説明

照明装置およびそれを用いた光学特性評価装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射モードで表示を行う媒体の光学特性の評価等に用いられる照明装置およびそのような照明装置を用いた光学特性評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射モードで表示が可能な液晶表示装置(反射型や透過反射両用型など)は、携帯性や低消費電力性に有利なだけでなく、屋外での使用にも有利であることから、最近活発に開発されている。
【0003】
反射型液晶表示装置や透過反射両用型液晶表示装置など、反射モードでの表示特性(光学特性)は、従来、以下のような評価装置を用いて評価されていた。以下、反射モードで表示が可能な表示装置の例として、反射型液晶表示装置を用いて、従来技術の光学特性評価装置を説明する。
【0004】
特開平6−27481号公報は、図9に模式的に示す評価装置60を開示している。この評価装置60は、反射型液晶表示装置15に、光源62から出射された略平行光63を任意の角度θ(入射角または照射角)で照射する照明装置と、反射型液晶表示装置15で反射された光Rを任意の角度Φ(受光角)で受光し、その強度を検出する検出装置64とを有している。この評価装置60では、略平行光が任意の入射角で反射型液晶表示装置15に照射される。ここで、入射角および受光角は、反射型液晶表示装置15の表示面に対する法線からの角度である。
【0005】
また、図10に模式的に示す評価装置70も知られている。評価装置70は、光源72と、光源72から出射された光Iを拡散反射する散乱面73と、反射型液晶表示装置15で反射された光Rを任意の角度Φ(受光角)で受光し、その強度を検出する検出装置74とを有している。光源72から出射された光Iは、半球状の面を形成する散乱面73に入射し、散乱面73によって拡散反射される。散乱面73で拡散反射された光(拡散光)Sは、全ての角度範囲に亘ってほぼ一定の強度で反射型液晶表示装置15に入射する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の光学特性評価装置による評価結果(例えば明るさやコントラスト比)は、目視による評価結果との相関が悪く、反射型液晶表示装置の表示品質を一意的に評価できないという問題を有していた。
【0007】
本願発明者は、目視評価の結果と上述の従来の評価装置による評価結果とで違いが生じる原因を詳細に検討した。その結果、反射モードの表示は周囲光の強度分布によって表示特性が変化するという特徴を有しているのに対して、装置による評価を行う際の周囲光の強度分布が、目視評価を行う際の周囲光の強度分布とが異なっているために、それぞれの評価結果の間に相関が無くなっていたことがわかった。すなわち、上述の従来の評価装置において用いられている照明光の強度分布は、実際の使用環境の周囲光の強度分布と大きく異なっていることがわかった。
【0008】
上記では、反射モードの液晶表示装置の評価装置の問題点を説明したが、文字や図形など(被表示物)は、紙などの媒体上に周囲光を利用して表示される。これらの媒体上の表示品質を定量的に評価するためにも、実際の使用環境の周囲光と等価な照明光を簡便な構成で実現できる照明装置が望まれる。本願明細書においては、紙などの媒体も「反射モードで表示を行う媒体」に含むものとする。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、実際の使用環境の周囲光と等価な照明光を実現できる照明装置およびそれを用いた光学特性評価装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学特性評価装置は、試料の反射面に光を照射する照明装置と、前記反射面で反射された光を検出する検出装置とを備え、反射モードで表示を行う媒体の光学特性の評価に用いられる光学特性評価装置であって、前記反射面に入射した前記照明装置の光の強度分布は、前記反射面の法線方向と入射光とが成す角度である入射角θが10°≦θ≦50°の範囲内において、入射角θが大きい程強度が弱い分布を有することを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。前記照明装置が前記反射面に照射する光の強度分布は、入射角θが10°の光の強度が、入射角θが50°の光の強度の2倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0011】
