射して位置P7に入射し透過する様子を示している。位置P7から出射する光線102は、位置P5における接線131よりも右方向(導光体11に近付く方向)に進行する。光線103は位置P3で一次全反射して位置P6と位置P7の間で二次全反射し底面12に入射する。このように位置P1から位置P4までの間で一次全反射した反射光線は、位置P6と位置P8の間に入射して透過するものを含むが、対向面50で一次全反射した光線のなかで、さらに対向面50で二次全反射する光線はほとんどが底面12に入射して対向面50から出射しない。
【0035】
光源23から放射されて対向面の位置P6と位置P8の間に入射する直接光線は、この例においては、一次全反射して底面12に入射するかまたは透過する。位置P6と位置P8の間で透過する直接光線は、光線102のように接線131よりも左方向に回転した方向(導光体11に近付く方向)に屈折するものを含む。光源23から放射されて対向面50の先端部分に入射する直接光線の多くは、屈折角が最大屈折角から約60度の範囲となり、それぞれの光線の入射位置における接線にほぼ近い方向から接線に対して約30度までの間で方向を変えて出射する。
【0036】
以上は、照明アセンブリ10の典型的な光線の経路を説明したものであるが、照明アセンブリ10の第1の特徴は、光軸100上にある位置P5から位置P8までの曲面で形成された領域が、そこに入射するさまざまな経路の光線を透過させて最大屈折角から所定の屈折角の範囲までの屈折角で屈折さて放射する点にある。なお、所定の屈折角は60度から45度程度の範囲に設定することもできる。第2の特徴は、吸収層25により底面12における全反射を抑制することで反射面53から出射する光線を抑制している点にある。第3の特徴は対向面50上の位置P1と位置P4の範囲にある対向面50は、そこに入射する光線を一次全反射させ、その一部の光線を位置P5から位置P8の範囲に入射させて透過するようにしている点にある。
【0037】
導光体11は、先端部分に形成された最大屈折角から60度程度までの範囲の屈折角で入射光を屈折させる対向面50を利用して、光軸100に対して下向きの方向または底面12の方向を照射するのに適した構造になっている。そして、対向面50と底面12との間での多重全反射を利用するものではないため導光体の長さLは光学的な制約を受けない。したがって、対向面50からの一次全反射の光線を照明に利用する必要がない場合は、長さLを物理的に可能な範囲まで短くすることができる。よって照明アセンブリ10は、特に小型の電子機器に組み込む上で有利な構成になっている。
【0038】
[第1の照明構造]
つぎに図5の断面図を参照して、照明アセンブリ10を壁に取り付けて照射面203の壁に近い領域を照射する第1の照明構造を説明する。壁201は照射面203から上方に垂直に延びている。照明アセンブリ10が照射する範囲は壁からの距離L2で示している。壁の位置から距離L2の半2にある照射面203の領域を要求照射領域という。照明アセンブリ10は、図4と同じ断面を示しているが、光源23の光軸100上を進行する光線106が入射する対向面50上の位置Q5は、壁の表面205から最も飛び出た位置であるが図4の位置P5とはわずかに異なっている。
【0039】
その理由は、面積的に広がる光源23の放射面から放射される光線を有効に活用するために光軸100を壁の表面205に対して傾斜角θで傾斜させて、傾斜角θを臨界角θm(42度)よりわずかに大きい45度にした点にあるが、これについては図12を参照して後に説明する。ここに傾斜角θは、壁の表面205の法線に対する角度をいう。
【0040】
壁201には、照明アセンブリ10を固定する位置に開口202が形成されている。壁201は位置209でわずかに内側に傾斜してさらに傾斜角θで傾斜した取り付け部207に連絡する。照明アセンブリ10は取り付け部207に底面27が取り付けられる。第1の照明構造においては、照明センブリ10を壁201に取り付けることは一例であり、壁201を利用しないで取り付けてもよい。底面27と光軸100は平行なので、光軸100は壁の表面205に対して傾斜角θで傾斜していることになる。壁201が位置209でわずかに壁の内側方向に傾斜しているのは、導光体11の先端部分に形成された出射面が出射する光線を有効に照射面203の照明に利用するためである。