前記照明装置は、半球状の面を形成する散乱面と、前記試料の前記反射面が前記散乱面によって形成される前記半球状の面を含む球の中心近傍に位置するように、前記散乱面または前記試料を支持する支持部材と、前記散乱面に光を照射する光源とを有し、前記検出装置は、前記散乱面が形成する前記半球状の面の一部に設けられた受光部を有する構成とすることができる。
【0012】
前記照明装置から照射される光の一部を透過する開口部を有する遮光板をさらに有し、前記遮光板は前記試料の前記反射面上に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明の照明装置は、試料の反射面に光を照射することにより、反射モードで表示を行う媒体の光学特性の評価に用いられる照明装置であって、半球状の面を形成する散乱面と、前記試料の前記反射面が前記散乱面によって形成される前記半球状の面を含む球の中心近傍に位置するように、前記散乱面または前記試料を支持する支持部材と、前記散乱面に光を照射する光源とを有し、前記反射面に入射した前記光源の光の強度分布は、前記反射面の法線方向と入射光とが成す角度である入射角θが10°≦θ≦50°の範囲内において、入射角θが大きい程強度が弱い分布を有することを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
【0014】
前記反射面に照射される光の強度分布は、入射角θが10°の光の強度が、入射角θが50°の光の強度の2倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者は、上述した従来の光学特性評価装置の照明光の強度分布および実際の使用環境における周囲光の強度分布を詳細に検討した結果、本願発明に至った。
【0016】
一般的な使用環境における周囲光は、反射モードで表示を行う媒体の表示面(すなわち反射面)に、あらゆる角度から入射している。この一般的な周囲光の強度分布においては、反射面の法線方向から入射する光の強度が、斜め方向(反射面の法線方向から反射面内方向に傾いた方向:入射角θ>0°)から入射する光の強度よりも強い。例えば、屋内においては、蛍光灯などの照明装置が天井や壁などに配置されていることが多く、照明装置から反射面に直接照射される光(直接光)に加えて、直接光が周囲の壁、天井や器物に当たって生じる反射光(間接光)も反射面に照射される。また、屋外においては、太陽から直接照射される光に加えて、太陽光が周囲の建物、器物などに当たって生じる反射光も反射面に照射される。いずれの場合も、直接光の強度は、間接光の強度よりも強い。
【0017】
本願発明者は、この一般的な使用環境における周囲光の強度分布と実質的に同じ強度分布を有する照明光を照射することが可能な照明装置を開発し、本発明に至った。
【0018】
以下に、上述した従来の評価装置を比較例として参照しながら、本発明による照明装置およびそれを用いた光学特性評価装置を説明する。以下の説明においては、反射型液晶表示装置を対象とした場合を例に、本発明による光学特性評価装置を用いた評価方法を説明する。
【0019】
図1に本発明による実施形態の光学特性評価装置100を模式的に示す。
【0020】
光学特性評価装置100は、照明装置100aと検出装置50とを備えている。照明装置100aは、光源20と、半球状の面を形成する散乱面30と、散乱面30を支持する支持部材35とを有している。検出装置50は、散乱面30が形成する半球状の面の一部に設けられた受光部50aを有している。評価対象である反射型液晶表示装置15は、その表示面(反射面)が散乱面30によって形成される半球状の面を含む球(半球)の中心近傍に位置するように設置される。反射型表示装置15の表示面の中心(すなわち、測定対象の反射面の中心)から散乱面30までの距離が同じになるように、反射型液晶表示装置15と散乱面30とが相対的に配置されている。後に詳述するように、散乱面30によって形成される半球状の面を含む球の中心近傍に開口部40aを有する遮光板40を反射型液晶表示装置15の表示面上に設け、その開口部40a内に露出されている表示面の光学特性を測定することによって、測定の精度を向上することができる。
【0021】