【0041】
また、光軸100を照射面203に対して傾斜させたのは、位置Q5における接線221の方向から30度程度の範囲の方向までに存在する照射面203の要求照射領域に多くの光線を照射するためである。対向面50の先端部の一部は、開口202を通じて壁の表面205よりもわずかに外側に突き出ている。光軸100上を進行する光線106が入射する対向面50上の位置Q5は、対向面の中で壁の表面205から外側に最も飛び出た位置になるように光源23の入射面に対する位置を設定している。位置Q5と壁の表面205との間隔L1は約2mmに設定している。間隔L1は、有効照射領域の壁201に近い領域に要求される照度および光源の輝度などに基づいて決定することができる。位置Q5における接線221は、壁の表面205に平行または照射面203に垂直になるように設定している。
【0042】
この照明構造では、対向面50上の位置Q5から位置Q8の間が要求照射領域を有効に照射する出射面となる。対向面50上の位置Q5から位置Q4までの間では、それぞれの位置における接線が照射面203において距離L2の範囲に入る位置に入射した光線の一部が、要求照射領域を照射することができる。したがって、位置Q4と位置Q5の間で位置Q5の近辺にある対向面50も出射面になる。
【0043】
出射面の範囲にある代表的な位置Q5および位置Q6に光源23から入射した直接光線または一次全反射した反射光線は、入射角に応じて接線221または接線223に対して最大屈折角から約60度までの範囲の屈折角で出射して要求照射領域を照射することができる。また位置Q5から位置Q8の範囲に入射した直接光線または反射光線は、出射面から最も突き出ている位置Q5に対する接線221を含む接平面よりも壁の表面205の方向に出射する光線225も含む。
【0044】
なお図5では、導光体11と光源23を壁201の内側に配置して壁に形成した開口202を利用して導光体11の一部を壁の表面205より外側に配置する例を示したが、本発明はこのような配置方法に限定するものではない。たとえば壁の端部に形成した切り欠きを利用したり、壁に形成した窪みの中に導光体と光源を配置して導光体の少なくとも一部の領域が壁の表面より突き出るようにしたりして配置することができる。
【0045】
[照明アセンブリの配向特性]
図6は、図4に示した照明アセンブリ10の配向特性を説明する図である。代表例として光源23の中心位置S2から位置S3の範囲の放射面から放射されて対向面50から出射する直接光線の経路を説明する。図6には、位置S2から位置S3までの等しい間隔の放射面上の位置から放射される直接光線の光線群251を示している。光源の位置S2から放射されて光軸100上を進行する光線は、対向面50上の位置R1から最大屈折角で出射して照射面231の壁201に最も近い位置を照射する。
【0046】
位置R1に入射した光線群251は、それぞれの入射角に対応する屈折角で出射して照射面231の壁201に近い領域である光線251から光線253の範囲で画定される領域を照明する。対向面50上の位置R2は光源23からの光線群に対して位置R1よりも小さな入射角を与える。したがって、位置R2では光源の位置S2よりも位置S1に近い位置から放射された光線も出射することができる。光源23から放射されて位置R2に入射した直接光線の光線群は、照射面231の光線255から光線257の範囲で画定される領域を照明する。
【0047】
対向面50上の位置R2は光源23からの光線群に対して位置R2よりも小さな入射角を与える。したがって、位置R3では位置R2に入射する光線よりもより位置S1に近い位置から放射された光線も出射することができる。光源23から放射されて位置R3に入射した直接光線の光線群は、この例では壁201から最も遠い領域である照射面231の光線259から光線261で画定される領域を照明する。
【0048】
位置R1から位置R3までの対向面50は、断面の形状が円弧で形成されているためそれぞれの位置に異なる入射角で入射した光線は、光線の密度が壁201に近い位置では高くなり壁201から離れるに従って低くなる配向特性の光線として出射する。したがって図5の照明構造では、照射面231の照度が壁201に近い位置で高くなり壁201から離れるに従って低くなる。図5の照明構造は、壁201の近辺にある照射面203を照射する上では有効であるが、照度のムラを排除することが必要な場合もある。照明アセンブリ10は照射面203の照度ムラを排除することができる照明構造に適用することもできるので以下にその方法を説明する。