反射型液晶表示装置15と散乱面30とは、支持部材35によって上述のように相対的に配置されている。支持部材35は、例えば半球状の面を形成する金属板であり、その内面に散乱面30が形成されている。この金属板によって、散乱面30の形状を維持するとともに、散乱面30を例えばテーブルの表面上に支持することができる。金属板によって、散乱面30を反射型液晶表示装置15に対して相対的に支持するために、例えば、半球面状の金属板の底部に延長部35aを設けることによって、反射型液晶表示装置15の表示面が、散乱面30が形成する半球の底面(球の中心(半球の中心と称することもある)を含み、且つ球の中心と半球の頂点とを結ぶ線に垂直な面)上に位置するように配置することができる。また、支持部材35に、反射型液晶表示装置15を保持するステージ(不図示)を設けてもよい。ステージに高さや面内の位置を調整できる機構を適宜設けてもよい。
【0022】
散乱面30に光を照射するための光源20は、例えば、散乱面30が形成する半球の直径を含む断面の円周上または円周の近傍に、球の中心に対して対称となるように複数配置される。光源20は、例えば、目的に応じて選択された適当な光源(例えばハロゲンランプ)に接続された複数の光ファイバの出射部であり得る。この光源20は、例えば、散乱面30が形成する半球状の面を含む半球の底面の円周に、半球の底面の円の中心に対して対称に12個配置される。光源20から散乱面30(半球の内面)に出射される光Iは、拡散光であり、散乱面30をあらゆる方位角でほぼ均一に照射することが好ましい。すなわち、散乱面30が形成する半球の底面の円周を等分するように、複数の光源20を配置することが好ましい。また、光源20から出射される光Iの仰角(半球の底面に対する角度)を調整することによって、散乱面30で拡散反射され、散乱面30が形成する半球の内側に向かって照射される拡散光Sの強度分布を調整する。すなわち、実際の使用環境の周囲光と等価な照明光が得られるように、光源20から出射される光Iの仰角を調整する。
【0023】
光源20から散乱面30に向けて出射された光Iは、散乱面30で拡散反射(または散乱)され、散乱面30が形成する半球状の面を含む半球の内側に向かって照射される(拡散光S)。散乱面30は、例えば、硫酸バリウム層から形成される。硫酸バリウム層は、入射した光をほぼあらゆる方向に、ほぼ均一な光強度で拡散反射(または散乱)する特性を有するものが好ましい。
【0024】
すなわち、本実施形態では、均一な強度分布で拡散反射する特性を有する拡散反射層を用いて半球状の面(散乱面30)を形成し、その面に入射させる光の強度分布(光源20から出射される光の強度分布)を調節することによって、実際の使用環境の周囲光と等価な照明光を得ている。実際の使用環境の周囲光と等価な照明光は、他の方法、例えば散乱面の形状を変化させることによっても実現し得る。もちろん、散乱面の形状の調節と光源からの光の強度分布の調節とを組み合わせてもよい。但し、再現性および簡便性の観点から、上述した構成を採用して、光源からの光の強度分布を調節することが好ましい。
【0025】
次に、図2を参照しながら、遮光板40の機能を説明する。試料(反射面)の光学特性を定量的に評価するためには、上述したように、遮光板40を設けることが好ましい。
【0026】
遮光板40は、散乱面30が形成する半球状の面を含む球の中心近傍に開口部40aを有し、半球の底面の開口部40a以外の領域を実質的に遮光する円盤状の板である。遮光板40は、散乱面30側に、散乱面30と同等の光学特性を有する表面(拡散反射層)、または光を吸収する性質を有する表面(光吸収層)を有する。
【0027】
図2(a)に示したように、遮光板40を設けないと、反射型液晶表示装置15に照射される光は、半球状の散乱面30から直接照射される光に加えて、反射型液晶表示装置15において反射された後に散乱面30に入射し、散乱面30で拡散反射されて再び反射型液晶表示装置15に入射する光(図2(a)中の破線)も存在する。反射型液晶表示装置15で反射された光(破線)は、反射型液晶表示装置15の反射特性の影響を受けているので、光源から出射されて散乱面30で反射された光とは性質が異なる。この反射型液晶表示装置15で反射された光は、散乱面30で反射され、再び反射型液晶表示装置15に入射する。すなわち、最終的に反射型液晶表示装置15に入射する光の一部は、反射型液晶表示装置15の反射特性の影響を受けている。従って、評価対象である個々の反射型液晶表示装置15に対して同一の照明光強度分布が得られにくい。
【0028】
さらに、図2(a)中に実線で示したように、反射型液晶表示装置15に入射せずに、系外に出てしまい、評価に用いられない光も存在する。図2(a)中に破線および実線で示した光の量は、反射型液晶表示装置15の大きさ、反射特性、光の利用効率によって異なるので、反射型液晶表示装置15の評価に用いられる光の量および性質が変動する原因となる。その結果、異なる反射型液晶表示装置15の光学特性を定量的に比較することが困難になる場合がある。
【0029】
図2(b)に示したように、散乱面30が形成する半球状の面を含む球の中心近傍に開口部40aを有する遮光板40を設けることによって、図2(a)の破線および実線で示した光は、それぞれ図2(b)中に示したように、遮光板40によって拡散反射されるので、評価に用いられる光の量および性質が反射型液晶表示装置15の大きさ、反射特性や光の利用効率によって変動することが抑制・防止される。遮光板40の散乱面30側の表面が光を吸収する性質を有し、図2(a)に破線および実線で示した光を吸収しても、同様の効果を得ることができる。遮光板40は、例えば、散乱面30と同様に硫酸バリウムを用いて形成してもよく、または黒色の樹脂を用いて形成してもよい。
【0030】
特に、定量的な評価を行うためには、遮光板40の開口部40aはできるだけ小さい方が好ましく、開口部40a以外の領域は半球の底面全体に形成されることが好ましい。開口部40aの面積は、半球の底面の約10%以下であることが好ましい。もちろん、開口部40aは、球の中心に対して対称的な形状(典型的には円形)を有していることが好ましい。なお、遮光板40や開口部40aの形状や大きさは、評価の精度や用いる検出装置の感度にも依存するので、用途に応じて適宜変更され得る。
【0031】
次に、本実施形態の光学特性評価装置100の照明装置100aにおいて、散乱面30で拡散反射され、反射型液晶表示装置15の表示面上に達する光の強度分布を示すグラフを図3に示す。図3の横軸は、入射角(表示面法線と入射光とが成す角)であり、縦軸は入射光の強度(相対値)である。図2に示したように、本実施形態の照明装置100aから試料の反射面(反射型液晶表示装置15の表示面)に照射される光の強度は、入射角が10°を越えると徐々に低下している。
【0032】
図3に示した照射光の強度分布は、反射型液晶表示装置15が実際に使用される環境(例えば、直射日光の照射が無く、複数の蛍光灯の光を間接的に利用した照明光の下)における表示面上での光の強度分布と近い。本願発明者はこのことを見出し本発明に至った。本発明による照明装置によって生成される照明光の表示面に対する強度分布は、表示面に対する入射角θが10°≦θ≦50°の範囲内において、入射角θが大きい程強度が弱い分布を有している。さらに、入射角θが10°の光の強度(図2中では相対値260)は、入射角θが50°の光の強度(図3中では相対値100)の2倍以上5倍以下(図3では2.6倍)である。入射角θが10°の光の強度が、入射角θが50°の光の強度の2倍未満であると、照明光の強度分布が均一過ぎ、逆に入射角θが50°の光の強度の5倍を越えると、実際の使用環境における周囲光の強度分布との違いが大きくなり、目視評価のとの対応が悪くなる。
【0033】
入射角θが10°未満(より厳密には約7°未満)の角度領域において、光の強度が弱いのは、検出装置50の受光部50aを散乱面30が形成する半球の頂上部(入射角θが0°〜10°の範囲内)に設けたためである。受光部50aの反射面の中心(球の中心)に対する開き角(開口角と呼ぶ)が大きくなると、散乱面30から照射される光の強度分布に影響を与える(具体的には、半球の頂上付近に受光部50aを設けた構成においては、入射角が0°付近の照射光強度が低下する)ことになり、実際の使用環境における周囲光の強度分布と異なるようになるので好ましくない。開口部40aの開口角は20°以下であることが好ましい。もちろん、受光部40aを設ける位置は、半球の頂上部に限られず、他の位置(複数でもよい)に設けてもよいし、受光部50aが散乱面30上を移動できる構成としてもよい。この場合、受光部50aが移動する範囲は、散乱面30が形成する半球の頂点を含む円周上であることが好ましい。また、受光部50aが移動するために、散乱面30に設けらるスリット状の開口部のうち、受光部50aが配置される開口部40a以外の領域は、少なくとも光学特性の測定の際には、散乱面30と同じ光学特性を有し、散乱面30の一部として機能する保護層(蓋;不図示)で覆われていることが好ましい。
【0034】
図3に示した強度分布を有する照明装置100aを備えた光学特性評価装置100を用いて、3つ反射型液晶表示装置A、BおよびC(以下、それぞれLCD−A、LCD−BおよびLCD−Cと称す。)の光学特性を評価し、目視評価による結果と比較した。
【0035】
(目視評価)