【0049】
[第2の照明構造]
図7(A)は透明なアクリル板に入射した光線が出射するときの様子を説明する図である。アクリル板301はそれぞれ平坦な入射面303と出射面305を備えている。入射光305は空気中から入射面303に入射角α1で入射し、アクリル板301の内部を透過光307となって透過して、出射面305から屈折角β2の出射光309となって出射する。入射角α1と屈折角β2は等しく、入射角α1が0度を超えるときは入射光305と出射光309は平行になり、入射角が0度のときは入射光305と出射光309は同一直線上を進行する。
【0050】
アクリルの屈折率は空気の屈折率より大きいため入射角の大きさにかかわらず入射面303では全反射は発生せず、すべての入射光はアクリル板301の中に入り込む。また、透過光307が出射面305に入射する入射角は、つねに臨界角よりも小さくなるので出射面305では全反射が発生しない。いま、アクリル板301の内部での光の吸収や散乱がないとしたときに、可視光領域での入射光305に対する出射光309の放射発散度の割合として与えられる透過率は、フレネル反射の式で計算することができる。
【0051】
図7(B)は、フレネル反射の式で計算した入射光305に対する出射光309の入射角α1ごとの透過率を示す図である。透過率は入射角α1が0度から50度程度までは92%程度でほぼ一定であるが、入射角が60度を超えると急激に低下し、85度では20%程度まで低下する。このことは、透明なアクリル板301の表面を大きな入射角の光線で照射したときに、出射面305からはそれに応じた大きな屈折角β2の光線が出射するが、出射光の放射発散度が低下して出射面305に近い方向では十分な照度を確保できないことを意味する。
【0052】
図8はこの問題を解決した第2の照明構造を説明する図である。第2の照明構造は、図5で説明した第1の照明構造において、開口202を設けないで照明アセンブリ10の前面に光透過性の平坦なアクリル板401を配置したものである。アクリル板401は、照射面203に垂直に配置されており、光源23の光線が入射する入射面401aと光線が出射する出射面401bを備えている。入射面401aと出射面401bはいずれも平坦に形成されている。アクリル板401の厚さは一例では1.2ミリ・メートルとすることができる。また一例として、アクリル板401は導光体11と屈折率が等しくなるように選定している。
【0053】
光軸100は、入射面401aに対して傾斜角θで傾斜している。傾斜角θは光軸100上を進行する光線403が出射面51から最大屈折角に近い屈折角で出射するように選定している。入射面401aと対向面50は光線403が入射する入射面401a上の位置409で接触するように配置されている。アクリル板401と導光体11の屈折率は等しいため光線403は入射面401aで屈折しないでアクリル板401の中を進行し、出射面401b上の位置411から最大屈折角に近い屈折角で空中に出射する。導光体11は、入射面401aに位置409以外の場所では接触しないため、位置409以外の対向面50上の位置から出射する光線は、一旦空気中を進行してから入射面401aに入射する。
【0054】
図8では、光源の位置S1から放射された光線407と光源の位置S3から放射された光線405の経路を示している。図7(A)で説明したように、入射面401aに入射する光線と出射面401bから出射する光線は平行になる。したがって、位置409から入射する光線以外の光線は、図6で説明したように照射面231の壁201に近い位置ほど光線の密度が高くなるように空気中に出射して図6とほぼ同じ配向特性で放射面401bから放射される。位置409から入射する光線403は、アクリル板401の厚さ分だけ位置409よりも下に下がった位置411から出射するが、出射光403の方向は直接対向面50から空気中に出射する場合の光線の方向と同じである。
【0055】