まず、目視評価の結果を説明する。目視評価は、一般的な使用環境を想定して、窓から強い直射日光が差し込まない室内で蛍光灯の光で、それぞれのLCD−A、BおよびCの表示特性を評価した。また、表示面に対する観察方向を実際の使用状態であり得そうな範囲内で、観察者の位置や姿勢およびLCDの配置角度などを変化させた。この目視評価では、上述した強度分布を有する周囲光の下で、目の位置で決まる受光角を中心に、ひとみの大きさに対応する開口角の範囲内に入射する光の光量(開口角の範囲に亘る積分値)が評価される。すなわち、目視評価では、表示の全体的な明るさと、反射面の反射率の視角依存性(受光角依存性)とを同時に評価している。表示の全体的な明るさは反射面の光の利用効率に対応し、反射率の視角依存性は反射面の指向性に対応付けられる。目視評価は、反射モードの表示の品質に影響を与える2つの因子(指向性と利用効率)を同時に評価していることになる。
【0036】
表示面の法線方向から観察した場合(Φ=0°に相当)、僅かな差ではあるが、LCD−A、LCD−BおよびLCD−Cの順で明るく感じられた。視角(受光角Φに対応)をLCDの表示面の法線方向から傾ける(Φ>0)につれて、LCD−AおよびLCD−Bの明るさが徐々に低下し、視角が約40°を越えたあたりでは、僅かな差ではあるが、LCD−C、LCD−BおよびLCD−Aの順で明るく感じられた。
【0037】
(本発明の評価装置を用いた評価例)
図3に示した強度分布を有する照明装置100aを備えた光学特性評価装置100を用いて、LCD−A、LCD−BおよびLCD−Cの光学特性を評価した結果を図4に示す。図4の横軸は受光角(図1中のΦ)であり、縦軸は反射率(硫酸バリウムの法線方向(Φ=0°)における反射率を100とした相対値)を示している。
【0038】
図4に示したように、受光角Φ=0°における反射率は、LCD−A、LCD−B、LCD−Cの順で高く、上述した目視評価によって感じられた明るさの順序と一致している。また、それぞれの反射率の差は僅かで、目視による僅かな明るさの違いに対応した結果となっている。
【0039】
また、受光角Φが大きくなるにつれて、LCD−AおよびLCD−Bの反射率は徐々に低下し、LCD−Cの反射率よりも小さくなっている。さらに、この反射率の低下傾向は、LCD−Aの方がLCD−Bよりも大きく、受光角Φが約37°を越える付近で、反射率の関係が逆転している。すなわち、受光角Φが約37°を越えると、LCD−Cの反射率が最も高く、LCD−B、LCD−Aの順に反射率が低くなっている。この評価結果におけ受光角Φの増加に伴う反射率の変化は、上述した目視評価による明るさの変化とよい相関がある。
【0040】
このように、本発明による実施形態の光学特性評価装置100は、一般的な使用環境の周囲光の強度分布に近い強度分布の光を照射する照明装置100aを有しているので、目視評価の結果とよい相関関係を有する評価結果を得ることができる。従って、反射型液晶表示装置の表示特性(反射モード)を定量的に、且つ、目視評価とのよい相関を持って評価できるので、反射型液晶表示装置の開発に対して、信頼性の高い評価結果を効率的にフィードバックすることが可能となる。
【0041】
本実施形態の評価装置100や照明装置100aは、反射モードで表示を行う液晶表示装置の表示特性の評価だけでなく、反射光を用いて表示を行う媒体の表示品位の評価などに広く利用することができる。また、本発明による照明装置は、一般的な使用環境の周囲光を簡単な構成で再現できる照明装置として、広く利用することができる。
【0042】
(比較例)
図9および図10を参照しながら説明した従来の光学特性評価装置60および70を用いて、上記の反射型液晶表示装置LCD−A、LCD−BおよびLCD−Cを評価した結果を説明する。
【0043】
(比較例1)
図9に示した光学特性評価装置60を用いた場合に、試料の表面に照射される光の強度分布を表すグラフを図5に示す。図5は上述の実施形態において説明した図3に対応する。
【0044】
図9に示した従来の光学特性評価装置60の光源62は、略平行光を出射するので、例えば、θ=50°とした場合には、図5に示したように、θ=50°付近の照射強度だけが著しく高くなる。このような照射光強度分布は、例えば、晴天時の屋外で、且つ周囲からの反射光がない状態(太陽からの平行光が直接表示面に入射する状態)であり、一般的な使用状態とはかけ離れている。
【0045】
図6に、従来の光学特性評価装置60を用いてLCD−A、LCD−BおよびLCD−Cを評価した結果を示す。ここでは、入射角θを50度に固定し、受光角Φを0〜50度の範囲内で変化させた。図6は、上述の実施形態において説明した図4に対応する。図6の縦軸の数値は、硫酸バリウム層の反射率を100とした相対値である。
【0046】
図6から明らかなように、受光角Φ=50°における反射率は、LCD−A、LCD−B、LCD−Cの順で高く、上述の目視評価の結果と同じであるが、反射率の違いは非常に大きく、目視評価による僅かな明るさの差を反映した結果とはいえない。特に、LCD−Aの反射率は著しく高く、LCD−BやLCD−Cの反射率との定量的な比較を行っても、目視評価結果による明るさの違いを説明する(対応付ける)ことはできない。
【0047】
また、受光角Φが小さい領域では、LCD−A、LCD−BおよびLCD−Cの反射率の関係が受光角Φ=約20°で逆転し始めて、受光角Φ≦5°ではLCD−Cの反射率が最も高く、LCD−B、LCD−Aの順に反射率が低くなっている。LCD−Aの反射率の変化の程度は非常に大きく、上述した目視評価による僅かな明るさの変化とは対応していない。
【0048】
図5に示したような強度分布を有する照射光を用いて評価できる反射面の光学特性は、反射面の指向性であり、一般的な使用環境において、複数の方向から光が入射した場合の反射面の光学特性(反射特性)を正しく評価することができない。すなわち、評価装置60では、反射モードの表示の品質に影響を与える2つの因子(指向性と利用効率)のうちの、利用効率を評価することができない。
【0049】
(比較例2)
次に、図10に示した従来の光学特性評価装置70を用いた場合に、試料の表面に照射される光の強度分布を表すグラフを図7に示す。図7は上述の実施形態において説明した図3R>3に対応する。
の光学特性評価装置70においては、光源72から出射された光Iは散乱面73によって拡散反射され、図7に示したように、全ての角度範囲に亘ってほぼ一定の強度で反射型液晶表示装置15に入射する(拡散光S)。なお、図7において、入射角θが10°未満(より厳密には約7°未満)の角度領域において、光の強度が弱いのは、検出装置74の受光部74aを散乱面73が形成する半球の頂上部(入射角θが0°〜10°の範囲内)に設けたためである。このような照射光強度分布は、照明装置や窓などの強い光源が近くにない室内の状態であり、現実にはほとんど存在しない。
【0050】
図8に、従来の光学特性評価装置70を用いてLCD−A、LCD−BおよびLCD−Cを評価した結果を示す。図8は、上述の実施形態において説明した図4に対応する。図8の縦軸の数値は、硫酸バリウムのΦ=0度での反射率を100とした相対値である。
【0051】
図6から明らかなように、受光角Φ=0°における反射率は、LCD−Cの反射率が最も高く、LCD−AおよびLCD−Bの反射率はほぼ同じであり、上述の目視による明るさの評価結果と対応していない。一方、受光角Φが大きくなるにつれて、LCD−AおよびLCD−Bの反射率が低下し、受光角Φが約30°を越える領域からLCD−Bの反射率がLCD−Aの反射率よりも若干高くなっており、受光角Φが40°を越える領域では、目視評価の結果や図4に示した実施形態の光学特性装置100による評価結果にほぼ対応している。
【0052】
図7に示したような強度分布を有する照明光を用いて評価できる反射面の光学特性は、反射面の光の利用効率であり、一般的な使用環境において光の強度分布に偏りがある場合の反射面の光学特性を正しく評価することができない。すなわち、評価装置70では、反射モードの表示の品質に影響を与える2つの因子(指向性と利用効率)のうちの、指向性を評価することができない。なお、受光角Φが大きい領域において図8の結果が図4の結果に近くなったのは、受光角Φが大きい領域では、反射面の指向性の影響が小さくなるからと考えられる。
【0053】
上述したように、従来の評価装置60および70では、反射モードの表示の品質に影響を与える2つの因子(指向性と利用効率)のうちの、いずれか一方を評価することができない。その結果、2つの因子を総合的に評価する目視による評価結果との対応がとれないのである。
【0054】
【発明の効果】
本発明によると、試料の反射面に入射する光の強度分布が実際の使用環境の周囲光と等価な照明光を実現できる照明装置提供することができる。本発明の照明装置は、反射型液晶表示装置などによる反射モードの表示や、紙などの媒体に印刷された文字や図形など、周囲光を利用した表示の品質(すなわち、反射面の光学特性)を評価する際の照明装置としても好適に用いられる。この照明装置を備えた光学特性評価装置を用いると、実際の使用状態における目視評価と相関のとれた評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施形態の光学特性評価装置100を模式的に示す図である。
【図2】光学特性評価装置100における遮光板40の機能を説明するための模式図である。