したがって、アクリル板401から出射する光線の配向特性は、全体として図6とほぼ同じになって最大屈折角から約60度までの範囲の屈折角で出射して要求照射領域を照射することができる。ここで、図7(B)の入射角α1と透過率の関係をみると、入射角α1が大きいほど透過率が小さくなっている。この性質は導光体11で大きな屈折率で屈折しさらにアクリル板401を通過して大きな屈折率で出射した光線に対して照射面203の照度のムラを相殺し、照射面203上の壁201の位置からの距離に対応する領域の照度を均一にするように作用する。
【0056】
図8では、導光体11の一部が入射面401bに接触するように配置したが、図9に示すように導光体11の先端部と入射面401aは間隔L3だけ離隔して配置してもよい。その場合は、対向面50から出射する光線はすべて空気中を下側に進んでから入射面401aに入射する。入射する位置は、導光体11と入射面401aの間隔が大きくなるほど下側になるが、出射面401bから出射する光線の配向特性は両者を接触させた場合とほぼ同じになる。
【0057】
[照明アセンブリの適用例]
図10は、照明アセンブリ10をノートPCに適用した例を示す図である。ノートPC500は、ディスプレイ筐体501がシステム筐体505にヒンジ503で結合されて開閉可能なように支持されている。ディスプレイ筐体501は液晶表示装置(LCD)509を収納している。システム筐体505の表面にはキーボード507が実装されている。LCD509の周囲は、縁枠511a〜511dで囲まれている。縁枠511a〜511dは、LCD509とディスプレイ筐体501の隙間を隠す役割を果たす。ディスプレイ筐体501のLCD509側の表面は、1枚の透明で平坦なアクリル板521(図11参照)で覆われている。
【0058】
図11は、ディスプレイ筐体501の表面を覆うアクリル板521の平面図である。アクリル板521は厚さが1.2ミリ・メートルの薄板である。アクリル板521は縁枠511a〜511dに相当する領域が黒色系のインクがスクリーン印刷されている。そして縁枠511bの中央部では一部にスクリーン印刷を施さない領域を設けてウインドウ523を形成している。ウインドウ523は、図8、図9で説明した第2の照明構造のアクリル板401に対応する。ウインドウ523のサイズは、一例として12ミリ・メートル×6ミリ・メートルとしている。ウインドウ523の裏側において、ディスプレイ筐体501に照明アセンブリ10が取り付けられる。照明アセンブリ10は、アクリル板401に取り付けることもできる。
【0059】
照明アセンブリ10は、アクリル板521の裏面に対する法線に対して光軸が傾斜角θで傾斜するように取り付けられる。照明アセンブリ10は、導光体11をアクリル板11の裏側に設けるため、アクリル板521の表面を完全な平面にするデザイン上の要求に対応することができる。そして、ディスプレイ筐体501を開いた状態では、照明アセンブリ10の出射面51から出射した光線がウインドウ523を透過してキーボード507を照射することができる。しかも、キーボード507上の照度は全体に渡って均一になる。
【0060】
[傾斜角θの決定方法]
つぎに図12を参照して、第1の照明構造および第2の照明構造において、光軸100の照射面203に対する傾斜角θを45度にして臨界角より3度大きくした理由を説明する。図12(A)は、照明アセンブリ10を底面に並行で光軸を含む平面で切断した断面を示す。ライン231は、図5の接線221を含む接平面231が切断されて形成されている。図12(B)は、図12(A)のB−B矢視において底面に垂直で光軸を含む平面で切断した断面図である。図12(C)は、図12(A)のC−C矢視において底面に垂直で光線16cを含む平面で切断した断面図である。図12(A)で光線106a、106、106cは同一平面上を進行して、それぞれ接平面231に接する対向面上の位置Q1a、Q1、Q1cに入射する。
【0061】
図12(C)において、接線231cは接平面231を切断した状態を示し、図12(B)の接平面231を切断した接線221よりわずかに左方向に回転している。すなわち、対向面上の位置Q1cでは、光軸を含み底面に平行な平面上を進行する光線106cの入射角θcは、光軸上を進行して対向面上の位置Q1に入射する光線106の入射角θよりも小さくなる。光線106aが入射する位置Q1aでも同様になる。
【0062】
図12(B)において、接線221の法線251に対する角度は45度の傾斜角θに対応する。したがって、光軸100上を進行する光線は対向面の位置Q1で一次全反射するので有効に利用できない。しかし、光源23の放射面は、上下方向に面積的な広がりをもっているため、光線105と光線107は光軸100に対してそれぞれ約8度程度傾斜する。したがって、放射面の位置S5から放射された光線が対向面の位置Q1から最大屈折角で出射するとすれば、位置S5より下側の位置から放射された光線はすべて位置Q1から出射する。
【0063】
これに対して光線106cが接平面231に入射する位置Q1cでは光線106cの入射角θcは、傾斜角θよりも約5度小さくなる。したがって、放射面の位置S6から放射された光線が対向面の位置Q1cから最大屈折角で出射するとすれば、放射面の位置S6より下側の位置から放射された光線はすべて位置Q1cから出射する。位置Q1aに対する光線も同様に出射する。よって、位置Q1a、Q1、Q1cを含む接平面231に接する対向面の位置に入射する光線の中で、図12(A)の平面上で光軸上の位置Q1を挟んだXaからXcの範囲に入射した光線は透過しない。
【0064】
しかし光軸よりも下方向にある放射位置から放射されて、位置Q1aとXaの間または位置Q1cと位置Xcの間に入射する光線は透過するので、光源全体から放射される光線の利用率が高くなるようになっている。このように傾斜角θを45度にすることで、特に接線221にほぼ平行に出射する光線の量を多くして壁201に近い領域を照明する光線の入射効率を高めることができる。なお、傾斜角θは臨界角である42度から45度の範囲に選定することができる。
【0065】
[導光体の他の例]
図13は、導光体の断面形状の他の例を示す断面図である。図13(A)〜図13(D)はいずれも図1のA−A矢視に対応する位置での断面を示し、さらに底面には吸収層を備えているものとする。図13(A)の導光体では対向面501が、位置T1から位置T3までの範囲の平面状の出射面503と、3次曲線または所定の半径および中心角の円弧で形成された反射面505を備えている。
【0066】
光源23の光軸に対する出射面503の傾斜は、光軸上を進行する光線507が出射面503の位置T2に対して臨界角で入射するように設定している。この場合、光源の位置S1からS3の間から光軸に平行に放射された光線は透過しないが、臨界角よりも小さな角度で入射する光線は透過する。屈折角は、出射面503における入射位置と光源の放射位置で決まるが、最大屈折角から所定の範囲までの角度で均等に分散する屈折角の出射光を得ることができる。
【0067】
ただしこの場合は、反射面505で一次全反射して出射面503に入射する光線は、出射面503で二次全反射して底面509に入射するため光源23から放射される光の利用率は低下する。これを補うために、点線で示したように位置R2から底面509に垂直な平面を形成することもできる。そして出射面503を光軸に対してさまざまな角度で傾斜する平面が隣接するように形成すると、最も効率のよい図4の形状に到達することになる。
【0068】
図13(B)は、出射面513を図4の出射面と同じ形状にし、反射面515を平面状に形成した例を示す。図13(C)は、出射面を含む対向面の領域521は図4と同じ形状であるが、光源に近い領域523は光源に近付くにしたがって底面525側に湾曲している。領域523は、入射光の入射角および反射角を大きくして一次全反射した光線ができるだけ多く出射面に入射できるようにしている。図13(D)は、光軸537を傾斜角θで傾斜させて照明アセンブリを取り付ける場合に、導光体自体を傾斜させないで取り付けることができるようにしたものである。図13(D)では、光軸に対して傾斜角θで交わる平面531と、平面531と入射面535を連絡する領域533で形成されている。
【0069】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0070】
10…照明アセンブリ
11…導光体
12…導光体の底面
13…入射面
23…光源
25…吸収層
27…照明アセンブリの底面
50…対向面