【図3】光学特性評価装置100において、試料の表面に照射される光の強度分布を示すグラフである。
【図4】実施形態の光学特性評価装置100を用いて、LCD−A、LCD−BおよびLCD−Cの光学特性を評価した結果を示すグラフである。
【図5】従来の光学特性評価装置60において、試料の表面に照射される光の強度分布を表すグラフである。
【図6】従来の光学特性評価装置60を用いて、LCD−A、LCD−BおよびLCD−Cの光学特性を評価した結果を示すグラフである。
【図7】従来の光学特性評価装置70において、試料の表面に照射される光の強度分布を表すグラフである。
【図8】従来の光学特性評価装置70を用いて、LCD−A、LCD−BおよびLCD−Cの光学特性を評価した結果を示すグラフである。
【図9】従来の光学特性評価装置60を模式的に示す図である。
【図10】従来の他の光学特性評価装置70を模式的に示す図である。
【符号の説明】
15 反射型液晶表示装置
20 光源
30 散乱面(拡散反射層)
35 支持部材
35a 延長部
40 遮光板
40a 開口部
50 検出装置
50a 受光部
60、70、100 光学特性評価装置
62 略平行光
64、74 検出装置
72 光源
73 散乱面
100a 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の反射面に光を照射する照明装置と、前記反射面で反射された光を検出する検出装置とを備え、反射モードで表示を行う媒体の光学特性の評価に用いられる光学特性評価装置であって、
前記反射面に入射した前記照明装置の光の強度分布は、前記反射面の法線方向と入射光とが成す角度である入射角θが10°≦θ≦50°の範囲内において、入射角θが大きい程強度が弱い分布を有する光学特性評価装置。
【請求項2】
前記照明装置が前記反射面に照射する光の強度分布は、入射角θが10°の光の強度が、入射角θが50°の光の強度の2倍以上5倍以下である請求項1に記載の光学特性評価装置。
【請求項3】
前記照明装置は、半球状の面を形成する散乱面と、前記試料の前記反射面が、前記散乱面によって形成される前記半球状の面を含む球の中心近傍に位置するように、前記散乱面または前記試料を支持する支持部材と、
前記散乱面に光を照射する光源とを有し、
前記検出装置は、前記散乱面が形成する前記半球状の面の一部に設けられた受光部を有する、請求項1または2に記載の光学特性測定装置。
【請求項4】
前記照明装置は、前記散乱面から前記試料に向かって照射される光の一部を透過する開口部を備える遮光板をさらに有し、前記遮光板は前記試料の前記反射面上に配置されている請求項1から3のいずれか1つに記載の光学特性評価装置。
【請求項5】
試料の反射面に光を照射することにより、反射モードで表示を行う媒体の光学特性の評価に用いられる照明装置であって、
半球状の面を形成する散乱面と、
前記試料の前記反射面が前記散乱面によって形成される前記半球状の面を含む球の中心近傍に位置するように、前記散乱面または前記試料を支持する支持部材と、
前記散乱面に光を照射する光源と、
を有し、前記反射面に入射した前記光源の光の強度分布は、前記反射面の法線方向と入射光とが成す角度である入射角θが10°≦θ≦50°の範囲内において、入射角θが大きい程強度が弱い分布を有する照明装置。
【請求項6】
前記反射面に照射される光の強度分布は、入射角θが10°の光の強度が、入射角θが50°の光の強度の2倍以上5倍以下である請求項に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【特許番号】特許第3561189号(P3561189)
【登録日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【発行日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−261657
【出願日】平成11年9月16日(1999.9.16)
【公開番号】特開2001−83043(P2001−83043A)
【公開日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【審査請求日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【参考文献】
【文献】特開平08−178798(JP,A)
【文献】特開平08−145903(JP,A)
【文献】特開平06−194223(JP,A)
【文献】特開平5−273042(JP,A)