51…出射面
53…反射面
100…光軸
401、521…透明なアクリル板
500…携帯式コンピュータ
523…ウインドウ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な表面から該表面に近い方向に光線を放射する照明構造であって、
それぞれ平坦な表面と裏面を備える光透過性パネルと、
光軸が前記光透過性パネルの裏面に対してほぼ臨界角となる傾斜角で配置した光源と、
前記光源と前記裏面との間に配置した導光体とを有し、
前記光源が放射した光線が前記導光体および前記光透過性パネルを透過して屈折し前記表面に近い方向を照射する照明構造。
【請求項2】
前記傾斜角が前記臨界角から前記臨界角よりも3度大きい角度の範囲で選定される請求項1に記載の照明構造。
【請求項3】
前記光透過性パネルから出射する光線が最大屈折角から60度の範囲で屈折する請求項1または請求項2に記載の照明構造。
【請求項4】
前記導光体が、前記光源が放射した光線が入射する入射面と、該入射面に対向する位置に配置された出射面とを有し、前記出射面に入射した光線の一部が最大屈折角で屈折して前記光透過性パネルに入射する請求項1から請求項3のいずれかに記載の照明構造。
【請求項5】
前記導光体が、
前記入射面と前記出射面に連絡し取り付け面を提供する平坦な底面と、
前記入射面と前記出射面に連絡し前記底面に対向する位置に配置され、光軸を含む前記底面に垂直な平面で切断された断面が曲線で形成され、前記光源から直接入射した光線を全反射させて前記出射面に入射させる反射面と
を有する請求項4に記載の照明構造。
【請求項6】
前記出射面の断面が3次曲線または円弧で形成されている請求項4または請求項5に記載の照明構造。
【請求項7】
前記光源の光軸を進行する光線が前記出射面のなかで前記裏面に最も近い位置に入射する請求項6に記載の照明構造。
【請求項8】
前記最も近い位置と前記裏面が接触している請求項7に記載の照明構造。
【請求項9】
前記底面に密着して配置され前記底面における全反射を抑制して入射光を吸収する吸収層を備える請求項5から請求項8のいずれかに記載の照明構造。
【請求項10】
前記吸収層が前記底面にスクリーン印刷で塗布された黒色系のインクで形成されている請求項9に記載の照明構造。
【請求項11】
ディスプレイを収納するディスプレイ筐体と、
前記ディスプレイ筐体の表面に配置した表面パネルと、
表面にキーボードが実装されたシステム筐体と、
前記表面パネルの一部を前記光透過性パネルとして利用した請求項1から請求項10のいずれかに記載の照明構造と
を有する携帯式コンピュータ。
【請求項12】
ディスプレイを収納するディスプレイ筐体と、
表面と裏面を有し前記ディスプレイ筐体の表面を覆う光透過性パネルと、
キーボードが実装されたシステム筐体と、
光軸が前記裏面に対してほぼ臨界角となるように配置した光源と、
前記光源と前記裏面との間に配置した導光体とを有し、
前記ディスプレイ筐体を前記システム筐体に対してほぼ直角になるように開いたときに前記光源が放射した光線が前記導光体および前記光透過性パネルを透過して屈折して前記キーボードを照射する携帯式コンピュータ。
【請求項13】
前記導光体が配置される領域を除いた前記光透過性パネルの周囲の領域にスクリーン印刷で黒色系のインクを塗布した請求項12に記載の携帯式コンピュータ。
【請求項14】
入射角に応じて変化する光透過率の低減を補償しながら光透過性パネルから放射された光線で照度が均一な照明をする方法であって、
光軸が前記光透過性パネルの裏面に対してほぼ臨界角となるように設定した光源を配置するステップと、
屈折角が小さくなるに従って光線密度が低下するように前記光源が放射した光線を最大屈折角から所定の範囲までの屈折角で屈折させて導光体から出射するステップと、
前記導光体から出射した光線を前記光透過性パネルの裏面から入射させて前記最大屈折角から前記所定の範囲までの屈折角で屈折させて前記光透過性パネルの表面から出射させるステップと
を有する方法。
【請求項15】
前記所定の範囲の屈折角が60度である請求項14に記載の方法。
【請求項1】
平坦な表面から該表面に近い方向に光線を放射する照明構造であって、
それぞれ平坦な表面と裏面を備える光透過性パネルと、
光軸が前記光透過性パネルの裏面に対してほぼ臨界角となる傾斜角で配置した光源と、
前記光源と前記裏面との間に配置した導光体とを有し、
前記光源が放射した光線が前記導光体および前記光透過性パネルを透過して屈折し前記表面に近い方向を照射する照明構造。
【請求項2】
前記傾斜角が前記臨界角から前記臨界角よりも3度大きい角度の範囲で選定される請求項1に記載の照明構造。
【請求項3】
前記光透過性パネルから出射する光線が最大屈折角から60度の範囲で屈折する請求項1または請求項2に記載の照明構造。
【請求項4】
前記導光体が、前記光源が放射した光線が入射する入射面と、該入射面に対向する位置に配置された出射面とを有し、前記出射面に入射した光線の一部が最大屈折角で屈折して前記光透過性パネルに入射する請求項1から請求項3のいずれかに記載の照明構造。
【請求項5】
前記導光体が、
前記入射面と前記出射面に連絡し取り付け面を提供する平坦な底面と、
前記入射面と前記出射面に連絡し前記底面に対向する位置に配置され、光軸を含む前記底面に垂直な平面で切断された断面が曲線で形成され、前記光源から直接入射した光線を全反射させて前記出射面に入射させる反射面と
を有する請求項4に記載の照明構造。
【請求項6】
前記出射面の断面が3次曲線または円弧で形成されている請求項4または請求項5に記載の照明構造。
【請求項7】
前記光源の光軸を進行する光線が前記出射面のなかで前記裏面に最も近い位置に入射する請求項6に記載の照明構造。
【請求項8】
前記最も近い位置と前記裏面が接触している請求項7に記載の照明構造。
【請求項9】
前記底面に密着して配置され前記底面における全反射を抑制して入射光を吸収する吸収層を備える請求項5から請求項8のいずれかに記載の照明構造。
【請求項10】
前記吸収層が前記底面にスクリーン印刷で塗布された黒色系のインクで形成されている請求項9に記載の照明構造。
【請求項11】
ディスプレイを収納するディスプレイ筐体と、
前記ディスプレイ筐体の表面に配置した表面パネルと、
表面にキーボードが実装されたシステム筐体と、
前記表面パネルの一部を前記光透過性パネルとして利用した請求項1から請求項10のいずれかに記載の照明構造と
を有する携帯式コンピュータ。
【請求項12】
ディスプレイを収納するディスプレイ筐体と、
表面と裏面を有し前記ディスプレイ筐体の表面を覆う光透過性パネルと、
キーボードが実装されたシステム筐体と、
光軸が前記裏面に対してほぼ臨界角となるように配置した光源と、
前記光源と前記裏面との間に配置した導光体とを有し、
前記ディスプレイ筐体を前記システム筐体に対してほぼ直角になるように開いたときに前記光源が放射した光線が前記導光体および前記光透過性パネルを透過して屈折して前記キーボードを照射する携帯式コンピュータ。
【請求項13】
前記導光体が配置される領域を除いた前記光透過性パネルの周囲の領域にスクリーン印刷で黒色系のインクを塗布した請求項12に記載の携帯式コンピュータ。
【請求項14】
入射角に応じて変化する光透過率の低減を補償しながら光透過性パネルから放射された光線で照度が均一な照明をする方法であって、
光軸が前記光透過性パネルの裏面に対してほぼ臨界角となるように設定した光源を配置するステップと、
屈折角が小さくなるに従って光線密度が低下するように前記光源が放射した光線を最大屈折角から所定の範囲までの屈折角で屈折させて導光体から出射するステップと、
前記導光体から出射した光線を前記光透過性パネルの裏面から入射させて前記最大屈折角から前記所定の範囲までの屈折角で屈折させて前記光透過性パネルの表面から出射させるステップと
を有する方法。
【請求項15】
前記所定の範囲の屈折角が60度である請求項14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−133960(P2012−133960A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284069(P2010−284069)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】
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